JP2019217704A - アルミニウム合金と樹脂の複合体 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐候性、耐湿熱性があり、且つ、耐温度衝撃性のある接合構造も有する、自動車、航空機、移動型ロボット等の移動機械用の部品、構造材である。【解決手段】射出接合物を使用した温度衝撃3,000サイクル試験の結果、樹脂部の厚が1.5mm以下であれば樹脂部の伸び縮みが金属部の伸び縮みに従属して接合面の中心から最も遠い局部においても剥がれを生じない。射出接合物1は、アルミニウム合金板製の金属矩形板2、及びこれと一体に接合された樹脂成形物本体部3からなる。外周台座7は、樹脂厚0.5〜1.5mmで幅5〜10mmの帯状の平野部である。【選択図】 図15

Description

本発明は、金属材と熱可塑性樹脂とから得られる金属と樹脂成形物を一体化した、アルミニウム合金と樹脂の複合体に関する。更に詳しくは、−50℃/+150℃の温度衝撃3,000サイクルにも耐え得るアルミニウム合金と樹脂の複合体に関する。
金属同士、又は金属と合成樹脂を強く接合する技術は、自動車、家庭電化製品、産業機器等の部品製造業等だけでなく広い産業分野において求められ、このために多くの接着剤が開発されている。このような接合技術は、あらゆる製造業において基幹となる技術である。接着剤を使用しない接合方法に関しても、従来から研究され種々提案されている。その中でも製造業に大きな影響を与えたのは、本発明者等が開発し命名した「NMT(Nano Molding Technologyの略)」である。NMTとは、アルミニウム合金と樹脂組成物との接合技術であり、予め射出成形金型内にインサートしていたアルミニウム合金に、溶融したエンジニアリング樹脂を射出して樹脂部分を成形すると同時に、その成形品とアルミニウム合金とを接合する方法である(以下、金属など固形物を射出成形金型にインサートして熱可塑性樹脂を射出して一体化物を得ることを、略称して「射出接合」という)。
特許文献1には、特定の表面処理を施したアルミニウム合金に対し、ポリフェニレンサルファイド樹脂(以下、「PPS」という。)系樹脂組成物を射出接合させる技術(NMT)が開示されている。 特許文献2には、NMTにおけるアルミニウム合金の表面処理法を改良し、射出接合力を高めた射出接合技術(本発明等が命名した「NMT2」)が開示されている。NMT及びNMT2においては、アルミニウム合金の表面処理の方法として、アルミニウム合金の表面にアミン系分子を化学吸着させる方法が採用されている。
アルミニウム合金以外の金属材は、アミン系分子が化学吸着し難いものが多い。しかし一方で、NMTで使用する射出接合用に好適な樹脂組成物の研究開発が進み、これら樹脂組成物を使用すれば、アミン系分子吸着物が介在しなくとも各種金属材に対して各々適切な微細凹凸面化操作を加えることだけで、各種金属材との射出接合が可能になることが判明した。即ち、アミン系分子吸着物不在の表面処理物でも、各種金属材と樹脂組成物を射出接合させることができる技術(新NMT)を提案した。即ち、新NMTは、アルミニウム合金を含むあらゆる金属材に適用可能である。
以下、本発明でいうNMT、NMT2、新NMTについてより詳しく説明する。
(NMT)
アルミニウム合金使用の射出接合技術であるNMTは、その成立の必要条件として以下の4又は5条件を規定した。まず、アルミニウム合金側に関しては、以下(1)及び(2)が必要条件である。なお、この2点を満足するようにアルミニウム合金表面を化学処理することを「NMT処理」と言う。
(1)20〜50nm径の超微細凹部で全表面が覆われていること。
(2)その表面層に水溶性アミン系化合物が化学吸着していること。
次に、射出する樹脂組成物側に関して、以下の2点又は3点が必要条件である。
(3)樹脂組成物は、高結晶性の熱可塑性樹脂を主成分とする樹脂組成物を使用すること。
(4)その高結晶性熱可塑性樹脂は、高温下でアミン系分子と化学反応すること。
(5)樹脂組成物は、従成分樹脂として、主成分樹脂に相溶し得る樹脂、又は主成分樹脂に相溶しない樹脂であっても第3成分樹脂を加えることで主成分樹脂への相溶が可能となる樹脂を含むこと。
上記(1)〜(4)が必須の必要条件であり、上記(5)の条件が加われば射出接合力がより強くなる。上記(1)〜(5)の条件を満たし、且つ、上記(2)のアミン系化合物として水和ヒドラジンを選択したものが、実用化されたNMT及び次のNMT2であった。
(NMT2)
NMTは、当初PBT(ポリブチレンテレフタレート樹脂)に関して発見され、次にPPSも使用できることが確認され(特許文献1)、次にポリアミド樹脂等も使用できるものであることを確認した。このことで前記のNMT5条件が的を射ていると判断し、次は前記の条件(2)を改善すべく使用していた水溶性アミン系分子(水和ヒドラジン)の化学吸着量の適正化を図った。その結果、射出接合力が大幅に高まった(特許文献2)、この技術を「NMT2」と本発明者等は命名した。
(新NMT)
NMT発見後、本発明者等は、アミン系分子の化学吸着物が不在であっても各種金属材と樹脂組成物を射出接合させることができる新NMTを開発した。その成立の必要条件として以下の5条件を規定した。まず、金属材側に関して、以下の3条件が必要条件である。この3条件を満足するように、金属材表面を化学処理することを本発明では「新NMT処理」と称する。
(i)0.8〜10μm周期の粗面で全表面が覆われていること。
(ii)その粗面上に、10〜300nm周期の超微細凹凸面があること。
(iii)全表面が、金属酸化物、金属リン酸化物又はセラミック質の硬質な薄膜で覆われていること。
次に、射出する樹脂組成物側に関して、以下の2条件が必要条件である。
(iv)高結晶性の熱可塑性樹脂を主成分とする樹脂組成物を使用すること。
(v)樹脂組成物は、従成分樹脂として、主成分樹脂に相溶し得る樹脂、又は主成分樹脂に相溶しない樹脂であっても、第3成分樹脂を加えることで主成分樹脂への相溶が可能となる樹脂を含むこと。
当然のことながら、金属の種類、合金の種類によって、その表面の具体的な処理法、即ちそれらの上記の「新NMT処理」方法は異なる。上記「新NMT」の5条件と前述した「NMT」の5条件を比較すると、射出樹脂に関してはほぼ同じである一方、金属材の表面処理方法について大きく異なっている。要するに、新NMTは、射出接合用の樹脂の改良が進んだことにより、金属材の適切な表面処理により、その表面形状が好ましいものであれば、強い射出接合が実現できることを示したものだった。産業用に使用されている金属種のほぼ全てに関し、新NMTの処理方法は既に提案し、公開されている。即ち、ステンレス鋼に関し特許文献4、チタン材に関し特許文献5に記載があり、アルミニウム合金に関しても特許文献3に記載がある。それ故、アルミニウム合金を使用したNMTと新NMTとを比較しながら、以下これについて説明する。
(NMTと新NMTの比較)
NMTでは、上記条件(2)に従い、アルミニウム合金表面の超微細凹部にアミン系分子が化学吸着した状態において、高温下でこのアミン系分子と化学反応しやすい射出樹脂がこの超微細凹部に侵入することで、接合力ある射出接合物の作成を可能にすると説明した。更に、射出樹脂が上記条件(5)を満たす樹脂組成物であれば、急冷時の結晶化速度が抑制されて、アルミニウム合金表面の超微細凹部への樹脂侵入がさらに容易になるとしている。これに対して、アルミニウム合金材を使った新NMT(特許文献3)では、アルミニウム合金側の表面形状として、上記条件(i)及び上記条件(ii)の2重凹凸面形状が示されているのみで、アミン系分子の化学吸着という条件はなくなっている。一方の射出樹脂は同じ物ゆえに、NMTと比較して、アミン系分子の化学吸着がない分、射出接合物の接合力が低下することは避けられなかった。
WO2004/041532 WO2012/070654 特開2010−064496 WO2008/081933 WO2008/078714 特願2018−081709
「接着耐久性の向上と評価」株式会社情報機構社発行、第1刷、2012、p.372−374
前述した各技術は、アルミニウム合金を使用したNMT2製品、アルミニウム合金を使用した新NMT製品、ステンレス鋼を使用した新NMT製品等が実用化され量産されており、用途はスマートフォンや携帯電話、その他のモバイル電子機器の部品部材である。しかしながら、出願人が知る限りでは、軽量金属であるアルミニウム合金使用の射出接合物は、自動車、航空機等の移動機械用の構造部品としては使用されていない。即ち、移動機械用の部品、構造部材等の部材は軽量なだけでは採用されず、屋外で使用されるが故にその接合力に耐候性、耐湿熱性、及び、耐温度衝撃性が要求される。
本発明の目的は、耐候性、耐湿熱性があり、且つ、耐温度衝撃性のある接合構造も有する、アルミニウム合金と樹脂の複合体を提供することにある。
本発明の他の目的は、自動車、航空機、移動型ロボット等の移動機械用の部品、構造材として、アルミニウム合金と樹脂の複合体を提供することにある。
本発明は、前記課題を解決するために次の手段を採る。
本発明1のアルミニウム合金と樹脂の複合体は、
1万倍以上の電子顕微鏡写真で観察される金属結晶粒界線が凹部の境界となった0.5〜5.0μm周期の凹凸面形状が確認され、更に、10万倍の電子顕微鏡写真で観察される20〜100nm径の超微細凹部で全面が覆われている超微細凹凸面を有することが明確で、且つ、アミン系分子が化学吸着しているアルミニウム合金材と、
ポリフェニレンサルファイドを主成分、変性ポリオレフィン系樹脂を従成分、更に相溶化材的高分子を第3成分として含む樹脂分を有し、且つ、ガラス繊維を樹脂組成物分の10〜25%、及び炭素繊維を0〜10%含むPPS系樹脂組成物からなる樹脂形状物と
が直接的に接合したアルミニウム合金と樹脂の複合体であって、
前記アルミニウム合金材と前記樹脂形状物が接合した前記樹脂形状物は、
前記接合部の中心部を成す樹脂成形物中心部、
前記樹脂成形物の樹脂中心部を囲み、前記樹脂中心部より肉厚が薄くなる樹脂中間部、
及び、前記樹脂成形物中心部及び前記樹脂中間部の全周囲を実質的に囲む、幅5mm以上ある樹脂薄肉部とからなる。
本発明2のアルミニウム合金と樹脂の複合体は、
