JPWO2018016421A1 - 非水電解質、蓄電素子、及び蓄電素子の製造方法 - Google Patents

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Abstract

充放電の繰り返しに伴う蓄電素子の膨れを抑制することができる非水電解質、この非水電解質を備える蓄電素子、並びにこの蓄電素子の製造方法を提供する。本発明の一態様は、蓄電素子に用いられ、ハロゲン化トルエン及びハロゲン化ニトロトルエンを含有する非水電解質である。本発明の他の一態様は、当該非水電解質を備える蓄電素子である。本発明の他の一態様は、蓄電素子の製造方法であって、当該非水電解質を用いる蓄電素子の製造方法である。

Description

本発明は、非水電解質、蓄電素子、及び蓄電素子の製造方法に関する。
リチウムイオン二次電池に代表される非水電解質二次電池は、エネルギー密度の高さから、パーソナルコンピュータ、通信端末等の電子機器、自動車等に多用されている。上記非水電解質二次電池は、一般的には、セパレータで電気的に隔離された一対の電極を有する電極体、及び電極間に介在する非水電解質を備え、両電極間でイオンの受け渡しを行うことで充放電するよう構成される。また、二次電池以外の蓄電素子として、リチウムイオンキャパシタや電気二重層キャパシタ等のキャパシタも広く普及している。
このような蓄電素子に用いられる非水電解質には、性能向上等を目的として各種添加剤が添加される。具体的には、過充電の防止のためにフルオロトルエン等が添加された非水電解質が提案されている(特許文献1参照)。
特開2006−108100号公報
しかし、フルオロトルエン等のハロゲン化トルエンが添加された非水電解質を用いた場合、充放電の繰り返しに伴って、蓄電素子の膨れ(いわゆる電池膨れ)が生じやすいという不都合を有する。
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、充放電の繰り返しに伴う蓄電素子の膨れを抑制することができる非水電解質、この非水電解質を備える蓄電素子、及びこの蓄電素子の製造方法を提供することである。
上記課題を解決するためになされた本発明の一態様は、蓄電素子に用いられ、ハロゲン化トルエン及びハロゲン化ニトロトルエンを含有する非水電解質である。
本発明の他の一態様は、当該非水電解質を備える蓄電素子である。
本発明の他の一態様は、蓄電素子の製造方法であって、当該非水電解質を用いる蓄電素子の製造方法である。
本発明によれば、充放電の繰り返しに伴う蓄電素子の膨れを抑制することができる非水電解質、この非水電解質を備える蓄電素子、及びこの蓄電素子の製造方法を提供することができる。
図1は、本発明の一実施形態に係る二次電池を示す外観斜視図である。 図2は、本発明の一実施形態に係る二次電池を複数個集合して構成した蓄電装置を示す概略図である。
本発明の一態様は、蓄電素子に用いられ、ハロゲン化トルエン及びハロゲン化ニトロトルエンを含有する非水電解質である。当該非水電解質によれば、充放電の繰り返しに伴う蓄電素子の膨れを抑制することができる。このような効果が生じる理由は定かでは無いが、ハロゲン化ニトロトルエンとハロゲン化トルエンとが共存することで、正極に被膜が形成され、非水電解質の分解が抑制される結果、蓄電素子の膨れが抑制されるものと推察される。また、当該非水電解質によれば、蓄電素子の放電容量維持率を高めることもできる。この理由も定かではないが、上記形成された被膜による非水電解質の分解抑制作用が、放電容量維持率を高める方向に作用しているものと推察される。
上記ハロゲン化トルエンがフルオロトルエンであることが好ましい。フルオロトルエンを用いることで、蓄電素子の膨れをより効果的に抑制すること等ができる。
上記ハロゲン化トルエンの含有量が上記非水電解質の総質量に対して0.1質量%以上8質量%以下であることが好ましい。ハロゲン化トルエンの含有量を上記範囲とすることで、蓄電素子の膨れを十分に抑制しつつ、放電容量維持率を高めることができる。
上記ハロゲン化ニトロトルエンがフルオロニトロトルエンであることが好ましい。フルオロニトロトルエンを用いることで、蓄電素子の膨れをより効果的に抑制すること等ができる。
