JP2019046792A - 非水電解質及び蓄電素子 - Google Patents

非水電解質及び蓄電素子 Download PDF

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Abstract

【課題】高度な非引火性を有するとともに、低温下における放電性能を高めることができる非水電解質及びこの非水電解質を備える蓄電素子を提供する。【解決手段】本発明の一態様は、非水溶媒と、電解質塩とを含有し、上記非水溶媒が、プロピレンカーボネートを含む環状カーボネートと、鎖状カーボネートと、フッ素化エーテルとを含有し、上記環状カーボネートにおける上記プロピレンカーボネートの含有量が10体積%以上であり、上記環状カーボネート及び上記フッ素化エーテルの合計含有量に対する上記環状カーボネートの体積比率が73体積%以下であり、上記鎖状カーボネート及び上記フッ素化エーテルの合計含有量に対する上記鎖状カーボネートの体積比率が55体積%以下である非水電解質である。【選択図】図1

Description

本発明は、非水電解質及び蓄電素子に関する。
リチウムイオン二次電池に代表される非水電解質二次電池は、エネルギー密度の高さから、パーソナルコンピュータ、通信端末等の電子機器、自動車等に多用されている。上記非水電解質二次電池は、一般的には、セパレータで電気的に隔離された一対の電極を有する電極体及び電極間に介在する非水電解質を備え、両電極間でイオンの受け渡しを行うことで充放電するよう構成される。また、非水電解質二次電池以外の蓄電素子として、リチウムイオンキャパシタや電気二重層キャパシタ等のキャパシタも広く普及している。
一般的に、上記非水電解質は、非水溶媒と、この非水溶媒に溶解する電解質塩とを含み、必要に応じて他の成分が添加される。上記非水溶媒としては、引火性溶媒が用いられる場合が多いが、このような材料は、消防法上危険物に分類されるため、輸送、貯蔵する場合に防爆や防火対策を施した設備での取り扱いが必要となり、これを用いた非水電解質電池のコストを抑制することが困難である。
この観点からも、非水電解質としては安全性の高いことが望まれており、自己消火作用を有するフッ素化リン酸エステルを含有する非水電解質が提案されている(特許文献1参照)。
特開平8−088023号公報
しかしながら、上記従来の非水電解質では、非引火性が十分ではない。また、種々の電気自動車(xEV)に用いられる二次電池においては、低温下における放電性能の向上が求められている。
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、高度な非引火性を有するとともに、低温下における放電性能を高めることができる非水電解質及びこの非水電解質を備える蓄電素子を提供することである。
本発明者らは、引火点が低い鎖状カーボネートを含有する非水電解質に自己消化能を有するフッ素化リン酸エステルを含有させても、危険物判定で採用されているJIS K2265−4(2007)に準拠したクリーブランド開放式引火点測定による引火点消失効果が軽微であり、特定の含有量のフッ素化エーテルを配合することが上記引火点消失に効果が高いことを知見した。一方、フッ素化エーテルを含有する非水電解質は低温放電性能が良好ではなかったが、プロピレンカーボネートを含有させることで顕著な改善が可能であることを見出し、本発明に至った。
上記課題を解決するためになされた本発明の一態様は、
非水溶媒と、電解質塩とを含有し、
上記非水溶媒が、プロピレンカーボネートを含む環状カーボネートと、鎖状カーボネートと、フッ素化エーテルとを含有し、
上記環状カーボネートにおける上記プロピレンカーボネートの含有量が10体積%以上であり、
上記環状カーボネート及び上記フッ素化エーテルの合計含有量に対する上記環状カーボネートの体積比率が73体積%以下であり、
上記鎖状カーボネート及び上記フッ素化エーテルの合計含有量に対する上記鎖状カーボネートの体積比率が55体積%以下であり、
上記非水溶媒は、以下の(1)及び(2):
(1)環状カーボネート、鎖状カーボネート、フッ素化エーテル、及びフッ素化リン酸エステル以外を構成要素とする有機系液体であって、引火点100℃以下の有機系液体Aを含有しない;及び
(2)上記有機系液体Aを含有し、且つ、上記鎖状カーボネート、上記フッ素化エーテル及び上記有機系液体Aの合計含有量に対する上記鎖状カーボネート及び上記有機系液体Aの合計含有量の体積比率が55体積%以下である;
のいずれか一方を満たし、
上記電解質塩は、以下の(3)及び(4):
(3)BF4アニオンを含有しない;及び
(4)BF4アニオンを含有し、上記電解質塩の合計含有量に対する上記BF4アニオンを有する塩のモル比率が20モル%以下である;
のいずれか一方を満たし、
上記フッ素化エーテルが、引火点がなく沸点が70℃以下であるフッ素化エーテルを含有する、
非水電解質である。
本発明の他の一態様は、当該非水電解質を備える蓄電素子である。
本発明によれば、非水電解質が高度な非引火性を有するとともに、低温下における放電性能を高めることができる非水電解質及びこの非水電解質を備える蓄電素子を提供することができる。
図1は、本発明の一実施形態に係る非水電解質二次電池を示す外観斜視図である。 図2は、本発明の一実施形態に係る非水電解質二次電池を複数個集合して構成した蓄電装置を示す概略図である。
本発明の一実施形態に係る非水電解質は、
非水溶媒と、電解質塩とを含有し、
上記非水溶媒が、プロピレンカーボネートを含む環状カーボネートと、鎖状カーボネートと、フッ素化エーテルとを含有し、
上記環状カーボネートにおける上記プロピレンカーボネートの含有量が10体積%以上であり、
上記環状カーボネート及び上記フッ素化エーテルの合計含有量に対する上記環状カーボネートの体積比率が73体積%以下であり、
上記鎖状カーボネート及び上記フッ素化エーテルの合計含有量に対する上記鎖状カーボネートの体積比率が55体積%以下であり、
上記非水溶媒は、以下の(1)及び(2):
(1)環状カーボネート、鎖状カーボネート、フッ素化エーテル、及びフッ素化リン酸エステル以外を構成要素とする有機系液体であって、引火点100℃以下の有機系液体Aを含有しない;及び
(2)上記有機系液体Aを含有し、且つ、上記鎖状カーボネート、上記フッ素化エーテル及び上記有機系液体Aの合計含有量に対する上記鎖状カーボネート及び上記有機系液体Aの合計含有量の体積比率が55体積%以下である;
のいずれか一方を満たし、
上記電解質塩は、以下の(3)及び(4):
(3)BF4アニオンを含有しない;及び
(4)BF4アニオンを含有し、上記電解質塩の合計含有量に対する上記BF4アニオンを有する塩のモル比率が20モル%以下である;
のいずれか一方を満たし、
上記フッ素化エーテルが、引火点がなく沸点が70℃以下であるフッ素化エーテルを含有する、
非水電解質である。
当該非水電解質によれば、高度な非引火性を有するとともに、低温下における放電性能を高めることができる。このような効果が生じる理由は定かでは無いが、次のように考えられる。当該非水電解質の非水溶媒において、フッ素化エーテルと引火点を有する環状カーボネートとの合計含有量に対する環状カーボネートの体積比率が73体積%以下であることで、フッ素化エーテルの不燃性蒸気による引火防止効果により引火性を抑制できる。フッ素化エーテルと環状カーボネートとの合計含有量に対する環状カーボネートの体積比率は、特に80℃以上の高温環境下における引火性の有無に影響を与える。また、この値が大きいほど、電解質塩のイオン解離性は向上する一方、非水電解質の粘度が上昇するため、非水電解質蓄電素子の性能にも影響を与える。
