JP2020022966A - 懸濁重合用分散助剤およびその水性液、並びに、それらを用いるビニル系樹脂の製造方法 - Google Patents

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佳明 小塚
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Abstract

【課題】本発明は、良好な安定性や取り扱いやすい粘度を有した水性液として使用でき、ビニル系化合物の重合に有用な懸濁重合用分散助剤を提供することを目的とする。【解決手段】ビニル系化合物の懸濁重合用分散助剤を、ケン化度が45〜65モル%であり、以下の(式1)を満足するポリビニルアルコール系重合体とする。(式1)250≦X/Y≦400(ここで、X:ポリビニルアルコール系重合体の重合度、Y:ポリビニルアルコール系重合体のブロックキャラクターを示す。)【選択図】なし

Description

本発明は、ビニル系化合物の懸濁重合用分散助剤として好適に使用出来るポリビニルアルコール系重合体、このポリビニルアルコール系重合体を含有する水性液、このポリビニルアルコール系重合体を分散助剤として使用するビニル系樹脂の製造方法に関する。
塩化ビニル系樹脂(又は、以下、塩化ビニル系重合体ということがある)は、一般に、塩化ビニルモノマーを、重合開始剤及び分散安定剤などと共に水性媒体中に分散させて重合を行う懸濁重合法により製造されている。
その際使用される分散安定剤としては、塩化ビニルモノマーの分散性を安定化して、製造される塩化ビニル系樹脂の粒径を調節するために添加されるいわゆる「分散安定剤」と、製造される塩化ビニル系樹脂粒子中の空孔率(ポロシティ)を上げるために添加されるいわゆる「分散助剤」とがある。
従来、「分散安定剤」(又は、以下、一次分散剤ということがある)としては、ポリビニルアルコール(PVA)やヒドロキシプロピルメチルセルロースなどが使用されている(特許文献1〜3参照)。また、「分散助剤」としては、前述した一次分散剤(分散安定剤)よりもケン化度が低いPVAが使用されている(特許文献4参照)。
例えば、特許文献4に記載の塩化ビニル系重合体の製造方法では、分散安定剤には、ケン化度が75〜85mol%のPVAを使用し、分散助剤にはケン化度が20〜57mol%のPVAを使用している。
他にも特許文献5〜7にあるように、分散助剤の性能向上、例えば、塩化ビニル系樹脂粒子の空孔率向上のために、様々な提案がなされている。
しかし、特許文献4〜7に記載された分散助剤を使用した場合には、分散助剤を用いる本来の目的である空孔率は充分に改善されるが、分散助剤そのものの水溶性や水分散性が不足しているために、溶液や分散液として使用するためにはアルコール等の有機溶剤を併用しなければならない欠点があった。
このように、ケン化度が60mol%より低いPVAは水との親和性が低いため、水溶液、水性液として用いることができないという欠点がある。その欠点を補うために、特許文献8〜19のように、分子内にカルボン酸基、スルホン酸基、アミノ基などのイオン性基やポリオキシアルキレンなどのポリビニルアルコール以外の親水基を導入したケン化度の低いPVAを分散助剤として使用して、塩化ビニル樹脂を製造する方法が提案されている。
特開2002−003510号公報 特開2003−327607号公報 特開2003−238606号公報 特開2005−281680号公報 特開平04−85303号公報 特開2004−115821号公報 特開平04−93301号公報 特開平04−154810号公報 特開平05−345805号公報 特開平10−168128号公報 特開平4−154810号公報 特開平10−259213号公報 WO91/15518号公報 特開平9−77807号公報 特開平10−152508号公報 特開平9−100301号公報 特開平10−152508号公報 特開平9−183805号公報 特開2002−37807号公報
しかしながら、特許文献8〜19に記載された様なイオン性基を導入した分散助剤では、水溶性や水分散性は改善されているものの、懸濁重合時の緩衝剤の使用量、緩衝剤の投入時期、重合系内の酸素濃度等により重合系内のpH値の範囲(3〜8)が変化するためか、その特性(ポロシティの向上、ポロシティ分布の均一性、脱モノマー性や可塑剤吸収能の向上等)を十分発揮することができない場合があり、更には重合安定性が不良になったり、スケールの付着等が著しくなったりするなどの懸念があった。
また、イオン性基を導入して水溶性や水分散性を改善した分散助剤は、10質量%以下の含有量の水性液を得ることはできるが、20質量%以上の含有量では分散助剤の凝集が起こり水性液を得ることができないという問題があった。
また、近年、環境に対する配慮や作業性の向上の観点から、アルコール類などの有機溶剤を使用しなくとも、水単独で水性液とすることが可能であり、さらに、高濃度の水性液を得ることができ、かつ重合安定性に優れ、本来の使用目的である塩化ビニル系樹脂の空孔率を高める効果に優れた分散助剤の開発が望まれていた。
本発明は、良好な安定性や取り扱いやすい粘度を有した高濃度の水性液を得ることができ、ビニル系化合物の重合に有用な分散助剤を提供することを目的とする。
また、本発明は、ビニル系化合物の懸濁重合に用いた際には、幅広い重合条件で安定的に良好な重合物(ビニル系樹脂)が得られる分散助剤を提供することを目的とする。
