JP2012157991A - 金属樹脂複合体及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐候性に優れた金属樹脂複合体の提供
【解決手段】珪素含有アルミニウム合金51の表面に、輪郭曲線要素の平均長さ(RSm)が0.8〜10μm、最大高さ(Rz)が0.2〜5μmであるミクロンオーダーの粗度を生じさせ、10〜300nm周期の超微細凹凸を形成し、過マンガン酸カリを含む化成処理液に浸漬して化成処理層を形成し、その表面にポリフェニレンサルファイド又はポリブチレンテレフタレートを主成分として含む樹脂組成物53を射出して一体化する。
【選択図】図6

Description

本発明は金属と樹脂が接合された複合体と、その製造方法に関する。特に、表面処理されたアルミ合金材に結晶性の熱可塑性樹脂組成物を射出することにより両者を接合させた複合体と、その製造方法に関する。本発明に係る複合体は、輸送機器、電子機器、産業用機械、スポーツ用品、レジャー用品等の構造材として使用することができる。
金属同士、又は金属と合成樹脂を強く接合する技術は、自動車、家庭電化製品、産業機器等の部品製造業等だけでなく広い産業分野において求められ、このために多くの接着剤が開発されている。このような接合技術は、あらゆる製造業に於いて基幹となる技術である。
(NMT)
接着剤を使用しない接合方法に関しても従来から研究されている。その中でも製造業に大きな影響を与えたのは、本発明者らが開発した「NMT(Nano molding technologyの略)」である。NMTとは、アルミニウム合金と樹脂組成物との接合技術であり、予め射出成形金型内にインサートしていたアルミニウム合金に、溶融したエンジニアリング樹脂を射出して樹脂部分を成形すると同時に、その成形品とアルミニウム合金とを接合する方法(以下、略称して「射出接合」という。)である。特許文献1には、特定の表面処理を施したアルミニウム合金に対し、ポリブチレンテレフタレート(以下、「PBT」という。)系樹脂組成物を射出接合させる技術を開示している。また、特許文献2には、特定の表面処理を施したアルミニウム合金に対し、ポリフェニレンサルファイド(以下、「PPS」という。)系樹脂組成物を射出接合させる技術を開示している。
(新NMT)
また、本発明者らは、特許文献3、4、5、6、及び7に示すように、アルミニウム合金のみならず、他の金属合金についても、その金属合金とPBTやPPS等の熱可塑性樹脂を射出接合によって強固に接合することができる条件を発見し、この条件に基づく射出接合のメカニズムを「新NMT」と称した。これらの発明は全て本発明者らによる。より広く使用できる「新NMT」の条件を示す。金属合金側と射出樹脂側の双方に各々条件があり、まず金属合金側については以下に示す3条件((a)(b)(c))が必要である。
(a)第1の条件は、金属合金表面が、化学エッチング手法によって1〜10μm周期の凹凸で、その凹凸高低差がその周期の半分程度まで、即ち0.5〜5μmまでの粗い粗面になっていることである。ただし、実際には、前記粗面で正確に全表面を覆うことはバラツキがあり、一定しない化学反応では難しく、具体的には、粗度計で見た場合に0.2〜20μm範囲の不定期な周期の凹凸で、且つその最大高低差が0.2〜5μmの範囲である粗度曲線が描けることを要する。また、最新型のダイナミックモード型の走査型プローブ顕微鏡で金属合金表面を走査したときには、RSmが0.8〜10μmであり、Rzが0.2〜5μmである粗度面であれば前述した粗度条件を実質的に満たしたものとしている。ここでRSmは、日本工業規格(JIS B 0601:2001, ISO 4287:1997)に規定される輪郭曲線要素の平均長さであり、Rzは、日本工業規格(JIS B 0601:2001, ISO 4287:1997)に規定される最大高さである。本発明者等は、理想とする粗面の凹凸周期が前述したように、ほぼ1〜10μmであるので、分かり易い言葉として「ミクロンオーダーの粗度を有する表面」と称した。
(b)第2の条件は、上記ミクロンオーダーの粗度を有する金属合金表面に、さらに5nm周期以上の超微細凹凸が形成されていることである。言い換えると、ミクロの目で見てザラザラ面であることを要する。当該条件を具備するために、上記金属合金表面に、微細エッチングを行い、前述のミクロンオーダーの粗度をなす凹部内壁面に5〜500nm、好ましくは10〜300nm、より好ましくは30〜100nm(最適値は50〜70nm)周期の超微細凹凸を形成する。
この超微細凹凸について述べると、その凹凸周期が10nm以下の周期であると樹脂分の進入が明らかに難しくなる。また、この場合には通常、凹凸高低差も小さくなるので、樹脂側から見て円滑面となる。その結果、スパイクの役目を為さなくなる。又、周期が300〜500nm程度又はこれよりよりも大きな周期なら(その場合、ミクロンオーダーの粗度をなす凹部の直径や周期は10μm近くになると推定される)、ミクロンオーダーの凹部内でのスパイクの数が激減するので効果が効き難くなる。よって、原則としては、超微細凹凸の周期が10〜300nmの範囲であることを要する。超微細凹凸の周期が50〜100nmの範囲であることが最も好ましい。しかしながら、超微細凹凸の形状によっては、5nm〜10nm周期のものでも、樹脂がその間に侵入する場合がある。例えば、5〜10nm直径の棒状結晶が錯綜している場合等がこれに該当する。また、300nm〜500nm周期のものでも、超微細凹凸の形状がアンカー効果を生じやすい場合がある。例えば、高さ及び奥行きが数十〜500nmで、幅が数百〜数千nmの階段が無限に連続したパーライト構造のような形状がこれに該当する。このような場合も含め、要求される超微細凹凸の周期を5nm〜500nmと規定した。
ここで、従来は上記第1の条件に関して、RSmの範囲を1〜10μm、Rzの範囲を0.5〜5μmと規定していたが、RSmが0.8〜1μm、Rzが0.2〜0.5μmの範囲であっても、超微細凹凸の凹凸周期が、特に好ましい範囲(概ね30〜100nm)に有れば、接合力が高く維持できる。それ故に、RSmの範囲を小さい方にやや広げることとした。即ち、RSmが0.8〜10μm、Rzが0.2〜5μmの範囲とした。
(c)さらに、第3の条件は、上記金属合金の表層がセラミック質の薄層であることである。具体的には、その表層が環境に影響されず安定した金属酸化物又は金属リン酸化物の薄層であることが第3の条件となる。
一方、樹脂側の条件を以下に示す。
(d)硬質の結晶性熱可塑性樹脂であること。具体的には、PBT、PPS、又はポリアミド樹脂等が主成分として含まれている樹脂組成物であること。
さらに、新NMTにおいて、強い接合力を得るためには樹脂組成物側に更に1の条件が加わる。
(e)主成分高分子と異なる高分子が含まれており、異高分子の大部分が主成分の結晶性熱可塑性樹脂と分子レベルで混ざっていること。
