JP7234529B2 - 非水電解質及び蓄電素子 - Google Patents
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Description
非水溶媒と、電解質塩とを含有し、
上記非水溶媒が、プロピレンカーボネートを含む環状カーボネートと、鎖状カーボネートと、フッ素化エーテルとを含有し、
上記環状カーボネートにおける上記プロピレンカーボネートの含有量が10体積%以上であり、
上記環状カーボネート及び上記フッ素化エーテルの合計含有量に対する上記環状カーボネートの体積比率が73体積%以下であり、
上記鎖状カーボネート及び上記フッ素化エーテルの合計含有量に対する上記鎖状カーボネートの体積比率が55体積%以下であり、
上記非水溶媒は、以下の(1)及び(2):
(1)環状カーボネート、鎖状カーボネート、フッ素化エーテル、及びフッ素化リン酸エステル以外を構成要素とする有機系液体であって、引火点100℃以下の有機系液体Aを含有しない;及び
(2)上記有機系液体Aを含有し、且つ、上記鎖状カーボネート、上記フッ素化エーテル及び上記有機系液体Aの合計含有量に対する上記鎖状カーボネート及び上記有機系液体Aの合計含有量の体積比率が55体積%以下である;
のいずれか一方を満たし、
上記電解質塩は、以下の(3)及び(4):
(3)BF4アニオンを含有しない;及び
(4)BF4アニオンを含有し、上記電解質塩の合計含有量に対する上記BF4アニオンを有する塩のモル比率が20モル%以下である;
のいずれか一方を満たし、
上記フッ素化エーテルが、引火点がなく沸点が70℃以下であるフッ素化エーテルを含有する、
非水電解質である。
非水溶媒と、電解質塩とを含有し、
上記非水溶媒が、プロピレンカーボネートを含む環状カーボネートと、鎖状カーボネートと、フッ素化エーテルとを含有し、
上記環状カーボネートにおける上記プロピレンカーボネートの含有量が10体積%以上であり、
上記環状カーボネート及び上記フッ素化エーテルの合計含有量に対する上記環状カーボネートの体積比率が73体積%以下であり、
上記鎖状カーボネート及び上記フッ素化エーテルの合計含有量に対する上記鎖状カーボネートの体積比率が55体積%以下であり、
上記非水溶媒は、以下の(1)及び(2):
(1)環状カーボネート、鎖状カーボネート、フッ素化エーテル、及びフッ素化リン酸エステル以外を構成要素とする有機系液体であって、引火点100℃以下の有機系液体Aを含有しない;及び
(2)上記有機系液体Aを含有し、且つ、上記鎖状カーボネート、上記フッ素化エーテル及び上記有機系液体Aの合計含有量に対する上記鎖状カーボネート及び上記有機系液体Aの合計含有量の体積比率が55体積%以下である;
のいずれか一方を満たし、
上記電解質塩は、以下の(3)及び(4):
(3)BF4アニオンを含有しない;及び
(4)BF4アニオンを含有し、上記電解質塩の合計含有量に対する上記BF4アニオンを有する塩のモル比率が20モル%以下である;
のいずれか一方を満たし、
上記フッ素化エーテルが、引火点がなく沸点が70℃以下であるフッ素化エーテルを含有する、
非水電解質である。
本発明の一実施形態に係る非水電解質は、非水溶媒と、この非水溶媒に溶解している電解質塩を含有する。なお、当該非水電解質は、液体に限定されるものではない。すなわち、当該非水電解質は、液体状のものだけに限定されず、ゲル状のもの等も含まれる。
上記非水溶媒は、プロピレンカーボネートを含む環状カーボネートと、鎖状カーボネートと、フッ素化エーテルとを含有する。
環状カーボネートは、プロピレンカーボネートを含む。環状カーボネートとして凝固点が低いプロピレンカーボネートを含むことで、低温下における放電性能を高めることができる。
(鎖状カーボネート)
鎖状カーボネートとしては、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジフェニルカーボネート等を挙げることができ、これらの中でもEMC及びDMCが好ましい。
フッ素化エーテルは、エーテルが有する炭化水素基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された化合物をいう。フッ素化エーテルは、1種又は2種以上を用いることができる。
