JP2020005593A - 可塑性油脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れたコク味と乳風味とを有する可塑性油脂組成物を提供することである。【解決手段】無脂乳固形分を0.5〜10質量%含有し、該無脂乳固形分中、蛋白質と炭水化物と灰分の質量比が、45〜70:20〜40:8〜17(蛋白質と炭水化物と灰分の質量比の和を100とする。)である可塑性油脂組成物。上記蛋白質がホエイ蛋白質を70質量%以上含有することが好ましい。上記可塑性油脂組成物が、更に、乳清ミネラルを含有することが好ましい。【選択図】なし

Description

本発明は、ベーカリー製品の製造に好適に使用される可塑性油脂組成物に関する。
バターは、保存性が良好であり、かつ優れたコクのある乳風味を有することが知られている。更に、バターを使用したベーカリー製品も優れたコクのある乳風味を有することから、バターは製菓・製パン業界では広く一般的に使用されている。
しかし、バターは低温で硬く融点がやや低いことから、作業性が低いという問題や分離しやすいという問題があった。また、近年においては、様々な問題からバターが入手が難くなり、その価格も高額なものとなっている問題があった。
そのため、製菓・製パン業界においては、バターの代わりに各種動植物油脂を用いた油相を含むマーガリンやショートニング等(以下、単に可塑性油脂組成物と記載する場合がある。)が用いられている。一般に可塑性油脂組成物は作業性が高く、乳化安定性に優れるものの、風味の点でバターに及ばない。そのため、バターのようなコクのある乳風味を有する可塑性油脂組成物を得るために様々な方法が検討されてきた。
バターのようなコクのある乳風味を有する可塑性油脂組成物を得るための方法の一つとして、無脂乳固形分、特に、脱脂粉乳等の粉乳類を可塑性油脂組成物に含有させる方法がある。
従来、可塑性油脂組成物に含有させる粉乳類として、全粉乳や脱脂粉乳が用いられてきた。しかし、近年は、より濃厚な風味を求める目的やコストダウン等の目的で、更に乳蛋白質や灰分が濃縮された粉末状の乳製品が用いられる場面が増えている。
上記粉末状の乳製品として、例えば、ホエイを粉末化したホエイパウダーや、ホエイ中の蛋白質分や灰分を一定程度濃縮した蛋白質濃縮ホエイやミネラル濃縮ホエイ、トータルミルクプロテイン、ミセルカゼインアイソレート、カゼインナトリウム、カゼインカリウムなどが挙げられる。
しかし、これらの粉末状の乳製品は乳の中の好ましくない風味成分まで濃縮されているため、単一で用いると、可塑性油脂組成物にえぐ味が強く感じられてしまう問題があった。
このため、粉乳類を用いた可塑性油脂組成物について、バター同様に、えぐ味がなく風味良好であって、コクのある乳風味を有する可塑性油脂組成物とする方法が各種提案されている。
例えば、特許文献1や特許文献2では蛋白質を25〜30質量%含有し、かつ灰分を15〜20%含有する蛋白質濃縮ホエイを特定の対水濃度で含有させたことを特徴とする油中水型乳化油脂組成物が提案されている。
しかし、特許文献1や特許文献2の方法では、実施例の記載等からも明らかなとおり、上記の蛋白質濃縮ホエイが添加された油中水型乳化組成物は十分な塩味は得られるが、コク味の向上効果は得られない。そのため、コク味を補強するために、別途調製した乳酸発酵物やバターフレーバー、バター酵素分解物等の、直接的にバター様の風味や乳風味を付与する呈味素材を更に油中水型乳化組成物に加える必要があった。
本出願人は優れたコクのある乳風味を有する可塑性油中水型乳化油脂組成物を得る方法として、特許文献3の方法を開示している。特許文献3には、ホエイ蛋白質・乳糖・乳清ミネラルの3成分を特定比率で含有し、カゼイン蛋白質を含有しないことを特徴とする可塑性油中水型乳化油脂組成物が提案されている。
特許文献3の方法によって、好ましいコク味のある乳風味をベーカリー製品に付与することができるが、更に簡便に、より強いコク味を可塑性油脂組成物に付与する方法が求められている。
特開2015−156855号公報 特開2014−212733号公報 特開2015−188357号公報
本発明の課題は、優れたコク味と乳風味を有する可塑性油脂組成物を提供することである。
本発明者等による鋭意検討の結果、驚くべきことに、複数の乳又は乳製品を組合せて無脂乳固形分中の蛋白質、炭水化物及び灰分の質量比を特定の範囲とし、可塑性油脂組成物における無脂乳固形分の組成を単一の乳又は乳製品では得られないものとすることにより、優れたコクと乳風味とを有する可塑性油脂組成物が得られることを知見した。
本発明は上記知見に基づくものであり、無脂乳固形分を0.5〜10質量%含有し、該無脂乳固形分中の蛋白質と炭水化物と灰分との質量比が、蛋白質:炭水化物:灰分で、45〜70:20〜40:8〜17(蛋白質と炭水化物と灰分との質量比の総和を100とする。)である可塑性油脂組成物に関するものである。
本発明によれば、優れたコク味と乳風味とを有する可塑性油脂組成物を得ることができる。
以下、本発明の可塑性油脂組成物について、好ましい実施形態に基づき詳述する。
本発明の可塑性油脂組成物は次の条件(イ)を満たす。
条件(イ):無脂乳固形分を0.5〜10質量%含有し、該無脂乳固形分中、蛋白質と炭水化物と灰分の質量比が、45〜70:20〜40:8〜17(蛋白質と炭水化物と灰分の質量比の和を100とする。)である。
まず、上記条件(イ)のうちの、可塑性油脂組成物中の無脂乳固形分含有量について述べる。
本発明の可塑性油脂組成物は無脂乳固形分を0.5〜10質量%含有する。無脂乳固形分を上述の範囲を満たすように含有することで、優れたコク味と乳風味を有する可塑性油脂組成物を得ることができる。可塑性油脂組成物中の無脂乳固形分の含有量が0.5質量%未満である場合には、十分なコク味と乳風味とを有する可塑性油脂組成物が得られない。また、無脂乳固形分の含有量が10質量%超である場合には、可塑性油脂組成物が乳風味と共にえぐ味が感じられるものとなる。本発明の可塑性油脂組成物中の無脂乳固形分の好ましい含有量は1.5〜8質量%であり、より好ましい含有量は2〜6質量%である。