特に、本発明は、高い空孔率を持ち、可塑剤吸収性等に優れたビニル系樹脂(特に、塩化ビニル系樹脂)を得ることができる懸濁重合用分散助剤を提供することを目的とする。
また、本発明は、該分散助剤を用いることで、可塑剤吸収性等に優れたビニル系樹脂の製造方法を提供することをも目的とする。
重合度の大きいPVAを含む水性液は、粘度が高いため、高濃度のPVA水性液とすると特に高粘度になり取り扱い性が悪いが、本発明者らは、重合度の大きいPVAに含まれる疎水性の脂肪酸基(例えば、酢酸基等)のランダム性を高くすることにより、疎水性基がPVA分子鎖中にランダムに配置されることによってPVA分子同士の相互作用が小さくなりPVAの水溶性や水分散性が向上するためか、重合度の大きいPVAを高濃度で含む水性液であっても、粘度が低く取り扱い性に優れた水性液とできることを見出した。
また、重合度の小さいPVAは、ビニル系モノマーの分散能力が低いが、本発明者らは、重合度の小さいPVAに含まれる疎水性の脂肪酸基(例えば、酢酸基等)のブロック性を高くすることにより、PVA分子鎖中において疎水性ブロック(すなわち、脂肪酸基を含む構成単位によって形成されるブロック)と親水性ブロック(すなわち、ヒドロキシ基を含む構成単位によって形成されるブロック)の各ブロック鎖長が長くなり、PVAの界面活性力が向上するためか、重合度の小さいPVAであっても、十分なビニル系モノマー分散能力が得られることを見出した。
詳細には、本発明者らは、重合度の大きいPVAを使用する場合は、PVAに含まれる脂肪酸基のランダム性を高くする(すなわち、脂肪酸基のブロックキャラクターを1に近い値とする)ことにより、重合度の大きいPVAを高濃度で含む水性液であっても、水性液の粘度を低くできることを見出した。
一方で、本発明者らは、重合度の小さいPVAを使用する場合は、PVAに含まれる脂肪酸基のブロック性を高くする(すなわち、脂肪酸基のブロックキャラクターを0に近い値とする)ことにより、重合度の小さいPVAを含む水性液であっても、十分なビニル系モノマーの分散能力が得られることを見出した。
そして、本発明者らは、これらのことから、PVAの重合度やPVAに含まれる脂肪酸基のブロックキャラクターを単に規定するのではなくこれらの比を一定の範囲とすることにより、取り扱い性やビニル系モノマーの分散能力に優れた水性液が得られることを見出した。
すなわち、本発明者らは、上記課題を解決するためにさらに鋭意研究を重ねた結果、ケン化度が45〜65モル%のポリビニルアルコール系重合体で、該重合体の重合度とブロックキャラクターのとの関係を以下の(式1)の範囲に調整すれば、ポリビニルアルコール系重合体を30〜50質量%含有できる高濃度の水性液を得ることができ、該ポリビニルアルコール系重合体を使用して塩化ビニル単量体を懸濁重合すると、空孔率に優れた塩化ビニル系樹脂を得ることができることを見出し、さらに研究を重ねて本発明を完成した。
(式1)250≦X/Y≦400
(ここで、X:ポリビニルアルコール系重合体の重合度、Y:ポリビニルアルコール系重合体のブロックキャラクターを示す。)
即ち、本発明は、以下の分散助剤等に関する。
[1]ケン化度が45〜65モル%であり、以下の(式1)を満足するポリビニルアルコール系重合体であるビニル系化合物の懸濁重合用分散助剤。
(式1)250≦X/Y≦400
(ここで、X:ポリビニルアルコール系重合体の重合度、Y:ポリビニルアルコール系重合体のブロックキャラクターを示す。)
[2]重合度が160〜400、ブロックキャラクターが0.6〜0.9、ケン化度が45〜65モル%であるポリビニルアルコール系重合体である、ビニル系化合物の懸濁重合用分散助剤。
[3]水溶性高分子とともに重合系に存在させて懸濁重合させるための前記[1]又は[2]記載の懸濁重合用分散助剤。
[4]水溶性高分子が、ケン化度65〜90モル%のポリビニルアルコールである前記[3]記載の懸濁重合用分散助剤。
[5]塩化ビニルを含むビニル系化合物の重合に用いるための前記[1]〜[4]のいずれかに記載の懸濁重合用分散助剤。
[6]前記[1]〜[5]のいずれかに記載の懸濁重合用分散助剤を含有する水性液であって、前記ポリビニルアルコール系重合体を30〜50質量%含有する水性液。
[7]前記[1]〜[5]のいずれかに記載の懸濁重合用分散助剤存在下で、ビニル系化合物を水性溶媒中で懸濁重合させるビニル系樹脂の製造方法。
[8]さらに、水溶性高分子の存在下で懸濁重合させる前記[7]記載の製造方法。
[9]水溶性高分子が、ケン化度65〜90モル%のポリビニルアルコールである前記[8]記載の製造方法。
[10]ビニル系化合物が塩化ビニルを含む前記[7]〜[9]のいずれかに記載の製造方法。
本発明は、良好な安定性や取り扱いやすい粘度を有した高濃度の水性液を得ることができ、ビニル系化合物の懸濁重合に有用な分散助剤を提供することができる。良好な安定性や取り扱いやすい粘度を有する水性液とすることにより、分散助剤の性能(例えば、懸濁重合によって得られるビニル系樹脂の空孔率や可塑剤吸収量の向上)を十分に発揮することができる。
また、本発明によれば、有機溶媒を使用しなくても高濃度の水性液を得ることができ、ビニル系化合物の懸濁重合に有用な分散助剤を提供することができる。
また、本発明によれば、ビニル系化合物の懸濁重合に用いた際には、幅広い重合条件で安定的に良好な重合物が得られる分散助剤を提供することができる。