上記ハロゲン化ニトロトルエンの含有量が上記非水電解質の総質量に対して0.001質量%以上3質量%以下であることが好ましい。ハロゲン化ニトロトルエンの含有量を上記範囲とすることで、蓄電素子の膨れをより効果的に抑制すること等ができる。
本発明の他の一態様は、当該非水電解質を備える蓄電素子である。当該蓄電素子は、当該非水電解質を備えるため、膨れが抑制される。また、当該蓄電素子は、良好な放電容量維持率を発揮することができる。
本発明の他の一態様は、蓄電素子の製造方法であって、当該非水電解質を用いる蓄電素子の製造方法である。当該蓄電素子の製造方法によれば、当該非水電解質を用いるため、膨れが抑制されると共に、高い放電容量維持率を有する蓄電素子を得ることができる。
<非水電解質>
本発明の一実施形態に係る非水電解質は、蓄電素子に用いられ、ハロゲン化トルエン及びハロゲン化ニトロトルエンを含有する。当該非水電解質は、非水溶媒に電解質塩が溶解されたものであり、さらにハロゲン化トルエンとハロゲン化ニトロトルエンとが含有されている。
(ハロゲン化トルエン)
上記ハロゲン化トルエンとは、トルエンの有する水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された化合物をいう。ハロゲン化トルエンは、1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
上記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等を挙げることができるが、フッ素原子が好ましい。上記ハロゲン原子がフッ素原子である場合、蓄電素子の膨れをより抑えることや、放電容量維持率も高めることができる。
上記ハロゲン化トルエンにおけるハロゲン原子の数としては特に限定されず、例えば1以上4以下であり、1及び2が好ましく、1がより好ましい。1つのハロゲン化トルエンが複数のハロゲン原子を有する場合、複数種のハロゲン原子は同一であっても異なっていてもよい。
上記ハロゲン化トルエンとしては、ベンゼン環(芳香環)上の水素原子が、ハロゲン原子に置換されたハロゲン化トルエンが好ましい。このようなハロゲン化トルエンの場合、ハロゲン原子の結合位置としては、メチル基に対して、オルト位及びメタ位が好ましく、オルト位であることがより好ましい。
上記ハロゲン化トルエンの具体例としては、フルオロトルエン(o−フルオロトルエン、m−フルオロトルエン、p−フルオロトルエン、α−フルオロトルエン)、クロロトルエン、ブロモトルエン、ジフルオロトルエン、ジクロロトルエン、ジブロモトルエン、トリフルオロトルエン、トリクロロトルエン、トリブロモトルエン、クロロフルオロトルエン、ブロモフルオロトルエン等を挙げることができる。
これらの中でもフルオロトルエンが好ましく、o−フルオロトルエン(2−フルオロトルエン)及びm−フルオロトルエン(3−フルオロトルエン)が好ましく、o−フルオロトルエンがより好ましい。このようなハロゲン化トルエンを用いることで、蓄電素子の膨れをより抑えることや、放電容量維持率を高めることができる。
当該非水電解質の総質量に対するハロゲン化トルエンの質量(含有量)は特に限定されないが、この下限としては、0.1質量%が好ましく、0.5質量%がより好ましく、1質量%がさらに好ましく、2質量%がよりさらに好ましく、3質量%が特に好ましい。ハロゲン化トルエンの含有量を上記下限以上とすることで、過充電防止添加剤として、ハロゲン化トルエンを用いる効果や、放電容量維持率を維持する効果をより十分に発揮させることができる。一方、当該非水電解質の総質量に対するハロゲン化トルエンの質量(含有量)の上限としては、導電性等の諸特性の点からは、8質量%が好ましく、6質量%がより好ましい。
(ハロゲン化ニトロトルエン)
上記ハロゲン化ニトロトルエンとは、ニトロトルエンの有する水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された化合物をいう。ハロゲン化ニトロトルエンは、1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
上記ハロゲン原子の具体例は、上述したとおりである。ハロゲン化ニトロトルエンの有するハロゲン原子は、フッ素原子が好ましい。上記ハロゲン化ニトロトルエンが有するハロゲン原子がフッ素原子である場合、蓄電素子の膨れをより抑えることや、放電容量維持率を高めることなどができる。