次に、上記条件(イ)のうちの、無脂乳固形分中の蛋白質と炭水化物と灰分との質量比について述べる。
本発明においては、可塑性油脂組成物中に含有される無脂乳固形分中の、蛋白質と炭水化物と灰分との質量比が、蛋白質:炭水化物:灰分で、45〜70:20〜40:8〜17(蛋白質と炭水化物と灰分との質量比の総和を100とする。)である。本発明の可塑性油脂組成物に含まれる無脂乳固形分中の、蛋白質と炭水化物と灰分との質量比が、上記範囲を満たすことにより、得られる可塑性油脂組成物が、良好なコク味と乳風味を有するものとなる。
無脂乳固形分に含まれる蛋白質、炭水化物及び灰分中の蛋白質の比率が45質量%未満である場合、無脂乳固形分中の炭水化物及び灰分の比率が高まり、異味が生じやすく、得られる可塑性油脂組成物の風味が低下するとともに、コクのある乳風味が感じられなくなってしまう。また、無脂乳固形分に含まれる蛋白質、炭水化物及び灰分中の蛋白質の比率が70質量%超である場合、乳風味は強くなるものの、蛋白質由来と思われる異味が生じやすく、得られる可塑性油脂組成物の風味が低下する。
無脂乳固形分に含まれる蛋白質、炭水化物及び灰分中の炭水化物の比率が20質量%未満である場合、無脂乳固形分中の蛋白質や灰分の比率が高まり、異味が生じやすく、得られる可塑性油脂組成物の風味が低下する。また、無脂乳固形分に含まれる蛋白質、炭水化物及び灰分中の炭水化物の比率が40質量%超である場合、得られる可塑性油脂組成物の乳風味が弱くなる上、全体的にぼやけた風味になる。
無脂乳固形分に含まれる蛋白質、炭水化物及び灰分中の灰分の比率が8質量%未満である場合、乳風味の持続性が弱く、良好なコク味と乳風味が得られない。また、無脂乳固形分に含まれる蛋白質、炭水化物及び灰分中の灰分の比率が17%超である場合、異味が生じやすく、得られる可塑性油脂組成物の風味が低下する。
本発明においては、異味のない可塑性油脂組成物を得られる観点、及び良好なコク味と乳風味を有する可塑性油脂組成物を得る観点から、上記の無脂乳固形分中の蛋白質と炭水化物と灰分の質量比は、50〜70:20〜35:8.5〜15であることが好ましく、55〜70:20〜30:9〜14であることがより好ましい。
本発明の可塑性油脂組成物は、良好な乳風味を得る観点から、上記無脂乳固形分に含まれる灰分がナトリウム及びカリウムを含有することが好ましい。また、本発明の可塑性油脂組成物は、ナトリウム1質量部に対してカリウムを2.40〜3.00質量部含有することが好ましく、2.50〜3.00質量部含有することがより好ましい。
本発明の可塑性油脂組成物に含有される無脂乳固形分の由来については、上記条件(イ)を満たすものであれば特に限定されず、任意の乳又は乳製品を組合せて使用すればよい。
上記の乳又は乳製品としては、生乳、牛乳、特別牛乳、生山羊乳、殺菌山羊乳、生めん羊乳、部分脱脂乳、脱脂乳、加工乳、クリーム、クリームチーズ、バター、チーズ、濃縮ホエイ、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖れん乳、無糖脱脂れん乳、加糖れん乳、加糖脱脂れん乳、全粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、バターミルクパウダー、加糖粉乳、調製粉乳、はっ酵乳、乳酸菌飲料、乳飲料等、脱脂粉乳、蛋白質濃縮ホエイ、バターミルクパウダー、カゼインカルシウム、カゼインナトリウム、カゼインカリウム、カゼインマグネシウム、ホエイ蛋白質濃縮物(ホエイプロテインコンセートレート)、トータルミルクプロテイン等が挙げられ、これらのうちから、上記条件(イ)を満たすように、1種又は2種以上を選択して可塑性油脂組成物に含有させればよい。
本発明の可塑性油脂組成物は、良好な乳風味を得る観点から、無脂乳固形分中の蛋白質がホエイ蛋白質を70質量%以上含有することが好ましく、80質量%以上含有することがより好ましい。
無脂乳固形分中の蛋白質がホエイ蛋白質を70質量%以上含有する乳又は乳製品としては、ラクトアルブミンやβ−ラクトグロブリン、ラクトアルブミン及びβ−ラクトグロブリンの混合物、及び、ラクトアルブミンやβ−ラクトグロブリンを含む食品素材、乳清蛋白質、ホエイ、ホエイパウダー、蛋白質濃縮ホエイ、蛋白質濃縮ホエイパウダー及びホエイ蛋白質濃縮物等が挙げることができる。上記乳又は乳製品のうち、可塑性油脂組成物の物性を損ねることなく効率よく上記条件(イ)を満たす観点、及び、良好なコク味と乳風味を得る観点から、粉末化された乳又は乳製品を用いることが好ましい。
本発明の可塑性油脂組成物は、上記乳又は乳製品の中でも、一層良好なコク味と乳風味を得る観点から、蛋白質濃縮ホエイを含有することが好ましい。以下、本発明において好ましく用いられる蛋白質濃縮ホエイについて述べる。
蛋白質濃縮ホエイとは、脱脂乳からカゼイン蛋白質を得る際に生じるホエイや、生乳からチーズを製造する過程で生じるホエイ等を原料とし、該ホエイに対して脱乳糖処理を行った乳原料である。本発明において、乾燥させ、粉末化した蛋白質濃縮ホエイを用いることが好ましい。粉末化した蛋白質濃縮ホエイを用いる場合、蛋白質濃縮ホエイの水分含有量が10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
通常、いわゆる乳等省令(乳及び乳製品の成分規格等に関する省令)によれば、蛋白質濃縮ホエイパウダーは、乳固形分が95質量%以上であり、乳蛋白量が15〜80質量%として定められている。しかしながら、本発明においては、蛋白質含有量が80質量%超となるまで更に濃縮された、ホエイ蛋白質濃縮物(WPC)やホエイ蛋白質分離物(WPI)等についても蛋白質濃縮ホエイに包含される。
