JP2020022966A - 懸濁重合用分散助剤およびその水性液、並びに、それらを用いるビニル系樹脂の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
その際使用される分散安定剤としては、塩化ビニルモノマーの分散性を安定化して、製造される塩化ビニル系樹脂の粒径を調節するために添加されるいわゆる「分散安定剤」と、製造される塩化ビニル系樹脂粒子中の空孔率(ポロシティ)を上げるために添加されるいわゆる「分散助剤」とがある。
例えば、特許文献4に記載の塩化ビニル系重合体の製造方法では、分散安定剤には、ケン化度が75〜85mol%のPVAを使用し、分散助剤にはケン化度が20〜57mol%のPVAを使用している。
他にも特許文献5〜7にあるように、分散助剤の性能向上、例えば、塩化ビニル系樹脂粒子の空孔率向上のために、様々な提案がなされている。
また、イオン性基を導入して水溶性や水分散性を改善した分散助剤は、10質量%以下の含有量の水性液を得ることはできるが、20質量%以上の含有量では分散助剤の凝集が起こり水性液を得ることができないという問題があった。
また、本発明は、ビニル系化合物の懸濁重合に用いた際には、幅広い重合条件で安定的に良好な重合物(ビニル系樹脂)が得られる分散助剤を提供することを目的とする。
特に、本発明は、高い空孔率を持ち、可塑剤吸収性等に優れたビニル系樹脂(特に、塩化ビニル系樹脂)を得ることができる懸濁重合用分散助剤を提供することを目的とする。
また、本発明は、該分散助剤を用いることで、可塑剤吸収性等に優れたビニル系樹脂の製造方法を提供することをも目的とする。
また、重合度の小さいPVAは、ビニル系モノマーの分散能力が低いが、本発明者らは、重合度の小さいPVAに含まれる疎水性の脂肪酸基(例えば、酢酸基等)のブロック性を高くすることにより、PVA分子鎖中において疎水性ブロック(すなわち、脂肪酸基を含む構成単位によって形成されるブロック)と親水性ブロック(すなわち、ヒドロキシ基を含む構成単位によって形成されるブロック)の各ブロック鎖長が長くなり、PVAの界面活性力が向上するためか、重合度の小さいPVAであっても、十分なビニル系モノマー分散能力が得られることを見出した。
一方で、本発明者らは、重合度の小さいPVAを使用する場合は、PVAに含まれる脂肪酸基のブロック性を高くする(すなわち、脂肪酸基のブロックキャラクターを0に近い値とする)ことにより、重合度の小さいPVAを含む水性液であっても、十分なビニル系モノマーの分散能力が得られることを見出した。
(式1)250≦X/Y≦400
(ここで、X:ポリビニルアルコール系重合体の重合度、Y:ポリビニルアルコール系重合体のブロックキャラクターを示す。)
[1]ケン化度が45〜65モル%であり、以下の(式1)を満足するポリビニルアルコール系重合体であるビニル系化合物の懸濁重合用分散助剤。
(式1)250≦X/Y≦400
(ここで、X:ポリビニルアルコール系重合体の重合度、Y:ポリビニルアルコール系重合体のブロックキャラクターを示す。)
[2]重合度が160〜400、ブロックキャラクターが0.6〜0.9、ケン化度が45〜65モル%であるポリビニルアルコール系重合体である、ビニル系化合物の懸濁重合用分散助剤。
[3]水溶性高分子とともに重合系に存在させて懸濁重合させるための前記[1]又は[2]記載の懸濁重合用分散助剤。
[4]水溶性高分子が、ケン化度65〜90モル%のポリビニルアルコールである前記[3]記載の懸濁重合用分散助剤。
[5]塩化ビニルを含むビニル系化合物の重合に用いるための前記[1]〜[4]のいずれかに記載の懸濁重合用分散助剤。
[6]前記[1]〜[5]のいずれかに記載の懸濁重合用分散助剤を含有する水性液であって、前記ポリビニルアルコール系重合体を30〜50質量%含有する水性液。
[7]前記[1]〜[5]のいずれかに記載の懸濁重合用分散助剤存在下で、ビニル系化合物を水性溶媒中で懸濁重合させるビニル系樹脂の製造方法。
[8]さらに、水溶性高分子の存在下で懸濁重合させる前記[7]記載の製造方法。
[9]水溶性高分子が、ケン化度65〜90モル%のポリビニルアルコールである前記[8]記載の製造方法。
[10]ビニル系化合物が塩化ビニルを含む前記[7]〜[9]のいずれかに記載の製造方法。
また、本発明によれば、有機溶媒を使用しなくても高濃度の水性液を得ることができ、ビニル系化合物の懸濁重合に有用な分散助剤を提供することができる。
また、本発明によれば、ビニル系化合物の懸濁重合に用いた際には、幅広い重合条件で安定的に良好な重合物が得られる分散助剤を提供することができる。
特に、本発明によれば、高い空孔率を持ち、可塑剤吸収性、脱モノマー性等に優れたビニル系樹脂(特に、塩化ビニル系樹脂)を得ることができる懸濁重合用の分散助剤を提供することができる。