上記ハロゲン化ニトロトルエンにおけるハロゲン原子の数としては特に限定されず、例えば1以上4以下であり、1及び2が好ましく、1がより好ましい。1つのハロゲン化ニトロトルエンが複数のハロゲン原子を有する場合、複数種のハロゲン原子は同一であっても異なっていてもよい。
上記ハロゲン化ニトロトルエンとしては、ベンゼン環(芳香環)上の水素原子が、ハロゲン原子に置換されたハロゲン化ニトロトルエンが好ましい。このようなハロゲン化ニトロトルエンの場合、ハロゲン原子の結合位置としては、メチル基に対して、オルト位及びパラ位が好ましく、オルト位であることがより好ましい。
上記ハロゲン化ニトロトルエンにおけるニトロ基の数は特に限定されないが、通常、1
である。また、ニトロ基の結合位置としては、メチル基に対して、オルト位及びパラ位が好ましく、オルト位であることがより好ましい。
上記ハロゲン化トルエンの具体例としては、フルオロニトロトルエン、クロロニトロトルエン、ブロモニトロトルエン、ジフルオロニトロトルエン、ジクロロニトロトルエン、ジブロモニトロトルエン、トリフルオロニトロトルエン、トリクロロニトロトルエン、トリブロモニトロトルエン、クロロフルオロニトロトルエン、ブロモフルオロニトロトルエン等を挙げることができる。
これらの中でも、フルオロニトロトルエンが好ましい。フルオロニトロトルエンを用いることで、蓄電素子の膨れをより効果的に抑制することなどができる。
フルオロニトロトルエンとしては、2−フルオロ−3−ニトロトルエン、2−フルオロ−4−ニトロトルエン、2−フルオロ−5−ニトロトルエン、2−フルオロ−6−ニトロトルエン、3−フルオロ−2−ニトロトルエン、3−フルオロ−4−ニトロトルエン、4−フルオロ−2−ニトロトルエン、4−フルオロ−3−ニトロトルエン等を挙げることができる。これらの中でも、2−フルオロ−4−ニトロトルエン及び2−フルオロ−6−ニトロトルエンがより好ましく、2−フルオロ−6−ニトロトルエンがさらに好ましい。このようなフルオロニトロトルエンを用いることで、蓄電素子の膨れがより効果的に抑えられ、放電容量の維持率も高めることができる。
当該非水電解質の総質量に対するハロゲン化ニトロトルエンの質量(含有量)は特に限定されないが、この下限としては、0.001質量%が好ましく、0.005質量%がより好ましく、0.01質量%がさらに好ましく、0.05質量%がよりさらに好ましく、0.08質量%が特に好ましい。ハロゲン化ニトロトルエンの含有量を上記下限以上とすることで、蓄電素子の膨れをより抑制することができ、かつ放電容量維持率を高めることもできる。一方、当該非水電解質の総質量に対するハロゲン化ニトロトルエンの質量(含有量)の上限としては、3質量%が好ましく、1質量%がより好ましく、0.5質量%がさらに好ましく、0.2質量%がよりさらに好ましい。ハロゲン化ニトロトルエンの含有量を上記上限以下とすることで、蓄電素子の膨れをより抑制することができる。
当該非水電解質におけるハロゲン化トルエン100質量部に対するハロゲン化ニトロトルエンの含有量の下限としては、0.01質量部が好ましく、0.1質量部がより好ましく、0.5質量部がさらに好ましく、1質量部がよりさらに好ましく、1.5質量部がよりさらに好ましい。一方、この上限としては、10質量部が好ましく、5質量部がより好ましく、3質量部がさらに好ましい。ハロゲン化トルエンとハロゲン化ニトロトルエンとの質量比を上記範囲とすることで、効果的に被膜が形成されることにより、蓄電素子の膨れをより効果的に抑制することができる。
(非水溶媒)
上記非水溶媒としては、一般的な蓄電素子の非水電解質における非水溶媒として通常用いられる公知の非水溶媒を用いることができる。上記非水溶媒としては、環状カーボネート、鎖状カーボネート、エステル、エーテル、アミド、スルホン、ラクトン、ニトリル等を挙げることができる。これらの中でも、環状カーボネート又は鎖状カーボネートを少なくとも用いることが好ましく、環状カーボネートと鎖状カーボネートとを併用することがより好ましい。環状カーボネートと鎖状カーボネートとを併用する場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートとの体積比(環状カーボネート:鎖状カーボネート)としては、特に限定されないが、例えば5:95以上50:50以下とすることが好ましい。