環状カーボネート、鎖状カーボネート及びフッ素化エーテル以外のその他の非水溶媒としては、上記フッ素化リン酸エステルを除き、一般的な蓄電素子の非水電解質における非水溶媒として通常用いられる公知の非水溶媒を本発明の効果を損なわない範囲で用いることができる。上記非水溶媒としては、γ-ブチロラクトン(GBL)、γ-バレロラクトン、プロピオラクトン等の環状カルボン酸エステル、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等の鎖状カーボネート、酢酸メチル、酪酸メチル等の鎖状カルボン酸エステル、テトラヒドロフラン若しくはその誘導体、1,3-ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、メトキシエトキシエタン、メチルジグライム等のエーテル類、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類、ジオキサラン若しくはその誘導体等の単独又はそれら2種以上の混合物等を挙げることができる。
上記電解質塩としては、一般的な蓄電素子の非水電解質における電解質塩として通常用いられる公知の電解質塩を用いることができる。上記電解質塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、オニウム塩等を挙げることができるが、リチウム塩が好ましい。
上記添加剤としては、充放電サイクル特性をより高める観点から、例えばビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ジフルオロエチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水グルタコン酸、無水イタコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物等の負極被膜形成剤;
亜硫酸エチレン、亜硫酸プロピレン、亜硫酸ジメチル、プロパンスルトン、プロペンスルトン、ブタンスルトン、メタンスルホン酸メチル、ブスルファン、トルエンスルホン酸メチル、硫酸ジメチル、硫酸エチレン、スルホラン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、テトラメチレンスルホキシド、ジフェニルスルフィド、チオアニソール、ジフェニルジスルフィド、ジピリジニウムジスルフィド、ビスオキサラトボレート塩、ジフルオロオキサラトボレート塩、ジフルオロリン酸塩、ジフルオロ(ビスオキサラト)ホスフェート塩、4-メチルスルホニルオキシメチル-2,2-ジオキソ-1,3,2-ジオキサチオラン、4,4´-ビス(2,
2-ジオキソ-1,3,2-ジオキサチオラン)、ペンテングリコールスルフェート等の正極保護剤などが挙げられる。
2-フルオロビフェニル、o-シクロヘキシルフルオロベンゼン、p-シクロヘキシルフルオロベンゼン等の前記芳香族化合物の部分フッ素化物;
2,4-ジフルオロアニソール、2,5-ジフルオロアニソール、2,6-ジフルオロアニソール、3,5-ジフルオロアニソール等の含フッ素アニソール化合物等の過充電防止剤を添加することも可能である。
本発明の一実施形態に係る蓄電素子は、正極、負極及び非水電解質(電解液)を有する。以下、蓄電素子の一例として、非水電解質二次電池について説明する。上記正極及び負極は、通常、セパレータを介して積層又は巻回により交互に重畳された電極体を形成する。この電極体はケースに収納され、このケース内に上記非水電解質が充填される。当該非水電解質二次電池においては、非水電解質として、上述した当該非水電解質が用いられている。上記非水電解質は、正極と負極との間に介在する。また、上記ケースとしては、非水電解質二次電池のケースとして通常用いられる公知の金属製ケース等を用いることができる。
上記正極は、正極基材及びこの正極基材に直接又は中間層を介して配される正極活物質層を有する。
