<第1の実施形態>
第1の実施形態について図1から図4を参照して説明する。
(基本構成)
図1に示すように、第1の実施形態に係る錠剤印刷装置1は、供給装置10と、第1の印刷装置20と、第2の印刷装置30と、回収装置40と、制御装置50とを備えている。なお、第1の印刷装置20及び第2の印刷装置30は基本的に同じ構造である。
供給装置10は、ホッパ11、整列フィーダ12及び受け渡しフィーダ13(搬送装置)を有している。この供給装置10は、印刷対象となる錠剤Tを第1の印刷装置20に供給することが可能に構成されており、第1の印刷装置20の一端側に位置付けられている。ホッパ11は、多数の錠剤Tを収容し、整列フィーダ12に錠剤Tを順次供給する。本実施形態では、印刷対象の錠剤Tは一方面に割線を有する錠剤であり、割線を有さない面にのみ印刷を行う。整列フィーダ12は、供給された錠剤Tを一列に整列し、受け渡しフィーダ13に向けて搬送する。受け渡しフィーダ13は、整列フィーダ12上の錠剤Tを順次吸引して第1の印刷装置20まで搬送し、第1の印刷装置20に供給する。この受け渡しフィーダ13には、錠剤Tの到来を検知し、信号を出力する検出装置27と、錠剤Tの高さ方向を測定可能なレーザ変位計28が設けられている。検出装置27は、レーザ光の投受光によって受け渡しフィーダ13上の錠剤Tの位置(搬送方向A1の位置)を検出し、下流に位置するレーザ変位計28のトリガーセンサとして機能する。検出装置27としては、反射型レーザセンサなど各種のレーザセンサを用いることが可能である。供給装置10は制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。検出装置27(検出装置)が出力する信号は制御装置50に送られ、その下流側に位置するレーザ変位計28による測定タイミング(時間など)のトリガーセンサとして機能する。すなわち、検出装置27が錠剤Tを検出した位置が、基準位置となる。整列フィーダ12及び受け渡しフィーダ13としては、例えば、ベルト搬送機構を用いることが可能である。なお、印刷対象となる錠剤Tは立体形状で、厚みを有する。
第1の印刷装置20は、搬送装置(錠剤搬送装置)21と、検出装置22と、レーザ変位計29と、第1の撮像装置(印刷用の撮像装置)23と、印刷ヘッド装置24と、第2の撮像装置(検査用の撮像装置)25と、乾燥装置26とを備えている。なお、レーザ変位計29は、レーザ変位計28と同じものである。
搬送装置21は、搬送ベルト21a、駆動プーリであるプーリ体21b、複数(図1の例では、三つ)の従動プーリ21c、モータ(駆動部)21d、位置検出器21e及び吸引チャンバ21fを有している。搬送ベルト21aは、無端状に形成されており、プーリ体21b及び各従動プーリ21cに架け渡されている。プーリ体21b及び各従動プーリ21cは装置本体に回転可能に設けられており、プーリ体21bはモータ21dに連結されている。モータ21dは制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。位置検出器21eは、エンコーダなどの機器であり、モータ21dに取り付けられている。この位置検出器21eは電気的に制御装置50に接続されており、検出信号を制御装置50に送信する。制御装置50は、その検出信号に基づいて搬送ベルト21aの位置や移動速度、移動量などの情報を得ることができる。この搬送装置21は、モータ21dによるプーリ体21bの回転によって各従動プーリ21cと共に搬送ベルト21aを回転させ、その搬送ベルト21a上の錠剤Tを図1中の矢印A1の方向(搬送方向A1)に搬送する。搬送ベルト21aの表面には、円形状の吸引孔21gが複数形成されている。これらの吸引孔21gは、それぞれ錠剤Tを吸着する貫通孔であり、二本の搬送経路を形成するように搬送方向A1に沿って並べられている。各吸引孔21gは、吸引チャンバ21f(図1参照)に接続されており、その吸引チャンバ21fにより吸引力を得ることが可能になっている。吸引チャンバ21fは、搬送ベルト21aの各吸引孔21gに置かれた錠剤Tに吸引力を与える(作用させる)ためのチャンバである。この吸引チャンバ21fには、ポンプなどの吸気装置が吸引管(いずれも図示せず)を介して接続されており、吸気装置の作動によって吸引チャンバ21fの内部は減圧される。なお、吸引管は、吸引チャンバ21fの側面(搬送方向A1と平行な面)の略中央に接続されている。また、吸気装置は制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。