本発明の可塑性油脂組成物は、異なる成分組成を有する2種以上の蛋白質濃縮ホエイを含有することが好ましい。特に本発明の可塑性油脂組成物は、下記の蛋白質濃縮ホエイ(A)と蛋白質濃縮ホエイ(B)とを含有することが、上記条件(イ)を簡便に満たすことができるため好ましい。
蛋白質濃縮ホエイ(A):蛋白質の含有量が70〜95質量%、炭水化物の含有量が4〜15質量%、かつ灰分の含有量が0.1〜5質量%である蛋白質濃縮ホエイ。
蛋白質濃縮ホエイ(B):蛋白質の含有量が25〜30質量%、炭水化物の含有量が40〜55質量%、かつ灰分の含有量が15〜25質量%である蛋白質濃縮ホエイ。
まず蛋白質濃縮ホエイ(A)について述べる。
蛋白質濃縮ホエイ(A)は好ましくは蛋白質の含有量が70〜95質量%、炭水化物の含有量が4〜15質量%、灰分の含有量が0.1〜5質量%であり、更に好ましくは蛋白質の含有量が70〜85質量%、炭水化物の含有量が6〜13質量%、灰分の含有量が1.5〜3.5質量%である。
上記蛋白質濃縮ホエイ(A)としては、上記の成分範囲を満たすものであれば、特に限定されるものではない。蛋白質濃縮ホエイ(A)として用いることのできる市販品としては例えばWPC80(ワーナンプールチーズアンドバター社製)やラクプロダン80(アーラフーズ社製)等が挙げられる。
上記蛋白質濃縮ホエイ(A)を製造する方法については、上記の成分範囲を満たすことができれば特に限定されるものではなく、公知の方法を採用することができる。例えば、限外濾過や、イオン交換膜を用いた電気透析等を挙げることができる。
次に、蛋白質濃縮ホエイ(B)について述べる。
蛋白質濃縮ホエイ(B)は好ましくは蛋白質の含有量が25〜30質量%、炭水化物の含有量が40〜55質量%、灰分の含有量が15〜25質量%であり、更に好ましくは蛋白質の含有量が25〜30質量%、炭水化物の含有量が45〜52質量%、灰分の含有量が17〜22質量%である。
上記蛋白質濃縮ホエイ(B)は、上記の成分範囲を満たすものであれば、その種類が特に限定されるものではない。蛋白質濃縮ホエイ(B)として用いることのできる市販品としては、例えばFondlacSL(メグレ社製)等が挙げられる。
また、上記蛋白質濃縮ホエイ(B)を製造する方法は、上記の成分範囲を満たすことができれば特に限定されるものではなく、公知の方法を採用することができる。例えば、膜処理により脱乳糖を行う方法や、ホエイを加熱により濃縮し、乳糖を結晶化させて脱乳糖を図る方法等を挙げることができる。
2種の蛋白質濃縮ホエイ(A)及び(B)を、上記条件(イ)を満たすように無脂乳固形分を可塑性油脂組成物に含有させることにより、得られる可塑性油脂組成物が良好なコク味と乳風味を有するものとなる。蛋白質濃縮ホエイとして、蛋白質濃縮ホエイ(A)及び蛋白質濃縮ホエイ(B)のどちらか一方のみを使用した場合には、上記条件(イ)で規定する、無脂乳固形分中の蛋白質と炭水化物と灰分との質量比を満たすことが容易ではない。
本発明の可塑性油脂組成物における蛋白質濃縮ホエイ(A)及び蛋白質濃縮ホエイ(B)の2成分を合計した含有量は、好ましくは0.5〜4.5質量%、より好ましくは1.2〜3.8質量%である。本発明の可塑性油脂組成物における蛋白質濃縮ホエイ(A)及び(B)の合計含有量が0.5質量%以上であると、本発明の効果が得られやすく、異味のない良好な乳風味が十分な強度で得られやすい。また、蛋白質濃縮ホエイ(A)及び(B)の合計含有量が4.5質量%以下であると、得られる可塑性油脂組成物が乳風味が強くなり、かつ異味が生じないものとなる。
本発明の可塑性油脂組成物が蛋白質濃縮ホエイ(A)及び蛋白質濃縮ホエイ(B)を含有する場合、異味のない可塑性油脂組成物を得る観点と、及び良好なコク味と乳風味を有する可塑性油脂組成物を得る観点から、本発明の可塑性油脂組成物中の蛋白質濃縮ホエイ(A)の含有量は3質量%以下であることが好ましく、2.5質量%以下であることが好ましく、また、0.3質量%以上であることが好ましく、0.8質量%以上であることがより好ましい。同様の観点から、本発明の可塑性油脂組成物中の蛋白質濃縮ホエイ(B)の含有量は、2質量%以下であることが好ましく、1.8質量%以下であることがより好ましく、また、0.3質量%以上であることが好ましく、0.8質量%以上であることがより好ましい。
次に本発明の可塑性油脂組成物に用いられる油脂について述べる。本発明の可塑性油脂組成物で用いられる油脂は、食用に適する油脂であれば特に限定されず公知の食用油脂を用いることができる。例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、菜種油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、シア脂、サル脂及びカカオ脂等の植物油脂、牛脂、乳脂、豚脂、魚油及び鯨油等の動物油脂、並びにこれらの油脂に水素添加、分別及びエステル交換から選択される一又は二以上の処理を施した加工油脂が挙げられる。本発明においては、これらの油脂を単独で用いることもでき、又は2種以上を組合せて用いることもできる。
本発明の可塑性油脂組成物における上記油脂の含有量は、好ましくは40〜99.5質量%、より好ましくは60〜95質量%、更に好ましくは70〜95質量%である。
尚、本発明の可塑性油脂組成物に含有させることのできる、下記のその他の成分が油脂を含有する場合、該その他の成分に含まれる油脂の含有量を上記の油分含有量に含めるものとする。
本発明の可塑性油脂組成物は水分を含有していてもよい。本発明の可塑性油脂組成物が水分を含有する場合、その水分含有量は、0.1〜60質量%であることが好ましく、2〜40質量%であることがより好ましく、5〜30質量%であることが最も好ましい。
尚、本発明の可塑性油脂組成物に含有させることのできる、下記のその他の成分が水分を含有する場合、該その他の成分に含まれる水分の含有量を上記の水分含有量に含めるものとする。
