JP6198094B1 - 内圧緩和翼の設定方法 - Google Patents
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Abstract
Description
近年、この工法は、阪神、北越、東日本等の大震災の後、防災対策や地震対策として利用されることが多く、また、エネルギー関連施設や港湾施設において、地盤、杭、構造物の連成系耐震補強及び砂地盤を対象に改良強度3.0〜5.0MN/m2程度の比較的高強度の地盤改良工法として採用されるケースが増えている。
特許文献1には、先端部に掘削ヘッドおよび攪拌翼を複数段備えた攪拌軸を回転上下動させて攪拌軸の先端部の吐出口より吐出した固化材と土壌とを攪拌混合して地盤を改良する地盤改良工法において、攪拌軸の外周に棒状又は板状の攪拌補助部材を所定の間隔で放射状に前記攪拌軸の上部まで多段に取り付け、また、周辺地盤に与える変位を低減させるための円板状の攪拌補助部材を当該攪拌軸に併設した地盤改良装置が記載されている。
特許文献2には、先端部に掘削刃および攪拌翼を複数段備えた攪拌軸を回転上下動させて攪拌翼の噴射ノズルより噴射した固化材と圧縮エアーを同伴させて土壌を攪拌混合して地盤を改良する地盤改良工法において、攪拌軸の外周に板状のエアー回収用リブ材を攪拌翼から攪拌軸の上端部まで連続して対に設けた地盤の混合処理装置が記載されている。
本発明が解決しようとする第2の課題は、簡単で経済的に第1の課題を解決する方法を提供することである。
具体的には、攪拌翼付き回転軸の貫入引抜抵抗を、駆動部のモーターの電流値として測定してみると、図6(a)(b)に示すように、従来の回転軸(内圧緩和翼なし)(1)と、本発明の内圧緩和翼を取り付けた回転軸(2)(3)(4)とでは、特に、貫入時の抵抗値(電流値)に顕著な相違点があることを発見した。
これに対し、図5(2)に示す本発明の内圧緩和翼を取り付けた攪拌翼直径φ=1,600mmでは、図6(a)の点線で示すように、N=20の砂質土のとき、駆動部のモーターの電流値が約130Aであった。
図5(3)に示す本発明の内圧緩和翼を取り付けた攪拌翼直径φ=1,600mm、圧縮空気有、流動添加剤有では、図6(a)の1点鎖線で示すように、約30Aであった。
図5(4)に示す本発明の内圧緩和翼を取り付けた攪拌翼直径φ=1,600mm、圧縮空気有、流動添加剤無、事前削孔有では、図6(a)の2点鎖線で示すように、約120Aであった。
前記内圧緩和翼22の長さbを、Dが前記回転軸14の直径としたとき、D/4≦b≦D/2により設定する長さ設定工程と、
前記回転軸14における内圧緩和翼22の取り付け間隔Lを、L≦a+2bにより設定する取り付け間隔設定工程とからなることを特徴とする。
深層混合処理装置の回転軸における撹拌翼の上部に設けられ、前記回転軸の周りの地盤をほぐして前記回転軸に掛かる土圧を緩和する多段の内圧緩和翼の幅aを、βが前記回転軸の単位時間当たりの貫入速度で、αが前記回転軸の単位時間当たりの回転数のとき、a≧β/αにより設定する幅設定工程と、
前記内圧緩和翼の突出する長さbを、Dが前記回転軸の直径としたとき、D/4≦b≦D/2により設定する長さ設定工程と、
前記回転軸における内圧緩和翼の取り付け間隔Lを、L≦a+2bにより設定する取り付け間隔設定工程とからなるので、土壌が砂質土であっても粘土質であっても共に回転軸の周りの土圧の内圧を緩和することができる。また、内圧緩和翼による地盤の揉みほぐし効果により、改良体による地盤の地中変位が減少する。内圧緩和翼と圧縮空気排出時の上昇効果(一般にエアーリフト効果とよばれている)を利用して貫入時だけでなく、引抜き時も圧縮空気を使用すれば変位の低減効果が可能となる。さらに、流動添加剤を添加することにより配合セメント添加量を20〜30%減らしても同等強度が得られ、かつW/Cも100%以下にすることでプラント圧送不可能な配合を可能にする。セメント系改良材と水に、流動添加剤を混合して得られる流動性の高いセメントスラリーを地盤に注入し、攪拌混合して従来にないような強固な改良体を構築することができる。