上記負極は、負極基材及びこの負極基材に直接又は中間層を介して配される負極活物質層を有する。上記中間層は正極の中間層と同様の構成とすることができる。
Li等の金属又は半金属;
Si酸化物、Sn酸化物等の金属酸化物又は半金属酸化物;
ポリリン酸化合物;
黒鉛(グラファイト)、非黒鉛質炭素(易黒鉛化性炭素又は難黒鉛化性炭素)等の炭素材料;
チタン酸リチウム等のリチウム金属複合酸化物等が挙げられる。
上記セパレータの材質としては、例えば織布、不織布、多孔質樹脂フィルム等が用いられる。これらの中でも、強度の観点から多孔質樹脂フィルムが好ましく、非水電解質の保液性の観点から不織布が好ましい。上記セパレータの主成分としては、強度の観点から例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンが好ましく、耐酸化分解性の観点から例えばポリイミドやアラミド等が好ましい。また、これらの樹脂を複合してもよい。
本発明の一実施形態に係る蓄電素子の製造方法は、正極、負極及び非水電解質(電解液)を有する非水電解質二次電池の製造方法であって、上記非水電解質として、当該非水電解質を用いる。当該製造方法は、例えば、正極及び負極(電極体)をケースに収容する工程及び上記ケースに上記非水電解質を注入する工程を備える。
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、上記態様の他、種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。例えば、上記正極又は負極において、中間層を設けなくてもよい。また、上記実施形態においては、蓄電素子が非水電解質二次電池である形態を中心に説明したが、その他の蓄電素子であってもよい。その他の蓄電素子としては、キャパシタ(電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ)等が挙げられる。
(非水電解質の作製)
EC、PC、EMC、DMC及びTFEEを40:10:12.5:12.5:25の体積比で混合した非水溶媒にLiPF6を1.0Mの濃度で溶解させ、さらに添加剤としてVCを2質量%溶解させて実施例1の非水電解質を得た。
コバルト酸リチウムを正極活物質とする正極板を作製した。また、グラファイトを負極活物質とする負極板を作製した。次に、ポリエチレン製微多孔膜からなるセパレータを介して、上記正極板と上記負極板とを積層することにより電極体を作製した。この電極体をラミネートケースに収納し、正極端子及び負極端子を取り付けた。このアルミラミネートフィルムケース内部に上記非水電解質を注入した後に封口し、蓄電素子(設計容量45mAhのリチウムイオン二次電池)を得た。
EC、PC、EMC、DMC及びTFEEの含有量を表1に記載のようにしたこと以外は、実施例1と同様にして実施例2~実施例12及び比較例1~比較例9の非水電解質、並びに蓄電素子を得た。但し、比較例9には、フッ素化リン酸エステルとしてリン酸トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)(TFEP)を含有させた。なお、以下の表1中の各組成における「-」は、該当する成分を用いなかったことを示す。
(セタ式引火点測定)
実施例1~実施例12及び比較例1~比較例9の非水電解質について、JIS K2265-2(2007)に準拠してセタ密閉式引火点測定器(Stanhope-Seta社製、82150-0モデル)による引火点測定を行った。80℃以下の温度で引火点を示さなかった場合を○とし、引火点を示した場合を×とした。測定結果を下記表1に示す。
実施例1~実施例12及び比較例1~比較例9の非水電解質について、JIS K2265-4(2007)に準拠してクリーブランド開放式引火点試験器(田中科学機器製作株式会社製、aco-8形)による引火点測定を行った。引火前に非水電解質が沸騰した場合を○とし、引火点を示した場合を×とした。測定結果を下記表1に示す。