本発明の可塑性油脂組成物は、更に乳清ミネラルを含有することが好ましい。乳清ミネラルを含有することにより、一層良好な、コク味と乳風味を有する可塑性油脂組成物を得られる。
乳清ミネラルとは、乳又はホエイ(乳清)から、可能な限り蛋白質や乳糖を除去したものであり、高濃度に乳の灰分を含有するという特徴を有する。そのため、そのミネラル組成は、原料となる乳やホエイ中のミネラル組成に近い比率となる。
本発明で使用される乳清ミネラルとしては、より良好なコク味と乳風味を有する可塑性油脂組成物が得られる点で、固形分中のカルシウム含有量が2質量%未満、特に1質量%未満の乳清ミネラルを使用することが好ましい。カルシウム含有量は低いほど好ましい。
本発明の可塑性油脂組成物における上記乳清ミネラルの含有量は、上記の乳又は乳製品、好ましくは蛋白質濃縮ホエイ(A)と蛋白質濃縮ホエイ(B)と合わせて、上記条件(イ)を満たす任意の含有量とすることができる。上記乳清ミネラルの含有量の好ましい含有量は、本発明の可塑性油脂組成物中の上記の乳又は乳製品の含有量や組成によって変わるため、限定されるものではないが、一例として、0.5質量%以下が好ましい。乳清ミネラルを含有させる効果を確実に得る観点から、上記乳清ミネラルの含有量の下限値は0.01質量%が好ましい。
更に、本発明の可塑性油脂組成物は乳酸発酵物を含有することが好ましい。乳酸発酵物を含有することで一層好ましい風味を有する可塑性油脂組成物となるからである。
本発明における乳酸発酵物とは、乳酸菌が資化可能な基質を乳酸発酵して得られた風味素材であり、その基質として、乳や乳製品を含む水中油型乳化物を使用したものを指す。
乳や乳製品を含む上記水中油型乳化物としては、生乳、牛乳、特別牛乳、生山羊乳、殺菌山羊乳、生めん羊乳、部分脱脂乳、脱脂乳、加工乳、クリーム、クリームチーズ、バター、チーズ、濃縮ホエイ、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖れん乳、無糖脱脂れん乳、加糖れん乳、加糖脱脂れん乳、全粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、バターミルクパウダー、加糖粉乳、調製粉乳、はっ酵乳、乳酸菌飲料、乳飲料等、脱脂粉乳、蛋白質濃縮ホエイパウダー、バターミルクパウダー、カゼインカルシウム、カゼインナトリウム、カゼインカリウム、カゼインマグネシウム、ホエイプロテインコンセートレート、トータルミルクプロテイン等から、1種又は2種以上選択して用いることができる。
良好な風味の可塑性油脂組成物を得る観点から、上記水中油型乳化物中の上記乳や乳製品の含有量は、無脂乳固形分として2〜50質量%であることが好ましく、5〜20質量%であることが更に好ましい。
上記乳酸発酵物の製造に用いられる水中油型乳化物中における好ましい油分含有量は1.5〜50質量%であり、より好ましくは1.5〜30質量%、最も好ましくは2〜20質量%である。また、上記水中油型乳化物中における好ましい水分含有量は30〜95質量%であり、より好ましい水分含有量は70〜90質量%である。
上記乳酸発酵物の製造に用いられる水中油型乳化物に含まれる水分としては、水を使用することができる。水に代えて又は水に加えて、上記乳や乳製品のうちの、牛乳、濃縮乳、ホエイ、クリーム、バター、クリームチーズ、ナチュラルチーズ、プロセスチーズ等の水分を多く含有する乳や乳製品を使用することもできる。
上記水中油型乳化物は、該水中油型乳化物中の油脂100質量部に対して、蛋白質を75〜250質量部含有し、かつ炭水化物を120〜300質量部含有することが好ましい。蛋白質及び炭水化物の量は、乳成分以外のその他の成分に含まれる蛋白質及び炭水化物の量も合わせて算出するものとする。
本発明で用いられる乳酸発酵物の製造方法は特に限定されず、公知の方法を採用することができる。好ましくは、上記の成分組成となるように調製した水中油型乳化物を、任意の乳酸菌で乳酸発酵することで乳酸発酵物を製造することができる。乳酸菌としては、例えば、Lactobacillus helveticus、Lactococcus lactis subsp. lactis、Lactococcus lactis subsp. cremoris、Lactococcus lactis subsp. lactis biovar diacetylactis 、Streptococcus thermophilus、及びLeuconostoc mesenteroides subsp. cremorisを用いることができる。本発明においては、上記乳酸菌のうち、Streptococcus thermophilus及び/又はLeuconostoc mesenteroides subsp. cremorisを含む1種又は2種以上の乳酸菌により乳酸発酵することが、良好な風味を得る上で好ましい。
尚、乳酸発酵物の発酵終点はpHによって適宜判断される。良好な風味の可塑性油脂組成物を得る観点から、pH2.8〜5.5の間で発酵を停止するのが好ましく、pH3.0〜5.0の間で発酵を停止するのが更に好ましく、pH3.5〜5.0の間で発酵を停止するのが最も好ましい。
本発明の可塑性油脂組成物が上記乳酸発酵物を含有する場合、該乳酸発酵物の含有量はその他の原料と合わせて上記条件(イ)を満たす任意の量とすることができる。得られる可塑性油脂組成物の良好な物性と風味を両立する観点から、可塑性油脂組成物における上記乳酸発酵物の含有量は10質量%以下とすることが好ましく、8質量%以下とすることがより好ましい。上記乳酸発酵物を含有させる効果を確実に得る観点から、上記乳酸発酵物の下限値は1質量%が好ましい。
