JP2020021596A - 非水電解質蓄電素子及び非水電解質蓄電素子の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
装置:KRATOS ANALYTICAL社の「AXIS NOVA」
X線源:単色化AlKα
加速電圧:15kV
分析面積:700μm×300μm
測定範囲:P2p=145〜128eV、C1s=300〜272eV
測定間隔:0.1eV
測定時間:P2p=72.3秒/回、C1s=70.0秒/回
積算回数:P2p=15回、C1s=8回
また、上記スペクトルにおけるピークの位置は、次のようにして求められる値とする。まず、sp2炭素に帰属されるC1sのピークの位置を284.8eVとし、得られたすべてのスペクトルの結合エネルギーを補正する。次に、補正されたスペクトルに対して、直線法を用いてバックグラウンドを除去することにより、水平化処理を行う。水平化処理後のスペクトルにおいて、P2pに帰属されるピークの強度が最も高い値を示す結合エネルギーをP2pに帰属されるピークの位置とする。
本発明の一実施形態に係る非水電解質蓄電素子は、正極、負極及び非水電解質を有する。以下、非水電解質蓄電素子の一例として、非水電解質二次電池について説明する。上記正極及び負極は、通常、セパレータを介して積層又は巻回により交互に重畳された電極体を形成する。この電極体は容器に収納され、この容器内に上記非水電解質が充填される。上記非水電解質は、正極と負極との間に介在する。また、上記容器としては、非水電解質二次電池の容器として通常用いられる公知の金属容器、樹脂容器等を用いることができる。
上記正極は、正極基材、及びこの正極基材に直接又は中間層を介して配される正極合剤層を有する。
上記負極は、負極基材、及びこの負極基材に直接又は中間層を介して配される負極合剤層を有する。上記中間層は正極の中間層と同様の構成とすることができる。
上記セパレータの材質としては、例えば織布、不織布、多孔質樹脂フィルム等が用いられる。これらの中でも、強度の観点から多孔質樹脂フィルムが好ましく、非水電解質の保液性の観点から不織布が好ましい。上記セパレータの主成分としては、強度の観点から例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンが好ましく、耐酸化分解性の観点から例えばポリイミドやアラミド等が好ましい。また、これらの樹脂を複合してもよい。
上記非水電解質は、イミド塩と、このイミド塩を溶解しているフッ素化エーテルを含有する非水溶媒とを含む。なお、上記非水電解質は、液体状のものに限定されるものではない。すなわち、上記非水電解質は、固体状やゲル状のもの等も含まれる。
イミド塩としては、リチウムイミド塩、ナトリウムイミド塩、カリウムイミド塩等を挙げることができるが、リチウムイミド塩が好ましい。
上記非水電解質には、上記イミド塩以外の電解質塩がさらに含有されていてもよいし、含有されていなくてもよい。このような電解質塩としては、イミド塩以外のリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、オニウム塩等を挙げることができる。イミド塩以外の電解質塩が含有されている場合、上記非水電解質におけるイミド塩以外の電解質塩の含有量の上限としては、1mol dm-3が好ましいことがあり、0.1mol dm-3がより好ましいことがあり、0.01mol dm-3がさらに好ましいことがある。イミド塩以外の電解質塩の含有量を上記上限以下とすることで、非水電解質蓄電素子の低温環境下での特に良好な高率放電性能を得ることができる。
非水溶媒は、少なくともフッ素化エーテルを含有する。
上記フッ素化エーテルとしては、1,1,2,2−テトラフルオロ−2,2,2−トリフルオロエチルエーテル(TFEE)、1,1,2,2−テトラフルオロエチル−エチルエーテル、1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,3,3−テトラフルオロプロピルエーテル(HFE)、1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルエーテル、1,1,2,2−テトラフルオロプロピル−1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロピルエーテル等を挙げることができる。上記フッ素化エーテルは、1種又は2種以上を用いることができる。上記フッ素化エーテルは、低い粘度を備えると共に、電解質塩の溶解度が低すぎないものであることが求められる。従って、分子中に含まれるフッ素原子の割合が大きすぎないものが好ましく、分子量が大きすぎないものが好ましい。この観点から、1,1,2,2−テトラフルオロ−2,2,2−トリフルオロエチルエーテル(TFEE)及び1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,3,3−テトラフルオロプロピルエーテル(HFE)が好ましく、1,1,2,2−テトラフルオロ−2,2,2−トリフルオロエチルエーテル(TFEE)が特に好ましい。
