JP2019218243A - 衛生陶器及び衛生陶器の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
品位を表す指標の一つに衛生陶器の「美しさ」が挙げられる。「美しさ」とは、衛生陶器の輝きや色合い、透明感等から感じ取れる総合的な美感である。「美しさ」が認められる衛生陶器は、高品位の印象を与える。
特許文献1の衛生陶器では、衛生陶器の「美しさ」について、いまだ満足できるものでなかった。
[1]陶器素地と、前記陶器素地の表面に位置する上釉層と、前記陶器素地と前記上釉層との間に位置する中間層とを備え、前記上釉層の厚さの最大値と、前記上釉層の厚さの最小値との差が、50μm以下である、衛生陶器。
[2]前記中間層を厚さ方向に切断した切断面における気泡の平均気泡径が25μm以下である、[1]に記載の衛生陶器。
[3]前記中間層を厚さ方向に切断した切断面の面積に対する気泡の面積の割合が20%以下である、[1]又は[2]に記載の衛生陶器。
[5]前記中間層を形成する中間層組成物を前記陶器素地の表面に、浸し掛け、流し掛け、塗り掛け、又は吹き掛けのいずれかにより塗布した後焼成して一次焼成体を得、前記一次焼成体に前記上釉層を形成する上釉層組成物を塗布して焼成する、[1]〜[3]のいずれかに記載の衛生陶器の製造方法。
以下、本発明の一実施形態について、図1を参照して説明する。
図1に示す衛生陶器1は、陶器素地10と、陶器素地10の表面に位置する上釉層30と、陶器素地10と上釉層30との間に位置する中間層20とを備える。
本明細書において「陶器」とは、原料に長石、陶石、カオリン、粘土を用い、表面に釉薬を塗布して焼成したものを意味する。
衛生陶器1の厚さT1は、例えば、ノギスを用いて測定できる。
なお、本明細書において、写像性は、ウェーブスキャンDOI測定装置(BYK Gardner社製、Wave−Scan−DUAL)により測定されるDOI値を意味する。
陶器素地組成物は、水を含有する。陶器素地組成物の総質量に対する水の含有量は、30〜50質量%が好ましく、30〜40質量%がより好ましい。
陶器素地10の厚さT10は、例えば、ノギスを用いて測定できる。
上釉層組成物の総質量に対する水の含有量は、40〜80質量%が好ましく、40〜70質量%がより好ましい。
上釉層組成物に含まれる固形分の平均粒子径の下限値は、特に限定されないが、例えば、0.1μm以上である。
上釉層組成物に含まれる固形分の平均粒子径は、例えば、釉原料を粉砕することにより調整できる。釉原料を粉砕する道具としては、例えば、ボールミルが挙げられる。
なお、上釉層組成物に含まれる固形分は、上釉層組成物の乾燥物である。
上釉層組成物は、上記の他、フリットを含有することが好ましい。
フリットは、フリット原料を1300℃以上で溶融した後冷却し、非晶質のガラスとしたものである。上釉層組成物がフリットを含有することで、上釉層組成物の溶融開始温度を低くしやすい。加えて、上釉層組成物がフリットを含有することで、上釉層組成物をより均一に溶融しやすく、上釉層中の気泡を減少させやすい。
フリット原料としては、フリット原料の総質量に対して、二酸化ケイ素(SiO2)を40〜70質量%、酸化アルミニウム(Al2O3)を5〜15質量%、酸化ナトリウム(Na2O)と酸化カリウム(K2O)と酸化カルシウム(CaO)と酸化マグネシウム(MgO)と酸化亜鉛(ZnO)と酸化ストロンチウム(SrO)と酸化バリウム(BaO)と酸化ホウ素(B2O3)との合計を10〜50質量%含有する組成物が挙げられる。
なお、フリット原料の各成分の含有量の合計は、フリット原料の総質量に対して100質量%を超えないものとする。
第一溶融温度は、下記測定方法1−1により測定される。
<測定方法1−1>