千倍電子顕微鏡観察で10〜100μm周期の大周期の凹凸のある粗面形状があり、且つ、1万倍電子顕微鏡観察で金属結晶粒界が低部の堺となっていることが分る0.5〜5μm周期の凹凸面形状があり、更に、10万倍電子顕微鏡観察で分かる10〜100nm外径の凹部、又は陽極酸化処理による孔部が密着して全面を覆っている形の超微細凹凸面があるアルミニウム合金材と、
ポリフェニレンサルファイドを主成分、変性ポリオレフィン系樹脂を従成分、更に相溶化材的高分子を第3成分として含む樹脂分を有し、且つ、ガラス繊維を樹脂組成物分の10〜25%、及び炭素繊維を0〜10%含むPPS系樹脂組成物からなる樹脂形状物と
が直接的に接合したアルミニウム合金と樹脂の複合体であって、
前記アルミニウム合金材と前記樹脂形状物が接合した前記樹脂形状物は、
前記接合部の中心部を成す樹脂成形物中心部、
前記樹脂成形物の樹脂中心部を囲み、前記樹脂中心部より肉厚が薄くなる樹脂中間部、及び、
前記樹脂成形物中心部及び前記樹脂中間部の全周囲を実質的に囲む、幅5mm以上ある樹脂薄肉部とからなることを特徴とする。
なお、本発明2のアルミニウム合金材は、本発明1のようにアミン系分子を化学吸着させたものであっても良い。
本発明3のアルミニウム合金と樹脂の複合体は、本発明1又は2において、
前記樹脂薄肉部は、肉厚が0.5〜1.5mmであることを特徴とする。
本発明4のアルミニウム合金と樹脂の複合体は、本発明1〜3において、前記樹脂中間部は、肉厚が1.0〜3.0mmであることを特徴とする。
本発明5のアルミニウム合金と樹脂の複合体は、本発明1〜3において、前記樹脂成形物中心部は、前記アルミニウム合金材と前記樹脂形状物が直接接合した面積が0.5cm以上であることを特徴とする。
本発明6のアルミニウム合金と樹脂の複合体は、本発明1〜3において、前記アルミニウム合金形状物と前記樹脂形状物が直接接合した部分は、平面又は曲面であることを特徴とする。
以下、本発明を上記の構成について、詳細に説明する。
[複合体]
本発明の複合体(「射出接合物」とも言う。)は、材質がアルミニウム合金であり表面処理されたアルミニウム合金材と、ポリフェニレンサルファイドを主成分、変性ポリオレフィン系樹脂を従成分とするPPS系樹脂組成物からなる樹脂形状物が一体に接合されたものである。アルミニウム合金材は、所望の形状に公知の機械加工等で加工されたものである。樹脂形状物は、射出成形等で成形されたものである。
[本発明の対象なるアルミニウム合金]
本発明の複合体で使用するアルミニウム合金、又はアルミニウム合金材とは、純アルミニウム、各種アルミニウム合金、アルミニウム鍍金鋼板、アルミニウムクラッド材等を材質とするものであり、これを素材とする金属材である。
[アルミニウム合金材の表面処理法]
本発明のアルミニウム合金材の表面処理方法は、本発明で定義される表面形状、状態、成分を備えたものであれば、いかなる処理方法でも良いが、以下に説明する方法が好ましい。前述したNMT2処理に関して処理条件を述べると、NMTで説明した「(i)20〜40nm径の超微細凹部で全表面が覆われていること、(ii)その表面層にアミン系化合物が化学吸着していること」の2点に関し、NMT2処理では、上記(i)は同一であるが上記(ii)が調整されており、アミン系化合物が十分に(射出接合するとき適切量に)化学吸着していることが条件となっている。そして前述したNMT、NMT2処理共に、現実に商業化されているのは、このアミン系化合物として水和ヒドラジンが使われている。このNMT2処理をしたアルミニウム合金は本発明に使用できる。
近年、本発明者等は「NMT7」処理法(具体的な処理方法は後述する。)を開発した。本発明2でも限定したように、NMT7で述べている処理条件は、(a)電子顕微鏡千倍観察で、10〜100μm周期の大きな粗面形状が観察され、更に電子顕微鏡1万倍観察で前記粗面上に0.5〜5μm周期の凹凸のある微細凹凸面形状が観察され、更に電子顕微鏡10万倍観察で前記粗面上に10〜100nm周期の凹凸のある超微細凹凸面形状が観察されるアルミニウム合金表面形状にすること、場合によっては、(b)その表面にアミン系化合物が射出接合に関しての適切量で化学吸着していること、の2点である。そして、ここで使用されているアミン系分子はやはり水和ヒドラジンである。又、NMT7処理物から吸着していた水和ヒドラジンを酸化分解して除いた処理物が「NMT7−Oxy」処理物であり、このNMT7−Oxy処理物にトリエタノールアミンを再度吸着させた処理物が「NMT8」処理物である。これらの詳細は後述する実施例の記載、又は特許文献6で提案した。
上記の「NMT−Oxy」処理されたアルミニウム合金材は、既に吸着アミンは失われているために、吸着アミンなしでも使用可能ということになれば、元々アミン系の処理剤を全く使用しない処理法である「Ano−7」処理品も有効であると予想し、実際に確認した上で本発明の処理方法の1つとした。即ち、「Ano−7」処理とは、超微細凹凸面化処理までは「NMT7」と同じ処理を行い、その後は、陽極酸化処理にて超微細孔で全面を覆うようにした処理法である。又、別の言い方をすれば、「NMT7−Oxy」及び「Ano−7」処理法は、化学吸着アミンが不存在である故に、新NMT処理法の改良版である。
本発明でいうNMT2処理品と、本発明でいう上記の新型処理物(NMT7、NMT7−Oxy、Ano−7、NMT8処理品)の最大の違いは、端的に言えば、20〜100μm周期の荒い粗面を明確に持つか否かの違いである。またNMT2処理はこの20〜100μm周期の粗面形状や0.5〜10μm周期の微細凹凸面につき何ら言及していないが、アルミニウム合金材に付着した錆や汚れや加工油剤を軽い化学エッチング工程によって、アルミニウム合金材の表面層諸共、取り除いて綺麗な表面とする前処理工程を含むものである。この結果、意図せずともごく浅い0.5〜5μm周期の粗面が形成される。これに対し、NMT7処理は意図的に数十〜100μm周期の粗面を作り、更に、0.5〜10μm周期の粗面も意図的にNMT2処理品よりも強く処理した。それ以外は同様であり、即ち、20〜100nm周期の超微細凹凸面は、双方共に持っている。具体的なNMT7処理法等の処方方法は、後述する実施例に記述した。
以上から本発明にアルミニウム合金の「NMT2」及び「NMT7」〜「NMT8」の処理品が使用できるが、PPS系樹脂との射出接合力は「NMT2」よりも後者による処理品の方が強く、且つ、処理してから射出接合までの有効保管日数(射出接合可能な期間)も後者の方が遥かに長い。NMT2処理品は、保管日数が1週間以上と有効保管日数以上となっても接合力自体は変わらないがその耐湿熱性が保管日数として2〜4日(季節により変わる)を過ぎると万全でなくなる。それに対し「NMT7」等は、保管日数が2〜4週間となっても全く支障なく大量生産による商業化に適している。
[射出接合用のPPS系樹脂]
本発明で用いる樹脂は、好適には射出接合用のPPS系樹脂であり、以下のものである。このPPS系樹脂は、組成物中の樹脂分として、主成分がPPS、従成分が変性ポリオレフィン樹脂、そして第3成分樹脂として前記両者を部分的にでも相溶化する能力のある高分子の含まれていることが必要である。更には、強化繊維フィラーとして、ガラス繊維(以下、「GF」という。)を全体の10〜25%、CF(炭素繊維)を同0〜10%含み、GFとCFの双方として全体の15〜30%を含む樹脂組成物が使用できる。
具体的には、市販されている各社の射出接合用PPS系樹脂が使用できるが、本発明者らは「(SUSTEEL(登録商標))SGX120」(東ソー株式会社(本社:日本国東京都)製、以下「SGX120」という。)が、最も好適に使用できる。この樹脂組成物は、樹脂分の85%近くがPPS、10%以上を変性ポリオレフィン、それに若干の第3成分樹脂を含み、他に全体の20重量%にあたるGFを含む物である。但し、これらの成分以外の樹脂種等が添加されたものも本発明でいう射出接合樹脂に含まれる。
[射出接合工程]
本発明の複合体を得るには、一般的な射出成形で行われているインサート成形が好ましい。即ち、表面処理されたアルミニウム合金材を射出成形金型にインサートし、前述したPPS系樹脂を射出するものである。種々の形状の射出接合物を得る上において、実際には射出成形条件を微調整するが、射出成形条件の調整方法として、射出温度、射出速度は通常の射出成形の場合とほぼ同等であり、敢えて言えば射出温度と射出成形金型の温度はやや高めに設定する。具体的には、射出温度は300℃程度、金型温度は140℃付近が好ましい。
使用する金属材であるアルミニウム合金材が、0.5kgを超えるような大物の場合、射出成形金型にインサートして、数秒以内に樹脂射出すべきではない。後述する図1や図2に示すような小型の射出接合物(試験片)を作成するときは、インサートして射出成形金型を閉めた直後に樹脂射出が可能だが、これはインサートした金属形状物が、金型温度の約140℃に昇温する速度が速いからである。要するに、大型の金属形状物をインサートする場合には、その金型温度近くである適温に温度を上昇させてから成形すると良い。具体的には、金属形状物をインサートし、射出成形金型を閉じてから0.5〜1分待って樹脂を射出するか、それでも140℃温度の近くまでの昇温に不十分と感じた場合は、予熱用温風乾燥機にて80℃×10分程度加熱し、これをインサートして、更に0.5〜1分待って樹脂射出するのがよい。なお、NMT7〜NMT8等の特許文献6に記載の処理法によるアルミニウム合金材、及び、新NMT処理やその改良型処理をした金属形状物は、樹脂射出前に140℃×1分の熱履歴を与えられたとしても、得られる射出接合物における金属形状物と樹脂成形物間の接合物性に全く悪影響を与えないことが分っている。
[アニールの必要性]
成形された本発明の樹脂と金属の複合体は、成形して得られた射出接合物は、同日内に170℃温度の前後の熱風乾燥機内に、約1時間入れ加熱する「アニール」を行うことが好ましい。その技術的意味は、前述した方法で得た射出接合物は、強い接合力で離型され放冷後に、接合面に生じる内部応力を接合力で抑え込んでいる故に、その内部応力を開放するためである。この内部応力とは、140℃の金型温度から常温に下がる間の約120℃の温度低下に関し、樹脂部はその成形収縮率(「SGX120」では約0.5%)で縮むが、アルミニウム合金材は、線膨張率(2.3×10−5−1)と120℃の積(約0.3%)で縮むことになる。このために、複合体は、140℃の温度下で接合している両者間には、放冷後に本来は長さ差が生じるからである。要するに、樹脂部の方が結果的には大きく縮もうとするので、接合面の付近に内部応力が発生する。射出接合物をアニールなしのままとし、射出接合した1時間後にせん断接合強度を測定すると、その接合力は約30MPa付近となり、本来のせん断接合強度の約40MPaより明確に低値となる。