また、環状カーボネートにおける凝固点が低いプロピレンカーボネートの含有量が10体積%以上であることで、低温下における放電性能を高めることができる。ここで、プロピレンカーボネートは、エチレンカーボネートに比べて、広い温度範囲および広い組成範囲において、フッ素化エーテルとの相溶性が顕著に優れることから、上記環状カーボネートにおける上記プロピレンカーボネートの含有量が10体積%以上とし、且つ、上記環状カーボネート及び上記フッ素化エーテルの合計含有量に対する上記環状カーボネートの体積比率が73体積%以下とすることで、本発明の効果が顕著に奏される。
さらに、フッ素化エーテルと引火点が低い鎖状カーボネートとの合計含有量に対する鎖状カーボネートの体積比率が55体積%以下とすることで、高度な非引火性を有しつつ低温下における放電性能を高めることができる。フッ素化エーテルと引火点が低い鎖状カーボネートとの合計含有量に対する鎖状カーボネートの体積比率は、特に、室温から80℃付近にかけて温度範囲における引火点の有無に影響を与える。この値は、非水電解質の粘度にはほとんど影響しないが、この値が大きいほど、電解質塩のイオン解離性が向上するため、非水電解質蓄電素子の性能に影響を与える。
非水溶媒は、環状カーボネート、鎖状カーボネート及びフッ素化エーテルのみから構成されていてもよく、その他の非水溶媒を含んでいてもよい。
その他の非水溶媒が、環状カーボネート、鎖状カーボネート、フッ素化エーテル、及びフッ素化リン酸エステル以外を構成要素とする有機系液体であって、引火点100℃以下の有機系液体Aを含有する場合、その含有量は、引火性の観点から、鎖状カーボネートと同様に計算することが相当である。具体的には、上記鎖状カーボネート、上記フッ素化エーテル及び上記有機系液体Aの合計含有量に対する上記鎖状カーボネート及び上記有機系液体Aの合計含有量の体積比率が55体積%以下であることで、高度な非引火性を備えるものとできる。
また、上記電解質塩がBF4アニオンを有する塩を含有しなくてもよい。上記電解質塩がBF4アニオンを有する塩を含有する場合は、電解質塩の合計含有量に対する上記BF4アニオンを有する塩のモル比率を20モル%以下とすることで、高度な非引火性を備えるものとできる。
また、フッ素化エーテルとして、引火点がなく、沸点が70℃以下であるものを含有することで、気化しやすくなり、不燃性気体で覆われやすくなることから、高度な非引火性を備えるものとできる。
本明細書において、非引火性を有するとは、非水電解質が、JIS K2265−2(2007)に規定されるセタ密閉式引火点測定器による引火点測定法によって引火点が80℃以下の温度で測定されず、かつ、JIS K2265−4(2007)に規定されるクリーブランド開放式引火点試験器による引火点測定法によって引火前に非水電解質が沸騰することをいう。
本明細書において、非水溶媒が含有する化合物の引火点は、JIS K2265−2(2007)に規定されるセタ密閉式引火点測定器による引火点測定法によって測定される引火点をいう。
上記鎖状カーボネート及び上記フッ素化エーテルの合計含有量に対する上記鎖状カーボネートの体積比率としては、20体積%以上が好ましい。上記体積比率が20体積%以上であることで、引火性を抑制しつつ低温下における放電性能をより高めることができる。
本発明の他の一実施形態に係る蓄電素子は、当該非水電解質を備える蓄電素子である。当該蓄電素子は、当該非水電解質を備えるため、高度な非引火性を有するとともに、低温下における放電性能を高めることができる。
<非水電解質>
本発明の一実施形態に係る非水電解質は、非水溶媒と、この非水溶媒に溶解している電解質塩を含有する。なお、当該非水電解質は、液体に限定されるものではない。すなわち、当該非水電解質は、液体状のものだけに限定されず、ゲル状のもの等も含まれる。
[非水溶媒]
上記非水溶媒は、プロピレンカーボネートを含む環状カーボネートと、鎖状カーボネートと、フッ素化エーテルとを含有する。
(環状カーボネート)
環状カーボネートは、プロピレンカーボネートを含む。環状カーボネートとして凝固点が低いプロピレンカーボネートを含むことで、低温下における放電性能を高めることができる。
上記環状カーボネートにおける上記プロピレンカーボネートの含有量の下限としては、10体積%であり、15体積%が好ましく、20体積%がより好ましい。環状カーボネートの含有量の下限が上記範囲であることで、低温下における放電性能を高めることができる。
一方、上記環状カーボネートにおける上記プロピレンカーボネートの含有量の上限としては、黒鉛を負極活物質に使用する場合において、充電時にプロピレンカーボネートが黒鉛の層間に共挿入することによる性能低下を抑制するために60体積%が好ましい。なお、「黒鉛」とは、広角X線回析法により決定される(002)面の平均格子面間隔(d002)が0.340nm未満の炭素材料をいう。また、難黒鉛性炭素(ハードカーボン、HC)及びチタン酸リチウム(LTO)等を負極活物質に使用する場合においては、上記共挿入が生じないため、上記含有量の上限を80体積%とすることができ、100体積%であってもよい。
上記プロピレンカーボネート(PC)以外の環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、クロロエチレンカーボネート、スチレンカーボネート、カテコールカーボネート等を挙げることができ、これらの中でもEC、FECが好ましい。
上記非水溶媒における環状カーボネートの含有量の下限としては、10体積%が好ましく、30体積%がより好ましい。一方、上記含有量の上限としては、55体積%が好ましく、50体積%がより好ましい。環状カーボネートの含有量が上記範囲であることで、引火性を抑制しつつ低温下における放電性能をより高めることができる。
(鎖状カーボネート)
鎖状カーボネートとしては、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジフェニルカーボネート等を挙げることができ、これらの中でもEMC及びDMCが好ましい。
本実施形態においては、上記鎖状カーボネートは、EMCを含有することにより、低温下における放電性能を確実に高めることができるため、好ましい。
上記非水溶媒における鎖状カーボネートの含有量の下限としては、10体積%が好ましく、15体積%がより好ましい。一方、上記含有量の上限としては、45体積%が好ましく、40体積%がより好ましい。鎖状カーボネートの含有量が上記範囲であることで、引火性を抑制しつつ低温下における放電性能をより高めることができる。
(フッ素化エーテル)
フッ素化エーテルは、エーテルが有する炭化水素基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された化合物をいう。フッ素化エーテルは、1種又は2種以上を用いることができる。
本実施形態においては、引火点がなく、沸点が70℃以下であるフッ素化エーテルを少なくとも含有する。引火点を有するフッ素化エーテルや、沸点が70℃を超えるフッ素化エーテルと併用することを妨げない。引火点がなく、沸点が70℃以下であるフッ素化エーテルとしては、例えば1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,2−トリフルオロエチルエーテル(沸点56℃)、メチルヘプタフルオロプロピルエーテル(沸点34℃)、メチルノナフルオロブチルエーテル(沸点62℃)等が好ましく、これらの中で1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,2−トリフルオロエチルエーテル(TFEE)が、相溶性が優れるため、最も好ましい。
上記非水溶媒におけるフッ素化エーテルの含有量の下限としては、20体積%が好ましく、25体積%がより好ましい。一方、この含有量の上限としては、80体積%が好ましく、75体積%がより好ましく、70体積%がさらに好ましく、60体積%が最も好ましい。フッ素化エーテルの含有量を上記範囲とすることで、引火性を抑制しつつ低温下における放電性能をより高めることができる。