上記環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネ
ート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、クロロエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)、スチレンカーボネート、カテコールカーボネート、1−フェニルビニレンカーボネート、1,2−ジフェニルビニレンカーボネート等を挙げることができ、これらの中でもECが好ましい。
上記鎖状カーボネートとしては、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジフェニルカーボネート等を挙げることができ、これらの中でもEMCが好ましい。
(電解質塩)
上記電解質塩としては、一般的な蓄電素子の非水電解質における電解質塩として通常用いられる公知の電解質塩を用いることができる。上記電解質塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、オニウム塩等を挙げることができるが、リチウム塩が好ましい。
上記リチウム塩としては、LiPF6、LiPO2F2、LiBF4、LiClO4、LiN(SO2F)2等の無機リチウム塩、LiSO3CF3、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2、LiN(SO2CF3)(SO2C4F9)、LiC(SO2CF3)3、LiC(SO2C2F5)3等のフッ化炭化水素基を有するリチウム塩などを挙げることができる。これらの中でも、無機リチウム塩が好ましく、LiPF6がより好ましい。
当該非水電解質における上記電解質塩の含有量の下限としては、0.1Mが好ましく、0.3Mがより好ましく、0.5Mがさらに好ましく、0.7Mが特に好ましい。一方、この上限としては、特に限定されないが、2.5Mが好ましく、2Mがより好ましく、1.5Mがさらに好ましい。
当該非水電解質は、本発明の効果を阻害しない限り、上記ハロゲン化トルエン、上記ハロゲン化ニトロトルエン、上記非水溶媒、及び上記電解質塩以外の他の成分を含有していてもよい。上記他の成分としては、一般的な蓄電素子の非水電解質に含有される各種添加剤を挙げることができる。但し、これらの他の成分の含有量としては、5質量%以下が好ましいこともあり、1質量%以下がより好ましいこともある。
当該非水電解質は、上記非水溶媒に上記電解質塩、ハロゲン化トルエン及びハロゲン化ニトロトルエンを添加し、溶解させることにより得ることができる。
<蓄電素子>
本発明の一実施形態に係る蓄電素子は、正極、負極及び非水電解質を有する。以下、蓄電素子の一例として、非水電解質二次電池について説明する。上記正極及び負極は、通常、セパレータを介して積層又は巻回により交互に重畳された電極体を形成する。この電極体はケースに収納され、このケース内に上記非水電解質が充填される。当該二次電池(蓄電素子)においては、非水電解質として、上述した当該非水電解質が用いられている。上記非水電解質は、正極と負極との間に介在する。また、上記ケースとしては、二次電池のケースとして通常用いられる公知のアルミニウムケース等を用いることができる。
当該二次電池(蓄電素子)によれば、ハロゲン化トルエン及びハロゲン化ニトロトルエンを含有する非水電解質を用いているため、充放電に伴うケースの膨れが抑制される。また、当該二次電池は、極板間にガス溜まりが生じにくくなるため、容量維持率が高く、長寿命となる。
(正極)
上記正極は、正極基材、及びこの正極基材に直接又は中間層を介して配される正極活物質層を有する。
上記正極基材は、導電性を有する。基材の材質としては、アルミニウム、チタン、タンタル、ステンレス鋼等の金属又はそれらの合金が用いられる。これらの中でも、耐電位性、導電性の高さ及びコストのバランスからアルミニウム及びアルミニウム合金が好ましい。また、正極基材の形成形態としては、箔、蒸着膜等が挙げられ、コストの面から箔が好ましい。つまり、正極基材としてはアルミニウム箔が好ましい。なお、アルミニウム又はアルミニウム合金としては、JIS−H−4000(2014年)に規定されるA1085P、A3003P等が例示できる。