前記内圧緩和翼22の長さbを、Dが前記回転軸14の直径としたとき、D/4≦b≦D/2により設定する長さ設定工程と、
前記回転軸14における内圧緩和翼22の取り付け間隔Lを、L≦a+2bにより設定する取り付け間隔設定工程とにより容易に、かつ、的確に設定できる。
回転軸14は、1軸式であっても多軸式であっても利用できる。
図1において、10は、軟弱地盤で、この地盤10に固化改良体25を構築しようとする例を示している。
この地盤10に、ベースマシーン11を据え付け、リーダー12をステー13で支持して垂直に固定し、このリーダー12に、上部支持部26と中間振れ止め部19と基部振れ止め部18で1軸式の回転軸14を保持する。この回転軸14の下端部には、掘削刃15が設けられ、この掘削刃15の上に、複数段の撹拌翼16が取り付けられる。また、前記回転軸14の上端部には、この回転軸14を地盤10に貫入し、引き抜くために正回転と逆回転を与える駆動部17が設けられている。また、前記回転軸14の上端部には、セメントスラリーと圧縮空気を送るためのスラリー注入管20とエアー注入管21が結合されている。このスラリー注入管20とエアー注入管21から送られたセメントスラリーと圧縮空気は、掘削刃先端吐出口15及び/又は撹拌翼16の翼内のセメントスラリー吐出口23から地盤の攪拌時に土中に噴射される。また、攪拌軸を二重菅とした場合、セメントスラリー吐出口23と、別途にエアー噴出口24から吐出することが出来る。
本特許出願人は、攪拌翼の直径、攪拌時に噴射する圧縮空気の有無、流動添加剤の有無、回転軸の周りの付着土をほぐす内圧緩和翼の有無のパラメータを種々変化させて実験を繰り返したところ、適正な形状の内圧緩和翼を使用することで、大口径の攪拌翼を使用しても貫入抵抗を大幅に減少させることを知見した。
(1)内圧緩和翼22は、回転軸14の回転時に、この回転軸14の外周部に地盤10との間で発生する内圧を緩和する作用をすること。
(2)回転軸14の回転トルクを弱め、発生する周面付着力を小さくし、上方に圧力を発散させること。
(3)セメントスラリーに圧縮空気を混合して使用する場合には、余剰の圧縮空気を地盤10の中に滞留させずに上方に抜く作用があること。
(4)セメントスラリーに流動添加剤を使用した場合には、攪拌土壌をより練り混ぜやすくすること。
(5)内圧緩和翼22の枚数が多すぎたり、各段の間隔が狭すぎたりして攪拌した地盤10が上方に排土してしまうのを避けること。
(6)造成中は、深度に応じて地中応力やスラリー内圧などにより、回転軸14の先端の撹拌翼16で攪拌されても、撹拌翼16が通過すると回転軸14の周辺部の内圧の発生を瞬時に抑えられること。
(7)内圧緩和翼22は、回転軸14の貫入時と引抜時の造成中において地盤10が内圧緩和翼22の回転による外力を受け、地盤10の中にせん断応力が生じて、その中でせん断抵抗を超える箇所にせん断破壊が生じる。破壊する面は、すべり面といわれ、せん断応力に抵抗する最大のせん断抵抗が生じ破壊に至る。
すべり面の破壊パターンは、粘土の場合と砂の場合とで異なる。
粘土の場合、内圧緩和翼22の長さbと地盤10が破壊される影響範囲xは、図3(a)のように、押し方向、引き方向ともに次式となる。
x=b・tan45°
したがって、L=a+2bとなる。
砂の場合、内圧緩和翼22の長さbと地盤10が破壊される影響範囲xは、図3(b)のように、次式となる。+は押し方向、−は引き方向である。
x=b・tan(45°±φ/2) (φ=30°)
したがって、L=a+2.3bとなる。
(8)内圧緩和翼22の幅aは、小さすぎるとせん断破壊がほとんど生ぜず、大きすぎると抵抗が大きくなり、大口径の攪拌翼を使用する目的が達成できなくなる。これらを満足する幅aは、図2(a)において、回転軸14が1回転したときに、内圧緩和翼22の外周端の一点A0が幅aだけ移動したA1に達する寸法以上とすることが望ましい。