上記非水溶媒は、フッ素化環状カーボネートをさらに含むことが好ましい。上記フッ素化環状カーボネートとしては、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)、フルオロメチルエチレンカーボネート、トリフルオロエチルエチレンカーボネート、等を挙げることができる。上記フッ素化環状カーボネートは、1種又は2種以上を用いることができる。上記フッ素化カーボネートは、特に4.0V(vs.Li/Li+)以上の電位での充放電時に生じうる副反応を抑制することができ、フッ素化エーテルとの相乗効果によって、低温環境下での特に良好な高率放電性能を得ることができる。この観点から、フルオロエチレンカーボネート(FEC)が好ましい。
その他、フッ素化エーテル及びフッ素化環状カーボネート以外のその他の非水溶媒としては、一般的な蓄電素子用非水電解質の非水溶媒として通常用いられる公知の非水溶媒を用いることができる。上記非水溶媒としては、カーボネート(環状カーボネート及び鎖状カーボネート)、エステル、エーテル、アミド、スルホン、ラクトン、ニトリル等を挙げることができる。これらの内、カーボネートを少なくとも用いることが好ましい。なお、カーボネートは、環状カーボネートであってもよく、鎖状カーボネートであってもよい。また、カーボネートは、置換基を有さないカーボネートであってもよく、置換基を有するカーボネートであってもよい。この置換基としては、ヒドロキシ基、ハロゲン原子等を挙げることができる。上記カーボネートは、1種又は2種以上を用いることができる。
当該非水電解質蓄電素子においては、正極の最大到達電位の下限は、例えば4.0V(vs.Li/Li+)であってもよく、4.2V(vs.Li/Li+)であってもよいが、4.4V(vs.Li/Li+)であってもよく、4.5V(vs.Li/Li+)であってもよく、4.6V(vs.Li/Li+)であってもよく、4.7V(vs.Li/Li+)であってもよい。なお、この正極の最大到達電位の上限は、例えば5.4V(vs.Li/Li+)であってもよく、5.0V(vs.Li/Li+)であってもよい。当該非水電解質蓄電素子は、通常、イミド塩を用いたときにアルミニウムの酸化腐食が顕著に生じやすい、正極の最大到達電位が4.0V(vs.Li/Li+)以上となる充放電の際に、非水電解質蓄電素子の低温環境下での高率放電性能の低下が抑制されるため、正極を4.0V(vs.Li/Li+)以上の作動電位で用いることができる。このように正極の最大到達電位が高いことにより、非水電解質蓄電素子の高エネルギー密度化を図ることができる。
当該非水電解質蓄電素子は、以下の方法により製造することが好ましい。すなわち、本発明の一実施形態に係る非水電解質蓄電素子の製造方法は、リンのオキソ酸を含む正極合剤ペーストを塗布して作製される正極合剤を有する正極を作製すること(正極作製工程)と、イミド塩及びフッ素化エーテルを含む非水電解質を容器に注入すること(非水電解質注入工程)とを備える非水電解質蓄電素子の製造方法である。
上記正極合剤ペーストは、通常、リンのオキソ酸以外に、正極活物質及びバインダを含み、必要に応じさらにその他の成分を含む。正極合剤ペーストは、これらの成分を混合することにより得ることができる。この正極合剤ペーストを正極基材表面に塗布し、乾燥させることにより、正極合剤のX線光電子分光スペクトルにおいて、P2pに帰属されるピークが135eV以下の位置に存在する正極が得られる。
上記非水電解質注入工程は、公知の方法により行うことができる。すなわち、所望する組成の非水電解質を調製し、調製した非水電解質を容器に注入すればよい。
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、上記態様の他、種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。例えば、上記正極又は負極において、中間層を設けなくてもよい。また、当該非水電解質蓄電素子の正極において、正極合剤は明確な層を形成していなくてもよい。例えば上記正極は、メッシュ状の正極基材に正極合剤が担持された構造等であってもよい。
正極活物質として、α―NaFeO2構造を有し、Li1+αMe1-αO2で表されるリチウム遷移金属複合酸化物(MeはMnを含む遷移金属、0.1<α<0.2、Meに対するMnのモル比Mn/Meが0.5<Mn/Me)を用いた。分散媒としてN−メチルピロリドン(NMP)を用い、上記正極活物質、導電剤としてのアセチレンブラック(AB)、バインダとしてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)、及びホスホン酸(H3PO3)を固形分換算で93.5:4.5:1.5:0.5の質量比で混合し、正極合剤ペーストを得た。この正極合剤ペーストを、正極基材であるアルミニウム箔の片面に塗布し、乾燥することにより、正極基材上に正極合剤層を形成した。また、アルミニウム箔の反対側の面にも同様に正極合剤ペーストを塗布し、乾燥した。この反対側の面に形成した正極合剤層は、乾燥後剥離した。このようにして正極P1を得た。
正極合剤ペーストにホスホン酸を混合しなかったこと以外は、上記「正極P1の作製」と同様にして、正極P2を得た。