即ち、射出樹脂は異種の高分子をコンパウンドしたPBT系樹脂、PPS系樹脂、又はポリアミド樹脂が最適である。これらの樹脂組成物は射出成形機により金型に向かって射出され、金型内で急冷されて結晶化・固化する際、最初の種結晶の生じるタイミングが遅い。この性質を利用し、射出樹脂をミクロンオーダーの粗度を構成する凹部の底まで到達させることを試みた。そしてその凹部の内壁面にある5〜500nm周期の超微細凹凸を構成する凹部に対しても、その樹脂流の頭部が侵入し、所謂頭を突っ込んだ状態で結晶化・固化すると推定した。実際に、条件(a)(b)(c)を満たすよう表面処理した各種金属合金に対して上記樹脂を射出した際に、超微細凹凸まで樹脂が侵入しており、これが接合力に大きく寄与していた。
板状のマグネシウム合金、アルミニウム合金、銅合金、チタン合金、ステンレス鋼、一般鋼材、アルミ鍍金鋼板の表面を、条件(a)(b)(c)を満たす表面とし、その表面にPBT系樹脂又はPPS系樹脂を板状に射出成形し、板状物同士の接合物を得た(特許文献3〜8)。新NMTによって得られた複合体の接合部断面図を図1に示す。金属合金相11の表面に形成された超微細凹凸に樹脂相21が侵入している。超微細凹部は金属酸化物又は金属リン酸化物の薄層31で覆われている。
WO 03/064150 A1(アルミニウム合金) WO 2004/041532 A1(アルミニウム合金) WO 2008/069252 A1(マグネシウム合金) WO 2008/047811 A1(銅合金) WO 2008/078714 A1(チタン合金) WO 2008/081933 A1(ステンレス鋼) WO 2009/011398 A1(一般鋼材) WO 2009/084648 A1(アルミ鍍金鋼板) 特許第4452220号公報 特許第4452256号公報
NMT及び新NMTによって金属とPPS等の樹脂組成物を強固に接合する技術は、電子機器や輸送機器等の製造に利用されている。しかしながら、輸送機器や屋外で使用される電子機器、産業機械等の構造材として上記複合体を用いるためには、接合力のみならず環境の変動に耐えうるものであるか否かが問題となる。即ち温度変動が大きい環境下に長時間置かれた場合にも接合力が大きく低下しないことが極めて重要である。本発明者らも、温度変動による複合体の接合力低下を懸念し、NMT及び新NMTによって製造した複合体を対象として、温度衝撃試験を行った。NMT又は新NMTによって金属とPPS系樹脂組成物の複合体を作成し、この複合体に対して−55℃/+150℃の温度衝撃を繰り返し3000サイクルかけた結果、接合力の低下は殆どなかった。
ここで、上記複合体が輸送機器の構造材として使用される場合、高温高湿状態における性能が重要となる。本発明者らは、NMTによって得られたアルミニウム合金板とPPS系樹脂組成物の板状成形品の複合体(接合面積0.5cm(10mm×5mm))を、温度85℃、湿度85%の環境下に200時間置く試験を行った結果、接合力は約30%低下した。新NMTによって得られたアルミニウム合金板とPPS系樹脂組成物の複合体も同様の結果であった。このとき破断したアルミニウム合金の接合部分であった範囲を観察した結果、中心部は細かい樹脂の破壊残渣が残っていたが、この中心部以外の外周部には樹脂残りがなく、接合部分周辺からアルミニウム合金表面の微細構造が変化したことを確認できた。なお、接合面積中、樹脂の残留が認められなかった部分の面積比率は約20%(外周部)であった。
上記実験結果から、NMTや新NMTによって得られた複合体であっても、高温高湿環境下で長期間の使用に耐えるには、耐候性の改良が必要であることを確認した。本発明はこのような技術背景のもとになされたものであり、その目的は耐候性にすぐれた金属樹脂複合体及びその製造方法を提供することにある。
(耐候性)
上記複合体に要求される耐候性とは、陽光に対する耐性があること、水分や湿気、特に潮風の塩分が溶け込んだ雨水、汚水、海水に対する耐性があること、気温−40〜+100℃の環境で長期間の使用に耐えうること、さらにこれらの条件が複合した環境下で長期間の使用に耐えうること等である。複合体の耐候性確保に最も有効なのは塗装である。塗料業界では、アルミニウム合金に2層塗装又は3層塗装することにより、陽光を遮断し、汚水、塩水も遮断する。但し、酸素、窒素、水分子は完全には遮断できず、塩水等に含まれる塩素イオン、ナトリウムイオンを完全遮断することは困難である。塗膜は高分子の絡み合った物であり、小さな分子は絡まった分子鎖の隙間を通過可能である。塗膜から露出している部分は傷付けられる場合があり、傷は金属相まで達することがあり、そこから錆が発生しうる。耐候性確保のためには、その錆が周辺に拡がる速度を抑制しなければならない。
これらを勘案し、実際のアルミニウム合金材は耐候性を得るために、塗装前に表面処理が施されている。通常はアロジン処理等の化成処理が施されている。化成処理の目的は、化成処理層と塗膜との接着性を良好にして塗膜による部材保護を良好にすること、化成処理層自体をナトリウムイオンや塩素イオンに対し低反応性とすることで、これらのイオンが金属相に侵入するのを防ぐこと等にある。
(耐水性)
アルミニウム合金とPPS系樹脂組成物の射出接合物に耐候性を持たせる場合にも、前述したようにアルミニウム合金露出部に化成処理を施して、厚い塗装をすることが必要となる。化成処理と塗装を接合後に行うことを前提とした場合、当初得られるアルミニウム合金とPPS系樹脂組成物には水分子の侵入に対する耐性があれば良い。即ち、射出接合によって得られた直後の複合体に関しては、少なくとも耐水性が必要である。
耐水性試験としては、水と酸素が存在する環境下に数年間複合体を置いて試験する方法が実際の使用状態に近い。例えば、水中に数年間浸漬した後、複合体を取り出し、引っ張り破断試験を行って、浸漬前から破断力が変化しなければ理想的な耐候性を有していることになる。しかしながら、このような試験方法は時間がかかりずぎて実用的ではない。それ故、樹脂業界や機械製造業界では、高温高湿試験機を使用した湿熱試験を採用しており、この試験を耐水性の加速試験と位置づけている。一般的に採用されている試験条件は、気温85℃、湿度85%とした高温高湿試験機内に複合体を数百時間〜数千時間置くというものである。
(耐水性の向上)
前述した新NMTの条件(c)では、「金属合金の表層がセラミック質の薄層であること。具体的には、その表層が環境に影響されず安定した金属酸化物又は金属リン酸化物の薄層であること。」としている。この条件を満たし、かつ耐水性の高い表層を形成すべく、本発明者らは、様々な金属合金に微細エッチングを施して超微細凹凸を形成した後、クロム、マンガン、ジルコニウム、バナジウム、その他の金属イオンを含む化成処理液に浸漬してより耐腐食性の高い金属酸化物又は金属リン酸化物の薄層を形成しようとした。