得られた非水電解質蓄電素子について、放電試験に先立って、25℃にて電流0.1C、2時間の定電流充電を行った後、2日間放置した。引き続き、25℃にて電流0.2C、4.1Vで、8時間の定電流定電圧充電を行った。10分放置した後、25℃にて電流0.2Cの、3.0Vまで定電流放電を行った。次に、25℃にて電流0.2C、4.1Vで、8時間の定電流定電圧充電を行った。次に、0℃にて3時間以上放置した。そして、0℃で3.0Vまで0.2Cの定電流で放電し、放電エネルギーを測定した。
EC、PC、EMC、DMC及びTFEEの含有量を表2に記載のようにしたこと以外は、実施例1と同様にして実施例13~実施例27、及び比較例10~14の非水電解質を得た。なお、表2中の各組成における「-」は、該当する成分を用いなかったことを示す。
但し、実施例23、実施例24、及び比較例10には、環状エステルとしてGBLを含有させた。ここで、鎖状カーボネート(EMC、DMC)、フッ素化エーテル(TFEE)及び環状エステル(GBL)の合計含有量に対する鎖状カーボネート(EMC、DMC)及び環状エステル(GBL)の合計含有量の体積比率は、実施例23においては55体積%、実施例24においては54体積%、比較例10においては57体積%である。
また、実施例25、実施例26、実施例27、及び比較例11には、電解質塩としてLiPF6及びLiBF4を用いた。それぞれの電解質塩の濃度は表2に記載の通りとした。
フッ素化エーテルとしてTFEE以外のフッ素化エーテルを用い、EC、PC、EMC、DMC及びTFEEの含有量を表2に記載のようにしたこと以外は、実施例1と同様にして比較例12~比較例14の非水電解質を得た。ここで、フッ素化エーテルとして、比較例12には2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル-1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル(FE1;CAS No.50807-74-4、引火点なし、沸点:68℃)を用い、比較例13には1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル(FE2;CAS No.16627-68-2、引火点なし、沸点:93℃)を用い、比較例14には1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル(FE3;CAS No.382-34-3、引火点あり、沸点:58℃)を用いた。
EC、PC、EMC、DMC及びTFEEの含有量を表2に記載のようにしたこと以外は、実施例1と同様にして比較例15~比較例17の非水電解質の調整を試みた。しかしながら、比較例15及び比較例16では、溶解しないLiPF6が残存した。従って、上記非水溶媒におけるフッ素化エーテルの含有量は多すぎないものとすることが好ましく、具体的には75体積%以下とすることが好ましいことがわかる。比較例17では、PCを含有していないことから、ECが析出した。
LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2で表される層状のリチウム遷移金属複合酸化物を正極活物質とする正極板を作製した。また、ハードカーボンを負極活物質とする負極板、及び、チタン酸リチウムを負極活物質とする負極板を作製した。非水電解質として、上記実施例1及び実施例22の非水電解質を用い、これらを表3に示すように組合せたことを除いては、実施例1と同様にして、実施例27~実施例30の蓄電素子(但し、設計容量28mAhのリチウムイオン二次電池)を得た。
得られた非水電解質蓄電素子について、25℃及び0℃の温度環境下にて放電性能試験を行った。
以下の試験において、正極活物質に対する利用率の上限を揃えるため、ハードカーボンを負極活物質とする負極板を用いた蓄電素子については、充電電圧を4.22Vとし、放電終止電圧を2.50Vとした。一方、チタン酸リチウムを負極活物質とする負極板を用いた蓄電素子については、充電電圧を2.69Vとし、放電終止電圧を1.20Vとした。
まず、25℃にて電流0.1C、2時間の定電流充電を行った後、2日間放置した。引き続き、25℃にて電流0.2C、8時間の定電流定電圧充電を行った。10分放置した後、25℃にて電流0.2Cの定電流放電を行い、25℃での放電エネルギーを測定した。