アルミナ粉末を基準物質とし、衛生陶器用の上釉層組成物の乾燥物を試料粉末としてDTA測定を行い、DTA曲線を求める。得られたDTA曲線の700℃超の領域において、試料粉末の温度から基準物質の温度を減じた値ΔTを示す電位差ΔVが、小さくなる最初の変曲点における基準物質の温度を第一溶融温度とする。第一溶融温度よりも高温側の領域において、電位差ΔVが、大きくなる最初の変曲点における基準物質の温度を第二溶融温度とする。
DTA測定においては、試料粉末の温度及び基準物質の温度を一定のプログラムによって変化させながら、試料粉末の温度から基準物質の温度を減じた値ΔT((試料粉末の温度)−(基準物質の温度))を示す電位差ΔVを温度の関数として測定する。DTA曲線において、基準物質の温度が700℃超の領域で現れる変曲点のうち、電位差ΔVが、小さくなる最初の変曲点を第一変曲点とする。第一変曲点における基準物質の温度を第一溶融温度とする。第一溶融温度よりも高温側の領域で現れる変曲点のうち、電位差ΔVが、大きくなる最初の変曲点を第二変曲点とする。第二変曲点における基準物質の温度を第二溶融温度とする。
図2において、C1は、TG曲線を表す。C2は、DTA曲線を表す。C2は、基準物質の温度の上昇とともに電位差ΔVが大きくなり、基準物質の温度が700℃超の領域で第一変曲点P1が現れる。第一変曲点P1では、上釉層組成物が溶融を開始し、上釉層組成物のガラス構造が緩み始めているものと考えられる。第一変曲点P1は、C2の傾き(ΔVの増加量/基準物質の温度の増加量)が最大となるときのC2に引いた接線と、C2の傾きが最小となるときのC2に引いた接線との交点で与えられる。第一変曲点P1における基準物質の温度が第一溶融温度である。なお、第一溶融温度は、一般的なTG−DTAのグラフにおける補外溶融開始温度の求め方と同様にして求められる(JIS K7121−1987参照)。
C2は、第一変曲点P1が現れた後、ΔVが減少し、再びΔVが大きくなる第二変曲点P2を有する。第二変曲点P2では、上釉層組成物が溶融し、上釉層組成物のガラス構造が完全に緩んでいるものと考えられる。第二変曲点P2は、C2の傾きが最小となるときのC2に引いた接線と、C2の傾きが正となるときのC2に引いた接線との交点で与えられる。第二変曲点P2における基準物質の温度が第二溶融温度である。なお、第二溶融温度は、一般的なTG−DTAのグラフにおける溶融ピーク温度の求め方と同様にして求められる(JIS K7121−1987参照)。
試料粉末の質量は、例えば、5〜50mgが好ましい。
上釉層組成物の乾燥物を得る際の加熱温度は、例えば、20〜110℃が好ましい。
試料粉末を加熱する際の昇温速度は、例えば、2〜10℃/分が好ましい。
上釉層組成物の第二溶融温度は、850〜1150℃であり、870〜1100℃が好ましく、900〜1050℃がより好ましい。上釉層組成物の第二溶融温度が上記下限値以上であると、上釉層組成物を焼成するときの気泡の発生を抑制しやすい。上釉層組成物の第二溶融温度が上記上限値以下であると、上釉層組成物を焼成するときに発生した気泡を大気中に拡散しやすい。
上釉層溶融温度差は、上釉層組成物の第二溶融温度から、上釉層組成物の第一溶融温度を減じることにより求められる。
上釉層組成物の第二溶融温度は、上釉層組成物の第一溶融温度と同様に調整できる。
<測定方法1−2>
衛生陶器用の上釉層組成物の乾燥物を加圧成形して円柱状試料を得る。得られた円柱状試料を加熱しつつ、光を照射する。円柱状試料の表面が反射する反射光の光量を測定する。反射光の光量が、光り始めに検出した反射光の光量の10倍以上となる最初の温度を第三溶融温度とする。
円柱状試料の直径は、例えば、2〜10mmが好ましい。円柱状試料の高さは、例えば、5〜20mmが好ましい。円柱状試料の質量は、例えば、100〜500mgが好ましい。上釉層組成物の乾燥物を加圧成形する際の圧力は、例えば、10〜50MPaが好ましい。