上記試行錯誤を経た結果、樹脂との強固な接合が可能であり、且つ耐腐食性の高い金属酸化物又は金属リン酸化物の薄層を形成することができた。下地となる金属合金が金属珪素含有アルミニウム合金であって、これを化成処理する際に過マンガン酸カリを使用した場合、射出接合する樹脂としてPPS系樹脂組成物又はPBT系樹脂組成物を使用したときに強固な接合力を有し、且つ耐水性にすぐれた複合体を得ることができた。一方、展伸用アルミニウム合金とPPS系樹脂組成物又はPBT系樹脂組成物の複合体に関しては、同様の化成処理を行っても耐水性の高い複合体は殆ど得られなかった。
鋳造用アルミ合金には融点を下げるために金属珪素が加えられているため、本発明の対象となる。珪素含有のアルミニウム合金に過マンガン酸カリ水溶液による化成処理を施したものとPPS系樹脂組成物又はPBT系樹脂組成物との複合体が、耐高温高湿性能にすぐれた理由は以下のように推測される。様々な化成処理層の中には、水との反応によって化成処理層の形状は変化しつつ下地金属を保護するもの、水との反応自体が起こり難く化成処理層の形状は変化せずに維持されるものがあると考えられる。そして、珪素含有アルミニウム合金に対して過マンガン酸カリ水溶液による化成処理を行って得られた化成処理膜の形状が、新NMTの条件(c)に合致し、且つ水との反応自体が起こり難いものであったと本発明者らは推測している。
溶融アルミ浸漬型のアルミ鍍金鋼板、アルミ鍍金ステンレス鋼板も本発明の対象となる。これらの鍍金材には7%程度の珪素を含んだアルミニウムが通常使用されるため、樹脂との接合対象として見た場合には、鋳造用アルミ合金と同じである。アルミ鍍金鋼板やアルミ鍍金ステンレス鋼板が耐食性に優れていることから、今後は輸送機器用の外板として使用されうる可能性がある。これらの鋼板とPPS系樹脂組成物又はPBT系樹脂組成物との複合体が優れた耐湿熱性を示せば極めて有用な構造材となりうる。また、鋳造用アルミ合金も、アルミ材のリサイクル化の進行に伴い資源的に豊富になるため、輸送機器の構造部材として今後は使い易くなる。さらに鋳造品は加工時の材料ロスが展伸材より少なく、経済的であるため、鋳造用アルミ合金とPPS系樹脂組成物又はPBT系樹脂組成物との複合体が優れた耐湿熱性を示せば極めて有用な構造材となりうる。
本発明でいう優れた耐湿熱性とは、複合体を温度85℃湿度85%の環境に1000時間以上置いた後、引っ張り試験により破断し、破断時のせん断破断力が高温高湿環境下に置かれる前の接合力から実質的に低下していないものをいう。本発明の特徴は、珪素含有のアルミニウム合金に過マンガン酸カリ水溶液による化成処理を施し、且つ新NMTに規定した条件(a)(b)(c)を満たす表面構造とし、これにPPS系樹脂組成物又はPBT系樹脂組成物を射出接合することによって、優れた耐湿熱性の複合体を得ることにある。ここで、珪素含有のアルミニウム合金の表面構造は新NMTの条件に合致するものであるが、表層は従来のようなアルミニウム自然酸化層を厚くしただけのものではなく、マンガンイオンを含む化成処理皮層、別の言い方でマンガンを含む金属酸化物薄層に作り変えられている。このようにして得られた複合体に耐候性塗料を塗布して単層又は2層塗装すれば耐候性に優れた部品を得ることができる。
(PBT系樹脂組成物)
得られた複合体の耐水性を測定するために上記高温高湿試験を行ったが、これは加速試験である。樹脂組成物自体が高温高湿環境に耐性があれば、この加速試験はあくまで複合体の接合力の低下を測る湿熱試験として有効である。新NMTでは、条件(d)に示すように、樹脂組成物としてPPS系樹脂組成物、PBT系樹脂組成物、ポリアミド系樹脂組成物を使用できる。PBTはポリエステルであり、親水性がある上に高温水との接触では加水分解によるエステル結合の破断が生じる。即ち高分子の断裂が生じポリマーの物性が劣化する。ところがPBTは常温下では加水分解しないし、高温下でも湿度が低ければ加水分解は生じない。要するに、PBT系樹脂組成物を使用した場合、耐水性を確認するのに高温高湿試験は加速試験として適していない。
従ってPBT系樹脂組成物の複合体に関しては、浸水試験を実施した。常温下のイオン交換水に複合体を浸漬して、数ヶ月以上置いてから取り出し、接合力が低下したか否かを測定する方法である。まず、前述したように珪素含有のアルミニウム合金に過マンガン酸カリ水溶液による化成処理を施し、且つ新NMTに規定した条件(a)(b)(c)を満たす表面構造とし、これにPPS系樹脂組成物を射出接合することによって、優れた耐湿熱性の複合体を得た。その後、これと同じ処理を施した同種のアルミニウム合金に対して、PBT系樹脂組成物を射出接合した。 このようにして得られたPBT系樹脂組成物の複合体に対して浸水試験を実施した。これらの複合体は、水に浸漬してから3ヶ月後、6ヶ月後も接合力の低下は認められなかった。
(ポリアミド系樹脂組成物)
ポリアミド樹脂は耐熱性も耐水性もあるが、吸水性が高い。ポリアミド樹脂の成形品を20℃の水中に24時間放置した後の吸水率は、汎用ポリアミド樹脂のナイロン6やナイロン66では1%程度あり、ジカルボン酸と脂肪族ジアミンからなる半芳香族ナイロンや分子鎖中に芳香環が含まれるメタキシリレンジアミンとアジピン酸からのナイロンでは0.1%程度である。それでも吸水率はPPS系樹脂の0.01%と比較すれば非常に高い。また常温下、湿度65%で飽和まで吸湿したポリアミド樹脂では吸水率は1.5〜2%もある。
ポリアミド樹脂が吸水すれば膨張し、樹脂強度、樹脂硬度も低下する。これは明らかに接合力を低下させ、接合面の一部に剥がれが生じる。その後、再び良い環境(常温の通常湿度環境)に戻ったときにも当初の接合力まで戻らない可能性が高い。しかし、複合体に塗装を施して実際使用される環境下に置いた場合、吸水率が天候や移動による温度湿度の急速な変化に直ちに追従するわけでない。水害等で複合体が長時間浸水しても1日程度の浸漬なら樹脂成形部は飽和含水量まで達しないが、1週間も浸漬していれば飽和含水量に達するし、1週間継続して常温高湿度下に置かれるとその飽和吸水率に達する。金属は吸水しないため、樹脂側が膨張しようとすると接合面付近に内部歪が生じる。一方、複合体自体もその樹脂部の形状や強化繊維の並び方で接合面に生じる内部歪の大きさが変わる。このような要因を考慮すると、ポリアミド樹脂系複合体に関しては、実際に使用される環境に想定する形状の複合体を置いて数年使用試験するなどの耐久性確認を行うことでしか耐湿熱性を測れない。結局、ポリアミド樹脂に関しては前述したように吸水性の問題から、珪素含有のアルミニウム合金に射出接合する樹脂として使用できないという結論に達した。
本発明の複合体は、珪素含有のアルミ合金材とPPS又はPBT系樹脂組成物が容易に剥がれることなく接合されたものであり、且つ耐水性にも優れたものである。PPS系樹脂の場合では高温高湿環境下に数千時間置かれても接合力は殆ど低下しなかった。従来型の耐湿熱性を考慮しない新NMTによって得られた複合体は、屋内使用品であれば全く支障なかったが、自動車部品向け車載機器など屋外用途品としては耐水性に劣る。本発明によって、アルミ合金表面に高温高湿環境下でも安定な層を形成し、これにより複合体の耐水性を著しく向上させることができた。本発明はアルミ合金の「新NMT」用表面処理における最終工程を、過マンガン酸カリを含む化成処理液に浸漬することによって、耐水性に優れた化成処理層を形成するようにしたものである。本発明によって、接合力は従来型の新NMTによって得られた複合体と同等としつつ、耐水性を著しく向上させた複合体を得ることができた。