次に、25℃にて電流0.2C、8時間の定電流定電圧充電を行った。
この後、温度0℃の環境下に3時間以上放置した。そして、0℃にて電流0.2Cの定電流放電を行い、0℃での放電エネルギーを測定した。
また、25℃での放電エネルギーに対する0℃での放電エネルギーの百分率を「低温性能(%)」として算出した。
結果を下記表3に示す。
[実施例32~実施例34、比較例18]
LiMn2O4で表されるスピネル型マンガン酸リチウムとLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2で表される層状のリチウム遷移金属複合酸化物を混合したものを正極活物質とする正極板を作製した。また、グラファイトを負極活物質とする負極板を作製した。非水電解質として、上記実施例1、実施例24、実施例23、及び比較例10の非水電解質をそれぞれ用いたことを除いては、実施例1と同様にして、実施例32~実施例34、及び比較例18の蓄電素子(但し、設計容量24.5mAhのリチウムイオン二次電池)を得した。
得られた非水電解質蓄電素子について、25℃及び0℃の温度環境下にて放電性能試験を行った。
まず、25℃にて電流0.1C、2時間の定電流充電を行った後、2日間放置した。引き続き、25℃にて電流0.2C、4.1V、8時間の定電流定電圧充電を行った。10分放置した後、25℃にて電流0.2C、終止電圧2.75Vの定電流放電を行った。
次に、25℃にて電流1C、4.1V、8時間の定電流定電圧充電を行った。10分放置した後、25℃にて電流1C、終止電圧2.75Vの定電流放電を行い、25℃での放電エネルギーを測定した。
次に、25℃にて電流0.2C、8時間の定電流定電圧充電を行った。
この後、温度0℃の環境下に3時間以上放置した。そして、0℃で電流1C、終止電圧2.75Vの定電流放電を行い、25℃での放電エネルギーを測定した。
結果を下記表4に示す。
[実施例35~実施例37、比較例19]
非水電解質として、上記実施例25~実施例27、及び比較例11の非水電解質をそれぞれ用いたことを除いては、実施例32と同様にして、実施例35~実施例37、及び比較例19の蓄電素子(但し、設計容量24.5mAhのリチウムイオン二次電池)を得た。得られた非水電解質蓄電素子について、実施例32と同様の評価を行った結果を下記表5に示す。
[実施例38~実施例47、比較例20]
(非水電解質の作製)
EC、PC、EMC、DMC及びTFEEを40:10:12.5:12.5:25の体積比で混合した非水溶媒にLiPF6を1.0Mの濃度で溶解させ、さらに第一の添加剤としてVCを1質量%溶解させ、さらに第二の添加剤として表6に示す種類及び量の化合物を溶解させて実施例39~実施例47、及び比較例20の非水電解質を得た。ここで、第二の添加剤の量は、1質量%を添加した場合に、25℃にて24時間静置しても全量が溶解しないことが目視で確認されたものについては0.25質量%とすることにした。
EC及びEMCを30:70の体積比で混合した非水溶媒にLiPF6を1.0Mの濃度で溶解させ、さらに添加剤としてVCを2質量%溶解させて比較例21の非水電解質を得た。
LiMn2O4で表されるスピネル型マンガン酸リチウムとLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2で表される層状のリチウム遷移金属複合酸化物を混合したものを正極活物質とする正極板を作製した。また、グラファイトを負極活物質とする負極板を作製した。ポリオレフィン製多孔質樹脂フィルムセパレータを介して、上記正極及び負極を巻回することで発電要素を作製した。この発電要素をアルミケースに挿入した後に、ケースの蓋をレーザー溶接で溶接した。蓋に設けた注液孔を介して、上記実施例1、実施例39~実施例47、比較例20、及び比較例21の非水電解質を注入した後に注液孔を封止し、蓄電素子(但し、設計容量650mAhのリチウムイオン二次電池)を得た。
得られた非水電解質蓄電素子について、以下の手順で充放電サイクル試験を行った。