反射光の光量は、望遠レンズ付きデジタルカメラで撮影し、画像処理システムによりピクセル数に換算される値とする。
円柱状試料を加熱する際の反射光の光量は、1℃ごとに測定される。「光り始め」は、円柱状試料の表面が反射する反射光の光量が0でなくなったときを意味する。
円柱状試料を加熱する際の昇温速度は、例えば、1〜10℃/分が好ましい。
円柱状試料に照射する光の光量は、例えば、500〜2000ルーメンが好ましい。
第三溶融温度では、上釉層組成物が溶融を開始し、上釉層組成物のガラス構造が完全に緩んでいるものと考えられる。
<測定方法2−1>
アルミナ粉末を基準物質とし、上釉層30の粉末を試料粉末としてDTA測定を行い、DTA曲線を求める。得られたDTA曲線の700℃超の領域において、試料粉末の温度から基準物質の温度を減じた値ΔTを示す電位差ΔV(μV)が、小さくなる最初の変曲点における基準物質の温度を第一溶融温度とする。第一溶融温度よりも高温側の領域において、電位差ΔVが、大きくなる最初の変曲点における基準物質の温度を第二溶融温度とする。
上釉層30の第一溶融温度は、上釉層組成物の第一溶融温度と同様である。
上釉層30の第二溶融温度は、上釉層組成物の第二溶融温度と同様である。
上釉層30の第二溶融温度と第一溶融温度との差は、上釉層組成物の第二溶融温度と第一溶融温度との差(上釉層溶融温度差)と同様である。
<測定方法2−2>
上釉層30の粉末を加圧成形して円柱状試料を得る。得られた円柱状試料を加熱しつつ、光を照射する。円柱状試料の表面が反射する反射光の光量を測定する。反射光の光量が、光り始めに検出した反射光の光量の10倍以上となる最初の温度を第三溶融温度とする。
上釉層30の第三溶融温度は、上釉層組成物の第三溶融温度と同様である。
衛生陶器1を上釉層30の厚さ方向に小型試料切断機を用いて切断する。切断した切断面をマイクロスコープ(オリンパス(株)製、DSX510)により、倍率125倍で観察する。観察した画像において、画像処理ソフトを用いて画像の明るさを2値化し、相対的に暗い箇所のそれぞれの面積で、πμm2(直径2μmの気泡相当面積)以上のものを気泡として検出する。
上釉層30の気泡面積率(%)は、上述したマイクロスコープ等を用いて観察される画像において検出される気泡の総面積(mm2)を、観察される画像における視野面積(mm2)で除することにより求められる。
上釉層30の切断面における気泡の平均気泡径(μm)は、上述したマイクロスコープ等を用いて観察される画像において、気泡として検出された部分のそれぞれの面積より真円換算で気泡径(直径)を計算し、気泡径の合計を検出された気泡数で除した平均値である。
上釉層30の切断面における気泡数(個/mm2)は、上述したマイクロスコープ等を用いて観察される画像において検出される気泡の数を、観察される画像における視野面積(mm2)で除することにより求められる。
衛生陶器1を上釉層30の厚さ方向に小型試料切断機を用いて切断する。切断した切断面をマイクロスコープ(オリンパス(株)製、DSX510)により、倍率125倍で観察する。観察した画像において、上釉層30の表面と、上釉層30と中間層20との境界線(上中境界線)との距離を任意の20か所について測定する。測定した距離の算術平均値を上釉層30の厚さT30とする。
衛生陶器1を切断する部位は特に限定されず、人の目に触れやすい部位が好ましい。人の目に触れやすい部位としては、例えば、洗面器の鉢面、洗面器の天面、小便器の天面、便器のリム部分、便器の鉢面、便器の側面等が挙げられる。
上釉層30の厚さT30を求める手順と同様に、上釉層30の表面と上中境界線との距離を任意の20か所について測定する。測定した20か所のうち、上釉層30の表面と上中境界線との距離が最大となるものを最大値T30MAXとする。測定した20か所のうち、上釉層30の表面と上中境界線との距離が最小となるものを最小値T30MINとする。