それ故に、残存している内部応力を一旦ゼロにするのが目的で射出接合の当日内にアニールを行う。アニールを終え熱風乾燥機から出した物では既に樹脂結晶化は十分進んでおり、その後は放冷されてもアルミニウム合金材、樹脂材の双方は線膨張率だけに従って縮む。それ故に放冷後に接合面に残る応力はアニール前よりもずっと小さくなる。そしてその後の放置により内部応力はクリープにより消失する。
[本発明の射出接合物の接合構造]
自動車等の実際の移動機械用部品部材として、使用可能な小型、大型の射出接合物(後述する実施の形態の図15〜図21で例示する。)は、どのような接合形状にすべきかにつき、本発明の射出接合物の接合構造の基本的な技術思想は、必要最低限の接合強度を保持するために、前述したNMT2レベル以上の射出接合力のある射出接合物であることが条件である。更に、移動機械用部品として、使用環境を考慮すると、後述する本発明で言う温度衝撃3,000サイクルに耐え得るものが最高度の物とされている。この温度衝撃試験に対応できる射出接合物の形状は、如何なるものかの設問に対して出した本発明の結論は、「樹脂厚を1.5mm以下にすれば樹脂部が金属材から剥離することなく、且つ、その接合面積は自由である。」との結論に達した。
ただ、この結論のみだと、樹脂形状物に薄肉の樹脂シートを付けた複合体に過ぎない。この薄肉の樹脂シート部分は、確実にかつ強固にアルミニウム合金材に接合しているから、この部分を動かぬ止め具、即ち固着部分として設計すれば、例えば太いボス状物で、接合面積が仮に0.5cm以上あり樹脂高さも数cm以上あるような物でも、問題は生じない。言い換えれば、接合面積が狭くても、広くても、この接合部分を中心に、この外周を厚さ1.5mm以下のシート状物で取り巻き、アルミニウム合金材と樹脂形状物を完全一体化させて接合させる固着構造を採用すると、厳しい温度衝撃サイクル試験にも耐え得ることが判明した。
[高温高湿試験]
自動車等の機械部品の耐久性を実際に試験するには、その耐用期間と同じ15〜20年の間を自動車部品として搭載して、実使用試験を行うのが理想的である。しかしながら、通常の耐久試験では、時間短縮のために実際には加速試験で代替されている。種々の材料での耐湿熱性の加速試験として知られているのは、85℃温度で85%湿度とした高温高湿試験機に、1,000時間入れる試験法である。そこで本発明者等は、図1に示した試験片の射出接合物を、この高温高湿試験機で、1,000時間でなく3,000〜8,000時間晒す試験をした。この高温高湿試験を行う前の予備的な高温高湿試験として、98℃温度の純水を入れた電気ポットに数日から数週間浸漬する方法を考案し実施した。
このような簡易的な試験方法を採用して、種々の金属とPPS系樹脂「SGX120」の射出接合物における耐湿熱性を調べた。その試験結果を見つつ前述したNMT処理法を改善した。この結果、アルミニウム合金と「SGX120」からなる射出接合物において、接合力に高い耐湿熱性を有している接合構造と方法を開発した。即ち、NMT2処理したアルミニウム合金では、そのアルミニウム合金と「SGX120」との射出接合物において、その接合力の耐湿熱性を確保することが出来た(特許文献2)。そしてその後、NMT2を更に改良した後述するNMT7、NMT8、及び、アミン系分子の化学吸着がない新しい提案をした。これらの新NMT処理法による表面処理法の採用により、高い接合力を有し、かつその接合力を高温高湿性下にも耐え、しかも大量生産も確実にできる表面処理技術を開発し提案した(特許文献6)。
[温度衝撃3,000サイクル試験]
本発明の温度衝撃試験とは以下の試験である。自動車等の移動機械用の部材として、射出接合物を使用するには、少なくともその接合力に上記耐湿熱性が要求されるが、更に、本発明で言う耐温度衝撃性が必要である。即ち、自動車では−50℃になる厳冬期に、例えば米国のアラスカでエンジンを駆動させると、エンジン近傍はこの低温から急上昇し150℃にも至る。又、エンジンを停止させると今度は急冷化する。自動車等のエンジン、モーター、ランプ付きの移動機械において、寒冷地、成層圏、熱帯等も含め如何なる環境下で使用したとしても、その温度変化の厳しい条件は、下記の温度衝撃サイクル試験レベルかそれ以下であると予想し、本発明者は下記のような試験を実施した。即ち、−50℃と+150℃の各低高温室に、30〜60分以上晒して、室間移動と温度調整用変化時間の合計が約5分とした温度衝撃サイクル試験である。本発明の試験の場合、1サイクルは合計時間が最短約70分であり、サイクル数は自動車メーカーが行っている温度衝撃試験の標準法で3,000サイクルである。
そこで、NMT2処理したアルミニウム合金(A5052)と射出接合用PPS系樹脂「SGX120」で作成した図1形状の試験片(但し、そのアルミニウム合金部の厚さは1.5又は1.6mm)の射出接合物を−50℃と+150℃の各低高温室に30分晒して、室間移動と温度調整用変化時間の合計が5分とした温度衝撃3,000サイクル試験にかけた。その結果、1,000サイクルでは全く問題が発見できず、2,000サイクルでは3mm厚ある樹脂部の10mm×5mm接合面の角4カ所の内の2カ所にて僅かな剥がれが見つかり、3,000サイクル品ではその角2カ所含む3辺にて剥がれ幅が接合面中央に向かっては0.5〜1mmになっていた(図示せず。)。要するに、図1に示した試験片の僅か10mm×5mm(0.5cm)の接合面であっても3,000サイクルの厳しい温度衝撃を受けて、3mm厚の樹脂部は部分的に剥がれを生じ、せん断接合強度は当初の70〜80%に低下した。
[温度衝撃試験の必要な理由とその試験結果評価]
射出接合に使用した「SGX120」には、ガラス繊維(以下「GF」という。)が20重量%含まれている。それ故にその線膨張率は、GF等のフィラー不含品である「SGX100」の約10×10−5−1より大きく下がるものの、6×10−5−1程度である。一方のアルミニウム合金材は、2.3×10−5−1の線膨張率を有しており、両者の線膨張率差は4×10−5−1程となる。それ故、上下200℃も温度変化があれば本来200℃×(4×10−5−1)=8×10−3=0.8%の長さ差が温度変化毎に両材間に生じることになる。接合面では、強い接合力によりこれが押し込められており、主には樹脂部の下面層(接着面付近の樹脂層)が強制的にAl材部に伸び縮みさせられる。温度衝撃的ではなく季節による気温変化のような温和な温度変化であれば、熱可塑性樹脂にはクリープという得意技があるので樹脂部は僅かな変形をして線膨張率差による内部応力の発生は収まるが、温度衝撃サイクル試験はこのクリープを許さない試験である。
それ故、上記計算値の0.8%は決して小さい値ではない。即ち、例えば、接着面積が10mm×5mmであれば最長部は11.2mmあり、その0.8%は0.09mmとなる。この僅かな長さ差値であっても2,000サイクルまでにその末端部で剥がれが生じ、3,000サイクルでは明らかに剥がれた面は拡大した。これでは使用できない。本発明では、温度衝撃サイクル試験で全く支障(部分的な剥がれ等)が生じていないことをパスしたと言い、僅かでも支障を生じた物は不合格と判断する。要するに、図1に示した試験片の小さな射出接合物でも、温度衝撃が繰り返されると支障を生じることが明快であり、その完全な解決策が必要となった。このような厄介な状況のあることに関し、本発明者等は非特許文献1等で既に報告しており公知の知見である。
そこで、本発明者は、アルミニウム合金とPPS系樹脂との射出接合技術を使用すれば、その強い接合力を利用して厳しい温度衝撃試験にも耐えうる射出接合物が作り出せると推論した。即ち、後述するように、樹脂側の形状物の肉厚を大きくした塊状物であれば、その温度衝撃試験で数千サイクル試験に耐えられるはずはないが、逆に薄くしてシート状にすれば耐えられるとの予測は出来る。ただ、射出接合用のPPS系樹脂は、そのまま構造体として使用される樹脂でもあり、それなりの硬度や剛性がある。金属との接合力と剛性とのバランスで、どの程度の樹脂部の肉厚まで許されるかは、実証試験する以外に確認方法がなかった。更に加えて言えば、肉厚が1mm程度であれば、温度衝撃試験に耐えるとして、その薄肉形状のみでは移動機械用の構造、又は部品用の部材として、実用範囲は限られる。そこで、後述する実施の形態で示した複合体(射出接合物)を含めた、本発明で定義される形状の実用品形状を考え出した。その形状の射出接合物を作って、同じ温度衝撃3,000サイクル試験にかけ実証確認する必要があった。本発明の複合体を開発するために、結果は良好であるが数年を要する実験であり試験となった。以下、そこに至る基礎実験の経過を述べる。
[図1に示した試験片が温度衝撃試験で受けた破壊のメカニズム]
図1に示した試験片の温度衝撃3,000サイクル試験の結果につき再度述べる。この温度衝撃試験では、200℃だけ環境温度が上下する故、アルミニウム合金の線膨張率と樹脂の線膨張率の差(約4×10−5−1)に、200℃を乗じる計算をして算出される0.8%だけ互いの長さが異なる変化が本来は起こるべきである。しかし、強い接合力が1,000サイクルまでは、伸縮長さに相違することなく、接合力で抑え込まれた。別の言い方をすれば、剛性ある金属材は温度変化のまま伸び縮みし、一方の樹脂部接合面側は強い接合力に引っ張られてアルミニウム合金材に付き合った。しかし2,000サイクル前に接合面角部から遂に剥がれが生じた。推定では剥がれが生じた2角の樹脂部では、−50℃に急冷された時点で、3mm厚ある樹脂部の接合面から最も離れた上部面では樹脂の線膨張率値に従うべく大きく縮まり、その一方で3mm厚ある樹脂部の下部面(接合面近傍部)では、アルミニウム合金の小さな縮まりに従ったのである。