本発明によって得られた複合体にさらに化成処理を施し、厚く塗装した複合部材は優れた耐候性を有する。このような複合部材は、輸送機器の他、屋外使用される機械、家具等の構造材として最適である。
図1は、新NMTにおける金属合金と樹脂の接合部分を示す断面図である。 図2は、表面処理したアルミ鍍金鋼板片表面の電子顕微鏡写真(1000倍)である。 図3は、表面処理したアルミ鍍金鋼板片表面の電子顕微鏡写真(1万倍)である。 図4は、表面処理したアルミ鍍金鋼板片表面の酸化珪素とみられる部分の電子顕微鏡写真(10万倍)である。 図5は、表面処理したアルミ鍍金ステンレス鋼板片表面の電子顕微鏡写真(1000倍)である。 図6は、射出接合によって得られる複合体の斜視図である。 図7は、引張り試験機によって複合体を破断させたときの過程を示す図である。
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
[アルミ合金]
アルミ合金は展伸用と鋳造用に分けられるが、本発明で使用できるのは金属珪素を概ね1%以上含んでいるアルミ合金である。このようなアルミ合金は原則として鋳造用アルミ合金であるが、金属珪素を概ね1%以上含んでいるのであれば、展伸用アルミ合金であっても使用できる。同様に珪素を5〜8%含むアルミ合金を使用した溶融鍍金金属、具体的には市販されているアルミ鍍金鋼板、アルミ鍍金ステンレス鋼板も使用できる。
[表面処理]
本発明は前述した「新NMT」を改良した技術である。アルミ合金の表面構造は前述した新NMTの要件(a)(b)(c)を全て充足したものである。そして従来型の新NMTで行っていた金属合金に対する表面硬化処理を、過マンガン酸カリを使用した化成処理に変更したことを特徴とする。従来型の「新NMT」では、金属合金の表面処理工程は、(i)脱脂工程、(ii)化学エッチング工程、(iii)微細エッチング工程、及び(iv)表面硬化工程からなるが、本発明では(iv)表面硬化工程に代えて(iv)化成処理工程を採用する。
(脱脂工程)
アルミ合金材は鋳造、圧延や切断や切削、研磨等の機械加工工程を経ており、油剤や指脂が付着している。アルミ合金材表面にグリース等が付着している場合、粘着力のある油剤が付着している場合には脱脂工程前に灯油洗浄などが必要となる。これらのようなもの以外の通常の機械加工工程を終了したアルミニウム合金材は、市販のアルミ用脱脂剤を10%前後溶解した湯中に数分浸漬し、水洗して脱脂する。
(化学エッチング工程)
脱脂工程を経たアルミ合金材は1〜2%濃度の苛性ソーダ水溶液に数分浸漬してアルカリエッチングする。アルミ合金材表面が、数μm周期の凹凸で、その凹凸高低差がその周期の半分程度のもので覆われるようにエッチング条件を選択する。なお、このアルカリエッチング工程の前に予備酸洗浄工程を入れることが望ましい。アルミニウムは酸水溶液にも塩基水溶液にも溶解する両性金属だが、どちらかというと酸水溶液に浸漬した方が低溶解速度となる。それ故、先ず酸水溶液に浸漬してアルミ合金材に酸分を吸着させるのが好ましい。その後にアルカリエッチング槽に浸漬すると、酸の吸着箇所で直ぐに反応が開始される。即ち、アルカリエッチングには通常、多少の誘導期間があるが、この様に予備酸洗工程を介在させることで、アルカリエッチングの際の誘導期間が殆ど0となる。これによりアルカリエッチング工程の再現性が著しく向上するため、エッチング精度を上げるには予備酸洗浄工程を介在させるのが好ましい。
アルカリエッチング後の鋳造用アルミ合金は通常は黒色化している。これは鋳造用アルミ合金に含まれている金属珪素がアルカリ水溶液に溶けず、塩基性水溶液に溶解しないその他の金属微粒子も含めて所謂スマット(汚れ)付着状態になるためである。それ故、アルカリエッチング槽から出したアルミ合金材を水洗し、次いで低濃度の硝酸水溶液に浸漬する。硝酸水溶液中ではスマット成分の大部分を占める珪素は溶解せず、硝酸による酸化も進んで酸化珪素(シリカ)になると考えられるが、銅、亜鉛、マグネシウム等は硝酸に溶け、スマットの大部分はアルミ合金から浮いた状態になる。この状態で硝酸水溶液に超音波振動を加えると、スマットの9割程度がアルミ合金から乖離するが、硝酸水溶液を大量に入れた槽内に超音波発振端を設置する場合、長期使用によって発信端に支障を生じるおそれがある。それ故、本発明者等は、希薄硝酸水溶液にアルミ合金材を数分浸漬した後に、超音波発振端付きの水槽に移し、この水槽内で強い超音波を5〜10分加えてスマットを落とした。
ただし、実験結果から見れば、スマットを100%近くまで落とす必要はなかった。前記超音波処理でもアルミ合金にはやや暗色が残っているが、この状態のまま次の微細エッチング工程を行っても最終的な接合力及び耐湿熱性は良好であった。スマット除去時のアルミ合金を電子顕微鏡で観察すると、表面はアルミ合金が作るミクロンオーダーの凹凸面となっており、その上に5〜10μm程度づつ間隔を開けて珪素主成分(おそらく酸化珪素)の結晶らしき物が無数に点在した不均一形状となっていた。結晶物は枯れ木が寝そべったような形状であった。
(微細エッチング工程)
スマット除去後のアルミ合金材を水溶性アミンの水溶液に浸漬し水洗するのが好ましい。アルミ合金材を、PH9〜10程度の弱塩基性のアミン水溶液に適当な温度で0.5分程度浸漬すると、先ず20〜30nm周期の超微細凹凸面が生じ、浸漬時間を延ばせば一旦凹部が深くなって超微細凹凸の周期と同程度の深さになった後、障壁が崩れだして凹凸周期が50nm、70nm、100nmと次第に荒くなる。本例では、超微細凹凸の周期が50〜100nmとなるように条件を調整した。これにより、前述した不均一的形状である表面の比較的平滑な部分(結晶物が存在しないエリア)を微細エッチングするのである。微細エッチングにはアンモニア水も使用できるが、塩基性が弱く、長い浸漬時間が必要な上に臭気が酷い。また、メチルアミンのような脂肪族アミン類は塩基性が強く、超微細凹凸周期を50〜100nmにするのに(「新NMT」の最も好ましい条件とするのに)短時間で済む。しかし、短時間過ぎるのも量産工程には不安定要素となる。以上から、本発明者らは水和ヒドラジンの水溶液を使用している。
(化成処理工程)
上記微細エッチング工程までを行うことで、アルミ合金材の表面は「新NMT」の3条件を充足する。しかしながら本発明では、微細エッチングした表層を自然酸化層に近い酸化アルミニウムの薄層ではなく、より耐水性のある化成皮膜にする。この化成皮膜はマンガンイオンの含まれた金属酸化物層であり、マンガン酸化物やアルミニウム酸化物の単一金属酸化物層ではなく両者が混ざりあった金属酸化物層と推定している。この化成皮膜を形成するための処理法は、微細エッチング工程を経たアルミ合金材を、弱酸性に調整した過マンガン酸カリ水溶液に浸漬し、水洗するというものである。過マンガン酸カリを1〜数%含む30℃〜50℃の化成処理液に、1分〜数分浸漬することで、超微細凹凸は適切な形状が保持され、且つ優れた耐湿熱性を獲得することができた。