検出装置22は、供給装置10によって搬送ベルト21aにおける錠剤Tが供給される位置よりも、搬送方向A1の下流側であって、搬送ベルト21aの上方に設けられている。検出装置22は、レーザ光の投受光によって搬送ベルト21a上の錠剤Tの位置(搬送方向A1の位置)を検出し、下流に位置する各装置のトリガーセンサとして機能する。検出装置22としては、反射型レーザセンサなど各種のレーザセンサを用いることが可能である。検出装置22は制御装置50に電気的に接続されており、制御装置50に検出信号を送信する。
第1の撮像装置23は、検出装置22が設けられた位置よりも搬送方向A1の下流側であって、搬送ベルト21aの上方に設けられている。この第1の撮像装置23は、検出装置22が検出した錠剤Tの位置情報に基づき、錠剤Tが第1の撮像装置23の直下に到達したタイミングで撮像を行い、錠剤Tの上面を含む画像(印刷用の画像)を取得し、取得した画像を制御装置50に送信する。第1の撮像装置23としては、CCD(電荷結合素子)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体)などの撮像素子を有する各種のカメラを用いることが可能である。第1の撮像装置23は制御装置50に電気的に接続されており、それらの駆動が制御装置50により制御される。なお、必要に応じて撮像用の照明も設けられている。
印刷ヘッド装置24は、インクジェット方式ヘッド装置である。印刷ヘッド装置24は、第1の撮像装置23が設けられた位置よりも搬送方向A1の下流側であって、搬送ベルト21aの上方に設けられている。印刷ヘッド装置24は、複数のノズル(不図示)を具備し、それらのノズルから個別にインクを吐出する。印刷ヘッド装置24は、ノズルが並ぶ整列方向が水平面内で搬送方向A1と交差するように(例えば直交するように)設けられている。印刷ヘッド装置24としては、圧電素子、発熱素子または磁歪素子などの駆動素子を有する各種のインクジェット方式の印刷ヘッドを用いることが可能である。印刷ヘッド装置24は制御装置50に電気的に接続されており、それらの駆動が制御装置50により制御される。
第2の撮像装置25は、印刷ヘッド装置24が設けられた位置よりも搬送方向A1の下流側であって、搬送ベルト21aの上方に設けられている。この第2の撮像装置25は、検出装置22が検出した錠剤Tの位置情報に基づき、錠剤Tが第2の撮像装置25の直下に到達したタイミングで撮像を行い、錠剤Tの上面を含む画像(検査用の画像)を取得し、取得した画像を制御装置50に送信する。第2の撮像装置25としては、前述の第1の撮像装置23と同様、CCDやCMOSなどの撮像素子を有する各種のカメラを用いることが可能である。第2の撮像装置25は制御装置50に電気的に接続されており、それらの駆動が制御装置50により制御される。なお、必要に応じて撮像用の照明も設けられている。
乾燥装置26は、第2の撮像装置25が設けられた位置よりも搬送方向A1の下流側に位置付けられ、例えば、搬送装置21の下方に設けられている。この乾燥装置26は、搬送ベルト21a上の各錠剤Tに塗布されたインクを乾燥させる。乾燥装置26としては、放射熱により乾燥対象を乾燥させるヒータ、あるいは、温風や熱風により乾燥対象を乾燥させる送風機など各種の乾燥部を用いることが可能である。乾燥装置26は制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。
なお、乾燥装置26の上方を通過した錠剤Tは、搬送ベルト21aの移動に伴って搬送され、搬送ベルト21aにおける各従動プーリ21c側の端部付近の位置に到達する。この位置で吸引作用が錠剤Tに働かなくなり、錠剤Tは搬送ベルト21aに保持された状態から解放され、第1の印刷装置20から第2の印刷装置30に受け渡される。