まず、25℃にて電流0.1C、2時間の定電流充電を行った後、2日間放置した。引き続き、25℃にて電流0.2C、4.1V、8時間の定電流定電圧充電を行った。10分放置した後、25℃にて電流0.2C、終止電圧2.75Vの定電流放電を行った。
次に、25℃にて電流1C、4.1V、3時間の定電流定電圧充電を行った。10分放置した後、25℃にて電流1C、終止電圧2.75Vの定電流放電を行い、このときの放電容量(mAh)を記録すると共に、放電後の蓄電素子の厚みを測定した。
次に、35℃にて、電流1C、8時間の定電流定充電、及び、電流1C、終止電圧2.75Vの定電流放電を1サイクルとする充放電を500サイクル繰り返した。なお、充電後及び放電後にはそれぞれ10分の休止過程を設けた。500サイクル後、再度、25℃にて、電流1C、4.1V、3時間の定電流定電圧充電を行った。10分放置した後、25℃にて電流1C、終止電圧2.75Vの定電流放電を行い、このときの放電容量(mAh)を記録すると共に、放電後の蓄電素子の厚みを測定した。
結果を下記表6に示す
[実施例48~実施例63]
LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2で表される層状のリチウム遷移金属複合酸化物を正極活物質とする正極板を作製した。また、グラファイトを負極活物質とする負極板、ハードカーボンを負極活物質とする負極板、及び、チタン酸リチウムを負極活物質とする負極板を作製した。非水電解質として、上記実施例1、及び実施例15~19の非水電解質を用い、これらを表7に示すように組合せたことを除いては、実施例1と同様にして、実施例48~実施例63の蓄電素子(但し、設計容量28mAhのリチウムイオン二次電池)を得た。
得られた非水電解質蓄電素子について、用いた負極板の種類に応じて、実施例28~実施例31について行った試験と同じ条件にて放電性能試験を行った。なお、グラファイトを負極活物質とする負極板を用いた蓄電素子については、充電電圧は4.20Vであり、放電終止電圧は2.75Vである。
実施例28及び実施例31と併せて、結果を下記表7に示す。
ところが、チタン酸リチウムを負極活物質とする負極板を用いた蓄電素子のうち、実施例50及び実施例52の蓄電素子では、非水溶媒におけるフッ素化エーテルの含有量が45体積%以上であるにもかかわらず、低温性能が特異的に優れている。
一般に、活物質と非水電解質との界面では両者の反応生成物であるSEI(Solid Electrolyte Interface)が形成される。フッ素化エーテルは、負極活物質であるグラファイトやハードカーボンに対するSEI形成に影響を与え、上記非水溶媒におけるフッ素化エーテルの含有量が多いほど、高抵抗のSEIが形成される傾向があると考えられるのに対し、より貴な電位で作動する負極活物質であるチタン酸リチウムに対するSEI形成への影響が小さく、非水溶媒におけるフッ素化エーテルの含有量が多い場合であっても、高抵抗のSEIが形成されない。
また、一般に、電解質塩の解離は、専ら環状カーボネートによって担われるが、環状カーボネートのうち、PCは、ECと比べてフッ素化エーテルとの相溶性が高い。このことから、フッ素化エーテルを含有する非水電解質においては、低温下での電解質塩の解離への寄与は、上記非水溶媒を構成する材料の中でPCが最も大きい。
また、上記非水溶媒を構成する材料のうち、フッ素化エーテルであるTFEEは、鎖状カーボネートと比べて融点が著しく低く、室温における粘度が鎖状カーボネートと同様に小さいことから、低温性能に与える影響が大きい。
従って、上記非水溶媒における上記フッ素化エーテルの含有量とPCの含有量の体積比率は、低温性能を支配するパラメータとなりうる。
1 非水電解質二次電池
2 電極体
3 電池容器
4 正極端子
4’ 正極リード
5 負極端子
5’ 負極リード
20 蓄電ユニット
30 蓄電装置
Claims (6)
- 非水溶媒と、電解質塩とを含有し、
上記非水溶媒が、プロピレンカーボネートを含む環状カーボネートと、鎖状カーボネートと、フッ素化エーテルとを含有し、
上記非水溶媒における上記環状カーボネートの含有量が10体積%以上であり、
上記環状カーボネートにおける上記プロピレンカーボネートの含有量が10体積%以上であり、