環状カーボネート及びフッ素化エーテルの合計含有量に対する環状カーボネートの体積比率の上限としては、73体積%であり、67体積%が好ましい。引火点を有する環状カーボネート及びフッ素化エーテルの合計含有量に対する環状カーボネートの体積比率の上限が上記範囲であることで、引火性の抑制効果をより高めることができる。
一方、環状カーボネート及びフッ素化エーテルの合計含有量に対する環状カーボネートの体積比率の下限としては、18体積%が好ましく、40体積%がより好ましく、45体積%がさらに好ましい。引火点を有する環状カーボネート及びフッ素化エーテルの合計含有量に対する環状カーボネートの体積比率の下限が上記範囲であることで、低温下における放電性能をより高めるとともに、高率放電性能及び寿命性能を高めることができる。
また、上記鎖状カーボネート及び上記フッ素化エーテルの合計含有量に対する上記鎖状カーボネートの体積比率の下限としては、18体積%が好ましく、20体積%がより好ましく、25体積%がさらに好ましく、30体積%が最も好ましい。一方、上記体積比率の上限としては、55体積%であり、50体積%が好ましい。フッ素化エーテルと引火点が低い鎖状カーボネートとの合計含有量に対する上記鎖状カーボネートの体積比率が上記範囲であることで、引火性を抑制しつつ低温下における放電性能をより高めることができる。
また、上記非水溶媒は、フッ素化リン酸エステルを含んでいなくてもよく、フッ素化リン酸エステルを含んでいてもよい。上記非水溶媒におけるフッ素化リン酸エステルの含有量の上限としては、30体積%が好ましく、10体積%がより好ましく、5体積%がさらに好ましく、2体積%がよりさらに好ましく、1体積%が特に好ましく、上記非水溶媒が、フッ素化リン酸エステルを含有しないことが最も好ましい。上記非水溶媒が、フッ素化リン酸エステルを「含有しない」ものとは、製造工程でフッ素化リン酸エステルを意図して含有させたものでないものであってよく、上記含有量が1体積%未満のものであってよい。上記フッ素化リン酸エステルの含有量が上記範囲であることで、非引火性を高めることができる。また、上記フッ素化リン酸エステルの含有量が上記上限以下であることで、高率放電性能に優れる蓄電素子を提供できる。
(その他の非水溶媒)
環状カーボネート、鎖状カーボネート及びフッ素化エーテル以外のその他の非水溶媒としては、上記フッ素化リン酸エステルを除き、一般的な蓄電素子の非水電解質における非水溶媒として通常用いられる公知の非水溶媒を本発明の効果を損なわない範囲で用いることができる。上記非水溶媒としては、γ−ブチロラクトン(GBL)、γ−バレロラクトン、プロピオラクトン等の環状カルボン酸エステル、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等の鎖状カーボネート、酢酸メチル、酪酸メチル等の鎖状カルボン酸エステル、テトラヒドロフラン若しくはその誘導体、1,3−ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、メトキシエトキシエタン、メチルジグライム等のエーテル類、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類、ジオキサラン若しくはその誘導体等の単独又はそれら2種以上の混合物等を挙げることができる。
上記その他の非水溶媒は、環状カルボン酸エステルであってもよい。本実施形態においては、環状カルボン酸エステルを含有することで、低温下における放電性能をさらに高めることができるため、好ましい。この観点から、上記非水溶媒における環状カルボン酸エステルの体積比率は、1体積%以上が好ましく、2体積%以上がより好ましく、4体積%以上がさらに好ましい。
本実施形態においては、上記環状カルボン酸エステルとして、GBLが好ましい。GBLは、引火点が98℃であるので、「環状カーボネート、鎖状カーボネート、フッ素化エーテル、及びフッ素化リン酸エステル以外を構成要素とする有機系液体であって、引火点100℃以下の有機系液体A」に相当する。従って、上記非水溶媒が、GBL以外に上記有機系液体Aを含有しない場合は、鎖状カーボネート、フッ素化エーテル及びGBLの合計含有量に対する、上記鎖状カーボネート及びGBLの溶媒の合計含有量の体積比率は55体積%以下とする。
[電解質塩]
上記電解質塩としては、一般的な蓄電素子の非水電解質における電解質塩として通常用いられる公知の電解質塩を用いることができる。上記電解質塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、オニウム塩等を挙げることができるが、リチウム塩が好ましい。
上記リチウム塩としては、LiPF6、LiPO22、LiBF4、LiB(C242、LiClO4、LiN(SO2F)2等の無機リチウム塩、LiSO3CF3、LiN(SO2CF32、LiN(SO2252、LiN(SO2CF3)(SO249)、LiC(SO2CF33、LiC(SO2253等の水素がフッ素で置換された炭化水素基を有するリチウム塩などを挙げることができる。これらの中でも、無機リチウム塩が好ましく、LiPF6がより好ましい。
当該非水電解質における上記電解質塩の含有量の下限としては、0.1Mが好ましく、0.3Mがより好ましく、0.5Mがさらに好ましく、0.7Mが特に好ましい。一方、この上限としては、特に限定されないが、2.5Mが好ましく、2Mがより好ましく、1.5Mがさらに好ましい。
本実施形態においては、上記電解質塩は、BF4アニオンを有する塩を含有することにより、低温下における放電性能をさらに高めることができるため、好ましい。この観点から、上記電解質塩の合計含有量に対する上記BF4アニオンを有する塩のモル比率は、2モル%以上が好ましい。
当該非水電解質は、本発明の効果を阻害しない限り、上記非水溶媒及び上記電解質塩以外の他の成分を含有していてもよい。上記他の成分としては、一般的な蓄電素子の非水電解質に含有される添加剤を挙げることができる。
(添加剤)
上記添加剤としては、充放電サイクル特性をより高める観点から、例えばビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ジフルオロエチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水グルタコン酸、無水イタコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物等の負極被膜形成剤;
亜硫酸エチレン、亜硫酸プロピレン、亜硫酸ジメチル、プロパンスルトン、プロペンスルトン、ブタンスルトン、メタンスルホン酸メチル、ブスルファン、トルエンスルホン酸メチル、硫酸ジメチル、硫酸エチレン、スルホラン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、テトラメチレンスルホキシド、ジフェニルスルフィド、チオアニソール、ジフェニルジスルフィド、ジピリジニウムジスルフィド、ビスオキサラトボレート塩、ジフルオロオキサラトボレート塩、ジフルオロリン酸塩、ジフルオロ(ビスオキサラト)ホスフェート塩、4−メチルスルホニルオキシメチル−2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオラン、4,4´−ビス(2,
2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオラン)、ペンテングリコールスルフェート等の正極保護剤などが挙げられる。
また、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の芳香族化合物;
2−フルオロビフェニル、o−シクロヘキシルフルオロベンゼン、p−シクロヘキシルフルオロベンゼン等の前記芳香族化合物の部分フッ素化物;