この試験片の樹脂部だけについて言えば、樹脂部の最上面部が大きく縮み、樹脂部の最下面部は小さく縮んだことになる。この縮み差が最も大きく発現するのは接合面中央から最も遠い隅角部となる。そして生じる内部応力は、樹脂部を上へめくり上げる方向の力(要するに引張り接合強度に対抗する力)となる。即ち、この内部応力が繰り返し負荷されたことで、接合力(接合面隅部における金属樹脂間の引張り接合強度)に低下が生じ、接合部の樹脂の角部の剥がれを招いたと判断した。
[射出接合物の樹脂部厚さと温度衝撃サイクル試験結果の関係の検証]
金属材とPPS系樹脂組成物とが一体化した射出接合物は、厳しい温度衝撃3000サイクル試験に耐えるようにする条件とはどのようなものかについて、以下考察する。前述した温度衝撃3,000サイクル試験結果からその対策を考えた。即ち、前述したNMT2処理アルミニウム合金(A5052)片と「SGX120」の射出接合物(図1に示した試験片)の温度衝撃サイクル試験に関してだが、仮に、図1に示した試験片の樹脂厚さが、3mmでなければ全く異なった結果が出るはずとの視点に立った。単純に言えば、接合面上の樹脂部厚さがもしも3mm厚でなく1mm厚だったら、同じ温度衝撃3,000サイクル試験で接合面に支障は生じなかっただろうとの推測である。接合力は十分に強いから、樹脂部が薄肉であれば、樹脂部全体が金属部の伸び縮みに従い、接合面の端部等に剥がれは生じないと推論した。これが確認できれば、射出接合力がNMT2レベルであっても温度衝撃サイクル試験に対応できる射出接合物(複合体)の形状設計法を導き出すことが出来る。
[射出接合物の樹脂部形状を変える検討]
実施例に記載したが、以下の実証試験を行った。即ち、NMT2処理アルミニウム合金(A5052)と「SGX120」による図1に示した試験片である射出接合物(但し、金属片厚さは1.6mm)を多数個作成し、その射出接合物の樹脂厚さを接合面の上部だけ削り取って1mmとした形状物(図4参照)、及び、2mm厚とした形状物(図5参照)を数個ずつ作り、これらを−50℃/+150℃の温度衝撃3,000サイクル試験にかけた。その結果、1mm厚とした前記形状物では、全く剥がれが生じないとの結果を得、そして2mm厚とした前記形状物での結果は、3個の試験物のうち1個は剥がれが確認できなかったが、1個は10mm×5mmの接合面の隅1カ所に0.5mm幅以下の剥がれらしいもの、そして1個は接合面の隅2か所に0.5mm幅以下の剥がれらしきものを確認した。要するに、樹脂部厚さ1.5mm付近に分かれ目があり、これより薄いと金属材に付き合うが、これより厚いと剥離等の支障が出やすくなる、との判断をした。
そして、上記結果を得た後の思考実験だが、接合面が10mm×5mmの図1に示した試験片型の射出接合物でなく、接合面が100mm×50mmの50cmもある射出接合物を設定した。勿論、金属側はNMT2処理したアルミニウム合金(A5052)板で肉厚が3mmの厚板とし、樹脂部の肉厚は全面が1mm厚としたものである。これを温度衝撃3,000サイクル試験にかけた場合の結果を考える思考試験である。面積は百倍になっているが思考実験(各部の時間変化の伸縮等の考察)の結果は支障なく成功した。要するに、樹脂部を薄くして金属部に追従するように出来れば温度変化による線膨張率差は無関係にでき、接合面積も無制限になるという判断である。机上実験の考察結果とは言え、この接合面積を無限大にすることも可能と判断したことが本発明に繋がった。
[射出接合力の向上]
NMT2処理したアルミニウム合金よりもNMT7、8処理したアルミニウム合金の方が高接合力である。これを「SGX120」使用の射出接合物で具体的に言えば、せん断接合強度はNMT発明以降全てで約40MPaでほぼ同等である。だが、引張り接合強度では、NMTで30MPaレベルがNMT2で38〜40MPaに上がり、NMT7、8では45MPaレベルになる。要するに、引張り接合強度には未だ限界が見つからず接合強度を高くする必要性を感知した故に、NMT2以降、試行錯誤を重ね、更に行った試験の積み重ねがNMT7等になった。
一方、前述した樹脂厚3mmの図1に示した試験片で、接合面樹脂部の角部にて最初に剥がれが生じるメカニズムにつき、それが引張り接合強度の強さに直接的に関連しているとすれば、NMT2に効果があった理由、そしてNMT7等ではより剥がれが生じ難くなることが明快に説明できる。即ち、アルミニウム合金(A5052)使用の射出接合物を使用した前述の温度衝撃3,000サイクル試験にて、その2,000サイクル経過物には接合面角部に剥がれが確認されている。これは−50℃に急冷された時点で、3mm厚ある樹脂部の接合面から最も離れた上部面では、樹脂の線膨張率値に従うべく大きく縮まり、その一方で3mm厚ある樹脂部の下部面(接合面近傍部)では、アルミニウム合金材の熱収縮に追従し、樹脂部の最上面部が大きく縮む一方で樹脂最下面部は小さく縮んだとすると、この縮み差が最も大きく発現するのは隅角部であることが理解できる。この樹脂部形状変化から生じる接合面付近での内部応力は、樹脂部を上へめくり上げる縦方向の力であり、これはこの部分の引張り接合強度に対抗する力である。
要するに引張り接合強度が非常に強いと、主に樹脂部の変形が繰り返されるだけで剥がれは生じないが、引張り接合強度が弱いと何回か樹脂部の変形が繰り返された後に、樹脂部が金属表面から剥がれることになり、端部の剥がれが生じるとそれが切欠で、温度衝撃サイクル毎に接合面積が減るという推論である。この推論であると温度衝撃サイクルはせん断接合強度にはあまり関与しない。
上記推論から、NMT7〜8による射出接合物は、NMT2の時より引張り接合強度が高く、それ故、耐温度衝撃性が増す方向になる。それ故に、後述する図15に示す射出接合物で示した1mm厚の薄肉部の厚さを、2mm厚や3mm厚にしても上述した温度衝撃3,000サイクル試験に合格するかもしれない。しかしながら、本発明者の意図は異なる。即ち、この薄肉部の厚さは当初の予期通り1.5mm以下とし、同じ温度衝撃サイクル試験にて3,000サイクルではなく4,000、5,000サイクル持つ半永久的に使用できる複合体の製作に貢献すべきと考えている。要するに本発明は、NMT2に合わせてその射出接合物形状につき開示したものであるが、後述するNMT7等の新処理法を使用した場合には温度衝撃サイクル試験により強くなり、移動機械用の部品部材として使用された場合にはその安全性がより長期に確保される。即ち、自動車で言えば、1台目の車が10年間使用されて、廃車された時点で外されて別の車に再使用されても問題なく使い続けられる部品となって欲しいという意味も含んでいる。
[本発明の接合面積]
本発明の複合体を実際の移動機械用の部品等に適用する場合、一般的には実証用の射出成形金型を作成することになる。要するに、本発明では、図15に示した複合体の例のように、太いボス部の根元部の断面積値は0.5cm以上と限定している一方で、その上限値は示していない。これは射出成形金型を作成し、射出接合して実物試作品とし、その温度衝撃3,000サイクル試験を行ってその結果をみる以外に使用可能品か否かを判断する方法がない故である。そして、実験で実証した接合面積が0.5cm以上の複合体を発明であるとする理由は、その発明の本質が後述する設計指針の策定そのものにあるからである。
本発明で使用したアルミニウム合金材とPPS系樹脂組成物からなる複合体は、元々、当初の接合力が85℃温度で、85%湿度下に数千時間置かれても僅かしか低下しない耐湿熱性がある。本発明はこの複合体を使用した上で、−50℃/+150℃の最も厳しいとされる移動機械用の温度衝撃3,000サイクル試験に耐える為の射出接合物形状を明らかにした。従って、本発明の複合体は、屋外用機械や設備の部品部材として軽量で耐久性があり好適である。複合体の表面を塗装すれば、陽光にも海風にも影響を受けない耐候性があり、又、カバー材等があって、陽光や風雨が直接に当たらない環境に置かれれば、その表面に塗装がなくても、グリース等の油剤を塗布等するのみでもアルミニウム合金の部分の露出部は錆びず耐候性を保てる。
図1は、ISO19095記載の金属樹脂接合一体化物における金属部と樹脂部間のせん断接合強度を測定する目的の射出接合物である試験片の図面である。 図2は、ISO19095記載の金属樹脂接合一体化物における金属部と樹脂部間の引張り接合強度を測定する目的の射出接合物である試験片の図面である。 図3は、ISO19095記載の金属樹脂接合一体化物におけるせん断接合強度を測定する時に使用する補助治具の側面図である。 図4は、図1に示した試験片の樹脂部の一部を削り取りその部分の厚さを1mmとした物であり、その形状図を示す。 図5は、図1に示す試験片の樹脂部の一部を削り取り、その樹脂部の厚さを2mmとしたものであり、その形状図を示す。 図6は、NMT2処理をしたアルミニウム合金(A5052)片とPPS系樹脂「SGX120」による射出接合物から作成した図4、図5の試験片を−50℃/+150℃の温度衝撃3,000サイクル試験に投入した結果を示す接合面変化図である。 図7は、NMT2処理をしたアルミニウム合金片(A6061)とPPS系樹脂「SGX120」による図1の射出接合物の金属部にA7075アルミニウム合金片(A7075)を接着して作成した金属部強化の形状物と、新NMT処理したSPCC片とPPS系樹脂「SGX120」による図1の射出接合物の金属部にSPCC片を接着して作成した金属部強化の形状物とを、−50℃/+150℃の温度衝撃3,000サイクル試験に投入した結果を示す接合面変化図である。 図8は、NMT2処理をしたアルミニウム合金(A5052)の電子顕微鏡写真を示す。 図9は、NMT7処理をしたアルミニウム合金(A5052)の電子顕微鏡写真を示す。 図10は、NMT7−Oxy処理をしたアルミニウム合金(A5052)の電子顕微鏡写真を示す。 図11は、Ano−7処理をしたアルミニウム合金(A5052)の電子顕微鏡写真を示す。 図12は、NMT8処理をしたアルミニウム合金(A5052)の電子顕微鏡写真を示す。 図13は、新NMT処理をしたSPCCの電子顕微鏡写真を示す。 図14は、NMT7処理をしたアルミニウム合金(A6063)の電子顕微鏡写真を示す。 図15は、本発明による射出接合物の形状例の一つであり、丈夫なアルミニウム合金平板上に大きなボスが立っている形状の基本形となるものである。 図16は、本発明による射出接合物の形状例の一つであり、頑丈なアルミニウム合金の平板上に、大きなボスが立っている形状の基本形となるものであり、樹脂部の外観形状は図15とほぼ同じだが、射出ゲート数が複数ある場合に対応するものである。 図17は、本発明による射出接合物の形状例の一つであり、折れ曲がった形のアルミニウム合金板上に大きなボスが立っている形状の基本形となるものである。 図18は、本発明による射出接合物の形状例の一つであり、曲面化したアルミニウム合金板上に大きなボスが立っている形状のものである。 図19は、本発明による射出接合物の形状例の一つであり、半パイプ形状化したアルミニウム合金板上に大きなボスが立っている形状のものである。 図20は、本発明による射出接合物の形状例の一つであり、半パイプ形状化したアルミニウム合金板上に大きなボスが立っている形状のものである。 図21は、本発明による射出接合物の形状例の一つであり、パイプ形状のアルミニウム合金板上に樹脂部が巻き付いた形状のものである。