特に、本発明によれば、高い空孔率を持ち、可塑剤吸収性、脱モノマー性等に優れたビニル系樹脂(特に、塩化ビニル系樹脂)を得ることができる懸濁重合用の分散助剤を提供することができる。
また、本発明によれば、該分散助剤を用いることで、可塑剤吸収性等に優れたビニル系樹脂の製造方法を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
本発明のビニル系化合物(又は、ビニル系モノマー、ビニル系単量体ともいう)の懸濁重合用分散助剤(添加剤、分散剤)は、特定のポリビニルアルコール系重合体である。
[ポリビニルアルコール系重合体]
本発明の分散助剤に使用されるポリビニルアルコール系重合体(以下、ポリビニルアルコール系重合体をPVA系重合体と略記することがある)としては、例えば、ビニルエステル系重合体をケン化反応することにより得られるPVA系重合体(A)を使用することができる。
該ビニルエステル系重合体は、ビニルエステル系単量体を重合することにより得ることができる。重合方法としては、特に限定されず、従来公知の方法に従って良いが、例えば、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等が挙げられ、重合度の制御や重合後に行うケン化反応のこと等を考慮すると、メタノールを溶媒とした溶液重合、あるいは、水又は水及びメタノールを分散媒とする懸濁重合が好ましいが、これらに限定されるものではない。
前記重合に用いることができるビニルエステル系単量体としては、特に限定されないが、例えば、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、カプリル酸ビニル(オクタン酸ビニル)、バーサチック酸ビニル等の脂肪酸ビニルエステル等を挙げることができ、これらのビニルエステル系単量体は1種又は2種以上使用することができる。これらの中でも酢酸ビニルが工業的観点から好ましい。
ビニルエステル系単量体の重合に際して、本発明の効果を奏する限り、ビニルエステル系単量体を他の単量体と共重合させても差し支えない。
使用しうる他の単量体としては、特に限定されないが、例えば、α−オレフィン(例えば、エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブチレン等)、アクリル酸及びその塩、アクリル酸エステル類[例えば、アクリル酸アルキルエステル(例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシル等のアクリル酸C1−20アルキル等)]、メタクリル酸及びその塩、メタクリル酸エステル類[例えば、メタクリル酸アルキルエステル(例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシル等のメタクリル酸C1−20アルキル等)]、アクリルアミド、アクリルアミド誘導体(例えば、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミン及びその塩又はその4級塩、N−メチロールアクリルアミド等)、メタクリルアミド、メタクリルアミド誘導体(例えば、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミン及びその塩又はその4級塩、N−メチロールメタクリルアミド等)、ビニルエーテル類(例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のC1−20アルキルビニルエーテル等)、ニトリル類(例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、ハロゲン化ビニル類(例えば、塩化ビニル、フッ化ビニル等)、ハロゲン化ビニリデン類(例えば、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等)、アリル化合物(例えば、酢酸アリル、塩化アリル等)、不飽和ジカルボン酸(例えば、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等)及びその塩又はそのエステル、ビニルシリル化合物(例えば、ビニルトリメトキシシラン等)、脂肪酸アルキルエステル(例えば、酢酸イソプロペニル等)等が挙げられる。これらの他の単量体は1種又は2種以上使用することができる。
ただし、本発明の趣旨からするとカルボン酸、スルホン酸などのイオン性を持つ単量体は共重合しない方が好ましい。
ビニルエステル系単量体の含有量は、ビニルエステル系単量体及び他の単量体の総量に対して、例えば60〜100質量%等である。
前記他の単量体を使用する場合、他の単量体の含有量は、ビニルエステル系単量体及び他の単量体の総量に対して、例えば0.1〜20質量%等である。
また、ビニルエステル系単量体の重合に際して、得られるビニルエステル系重合体の重合度を調節すること等を目的として、連鎖移動剤を共存させても差し支えない。
連鎖移動剤としては、特に限定されないが、例えば、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ベンズアルデヒド等のアルデヒド類;アセトン、メチルエチルケトン、ヘキサノン、シクロヘキサノン等のケトン類;2−ヒドロキシエタンチオール、ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類;四塩化炭素、トリクロロエチレン、パークロロエチレン等の有機ハロゲン類が挙げられ、中でもアルデヒド類及びケトン類が好適に用いられる。これらの連鎖移動剤は1種又は2種以上使用することができる。