2,4−ジフルオロアニソール、2,5−ジフルオロアニソール、2,6−ジフルオロアニソール、3,5−ジフルオロアニソール等の含フッ素アニソール化合物等の過充電防止剤を添加することも可能である。
なかでも、本発明の一実施形態に係る非水電解質を用いた場合に蓄電素子の電池膨れを抑制できる観点から、VC、ビニルエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、プロペンスルトン、ビスオキサラトボレート塩、ジフルオロオキサラトボレート塩、ジフルオロリン酸塩、ジフルオロ(ビスオキサラト)ホスフェート塩、4−メチルスルホニルオキシメチル−2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオラン、4,4´−ビス(2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオラン)、及びペンテングリコールスルフェートからなる群から選択される1種又は2種以上を含有することが好ましい。
ここで、VCと、ビニルエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、プロペンスルトン、ビスオキサラトボレート塩、ジフルオロオキサラトボレート塩、ジフルオロリン酸塩、ジフルオロ(ビスオキサラト)ホスフェート塩、4−メチルスルホニルオキシメチル−2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオラン、4,4´−ビス(2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオラン)、及びペンテングリコールスルフェートからなる群から選択される1種又は2種以上とを併用することがより好ましい。
上記添加剤の含有量としては、例えば0.01質量%以上10質量%以下とすることができる。
当該非水電解質は、上記非水溶媒に上記電解質塩を添加し、溶解させることにより得ることができる。
<蓄電素子>
本発明の一実施形態に係る蓄電素子は、正極、負極及び非水電解質(電解液)を有する。以下、蓄電素子の一例として、非水電解質二次電池について説明する。上記正極及び負極は、通常、セパレータを介して積層又は巻回により交互に重畳された電極体を形成する。この電極体はケースに収納され、このケース内に上記非水電解質が充填される。当該非水電解質二次電池においては、非水電解質として、上述した当該非水電解質が用いられている。上記非水電解質は、正極と負極との間に介在する。また、上記ケースとしては、非水電解質二次電池のケースとして通常用いられる公知の金属製ケース等を用いることができる。
[正極]
上記正極は、正極基材及びこの正極基材に直接又は中間層を介して配される正極活物質層を有する。
上記正極基材は、導電性を有する。基材の材質としては、アルミニウム、チタン、タンタル、ステンレス鋼等の金属又はそれらの合金が用いられる。これらの中でも、耐電位性、導電性の高さ及びコストのバランスからアルミニウム及びアルミニウム合金が好ましい。また、正極基材の形成形態としては、箔、蒸着膜等が挙げられ、コストの面から箔が好ましい。つまり、正極基材としてはアルミニウム箔が好ましい。なお、アルミニウム又はアルミニウム合金としては、JIS−H−4000(2014)に規定されるA1085P、A3003P等が例示できる。
中間層は、正極基材の表面の被覆層であり、炭素粒子等の導電性粒子を含むことで正極基材と正極活物質層との接触抵抗を低減する。中間層の構成は特に限定されず、例えば樹脂バインダー及び導電性粒子を含有する組成物により形成できる。なお、「導電性」を有するとは、JIS−H−0505(1975)に準拠して測定される体積抵抗率が107Ω・cm以下であることを意味する。
正極活物質層は、正極活物質を含むいわゆる正極合材から形成される。また、正極活物質層を形成する正極合材は、必要に応じて導電剤、バインダー(結着剤)、増粘剤、フィラー等の任意成分を含む。
上記正極活物質としては、例えばLixMOy(Mは少なくとも一種の遷移金属を表す)で表される複合酸化物(層状のα−NaFeO2型結晶構造を有するLixCoO2,LixNiO2,LixMnO3,LixNiαCo(1-α)2,LixNiαMnβCo(1-α-β)2等、スピネル型結晶構造を有するLixMn24,LixNiαMn(2-α)4等)、LiwMex(AOyz(Meは少なくとも一種の遷移金属を表し、Aは例えばP、Si、B、V等を表す)で表されるポリアニオン化合物(LiFePO4,LiMnPO4,LiNiPO4,LiCoPO4,Li32(PO43,Li2MnSiO4,Li2CoPO4F等)が挙げられる。これらの化合物中の元素又はポリアニオンは、他の元素又はアニオン種で一部が置換されていてもよい。正極活物質層においては、これら化合物の1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
上記導電剤としては、電池性能に悪影響を与えない導電性材料であれば特に限定されない。このような導電剤としては、天然又は人造の黒鉛、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、金属、導電性セラミックス等が挙げられる。導電剤の形状としては、粉状、繊維状等が挙げられる。
上記バインダー(結着剤)としては、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド等の熱可塑性樹脂;エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム等のエラストマー;多糖類高分子等が挙げられる。
上記増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース等の多糖類高分子が挙げられる。また、増粘剤がリチウムと反応する官能基を有する場合、予めメチル化等によりこの官能基を失活させておくことが好ましい。
上記フィラーとしては、電池性能に悪影響を与えないものであれば特に限定されない。フィラーの主成分としては、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、シリカ、アルミナ、ゼオライト、ガラス、炭素等が挙げられる。
[負極]
上記負極は、負極基材及びこの負極基材に直接又は中間層を介して配される負極活物質層を有する。上記中間層は正極の中間層と同様の構成とすることができる。
上記負極基材は、正極基材と同様の構成とすることができるが、材質としては、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属又はそれらの合金が用いられ、銅又は銅合金が好ましい。つまり、負極基材としては銅箔が好ましい。銅箔としては、圧延銅箔、電解銅箔等が例示される。
負極活物質層は、負極活物質を含むいわゆる負極合材から形成される。また、負極活物質層を形成する負極合材は、必要に応じて導電剤、バインダー(結着剤)、増粘剤、フィラー等の任意成分を含む。導電剤、結着剤、増粘剤、フィラー等の任意成分は、正極活物質層と同様のものを用いることができる。
負極活物質としては、通常、リチウムイオンを吸蔵及び放出することができる材質が用いられる。具体的な負極活物質としては、例えば
Li等の金属又は半金属;
Si酸化物、Sn酸化物等の金属酸化物又は半金属酸化物;
ポリリン酸化合物;
黒鉛(グラファイト)、非黒鉛質炭素(易黒鉛化性炭素又は難黒鉛化性炭素)等の炭素材料;
チタン酸リチウム等のリチウム金属複合酸化物等が挙げられる。
さらに、負極合材(負極活物質層)は、B、N、P、F、Cl、Br、I等の典型非金属元素、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Zn、Ga、Ge等の典型金属元素、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Zr、Ta、Hf、Nb、W等の遷移金属元素を含有してもよい。