また、本発明によれば、該分散助剤を用いることで、可塑剤吸収性等に優れたビニル系樹脂の製造方法を提供することができる。
本発明のビニル系化合物(又は、ビニル系モノマー、ビニル系単量体ともいう)の懸濁重合用分散助剤(添加剤、分散剤)は、特定のポリビニルアルコール系重合体である。
本発明の分散助剤に使用されるポリビニルアルコール系重合体(以下、ポリビニルアルコール系重合体をPVA系重合体と略記することがある)としては、例えば、ビニルエステル系重合体をケン化反応することにより得られるPVA系重合体(A)を使用することができる。
該ビニルエステル系重合体は、ビニルエステル系単量体を重合することにより得ることができる。重合方法としては、特に限定されず、従来公知の方法に従って良いが、例えば、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等が挙げられ、重合度の制御や重合後に行うケン化反応のこと等を考慮すると、メタノールを溶媒とした溶液重合、あるいは、水又は水及びメタノールを分散媒とする懸濁重合が好ましいが、これらに限定されるものではない。
使用しうる他の単量体としては、特に限定されないが、例えば、α−オレフィン(例えば、エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブチレン等)、アクリル酸及びその塩、アクリル酸エステル類[例えば、アクリル酸アルキルエステル(例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシル等のアクリル酸C1−20アルキル等)]、メタクリル酸及びその塩、メタクリル酸エステル類[例えば、メタクリル酸アルキルエステル(例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシル等のメタクリル酸C1−20アルキル等)]、アクリルアミド、アクリルアミド誘導体(例えば、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミン及びその塩又はその4級塩、N−メチロールアクリルアミド等)、メタクリルアミド、メタクリルアミド誘導体(例えば、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミン及びその塩又はその4級塩、N−メチロールメタクリルアミド等)、ビニルエーテル類(例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のC1−20アルキルビニルエーテル等)、ニトリル類(例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、ハロゲン化ビニル類(例えば、塩化ビニル、フッ化ビニル等)、ハロゲン化ビニリデン類(例えば、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等)、アリル化合物(例えば、酢酸アリル、塩化アリル等)、不飽和ジカルボン酸(例えば、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等)及びその塩又はそのエステル、ビニルシリル化合物(例えば、ビニルトリメトキシシラン等)、脂肪酸アルキルエステル(例えば、酢酸イソプロペニル等)等が挙げられる。これらの他の単量体は1種又は2種以上使用することができる。
ただし、本発明の趣旨からするとカルボン酸、スルホン酸などのイオン性を持つ単量体は共重合しない方が好ましい。
連鎖移動剤としては、特に限定されないが、例えば、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ベンズアルデヒド等のアルデヒド類;アセトン、メチルエチルケトン、ヘキサノン、シクロヘキサノン等のケトン類;2−ヒドロキシエタンチオール、ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類;四塩化炭素、トリクロロエチレン、パークロロエチレン等の有機ハロゲン類が挙げられ、中でもアルデヒド類及びケトン類が好適に用いられる。これらの連鎖移動剤は1種又は2種以上使用することができる。
連鎖移動剤の添加量は、添加する連鎖移動剤の連鎖移動定数及び目的とするビニルエステル系重合体の重合度に応じて決定されるが、一般にビニルエステル系単量体に対して0.1〜10質量%が望ましい。
ビニルエステル系重合体のケン化反応方法は、特に限定されず、従来公知の方法に従ってよいが、例えば、従来公知の水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド等の塩基性触媒、又は塩酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸等の酸性触媒を用いた、加アルコール分解ないし加水分解反応が適用できる。