化学技術の常識では、過マンガン酸カリを他物質に反応させて相手を酸化した場合、酸性水溶液中では自身は4価で不溶性の二酸化マンガンではなく、水溶性の2価マンガンイオンに変化することが多いとされる。仮にこの常識通り過マンガン酸カリが2価マンガンイオンに変化したのなら、マンガンは水溶液に溶け出してアルミ合金材表面に残らないが、この状況ではアルミニウムを酸化する過程で4価又は2価となり合金内に取り込まれ、表面でアルミニウムとの複合酸化物を作ると考えられる。これは、浸漬時間が長いほど表面が褐色方向に着色して行くことから明らかだった。勿論、この化成処理手法で一旦得られた50〜100nm周期の超微細凹凸が平滑化したり、逆に細かく結晶化成長して極細かい周期の凹凸になると接合力が低下し意味がなくなる。最適な化成処理を行うためには、実験を繰り返し、表面形状を電子顕微鏡観察し、通常環境下で射出接合物の接合力を引張り試験機で確認して高い接合力が得られていることを確認した後、これを更に湿熱試験して耐湿熱性を確認することが必要である。本発明者らが試行錯誤を行った結果、過マンガン酸カリを1〜数%含む化成処理液(30℃〜50℃)に、1分〜数分浸漬することで、超微細凹凸は適切な形状が保持され、且つ優れた耐湿熱性を獲得することができた。
本発明者らは、その他のアルミ合金用の化成処理法、例えばクロメート処理と呼ばれる三酸化クロム水溶液や三酸化クロムとリン酸の混合水溶液への浸漬処理を試した。また、アルミ合金、一般鋼材、及び亜鉛鍍金鋼板等の化成処理法として用いられているリン酸マンガンやジルコニウム錯塩使用の化成処理法も試した。しかしながら、これらの方法は、化成処理後のアルミ合金表面を50〜100nm周期の超微細凹凸形状とすることが困難であり、また、このような超微細凹凸形状を形成することができた場合であっても高温高湿試験によって接合力が低下した。
[PPS系樹脂組成物]
新NMT用のPPS系樹脂が数種市販されている。後述する実験例では「サスティールSGX120(株式会社東ソー製)」を使用した。その組成は特許文献9、10に示されるものと同様であり、樹脂分、フィラー、その他成分からなる。樹脂分の70〜99%がPPSであり、30〜1%が変性ポリオレフィン系樹脂である組成物である。これにこれらの相溶化を促進する成分が含まれているのが好ましい。
変性ポリオレフィン系樹脂としては、無水マレイン酸変性エチレン系共重合体、グリシジルメタクリレート変性エチレン系共重合体、グリシジルエーテル変性エチレン共重合体、エチレンアルキルアクリレート共重合体等であることが好ましい。該無水マレイン酸変性エチレン系共重合体としては、例えば無水マレイン酸グラフト変性エチレン重合体、無水マレイン酸−エチレン共重合体、エチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸三元共重合体等をあげることができ、その中でも特に優れた複合体が得られることからエチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸三元共重合体であることが好ましく、該エチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸三元共重合体の具体的例示としては、「ボンダイン(アルケマ社製)」等が挙げられる。
該グリシジルメタクリレート変性エチレン系共重合体としては、グリシジルメタクリレートグラフト変性エチレン重合体、グリシジルメタクリレート−エチレン共重合体を挙げることができ、その中でも特に優れた複合体が得られることからグリシジルメタクリレート−エチレン共重合体であることが好ましく、該グリシジルメタクリレート−エチレン共重合体の具体例としては、「ボンドファースト(住友化学社製)」等が挙げられる。
該グリシジルエーテル変性エチレン共重合体としては、例えばグリシジルエーテルグラフト変性エチレン共重合体、グリシジルエーテル−エチレン共重合体を挙げることができ、該エチレンアルキルアクリレート共重合体の具体例としては、「ロトリル(アルケマ社製)」等が挙げられる。又、エチレンアルキルアクリレート共重合体には、エチレンアルキルアクリレート共重合体、エチレンアルキルメタクリレート共重合体等があり好ましく使用できる。
上記樹脂分100重量部に対し、多官能性イソシアネート化合物0.1〜6重量部及び/又はエポキシ樹脂1〜25重量部を配合した場合に、押し出し機での混ざり(分子レベルでの混ざり)がよくなり好ましい。該多官能性イソシアネート化合物は、市販の非ブロック型、ブロック型のものが使用できる。該多官能性非ブロック型イソシアネート化合物としては、例えば4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ビス(4−イソシアネートフェニル)スルホン等が例示される。また、該多官能性ブロック型イソシアネート化合物としては、分子内に2個以上のイソシアネート基を有し、そのイソシアネート基を揮発性の活性水素化合物と反応させて、常温では不活性としたものであり、該多官能性ブロック型イソシアネート化合物の種類は特に規定したものではなく、一般的には、アルコール類、フェノール類、ε−カプロラクタム、オキシム類、活性メチレン化合物類等のブロック剤によりイソシアネート基がマスクされた構造を有する。該多官能性ブロック型イソシアネートとしては、例えば「タケネート(三井竹田ケミカル社製)」等が挙げられる。
該エポキシ樹脂としては、一般にビスフェノールA型、クレゾールノボラック型等として知られているエポキシ樹脂を用いることができ、該ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、例えば「エピコート(ジャパンエポキシレジン社製)」等が挙げられ、該クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、「エピクロン(大日本インキ化学工業社製)」等が挙げられる。
フィラーとしては強化繊維、粉体フィラー等を挙げることができ、強化繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維などが挙げられ、ガラス繊維の具体的例示としては、平均繊維径が6〜14μmのチョップドストランド等が挙げられる。また、粉体フィラーとしては、例えば炭酸カルシウム、マイカ、ガラスフレーク、ガラスバルーン、炭酸マグネシウム、シリカ、タルク、粘土、炭素繊維やアラミド繊維の粉砕物等が挙げられる。該充填剤は、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤で処理したものあることが好ましい。その含有量は出来上がった樹脂組成物中の0〜60%、好ましくは20〜40%である。