なお、チタン酸リチウムを負極活物質として用いる場合は、非水溶媒におけるフッ素化エーテルの含有量を45体積%以上とし、フッ素化エーテルの含有量に対するPCの比率を30体積%以上55体積%以下とすることで、低温性能が特に優れる蓄電素子を提供できるため、好ましい。
[セパレータ]
上記セパレータの材質としては、例えば織布、不織布、多孔質樹脂フィルム等が用いられる。これらの中でも、強度の観点から多孔質樹脂フィルムが好ましく、非水電解質の保液性の観点から不織布が好ましい。上記セパレータの主成分としては、強度の観点から例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンが好ましく、耐酸化分解性の観点から例えばポリイミドやアラミド等が好ましい。また、これらの樹脂を複合してもよい。
<蓄電素子の製造方法>
本発明の一実施形態に係る蓄電素子の製造方法は、正極、負極及び非水電解質(電解液)を有する非水電解質二次電池の製造方法であって、上記非水電解質として、当該非水電解質を用いる。当該製造方法は、例えば、正極及び負極(電極体)をケースに収容する工程及び上記ケースに上記非水電解質を注入する工程を備える。
上記注入は、公知の方法により行うことができる。注入後、注入口を封止することにより非水電解質二次電池を得ることができる。当該製造方法によって得られる非水電解質二次電池を構成する各要素についての詳細は上述したとおりである。
<その他の実施形態>
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、上記態様の他、種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。例えば、上記正極又は負極において、中間層を設けなくてもよい。また、上記実施形態においては、蓄電素子が非水電解質二次電池である形態を中心に説明したが、その他の蓄電素子であってもよい。その他の蓄電素子としては、キャパシタ(電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ)等が挙げられる。
図1に、本発明に係る蓄電素子の一実施形態である矩形状の非水電解質二次電池1の概略図を示す。なお、同図は、容器内部を透視した図としている。図1に示す非水電解質二次電池1は、電極体2が電池容器3に収納されている。電極体2は、正極活物質を備える正極と、負極活物質を備える負極とが、セパレータを介して捲回されることにより形成されている。正極は、正極リード4’を介して正極端子4と電気的に接続され、負極は、負極リード5’を介して負極端子5と電気的に接続されている。また、電池容器3内に、本発明の一実施形態に係る非水電解質が注入されている。
本発明に係る蓄電素子の構成については特に限定されるものではなく、円筒型電池、角型電池(矩形状の電池)、扁平型電池等が一例として挙げられる。本発明は、上記の蓄電素子を複数備える蓄電装置としても実現することができる。蓄電装置の一実施形態を図2に示す。図2において、蓄電装置30は、複数の蓄電ユニット20を備えている。それぞれの蓄電ユニット20は、複数の非水電解質二次電池1を備えている。上記蓄電装置30は、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等の自動車用電源として搭載することができる。
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
(非水電解質の作製)
EC、PC、EMC、DMC及びTFEEを40:10:12.5:12.5:25の体積比で混合した非水溶媒にLiPF6を1.0Mの濃度で溶解させ、さらに添加剤としてVCを2質量%溶解させて実施例1の非水電解質を得た。
(蓄電素子の作製)
コバルト酸リチウムを正極活物質とする正極板を作製した。また、グラファイトを負極活物質とする負極板を作製した。次に、ポリエチレン製微多孔膜からなるセパレータを介して、上記正極板と上記負極板とを積層することにより電極体を作製した。この電極体をラミネートケースに収納し、正極端子及び負極端子を取り付けた。このアルミラミネートフィルムケース内部に上記非水電解質を注入した後に封口し、蓄電素子(設計容量45mAhのリチウムイオン二次電池)を得た。
[実施例2〜実施例12、比較例1〜比較例9]
EC、PC、EMC、DMC及びTFEEの含有量を表1に記載のようにしたこと以外は、実施例1と同様にして実施例2〜実施例12及び比較例1〜比較例9の非水電解質、並びに蓄電素子を得た。但し、比較例9には、フッ素化リン酸エステルとしてリン酸トリス(2,2,2−トリフルオロエチル)(TFEP)を含有させた。なお、以下の表1中の各組成における「−」は、該当する成分を用いなかったことを示す。
[評価]
(セタ式引火点測定)
実施例1〜実施例12及び比較例1〜比較例9の非水電解質について、JIS K2265−2(2007)に準拠してセタ密閉式引火点測定器(Stanhope−Seta社製、82150−0モデル)による引火点測定を行った。80℃以下の温度で引火点を示さなかった場合を○とし、引火点を示した場合を×とした。測定結果を下記表1に示す。
(クリーブランド式引火点測定)
実施例1〜実施例12及び比較例1〜比較例9の非水電解質について、JIS K2265−4(2007)に準拠してクリーブランド開放式引火点試験器(田中科学機器製作株式会社製、aco−8形)による引火点測定を行った。引火前に非水電解質が沸騰した場合を○とし、引火点を示した場合を×とした。測定結果を下記表1に示す。
(低温性能試験)
得られた非水電解質蓄電素子について、放電試験に先立って、25℃にて電流0.1C、2時間の定電流充電を行った後、2日間放置した。引き続き、25℃にて電流0.2C、4.1Vで、8時間の定電流定電圧充電を行った。10分放置した後、25℃にて電流0.2Cの、3.0Vまで定電流放電を行った。次に、25℃にて電流0.2C、4.1Vで、8時間の定電流定電圧充電を行った。次に、0℃にて3時間以上放置した。そして、0℃で3.0Vまで0.2Cの定電流で放電し、放電エネルギーを測定した。
上記表1に示されるように、環状カーボネートにおけるプロピレンカーボネートの含有量が10体積%以上であり、環状カーボネート及びフッ素化エーテルの合計含有量に対する環状カーボネートの体積比率が73体積%以下であり、鎖状カーボネート及びフッ素化エーテルの合計含有量に対する鎖状カーボネートの体積比率が55体積%以下である実施例1〜実施例12は、低温放電試験において良好な放電エネルギーが得られた。また、実施例1〜実施例12は、セタ密閉式引火点測定及びクリーブランド式引火点測定において引火点を示さなかった。
一方、比較例1〜比較例9においては、低温放電試験において十分な放電エネルギーが得られないか、セタ密閉式引火点測定及びクリーブランド式引火点測定において引火点を示す結果が得られた。特に、プロピレンカーボネートを含有しない比較例1〜比較例4及び鎖状カーボネートを含有しない比較例6は、低温下における放電性能が劣っていた。また、比較例2及びフッ素化リン酸エステルを添加した比較例9の結果から、フッ素化リン酸エステルは、フッ素化エーテルよりもクリーブランド開放式引火点測定における引火点消失効果が劣ることが示された。
[実施例13〜実施例27、比較例10〜14]
EC、PC、EMC、DMC及びTFEEの含有量を表2に記載のようにしたこと以外は、実施例1と同様にして実施例13〜実施例27、及び比較例10〜14の非水電解質を得た。なお、表2中の各組成における「−」は、該当する成分を用いなかったことを示す。