(9)内圧緩和翼22の長さbは、長すぎると抵抗が大きくなり、トルクも増大し、部材として回転軸14への取り付け補強も大きくなり、さらに、通過する中間振れ止め部19の内径も大きくなり振れ止め効果がなくなる。また、短すぎるとせん断破壊の生じる部分が小さすぎ、内圧緩和の効果が小さくなる。このことから、D/4≦b≦D/2が望ましい。Dは、回転軸14の直径である。
(ア)内圧緩和翼22の幅aの設定
前記(8)に基づき、幅aは、回転軸14が1回転したときに、内圧緩和翼22の外周端の一点A0が幅aだけ移動したA1に達する寸法以上とするために、
a≧β/α
の式で設定する。βは、単位時間当たりの貫入速度で、一般的には、50〜150cm/分で、αは、単位時間当たりの回転数で、一般的には、16〜20回/分である。例えば、β=100、α=20とすると、a=5cm以上と設定される。
(イ)内圧緩和翼22の突出する長さbの設定
前記(9)に基づき、次の式で設定する。
D/4≦b≦D/2
回転軸14の直径は、一般的に26.7cm又は31.6cmであるが、26.7cmとすると、6.7≦b≦13.4となり、b≧6.7cmとなる。
(ウ)内圧緩和翼22の取り付け間隔Lの設定
前記(7)に基づくと、Lは、粘土の場合の方が、砂の場合よりも狭くなる。しかし、地盤10はすべての地層が粘土であったり、砂であったりすることが少ないので、いずれにも適用するためには、狭い方のL=a+2bを採用することが望ましい。例えばa=15cm、b=10cmの場合には、L≦a+2b=15+20=35cmとなる。
実証試験は、図5に示すような従来の仕様(1)と、本発明の3種類の仕様(2)(3)(4)の4種類の仕様で行われた。
この図5において、「径mm」は、回転する撹拌翼16の直径で、断面形状、段数は、共通とする。「圧縮空気」は、セメントスラリーと合流する圧縮空気が有は〇、無は×とし、「内圧緩和翼」は、図2(a)に示した内圧緩和翼22が有は〇、無は×とし、「流動添加剤」は、アルカリ金属炭酸塩、無機塩化物、高分子系分散剤で構成されるセメントスラリーに添加する流動添加剤で、有は〇、無は×とする。
地盤10は、地盤の層は、図6(a)(b)に示すように、深度0〜5mがN値8の埋土、深度5〜10mがN値20の砂質土、深度10〜15mがN値13の砂質土、深度15〜17mがN値4の粘性土、深度17〜20mがN値3の粘性土とした。
また、駆動部17は、同一規格のモーターを使用し、その電流値を測定した。
従来の回転軸(1)(径1,000mm、圧縮空気×、内圧緩和翼×、流動添加剤×)では、深度0〜5mで130〜230A、深度5〜10mで180〜300A、深度10〜15mで地盤10〜180A、深度15〜20mで120Aであった。
本発明の回転軸(2)(径1,600mm、圧縮空気×、内圧緩和翼〇、流動添加剤×)では、深度0〜5mで100〜150A、深度5〜10mで30〜130A、深度10〜15mで30〜110A、深度15〜20mで120〜130Aであった。
本発明の回転軸(3)(径1,600mm、圧縮空気〇、内圧緩和翼〇、流動添加剤〇)では、深度0〜20mで20〜30Aであった。
本発明の回転軸(4)(径1,600mm、圧縮空気〇、内圧緩和翼〇、流動添加剤×、事前削孔あり)では、深度0〜5mで30〜100A、深度5〜10mで100A、深度10〜15mで100〜120A、深度15〜20mで120〜130Aであった。
以上のように、回転軸14に適正な寸法の内圧緩和翼22を設けることで、大口径になっても逆に貫入時の攪拌抵抗値が大幅に減少することが判明した。
従来の回転軸(1)は、深度20mでの引抜開始時は、170Aと高いが、深度20〜12m程度までは、粘性土地盤のため100〜70Aにすぐに低下し、深度12〜9m程度まで70〜200Aまでは砂地盤のため上昇し、深度9〜0m程度まで200〜50Aまで略直線的に低下する。
本発明の回転軸(2)は、引抜開始の深度20〜15m程度までは、150〜220Aの間を上下動し、深度15〜10mまで150Aを推移し、深度9mの砂地盤で220Aまで上昇するが、以後内圧が0に減少する深度0mまでに50Aに直線的に低下する。