ケン化反応に用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール等のアルコール類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。
(式1)250≦X/Y≦400
(ここで、X:ポリビニルアルコール系重合体の重合度、Y:ポリビニルアルコール系重合体のブロックキャラクターを示す。)
また、(式1)の値が、250以上であれば、ビニル系化合物の懸濁重合の安定性が優れ、また、高空孔率のビニル系樹脂[特に、塩化ビニル系樹脂(以下、PVC系樹脂ということがある)]を得やすい。
PVA系重合体(A)の重合度は、特に限定されないが、好ましくは160〜400、より好ましくは180〜350である。
PVA系重合体(A)の重合度が160以上であれば、ビニル系化合物の懸濁重合の安定性が優れ、重合度が400以下であれば、ビニル系化合物の懸濁重合時にPVA系重合体(A)の析出が起こることを防止でき、分散助剤としての本来の性能を発現しやすい。
〔式中、(OH、OR)は、OH基とOR基が隣接する2単位連鎖構造(OH、OR)の割合を表し、13C−NMRスペクトルのメチレン炭素の強度比より求められる。また、式中、(OH)は、ケン化度を表し、(OR)は、残存脂肪酸基の割合を表し、それぞれモル分率で表される。〕
また、(OH)、(OR)とは、PVA系重合体(A)に含まれる(OH)及び(OR)の総量に対する(OH)、(OR)の割合を表す。
ブロックキャラクターが0.9以下であれば、得られるPVC系樹脂等のビニル系樹脂の空孔性が向上する。ブロックキャラクターが0.6以上であれば、PVA系重合体を含む水性液の流動性が向上し、水性液の取扱い性が良好となる。
0.6以上のブロックキャラクターを得るためには、硫酸、塩酸、パラトルエンスルホン酸等の酸性触媒を用いて酸ケン化する方法が簡便である。
また、得られたPVA系重合体(A)を加熱しブロックキャラクターを増加させることによって調整する方法もある。
本発明の分散助剤は、そのまま使用してもよいし、水性液として使用してもよい。
水性液とする場合は、上記のポリビニルアルコール系重合体(A)を分散質として、水性溶媒中に分散又は溶解させればよい。
水性溶媒には、放置安定性向上の観点から水溶性の有機溶媒などが含まれていてもよい。
水溶性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノールなどのアルコール類;酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類;エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコール誘導体;などが挙げられる。なお、これら有機溶媒は、1種であってもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
水性溶媒が水溶性有機溶媒を含む場合は、環境に対する配慮や作業性の向上の観点から、水溶性有機溶媒の含有量は、水性液に対して3.0質量%以下(例えば、0.1〜3.0質量%)であることが好ましい。
本発明の水性液は、ポリビニルアルコール系重合体(A)の含有量が30〜50質量%である場合でも、有機溶媒や分散剤や乳化剤を使用しなくても1年以上の良好な放置安定性(例えば、常温での放置安定性)が得られる。
本発明の分散助剤を用いたビニル系化合物の懸濁重合法について説明する。
本発明の分散助剤存在下で、ビニル系化合物を懸濁重合させることにより、ビニル系樹脂を製造することができる。
ビニル系化合物としては、例えば、塩化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、ビニルエーテル、ビニルエステル(例えば、酢酸ビニル、安息香酸ビニル等)、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル(例えば、(メタ)クリル酸アルキルエステル等)、スチレン系モノマー(例えば、スチレン等)、不飽和ジカルボン酸(例えば、マレイン酸等)又はその無水物、オレフィン(例えば、エチレン、プロピレン等)等が挙げられるが、少なくとも塩化ビニルを含むことが好ましい。これらビニル系モノマーは、1種又は2種以上を使用することができる。
これらの中でも、PVAが好ましい。PVAとしては、PVA系重合体(A)の範疇に属さないPVAであればよく、このようなPVAのケン化度は、65〜90モル%であってもよい。中でも、ケン化度65〜90モル%のポリビニルアルコールや、重合度500〜3500のポリビニルアルコールが好適に用いられる。