中間層は、正極基材の表面の被覆層であり、炭素粒子等の導電性粒子を含むことで正極基材と正極活物質層との接触抵抗を低減する。中間層の構成は特に限定されず、例えば樹脂バインダー及び導電性粒子を含有する組成物により形成できる。なお、「導電性」を有するとは、JIS−H−0505(1975年)に準拠して測定される体積抵抗率が107Ω・cm以下であることを意味し、「非導電性」とは、上記体積抵抗率が107Ω・cm超であることを意味する。
正極活物質層は、正極活物質を含むいわゆる正極合材から形成される。また、正極活物質層を形成する正極合材は、必要に応じて導電剤、バインダー(結着剤)、増粘剤、フィラー等の任意成分を含む。
上記正極活物質としては、例えばLixMOy(Mは少なくとも一種の遷移金属を表す)で表される複合酸化物(層状のα−NaFeO2型結晶構造を有するLixCoO2,LixNiO2,LixMnO3,LixNiαCo(1−α)O2,LixNiαMnβCo(1−α−β)O2等、スピネル型結晶構造を有するLixMn2O4,LixNiαMn(2−α)O4等)、LiwMex(XOy)z(Meは少なくとも一種の遷移金属を表し、Xは例えばP、Si、B、V等を表す)で表されるポリアニオン化合物(LiFePO4,LiMnPO4,LiNiPO4,LiCoPO4,Li3V2(PO4)3,Li2MnSiO4,Li2CoPO4F等)が挙げられる。これらの化合物中の元素又はポリアニオンは、他の元素又はアニオン種で一部が置換されていてもよい。正極活物質層においては、これら化合物の1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
上記導電剤としては、電池性能に悪影響を与えない導電性材料であれば特に限定されない。このような導電剤としては、天然又は人造の黒鉛、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、金属、導電性セラミックス等が挙げられる。導電剤の形状としては、粉状、繊維状等が挙げられる。
上記バインダー(結着剤)としては、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド等の熱可塑性樹脂;エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム等のエラストマー;多糖類高分子等が挙げられる。
上記増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース等の多糖類高分子が挙げられる。また、増粘剤がリチウムと反応する官能基を有する場合、予めメチル化等によりこの官能基を失活させておくことが好ましい。
上記フィラーとしては、電池性能に悪影響を与えないものであれば特に限定されない。フィラーの主成分としては、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、シリカ、アルミナ、ゼオライト、ガラス、炭素等が挙げられる。
(負極)
上記負極は、負極基材、及びこの負極基材に直接又は中間層を介して配される負極活物質層を有する。上記中間層は正極の中間層と同様の構成とすることができる。
上記負極基材は、正極基材と同様の構成とすることができるが、材質としては、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属又はそれらの合金が用いられ、銅又は銅合金が好ましい。つまり、負極基材としては銅箔が好ましい。銅箔としては、圧延銅箔、電解銅箔等が例示される。
負極活物質層は、負極活物質を含むいわゆる負極合材から形成される。また、負極活物質層を形成する負極合材は、必要に応じて導電剤、バインダー(結着剤)、増粘剤、フィラー等の任意成分を含む。導電剤、結着剤、増粘剤、フィラー等の任意成分は、正極活物質層と同様のものを用いることができる。
負極活物質としては、通常、リチウムイオンを吸蔵及び放出することができる材質が用いられる。具体的な負極活物質としては、例えばSi、Sn等の金属又は半金属;Si酸化物、Sn酸化物等の金属酸化物又は半金属酸化物;ポリリン酸化合物;黒鉛(グラファイト)、非晶質炭素(易黒鉛化性炭素又は難黒鉛化性炭素)等の炭素材料等が挙げられる。