第2の印刷装置30は、搬送装置31と、検出装置32と、第1の撮像装置(印刷用の撮像装置)33と、印刷ヘッド装置34と、第2の撮像装置(検査用の撮像装置)35と、乾燥装置36とを備えている。搬送装置31は、搬送ベルト31a、駆動プーリであるプーリ体31b、複数(図1の例では、三つ)の従動プーリ31c、モータ(駆動部)31d、位置検出器31e及び吸引チャンバ31fを有している。なお、第2の印刷装置30を構成する各要素は、前述の第1の印刷装置20の対応する構成要素と基本的に同じ構造であるため、その説明を省略する。第2の印刷装置30の搬送方向は図1中の矢印A2の方向(搬送方向A2)である。
回収装置40は、不良品回収装置41と、良品回収装置42とを備えている。この回収装置40は、第2の印刷装置30の乾燥装置36が設けられた位置よりも搬送方向A2の下流側に位置付けられて設けられており、不良品回収装置41により不良品の錠剤Tを回収し、良品回収装置42により良品の錠剤Tを回収する。
不良品回収装置41は、噴射ノズル41aと、収容部41bとを有している。噴射ノズル41aは、第2の印刷装置30の吸引チャンバ31f内に設けられており、搬送ベルト31aにより搬送される錠剤T(不良品の錠剤T)に向けて気体(例えば、エア)を噴射し、搬送ベルト31aから錠剤Tを落下させる。このとき、噴射ノズル41aから噴射された気体は、搬送ベルト31aの吸引孔(図2に示す吸引孔21gと同様である)を通過して錠剤Tに当たる。噴射ノズル41aは制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。収容部41bは、搬送ベルト31aから落下した錠剤Tを受け取って収容する。
良品回収装置42は、気体吹出部42aと、収容部42bとを有している。この良品回収装置42は、不良品回収装置41が設けられた位置よりも搬送方向A2の下流側に位置付けられて設けられている。気体吹出部42aは、第2の印刷装置30の搬送装置31内であってその搬送装置31の端部、すなわち搬送ベルト31aにおける各従動プーリ31c側の端部に設けられている。気体吹出部42aは、例えば印刷処理中、常に搬送ベルト31aに向けて気体(例えば、エア)を吹き出し、搬送ベルト31aから錠剤Tを落下させる。このとき、気体吹出部42aから吹き出された気体は、搬送ベルト31aの吸引孔(図2に示す吸引孔21gと同様である)を通過して錠剤Tに当たる。この気体吹出部42aとしては、例えば、搬送方向A2に水平面内で交差する方向(例えば直交する方向)に延びるスリット状の開口を有するエアブローを用いることが可能である。気体吹出部42aは制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。収容部42bは、搬送ベルト31aから落下した錠剤Tを受け取って収容する。
ここで、不良品回収装置41を通過した錠剤Tは、搬送ベルト31aの移動に伴って搬送され、搬送ベルト31aにおける各従動プーリ31c側の端部付近の位置に到達する。この位置で吸引作用が錠剤Tに働かなくなるが、気体吹出部42aを設けることで、搬送ベルト31aから錠剤Tを確実に落下させて収容部42bに回収することができる。
制御装置50は、画像処理部51、印刷処理部52、検査処理部53及び記憶部54を備えている。画像処理部51は画像を処理する。印刷処理部52は印刷に係る処理を行う。検査処理部53は検査に係る処理を行う。記憶部54は処理情報や各種プログラムなどの各種情報を記憶する。このような制御装置50は、供給装置10や第1の印刷装置20、第2の印刷装置30を制御し、また、第1の印刷装置20や第2の印刷装置30の個々の検出装置22、32から送信される錠剤Tの位置情報、第1の印刷装置20や第2の印刷装置30の個々の撮像装置23、25、33、35から送信される画像などを受信する。
(レーザ変位計)