本発明の可塑性油脂組成物には、上記原料の他にも、本発明の効果を損ねない範囲で、下記のその他の成分を含有させることができる。本発明の可塑性油脂組成物に含有させることができるその他の成分としては、例えば、糖類、乳化剤、澱粉類、デキストリン、食物繊維、食塩や塩化カリウム等の塩味剤、酢酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料、ステビア、アスパルテーム等の甘味料、β−カロチン、カラメル、紅麹色素等の着色料、トコフェロール、茶抽出物等の酸化防止剤、小麦蛋白や大豆蛋白等の植物蛋白、全卵・卵黄・酵素処理卵黄・卵白・卵蛋白質等の卵及び各種卵加工品、着香料、調味料、pH調整剤、食品保存料、日持ち向上剤、果実、果汁、コーヒー、ナッツペースト、香辛料、カカオマス、ココアパウダー、穀類、豆類、野菜類、肉類、魚介類等の食品素材や食品添加物が挙げられる。上記その他原料は、本発明の目的を損なわない範囲で任意に含有させることができるが、本発明の可塑性油脂組成物中、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下となる範囲で含有させる。
上記乳化剤としては、モノグリセリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム等が挙げられ、単独で用いることもでき、また2種以上を組合せて用いることもできる。風味を損ねない観点から、乳化剤の含有量は本発明の可塑性油脂組成物中、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下となるように含有させる。
本発明の可塑性油脂組成物は、ショートニングタイプや、油中水型乳化物、油中水中油型乳化物等の油脂を連続相とする可塑性油脂組成物や、水中油型乳化物等の水を連続相とする可塑性油脂組成物の形態をとることができるが、条件(イ)を満たす場合、含有される無脂乳固形分の量によっては、水中油型乳化が不安定になる場合が散見されることから、水中油型乳化物の形態ではなく、油脂を連続相とする可塑性油脂組成物の形態をとることが好ましい。
次に、本発明の可塑性油脂組成物の好ましい製造方法について説明する。
本発明の可塑性油脂組成物は、上記条件(イ)を満たすように、上記の乳や乳製品、好ましくは蛋白質濃縮ホエイ(A)及び蛋白質濃縮ホエイ(B)を混合することで好適に製造される。上記条件(イ)を満たすものであれば、上記の乳や乳製品、好ましくは蛋白質濃縮ホエイ(A)及び蛋白質濃縮ホエイ(B)が油相に含有されていてもよく、水相に含有されていてもよく、その製造方法が特に制限されるものではなく、公知の方法で製造することができる。
以下、上記の蛋白質濃縮ホエイ(A)及び蛋白質濃縮ホエイ(B)を用いて、油中水型乳化物である可塑性油脂組成物を製造する場合を例に述べる。
油中水型乳化物である可塑性油脂組成物を製造するには、好ましくは蛋白質濃縮ホエイ(A)及び蛋白質濃縮ホエイ(B)とを、条件(イ)を満たすように水相に含有させる。
次に、油脂を主体とする油相と、蛋白質濃縮ホエイ(A)と蛋白質濃縮ホエイ(B)とを含有する水相とを、混合し、油中水型に乳化して予備乳化液を得る。そして、得られた予備乳化液を急冷可塑化することにより、油中水型乳化物である本発明の可塑性油脂組成物を得ることができる。
具体的には、まず、油脂に必要に応じて乳化剤等のその他原料を含有させた油相と、水に蛋白質濃縮ホエイ(A)及び蛋白質濃縮ホエイ(B)を、条件(イ)を満たすように含有させた水相とを混合乳化し予備乳化液を調製する。目的とする可塑性油脂組成物が乳清ミネラルを含む場合、乳清ミネラルは水相に含有させることが好ましい。また、目的とする可塑性油脂組成物が乳酸発酵物を含有する場合、水相に含有させることが好ましい。
このようにして得られた予備乳化液は殺菌処理することが望ましい。殺菌方式は、タンクでのバッチ式でも、プレート式熱交換器や掻き取り式熱交換器を用いた連続方式でも構わない。また殺菌温度は好ましくは80〜100℃、更に好ましくは80〜95℃、最も好ましくは80〜90℃とする。その後、必要により油脂結晶が析出しない程度に予備冷却を行う。予備冷却の温度は好ましくは40〜60℃、更に好ましくは40〜55℃、最も好ましくは40〜50℃とする。
次に、予備乳化液を冷却する。好ましくは急冷可塑化を行う。この急冷可塑化は、コンビネーター、ボテーター、パーフェクター及びケムテーター等の密閉型連続式掻き取りチューブチラー冷却機(Aユニット)、プレート式熱交換器、開放型冷却機のダイヤクーラーとコンプレクターとの組み合わを用いて行うことができる。この急冷可塑化を行うことにより、予備乳化液が可塑性を有する油脂組成物となる。急冷可塑化の際に、ピンマシン等の捏和装置(Bユニット)やレスティングチューブ、ホールディングチューブを使用してもよい。尚、油中水型乳化物である本発明の可塑性油脂組成物の製造工程において、窒素、空気等を含気させてもよく、含気させなくてもよい。
本発明の可塑性油脂組成物が、ショートニングのような、水分を殆ど含有しない可塑性油脂組成物の場合は、蛋白質濃縮ホエイ(A)及び(B)等の乳又は乳製品、並びに必要に応じて乳清ミネラルや乳酸発酵物等のその他の成分を、上記条件(イ)を満たすように油相に混合・分散させることにより、本発明の可塑性油脂組成物を製造することができる。
本発明の可塑性油脂組成物は、各種食品に使用することができ、特にベーカリー製品のロールイン用や練り込み用、その他、サンド用、トッピング用、フィリング用、スプレッド用として使用することが好ましい。本発明の可塑性油脂組成物をロールイン用油脂組成物として用いる場合は、急冷可塑化後に可塑性油脂組成物をシート状、ブロック状、円柱状、直方体等の形状とする。各々の形状についての好ましいサイズは、シート状の場合は縦50〜1000mm、横50〜1000mm、厚さ1〜50mmである。ブロック状の場合は縦50〜1000mm、横50〜1000mm、厚さ50〜500mmである。円柱状の場合は直径1〜25mm、長さ5〜100mmである。直方体の場合は縦5〜50mm、横5〜50mm、高さ5〜100mmである。本発明の可塑性油脂組成物を練り込み用油脂組成物として用いる場合は、急冷可塑化後に可塑性油脂組成物をケースやカップなどの容器に流し込むことが好ましい。