上記環状カーボネート及び上記フッ素化エーテルの合計含有量に対する上記環状カーボネートの体積比率が73体積%以下であり、
上記鎖状カーボネート及び上記フッ素化エーテルの合計含有量に対する上記鎖状カーボネートの体積比率が55体積%以下であり、
上記非水溶媒は、以下の(1)及び(2):
(1)環状カーボネート、鎖状カーボネート、フッ素化エーテル、及びフッ素化リン酸エステル以外を構成要素とする有機系液体であって、引火点100℃以下の有機系液体Aを含有しない;及び
(2)上記有機系液体Aを含有し、且つ、上記鎖状カーボネート、上記フッ素化エーテル及び上記有機系液体Aの合計含有量に対する上記鎖状カーボネート及び上記有機系液体Aの合計含有量の体積比率が55体積%以下である;
のいずれか一方を満たし、
上記電解質塩は、BF4アニオンを含有し、上記電解質塩の合計含有量に対する上記BF4アニオンを有する塩のモル比率が20モル%以下であり、
上記フッ素化エーテルが、引火点がなく沸点が70℃以下であるフッ素化エーテルを含有する、
非水電解質。 - 非水溶媒と、電解質塩とを含有し、
上記非水溶媒が、プロピレンカーボネートを含む環状カーボネートと、鎖状カーボネートと、フッ素化エーテルとを含有し、
上記非水溶媒における上記環状カーボネートの含有量が10体積%以上であり、
上記環状カーボネートにおける上記プロピレンカーボネートの含有量が10体積%以上であり、
上記環状カーボネート及び上記フッ素化エーテルの合計含有量に対する上記環状カーボネートの体積比率が73体積%以下であり、
上記鎖状カーボネート及び上記フッ素化エーテルの合計含有量に対する上記鎖状カーボネートの体積比率が55体積%以下であり、
上記非水溶媒は、環状カーボネート、鎖状カーボネート、フッ素化エーテル、及びフッ素化リン酸エステル以外を構成要素とする有機系液体であって、引火点100℃以下の有機系液体Aを含有し、且つ、上記鎖状カーボネート、上記フッ素化エーテル及び上記有機系液体Aの合計含有量に対する上記鎖状カーボネート及び上記有機系液体Aの合計含有量の体積比率が55体積%以下であり、
上記電解質塩は、以下の(3)及び(4):
(3)BF4アニオンを含有しない;及び
(4)BF4アニオンを含有し、上記電解質塩の合計含有量に対する上記BF4アニオンを有する塩のモル比率が20モル%以下である;
のいずれか一方を満たし、
上記フッ素化エーテルが、引火点がなく沸点が70℃以下であるフッ素化エーテルを含有する、
非水電解質。 - 非水溶媒と、電解質塩とを含有し、
上記非水溶媒が、プロピレンカーボネートを含む環状カーボネートと、鎖状カーボネートと、フッ素化エーテルとを含有し、
上記非水溶媒における上記環状カーボネートの含有量が10体積%以上であり、
上記環状カーボネート及び上記フッ素化エーテルの合計含有量に対する上記環状カーボネートの体積比率が73体積%以下であり、
上記鎖状カーボネート及び上記フッ素化エーテルの合計含有量に対する上記鎖状カーボネートの体積比率が55体積%以下であり、
上記非水溶媒は、以下の(1)及び(2):
(1)環状カーボネート、鎖状カーボネート、フッ素化エーテル、及びフッ素化リン酸エステル以外を構成要素とする有機系液体であって、引火点100℃以下の有機系液体Aを含有しない;及び
(2)上記有機系液体Aを含有し、且つ、上記鎖状カーボネート、上記フッ素化エーテル及び上記有機系液体Aの合計含有量に対する上記鎖状カーボネート及び上記有機系液体Aの合計含有量の体積比率が55体積%以下である;
のいずれか一方を満たし、
上記電解質塩は、以下の(3)及び(4):
(3)BF4アニオンを含有しない;及び
(4)BF4アニオンを含有し、上記電解質塩の合計含有量に対する上記BF4アニオンを有する塩のモル比率が20モル%以下である;
のいずれか一方を満たし、
上記フッ素化エーテルが、引火点がなく沸点が70℃以下であるフッ素化エーテルを含有し、
上記非水溶媒におけるフッ素化エーテルの含有量が45体積%以上であり、上記フッ素化エーテルの含有量に対する上記プロピレンカーボネートの体積比率が30体積%以上55体積%以下である、