本発明の回転軸(3)は、深度20mでの引抜開始時は、220Aと高いが、流動添加剤の効果ですぐに70Aまで低下し、以後内圧が0に減少する深度0mまで60〜70Aを推移する。
本発明の回転軸(4)は、深度20〜10m程度までは、150〜220Aの間の上下動を繰り返し、深度10m以後深度0mまでに50Aに直線的に低下する。
以上のように、回転軸14に適正な寸法の内圧緩和翼22を設けることで、貫入時ほどではないが、従来の小さな径と本発明の大口径で引抜時の攪拌抵抗値に大きな変化がないことが判明した。
すなわち、図2(b)では、内圧緩和翼22は、中心角120度の間隔で、かつ、順次Lの間隔で螺旋状に多段に配置したものであり、また、図2(c)は、回転軸14の中心線に対して所定の角度θをもって配置した例を示している。この角度θは、回転軸14の貫入角度であってもよいし、それ以外でもよい。さらに、内圧緩和翼22の幅aは、単位時間当たりの貫入速度βが大きく、単位時間当たりの回転数αが少ないときには、β/αの数値に応じて広くしてもよい。
これは回転軸14を回転するための回転駆動部17に大きな抵抗がかからないようにするためである。
砂地盤における従来の撹拌翼を取り付けた回転軸14と本発明の台形翼を取り付けた回転軸14による実証試験の結果、図7(a)に示すような特性結果が得られた。
従来の45度の傾斜板の回転軸14(1)で、φ=1,000mmのときは、貫入時の最大貫入力は、400N・mで、引抜時の最大貫入力は、−700N・mであった。
本発明の台形翼を取り付けた回転軸14(2)で、φ=1200mmのときは、貫入時の最大貫入力は、500N・mで、引抜時の最大貫入力は、−400N・mであった。
本発明の台形翼を取り付けた回転軸14(3)で、φ=1,300mmのときは、貫入時の最大貫入力は、600N・mで、引抜時の最大貫入力は、−600N・mであった。
本発明の台形を取り付けた回転軸14(4)で、φ=1,500mmのときは、貫入時の最大貫入力は、750N・mで、引抜時の最大貫入力は、−750N・mであった。
以上の結果から貫入時は、従来のφ=1,000mmと本発明のφ=1,200mmが略等しく、引抜時は、従来のφ=1,000mmと本発明のφ=1,500mmが略等しいということが分かった。
以上のように、本発明は、内圧緩和翼を取り付ける効果に加えて、攪拌翼を断面台形等とすることで、さらに貫入時と引抜時の抵抗の減少効果を得ることができる。
硬質砂質地盤の貫入に対してセメントスラリーに圧縮空気を混合し、地盤の塑性破壊を起こして処理機の貫入引抜を補助し、また、粘性土層の引き抜き時に対しても圧縮空気により付着抵抗を減らす。セメントスラリーと共に地盤に供給される圧縮空気は、回転軸の外周部に配備された内圧緩和翼によってほぐされた地盤を伝って回転軸周辺より地表面に伝達される。圧縮空気は、造成中において地盤中又は周辺土壌中に留まることがなく、地表面に排出させるため、改良体に悪影響を及ぼさない。
内圧緩和翼は、回転軸に25cm〜50cmピッチで取り付けられており、回転軸の回転に伴って発生するほぐされた地盤を伝って速やかに地表に排出される。その場合にも、まだ固まらない混合物の流動性が必要となり流動添加剤を使用することによる効果がさらに増す。
Claims (1)
- 深層混合処理装置の回転軸における撹拌翼の上部に設けられ、前記回転軸の周りの地盤をほぐして前記回転軸に掛かる土圧を緩和する多段の内圧緩和翼の幅aを、βが前記回転軸の単位時間当たりの貫入速度で、αが前記回転軸の単位時間当たりの回転数のとき、a≧β/αにより設定する幅設定工程と、
前記内圧緩和翼の長さbを、Dが前記回転軸の直径としたとき、D/4≦b≦D/2により設定する長さ設定工程と、
前記回転軸における内圧緩和翼の取り付け間隔Lを、L≦a+2bにより設定する取り付け間隔設定工程と
からなることを特徴とする内圧緩和翼の設定方法。
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