尚、該分散安定剤及び分散助剤は、重合の初期に重合系内に一括仕込みしても、重合の途中で分割して仕込んでもよい。
更に、重合開始剤は、水性溶媒又は単量体を重合系内に仕込む前と仕込む後のどちらに添加してもよい。又は、予め水性エマルジョンとしてから重合槽に添加してもよい。
本発明には、特定の塩化ビニル系樹脂も含まれる。塩化ビニル系樹脂の製造方法は、特に限定されないが、通常、上記したビニル系化合物の懸濁重合により製造することができる。
また、塩化ビニル系樹脂は、JIS規格の#250篩を通過する粒子の量が0.1質量%未満であることが好ましい。
最大粒子径および粒度分布の測定方法は、特に限定されず、例えば、ロータップ式振動篩(JIS篩を使用)を用いた粒度分布の測定により、測定することができる。
嵩比重は、押出し速度が向上できるため高い方が好ましい。嵩比重は、JIS K 6721に従って測定することができる。
なお、以下の実施例及び比較例において「%」及び「部」は、特にことわりのない限り、「質量%」及び「質量部」を意味する。
(PVA系重合体水性液の特性評価)
得られたポリビニルアルコール系重合体水性液について、安定性、粘度、流動性を、それぞれ下記の方法によって確認、測定した。
a)安定性:水性液200gを200mlのトールビカーに入れ、20℃で一日間放置した後の状態を目視で観察した。○:均一(析出又は、相分離なし)、×:不均一(析出又は、相分離あり)
b)粘度:水性液の20℃における粘度を、B型回転粘度計を用いて測定した。
c)流動性:水性液の流動性を以下の基準に従って評価した。
○:粘度=10000mP・s以下、×:粘度=10000mP・s以上
(塩化ビニル重合体の評価)
塩化ビニル重合体について、平均粒子径、粗大粒子含有量、嵩比重、可塑剤吸収性を、次のようにして評価した。
ロータップ式振動篩(JIS篩を使用)により粒度分布を測定し、平均粒子径を求めた。尚、塩化ビニル重合体の平均粒子径は、100μm〜200μmの範囲が一般的である。
測定した粒子径分布より、60メッシュオン(すなわち、粒子径が250μm以上)の粗大粒子の含有量を%で表した。該含有量が小さいほど粗大粒子が少なくて粒度分布がシャープであり、重合安定性に優れていることを示す。尚、後述の表1において、該含有量は#60オンと示す。
JIS K 6721に準拠して測定した。嵩比重が大きいほど、押出し速度を向上でき、加工性が良いことを示す。
底にグラスファイバーを詰めた円筒状容器に得られた樹脂を入れ、過剰のジオクチルフタレート(以下、DOPと略記する)を加え、30分放置することによって樹脂にDOPを浸透させた後、3000rpmで遠心分離することによって余分なDOPを除去した後、樹脂の重量を測定して、重合体100質量%あたりのDOP吸収量を算出した。DOP吸収量が大きいほど、可塑剤吸収性がよく、成形加工性に優れることを示す。また、可塑剤吸収性が高いほど、塩化ビニル重合体の空孔率が高いことを示す。
(PVA系重合体の合成)
攪拌機、コンデンサー、窒素ガス導入口及び開始剤投入口を備えた反応槽に、予め酢酸ビニル10質量部、メタノール67質量部及びアゾビスイソブチロニトリル0.02質量部を重合缶に仕込み、窒素置換後加熱して沸点まで昇温した。そして、反応液温度が60℃以上になったら、重合缶上部より、酢酸ビニル140質量部を、13時間かけて少しずつ連続的に滴下した。滴下が終了してから1時間後、重合率95%に達した時点で系を冷却し、重合を停止した。
次に、常法により未反応の酢酸ビニルを除去し、得られたポリ酢酸ビニルの50%メタノール溶液100質量部に、パラトルエンスルホン酸の50%メタノール溶液2質量部を加えてよく混合し、50℃でケン化反応を行い、水酸化ナトリウムの5質量%メタノール溶液4.5質量部を加え中和しケン化反応を停止し、PVA系重合体(A)の溶液を得た。得られた溶液を乾燥して、ケン化度55.0モル%、平均重合度(PA)210、ブロックキャラクター0.70、前述の式1より求められる値が300のPVA系重合体を得た。
得られたPVA系重合体を溶質として40質量%含有するように、水中に投入し、80℃で1時間撹拌することにより溶解し、室温まで冷却することにより水性液を得た。得られた水性液の評価結果を表1に示す。
得られた水性液は、析出、相分離はなく安定で、粘度は、1380mPa・sであり、流動性は良好であった。
内容積100リットルの重合機(耐圧オートクレーブ)に、塩化ビニル単量体100質量部に対して、部分ケン化ポリビニルアルコール(ケン化度80モル%、重合度2500)0.056質量部、部分ケン化ポリビニルアルコール(ケン化度72モル%、重合度800)0.014質量部を脱イオン水112.5質量部に溶解し仕込み、更に、上記で得られた本発明の水性液0.0625質量部(含有される分散助剤(PVA系重合体)換算で0.025質量部)、および、t−ブチルパーオキシネオデカノエート0.05質量部を投入した。