非水電解質。 - 請求項1~請求項3のいずれかの非水電解質を備える蓄電素子。
- 非水溶媒と、電解質塩とを含有し、
上記非水溶媒が、プロピレンカーボネートを含む環状カーボネートと、鎖状カーボネートと、フッ素化エーテルとを含有し、
上記非水溶媒における上記環状カーボネートの含有量が10体積%以上であり、
上記環状カーボネートにおける上記プロピレンカーボネートの含有量が10体積%以上であり、
上記環状カーボネート及び上記フッ素化エーテルの合計含有量に対する上記環状カーボネートの体積比率が73体積%以下であり、
上記鎖状カーボネート及び上記フッ素化エーテルの合計含有量に対する上記鎖状カーボネートの体積比率が55体積%以下であり、
上記非水溶媒は、以下の(1)及び(2):
(1)環状カーボネート、鎖状カーボネート、フッ素化エーテル、及びフッ素化リン酸エステル以外を構成要素とする有機系液体であって、引火点100℃以下の有機系液体Aを含有しない;及び
(2)上記有機系液体Aを含有し、且つ、上記鎖状カーボネート、上記フッ素化エーテル及び上記有機系液体Aの合計含有量に対する上記鎖状カーボネート及び上記有機系液体Aの合計含有量の体積比率が55体積%以下である;
のいずれか一方を満たし、
上記電解質塩は、以下の(3)及び(4):
(3)BF4アニオンを含有しない;及び
(4)BF4アニオンを含有し、上記電解質塩の合計含有量に対する上記BF4アニオンを有する塩のモル比率が20モル%以下である;
のいずれか一方を満たし、
上記フッ素化エーテルが、引火点がなく沸点が70℃以下であるフッ素化エーテルを含有する、
非水電解質を備える蓄電素子
(但し、リチウムと合金可能な金属(a)、リチウムイオンを吸蔵、放出し得る金属酸化物(b)、及びリチウムイオンを吸蔵、放出しうる炭素材料(c)を含む第一の負極活物質にリチウムがドープされた第二の負極活物質を用いて作製された負極と、エチレンカーボネート/プロピレンカーボネート/ジメチルカーボネート/エチルメチルカーボネート/ジエチルカーボネート/フッ素化エーテル化合物の体積比1/1/1/1/1/5の混合物にLiPF6が1モル/Lの濃度で溶解され、上記フッ素化エーテル化合物が、CF 3 CH 2 OCF 3 、CF 3 CH 2 OCF 2 CF 2 H又はHCF 2 CF 2 CH 2 OCF 2 CF 2 Hである非水電解質を備えるものを除く。)。 - 非水溶媒と、電解質塩とを含有し、
上記非水溶媒が、プロピレンカーボネートを含む環状カーボネートと、鎖状カーボネートと、フッ素化エーテルとを含有し、
上記非水溶媒における上記環状カーボネートの含有量が10体積%以上であり、
上記環状カーボネートにおける上記プロピレンカーボネートの含有量が10体積%以上であり、
上記環状カーボネート及び上記フッ素化エーテルの合計含有量に対する上記環状カーボネートの体積比率が73体積%以下であり、
上記鎖状カーボネート及び上記フッ素化エーテルの合計含有量に対する上記鎖状カーボネートの体積比率が55体積%以下であり、
上記非水溶媒は、以下の(1)及び(2):
(1)環状カーボネート、鎖状カーボネート、フッ素化エーテル、及びフッ素化リン酸エステル以外を構成要素とする有機系液体であって、引火点100℃以下の有機系液体Aを含有しない;及び
(2)上記有機系液体Aを含有し、且つ、上記鎖状カーボネート、上記フッ素化エーテル及び上記有機系液体Aの合計含有量に対する上記鎖状カーボネート及び上記有機系液体Aの合計含有量の体積比率が55体積%以下である;
のいずれか一方を満たし、
上記電解質塩は、以下の(3)及び(4):
(3)BF4アニオンを含有しない;及び
(4)BF4アニオンを含有し、上記電解質塩の合計含有量に対する上記BF4アニオンを有する塩のモル比率が20モル%以下である;
のいずれか一方を満たし、
上記フッ素化エーテルが、引火点がなく沸点が70℃以下であるフッ素化エーテルを含有し、
上記非水溶媒におけるフッ素化エーテルの含有量が45体積%以上である、
非水電解質を備え、
チタン酸リチウムを負極活物質とする負極を備える蓄電素子。
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