[PBT系樹脂組成物]
新NMT用のPBT系樹脂が数種市販されている。後述する実験例では「BD−01(東レ株式会社製)」を使用した。その組成は樹脂分、フィラー、その他成分からなる。樹脂分の70〜99%がPBTであり、30〜1%がポリエチレンテレフタレート樹脂である組成物である。これに変性ポリオレフィン系樹脂が若干量含まれているのが好ましい。フィラーとしては強化繊維、粉体フィラー等を挙げることができ、強化繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維などが挙げられ、ガラス繊維の具体的例示としては、平均繊維径が6〜14μmのチョップドストランド等が挙げられる。また、粉体フィラーとしては、例えば炭酸カルシウム、マイカ、ガラスフレーク、ガラスバルーン、炭酸マグネシウム、シリカ、タルク、粘土、炭素繊維やアラミド繊維の粉砕物等が挙げられる。該充填剤は、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤で処理したものあることが好ましい。その含有量は出来上がった樹脂組成物中の0〜60%、好ましくは30〜40%である。
[射出接合工程]
射出成形金型に表面処理をしたアルミ合金材をインサートし、これに上記PPS系樹脂又はPBT系樹脂を射出する。射出条件は通常のPPS系樹脂、PBT系樹脂の射出成形条件と大きくは変わらない。敢えて言えば、金型温度はやや高めの110〜150℃にすること、又、射出速度と射出圧も通常のPPS、PBT射出成形時の設定条件よりやや高めにすることが好ましい。新NMTの目的は、アルミ合金材表面の超微細凹凸に樹脂を強制的に押し込むことで強い接合力を生み出すことである。それ故、ガス溜まり、ガス焼け等を防止しなければならず、金型にはガス抜きが欠かせない。ガス抜きを徹底した場合には薄バリが出易いが、この薄バリが出るほどしっかり射出することが好ましい。要するに、見た目が綺麗な成形品を得るのを目的にして射出接合工程での射出成形条件を決定するのは好ましくない。目的は強固な接合力を獲得することであり、薄バリが生じて支障がある場合には、後工程で薄バリ除きを行うべきである。
[アニール工程]
射出接合物(複合体)を射出成形機から離型した後、24時間以内に150〜170℃付近の温度下に1時間程度置く必要がある。これは金属合金部と成形された樹脂部が強い接合を長く保つようにする上で必要な工程である。強い接合力確保を目的とする射出接合では、その金型温度は110〜150℃となっているため、離型し放冷されると金属合金部は100℃程度冷却され線膨張率に応じて収縮する。一方の樹脂部は成形収縮率に応じて収縮する。この収縮率自体が金属合金(ここではアルミ合金)と樹脂(ここではPPSやPBT系樹脂)で異なるし、その収縮する速度(収縮の経時変化)も異なる。
射出接合物が成形機から離型されて常温まで放冷される間にアルミ合金側は0.2〜0.3%の収縮をしようとするが、PPSやPBT系樹脂は離型されてから24時間程度かけて0.3〜0.8%程度成形収縮しようとする。樹脂側での数値範囲が大きいのは樹脂の流れ方向によって成形収縮率が異なるからであり、24時間かかるのは結晶化が室温下になっても続くためである。また、結晶化による樹脂成形物の収縮速度は当初速く、経時に伴って低下していく。何れにしても、金属と樹脂の収縮具合は異なるのであるが、一方で両者は強く接合している。このとき接合面付近ではアルミ合金、樹脂部共に相手側の干渉を受け、内部歪が生じる。この内部歪を解消する目的でアニール工程を行った。
PPS系樹脂では170℃、PBT系樹脂では150℃程度にすると、樹脂中の非晶性部分の熱運動が盛んになり高分子間の絡みつきが緩む。全く自由になるわけではないが若干の移動が可能になって内部歪は解消する。しかも樹脂部の結晶化はアニール前には大部分が終了し、アニール終了後に放冷された場合の樹脂部の収縮は成形収縮ではなく、通常の線膨張率に近づく収縮である。従って、金属と樹脂間の収縮率差は小さくなり放冷後の内部歪はアニール前より大幅減少する。
[実験例]
以下、実験例について詳記する。実験に使用した装置を以下に示す。
(1)電子顕微鏡観察
主に基材表面の観察のために電子顕微鏡を用いた。高分解能走査型(FE−SEM)の電子顕微鏡「SU−70」(日立ハイテクノロジーズ製)を使用し、15kVにて観察した。
(2)走査型プローブ顕微鏡観察
さらに、主に基材表面の観察のために走査型プローブ顕微鏡を用いた。この顕微鏡は、先端を尖らせた探針を用いて、物質の表面をなぞるように動かして表面状態を拡大観察する走査型プローブ顕微鏡である。この走査型プローブ顕微鏡として、「SPM−9600」(島津製作所製)を使用した。
(3)複合体の接合強度の測定
本実験例によって得られるアルミ合金と樹脂成形品の複合体50の形状を図6に示す。アルミ合金片51と樹脂成形品53が接合部52によって接合されている。複合体の接合強度の測定として、引張り応力を測定する。具体的には、図7に示すように、引張り試験機で複合体50を引っ張ってせん断力を負荷し、複合体50が破断するときの破断力をせん断破断力として測定した。引張り試験機は「AG−10kNX」(島津製作所製)を使用し、引っ張り速度10mm/分で複合体50を破断させた。
[実験例1]アルミ鍍金鋼板片の表面処理
厚さ0.5mmのアルミ鍍金鋼板「アルスター鋼板」(日新製鋼社製)を45mm×18mmに切断し、多数のアルミ鍍金鋼板片を作成した。槽にアルミ用脱脂剤「NE−6」(メルテックス社製)を7.5%含む水溶液(液温60℃)を用意し、この水溶液を脱脂用水溶液とした。また、別の槽に塩酸1%を含む水溶液(液温40℃)を用意し、これを予備酸洗槽とした。また、別の槽に、苛性ソーダを1.5%含む水溶液(液温を40℃)を用意し、これをエッチング槽とした。また、別の槽に3%濃度の硝酸水溶液(液温40℃)を用意し、これを中和槽とした。また、超音波発振端を設けた別の槽にイオン交換水を満たして、これをスマット除去槽とした。また、別の槽に、水和ヒドラジン3.5%含む水溶液(液温60℃)を用意し、これを微細エッチング槽とした。さらに、別の槽に、過マンガン酸カリを2%、酢酸を1%、水和酢酸ナトリウムを0.5%含む水溶液(液温40℃)を用意し、これを化成処理槽とした。
アルミ鍍金鋼板片を先ず脱脂槽に5分浸漬し、水道水(群馬県太田市)で水洗した。次いで予備酸洗槽に1分浸漬し、イオン交換水で水洗した。次いでエッチング槽に4分浸漬し、イオン交換水で水洗した。次いで中和槽に3分浸漬し、次いで超音波発振端付きのスマット除去槽に5分間入れてスマットの大部分を落とした。次いで先ほどの中和槽に0.5分浸漬し、イオン交換水で水洗した。次いで微細エッチング槽に2分浸漬し、イオン交換水で水洗した。次いで化成処理槽に3分浸漬し、イオン交換水で水洗した。そして67℃とした温風乾燥機内に15分置いて乾燥した。このように表面処理したアルミ鍍金鋼板片は重ねてアルミ箔で包み保管した。