連鎖移動剤の添加量は、添加する連鎖移動剤の連鎖移動定数及び目的とするビニルエステル系重合体の重合度に応じて決定されるが、一般にビニルエステル系単量体に対して0.1〜10質量%が望ましい。
上述のようにして得られたビニルエステル系重合体をケン化反応することにより、PVA系重合体(A)を製造することができる。
ビニルエステル系重合体のケン化反応方法は、特に限定されず、従来公知の方法に従ってよいが、例えば、従来公知の水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド等の塩基性触媒、又は塩酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸等の酸性触媒を用いた、加アルコール分解ないし加水分解反応が適用できる。
ケン化反応に用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール等のアルコール類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。
PVA系重合体(A)のケン化度については、JIS K 6726で規定されているPVAのケン化度測定方法により求められるPVA系重合体のケン化度が、通常45モル%〜65モル%、好ましくは45モル%〜60モル%である。ケン化度が45モル%以上であれば、PVA系重合体を含む水性液の粘度が高くなりすぎず、また、水性液の安定性が優れる。ケン化度が60モル%以下であれば、ビニル系化合物の懸濁重合の安定性が優れる。
また、本発明に用いられるPVA重合体は、通常、以下の(式1)を満足する。
(式1)250≦X/Y≦400
(ここで、X:ポリビニルアルコール系重合体の重合度、Y:ポリビニルアルコール系重合体のブロックキャラクターを示す。)
(式1)の値が、400以下であれば、PVA系重合体を含む水性液の流動性が向上したり、水性液の安定性が優れる。
また、(式1)の値が、250以上であれば、ビニル系化合物の懸濁重合の安定性が優れ、また、高空孔率のビニル系樹脂[特に、塩化ビニル系樹脂(以下、PVC系樹脂ということがある)]を得やすい。
式1において、重合度Xは、JIS K 6726で規定されているPVAの平均重合度測定方法により求められる重合度である。
PVA系重合体(A)の重合度は、特に限定されないが、好ましくは160〜400、より好ましくは180〜350である。
PVA系重合体(A)の重合度が160以上であれば、ビニル系化合物の懸濁重合の安定性が優れ、重合度が400以下であれば、ビニル系化合物の懸濁重合時にPVA系重合体(A)の析出が起こることを防止でき、分散助剤としての本来の性能を発現しやすい。
また、ブロックキャラクターYは、PVA系重合体(A)の残存脂肪酸基のブロックキャラクター(η)であり、PVA系重合体の残存脂肪酸基の分布を示す指標であり、13C−NMRスペクトル中のメチレン領域に現れる3本のピークの解析により求められる。前記の3本のピークは、(OH、OH)、(OH、OR)、(OR、OR)に相当する3個の2単位連鎖構造に相当し、その吸収強度は3個の構造に比例している。ブロックキャラクター(η)は、下記(式2)で表される。尚、残存脂肪酸基(OR基)は、脂肪酸ビニルエステル単位(すなわち、脂肪酸ビニルエステル由来の単位)に含まれる脂肪酸基であり、例えば、脂肪酸ビニルエステルとして酢酸ビニルが使用された場合は、アセトキシ基(OAc基)を示す。
(式2) η=(OH、OR)/[2(OH)(OR)]
〔式中、(OH、OR)は、OH基とOR基が隣接する2単位連鎖構造(OH、OR)の割合を表し、13C−NMRスペクトルのメチレン炭素の強度比より求められる。また、式中、(OH)は、ケン化度を表し、(OR)は、残存脂肪酸基の割合を表し、それぞれモル分率で表される。〕
尚、(式2)において、(OH、OR)とは、(OH、OH)、(OH、OR)及び(OR、OR)の総量に対する、(OH、OR)の割合を表す。
また、(OH)、(OR)とは、PVA系重合体(A)に含まれる(OH)及び(OR)の総量に対する(OH)、(OR)の割合を表す。
このブロックキャラクターは、通常0〜2の値をとり、0に近いほど残存脂肪酸基分布のブロック性が高いことを示し、1に近いほどランダム性が高いことを示し、2に近いほど交互性が高いことを示す。残存脂肪酸基のブロック性は、塩化ビニルモノマー等のビニル系単量体の分散性に影響を与える。尚、このブロックキャラクターに関しては、「ポバール」、高分子刊行会(1981年発行)の第246〜249頁及びMacromolecules,10,532(1977年)にその測定法等が詳述されている。
PVA系重合体(A)のブロックキャラクターは、特に限定されないが、0.6〜0.9であることが好ましく、さらに好ましくは0.6〜0.8である。
ブロックキャラクターが0.9以下であれば、得られるPVC系樹脂等のビニル系樹脂の空孔性が向上する。ブロックキャラクターが0.6以上であれば、PVA系重合体を含む水性液の流動性が向上し、水性液の取扱い性が良好となる。