但し、実施例23、実施例24、及び比較例10には、環状エステルとしてGBLを含有させた。ここで、鎖状カーボネート(EMC、DMC)、フッ素化エーテル(TFEE)及び環状エステル(GBL)の合計含有量に対する鎖状カーボネート(EMC、DMC)及び環状エステル(GBL)の合計含有量の体積比率は、実施例23においては55体積%、実施例24においては54体積%、比較例10においては57体積%である。
また、実施例25、実施例26、実施例27、及び比較例11には、電解質塩としてLiPF6及びLiBF4を用いた。それぞれの電解質塩の濃度は表2に記載の通りとした。
[比較例12〜比較例14]
フッ素化エーテルとしてTFEE以外のフッ素化エーテルを用い、EC、PC、EMC、DMC及びTFEEの含有量を表2に記載のようにしたこと以外は、実施例1と同様にして比較例12〜比較例14の非水電解質を得た。ここで、フッ素化エーテルとして、比較例12には2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル−1,1,2,2−テトラフルオロエチルエーテル(FE1;CAS No.50807−74−4、引火点なし、沸点:68℃)を用い、比較例13には1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,3,3−テトラフルオロプロピルエーテル(FE2;CAS No.16627−68−2、引火点なし、沸点:93℃)を用い、比較例14には1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル(FE3;CAS No.382−34−3、引火点あり、沸点:58℃)を用いた。
[比較例15〜比較例17]
EC、PC、EMC、DMC及びTFEEの含有量を表2に記載のようにしたこと以外は、実施例1と同様にして比較例15〜比較例17の非水電解質の調整を試みた。しかしながら、比較例15及び比較例16では、溶解しないLiPF6が残存した。従って、上記非水溶媒におけるフッ素化エーテルの含有量は多すぎないものとすることが好ましく、具体的には75体積%以下とすることが好ましいことがわかる。比較例17では、PCを含有していないことから、ECが析出した。
実施例22の非水電解質は、非水溶媒におけるPCの含有量が50体積%と多いことから、グラファイト負極活物質とした負極板を用いた蓄電素子を作製しなかった。
実施例13〜実施例21、実施例23〜実施例27、及び比較例10〜比較例14の非水電解質を用いて、実施例1と同様にして、それぞれの実施例及び比較例に係る蓄電素子を得た。得られた非水電解質蓄電素子について、上記と同様の評価を行った結果を下記表2に示す。
実施例23、実施例24及び比較例10の引火点測定の結果からわかるように、環状カーボネート、鎖状カーボネート、フッ素化エーテル及びフッ素化リン酸エステルに加えて、引火点100℃以下の溶媒として環状エステルであるGBL(引火点98℃)を含有する場合、GBLの含有量が多すぎると、クリーブランド式引火点測定において引火点を示すことから、上記鎖状カーボネート、上記フッ素化エーテル及び上記引火点100℃以下の溶媒の合計含有量に対する上記鎖状カーボネート及び上記引火点100℃以下の溶媒の合計含有量の体積比率は55体積%以下が好ましいことがわかる。
種々のフッ素化エーテルを用いた実施例1と比較例12〜14の引火点測定の結果からわかるように、非水電解質が高度な非引火性を有するためには、引火点がなく、沸点が70℃以下であるフッ素化エーテルを用いることが好ましいことがわかる。また、低温下における放電性能を高めることができる非水電解質とするためには、なかでもTFEEが好ましいことがわかる。
[実施例28〜実施例31]
LiNi1/3Co1/3Mn1/32で表される層状のリチウム遷移金属複合酸化物を正極活物質とする正極板を作製した。また、ハードカーボンを負極活物質とする負極板、及び、チタン酸リチウムを負極活物質とする負極板を作製した。非水電解質として、上記実施例1及び実施例22の非水電解質を用い、これらを表3に示すように組合せたことを除いては、実施例1と同様にして、実施例27〜実施例30の蓄電素子(但し、設計容量28mAhのリチウムイオン二次電池)を得た。
(放電性能試験)
得られた非水電解質蓄電素子について、25℃及び0℃の温度環境下にて放電性能試験を行った。
以下の試験において、正極活物質に対する利用率の上限を揃えるため、ハードカーボンを負極活物質とする負極板を用いた蓄電素子については、充電電圧を4.22Vとし、放電終止電圧を2.50Vとした。一方、チタン酸リチウムを負極活物質とする負極板を用いた蓄電素子については、充電電圧を2.69Vとし、放電終止電圧を1.20Vとした。
まず、25℃にて電流0.1C、2時間の定電流充電を行った後、2日間放置した。引き続き、25℃にて電流0.2C、8時間の定電流定電圧充電を行った。10分放置した後、25℃にて電流0.2Cの定電流放電を行い、25℃での放電エネルギーを測定した。
次に、25℃にて電流0.2C、8時間の定電流定電圧充電を行った。
この後、温度0℃の環境下に3時間以上放置した。そして、0℃にて電流0.2Cの定電流放電を行い、0℃での放電エネルギーを測定した。
また、25℃での放電エネルギーに対する0℃での放電エネルギーの百分率を「低温性能(%)」として算出した。
結果を下記表3に示す。
この結果から、黒鉛以外の材料を負極活物質に使用する場合は、上記環状カーボネートにおける上記プロピレンカーボネートの上限は100体積%であってもよいことがわかる。
(他の非水溶媒の検討)
[実施例32〜実施例34、比較例18]
LiMn24で表されるスピネル型マンガン酸リチウムとLiNi1/3Co1/3Mn1/32で表される層状のリチウム遷移金属複合酸化物を混合したものを正極活物質とする正極板を作製した。また、グラファイトを負極活物質とする負極板を作製した。非水電解質として、上記実施例1、実施例24、実施例23、及び比較例10の非水電解質をそれぞれ用いたことを除いては、実施例1と同様にして、実施例32〜実施例34、及び比較例18の蓄電素子(但し、設計容量24.5mAhのリチウムイオン二次電池)を得した。
(放電性能試験)
得られた非水電解質蓄電素子について、25℃及び0℃の温度環境下にて放電性能試験を行った。
まず、25℃にて電流0.1C、2時間の定電流充電を行った後、2日間放置した。引き続き、25℃にて電流0.2C、4.1V、8時間の定電流定電圧充電を行った。10分放置した後、25℃にて電流0.2C、終止電圧2.75Vの定電流放電を行った。
次に、25℃にて電流1C、4.1V、8時間の定電流定電圧充電を行った。10分放置した後、25℃にて電流1C、終止電圧2.75Vの定電流放電を行い、25℃での放電エネルギーを測定した。
次に、25℃にて電流0.2C、8時間の定電流定電圧充電を行った。
この後、温度0℃の環境下に3時間以上放置した。そして、0℃で電流1C、終止電圧2.75Vの定電流放電を行い、25℃での放電エネルギーを測定した。
結果を下記表4に示す。
表4からわかるように、上記非水溶媒としてGBLを含有している非水電解質を用いた実施例33及び実施例34の蓄電素子は、実施例32の蓄電素子に比べて、0℃での放電エネルギーが顕著に向上している。
従って、非水溶媒が、プロピレンカーボネートを含む環状カーボネートと、鎖状カーボネートと、フッ素化エーテルとを含有し、上記環状カーボネートにおける上記プロピレンカーボネートの含有量が10体積%以上であり、上記環状カーボネート及び上記フッ素化エーテルの合計含有量に対する上記環状カーボネートの体積比率が73体積%以下であり、上記鎖状カーボネート及び上記フッ素化エーテルの合計含有量に対する上記鎖状カーボネートの体積比率が55体積%以下であり、上記鎖状カーボネート及び上記フッ素化エーテルの合計含有量に対する上記鎖状カーボネートの体積比率が20体積%以上である、という条件を満たしたうえで、上記非水溶媒が、さらにGBL(引火点98℃)を含有し、上記鎖状カーボネート、上記フッ素化エーテル及びGBLの合計含有量に対する上記鎖状カーボネート及びGBLの合計含有量の体積比率が55体積%以下とすることで、非水電解質が高度な非引火性を有するとともに、低温下における放電性能をさらに高めることができる非水電解質及びこの非水電解質を備える蓄電素子を提供することができる。