図2は、受け渡しフィーダ13の一部を示す図である。受け渡しフィーダ13は内部に図示しない吸引チャンバを備えており、整列フィーダ12から錠剤Tを吸いあげて搬送する。受け渡しフィーダ13において搬送される錠剤Tは、様々な方向で搬送されてくる。また、錠剤Tの一面とそれと対向する他面のいずれか一方に割線が設けられているため、レーザ変位計28に対向する面が、割線を有する面か、有さない面かがばらばらである。図2においては錠剤Tの割線が設けられている面が検出装置27に対向するように受け渡しフィーダ13によって吸引保持され搬送されている。さらに図2において錠剤Tは、その割線の向きが搬送方向A1と直交する方向に対して45度程度傾いた状態で搬送されている例である。錠剤Tが検出装置27を通過すると、あらかじめ定めたタイミングでレーザ変位計28によって錠剤の高さが測定される。この測定によって得られたデータは制御部50に送られ、印刷ヘッド装置24、34による印刷処理に用いられる(詳しくは後述する)。
次に、レーザ変位計28による割線の有無、方向、角度の算出について説明する。
図3は、レーザ変位計28により、錠剤Tにおけるレーザ変位計28と対向する面の、受け渡しフィーダ13のベルト面からの高さを測定するときの模式図である。レーザ変位計28は、錠剤Tの中心に対し、錠剤Tの搬送方向A1にオフセットした位置において錠剤Tの高さを測定する。なお、図3における二点鎖線は、レーザ変位計28の走査方向を示している。図3は、この測定結果を模式的に示している。この測定結果は、搬送方向A1と交差する方向(本実施形態においては直角方向)の錠剤Tの高さを示している。割線が設けられている部分は、割線の深さ分だけ高さが低くなっているので、割線に対応する部分のレーザ変位計28の測定値は低く表示されている。この、測定値が低くなっている部分が錠剤Tの端面からどのくらい離れているか(図3中Lで示す距離)によって、割線の角度を算出することができる。
図3(A)は、割線が搬送方向A1と直交する方向に対して右側に45度程度傾いている。図3(B)は、割線が搬送方向A1と直交する方向に対して左側に45度程度傾いている。ここで、レーザ変位計28の測定位置(正確には走査位置)が、錠剤Tの搬送方向A1で錠剤Tの中心と一致している場合には、割線がある場所が測定値の中央となってしまい、錠剤Tの端面からの距離が図3(A)と図3(B)とで同じになってしまう。したがって、割線の向き(搬送方向A1に直交する方向からどちら側に傾いているか)が判別できないことになる。本実施形態においては、レーザ変位計28の測定位置は、錠剤Tの中心からオフセットした位置としている。これは、前述の検出装置27による錠剤Tの到来を検知した信号出力に基づいて、測定位置(走査タイミング)を設定している。これにより上述したように割線の方向が認識できる。
(印刷工程)
次に、前述の錠剤印刷装置1が行う印刷処理及び検査処理について説明する。
まず、印刷に要する印刷データなどの各種情報が制御装置50の記憶部54に記憶される。そして、供給装置10のホッパ11に印刷対象の錠剤Tが多数投入されると、錠剤Tはホッパ11から整列フィーダ12に順次供給され始め、整列フィーダ12により移動する。この錠剤Tは受け渡しフィーダ13に吸い上げられ、ここで前述したように割線の有無、方向、角度(割線情報)を検出し、この情報が制御部50へと送られる。その後、錠剤Tは受け渡しフィーダ13より搬送ベルト21aに順次供給される。搬送ベルト21aは、モータ21dによるプーリ体21b及び各従動プーリ21cの回転によって搬送方向A1に回転している。このため、搬送ベルト21a上に供給された錠剤Tは搬送ベルト21a上に並んで所定の移動速度で搬送されていく。なお、搬送ベルト31aもモータ31dによるプーリ体31b及び各従動プーリ31cの回転によって搬送方向A2に回転している。
以下は、レーザ変位計28と対向する面に割線がある場合を想定する。
搬送ベルト21a上の錠剤Tは検出装置22によって検出される。これにより、錠剤Tの位置情報(搬送方向A1の位置)が取得され、制御装置50に入力される。この錠剤Tの位置情報は、記憶部54に保存されて後処理で用いられる。次に、搬送ベルト21a上の錠剤Tが前述の錠剤Tの位置情報に基づくタイミングで第1の撮像装置23によって撮像され、撮像された画像が制御装置50に送信される。第1の撮像装置23から送信された個々の画像に基づき、錠剤Tの位置ずれ情報(例えば、X方向、Y方向及びθ方向での錠剤Tの位置ずれ)が画像処理部51により生成され、記憶部54に保存される。この錠剤Tの位置ずれ情報に基づき、錠剤Tに対する印刷条件(インクの吐出位置や吐出速度など)が印刷処理部52により設定され、記憶部54に保存される。