本発明において、PVA系重合体(A)の残存脂肪酸基のブロックキャラクターは、ビニルエステル系重合体をケン化してPVA系重合体(A)を製造する際に使用するケン化触媒及び溶媒の種類等により調整できる。
0.6以上のブロックキャラクターを得るためには、硫酸、塩酸、パラトルエンスルホン酸等の酸性触媒を用いて酸ケン化する方法が簡便である。
また、得られたPVA系重合体(A)を加熱しブロックキャラクターを増加させることによって調整する方法もある。
本発明において、特に好ましいPVA系重合体(A)には、重合度が160〜400、ブロックキャラクターが0.6〜0.9、ケン化度が45〜65モル%であるPVA系重合体や、重合度が180〜350、ブロックキャラクターが0.6〜0.8、ケン化度が45〜60モル%であるPVA系重合体等が含まれる。
[水性液]
本発明の分散助剤は、そのまま使用してもよいし、水性液として使用してもよい。
水性液とする場合は、上記のポリビニルアルコール系重合体(A)を分散質として、水性溶媒中に分散又は溶解させればよい。
水性液に使用される水性溶媒は、特に限定されないが、通常は水である。
水性溶媒には、放置安定性向上の観点から水溶性の有機溶媒などが含まれていてもよい。
水溶性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノールなどのアルコール類;酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類;エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコール誘導体;などが挙げられる。なお、これら有機溶媒は、1種であってもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
水性液におけるPVA系重合体の含有量は、特に限定されず、水性液に対して、例えば30〜50質量%である。該PVA系重合体の割合が30質量%以上であれば、水性液の放置安定性が向上し、50質量%以下であれば、水性液の流動性が優れ、また、水性液がゲル状となることを防止しやすい。
水性液において、水性溶媒中の水の含有量は、例えば50〜100質量%である。
水性溶媒が水溶性有機溶媒を含む場合は、環境に対する配慮や作業性の向上の観点から、水溶性有機溶媒の含有量は、水性液に対して3.0質量%以下(例えば、0.1〜3.0質量%)であることが好ましい。
かかる水性液を得る方法としては、特に限定されず、ビニルエステル系重合体をケン化する際のアルコールをスチーム等の吹き込みにより水性溶媒に置換する方法、撹拌下で水性溶媒中へポリビニルアルコール系重合体(A)を投入し、引き続き撹拌する方法、更に加熱を併用する方法等が挙げられる。
本発明の水性液は、ポリビニルアルコール系重合体(A)の含有量が30〜50質量%である場合でも、有機溶媒や分散剤や乳化剤を使用しなくても1年以上の良好な放置安定性(例えば、常温での放置安定性)が得られる。
本発明の分散助剤を含む水性液の粘度は、例えば、B型回転粘度計を用いて測定した20℃における粘度が、取り扱い性に優れる等の観点から、例えば1〜10000mPa・sである。
[ビニル系樹脂の製造方法]
本発明の分散助剤を用いたビニル系化合物の懸濁重合法について説明する。
本発明の分散助剤存在下で、ビニル系化合物を懸濁重合させることにより、ビニル系樹脂を製造することができる。
懸濁重合は、通常、水性溶媒に、本発明の分散助剤を添加し、ビニル系モノマーを分散させて行う。尚、懸濁重合は、通常、重合開始剤の存在下で行う。水性溶媒は、通常は水であり、加熱された水であってもよい。また、懸濁重合は、重合系内に分散安定剤を存在させて行ってもよい。
懸濁重合の対象となるビニル系化合物(又は、ビニル系モノマー、ビニル系単量体)としては、ビニル系化合物であれば特に限定されない。
ビニル系化合物としては、例えば、塩化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、ビニルエーテル、ビニルエステル(例えば、酢酸ビニル、安息香酸ビニル等)、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル(例えば、(メタ)クリル酸アルキルエステル等)、スチレン系モノマー(例えば、スチレン等)、不飽和ジカルボン酸(例えば、マレイン酸等)又はその無水物、オレフィン(例えば、エチレン、プロピレン等)等が挙げられるが、少なくとも塩化ビニルを含むことが好ましい。これらビニル系モノマーは、1種又は2種以上を使用することができる。
塩化ビニルを含むビニル系化合物を懸濁重合させることにより、塩化ビニル系樹脂を得ることができる。塩化ビニル系樹脂の製造においては、使用するビニル系化合物総量に対して、50〜100モル%(又は50〜100質量%)が塩化ビニルであることが好ましい。
分散安定剤としては、例えば、水溶性高分子(例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等)等が挙げられる。
これらの中でも、PVAが好ましい。PVAとしては、PVA系重合体(A)の範疇に属さないPVAであればよく、このようなPVAのケン化度は、65〜90モル%であってもよい。中でも、ケン化度65〜90モル%のポリビニルアルコールや、重合度500〜3500のポリビニルアルコールが好適に用いられる。