次に、本発明のベーカリー生地について述べる。本発明のベーカリー生地は本発明の可塑性油脂組成物を含有するものである。本発明のベーカリー生地で使用される生地の種類としては、特に限定されず、任意のパン類の生地、菓子類の生地が挙げられる。具体的には、食パン生地、菓子パン生地、バラエティーブレッド生地、バターロール生地、ソフトロール生地、ハードロール生地、スイートロール生地、デニッシュ生地、ペストリー生地、フランスパン生地、パイ生地、シュー生地、ドーナツ生地、スポンジケーキ生地、バターケーキ生地、パウンドケーキ生地、クッキー生地、ハードビスケット生地、ワッフル生地、スコーン生地等が挙げられる。
本発明のベーカリー生地における本発明の可塑性油脂組成物の含有量は、従前知られている可塑性油脂組成物の含有量と同様であり、ベーカリー生地の種類等によって適切な値が選択される。例えば、パン類の生地に本発明の可塑性油脂組成物を練り込む場合、本発明の可塑性油脂組成物の含有量は、ベーカリー生地に含まれる穀粉類100質量部に対し、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、最も好ましくは15質量部以下であり、また、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、最も好ましくは1.5質量部以上である。本発明の可塑性油脂組成物をロールイン用油脂組成物として用いる場合、特に限定されないが、本発明の可塑性油脂組成物の含有量は、ベーカリー生地に含まれる穀粉類100質量部に対して、好ましくは120質量部以下、より好ましくは100質量部以下、また20質量部以上、より好ましくは30質量部以上である。
本発明のベーカリー生地に含有される穀粉類としては、小麦粉(薄力粉、中力粉、準強力粉、強力粉)をはじめ、小麦胚芽、全粒粉、小麦ふすま、デュラム粉、大麦粉、米粉、ライ麦粉、ライ麦全粒粉、大豆粉、ハトムギ粉等を挙げることができ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。特に本発明のベーカリー生地は、穀粉類として、小麦粉を含有することが好ましい。該穀粉類中の小麦粉の含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは100質量%である。
本発明のベーカリー生地がパン類の生地であり、かつ小麦粉以外の穀粉類を含有する場合、該ベーカリー生地はグルテンを含有することが好ましい。ベーカリー生地におけるグルテンの含有量は、穀粉類とグルテンとを合わせた合計量に対し、蛋白質含有量が好ましくは5〜20質量%、より好ましくは10〜18質量%となる量である。
本発明のベーカリー生地には、必要に応じ、一般の製菓製パン材料として使用することのできる、その他の原料を配合することができる。該その他の原料としては、例えば、水、油脂、イースト、糖類や甘味料、増粘安定剤、着色料、酸化防止剤、デキストリン、乳や乳製品、澱粉類、チーズ類、蒸留酒、醸造酒、各種リキュール、乳化剤、膨張剤、無機塩類、食塩、ベーキングパウダー、イーストフード、カカオ及びカカオ製品、コーヒー及びコーヒー製品、ハーブ、豆類、蛋白質、保存料、苦味料、酸味料、pH調整剤、日持ち向上剤、果実、果汁、ジャム、フルーツソース、調味料、香辛料、香料、各種食品素材や食品添加物等を挙げることができる。
上記その他の原料は、本発明の効果を損なわない限り、任意に使用することができる。水については、例えばパン類の場合、上記穀粉類100質量部に対して、好ましくは30〜100質量部、より好ましくは30〜70質量部となる範囲で使用する。また、水以外のその他の原料については、上記穀粉類100質量部に対して、合計で好ましくは100質量部以下、より好ましくは50質量部以下となる範囲で配合する。尚、その他の原料として、水分を含有する原料を使用した場合は、上記の水には、その他の原料に含まれる水分も含めるものとする。
本発明のベーカリー生地の製造方法としては、ベーカリー生地がパン類の生地である場合は中種法、直捏法、液種法、中麺法、湯種法等が挙げられ、菓子類の生地である場合はシュガーバッター法、フラワーバッター法、オールインミックス法、共立て法、別立て法等が挙げられ、通常製菓製パン法として使用されている、あらゆる製菓製パン法をとることができる。
本発明のベーカリー生地のうち、とりわけパン類の生地を中種法で製造する場合は、本発明の可塑性油脂組成物を中種生地及び/又は本捏生地に練り込み、含有させることにより製造することができるが、本捏生地に練り込み、含有させることが好ましい。
本発明のベーカリー生地は、冷蔵、冷凍保存することが可能である。
次に、本発明のベーカリー製品について述べる。本発明のベーカリー製品は、本発明の可塑性油脂組成物を使用して製造されたベーカリー生地を加熱処理することにより得られる。
本発明の可塑性油脂組成物を用いることにより、異味を有さず、良好なコク味と乳風味を有するベーカリー製品となる。
上記加熱処理としては、上記ベーカリー生地を焼成したり、フライしたり、蒸したり、電子レンジ処理したりすることが挙げられる。加熱処理の条件としては、公知の条件を特に制限なく採用することができる。また、得られた本発明のベーカリー製品を、冷蔵、冷凍保存したり、該保存後に電子レンジ加熱することも可能である。
以下、本発明を実施例に基づき更に詳述するが、本発明は実施例により何ら制限されない。
尚、以下では、パームスーパーオレイン(沃素価60)のランダムエステル交換油脂95質量部とパーム油5質量部を加熱溶解した状態で均一になるように混合したものを、単に油脂混合物として記載する場合がある。
また、本実施例では、蛋白質濃縮ホエイ(A)として、ラクプロダン80(アーラフーズ社製)を用いた。ラクプロダン80は、蛋白質含有量が77.4質量%、炭水化物含有量が9.5質量%、脂質含有量が5.0質量%、灰分含有量が2.6質量%、水分含有量が5.5質量%、無脂乳固形分100質量%中の蛋白質含有量が86.5質量%、無脂乳固形分中の炭水化物含有量が10.6質量%、無脂乳固形分中の灰分含有量が2.9質量%であった。