さらに、負極合材(負極活物質層)は、B、N、P、F、Cl、Br、I等の典型非金属元素、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Zn、Ga、Ge等の典型金属元素、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Zr、Ta、Hf、Nb、W等の遷移金属元素を含有してもよい。
(セパレータ)
上記セパレータの材質としては、例えば織布、不織布、多孔質樹脂フィルム等が用いられる。これらの中でも、強度の観点から多孔質樹脂フィルムが好ましく、非水電解質の保液性の観点から不織布が好ましい。上記セパレータの主成分としては、強度の観点から例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンが好ましく、耐酸化分解性の観点から例えばポリイミドやアラミド等が好ましい。また、これらの樹脂を複合してもよい。
<蓄電素子の製造方法>
本発明の一実施形態に係る蓄電素子の製造方法は、正極、負極及び非水電解質を有する非水電解質二次電池の製造方法であって、上記非水電解質として、当該非水電解質を用いる。当該製造方法は、例えば、正極及び負極(電極体)をケースに収容する工程、及び上記ケースに上記非水電解質を注入する工程を備える。
上記注入は、公知の方法により行うことができる。注入後、注入口を封止することにより二次電池(蓄電素子)を得ることができる。当該製造方法によって得られる二次電池を構成する各要素についての詳細は上述したとおりである。当該製造方法によれば、当該非水電解質を用いることで、充放電の繰り返しに伴うケースの膨れが抑制された二次電池(蓄電素子)を得ることができる。
<その他の実施形態>
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、上記態様の他、種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。例えば、上記正極又は負極において、中間層を設けなくてもよい。また、上記実施の形態においては、蓄電素子が二次電池である形態を中心に説明したが、その他の蓄電素子であってもよい。その他の蓄電素子としては、キャパシタ(電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ)等が挙げられる。
図1に、本発明に係る蓄電素子の一実施形態である矩形状の二次電池1の概略図を示す。なお、同図は、容器内部を透視した図としている。図1に示す二次電池1は、電極体2が電池容器3に収納されている。電極体2は、正極活物質を備える正極と、負極活物質を備える負極とが、セパレータを介して捲回されることにより形成されている。正極は、正極リード4’を介して正極端子4と電気的に接続され、負極は、負極リード5’を介して負極端子5と電気的に接続されている。また、電池容器3内に、本発明の一実施形態に係る非水電解質が注入されている。
本発明に係る蓄電素子の構成については特に限定されるものではなく、円筒型電池、角型電池(矩形状の電池)、扁平型電池等が一例として挙げられる。本発明は、上記の蓄電素子を複数備える蓄電装置としても実現することができる。蓄電装置の一実施形態を図2に示す。図2において、蓄電装置30は、複数の蓄電ユニット20を備えている。それぞれの蓄電ユニット20は、複数の二次電池1を備えている。上記蓄電装置30は、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等の自動車用電源として搭載することができる。
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
(非水電解質の作製)
ECとEMCとを30:70の体積比で混合した溶媒にLiPF6を1.0Mの濃度で溶解させた。これに、さらに添加剤Aとしてo−フルオロトルエン(OFT)を5質量%となるように、及び添加剤Bとして2−フルオロ−6−ニトロトルエンを0.005質量%となるように添加し、実施例1の非水電解質を得た。
(蓄電素子の作製)
α―NaFeO2型結晶構造を有するLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2を正極活物質とする正極板を作製した。また、グラファイトを負極活物質とする負極板を作製した。次いで、ポリエチレン製微多孔膜からなるセパレータを介して、上記正極板と上記負極板とを積層し、扁平形状に巻回することにより電極体を作製した。この電極体をアルミニウム製の角形電槽缶に収納し、正極端子及び負極端子を取り付けた。この容器(角形電槽缶)内部に上記非水電解質を注入した後、封口し、蓄電素子(リチウムイオン二次電池)を得た。