以下、本発明の実施の形態を具体的な射出接合物で説明する。図15は、アルミニウム合金板に柱状の突起物である樹脂本体3を射出成形して、成形した金属と樹脂の射出接合物1の例である。射出接合物1は、アルミニウム合金板製の射出路用穴付きの金属矩形板2、及びこれと一体に接合された樹脂成形物本体部3からなる。金属板2は、縦横100mmで厚さ3mmである。樹脂本体3は、中心が円柱部4であり、この外周面に等角度に4つのリブ5が円柱部4に沿って、立設されている。樹脂本体3の外周は、環状に厚さ2mmで、50mm矩形の中心台座6で支承されている。中心台座6の外周を取り巻くように環状に、外周台座7が形成されている。外周台座7は、幅10mm、厚さ1mmで70mmの矩形に形成されている。即ち、金属と樹脂からなる射出接合物1は、樹脂中心部4、5と金属矩形板2との接合力を維持するために、中心台座6及びこれより薄肉の外周台座7が形成されている。
この射出接合物1を製作するために射出成形金型を製作し、この射出成形金型に金属矩形板2をインサートして、PPS組成物「SGX120」を射出して作成した。即ち、金属矩形板2をインサートする前に、前述したNMT2処理、及び、後述する表面処理方法であるNMT7、NMT7−Oxy、Ano−7、及びNMT8処理法で、これを処理した。成形された射出接合物1は、−50℃/+150℃の温度衝撃3,000サイクル試験にかける前後に、超音波式の非破壊検査機にて接合面部を観察し、接合面に何ら変化箇所が生じていないことを確認し、温度衝撃3,000サイクルによる影響の有無を判定した。なお、上記の非破壊検査機は、金属樹脂間に剥がれがない箇所と剥がれがある箇所では超音波反射波強度が異なることを原理にして接合面をスキャン検査するタイプのもので、2材間に3〜5μm以上の剥がれがあれば判別出来るものである。
[射出接合物の設計指針]
実証例である実験例C3で表面処理した射出接合物の例は、前述した図15の複合体1である。このアルミニウム合金である金属部分は、100mm×100mm×3mm厚であり丈夫な金属板を意識している。これに対して樹脂部はその大きなボス部分(中央の高い部分)の床面積(接合面より3mm離れた高さでの断面積)は円柱部4とこれを4方から支える部分の接合面積は、合計で3.6cmである。
中央部の太い樹脂部は丈夫な樹脂の塊である。丈夫な金属部と丈夫な樹脂部がある面積で接合していると繰り返しの大きな温度衝撃によりその接合面端部から剥がれ現象が必ず生じる。これは線膨張率の差異がある限り致し方ない。例えば金属部厚さが1.5〜1.6mmの図1形状物は、床面積0.5cmで高さ3mmのごくごく低い柱が単独で金属板上に立った形の接合物と理解できる。このままの低い柱であっても高さが10mm以上ある高い柱であっても、前記した角隅部の垂直壁下の接合面には、剥離等の支障が生じる。即ち、根本部の断面積が、0.5cmと細く低い柱であっても、単独で立っているのであれば、−50℃/+150℃の厳しい温度衝撃を3,000サイクル受ける前にその接合面の隅部や外周部で0.5mm幅程度の剥がれが生じるのである。
このような剥がれ(剥離)を完全皆無とするには本発明の採用が必要となる。即ち、背が高く、根本部の太さが0.5cm以上ある太い柱状物をアルミニウム合金材の上に射出接合するのであれば、少なくともその周囲に、樹脂厚0.5〜1.5mmで幅5〜10mmの帯状の平野部を作り、中央部の接合面がせん断的内部応力によって移動することを押さえ込めるように仕向ける。更に言えば、中央部と帯状平野部の間に中間部(裾野部)があってもよい。これが基本的な設計指針であり本発明の芯である。
図15で説明した形状物の実証実験の結果だけから言えば、この太い柱の床面積に関する実証試験は、0.5cm以上で3.6cmである。しかしながら、4cm、6cm、及びこれ以上の太い柱を備えた複合体の場合、射出成形金型を作り、それらによる射出接合物を作り、温度衝撃3,000サイクル試験で支障なしと実証すればより好ましい。本発明者らの実証試験は、従来技術では可能か不可能か判断できなかった約4cm床面の10mm以上高さの太いボス状物が、本発明に従えば確かな射出接合物として得られ、且つ、厳しい温度衝撃サイクル試験に十分に耐えられると示したに過ぎない。要するに、こうすれば分る、問題あれば直す方法も分かっている、との確実性ある設計指針の発案こそが本発明である。
[水平展開して得た設計指針]
図16に示す射出接合物20は、全体形状は図15に示した射出接合物10とほぼ同一である。射出接合物20を成形するとき、射出ゲート数が複数ある場合に対応するものであり、複数のゲート8を配置すると各ゲートから射出される樹脂が合流するとき、ウェルドライン15が現れる。その場合に生じるウェルドライン15の両側の幅が2〜5mmであり、かつこの部分の樹脂厚が0.5〜1.5mm(図15の中心台座6は2mm厚)と他の部分より薄くした形状とした。ウェルドライン15の部分は、ガス溜りとなり金属矩形板2とは接合されていないか、又は金属矩形板2との接合力が弱い。
図15に示した形状の射出接合物は、温度衝撃3,000サイクル試験を行うと、この途中の1,000、2,000サイクル経過時に、非破壊検査機で検査した。この検査で、樹脂厚2mmである中心台座6のウェルドライン15の剥離状況を見ると、温度衝撃試験にてサイクル数が大きくなると、元々剥離線があった物は剥離線幅がやや膨らんで1mm幅程度になるし、元々剥離がなかった物もサイクル数が増えると、約0.5〜1mm幅のウェルドライン15が出現する。この程度のウェルドライン15は実害なく全く気にする必要はないが、ウェルドライン15が全く出現しない形状が好ましい。その意味で、ウェルドライン15の出現が明らかな箇所には、樹脂厚を1mm程度の肉厚の薄肉部16にし、且つ、射出成形金型の設計上はウェルド発生箇所にガス抜きピンをセットして、ウェルドライン15が温度衝撃3,000サイクル以上の温度衝撃試験でも観察されないようにしたものである。
図17は、実施の形態3の射出接合物30の側面図である。射出接合物30は、90度近く曲げられたアルミニウム合金製の金属矩形板2の屈曲部2aに接合されている構造例である。射出接合物30の外周台座7は、屈曲部2aに接合されている。この構造のように、金属矩形板2に折れ曲がった屈曲部2aがあっても、射出接合物30の外周台座7、及び中心台座6を屈曲部2aに配置すると良い。即ち、前述した図15に示した射出接合物1、及び図16に示した射出接合物20のように温度衝撃に耐えうる。
図18に示す実施の形態4の射出接合物40は、自由曲面を有するアルミニウム合金製の金属板41に接合した例である。樹脂本体3の外周に配置した中心台座6を、及びこの中心台座6の外周に配置した外周台座7を配置すると、自由曲面を有する金属板41に接合しても、3,000サイクルの温度衝撃でも剥がれない。図19に示す実施の形態5の射出接合物50は、円弧状のアルミニウム合金製の金属板41の内周面に接合した例である。樹脂本体3の外周に配置した中心台座6、及びこの中心台座6の外周に配置した外周台座7を配置すると、円筒の内周面に接合しても、3,000サイクルの温度衝撃でも剥がれない。
図20に示す実施の形態6の射出接合物60は、円筒状のアルミニウム合金製の金属板60の外周面に接合した例である。樹脂本体3の外周に配置した中心台座6を、及びこの中心台座6の外周に配置した外周台座7を配置すると、円筒の外周面に接合しても、3,000サイクルの温度衝撃でも剥がれない。図21に示す実施の形態7の射出接合物70は、パイプであるアルミニウム合金製の円筒管60の外周面に接合した例である。樹脂本体3の外周に配置した中心台座6を、及びこの中心台座6の外周に配置した外周台座7を管71の全外周面に配置すると、3,000サイクルの温度衝撃でも剥がれない。
以下、本発明の実施例を実験例で詳記し、実験より得られた複合体の評価・測定方法を説明する。
(a)電子顕微鏡観察
主に基材表面の観察のために電子顕微鏡を用いた。この電子顕微鏡は、走査型(SEM)の電子顕微鏡「S−4800(日本国東京都、日立製作所社製)」及び「JSM−6700F(日本国東京都、日本電子株式会社(本社:日本国東京都)製)」を使用し、1〜2kVにて観察した。
(b)接合強度の測定
引張り試験機で射出接合物(図1)(図2)を引張り破断するときの破断力を接合強度(せん断接合強度、引張り接合強度)とした。但し、せん断接合強度の測定では図3に示した補助治具を使用した。使用した引張り試験機は、「AG−500N/1kN(株式会社島津製作所製)」を使用し、引っ張り速度10mm/分で測定した。この測定法はISO19095に依る。
(c)非破壊検査
非破壊検査は、超音波型の非破壊検査機「MSライン(現、日立建機株式会社製)」を使用した。
[実験例A]金属材の表面処理
[実験例A1]アルミニウム合金(A5052)のNMT2処理
実験例A1は、本発明でいうNMT2処理である。市販のアルミニウム合金(A5052)板材から、大きさ18mm×45mm×1.5mmの長方形片、及び、50mm×10mm×2mmの長方形片を機械加工で多数得た。槽にアルミニウム用脱脂剤「NA−6(メルテックス株式会社(本社:東京都))」10%を含む水溶液を60℃とし、これら合金片を5分間浸漬して水道水(群馬県太田市)で水洗した。次に、別の槽に40℃とした1%濃度の塩酸水溶液を用意し、これに合金片を1分間浸漬して水洗した。次に、別の槽に40℃とした1.5%濃度の苛性ソーダ水溶液を用意し、これに合金片を4分間浸漬して水洗した。次に、別の槽に40℃の3%濃度の硝酸水溶液を用意し、これに前記合金を3分間浸漬し水洗した。次に、別の槽に60℃とした3.5%濃度の水和ヒドラジン水溶液を用意してこれに1分間浸漬し、次に、別の槽に33℃とした0.5%濃度の水和ヒドラジン水溶液に6分浸漬し水洗した。そして67℃に設定した温風乾燥機に15分間入れて乾燥し、アルミニウム箔で包んで保管した。