また、蛋白質濃縮ホエイ(B)としてFondlacSL(メグレ社製)を用いた。FondlacSLは、蛋白質含有量が26.5質量%、炭水化物含有量が48.5質量%、脂質含有量が2.5質量%、灰分含有量が18.5質量%、水分含有量が4.0質量%、無脂乳固形分中の蛋白質含有量が28.3質量%、無脂乳固形分中の炭水化物含有量が51.9質量%、無脂乳固形分中の灰分含有量が19.8質量%であった。
比較例1で用いた脱脂粉乳の無脂乳固形分における蛋白質中のホエイ蛋白質の含有量は70質量%未満であり、蛋白質濃縮ホエイ(A)及び蛋白質濃縮ホエイ(B)の無脂乳固形分における蛋白質中のホエイ蛋白質の含有量は80質量%超であった。
また、以下では、実施例1の可塑性油脂組成物を、単に可塑性油脂組成物(実1)と記載する場合があり、可塑性油脂組成物(実1)を使用して得られるベーカリー生地、並びに該ベーカリー生地を加熱処理して得られるベーカリー製品を、ベーカリー生地(実1)、ベーカリー製品(実1)と記載する場合がある。他の実施例、比較例においても同様である。
<乳清ミネラルの製造>
チーズを製造する際に副産物として得られる甘性ホエイをナノ濾過膜分離した後、更に逆浸透濾過膜分離により固形分が20質量%となるまで濃縮し、濃縮甘性ホエイを得た。得られた濃縮甘性ホエイを80℃、20分で加熱処理し、その結果生じた沈殿を遠心分離して濃縮甘性ホエイから除去した。沈殿を除去した濃縮甘性ホエイを更にエバポレーターで濃縮し、スプレードライ法により、固形分98質量%の乳清ミネラルAを得た。得られた乳清ミネラルAの固形分中のカルシウム含有量は0.4質量%であった。
<乳酸発酵物の製造>
水83質量%に対して、脱脂粉乳(無脂乳固形分95.2質量%、蛋白質含有量34質量%)を4.5質量%、ホエイパウダー(無脂乳固形分95質量%、蛋白質含有量13質量%)を3.5質量%、トータルミルクプロテイン(無脂乳固形分91質量%、蛋白質含有量81質量%)1質量%、脱脂濃縮乳(無脂乳固形分25.6質量%、蛋白質含有量9.2質量%)4質量%を加え、水浴の温度を60℃に維持しながら撹拌し、十分に分散・溶解を行った後、無塩バター(無脂乳固形分1.20質量%、乳脂肪分83質量%)2質量%、及びクリームチーズ(無脂乳固形分14質量%、乳脂肪分55質量%)2質量%を加え、水浴の温度を60℃に維持したまま更に撹拌し、水中油型に乳化を行った。
原料のダマがみられなくなるまで撹拌を行った後、三和エンジニアリング社製圧力式ホモゲナイザイーH20型にて均質圧力20MPaで均質化し、プレート式熱交換器にて80℃で3分間加熱殺菌後、プレート式熱交換器にて30℃に冷却し、無脂乳固形分含有量が9.8質量%であり、乳脂肪分が2.9質量%である乳原料を含む水中油型乳化物を調製した。
続いて、この乳原料を含む水中油型乳化物をそのまま基質として使用し、Lactobacillus helveticus、Lactococcus lactis subsp. lactis、Lactococcus lactis subsp. cremoris、Lactococcus lactis subsp. lactis biovar diacetylactis 、Streptococcus thermophilus、Leuconostoc mesenteroides subsp. cremorisの6種を含む、フリーズドライタイプの乳酸菌スターターを0.04質量部加えて、30℃で15回転/分で撹拌しながら12時間発酵した。乳酸菌スターターを加えた時点でのpHは6.4であり、乳酸発酵工程終了時点でのpHは4.5であった。上記過程を経て、本発明に用いられる乳酸発酵物を得た。
<比較例1〜6及び実施例1〜11>
下記に示す表1の配合となるように、下記の手順に基づき可塑性油脂組成物(実1)〜(実11)、可塑性油脂組成物(比1)〜(比6)を製造した。
まず、油脂混合物とバターとを、それぞれ60℃に加熱して溶解して混合した混合物にレシチン0.1質量部を添加・溶解し、油相を調製した。一方、水に蛋白質濃縮ホエイ(A)及び蛋白質濃縮ホエイ(B)を混合・分散させた水相を調製した。調製した油相と水相とを混合して油中水型乳化物とし、殺菌し、急冷可塑化工程(冷却速度−20℃/分)で練り合わせながら冷却し、可塑性油脂組成物を得た。
蛋白質濃縮ホエイを含有しない他は、実施例と同様に製造して得られた可塑性油脂組成物を、コントロールとした。
比較例6及び実施例7〜9においては実施例3の配合をベースに、水相に上記乳清ミネラルを加えた他は、その他の可塑性油脂組成物と同様に製造した。
実施例10、11においては、実施例3の配合をベースに、水相に上記乳酸発酵物を加えた他は、その他の可塑性油脂組成物と同様に製造した。
Figure 2020005593
上記のようにして得られた可塑性油脂組成物(比1)〜(比6)、及び可塑性油脂組成物(実1)〜(実11)を用いて、下記の配合・製法でプルマン型食パン(比1)〜(比6)、及びプルマン型食パン(実1)〜(実11)を得た。
〔プルマン型食パンの配合・製法〕
強力粉(商品名「カメリア」:日清製粉製、蛋白質含有量11.8質量%及び灰分0.37質量%)70質量部、生イースト2質量部、イーストフード0.1質量部及び水40質量部をミキサーボウルに投入し、フックを使用し、低速で2分、中速で2分混合し、中種生地を得た。捏ね上げ温度は24℃であった。