中間層組成物の総質量に対する水の含有量は、40〜60質量%が好ましく、40〜50質量%がより好ましい。
中間層組成物に含まれる固形分の平均粒子径の下限値は、特に限定されないが、例えば、0.05μm以上である。
中間層組成物に含まれる固形分の平均粒子径は、例えば、中間層原料を粉砕することにより調整できる。中間層原料を粉砕する道具としては、例えば、ボールミルが挙げられる。
なお、中間層組成物に含まれる固形分は、中間層組成物の乾燥物である。
なお、中間層組成物に含まれる固形分の各成分の含有量の合計は、中間層組成物に含まれる固形分の総質量に対して、100質量%を超えないものとする。
中間層原料が陶器素地原料と釉原料との混合物である場合、陶器素地原料/釉原料で表される質量比(以下、「素地/釉薬比」ともいう。)は、20/80〜80/20が好ましく、30/70〜70/30がより好ましく、40/60〜60/40がさらに好ましい。素地/釉薬比が上記下限値以上であると、陶器素地10と中間層20との結着性を高めやすい。素地/釉薬比が上記上限値以下であると、中間層20と上釉層30との界面を平坦にしやすい。
衛生陶器1の「美しさ」をより向上する観点から、中間層原料は、陶器素地原料と釉原料との混合物が好ましい。
また、中間層組成物は、陶器素地組成物と上釉層組成物とを上記素地/釉薬比となるように混合した混合物であってもよい。
顔料としては、ケイ酸ジルコニウム、酸化アルミニウム等が挙げられる。
中間層組成物が顔料を含有する場合、顔料の含有量は、中間層組成物に含まれる固形分の総質量に対して、3〜15質量%が好ましく、6〜15質量%がより好ましい。
中間層組成物の第一溶融温度は、850〜960℃が好ましく、910〜950℃がより好ましく、930〜950℃がさらに好ましい。中間層組成物の第一溶融温度が上記下限値以上であると、中間層組成物を焼成するときの気泡の発生を抑制しやすい。中間層組成物の第一溶融温度が上記上限値以下であると、上釉層30と中間層20との界面を平坦にしやすい。
中間層組成物の第一溶融温度は、上釉層組成物の第一溶融温度と同様の方法で測定できる。
中間層組成物の第二溶融温度は、上釉層組成物の第二溶融温度と同様の方法で測定できる。
中間層溶融温度差は、中間層組成物の第二溶融温度から、中間層組成物の第一溶融温度を減じることにより求められる。
中間層組成物の第二溶融温度は、中間層組成物の第一溶融温度と同様に調整できる。
中間層20の粉末は、中間層20を適宜切り出し、研磨等することにより得られる。
中間層20の第一溶融温度は、中間層組成物の第一溶融温度と同様である。
中間層20の第二溶融温度は、中間層組成物の第二溶融温度と同様である。
中間層20の第二溶融温度と第一溶融温度との差は、中間層組成物の第二溶融温度と第一溶融温度との差(中間層溶融温度差)と同様である。
中間層20の気泡面積率は、上釉層30の気泡面積率と同様の方法により求められる。
中間層20の切断面における気泡の平均気泡径は、上釉層30の切断面における気泡の平均気泡径と同様の方法により求められる。
中間層20の切断面における気泡数は、上釉層30の切断面における気泡数と同様の方法により計数できる。
衛生陶器1を中間層20の厚さ方向に小型試料切断機を用いて切断する。切断した切断面をマイクロスコープ(オリンパス(株)製、DSX510)により、倍率125倍で観察する。観察した画像において、上釉層30と中間層20との境界線(上中境界線)と、中間層20と陶器素地10との境界線(中素境界線)との距離を任意の20か所について測定する。測定した距離の算術平均値を中間層20の厚さT20とする。