分散安定剤の添加量は分散安定剤の種類等によって一概に言えないが、通常はビニル系単量体100質量部に対して5質量部以下であり、0.005〜1質量部が好ましく、0.01〜0.5質量部がさらに好ましい。
ビニル系単量体の懸濁重合において、本発明の分散助剤の使用量は、特に制限はないが、ビニル系単量体100質量部に対して、分散助剤中に含有されるPVA系重合体の質量が、通常は1質量部以下(例えば、0.001〜1質量部)であり、0.001〜0.5質量部が好ましく、0.005〜0.2質量部がさらに好ましい。
分散安定剤と本発明の分散助剤に含有されるPVA系重合体との添加量の質量比は、分散安定剤の種類等によって一概に言えないが、90/10〜30/70の範囲が好ましく、特に80/20〜50/50が好ましい。
尚、該分散安定剤及び分散助剤は、重合の初期に重合系内に一括仕込みしても、重合の途中で分割して仕込んでもよい。
本発明の分散助剤は、粉体の状態でビニル系単量体の重合系内に添加してもよいし、水性液として(好ましくは、PVA系重合体30〜50質量%の水性液として)調製してから使用してもよい。また、本発明の分散助剤は、ビニル系単量体を重合系内に仕込む際又は仕込んだ後に重合系内に仕込んでもよいが、ビニル系単量体を重合系内に仕込む前に重合系内に仕込むことが好ましい。
また、重合開始剤は限定されないが、特に、油溶性であってよく、例えば、パーカーボネート化合物(例えば、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネート等)、パーオキシエステル化合物(例えば、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、α−クミルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルネオヘキサノエート、2,4,4−トリメチルペンチル−2−パーオキシ−2−ネオデカノエート等)、アゾ化合物[例えば、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビスイソブチロニトリル等]、パーオキシド化合物(例えば、ラウリルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、2,4,4−トリメチルペンチル−2−パーオキシフェノキシアセテート等)等が挙げられる。
重合開始剤の添加量は、ビニル単量体又はそれを含む単量体混合物100質量部に対して、0.02〜0.2質量部であることが好ましい。
更に、重合開始剤は、水性溶媒又は単量体を重合系内に仕込む前と仕込む後のどちらに添加してもよい。又は、予め水性エマルジョンとしてから重合槽に添加してもよい。
本発明の効果を阻害しない範囲において、カチオン系、アニオン系又はノニオン系の界面活性剤等を、懸濁重合の際に加えてもよい。
なお、本発明のビニル系樹脂の製造方法における種々の条件は、公知の技術を用いることができる。例えば、各原料化合物の仕込み方法、単量体と水性溶媒との仕込み比率、重合温度、重合転化率、攪拌回転数等の重合条件は、特に限定されない。また、必要に応じて、消泡剤、重合度調節剤、連鎖移動剤、酸化防止剤、耐電防止剤等の公知の各種添加剤を併用しても差し支えない。
[塩化ビニル系樹脂]
本発明には、特定の塩化ビニル系樹脂も含まれる。塩化ビニル系樹脂の製造方法は、特に限定されないが、通常、上記したビニル系化合物の懸濁重合により製造することができる。
塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニル系樹脂の用途により最適値は異なるが、塩化ビニル系樹脂の可塑剤として用いられるジオクチルフタレートを、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、通常10質量部以上、好ましくは13〜40質量部、より好ましくは15〜40質量部吸収し得る。可塑剤吸収量が高い方が塩化ビニル系樹脂成形物を得るときにフィッシュアイが少なくなるため好ましい。ただし、通常可塑剤吸収量が高くなると、嵩比重が低くなるので、パイプ用途や窓枠用途のような可塑剤をあまり多く必要としない硬質塩化ビニル系樹脂用途に用いられる場合は、可塑剤吸収量はあまり高い必要はなく10質量部以上等が好ましいが、シートやフィルム用途のような可塑剤を多く含有する必要がある軟質塩化ビニル系樹脂用途に用いられる場合は、可塑剤の吸収量が20質量部以上であることが好ましい。尚、分散助剤は主に可塑剤吸収量を高めるため用いられ、添加量の増減により可塑剤吸収量の高低を調整することができる。本発明の分散助剤は、硬質塩化ビニル系樹脂用途、軟質塩化ビニル系樹脂用途のどちらに用いてもよい。可塑剤吸収量の測定方法は、特に限定されず、例えば、後述の実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
塩化ビニル系樹脂の平均粒子径は、例えば100〜200μm、好ましくは110〜190μm、より好ましくは120〜180μmである。平均粒子径の測定方法は、特に限定されず、例えば、ロータップ式振動篩(JIS篩を使用)を用いて粒度分布を測定することにより、測定することができる。
塩化ビニル系樹脂の最大粒子径は、通常250μm以下である。塩化ビニル系樹脂は、JIS規格の#60篩を通過できない粒子の量が0.1質量%未満であることが好ましい。また、塩化ビニル系樹脂の粒度分布は、60〜250μmの範囲内にあることが好ましい。