同様な処理を行なったアルミニウム合金(A5052)片の1個を電子顕微鏡にかけた。この観察結果を写真撮影し図8に示した。図8−1に示した千倍電子顕微鏡写真からはほぼ平面状態であること、又、図8−2に示した1万倍電子顕微鏡写真からは、結晶粒界がやや化学エッチングを受けて凹部を有する結果の1〜4μm周期の凹凸周期の浅い(低い)凹凸面が認められ、図8−3に示した10万倍電子顕微鏡写真からは明確な20〜30nm外径の超微細凹部で全面が覆われた形の超微細凹凸面で覆われていることが分かる。
同じ処理をしたアルミニウム合金(A5052)片をXPS表面分析すると、分析にかかる深さ1〜3nm深さまでのAl原子の構成はAl+3が7割程、Alが3割程であり2nm厚程度の酸化Al薄層で覆われていること(2nm厚程度のごくごく薄い自然酸化物層)で金属アルミニウム相が覆われていることが分かり、更に、10回程度の積算分析で窒素原子が確認され、超微細エッチング処理に使用したアミン系分子(水和ヒドラジン)が化学吸着していることが確認できた。
[実験例A2]アルミニウム合金(A5052)のNMT7処理
実験例A2は、本発明でいうNMT7処理である。市販のアルミニウム合金(A5052)板材から、大きさ18mm×45mm×1.5mmの長方形片、及び、50mm×10mm×2mmの長方形片を機械加工にて多数得た。槽にアルミニウム用脱脂剤「NA−6」10%を含む水溶液を60℃とし、前記アルミニウム合金片を5分間浸漬して水道水(群馬県太田市)で水洗した。次に、別の槽に40℃とした10%濃度の苛性ソーダ水溶液を用意し、これに合金片を1分間浸漬して水洗した。次に、別の槽に40℃とした1%濃度の水和塩化アルミニウムと5%濃度の塩酸を含む水溶液を用意し、これに合金片を6分間浸漬して水洗した。
次に、別の槽に40℃とした2%濃度の1水素2弗化アンモニウムと10%濃度の硫酸を含む水溶液を用意し、これに合金片を4分間浸漬して水洗した。次に、別の槽に40℃とした1.5%濃度の苛性ソーダ水溶液を用意し、これに合金片を1分間浸漬し、次に、別の槽に40℃の3%濃度の硝酸水溶液に1.5分間浸漬し水洗した。次に、別の槽に60℃とした3.5%濃度の水和ヒドラジン水溶液を用意してこれに1分間浸漬し、次に、別の槽に33℃とした0.5%濃度の水和ヒドラジン水溶液に6分浸漬し水洗した。そして67℃に設定した温風乾燥機に15分間入れて前記処理を終えたアルミニウム合金片を乾燥した。清浄なアルミニウム箔でまとめて包み保管した。
同様な処理を行なったアルミニウム合金(A5052)片を電子顕微鏡にかけた。この観察結果を写真撮影し図9に示した。図9−1に示した千倍電子顕微鏡写真からは10〜30μm径の丘状のものが観察され数十μm周期の荒い粗面を有することか分かる。又、図9−2に示した1万倍電子顕微鏡写真は、NMT2処理品での図8−2に同じ凹凸周期で非常に似ているものの、コントラストが強くてその凹凸深さ(高さ)は大きいことが分る。図9−3に示した10万倍電子顕微鏡写真からは40〜100nm周期の超微細凹凸面で全面が覆われていると分かる。
[実験例A3]アルミニウム合金(A5052)のNMT7−Oxy処理
実験例A3は、本発明でいうNMT7−Oxy処理である。市販のアルミニウム合金(A5052)板材から、大きさ18mm×45mm×1.5mmの長方形片、及び、50mm×10mm×2mmの長方形片を機械加工にて多数得た。その後は実験例A2(NMT7処理)と全く同じ操作をした。NMT7処理では最後に浸漬する薬品槽が33℃とした0.5%濃度の水和ヒドラジン水溶液の槽でありここに6分浸漬し水洗するが、その後に1.5%濃度の過酸化水素水を入れた酸化槽を用意し、ここへ1分浸漬して水洗する。そして67℃に設定した温風乾燥機に15分入れてアルミニウム合金片を乾燥した。
上記と同じ処理をしたアルミニウム合金(A5052)片を電子顕微鏡にかけた。この観察結果を写真撮影し図10−1から図10−3に示した。これらは、各千倍、一万倍、十万倍の電子顕微鏡写真である。千倍電子顕微鏡写真から分かるように、10〜40μm径の山塊とみられる凸部含む大周期の粗面があり、一万倍写真から分かるように1〜2μm程度の径の結晶粒界が境界線になった山状凸を周期とする凹凸面形状が観察される。要するに数十μm周期の大ぶりな粗面と、1〜2μm周期の微細凹凸面が重なった2重凹凸面形状となっている。そして十万倍電子顕微鏡写真から40〜100nm径の超微細凹部が全面を覆っている形状も明らかである。
[実験例A4]アルミニウム合金(A5052)のAno−7処理
実験例A4は、本発明でいうAno−Oxy処理である。市販のアルミニウム合金(A5052)板材から、大きさ18mm×45mm×1.5mmの長方形片、及び、50mm×10mm×2mmの長方形片を機械加工にて多数得た。槽にアルミニウム用脱脂剤「NA−6」10%を含む水溶液を60℃とし、合金片を5分間浸漬して水道水(群馬県太田市)で水洗した。次に、別の槽に40℃とした10%濃度の苛性ソーダ水溶液を用意し、これに合金片を1分間浸漬して水洗した。次に、別の槽に40℃とした5%濃度の塩酸と1%濃度の水和塩化アルミニウムを含む水溶液を用意し、これに合金片を6分間浸漬して水洗した。
次に、別の槽に40℃の2%濃度の1水素2弗化アンモニウムと10%濃度の硫酸を含む水溶液に4分間浸漬し水洗した。次に、別の槽に40℃とした1.5%濃度の苛性ソーダ水溶液を用意し、これに合金片を1分間浸漬して水洗した。次に、別の槽に40℃の3%濃度の硝酸水溶液を用意し、これに1.5分間浸漬しよく水洗した。次に、槽に25℃とした8%濃度の正燐酸水溶液を用意してこれを陽極酸化槽とし、銅棒を陰極、チタン板を陽極として前記のアルミニウム合金片にチタン板を押し付けて直流電源装置「ZX−1600LA(高砂製作所社)」にて25V定電圧制御で15分間陽極酸化した。得た陽極酸化物はイオン交換水で30分程水洗し、67℃に設定した温風乾燥機に15分間入れて乾燥し、更に90℃にした熱風乾燥機で15分乾燥した。清浄なアルミニウム箔でまとめて包み保管した。
同様な処理を行なったアルミニウム合金(A5052)片を電子顕微鏡にかけた。この観察結果を写真撮影し図11−1から図11−3に示した。10万倍写真である図11−3がNMT7での10万倍写真の図9−3と異なる。陽極酸化物では超微細凹部ではあるが凹部というよりも孔部である。又、孔部やその周辺も含めて円滑面に見えるところが水和ヒドラジン水溶液による処理物と異なる。
[実験例A5]アルミニウム合金(A5052)のNMT8処理
実験例A5は、本発明でいうNMT8処理である。市販のアルミニウム合金(A5052)板材から、大きさ18mm×45mm×1.5mmの長方形片、及び、50mm×10mm×2mmの長方形片を機械加工にて多数得た。その後は実験例A3(NMT7-Oxy処理)と全く同じ操作をする。NMT7-Oxy処理では最後に浸漬する薬品槽が1.5%濃度の過酸化水素水の槽でありここに1分浸漬し水洗するが、その後に40℃とした0.2%濃度のトリエタノールアミンの水溶液を入れた吸着促進槽を用意し、ここへ4分浸漬して水洗する。そして67℃に設定した温風乾燥機に15分入れてアルミニウム合金片を乾燥した。
この処理を行なったアルミニウム合金(A5052)片の電子顕微鏡写真を図12-1から図12-3に示した。この表面形状は図9で示された実験例A2(NMT7処理)の物と概ね変わらない。それは化学吸着物の分解工程が実験例A3にて加わり、更に本実験例で吸着分子なし構造がトリエタノールアミンの吸着物に変わったに過ぎないからである。
[実験例A6]SPCC(冷間圧延鋼板)の新NMT処理(参考例)
実験例A6は、本発明でいう新NMT処理である。市販の厚さ1.6mm、及び、3.2mmのSPCC板を購入し、多数の大きさ18mm×45mm×1.6mm厚の長方形片、及び、50mm×10mm×2mm厚の長方形片を機械加工にて作成した。槽にアルミニウム用脱脂剤「NA−6」10%を含む水溶液を60℃とし、前記鋼片(SPCC板)を5分間浸漬して水道水(群馬県太田市)で水洗した。次に、別の槽に40℃とした1.5%濃度の苛性ソーダ水溶液を用意し、これに鋼片を1分間浸漬し、イオン交換水で水洗した。次に、別の槽に60℃とした5%濃度の硫酸水溶液を用意し、これに鋼片を4分間浸漬し、イオン交換水で水洗した。次に、1%濃度のアンモニア水に鋼片を1分間浸漬し、イオン交換水で水洗した。次に、別の槽に45℃とした2%濃度の過マンガン酸カリと1%濃度の酢酸と0.5%濃度の水和酢酸ソーダを含む水溶液を用意し、これに鋼片を5分間浸漬し、イオン交換水で水洗した。次に、超音波発振端付きの水洗槽に5分浸漬し、水洗して67℃に設定した温風乾燥機に15分間入れ乾燥した。清浄なアルミニウム箔でまとめて包み保管した。
同様な処理を行なったSPCC鋼片を電子顕微鏡にかけた結果がある。これを図13に示した。図13−1に示した1万倍電子顕微鏡写真からは5〜10μm径の金属結晶による階段面形状の方向変化が示す結晶粒界が観察されると同時に、結晶粒界線部は溝のように彫り込まれたようになっている。図13−2に示した10万倍電子顕微鏡写真から分かるのは正に幅広階段であり、幅や高さが50〜200nmの幅広階段が全体を覆い、更にその階段面にゴミか破れた枯れ葉が付着したような不定期的な微細凸部のあることが観察される。
このようなパーライト構造による特殊な表面形状だが一応、結晶粒界の溝を深い凹部とみれば5〜10μm周期の凹凸面が存在し、斜めの階段形状が作る凹凸面は100〜200nm周期の微細凹凸面、又、付着物まで含めれば数十nm周期の超微細凹凸面の存在は認められる。それ故に新NMT処理品の条件には当てはまるとした。しかしながら、横幅長い階段形状、即ち、パーライト構造と呼ばれるこの鋼材で現れる構造は、Al材等で観察される微細凹凸面や超微細凹凸面と異なる。全体としてせん断接合強度には一定の効果は示すとみられるが、引張り接合強度を高める超微細凹凸面と言えない。