この中種生地を生地ボックスに入れ、温度28℃、相対湿度85%の恒温室で、4時間中種発酵を行った。終点温度は29℃であった。この中種発酵の終了した生地を再びミキサーボウルに投入し、更に、強力粉30質量部、上白糖5質量部、脱脂粉乳2質量部、食塩1.5質量部及び水25質量部を添加し、低速で3分、中速で3分本捏ミキシングした。次に、実施例又は比較例の可塑性油脂組成物5質量部を投入し、フックを使用し、低速で3分、中速で3分、高速で1分ミキシングを行い、食パン生地を得た。得られた食パン生地の捏ね上げ温度は28℃であった。フロアタイムを20分とった後、得られた食パン生地を230gに分割し、丸目を行った。次いで、ベンチタイムを20分とった後、モルダー成形し、6本をU字にして3斤型プルマン型に入れ、38℃、相対湿度85%で50分ホイロをとった後、200℃に設定した固定窯に入れ40分焼成してプルマン型食パンを得た。
得られたプルマン型食パンを下記評価基準に則って、5名の専門パネラーによって採点させた。評価に先立ち、事前にパネラー間で各点数に対応する官能の程度をすり合わせた。
集計した結果が25〜23点である場合は◎++、22〜20点である場合は◎+、19〜17点である場合は◎、16〜14点である場合は○、13〜11点である場合は△、10点以下の場合は×とした。結果を表2に示す。
本発明においてコク味とは、咀嚼途中から嚥下直後に口腔・鼻腔内に好ましく感じられる濃厚な風味を意味する。
〔評価基準〕
・コク味
5点:コントロールと比較して、優れたコク味を強く感じる。
4点:コントロールと比較して、優れたコク味を感じる。
3点:コントロールと比較して、コク味を感じる。
2点:コントロール同様の弱いコク味を感じる。
1点:コントロールよりも、コク味が感じられない。
・乳風味
5点:コントロールと比較して、優れた乳風味を強く感じる。
4点:コントロールと比較して、優れた乳風味を感じる。
3点:コントロールと比較して、乳風味を感じる。
2点:コントロール同様の弱い乳風味を感じる。
1点:コントロールよりも、乳風味が感じられない。
・えぐ味
5点:全く感じられない。
4点:ごくわずかに感じるものの問題ないレベルである。
3点:わずかに感じるものの問題ないレベルである。
2点:はっきりと感じられる。
1点:強いえぐ味を感じる。
Figure 2020005593
表2から明らかなように、可塑性油脂組成物(実1)〜(実6)を用いて製造したプルマン型食パン(実1)〜(実6)は、コク味、乳風味及びえぐ味の2つ以上で、可塑性油脂組成物(比1)〜(比5)を用いて製造したプルマン型食パン(比1)〜(比5)に比べて高い評価が得られた。このことは、無脂乳固形分における蛋白質と炭水化物と灰分との質量比が特定の範囲に調整された可塑性油脂組成物を用いることによって、コク味と乳風味とが良好であり、かつえぐ味の少ないベーカリー製品が得られることを示す。
また、乳清ミネラルを含有する可塑性油脂組成物(実7)〜(実9)を用いて製造したプルマン型食パン(実7)〜(実9)は、コク味及び乳風味が一層良好なものであった。このことは、乳清ミネラルを含有する可塑性油脂組成物を用いることによって、コク味と乳風味とが一層良好なベーカリー製品が得られることを示す。
更に、乳酸発酵物を含有する可塑性油脂組成物(実10)〜(実11)を用いて製造したプルマン型食パン(実10)〜(実11)は、コク味及び乳風味が一層良好なものであった。このことは、乳酸発酵物を含有する可塑性油脂組成物を用いることによって、コク味と乳風味とが一層良好なベーカリー製品が得られることを示す。
<実施例12〜15>
本実施例では、併用するバターの量による風味の差異について検討した。実施例3をベースに、下記に示す表3の配合となるように、可塑性油脂組成物(実12)〜(実15)を製造した。バターの含有量が異なる他は、製造方法については、検討1において可塑性油脂組成物を製造する際と同様である。
製造された可塑性油脂組成物(実12)〜(実15)を用いて、実施例1〜11と同様にプルマン型食パン(実12)〜(実15)を製造した。得られたプルマン型食パンを検討1と同じパネラーが同一の基準で評価した。その結果を表4に示す。
Figure 2020005593
Figure 2020005593
プルマン型食パン(実12)及び(実13)は、バターの含有量がコントロールよりも少ない可塑性油脂組成物を用いて製造したにもかかわらず、コク味、乳風味及びえぐ味の評価結果が良好であった。これらの実験結果から、無脂乳固形分における蛋白質と炭水化物と灰分との質量比が特定の範囲に調整された可塑性油脂組成物を用いることによって、バターの使用量が少ない場合であっても、若しくはバターを使用しない場合であっても、えぐ味が少なく、優れたコク味のある乳風味を有するベーカリー製品が得られることが判明した。

Claims (7)

  1. 無脂乳固形分を0.5〜10質量%含有し、該無脂乳固形分中、蛋白質と炭水化物と灰分との質量比が、蛋白質:炭水化物:灰分で、45〜70:20〜40:8〜17(蛋白質と炭水化物と灰分との質量比の総和を100とする。)である可塑性油脂組成物。
  2. 上記蛋白質がホエイ蛋白質を70質量%以上含有する、請求項1記載の可塑性油脂組成物。
  3. 蛋白質の含有量が70〜95質量%であり、炭水化物の含有量が4〜15質量%であり、かつ灰分の含有量が0.1〜5質量%である蛋白質濃縮ホエイ(A)と、
    蛋白質の含有量が25〜30質量%であり、炭水化物の含有量が40〜55質量%であり、かつ灰分の含有量が15〜25質量%である蛋白質濃縮ホエイ(B)とを含有する、請求項1又は2記載の可塑性油脂組成物。
  4. 蛋白質濃縮ホエイ(A)及び蛋白質濃縮ホエイ(B)を合計で0.5〜4.5質量%含有する、請求項3記載の可塑性油脂組成物。
  5. 更に、乳清ミネラルを含有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の可塑性油脂組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の可塑性油脂組成物を含有するベーカリー生地。
  7. 請求項6記載のベーカリー生地を使用したベーカリー製品。
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