また、塩化ビニル系樹脂は、JIS規格の#250篩を通過する粒子の量が0.1質量%未満であることが好ましい。
最大粒子径および粒度分布の測定方法は、特に限定されず、例えば、ロータップ式振動篩(JIS篩を使用)を用いた粒度分布の測定により、測定することができる。
塩化ビニル系樹脂の嵩比重(嵩密度)は、例えば0.35〜0.65g/ml、好ましくは0.4〜0.6g/ml、より好ましくは0.5〜0.6g/mlである。
嵩比重は、押出し速度が向上できるため高い方が好ましい。嵩比重は、JIS K 6721に従って測定することができる。
また、本発明の塩化ビニル系樹脂は、高い空孔率を持ち、脱モノマー性や可塑剤吸収性に優れ、フィッシュアイが発生しにくい等の優れた特性を持っている。
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳しく具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
なお、以下の実施例及び比較例において「%」及び「部」は、特にことわりのない限り、「質量%」及び「質量部」を意味する。
はじめに、本実施例におけるポリビニルアルコール系重合体(PVA系重合体)水性液の評価方法を、以下に示す。
(PVA系重合体水性液の特性評価)
得られたポリビニルアルコール系重合体水性液について、安定性、粘度、流動性を、それぞれ下記の方法によって確認、測定した。
a)安定性:水性液200gを200mlのトールビカーに入れ、20℃で一日間放置した後の状態を目視で観察した。○:均一(析出又は、相分離なし)、×:不均一(析出又は、相分離あり)
b)粘度:水性液の20℃における粘度を、B型回転粘度計を用いて測定した。
c)流動性:水性液の流動性を以下の基準に従って評価した。
○:粘度=10000mP・s以下、×:粘度=10000mP・s以上
次に、本実施例における塩化ビニル重合体(塩化ビニル樹脂)の評価方法を、以下に示す。
(塩化ビニル重合体の評価)
塩化ビニル重合体について、平均粒子径、粗大粒子含有量、嵩比重、可塑剤吸収性を、次のようにして評価した。
<平均粒子径、粗大粒子含有量>
ロータップ式振動篩(JIS篩を使用)により粒度分布を測定し、平均粒子径を求めた。尚、塩化ビニル重合体の平均粒子径は、100μm〜200μmの範囲が一般的である。
測定した粒子径分布より、60メッシュオン(すなわち、粒子径が250μm以上)の粗大粒子の含有量を%で表した。該含有量が小さいほど粗大粒子が少なくて粒度分布がシャープであり、重合安定性に優れていることを示す。尚、後述の表1において、該含有量は#60オンと示す。
<嵩比重>
JIS K 6721に準拠して測定した。嵩比重が大きいほど、押出し速度を向上でき、加工性が良いことを示す。
<可塑剤吸収性>
底にグラスファイバーを詰めた円筒状容器に得られた樹脂を入れ、過剰のジオクチルフタレート(以下、DOPと略記する)を加え、30分放置することによって樹脂にDOPを浸透させた後、3000rpmで遠心分離することによって余分なDOPを除去した後、樹脂の重量を測定して、重合体100質量%あたりのDOP吸収量を算出した。DOP吸収量が大きいほど、可塑剤吸収性がよく、成形加工性に優れることを示す。また、可塑剤吸収性が高いほど、塩化ビニル重合体の空孔率が高いことを示す。
<実施例1>
(PVA系重合体の合成)
攪拌機、コンデンサー、窒素ガス導入口及び開始剤投入口を備えた反応槽に、予め酢酸ビニル10質量部、メタノール67質量部及びアゾビスイソブチロニトリル0.02質量部を重合缶に仕込み、窒素置換後加熱して沸点まで昇温した。そして、反応液温度が60℃以上になったら、重合缶上部より、酢酸ビニル140質量部を、13時間かけて少しずつ連続的に滴下した。滴下が終了してから1時間後、重合率95%に達した時点で系を冷却し、重合を停止した。
次に、常法により未反応の酢酸ビニルを除去し、得られたポリ酢酸ビニルの50%メタノール溶液100質量部に、パラトルエンスルホン酸の50%メタノール溶液2質量部を加えてよく混合し、50℃でケン化反応を行い、水酸化ナトリウムの5質量%メタノール溶液4.5質量部を加え中和しケン化反応を停止し、PVA系重合体(A)の溶液を得た。得られた溶液を乾燥して、ケン化度55.0モル%、平均重合度(PA)210、ブロックキャラクター0.70、前述の式1より求められる値が300のPVA系重合体を得た。
(水性液の作成)
得られたPVA系重合体を溶質として40質量%含有するように、水中に投入し、80℃で1時間撹拌することにより溶解し、室温まで冷却することにより水性液を得た。得られた水性液の評価結果を表1に示す。
得られた水性液は、析出、相分離はなく安定で、粘度は、1380mPa・sであり、流動性は良好であった。
(塩化ビニルの懸濁重合)
内容積100リットルの重合機(耐圧オートクレーブ)に、塩化ビニル単量体100質量部に対して、部分ケン化ポリビニルアルコール(ケン化度80モル%、重合度2500)0.056質量部、部分ケン化ポリビニルアルコール(ケン化度72モル%、重合度800)0.014質量部を脱イオン水112.5質量部に溶解し仕込み、更に、上記で得られた本発明の水性液0.0625質量部(含有される分散助剤(PVA系重合体)換算で0.025質量部)、および、t−ブチルパーオキシネオデカノエート0.05質量部を投入した。