〔実験例A7〕A6063アルミニウム合金のNMT7処理
実験例A7は、本発明でいうNMT7処理である。市販のA6063アルミニウム合金厚材から、大きさ18mm×45mm×1.5mmの長方形片を機械加工にて多数得た。槽にアルミニウム用脱脂剤「NA−6」10%を含む水溶液を60℃とし、合金片を5分間浸漬して水道水(群馬県太田市)で水洗した。次に、別の槽に40℃とした10%濃度の苛性ソーダ水溶液を用意し、これに合金片を1分間浸漬して水洗した。次に、別の槽に40℃とした5%濃度の塩酸と1%濃度の水和塩化アルミニウムを含む水溶液を用意し、これに合金片を8分間浸漬して水洗した。
次に別の槽に、40℃温度とした2%濃度の1水素2弗化アンモニウムと10%濃度の硫酸を含む水溶液を用意し、これに合金片を4分間浸漬して水洗した。次に、別の槽に40℃とした1.5%濃度の苛性ソーダ水溶液を用意し、これに合金片を1分間浸漬し水洗した。次に、別の槽に40℃の3%濃度の硝酸水溶液を用意し、これに2分間浸漬しよく水洗した。次に、別の槽に60℃とした3.5%濃度の水和ヒドラジン水溶液を用意してこれに1分間浸漬し、次に、別の槽に33℃とした0.5%濃度の水和ヒドラジン水溶液に2.5分浸漬し水洗した。そして67℃に設定した温風乾燥機に15分入れてアルミニウム合金片を乾燥した。上記と同じ処理をしたA6063アルミニウム合金片を電子顕微鏡にかけた。この観察結果を写真撮影し図14に示した。
[実験例B]射出接合物の作成と接合力測定
[実験例B1]射出接合物の作成とそのせん断接合強度、引張り接合強度
実験例A1〜7で得た表面処理済み各種金属片を射出成形金型にインサートし、射出接合用PPS系樹脂「SGX120」を射出し、図1、図2形状の射出接合品を得た。この時の射出温度は310℃、金型温度は140℃とした。得られた射出接合物は1時間以内に170℃とした熱風乾燥機内に1時間置いてアニールした。
得られた射出接合物のせん断接合強度を表1に記載した。表1は各3個の平均値である。
得た射出接合物の引張り接合強度を表2に記載した。測定法はISO19095に従い図2形状の射出接合物を引張り試験機にかけた結果であり、各3個の平均値である。
表1から、「SGX120」使用の射出接合物におけるせん断接合強度は、約40MPaで処理法による差は殆どないことが分かる。実際、今まで行った図1に示した試験片における「SGX120」を使用したものは、せん断接合強度は、23℃温度下で約40MPa、3℃温度下で約50MPaであった。要するに、金属/熱可塑性樹脂による射出接合物でのせん断接合強度の最高値は、使用した樹脂組成物種の強度(引張り強さ)に依存しており、「SGX120」を使用した物は、約40MPaであると言え、それが表1でも示された。この中でSPCCは、40MPaに達しておらず僅かだがNMT2〜8処理のアルミニウム合金より低い。
表2からは、NMT2に比較して、NMT7〜8で処理された試験片に明らかな引張接合強度の上昇が示されている。更に、新NMT処理されたSPCCはNMT2よりもかなり低い。2種材料片同士が接合した物が有する接合力や接着力は、せん断接合強度やせん断接着強さで表されることが多いが、本来は、引張り接合強度や引張り接着強さも加えて見るべきだろう。その意味で、上限値があり既にそこに達しているせん断接合強度よりも未だ上限値が見えず高くする可能性が残された引張り接合強度の測定に重点を置くべきことが表1と2からよく分かる。要するに「SGX120」使用の場合だが、NMT2レベルの射出接合力を基準に置いたとして、NMT7〜NMT8で処理された処理品は明らかに接合力が高いこと、又、旧型の新NMT処理をしたSPCCではこの基準よりかなり低い接合力であることが分かる。
[実験例B2]射出接合物にせん断的外力を繰り返し与える疲労試験
本発明の発明以前に行った温度衝撃3,000サイクル試験は、NMT2処理されたアルミニウム合金(A5052)と「SGX120」からの図1に示した試験片の射出接合物、及び、当時の新NMT処理を加えたSPCCと「SGX120」からの図1に示した試験片の射出接合物に対してだった。その結果は、NMT2処理したアルミニウム合金(A5052)が、新NMT処理したSPCCより耐久性が優れていたという単純な結果であった。当時、これら2種でのせん断接合強度が、共に約40MPaであり差異が小さいのに−50℃/+150℃の温度衝撃3,000サイクル試験で大差があり驚いた。図1の形状物を温度衝撃サイクル試験にかけることで、金属材と樹脂成形物の各表面にかかる力は間違いなくせん断応力的な外力であるから、温度衝撃サイクル試験が図1の形状物の射出接合物に与える負荷は、図1の形状物にせん断的外力を繰り返しかけるような動的負荷の供与試験に似ているのではないかと考えた。それ故、そのイメージの疲労試験を行うことにし、その結果が単純なせん断接合強度の測定値と異なるのではないかと予期した。
疲労試験方法は、図1に示した試験片の射出接合物を、図3に示す形状の補助治具に収納してから引張り試験機にセットし、通常試験で破断する値の70%付近の力を300回かけて破断するか否かを観察する方法である。具体的には、引張り試験機の運転ソフトの関係で、力の単位はkg、繰り返し与えるせん断応力のセット値は、10kg単位であったから以下のように決めた。即ち、図1に示した試験片の接合面積は、0.5cmであるから41MPa(=418kg/cm)でせん断破断するということにした(接合面々積が0.5cmだから引張り試験機では209kgで破断するという意味)。使用した引張り試験機には繰り返し負荷を連続的に加える運転ソフトにより、破断力の7割程度の140kgを最大せん断応力、そしてその半分の70kgを最低せん断応力とし、引張り速度を±10mm/分として、連続的に300回の負荷をかけるように運転ソフトをセットした。
このときの負荷の大きさは、その動的負荷を連続300回かけて試料が破断しなければ、次の試験ではセット値を上げて、10kg単位上げて、150kgを最高負荷とし、その1/約半分の80kgを最低強度とし、そのまま300回の動的負荷を与えるように決めた。これで破断しなければ、次は160kgを最高強度、約半分の80kgを最低強度とし、この負荷を300回かける。これで破断しなければ、更に最高強度を10kg上げ、最低強度も調整して実施を続ける。要するに1個の射出接合物に引き続いてどんどん強い破断方向の力を繰り返し与えた。そして、ある値で300回に至る前に破断するから、その前の300回を無破断で来た最高強度のkg数を動的負荷として記録した。これを表3に示した。なお、表3の試験片のNo.8〜12の表面処理法の詳細は示していないが、No.6の試験片と類似の処理、即ち、各アルミニウム合金によって僅かに浸漬時間等が異なるNMT7の処理を行った。
表3によれば、約40MPaのせん断接合強度を有することが判明している各種アルミニウム合金材と「SGX120」の射出接合物も、300回のせん断的外力(動的負荷)を連続的に加えた。300回のせん断的外力(動的負荷)でも耐えるその外力の大きさは、NMT2処理方法で、33〜34MPa、NMT7で35〜36MPaであり、初期のNMT処理品では29〜30MPa、そして初期の新NMT処理したSPCCでは25〜26MPaであり、随分と差のあることが分る。
結局、この繰り返しのせん断的外力に対し耐えられる力の順は、前記した引張り接合強度の大きさ順と同じであった。不思議な符合だがせん断的外力に耐える力は、元を辿れば引張り接合強度の大きさであるとデータが示したものと思われた。何れにしても力値が10kg単位でしか測定出来なかったので概値しか分からないのだが、射出接合物の引張り接合強度の重要性が示された実験であった。
要するに、図1に示す形状物(試験片)を温度衝撃サイクル試験にかけた場合に起こる内部応力の変化状況は、このせん断的外力を繰り返し図1に示した試験片の射出接合物に与える試験と似ていると考え実施したが、試験結果から得られたことは、引張り接合強度が高く出る表面処理法を採用した方が、温度衝撃サイクル試験で良い結果が出ると示唆している。何れにしても本発明には、NMT2処理品よりも、NMT7処理品の方が高引張り接合強度を持つ故に明らかに好ましい。逆に言えば、本発明はNMT2でも可能だが、自動車等の移動機械用の実用部品の部材用としては、NMT7〜NMT8処理品を使うことで遥かに安全度が増すことが分かる。
表3の結果は、動的負荷300回供与で破断しなかった最高値であり、分かり易く言えば、動的負荷を300回かける前に破断した試料の場合にはその前にかけたせん断的力の値を示している。使用した引張り試験機の引張り強さの設定ソフトが10kg単位であった為に概値になったが傾向は明らかである。
[実験例C]温度衝撃3,000サイクル試験
[実験例C1]NMT2処理アルミニウム合金の射出接合物で行った温度
衝撃3,000サイクル試験(2012〜13年に行ったものである。結果が本文記載したように本発明の芯になっているのでその詳細をここに記す。)
NMT2処理したアルミニウム合金(A5052)とPPS系樹脂「SGX120」による図1に示した形状物(金属片厚さ1.6mm)の射出接合物を多数作成し、その半数は3mm厚ある樹脂部の内の接合面に当たる部分の上部をリュータ―を使用して削り取り、樹脂部厚さが1mm厚となるようにした。そして同じく半数は3mm厚ある樹脂部の内の接合面に当たる部分の上部をリュータ―を使用して削り取り、樹脂部厚さが2mm厚となるようにした。このようにして得た樹脂部厚さ1mm及び2mmとした2種(図4、図5)を−50℃/+150℃の温度衝撃3,000サイクル試験に投入した。
3,000サイクル試験を終えて破壊し、その接合面状況を観察した。但し、樹脂部を薄くした射出接合物は、図1に示した試験片と同じように図3形状の治具に入れての引張り破断操作が出来ない。何故なら、図3形状の治具を使用して引張り破断する方法は樹脂部を押し出す圧縮型のせん断破断する方法なので樹脂部が薄くなると押し出し力が上手くかからず、実際には治具内で樹脂部が削れて千切れるなどし、綺麗な破断面を出すことが出来ない故である。又、図3形状の治具使用を止めて直接的に引張り破断するとせん断破断は起こらずに樹脂部が千切れる。それ故に結局は、全てニッパーを使用しての手作業でアルミニウム合金部から樹脂を剥がし取る作業となった。ただ、接合力が失われている箇所については金属部に樹脂粉が全く残らず綺麗に剥がれる。それ故、慎重にニッパー作業を行えば接合部と剥がれた部分とが明快に分かる。この結果を図6に示した。