(電解質塩の検討)
[実施例35〜実施例37、比較例19]
非水電解質として、上記実施例25〜実施例27、及び比較例11の非水電解質をそれぞれ用いたことを除いては、実施例32と同様にして、実施例35〜実施例37、及び比較例19の蓄電素子(但し、設計容量24.5mAhのリチウムイオン二次電池)を得た。得られた非水電解質蓄電素子について、実施例32と同様の評価を行った結果を下記表5に示す。
表5からわかるように、上記電解質塩としてLiPF6とLiBF4を併用した非水電解質を用いた実施例35〜実施例37の蓄電素子は、実施例31の蓄電素子に比べて、0℃での放電エネルギーが顕著に向上している。
従って、非水溶媒が、プロピレンカーボネートを含む環状カーボネートと、鎖状カーボネートと、フッ素化エーテルとを含有し、上記環状カーボネートにおける上記プロピレンカーボネートの含有量が10体積%以上であり、上記環状カーボネート及び上記フッ素化エーテルの合計含有量に対する上記環状カーボネートの体積比率が73体積%以下であり、上記鎖状カーボネート及び上記フッ素化エーテルの合計含有量に対する上記鎖状カーボネートの体積比率が55体積%以下であり、上記鎖状カーボネート及び上記フッ素化エーテルの合計含有量に対する上記鎖状カーボネートの体積比率が20体積%以上である、という条件を満たしたうえで、非水電解質が、上記電解質塩としてBF4アニオンを有する塩を含有し、且つ、上記電解質塩に由来するアニオンの合計含有量に対するBF4アニオンのモル比率が、5モル%以上20モル%以下であることで、非水電解質が高度な非引火性を有するとともに、低温下における放電性能をさらに高めることができる非水電解質及びこの非水電解質を備える蓄電素子を提供することができる。
一般的な非水電解質では、LiPF6とLiBF4を併用すると、LiPF6を単独で用いた場合に比べて、蓄電素子の内部抵抗が増大し、蓄電素子の電気化学的性能が低下することが周知であるから、上記効果は、非水溶媒が、プロピレンカーボネートを含む環状カーボネートと、鎖状カーボネートと、フッ素化エーテルとを含有し、上記環状カーボネートにおける上記プロピレンカーボネートの含有量が10体積%以上であり、上記環状カーボネート及び上記フッ素化エーテルの合計含有量に対する上記環状カーボネートの体積比率が73体積%以下であり、上記鎖状カーボネート及び上記フッ素化エーテルの合計含有量に対する上記鎖状カーボネートの体積比率が55体積%以下であり、上記鎖状カーボネート及び上記フッ素化エーテルの合計含有量に対する上記鎖状カーボネートの体積比率が20体積%以上である、という条件を満たす場合に特有の際立った効果であるといえる。
(添加剤の検討)
[実施例38〜実施例47、比較例20]
(非水電解質の作製)
EC、PC、EMC、DMC及びTFEEを40:10:12.5:12.5:25の体積比で混合した非水溶媒にLiPF6を1.0Mの濃度で溶解させ、さらに第一の添加剤としてVCを1質量%溶解させ、さらに第二の添加剤として表6に示す種類及び量の化合物を溶解させて実施例39〜実施例47、及び比較例20の非水電解質を得た。ここで、第二の添加剤の量は、1質量%を添加した場合に、25℃にて24時間静置しても全量が溶解しないことが目視で確認されたものについては0.25質量%とすることにした。
[比較例21]
EC及びEMCを30:70の体積比で混合した非水溶媒にLiPF6を1.0Mの濃度で溶解させ、さらに添加剤としてVCを2質量%溶解させて比較例21の非水電解質を得た。
(蓄電素子の作製)
LiMn24で表されるスピネル型マンガン酸リチウムとLiNi1/3Co1/3Mn1/32で表される層状のリチウム遷移金属複合酸化物を混合したものを正極活物質とする正極板を作製した。また、グラファイトを負極活物質とする負極板を作製した。ポリオレフィン製多孔質樹脂フィルムセパレータを介して、上記正極及び負極を巻回することで発電要素を作製した。この発電要素をアルミケースに挿入した後に、ケースの蓋をレーザー溶接で溶接した。蓋に設けた注液孔を介して、上記実施例1、実施例39〜実施例47、比較例20、及び比較例21の非水電解質を注入した後に注液孔を封止し、蓄電素子(但し、設計容量650mAhのリチウムイオン二次電池)を得た。
(充放電サイクル試験)
得られた非水電解質蓄電素子について、以下の手順で充放電サイクル試験を行った。
まず、25℃にて電流0.1C、2時間の定電流充電を行った後、2日間放置した。引き続き、25℃にて電流0.2C、4.1V、8時間の定電流定電圧充電を行った。10分放置した後、25℃にて電流0.2C、終止電圧2.75Vの定電流放電を行った。
次に、25℃にて電流1C、4.1V、3時間の定電流定電圧充電を行った。10分放置した後、25℃にて電流1C、終止電圧2.75Vの定電流放電を行い、このときの放電容量(mAh)を記録すると共に、放電後の蓄電素子の厚みを測定した。
次に、35℃にて、電流1C、8時間の定電流定充電、及び、電流1C、終止電圧2.75Vの定電流放電を1サイクルとする充放電を500サイクル繰り返した。なお、充電後及び放電後にはそれぞれ10分の休止過程を設けた。500サイクル後、再度、25℃にて、電流1C、4.1V、3時間の定電流定電圧充電を行った。10分放置した後、25℃にて電流1C、終止電圧2.75Vの定電流放電を行い、このときの放電容量(mAh)を記録すると共に、放電後の蓄電素子の厚みを測定した。
35℃における充放電サイクルを開始する前に記録した25℃における電流1Cの放電容量に対する、35℃における充放電サイクル後の25℃における電流1C放電容量の百分率を「容量維持率(%)」として算出した。500回サイクルの充放電を開始する前の蓄電素子の厚みと、500サイクル後の蓄電素子の厚みとの差を「厚み増加量(mm)」として算出した。
結果を下記表6に示す
表6から次の事がわかる。容量維持率の結果から見て、全ての実施例及び比較例の蓄電素子は優れた充放電サイクル性能を示している。厚み増加量の結果から見て、添加剤としてVCのみを含有する非水電解質を用いた実施例38の蓄電素子に比べて、ビニルエチレンカーボネート、ジフルオロリン酸リチウム、リチウムジフルオロ(ビスオキサラト)ホスフェート、1,3−プロペンスルトン、4−メチルスルホニルオキシメチル−2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオラン、4,4´−ビス(2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオラン)、ペンテングリコールスルフェート、リチウム(ビスオキサラト)ボレート、及びリチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートをそれぞれ含有する非水電解質を用いた実施例39〜実施例47の蓄電素子では、充放電サイクルを後の蓄電素子の厚み増加が顕著に抑制されている。一方、第二の添加剤としてフルオロエチレンカーボネートを用いた比較例20の蓄電素子では、実施例38の蓄電素子に比べて、厚み増加の点で悪化している。
なお、一般的な組成の非水電解質を用いた比較例21の蓄電素子では、添加剤としてVCのみを含有していても厚み増加が十分に抑制されていることからみて、上記の試験で確認された厚み増加についての課題及び効果は、非水溶媒が、プロピレンカーボネートを含む環状カーボネートと、鎖状カーボネートと、フッ素化エーテルとを含有し、上記環状カーボネートにおける上記プロピレンカーボネートの含有量が10体積%以上であり、上記環状カーボネート及び上記フッ素化エーテルの合計含有量に対する上記環状カーボネートの体積比率が73体積%以下であり、上記鎖状カーボネート及び上記フッ素化エーテルの合計含有量に対する上記鎖状カーボネートの体積比率が55体積%以下であり、上記鎖状カーボネート及び上記フッ素化エーテルの合計含有量に対する上記鎖状カーボネートの体積比率が20体積%以上である、という条件を満たす場合に特有のものであることがわかる。