次に、重合機内を40mmHgまで脱気した後、塩化ビニル単量体を100質量部仕込み、攪拌を開始した。重合温度は57℃とし、重合終了までこの温度を保持した。
重合転化率が80%に達した時点で反応を終了し、重合機内の未反応単量体を回収した後、重合体スラリーを系外に取り出し、脱水乾燥し、塩化ビニル重合体を得た。塩化ビニル重合体の評価結果を表1に示す。
粗大粒子が無く、可塑剤吸収量が十分高い、高い空孔率を持った塩化ビニル樹脂(PVC樹脂)が得られた。
<実施例2〜9、比較例1〜5>
ケン化度、重合度、ブロックキャラクター、式1より求められる値が表1に示す値となるようにした以外は実施例1と同様にしてPVA系重合体を作製し、実施例1と同様の方法で表1に示されるPVA系重合体含有量の水性液を調製した。
さらに、その水性液を用いて、実施例1と同様の条件で(本発明の分散助剤の添加量が(PVA系重合体)換算で0.025質量部となるように水性液の仕込み量を調整し)、塩化ビニルの懸濁重合を行い、塩化ビニル樹脂を得た。
水性液の評価結果と得られた塩化ビニル樹脂の評価結果を表1に併せて示す。
<比較例6>
本発明のPVA系重合体を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行い、塩化ビニル樹脂を得た。
得られた塩化ビニル樹脂の評価結果を表1に併せて示す。
表1から、実施例は比較例に対して優れていることが判る。結果について下記の通り記す。
実施例2〜9:得られた水性液は、析出や相分離はなく安定で、流動性も良好であった。また、粗大粒子が無く、可塑剤吸収量が十分高い、高い空孔率を持ったPVC樹脂が得られた。
比較例1:式1より求められる値が400より大きいことから、水性液の流動性が著しく低かった。その結果、分散剤本来の性能が発揮できず、PVC樹脂の可塑剤吸収量が少し低くなり、平均粒子径が少し肥大化してしまった。
比較例2:式1より求められる値が400より大きいことから、水性液の流動性が著しく低かった。その結果、分散剤本来の性能が発揮できず、PVCの懸濁重合でPVC粒子がブロック化してしまい評価可能なPVC樹脂を得ることができなかった。
比較例3:式1より求められる値が250より小さいことから、塩化ビニルの懸濁重合の安定性が悪くなり、また、PVC樹脂は、平均粒子径が肥大化してしまい、空孔率が低く可塑剤吸収性が劣った。
比較例4:ケン化度が低すぎるため、水性液の安定性が悪く、水性液からPVA系重合体が析出してしまい、水性液を作製することができなかった。
比較例5:ケン化度が高すぎるため、さらに、式1より求められる値が400より大きいことから、PVC樹脂は、平均粒子径は肥大化し、空孔率が低く、可塑剤吸収量が低かった。
比較例6:本発明のPVA系重合体を用いなかったため、得られたPVC樹脂は空孔率が非常に低く、可塑剤吸収量が非常に低かった。
これらの結果の様に、実施例1〜9は、比較例1〜6に比べて、水性液の安定性、流動性に優れ、塩化ビニル系樹脂の空孔率が高く、結果として可塑剤吸収性が高く、一次分散剤への悪影響が少ないことから、塩化ビニル系樹脂の平均粒径が肥大化しない等の優れた特性を示すことがわかる。
本発明の分散助剤は、良好な安定性や取り扱いやすい粘度を有した高濃度の水性液を得ることができ、ビニル系化合物の懸濁重合に用いた際には、幅広い重合条件で安定的に良好な重合物が得られ、特に、高い空孔率を持ち、可塑剤吸収性、脱モノマー性等に優れたビニル系樹脂を得ることができるため、工業的に極めて有用である。

Claims (10)

  1. ケン化度が45〜65モル%であり、以下の(式1)を満足するポリビニルアルコール系重合体であるビニル系化合物の懸濁重合用分散助剤。
    (式1)250≦X/Y≦400
    (ここで、X:ポリビニルアルコール系重合体の重合度、Y:ポリビニルアルコール系重合体のブロックキャラクターを示す。)
  2. 重合度が160〜400、ブロックキャラクターが0.6〜0.9、ケン化度が45〜65モル%であるポリビニルアルコール系重合体である、ビニル系化合物の懸濁重合用分散助剤。
  3. 水溶性高分子とともに重合系に存在させて懸濁重合させるための請求項1又は2記載の懸濁重合用分散助剤。
  4. 水溶性高分子が、ケン化度65〜90モル%のポリビニルアルコールである請求項3記載の懸濁重合用分散助剤。
  5. 塩化ビニルを含むビニル系化合物の重合に用いるための請求項1〜4のいずれかに記載の懸濁重合用分散助剤。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の懸濁重合用分散助剤を含有する水性液であって、前記ポリビニルアルコール系重合体を30〜50質量%含有する水性液。
  7. 請求項1〜5のいずれかに記載の懸濁重合用分散助剤存在下で、ビニル系化合物を水性溶媒中で懸濁重合させるビニル系樹脂の製造方法。
  8. さらに、水溶性高分子の存在下で懸濁重合させる請求項7記載の製造方法。
  9. 水溶性高分子が、ケン化度65〜90モル%のポリビニルアルコールである請求項8記載の製造方法。
  10. ビニル系化合物が塩化ビニルを含む請求項7〜9のいずれかに記載の製造方法。
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