2日後、このうち1個を使って走査型プローブ顕微鏡による観察を行った。20μmの長さを6回走査した結果は、山谷平均間隔RSmが2.1〜2.8μm、最大粗さ高さRzは0.8〜1.9μmであり、20回走査した測定結果では、RSmが2.0〜3.1μm、最大粗さ高さRzは0.8〜2.1μmであった。表面はやや深い凹凸で覆われ、ミクロンオーダーの粗度を有していた。また、その表面を電子顕微鏡観察したところ、2〜10μm周期のやや浅い凹凸面があり、その深い凹部がある箇所に枯れ木状の全くの異物が寝そべっている様な不思議な形状であった。この枯れ木状物から珪素原子の信号が確認できたので析出した珪素が酸化珪素として点在したものとみられた。この酸化珪素らしき物の存在がRSmを小さくしたようである。この酸化珪素とみられる物もアルミ合金とみられる部分も電子顕微鏡を10万倍にして観察すると、双方共に40〜60nm周期の超微細な凹凸の存在が確認された。図2に1000倍の電子顕微鏡写真、図3には1万倍の電子顕微鏡写真を示す。また、図4には、図4では酸化珪素とみられる部分の10万倍電子顕微鏡写真を示した。
[実験例2]アルミ鍍金ステンレス鋼板片の表面処理
厚さ0.5mmのアルミ鍍金ステンレス鋼板「アルスターSUS」(日新製鋼社製)を45mm×18mmに切断し、多数のアルミ鍍金ステンレス鋼板片を作成した。アルミ鍍金ステンレス鋼板片に実験例1と全く同様の表面処理を施した。このように表面処理したアルミ鍍金ステンレス鋼板片は重ねてアルミ箔で包み保管した。図5にアルミ鍍金ステンレス鋼板片表面の電子顕微鏡写真(1000倍)を示す。拡大写真はアルミ鍍金鋼板片(図1)と酷似している。これは、双方共に珪素が7%程度含まれたアルミ合金が表面層を構成しているためである。
[実験例3]ADC12アルミ合金片の表面処理
ADC12アルミ合金の鋳造ブロックを切断して、45mm×18mm×1.5mm厚の多数のADC12アルミ合金片を作成した。ADC12アルミ合金片に実験例1と全く同様の表面処理を施した。このように表面処理したADC12アルミ合金片は重ねてアルミ箔で包み保管した。
2日後、このうち1個を使って走査型プローブ顕微鏡による観察を行った。20μmの長さを6回走査した結果は、山谷平均間隔RSmが3.1〜4.0μm、最大粗さ高さRzは0.9〜1.5μmであり、20回走査した測定結果では、RSmが2.9〜5.1μm、最大粗さ高さRzは0.8〜1.8μmであった。また、その表面を電子顕微鏡観察したところ、表面は酸化珪素とみられる異物が凹凸ある砂漠に点在したような景色であり、図2及び図5に似た不均一型の表面であった。アルミ合金とみられる部分には50〜80nm周期の超微細凹部があった。
[実験例4]ADC12アルミ合金片の表面処理(比較例)
ADC12アルミ合金の鋳造ブロックを切断して、45mm×18mm×1.5mm厚の多数のADC12アルミ合金片を作成した。これらADC12アルミ合金片に従来型の新NMTの表面処理を施した。ADC12アルミ合金片を先ず実験例1と同じ脱脂槽に5分浸漬し、水道水(群馬県太田市)水洗した。次いで実験例1と同じ予備酸洗槽に1分浸漬し、イオン交換水で水洗した。次いで実験例1と同じエッチング槽に4分浸漬し、イオン交換水で水洗した。次いで実験例1と同じ中和槽に3分浸漬し、実験例1と同じ超音波発振端付きのイオン交換水水槽に5分浸漬し、再度、中和槽に0.5分浸漬し水洗した。次いで実験例1と同じ微細エッチング槽に2分浸漬し、イオン交換水で水洗した。次いで常温にした5%濃度の過酸化水素を入れた過酸化水素水槽に5分浸漬し、イオン交換水で水洗した。そして67℃とした温風乾燥機内に15分置いて乾燥した。このように表面処理したADC12アルミ合金片は重ねてアルミ箔で包み保管した。
上記表面処理をしたADC12アルミ合金片表面を電子顕微鏡観察したところ、酸化珪素らしき異物が点在しており、その様子は図2〜4と似ていた。
[実験例5]射出接合試験(PPS系樹脂)
射出接合用樹脂として、PPS系樹脂である「サスティールSGX120(株式会社東ソー製)」を使用する。このPPS系樹脂は樹脂分中に80%以上のPPSを含み、変性ポリオレフィン系樹脂を10%程度含む、且つ、線膨張率を下げるためにガラス繊維を全体の20%含んでいる。金型温度140℃にした射出成形用金型に実験例1の表面処理を施したアルミ鍍金鋼板片をインサートし、前記PPS系樹脂を射出温度300℃で射出し、射出接合物を多数得た。得られた射出接合物は170℃にセットした熱風乾燥機に1時間入れてアニールした。同様にして、実験例2の表面処理を施したアルミ鍍金ステンレス鋼板片、実験例3の表面処理を施したADC12アルミ合金片、及び実験例4の表面処理を施したADC12アルミ合金片についても、各々とPPS系樹脂組成物との射出接合物を多数得た。
射出接合物の形状を図6に示す。樹脂部53の形状は45mm×10mm×3mm厚であり金属部51の形状は45mm×18mm×(0.5mm又は1.5mm)厚で、接合面積は10mm×5mmの0.5cmである。得られた射出接合物はアニールした後、1時間放冷した。その後、4種の射出接合物を、それぞれ3個ずつ引張り試験機にかけて図7に示すように引っ張り破断して、せん断破断力を測定した。表1にその平均値を示した。ただし、新NMTによる接合は極めて強度が高いため、図7(b)に示す方向に射出接合物を引っ張ると、接合面部分が伸びて金属及び樹脂の双方に曲がり変形が生じる。その結果、接合部分がせん断破断する以前に樹脂折れ破断が生じた(図7(c))。図7(c)の左に示す図は、せん断破断が生じた場合の破断形状を示し、右に示す図は、樹脂折れ破断が生じた場合の破断形状を示している。
樹脂折れ破断が生じた場合、そのとき計測される破断力は接合力のみならず、樹脂の材料強度も要因として含まれることになる。正確な接合力を測定するには、少なくとも金属側を厚くして20MPa程度のせん断力がかかっても曲がらない強度が必要であるが、市販されているアルミ鍍金鋼板等は薄い物しか存在しない。1.5mm厚のADC12アルミ合金片であっても、より厚くしない正確なせん断破断力に達しない。しかしながら、樹脂折れ破断が生じた場合であっても、接合力が低下しているときには低いせん断破断力として計測されるため、比較実験としては十分使用可能な試験方法である。
[実験例6]高温高湿試験
実験例5で得られた各種アルミ合金片とPPS系樹脂との射出接合物4種(各種20個)を、温度85℃湿度85%にした高温高湿試験機に入れ、約200時間、400時間、750時間、1000時間、1500時間経過後に各種3個づつ取り出した。取り出した射出接合物を80℃で30分乾燥した後に引っ張り破断した。測定されたせん断破断力(3個平均)を表2に示した。