次いで、搬送ベルト21a上の個々の錠剤Tは、前述の錠剤Tの位置情報に基づくタイミング、すなわち錠剤Tが印刷ヘッド装置24の下方に到達したタイミングで、前述の印刷条件に基づいて印刷ヘッド装置24により印刷が実行される。この場合、印刷は割線のない面にされる。印刷ヘッド装置24において、各ノズルからインクが適宜吐出され、その錠剤Tの上面に文字(例えばアルファベット、片仮名、番号)やマーク(例えば記号、図形)などの識別情報が印刷される。このとき、制御部50はレーザ変位計28によって認識された割線情報(割線の有無、方向、角度)に基づいて印刷データを生成し、この印刷データに基づいて識別情報が錠剤Tに割線に平行に印刷される。
識別情報が印刷された錠剤Tは、検出装置22が検出した錠剤Tの位置情報に基づくタイミングで第2の撮像装置25によって撮像され、撮像された画像が制御装置50に送信される。第2の撮像装置25から送信された個々の画像に基づき、錠剤Tごとの印刷パターンの印刷位置を示す印刷位置情報が画像処理部51により生成され、記憶部54に保存される。その印刷位置情報に基づき、錠剤Tに対する印刷良否が検査処理部53により判断され、錠剤Tごとの印刷良否の結果を示す印刷良否結果情報が記憶部54に保存される。例えば、印刷パターンが錠剤Tの所定位置に印刷されているか否かが判断される。
検査後の錠剤Tは、搬送ベルト21aの移動に伴って搬送され、乾燥装置26の上方を通過する。このとき、錠剤Tに塗布されたインクは、錠剤Tが乾燥装置26の上方を通過する間に乾燥装置26によって乾燥し、インクが乾燥した錠剤Tは搬送ベルト21aの移動に伴って搬送されていき、搬送ベルト21aにおける各従動プーリ21c側の端部付近に位置する。この位置で吸引作用が錠剤Tに働かなくなり、錠剤Tは搬送ベルト21aに保持された状態から解放され、第1の印刷装置20から第2の印刷装置30に渡される。この場合、第2の印刷装置30による処理はされず、錠剤Tは、不良品回収装置41に到達する。不良品の錠剤Tは、噴射ノズル41aから噴射された気体により搬送ベルト31aから落とされ、収容部41bによって回収される。一方、良品の錠剤Tは、不良品回収装置41を通過し、良品回収装置42に到達する。この位置で良品の錠剤Tは、吸引作用が錠剤Tに働かなくなるとともに、気体吹出部42aから吹き出された気体によって搬送ベルト31aから離れて落下し、収容部42bによって回収される。
上述の、錠剤Tの搬送方向A1の錠剤Tの中心からのオフセット量について説明する。割線の幅が概ね1mm程度と仮定し、錠剤Tが平面視円形で、その直径が12mmであるときには、錠剤Tが水平面内で回転して割線の方向が搬送方向A1に対して直交するような角度を有する場合、すなわち割線の方向が図4(A)のような状態となったとき、レーザ変位計28の走査位置が、割線内を通過している場合、錠剤が10度程度回転してもレーザ変位計28の出力値に変化が生じない場合が考えられる。つまり、割線の方向とレーザ変位計の走査方向が一致するような方向の場合、割線の方向が10度程度回転しても、その回転状態は認識できないことになる。したがって、割線に平行に識別情報を印刷しようとしても、10度程度回転方向にずれる場合が生じることになる。
このような回転状態を許容できる角度が、例えば1度となる場合、錠剤Tが回転方向において1度変化したときにレーザ変位計28で割線の部分を測定するには、割線の端面位置に相当する部分を測定位置とし、その位置から角度1度に相当する距離である約0.1mm離れた位置、すなわち、割線の端面位置よりマイナス0.1mmで測定すれば、割線が角度1度向きが変わったときに、割線部分を測定することができることになる。つまり、オフセット位置は、錠剤に形成された割線の端面位置よりも中心側であることが望ましく、最適なオフセット位置は、割線の端面位置より若干内側ということになる。そして、錠剤のサイズや必要とする回転方向の角度に応じて適宜決定される。
ところで、レーザ変位計28で割線情報が得られなかった場合には、第1の印刷装置20に備えられるレーザ変位計29によって割線情報を得る。レーザ変位計29は、検出装置22が出力する検出信号に基づき、レーザ変位計28と同様に錠剤Tの高さを測定する。レーザ変位計29で得られた割線情報によって生成された印刷データは、第2の印刷装置30の印刷ヘッド装置34における印刷処理において用いられる。この場合第1の印刷装置20において印刷処理はされない。