次に、重合機内を40mmHgまで脱気した後、塩化ビニル単量体を100質量部仕込み、攪拌を開始した。重合温度は57℃とし、重合終了までこの温度を保持した。
重合転化率が80%に達した時点で反応を終了し、重合機内の未反応単量体を回収した後、重合体スラリーを系外に取り出し、脱水乾燥し、塩化ビニル重合体を得た。塩化ビニル重合体の評価結果を表1に示す。
粗大粒子が無く、可塑剤吸収量が十分高い、高い空孔率を持った塩化ビニル樹脂(PVC樹脂)が得られた。
ケン化度、重合度、ブロックキャラクター、式1より求められる値が表1に示す値となるようにした以外は実施例1と同様にしてPVA系重合体を作製し、実施例1と同様の方法で表1に示されるPVA系重合体含有量の水性液を調製した。
さらに、その水性液を用いて、実施例1と同様の条件で(本発明の分散助剤の添加量が(PVA系重合体)換算で0.025質量部となるように水性液の仕込み量を調整し)、塩化ビニルの懸濁重合を行い、塩化ビニル樹脂を得た。
水性液の評価結果と得られた塩化ビニル樹脂の評価結果を表1に併せて示す。
本発明のPVA系重合体を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行い、塩化ビニル樹脂を得た。
得られた塩化ビニル樹脂の評価結果を表1に併せて示す。
実施例2〜9:得られた水性液は、析出や相分離はなく安定で、流動性も良好であった。また、粗大粒子が無く、可塑剤吸収量が十分高い、高い空孔率を持ったPVC樹脂が得られた。
比較例1:式1より求められる値が400より大きいことから、水性液の流動性が著しく低かった。その結果、分散剤本来の性能が発揮できず、PVC樹脂の可塑剤吸収量が少し低くなり、平均粒子径が少し肥大化してしまった。
比較例2:式1より求められる値が400より大きいことから、水性液の流動性が著しく低かった。その結果、分散剤本来の性能が発揮できず、PVCの懸濁重合でPVC粒子がブロック化してしまい評価可能なPVC樹脂を得ることができなかった。
比較例3:式1より求められる値が250より小さいことから、塩化ビニルの懸濁重合の安定性が悪くなり、また、PVC樹脂は、平均粒子径が肥大化してしまい、空孔率が低く可塑剤吸収性が劣った。
比較例4:ケン化度が低すぎるため、水性液の安定性が悪く、水性液からPVA系重合体が析出してしまい、水性液を作製することができなかった。
比較例5:ケン化度が高すぎるため、さらに、式1より求められる値が400より大きいことから、PVC樹脂は、平均粒子径は肥大化し、空孔率が低く、可塑剤吸収量が低かった。
比較例6:本発明のPVA系重合体を用いなかったため、得られたPVC樹脂は空孔率が非常に低く、可塑剤吸収量が非常に低かった。
Claims (10)
- ケン化度が45〜65モル%であり、以下の(式1)を満足するポリビニルアルコール系重合体であるビニル系化合物の懸濁重合用分散助剤。
(式1)250≦X/Y≦400
(ここで、X:ポリビニルアルコール系重合体の重合度、Y:ポリビニルアルコール系重合体のブロックキャラクターを示す。) - 重合度が160〜400、ブロックキャラクターが0.6〜0.9、ケン化度が45〜65モル%であるポリビニルアルコール系重合体である、ビニル系化合物の懸濁重合用分散助剤。
- 水溶性高分子とともに重合系に存在させて懸濁重合させるための請求項1又は2記載の懸濁重合用分散助剤。
- 水溶性高分子が、ケン化度65〜90モル%のポリビニルアルコールである請求項3記載の懸濁重合用分散助剤。
- 塩化ビニルを含むビニル系化合物の重合に用いるための請求項1〜4のいずれかに記載の懸濁重合用分散助剤。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の懸濁重合用分散助剤を含有する水性液であって、前記ポリビニルアルコール系重合体を30〜50質量%含有する水性液。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の懸濁重合用分散助剤存在下で、ビニル系化合物を水性溶媒中で懸濁重合させるビニル系樹脂の製造方法。
- さらに、水溶性高分子の存在下で懸濁重合させる請求項7記載の製造方法。
- 水溶性高分子が、ケン化度65〜90モル%のポリビニルアルコールである請求項8記載の製造方法。
- ビニル系化合物が塩化ビニルを含む請求項7〜9のいずれかに記載の製造方法。
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