図6に示したように、1mmの肉厚品では全く剥がれは確認できず、2mm厚品については5個の内の2個が2カ所、1個で1カ所の剥がれが見つかった。この結果から「SGX120の樹脂部厚さが1.5mm以下なら温度衝撃3,000サイクルでも金属部から樹脂成形物が剥がれることはない」と判断した。
[実験例C2]NMT2処理A6061アルミニウム合金の射出接合物、及び、新NMT処理したSPCCの射出接合物、の双方につき金属部を強化してその剛性を増やした上で行った温度衝撃3,000サイクル試験である。(この試験は実験例C1より更に古く2011〜12年に行ったものである)
NMT2処理したA6061アルミニウム合金と「SGX120」とで図1に示した試験片の射出接合物を作成し、更にその図1に示した試験片のアルミニウム合金側にNMT2処理した45mm×18mm×3mm厚のA7075アルミニウム合金を1液性エポキシ接着剤「EW2040(スリーエム株式会社(本社:日本国東京都)製)」を使用して接着した物を多数作り、それを−50℃/+150℃の温度衝撃サイクル試験に投入した。要するに、金属側をより厚くして温度変化に対してより忠実に金属部が、線膨張率の通りの伸び縮みをするように計らった試験である。それ故に、温度衝撃試験は、図1に示した形状物を使用した場合より、厳しい結果が出るはずであった。その接合面の結果は図7に示した。
又、新NMT処理した厚さ1.6mmのSPCC(冷間圧延鋼板)片と「SGX120」とで図1に示した試験片の射出接合物を作成し、更にその図1に示した試験片の鋼材側に、新NMT処理した45mm×18mm×1.6mm厚のSPCC片を1液性エポキシ接着剤「EW2040」を使用して接着した物を多数作り、それを−50℃/+150℃の温度衝撃サイクル試験に投入した。ここも金属側をより厚くして温度変化に対してより忠実に金属部が線膨張率通りの伸び縮みをするように計らった試験である。その結果は図7に示した。
図7で分かるように、A6061アルミニウム合金品の方は、1,000サイクルでは、2か所の角部とこれを繋ぐ1辺部で明確な幅長さは0.5mm以下であるが剥離線が生じ、2,000サイクルでは、更に別の2辺で剥離が明確になり、3,000サイクルではその剥離幅が1mm近くまで広がったが残された端部側の辺は全く剥離なしであった。又、SPCC品の方は、500サイクルにて図に示していないが3辺で既に剥がれが生じており、しかも山頂が牛の角のように2か所ある山の形状となった。1,000サイクルでは角が消えて、丸っこい台形型の山になり剥がれは残りの端部辺にも進んでいた。
2,000サイクルでは山が痩せ出し、3,000サイクルでは中心に3mmφの円形があり、その円から1辺にタイトスカートが繋がった形となった。実はこの形が不思議な形状だったので、温度衝撃試験機に残った同試料をそのままにして試験を続けた。その後、サイクル数は3,600〜3,800の間だったがその残試料を試験機から出して接合面を調べた処、中央部に3mmφの円形を残してその他は全て剥がれ面となっていた。理論的には、温度変化で2材間に本来生じるズレ長さと樹脂材のヤング率の積が接合力と等しくなるまで接合面は収縮してやがて平衡状態になる故に接合面は円形になるはずであり、この推論と完全に一致した。
前記のNMT2処理A6061アルミニウム合金の試験結果について言えば、本文に記したA5052アルミニウム合金での温度衝撃3,000サイクル試験での結果よりやや剥がれが速いがその変化の様子はよく似ている。やはり金属材側を厚くして高剛性にした場合には、温度衝撃サイクル試験の結果は悪化して剥がれ拡大速度がやや速くなった。しかしながら本質的な問題は大して変わらなかったと言える。即ち、温度衝撃による伸び縮みでその負担をかけられたのは、明らかに樹脂側であるとの判断は正しい。即ち、図1に示した試験片では樹脂部厚さが3mmだったから剥がれが生じたのであり、問題は樹脂側にあるとの判断は正しい。
又、SPCC使用物の結果は余りにも厳しく、アルミニウム合金での結果との違いに驚く。即ち、SPCCとA6061アルミニウム合金での温度衝撃サイクル試験の結果の差は金属部と樹脂部間の接合力差に依るはずだが、新NMT処理されたSPCCと「SGX120」との射出接合物の金属と樹脂成形物間のせん断接合強度は38〜39MPa、NMT2処理されたアルミニウム合金(A6061)と「SGX120」との射出接合物の金属と樹脂成形物間のせん断接合強度は40〜41MPaであり、前者が低いものの大差ない。それ故に、真の接合力を示すものはせん断接合強度でなく、引張り接合強度であるとの考え方を明示するものだったと言える。
[実験例C3]図15形状物を温度衝撃3,000サイクル試験にかける
NMT2処理した3mm厚の各種アルミニウム合金(A5052、A6063、A6061、A7075アルミニウム合金)、及び、NMT7処理した3mm厚の各種アルミニウム合金(A2024、A7075、A1100アルミニウム合金)のそれぞれをPPS系樹脂である「SGX120」を使用して図15に示した形状の射出接合物を各3個ずつ作成し、先ず超音波型非破壊検査機にかけて、アルミニウム合金と樹脂成形物の接合面がどうなっているかを検査した。その結果、ウェルド線が明確に確認できた物と、確認できなかった物があった。但し、ウェルド線が確認できた物がどの処理法によるか、又、どのアルミニウム合金で生じたかを明確にすることは出来なかった。
即ち、同種のアルミニウム合金で同じ表面処理をした3個の射出接合物でもウェルドが確認できるのとウェルドが非破壊検査機で出ないものがあり、これが結構多かった。要するに、射出接合操作は何ら途中で条件を変えずにどんどん進めて行ったとしても、人為的ではない原因でウェルドが出たり出なかったりすることはあり得る。本発明者の見方は、2つのピンゲートを使用した図13形状物の射出接合にては、ガス抜き回路の効きが何時も全く同じとは行かず、又、樹脂自体も常に同量のガスを発しているはずはないので、僅かなその揺らぎや変化により本来はウェルドが発現すべきものが極狭いウェルド線となった故に非破壊検査機の分解能では消えた形になったと判断した。
そこでウェルドあるなし関係なしに3個の内の1個単位で取出して、その全てを一挙に温度衝撃サイクル試験機に投入し、−50℃/+150℃の温度衝撃3,000サイクル試験にかけた。試験後に非破壊検査機にて検査した結果、全てでウェルド線の発生が確認された。又、NMT2処理品とNMT7処理品での違いは不明確であり、具体的に言えば、全試験体にてウェルド線長さが当初より長くなりと線幅も当初より太っていたが、ウェルド線の線長さは最長でも20mm以下、線幅は1mm以下で、実質的な影響は全くないものだった。

Claims (6)

  1. 1万倍以上の電子顕微鏡写真で観察される金属結晶粒界線が凹部の境界となった0.5〜5.0μm周期の凹凸面形状が確認され、更に、10万倍の電子顕微鏡写真で観察される20〜100nm径の超微細凹部で全面が覆われている超微細凹凸面を有することが明確で、且つ、アミン系分子が化学吸着しているアルミニウム合金材と、
    ポリフェニレンサルファイドを主成分、変性ポリオレフィン系樹脂を従成分、更に相溶化材的高分子を第3成分として含む樹脂分を有し、且つ、ガラス繊維を樹脂組成物分の10〜25%、及び炭素繊維を0〜10%含むPPS系樹脂組成物からなる樹脂形状物と
    が直接的に接合したアルミニウム合金と樹脂の複合体であって、
    前記アルミニウム合金材と前記樹脂形状物が接合した前記樹脂形状物は、
    前記接合部の中心部を成す樹脂成形物中心部、
    前記樹脂成形物の樹脂中心部を囲み、前記樹脂中心部より肉厚が薄くなる樹脂中間部、及び、
    前記樹脂成形物中心部及び前記樹脂中間部の全周囲を実質的に囲む、幅5mm以上ある樹脂薄肉部
    とからなることを特徴とする金属と樹脂の複合体。
  2. 千倍電子顕微鏡観察で10〜100μm周期の大周期の凹凸のある粗面形状があり、且つ、1万倍電子顕微鏡観察で金属結晶粒界が低部の堺となっていることが分る0.5〜5μm周期の凹凸面形状があり、更に、10万倍電子顕微鏡観察で分かる10〜100nm外径の凹部、又は陽極酸化処理による孔部が密着して全面を覆っている形の超微細凹凸面があるアルミニウム合金材と、
    ポリフェニレンサルファイドを主成分、変性ポリオレフィン系樹脂を従成分、更に相溶化材的高分子を第3成分として含む樹脂分を有し、且つ、ガラス繊維を樹脂組成物分の10〜25%、及び炭素繊維を0〜10%含むPPS系樹脂組成物からなる樹脂形状物と
    が直接的に接合したアルミニウム合金と樹脂の複合体であって、
    前記アルミニウム合金材と前記樹脂形状物が接合した前記樹脂形状物は、
    前記接合部の中心部を成す樹脂成形物中心部、
    前記樹脂成形物の樹脂中心部を囲み、前記樹脂中心部より肉厚が薄くなる樹脂中間部、及び、
    前記樹脂成形物中心部及び前記樹脂中間部の全周囲を実質的に囲む、幅5mm以上ある樹脂薄肉部
    とからなることを特徴とする金属と樹脂の複合体。
  3. 請求項1又は2に記載の金属と樹脂の一体化複合体において、
    前記樹脂薄肉部は、肉厚が0.5〜1.5mmである
    ことを特徴とする金属と樹脂の複合体。
  4. 請求項1ないし3から選択される1項に記載の金属と樹脂の一体化複合体において、
    前記樹脂中間部は、肉厚が1.0〜3.0mmである
    ことを特徴とする金属と樹脂の複合体。
  5. 請求項1ないし3から選択される1項に記載の金属と樹脂の一体化複合体において、
    樹脂成形物中心部は、前記アルミニウム合金材と前記樹脂形状物が直接接合した面積が0.5cm以上である
    ことを特徴とする金属と樹脂の複合体。
  6. 請求項1ないし3から選択される1項に記載の金属と樹脂の一体化複合体において、
    前記アルミニウム合金形状物と前記樹脂形状物が直接接合した部分は、平面又は曲面である
    ことを特徴とする金属と樹脂の複合体。
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