また、オフセット位置は錠剤に形成された割線の端面位置よりも外側にあってもよい。ただし、少なくとも錠剤Tの高さを測定可能な位置である必要があるため、錠剤Tの外形の内接円半径以下のオフセット量であることが必須となる。オフセット量が大きい方が、レーザ変位計28の測定値の割線に対応する部分の錠剤Tの端面からの距離(図3中Lで示す距離)が、割線の回転方向の角度変化に応じて大きく変化するので、この角度の算出精度は向上する。しかし、この場合においては、例えば図4(B)に示すように、割線が形成されている面であるにもかかわらず、レーザ変位計28の走査領域に割線が存在しないために、割線の検出が不可能になってしまうことがある。このような場合には、レーザ変位計28、レーザ変位計29のいずれによっても割線が検出されないことになる。
このように、レーザ変位計28、29の両方において割線の検出ができなかった場合には、エラーとして、その錠剤Tには印刷を行わないよう第1の印刷装置20および第2の印刷装置30を制御する。その後、エラーとなった錠剤Tは不良品回収装置41において回収する。
以上のように本実施形態によれば、レーザ変位計28によって割線情報を得ることによって、割線の位置、方向に応じた印刷を行うことができる。
特に、錠剤Tの一方の面にのみ割線がある場合、印刷に先立って両方の面のいずれかに割線が存在(有無)し、その方向にどの角度であるかを、錠剤Tの高さ測定値だけで算出することができる。よって印刷装置の処理速度の低下を抑えることができる。
また、印刷対象となる錠剤Tが色のついた錠剤であったり、表面に光沢のある錠剤である場合がある。このような錠剤をカメラで認識する場合、カメラが備える照明の反射光が撮像画像に写り込み、画像処理で正確に割線を認識することが困難になることがある。しかしながら、本実施形態によれば、レーザ変位計28によって割線情報を得るため、色のついた錠剤や表面に光沢のある素材の錠剤であっても割線の有無、方向、角度を算出することができ、印刷を行うことができる。
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態について図5を参照して説明する。
ところで、第1の実施形態では、割線がレーザ変位計28での測定方向と揃う場合、割線があるにもかかわらず割線を測定することができない場合がある。図5に示すように、測定位置S2のみで測定を行った場合には、錠剤Tの表面に割線が形成されているにもかかわらず割線が形成されていない場合と同じ出力になってしまう。このような場合には、レーザ変位計28においてもレーザ変位計29においても割線情報が得られず、検出エラーとして不良品回収装置41に回収されてしまうことになる。
第2の実施形態では、このような方向に割線が位置するように錠剤Tが搬送されてきても、確実に割線情報を検出できる。図5に示すように、第2の実施形態におけるレーザ変位計28は、錠剤Tの搬送方向A1に対する2か所(S1、S2)を走査し、錠剤におけるそれぞれの高さを測定する(2回測定する)。すなわち、錠剤Tの2か所の高さ測定は、第1の実施形態の錠剤の中心位置からオフセットした位置であるS1に加え、錠剤Tの中心位置S2の高さの測定を行うようにする。
図5において、図5の右側にレーザ変位計28での測定値を示している。右側が錠剤の中心からオフセットした位置S1の測定値であり、左側が錠剤の中心位置S2の測定値を示す。割線が搬送方向A1と直交する方向の場合、錠剤Tの中心位置(S2)の搬送方向A1の直交する高さは、図5に示す測定値のように割線分低く測定され、かつ錠剤Tの幅分同じ高さとなる。また錠剤Tの中心位置からオフセットした位置(S1)での測定値は割線の無い部分の錠剤Tの高さとなっている。この2か所のレーザ変位計28の測定値から、測定した面に割線が存在することがわかる。もし割線がない場合は、2カ所の両方とも割線の無い錠剤の高さデータとなる。
なお、上記実施形態においては2か所の測定をレーザ変位計28において2回測定することによって行ったが、レーザ変位計28を複数備えて、2か所測定を行うようにしても良い。