負極活物質としてグラファイトを用いた負極を作製した。
(非水電解質の調製)
フッ素化エーテルである1,1,2,2−テトラフルオロ−2,2,2−トリフルオロエチルエーテル(TFEE)と、フッ素化環状カーボネートであるフルオロエチレンカーボネート(FEC)と、その他の溶媒として置換基を有さない鎖状カーボネートであるエチルメチルカーボネート(EMC)とを体積比60:20:20の割合で混合した混合溶媒に、電解質塩としてリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)を1.0mol dm-3の濃度で溶解させ、非水電解質を調製した。
ポリオレフィン製微多孔膜であるセパレータを介して、上記正極P1と上記負極とを積層することにより電極体を作製した。この電極体を金属樹脂複合フィルム製の容器に収納し、内部に上記非水電解質を注入した後、熱溶着により封口し、実施例1の非水電解質蓄電素子(ラミネート型の非水電解質二次電池)を得た。
正極及び電解質塩の種類、並びに溶媒の種類及び混合体積比を表1に示すとおりとしたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜3、及び比較例1〜7の各非水電解質蓄電素子を得た。
TFEE:1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,2−トリフルオロエチルエーテル
EMC:エチルメチルカーボネート
EC:エチレンカーボネート
TFEMC:トリフルオロエチルメチルカーボネート
(初期充放電)
得られた実施例1〜3、及び比較例1〜7の各非水電解質蓄電素子について、以下の条件にて初期充放電を行った。25℃で4.5Vまで充電電流0.1Cの定電流にて充電したのちに、4.5Vの定電圧にて充電した。充電の終了条件は、充電電流が0.05Cとなるまでとした。充電後に10分間の休止を設けた後に、25℃で2.0Vまで0.1Cの定電流にて放電した。
初期充放電後の完全放電状態の各非水電解質蓄電素子を露点−60℃以下のアルゴン雰囲気中にて解体して正極を取り出し、ジメチルカーボネートを用いて正極を洗浄したのち、室温にて減圧乾燥した。得られた正極をアルゴン雰囲気中にてトランスファーベッセルに封入し、X線光電子分光スペクトルの測定装置の試料室に導入し、上記した条件にて正極の正極合剤表面のX線光電子分光測定を行った。得られたスペクトルから、上記した方法により、P2pに帰属されるピーク位置を求めた。正極合剤ペーストにホスホン酸を用いた実施例1〜3及び比較例3〜6の正極合剤(P1)においては、P2pに帰属されるピークは133から134eVの間に存在した。正極合剤ペーストにホスホン酸を用いていない比較例1、2及び7の正極合剤(P2)においては、135eV以下の範囲にはP2pに帰属されるピークが確認できなかった。なお、電解質塩としてLiPF6を用いた比較例5〜7の正極合剤においては、136eVにLiPF6に由来するP2pに帰属されるピークが確認できた。
初期充放電後の各非水電解質蓄電素子を、25℃の恒温槽内に2時間保管した後、4.5Vまで充電電流0.1Cの定電流にて充電したのちに、4.5Vの定電圧にて充電した。充電の終了条件は、充電電流が0.05Cとなるまでとした。充電終止時の正極電位(=正極の最大到達電位)は、4.6V(vs.Li/Li+)であった。充電後に10分間の休止を設けた後に、2.0Vまで放電電流2.0Cの定電流にて放電した。この時の放電容量を「25℃2C容量」とする。さらに放電後に10分間の休止を設けた後に、2.0Vまで放電電流0.1Cの定電流にて放電した。放電後に10分間の休止を設けた。続いて、4.5Vまで充電電流0.1Cの定電流にて充電したのちに、4.5Vの定電圧にて充電した。充電の終了条件は、充電電流が0.05Cとなるまでとした。充電後の各非水電解質蓄電素子を0℃の恒温槽内に5時間保管した後、2.0Vまで放電電流2.0Cの定電流にて放電した。この時の放電容量を「0℃2C容量」とする。さらに放電後に25℃の恒温槽内に5時間保管した後、2.0Vまで放電電流0.1Cの定電流にて放電した。放電後に10分間の休止を設けた。
各非水電解質蓄電素子について、上記「25℃2C容量」に対する「0℃2C容量」の比を計算し、「0℃/25℃比」(%)とする。これを低温高率放電性能として表1に示す。
2 電極体
3 容器
4 正極端子
4’ 正極リード
5 負極端子
5’ 負極リード
20 蓄電ユニット
30 蓄電装置
Claims (3)
- リン原子を含む正極合剤を有する正極と、
イミド塩及びフッ素化エーテルを含む非水電解質と
を備え、
上記正極合剤のX線光電子分光スペクトルにおいて、P2pに帰属されるピークが135eV以下の位置に存在する非水電解質蓄電素子。 - 上記非水電解質が、フッ素化環状カーボネートをさらに含む請求項1記載の非水電解質蓄電素子。
- リンのオキソ酸を含む正極合剤ペーストを塗布して作製される正極合剤を有する正極を作製することと、
イミド塩及びフッ素化エーテルを含む非水電解質を容器に注入することと
を備える非水電解質蓄電素子の製造方法。
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