中間層20の厚さT20を求める手順と同様に、上中境界線と中素境界線との距離を任意の20か所について測定する。測定した20か所のうち、上中境界線と中素境界線との距離が最大となるものを最大値T20MAXとする。測定した20か所のうち、上中境界線と中素境界線との距離が最小となるものを最小値T20MINとする。
次に、本実施形態の衛生陶器1の製造方法について説明する。
まず、陶器素地10を用意する。陶器素地10は、陶器素地組成物を成形したもの以外に、焼成して成形したものでもよく、予め成形された、又は成形して焼成された市販品であってもよい。
陶器素地組成物を焼成する場合、焼成温度は、例えば、1100〜1300℃が好ましく、1150〜1250℃がより好ましい。焼成温度が上記下限値以上であると、陶器素地10の強度を高めやすい。焼成温度が上記上限値以下であると、陶器素地10の変形を抑制しやすい。
浸し掛けとしては、ディップコーティング法が挙げられる。吹き掛けとしては、スプレーコーティング法が挙げられる。
中間層組成物を陶器素地10の表面に塗布することにより、一次塗布体が得られる。
一次塗布体を乾燥する際の温度は、20〜110℃が好ましく、30〜100℃がより好ましく、40〜90℃がさらに好ましい。一次塗布体を乾燥する際の温度が上記下限値以上であると、中間層組成物の水の含有量を低減しやすい。一次塗布体を乾燥する際の温度が上記上限値以下であると、中間層20の表面を平坦にしやすい。
一次塗布体を乾燥する時間は、0.5〜48時間が好ましい。一次塗布体を乾燥する時間が上記下限値以上であると、中間層組成物を充分に乾燥しやすい。一次塗布体を乾燥する時間が上記上限値以下であると、衛生陶器1の生産性を向上しやすい。
上釉層組成物を一次塗布体の表面に塗布することにより、二次塗布体が得られる。
焼成品を冷却する際の温度域は、800〜1300℃が好ましく、900〜1250℃がより好ましい。焼成品を冷却する際の温度域が上記下限値以上であると、気泡を上釉層30の外部に放出しやすい。焼成品を冷却する際の温度域が上記上限値以下であると、上釉層30の表面を平坦に形成しやすい。
焼成品を冷却する際の降温速度は、30℃/分以下が好ましく、10℃/分以下がより好ましく、0.1℃/分以下がさらに好ましい。焼成品を冷却する際の降温速度が上記上限値以下であると、気泡を上釉層30の外部に放出しやすい。加えて、焼成品を冷却する際の降温速度が上記上限値以下であると、上釉層30の表面を平坦に形成しやすい。
第一焼成工程の焼成時間は、1〜168時間が好ましく、2〜72時間がより好ましく、3〜24時間がさらに好ましい。第一焼成工程の焼成時間が上記下限値以上であると、中間層20の表面を平坦に形成しやすい。加えて、陶器素地10、中間層20のガス抜きがされ、上釉層30への気泡の混入を抑制しやすい。第一焼成工程の焼成時間が上記上限値以下であると、衛生陶器1の生産性を向上しやすい。
一次塗布体を焼成することにより一次焼成体が得られる。
一次焼成体を冷却する際の降温速度は、30℃/分以下が好ましく、10℃/分以下がより好ましい。一次焼成体を冷却する際の降温速度が上記上限値以下であると、気泡を中間層20の外部に放出しやすい。加えて、一次焼成体を冷却する際の降温速度が上記上限値以下であると、中間層20の表面を平坦に形成しやすい。
一次焼成体の表面に上釉層組成物を塗布する際の塗布量は、一次塗布体の表面に上釉層組成物を塗布する際の塗布量と同様である。
上釉層組成物を一次焼成体の表面に塗布することにより、二次塗布体が得られる。
第二焼成工程の焼成時間は、1〜168時間が好ましく、2〜72時間がより好ましく、3〜24時間がさらに好ましい。第二焼成工程の焼成時間が上記下限値以上であると、上釉層30の表面を平坦に形成しやすい。第二焼成工程の焼成時間が上記上限値以下であると、衛生陶器1の生産性を向上しやすい。