<第3の実施形態>
次に、第3の実施形態について図6を参照して説明する。
第3の実施形態では、第2の実施形態とは相違する形態で、割線がレーザ変位計28での測定方向と揃うように錠剤Tが搬送されてきたとしても、確実に割線情報を検出できる方法を開示する。
本実施形態では、搬送方向A1と直交方向の高さを測定するレーザ変位計28に加えて、錠剤Tの搬送方向A1の高さの測定も行う。搬送方向A1の高さの測定は、検出装置27を使用する。
図6は、レーザ変位計28により、錠剤Tのレーザ変位計28と対向する面の受け渡しフィーダ13のベルト面からの高さを測定するときの模式図である。錠剤Tの中心から搬送方向A1にオフセットして、搬送方向A1に直交する方向の2点鎖線が、レーザ変位計28で測定される箇所(正確にはレーザ変位計28による走査位置)を示している。また、搬送方向A1に沿って錠剤Tの中心を通る2点鎖線が検出装置27による錠剤高さの測定箇所を示す。
つまり、第2の実施形態では、錠剤Tの搬送方向A1における2か所の高さを測定したのに対し、本実施形態では搬送方向A1と搬送方向A1と交差する方向の2か所の高さを測定する。そして、搬送方向A1に交差する方向(図6では直交)の錠剤Tの高さの測定は、第1の実施形態同様に錠剤の中心位置からオフセットしている。
図6(A)に示すように、搬送方向A1と直交する方向に割線が形成されている場合であっても、このような直交する2か所の錠剤Tの高さのデータから、錠剤Tの搬送方向A1に直交する方向で割線が検知されなくても、搬送方向A1に沿った錠剤の高さデータでは、割線による低い高さのデータは測定されるので、割線が存在することがわかる。また、この2つの高さ測定値により、割線が搬送方向A1と直交する方向に形成されていることがわかる。
さらに、図6(B)に示すように、搬送方向A1と平行方向に割線が形成されている場合を示している。この場合、搬送方向A1に沿う錠剤の高さ測定値は、割線の高さを示し、錠剤Tの端から端まで変化しない。錠剤Tの搬送方向A1に直交する高さデータには、中央に割線に対応する測定値が示されている。この場合においても、2つの高さ測定値に基づいて割線情報を得ることができる。また、搬送方向A1に沿う測定値には割線に対応する高さしか測定されていないので、割線が搬送方向A1と平行方向であることがわかる。
なお、第3の実施形態では、搬送方向A1の錠剤Tの高さ測定に検出装置27を利用したが、別なレーザ変位計としても良い。
また、第2の実施形態において、錠剤Tの高さ測定の方法として、搬送方向A1と交差する方向の高さの測定を2か所としたがこれに限られず、3か所、または4か所でも構わない。
また、第3の実施形態では錠剤Tの高さ測定の位置を、搬送方向A1と、これに直交する方向の2か所としたが、搬送方向A1のみで2か所、または3か所としても良い。
また、上記各実施形態においては、錠剤Tは一列で搬送されるとしたが、これに限らず、複数列で搬送するようにしても良い。錠剤Tを複数列で搬送するとき、錠剤が列毎に異なる間隔で搬送される場合においては、検出装置27、レーザ変位計28、検出装置22、レーザ変位計29、第1の撮像装置23、印刷ヘッド装置24、第2の撮像装置25、検出装置32、第1の撮像装置33、印刷ヘッド装置34、第2の撮像装置35は各列に設けられる。複数列の錠剤Tがすべて同じ間隔で搬送される場合(つまり、搬送方向と直交する方向において各列の錠剤が同じ位置に並ぶよう搬送される場合)においては、複数列搬送される錠剤を一括して検出、あるいは印刷できるよう、前述の各センサ、撮像装置、印刷ヘッド装置の長さを設定するようにしても良い。
<第4の実施形態>
次に、第4の実施形態について、図7を参照して説明する。
本実施形態では、第3の実施形態に対しさらに、検出装置27をもう一つ追加し、搬送方向A1の高さ測定は2か所(S3、S4)で行う。加えて、レーザ変位計28は、第2の実施形態同様、錠剤Tの搬送方向A1と直交する方向において2か所(S1、S2)の高さを測定する(2回走査する)。第2の実施形態同様、S2は錠剤の中心位置の高さを検出し、S1は錠剤Tの中心位置からずれた位置の高さを検出する。S3は錠剤の搬送方向A1における中心位置の高さを検出し、S4は錠剤の搬送方向A1における中心位置からずれた位置の高さを検出する。