表2に示す結果から、実験例1〜3の表面処理、即ち過マンガン酸カリ水溶液による化成処理を施したアルミ合金片とPPS系樹脂との射出接合品は、200時間経過後に接合力が当初よりも若干低下するものの、概ね10%以内の低下である。また、200時間経過時の接合力と比較すると、それ以降(400時間以降)の接合力は殆ど低下していないという特徴がある。これら破断試験後のアルミ合金片側破断物の接合面跡を観察した結果、実験例1〜3の表面処理を施したアルミ合金片は、当初の物(高温高湿試験機に入れなかった物)も含めて全て樹脂粒が全面に付着していた。
一方、実験例4の表面処理、即ち従来型の新NMT用表面処理を施したアルミ合金片とPPS系樹脂との射出接合品は、200時間経過後に接合力が当初(25.4MPa)よりも20%程度低下し(18.4MPa)、これ以降も400時間(15.8MPa)、750時間(13.8MPa)、1000時間(10.3MPa)、1500時間(6.0MPa)と時間経過に応じて接合力が明らかに低下した。この破断試験後のアルミ合金片側破断物の接合面跡を観察した結果、当初の物(高温高湿試験機に入れなかった物)以外は樹脂付着の面積が経時と共に減少しており、明らかな違いが観察された。
なお、実験例1〜3の表面処理を施した射出接合物について、破断試験後のアルミ合金片側に残る樹脂付着の様子は、当初の物と高温高湿試験を経たものとで相違が認められなかったにもかかわらず、実際の破断力測定値は当初の物だけ高かった。その理由を探るべく、以下の実験を行った。実験例1〜3の表面処理を施した射出接合物について高温高湿試験を行い、1000時間経過のときに前述した実験とは別に、各種2個づつ試験機から取り出した。これらの射出接合物については80℃×0.5時間の乾燥の後、更に170℃×1時間加熱し、放冷した。1時間放冷した後に引っ張り破断したところ、実験例1の表面処理を施したものが18.5MPa、実験例2の表面処理を施したものが17.9MPa、実験例3の表面処理を施したものが25.5MPaであり、いずれも当初値と殆ど同じであった。
これは、高温高湿試験に長期間投入した試料の場合、80℃で0.5時間程度乾燥しても樹脂部に入り込んだ水分は抜けないことを示している。即ち、乾燥が不十分であったためにPPS系樹脂本来の硬度強度を有しておらず、これが低いせん断破断力として表れたのである。射出接合物を高温で加熱して樹脂中の水分を除くことにより、本来の樹脂強度、樹脂硬度となったためにせん断破断力が向上したと考えられる。実際、後述する浸水試験では、当初の接合力と浸水試験後の接合力に変化がなかった(実験例7)。
[実験例7]浸水試験(アルミ鍍金ステンレス鋼)
実験例2の表面処理を施したアルミ鍍金ステンレス鋼と上記PPS系樹脂との射出接合物10個を、容量500ccのガラス瓶に入れてイオン交換水を半分程度入れ、蓋をして屋内に放置し、陽光が直接当たらぬよう段ボールを蓋の上に置いた。3ヶ月後、6ヶ月後に各々2個づつ取り出し、80℃で0.5時間の乾燥をした後、引っ張り破断試験をした。3ヶ月後に取り出したもののせん断破断力は平均25.2MPa、6ヶ月後に取り出したものは25.3MPaであり、当初の接合力(25.8MPa)から実質的に低下していない。
[実験例8]射出接合試験(PBT系樹脂)
射出接合用樹脂として、PBT系樹脂である「BD−01」(東レ社製)を使用する。このPBT系樹脂は、樹脂分の主成分がPBT(70%以上)、従成分がPET(10%以上)、その他に変性ポリオレフィン(数%以上)含み、フィラー成分としてガラス繊維を全体の30%以上含む物である。実験例2の表面処理を施したアルミ鍍金ステンレス鋼片に対して、上記PBT系樹脂を射出接合した。このPBT系樹脂「BD−01」では射出温度を270℃とし、金型温度は140℃とした。これによって得られた射出接合物を、150℃にセットした熱風乾燥機に1時間入れてアニールした。翌日に射出接合物3個を引っ張り破断試験したところ、せん断破断力は平均で22.5MPaであり、何れも樹脂折れ破断だった。
[実験例9]浸水試験(アルミ鍍金ステンレス鋼とPBT系樹脂の射出接合物)
実験例8で得たアルミ鍍金ステンレス鋼片とPBT系樹脂との射出接合物10個を、容量500ccのガラス瓶に入れてイオン交換水を半分程度入れ、蓋をして屋内に放置し、陽光が直接は当たらぬように段ボールを蓋の上に置いた。3ヶ月後に2個取り出し、80℃で0.5時間の乾燥をした後、引っ張り破断試験をした。3ヶ月後に取り出したもののせん断破断力は平均20.0MPaであり、双方ともに樹脂折れ破断であった。アルミ鍍金ステンレス鋼板片の破断面には樹脂が全面に付着しており、実質的には接合力低下はなかったものとみられた。
50…複合体
51…アルミ合金
53…樹脂

Claims (5)

  1. 珪素含有アルミニウム合金と樹脂組成物の複合体であって、
    前記珪素含有アルミニウム合金の表面は、輪郭曲線要素の平均長さ(RSm)が0.8〜10μm、最大高さ(Rz)が0.2〜5μmであるミクロンオーダーの粗度を有し、且つ、その粗度を有する面内には10〜300nm周期の超微細凹凸が形成され、且つ、表層がマンガンを含む金属酸化物薄層であり、
    前記樹脂組成物はポリフェニレンサルファイド又はポリブチレンテレフタレートを主成分として含み、前記超微細凹凸に侵入することによって前記珪素含有アルミニウム合金の表面と接合していることを特徴とする金属樹脂複合体。
  2. 請求項1に記載した金属樹脂複合体であって、
    前記珪素含有アルミニウム合金は、鋳造用アルミ合金、アルミ鍍金鋼板、及びアルミ鍍金ステンレス鋼板から選択される1種であることを特徴とする金属樹脂複合体。
  3. 珪素含有アルミニウム合金の表面に、輪郭曲線要素の平均長さ(RSm)が0.8〜10μm、最大高さ(Rz)が0.2〜5μmであるミクロンオーダーの粗度を生じさせる化学エッチング工程と、
    前記化学エッチング工程を経た珪素含有アルミニウム合金の表面に、10〜300nm周期の超微細凹凸を形成する微細エッチング工程と、
    前記微細エッチング工程を経た珪素含有アルミニウム合金を、過マンガン酸カリを含む化成処理液に浸漬する化成処理工程と、
    ポリフェニレンサルファイド又はポリブチレンテレフタレートを主成分として含む樹脂組成物を、前記化成処理工程を経た珪素含有アルミニウム合金の表面に射出して一体化する射出工程と、
    を含むことを特徴とする金属樹脂複合体の製造方法。
  4. 請求項3に記載した金属樹脂複合体の製造方法であって、
    前記珪素含有アルミニウム合金は、鋳造用アルミ合金、アルミ鍍金鋼板、及びアルミ鍍金ステンレス鋼板から選択される1種であることを特徴とする金属樹脂複合体の製造方法。
  5. 請求項4に記載した金属樹脂複合体の製造方法であって、
    前記化成処理工程において、前記微細エッチング工程を経た珪素含有アルミニウム合金を、過マンガン酸カリを1〜数%含む30℃〜50℃の化成処理液に、1分〜数分浸漬することを特徴とする金属樹脂複合体の製造方法。
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