[実施例2〜3、比較例1〜5]
用いた添加剤A及び添加剤Bの種類及び含有量を表1に記載のようにしたこと以外は、実施例1と同様にして実施例2〜4及び比較例1〜5の非水電解質、並びに蓄電素子を得た。なお、表中「−」は、対応する添加剤を添加していないことを示す。
[評価]
(充放電サイクル試験)
得られた各蓄電素子について、25℃において充電上限電圧を4.2V、放電終止電圧
を2.75Vとして初期充放電を行った。次いで、45℃の恒温槽内において充電電流850mA、充電上限電圧4.20V、トータル充電時間3時間で定電流電圧充電を行い、その後、10分間の休止期間を設けた。その後、放電電流850mA、放電終止電圧2.75Vで定電流放電を行い、その後、10分間の休止期間を設けた。この充放電を500サイクル実施した。そして、その後、25℃において充電上限電圧を4.2V、放電終止電圧を2.75Vとして充放電を行った。
(電池膨れの測定)
上記充放電サイクル試験における初期充放電後及び500サイクル後に25℃にて充放電を実施した際の放電状態での電池厚みを測定した。それぞれ、初期充放電後の厚みに対する500サイクル後に25℃にて充放電を実施した際の厚みの増加量を求め、これを電池膨れ(mm)とした。この結果を表1に示す。
(容量維持率)
上記充放電サイクル試験における初期充放電時の放電容量に対する500サイクル後に25℃にて充放電を実施した際の放電容量の比を「容量維持率(%)」として求めた。この結果を表1に示す。
Figure 2018016421
上記表1に示されるように、添加剤としてハロゲン化トルエン(OFT)のみが添加されている比較例1に比べ、ハロゲン化トルエンとハロゲン化ニトロトルエンとの双方を添加した実施例1〜4においては、電池膨れが低減していることがわかる。また、実施例1〜4は、比較例1〜5に比べて容量維持率も高いことがわかる。一方、ハロゲン化トルエンは添加されず、ハロゲン化ニトロトルエン又はニトロベンゼンが添加されている比較例2〜4は、電池膨れが比較例1と比べてより大きく、容量維持率も相対的に低い。従って、電池膨れの抑制効果及び高い容量維持率は、ハロゲン化トルエンとハロゲン化ニトロトルエンとを共に用いるときに奏される効果であることがわかる。また、実施例3と実施例4とを比べると、2−フルオロ−4−ニトロトルエンを添加したものよりも、2−フルオロ−6−ニトロトルエンを添加したもののほうが電池膨れ抑制効果が高い傾向が見て取れる。なお、比較例2と比較例3とを比べると、添加剤Bとして、2−フルオロ−6−ニトロトルエンを多量に添加すると、相対的に電池膨れが大きくなる傾向が見て取れる。
本発明は、パーソナルコンピュータ、通信端末等の電子機器、自動車などの電源として使用される非水電界二次電池をはじめとした非水電解質蓄電素子、及びこれに備わる非水電解質などに適用できる。
(符号の説明)
1 非水電解質二次電池
2 電極体
3 電池容器
4 正極端子
4’ 正極リード
5 負極端子
5’ 負極リード
20 蓄電ユニット
30 蓄電装置

Claims (7)

  1. 蓄電素子に用いられ、ハロゲン化トルエン及びハロゲン化ニトロトルエンを含有する非水電解質。
  2. 上記ハロゲン化トルエンがフルオロトルエンである請求項1の非水電解質。
  3. 上記ハロゲン化トルエンの含有量が上記非水電解質の総質量に対して0.1質量%以上8質量%以下である請求項1又は請求項2の非水電解質。
  4. 上記ハロゲン化ニトロトルエンがフルオロニトロトルエンである請求項1、請求項2又は請求項3の非水電解質。
  5. 上記ハロゲン化ニトロトルエンの含有量が上記非水電解質の総質量に対して0.001質量%以上3質量%以下である請求項1から請求項4のいずれか1項の非水電解質。
  6. 請求項1から請求項5のいずれか1項の非水電解質を備える蓄電素子。
  7. 蓄電素子の製造方法であって、
    請求項1から請求項5のいずれか1項の非水電解質を用いる蓄電素子の製造方法。

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