第二焼成工程により焼成品が得られる。焼成品は、冷却することにより、衛生陶器1となる。焼成品を冷却する際の温度は、上述した焼成品を冷却する際の温度と同様である。焼成品を冷却する際の降温速度は、上述した焼成品を冷却する際の降温速度と同様である。
衛生陶器1の「美しさ」をより向上しやすい観点から、本発明の衛生陶器の製造方法は、一次焼成体を経由して衛生陶器1を得ることが好ましい。
衛生陶器の「美しさ」をより向上しやすい観点から、衛生陶器は、中間層を備えることが好ましい。
なお、衛生陶器が中間層を有していない場合、上釉層(釉薬層)の厚さは、例えば、以下の手順で求められる。
衛生陶器を上釉層の厚さ方向に小型試料切断機を用いて切断する。切断した切断面をマイクロスコープ(オリンパス(株)製、DSX510)により、倍率125倍で観察する。観察した画像において、上釉層の表面と、上釉層と陶器素地との境界線(上素境界線)との距離を任意の20か所について測定する。測定した距離の算術平均値を上釉層の厚さとする。
本実施例において使用した原料は、下記の[使用原料]に示す通りである。
<陶器素地原料>
A−1:陶石10質量部、長石40質量部、粘土50質量部(SiO270質量%、Al2O325質量%、Na2OとK2OとCaOとMgOとZnOとの合計5質量%)。
A−2:陶石30質量部、粘土70質量部(SiO265質量%、Al2O330質量%、Na2OとK2OとCaOとMgOとZnOとの合計5質量%)。
<釉原料>
B−1:SiO263質量%、Al2O310質量%、Na2OとK2OとCaOとMgOとZnOとSrOとBaOとB2O3との合計20質量%、その他7質量%。
B−2:SiO264質量%、Al2O312質量%、Na2OとK2OとCaOとMgOとZnOとSrOとBaOとB2O3との合計24質量%。
<中間層原料>
陶器素地原料A−2と、釉原料B−1とを表1に記載の質量比(素地/釉薬比)で混合した混合物。
陶器素地原料A−1を1kg、水を0.4kg混合し、混合物を得た。その混合物をボールミルにより20時間粉砕し、陶器素地組成物を得た。
次に、長さ100mm、幅100mm、厚さ10mmの石膏型に前記陶器素地組成物を流し込み、陶器素地を得た。
フリット原料として釉原料B−2を1500℃で溶融させてフリットF−1を得た。
中間層原料を1kg、水を0.4kg混合し、混合物を得た。その混合物をボールミルにより20時間粉砕し、各例の中間層組成物を得た。
フリットF−1を1kg、水を0.6kg混合し、混合物を得た。その混合物をボールミルにより30時間粉砕し、粘性調整のため、カルボキシメチルセルロース等の粘性調整剤を添加し、上釉層組成物を得た。
[衛生陶器の調製]
上記陶器素地に各例の中間層組成物をスプレーコーティング法により塗布して、60℃で1時間乾燥させた後、上記上釉層組成物をスプレーコーティング法により塗布して二次塗布体を得た。二次塗布体を1220℃で20時間焼成し、直方体の衛生陶器の試料を得た。
小型試料切断機を用いて、各例の試料を試料の長さ方向の一辺の中点を通り試料の幅方向と平行な面で厚さ方向に切断した。切断した切断面をマイクロスコープ(オリンパス(株)製、DSX510)により、倍率125倍で観察した。観察した画像の幅方向の一端から他端までを幅方向に10等分して、それぞれ2か所の上釉層の表面と上中境界線との距離(L30)を測定した。一つの試料につき合計20か所の上記距離(L30)を測定し、上釉層の厚さの最大値、最小値、最大値と最小値との差、平均値を求めた。上記距離(L30)の平均値を上釉層の厚さとした。結果を表1に示す。表中、「差」は、上釉層の厚さの最大値と最小値との差を表す。
上釉層の厚さで観察した画像を用いて、観察した画像の幅方向の一端から他端までを幅方向に10等分して、それぞれ2か所の上中境界線と中素境界線との距離(L20)を測定した。一つの試料につき合計20か所の上記距離(L20)を測定し、平均値を求め、中間層の厚さとした。結果を表1に示す。