(負極活物質の検討)
[実施例48〜実施例63]
LiNi1/3Co1/3Mn1/32で表される層状のリチウム遷移金属複合酸化物を正極活物質とする正極板を作製した。また、グラファイトを負極活物質とする負極板、ハードカーボンを負極活物質とする負極板、及び、チタン酸リチウムを負極活物質とする負極板を作製した。非水電解質として、上記実施例1、及び実施例15〜19の非水電解質を用い、これらを表7に示すように組合せたことを除いては、実施例1と同様にして、実施例48〜実施例63の蓄電素子(但し、設計容量28mAhのリチウムイオン二次電池)を得た。
(放電性能試験)
得られた非水電解質蓄電素子について、用いた負極板の種類に応じて、実施例28〜実施例31について行った試験と同じ条件にて放電性能試験を行った。なお、グラファイトを負極活物質とする負極板を用いた蓄電素子については、充電電圧は4.20Vであり、放電終止電圧は2.75Vである。
実施例28及び実施例31と併せて、結果を下記表7に示す。
上記したように、不燃性溶媒であるフッ素化エーテルは、非水溶媒における含有量が多いほど、非引火性を向上することができることから、非引火性の観点からは、非水溶媒におけるフッ素化エーテルの含有量は45体積%以上とすることが好ましい。しかしながら、非水溶媒におけるフッ素化エーテルの含有量を45体積%以上とすると、一般に、低温性能が低下する傾向がある。表7からわかるように、グラファイトを負極活物質とする負極板を備える蓄電素子(実施例53〜58)、及びハードカーボンを負極活物質とする負極板を備える蓄電素子(実施例59〜63)では、フッ素化エーテル以外の非水溶媒の組成に関わらず、非水溶媒におけるフッ素化エーテルの割合が大きくなるにつれて、低温性能が低下する傾向があることがわかる。
ところが、チタン酸リチウムを負極活物質とする負極板を用いた蓄電素子のうち、実施例50及び実施例52の蓄電素子では、非水溶媒におけるフッ素化エーテルの含有量が45体積%以上であるにもかかわらず、低温性能が特異的に優れている。
この原因について、発明者らは次のように推察している。
一般に、活物質と非水電解質との界面では両者の反応生成物であるSEI(Solid Electrolyte Interface)が形成される。フッ素化エーテルは、負極活物質であるグラファイトやハードカーボンに対するSEI形成に影響を与え、上記非水溶媒におけるフッ素化エーテルの含有量が多いほど、高抵抗のSEIが形成される傾向があると考えられるのに対し、より貴な電位で作動する負極活物質であるチタン酸リチウムに対するSEI形成への影響が小さく、非水溶媒におけるフッ素化エーテルの含有量が多い場合であっても、高抵抗のSEIが形成されない。
また、一般に、電解質塩の解離は、専ら環状カーボネートによって担われるが、環状カーボネートのうち、PCは、ECと比べてフッ素化エーテルとの相溶性が高い。このことから、フッ素化エーテルを含有する非水電解質においては、低温下での電解質塩の解離への寄与は、上記非水溶媒を構成する材料の中でPCが最も大きい。
また、上記非水溶媒を構成する材料のうち、フッ素化エーテルであるTFEEは、鎖状カーボネートと比べて融点が著しく低く、室温における粘度が鎖状カーボネートと同様に小さいことから、低温性能に与える影響が大きい。
従って、上記非水溶媒における上記フッ素化エーテルの含有量とPCの含有量の体積比率は、低温性能を支配するパラメータとなりうる。
以上のことから、チタン酸リチウムを負極活物質とする負極板を用いた蓄電素子においては、上記非水溶媒におけるフッ素化エーテルの含有量が45体積%以上であっても、高抵抗なSEI被膜が形成されないうえ、上記フッ素化エーテルの含有量に対する上記PCの体積比率が特定範囲内であることで、低温性能の点で特異的に好適な条件が与えられたと考えられる。
本発明は、パーソナルコンピュータ、通信端末等の電子機器、自動車などの電源として使用される非水電解質二次電池をはじめとした非水電解質蓄電素子及びこれに備わる非水電解質などに適用できる。
(符号の説明)
1 非水電解質二次電池
2 電極体
3 電池容器
4 正極端子
4’ 正極リード
5 負極端子
5’ 負極リード
20 蓄電ユニット
30 蓄電装置

Claims (7)

  1. 非水溶媒と、電解質塩とを含有し、
    上記非水溶媒が、プロピレンカーボネートを含む環状カーボネートと、鎖状カーボネートと、フッ素化エーテルとを含有し、
    上記環状カーボネートにおける上記プロピレンカーボネートの含有量が10体積%以上であり、
    上記環状カーボネート及び上記フッ素化エーテルの合計含有量に対する上記環状カーボネートの体積比率が73体積%以下であり、
    上記鎖状カーボネート及び上記フッ素化エーテルの合計含有量に対する上記鎖状カーボネートの体積比率が55体積%以下であり、
    上記非水溶媒は、以下の(1)及び(2):
    (1)環状カーボネート、鎖状カーボネート、フッ素化エーテル、及びフッ素化リン酸エステル以外を構成要素とする有機系液体であって、引火点100℃以下の有機系液体Aを含有しない;及び
    (2)上記有機系液体Aを含有し、且つ、上記鎖状カーボネート、上記フッ素化エーテル及び上記有機系液体Aの合計含有量に対する上記鎖状カーボネート及び上記有機系液体Aの合計含有量の体積比率が55体積%以下である;
    のいずれか一方を満たし、
    上記電解質塩は、以下の(3)及び(4):
    (3)BF4アニオンを含有しない;及び
    (4)BF4アニオンを含有し、上記電解質塩の合計含有量に対する上記BF4アニオンを有する塩のモル比率が20モル%以下である;
    のいずれか一方を満たし、
    上記フッ素化エーテルが、引火点がなく沸点が70℃以下であるフッ素化エーテルを含有する、
    非水電解質。
  2. 上記鎖状カーボネート及び上記フッ素化エーテルの合計含有量に対する上記鎖状カーボネートの体積比率が20体積%以上である請求項1の非水電解質。
  3. 上記非水溶媒が、環状カルボン酸エステルを含有する請求項1又は請求項2の非水電解質。
  4. 上記電解質塩の合計含有量に対する上記BF4アニオンを有する塩のモル比率が2モル%以上である請求項1〜請求項3のいずれかの非水電解質。
  5. ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、プロペンスルトン、ビスオキサラトボレート塩、ジフルオロオキサラトボレート塩、ジフルオロリン酸塩、ジフルオロ(ビスオキサラト)ホスフェート塩、4−メチルスルホニルオキシメチル−2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオラン、4,4´−ビス(2,2−ジオキソ−1,3,2−
    ジオキサチオラン)、及びペンテングリコールスルフェートからなる群から選択される1種又は2種以上を含有している請求項1〜請求項4のいずれかの非水電解質。
  6. 上記非水溶媒におけるフッ素化エーテルの含有量が45体積%以上であり、上記フッ素化エーテルの含有量に対する上記プロピレンカーボネートの体積比率が30体積%以上55体積%以下である、請求項1〜請求項5のいずれかの非水電解質。
  7. 請求項1〜請求項6のいずれかの非水電解質を備える蓄電素子。
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