このように高さを測定することによって、図7(A)(B)に示すような合計4か所の高さデータを得るようにしてもよい。この4か所のデータを合わせれば、割線の有無、方向、角度を検出することができる。たとえば、S1、S2、S3、S4の信号を1セットにして錠剤Tの回転方向毎(たとえば一度毎)に180度分記憶させておき、実際のレーザ変位計28の走査によって得られた結果をマッチングして割線情報を得ることができる。
<その他の実施形態>
次に、その他の実施形態について、図8を参照して説明する。図8は、第4の実施形態と同様、搬送方向A1に沿って2か所、搬送方向A1と交差する方向に2か所の計4か所の高さ測定を行う例を複数示している。なお、図8においては錠剤Tの割線の表示を割愛している。
図8(A)は、検出装置27(二つ用いる)によって錠剤Tの搬送方向A1に沿った高さ測定を2か所行うとともに、レーザ変位計28によって搬送方向A1と交差する方向(直交方向でない)においても高さ測定を2か所行う例である。このように、高さ測定を行う箇所は、搬送方向A1と直交する方向でなくても良い。
図8(B)は、レーザ変位計28で錠剤Tの搬送方向A1と直交する方向において高さ測定を2か所行うとともに、検出装置27(二つ用いる)で搬送方向A1と交差する方向において高さ測定を2か所行う例である。
図8(C)は、レーザ変位計28によって錠剤Tの搬送方向A1と交差する方向に2か所の高さを測定するとともに、検出装置27(二つ用いる)によって搬送方向A1と交差する方向に2か所の高さを測定する例である。なお、レーザ変位計28が走査する位置と、検出装置27とが検出する位置とは交差する。
図8(D)は、レーザ変位計28によって錠剤Tの搬送方向A1と交差する方向において2か所の高さを測定するとともに、2つ設けた検出装置27のうち1つによって搬送方向A1に沿った方向における高さを測定し、さらにもう一方の検出装置27によって搬送方向A1と交差する方向における高さを測定する。なお、レーザ変位計28が走査する位置と、検出装置27とが検出する位置とは交差する。
なお、上記複数の実施形態においては、割線のない面にのみ印刷する例を示したが、これに限られない。レーザ変位計28か、レーザ変位計29のいずれかにおいては割線情報が検出されるはずである。この割線情報を用いて、印刷装置20、印刷装置30の両方を用いて印刷すれば、錠剤Tの両面に割線に平行に印刷を行うことができる。
また、上記複数の実施形態においては、一方の面にのみ割線が形成されている錠剤に対して印刷を行う例を示したが、これに限られない。割線が両面に形成されている錠剤に対して各実施形態を適用することもできる。なお、割線が両面に形成されている錠剤に対する印刷処理に際しては、レーザ変位計28にて割線が検出されなければエラーとし、その錠剤には印刷を行うことなく、不良品回収装置にて回収することができる。
また、上記複数の実施形態においては、第1の撮像装置23、33によって印刷前の錠剤Tの撮像を行う例を示したが、これに限られない。レーザ変位計28、レーザ変位計29によって錠剤Tの割線の有無や位置、方向を検出することができるため、第1の撮像装置23、33を省略することも可能である。この場合には、第1の撮像装置23、33による撮像結果を画像処理する時間が省けるため、錠剤印刷装置1の処理速度を速めることができる。
なお、上記複数の実施形態においては、略真円状の錠剤Tに対する印刷について例示したが、これに限られない。異形錠(例えば楕円錠、三角錠)であっても、同様に割線を検出し、それに応じた印刷を行うことができる。これら異形錠に対して形成された割線を検出する際にも、中心からオフセットした位置にてレーザ変位計による測定を行うが、オフセット位置は錠剤に形成された割線の端面より内側であることが好ましい。
なお、上記複数の実施形態におけるレーザ変位計28による錠剤Tの高さ測定位置のオフセットした位置は、図3〜7において、例として錠剤の搬送方向A1に沿って下流側であることを示したが、上流側であってもよいことは言うまでもない。
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。