各例で用いた中間層組成物を80℃で2時間乾燥させて各例の試料粉末を得た。DTA装置(株式会社リガク製、TG8121)を用い、常温(25℃)の空気を200mL/分の流量で通流しながら、アルミナ粉末(基準物質)30mgと各例の試料粉末30mgとを、昇温速度3℃/分で加熱してDTA測定を行った。得られたDTA曲線において、基準物質の温度が700℃超の領域で現れる試料粉末の温度から基準物質の温度を減じた値ΔTを示す電位差ΔVが、小さくなる第一変曲点を求め、第一変曲点における基準物質の温度を第一溶融温度とした。測定した第一溶融温度を表1に示す。
上記DTA曲線において、第一溶融温度よりも高温側に現れ、試料粉末の温度から基準物質の温度を減じた値ΔTを示す電位差ΔVが、大きくなる最初の変曲点(第二変曲点)を求め、第二変曲点における基準物質の温度を第二溶融温度とした。測定した第二溶融温度を表1に示す。
上記のマイクロスコープにより観察した画像を用いて、装置処理ソフト(三谷商事(株)、WinROOF2015)により、画像を2値化し、画像解析により、中間層の切断面における平均気泡径、気泡面積率を求めた。結果を表1に示す。
各例の試料を準備し、ウェーブスキャンDOI測定装置(BYK Gardner社製、Wave−Scan−DUAL)によって、DOI値を測定した。結果を表1に示す。
各例の試料を準備し、室内で蛍光灯にかざし、衛生陶器の「下地の乱れ」を感じるか、という観点から、外観感応評価を実施した。ここで、「下地の乱れ」とは、衛生等陶器表面の上釉層を通して見える上釉層の下の層(中間層)の乱れが人間の視覚で認められることを示し、「下地の乱れ」が少ない衛生陶器は、「美しさ」に優れる。外観感応評価は、被験者10人で実施し、下記評価基準に基づいて、「下地の乱れ」を評価した。結果を表1に示す。
《評価基準》
○:「下地の乱れ」を感じない被験者の数が7人以上。
△:「下地の乱れ」を感じない被験者の数が5人以上。
×:「下地の乱れ」を感じない被験者の数が4人以下。
一方、上釉層の厚さの最大値と最小値との差が50μm超である比較例1〜2は、「下地の乱れ」の評価が「×」だった。
10 陶器素地
20 中間層
30 上釉層
C1 TG曲線
C2 DTA曲線
P1 第一変曲点
P2 第二変曲点
Claims (5)
- 陶器素地と、前記陶器素地の表面に位置する上釉層と、前記陶器素地と前記上釉層との間に位置する中間層とを備え、
前記上釉層の厚さの最大値と、前記上釉層の厚さの最小値との差が、50μm以下である、衛生陶器。 - 前記中間層を厚さ方向に切断した切断面における気泡の平均気泡径が25μm以下である、請求項1に記載の衛生陶器。
- 前記中間層を厚さ方向に切断した切断面の面積に対する気泡の面積の割合が20%以下である、請求項1又は2に記載の衛生陶器。
- 前記中間層を形成する中間層組成物を前記陶器素地の表面に、浸し掛け、流し掛け、塗り掛け、又は吹き掛けのいずれかにより塗布し、乾燥し、次いで、前記中間層組成物を塗布した面に、前記上釉層を形成する上釉層組成物を塗布する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の衛生陶器の製造方法。
- 前記中間層を形成する中間層組成物を前記陶器素地の表面に、浸し掛け、流し掛け、塗り掛け、又は吹き掛けのいずれかにより塗布した後焼成して一次焼成体を得、前記一次焼成体に前記上釉層を形成する上釉層組成物を塗布して焼成する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の衛生陶器の製造方法。
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