JP2018171749A - ケイ素含有アルミニウム合金樹脂複合材料及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ケイ素を含有するアルミニウム合金基材と樹脂とが強固に接合しており、その耐久性に優れたケイ素含有アルミニウム合金樹脂複合材料を提供すること。【解決手段】表面に酸化アルミニウム被膜を有するケイ素含有アルミニウム合金基材と、前記酸化アルミニウム被膜及びシランカップリング剤を介して接合している樹脂とを備えるケイ素含有アルミニウム合金樹脂複合材料であって、前記ケイ素含有アルミニウム合金基材中のケイ素含有量が全金属元素に対して4〜14質量%であり、前記酸化アルミニウム被膜は、平均高さが10〜100nmの柱状体が分散配置されてなる多孔質表面層を有するものであり、前記多孔質表面層の無作為に抽出した400nm角の視野内における前記柱状体の断面の面積の合計の平均値が8000〜128000nm2であり、前記多孔質表面層の無作為に抽出した400nm角の視野内における前記柱状体の数の平均値が10〜430個である、ことを特徴とするケイ素含有アルミニウム合金樹脂複合材料。【選択図】なし

Description

本発明は、ケイ素含有アルミニウム合金樹脂複合材料及びその製造方法に関する。
従来から、金属と樹脂とを複合化することにより、金属と樹脂それぞれの長所を活かした部品設計が可能であることが知られており、家電製品、携帯電話、自動車部品、パソコンや電子部品等の種々の分野において、金属材料と樹脂材料とが接合又は一体化されている。このような金属材料と樹脂材料とを接合する方法としては、例えば、溶着による接合、接着剤による接合、機械的な固定等が知られている。しかしながら、溶着による接合では接合部の強度が十分ではなく、機械的な固定では接合の自由度が小さいといった問題があった。また、接着剤による接合では、使用する接着剤によって接合部の強度が変化するため、適切な接着剤を選択する必要があり、さらに、使用条件等により接着剤が劣化して接合強度が低下するという問題があった。
そこで、近年、金属材料と樹脂材料とが接合又は一体化する方法として、金属材料の表面を加工して、その表面で樹脂材料と接合する技術が提案されている。例えば、特開2015−136890号公報(特許文献1)には、純アルミニウム又はアルミニウム合金の表面に陽極酸化皮膜を形成し、この陽極酸化皮膜上にエポキシ樹脂を主成分とする樹脂膜を形成した樹脂被覆アルミニウム板が記載されている。また、特許文献1には、陽極酸化皮膜の表面にシランカップリング剤を塗布して、陽極酸化皮膜と樹脂膜との密着性を向上させることも記載されている。
また、特表2016−522310号公報(特許文献2)には、アルミニウム基材と樹脂とがより強固に接合した金属樹脂複合材料として、高さ、断面の面積、周囲の長さ、個数が特定の条件を満たす柱状体が分散配置されてなる多孔質表面層を有する酸化アルミニウム被膜を表面に備えるアルミニウム基材と、この酸化アルミニウム被膜を介して接合している樹脂とを備える金属樹脂複合材料が記載されている。
一方、特開2012−41579号公報(特許文献3)には、樹脂等との接着性に優れた金属の表面加工方法として、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる材料の表面に、Sn等及び亜鉛の金属担体が主成分である表面皮膜を置換めっき法により形成した後、エッチング処理により亜鉛及び前記材料を選択的に溶解させて前記材料の表面に多孔質エッチング層を形成して粗面化する方法が記載されている。しかしながら、前記材料として、ケイ素を含有するアルミニウム合金からなるものを使用する場合、樹脂等と接合するには、前記方法により粗面化した材料にデスマット処理を施して材料表面のケイ素含有量を低減する必要があった。
特開2015−136890号公報 特表2016−522310号公報 特開2012−41579号公報
しかしながら、特許文献1に記載の樹脂被覆アルミニウム板においては、陽極酸化皮膜と樹脂膜との密着性は必ずしも十分に高いものではなかった。また、特許文献2に記載の金属樹脂複合材料において、アルミニウム基材としてケイ素を含有するアルミニウム合金基材を使用すると、樹脂との接合強度は高いものであったが、その耐久性は必ずしも十分なものではなかった。
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、ケイ素を含有するアルミニウム合金基材と樹脂とが強固に接合しており、その耐久性に優れたケイ素含有アルミニウム合金樹脂複合材料及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ケイ素を含有するアルミニウム合金基材(以下、「Si含有Al合金基材」と略す。)と樹脂とを接合する場合に、前記Si含有Al合金基材の表面に、高さ及び断面積等が特定の条件を満たす柱状体が分散配置されてなる多孔質表面層を有する酸化アルミニウム被膜を形成し、さらに、この酸化アルミニウム被膜にシランカップリング処理を施すことによって、前記Si含有Al合金基材と樹脂とが強固に接合され、さらに、その耐久性が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のケイ素含有アルミニウム合金樹脂複合材料は、表面に酸化アルミニウム被膜を有するケイ素含有アルミニウム合金基材と、前記酸化アルミニウム被膜及びシランカップリング剤を介して接合している樹脂とを備えるケイ素含有アルミニウム合金樹脂複合材料であって、
前記ケイ素含有アルミニウム合金基材中のケイ素含有量が全金属元素に対して4〜14質量%であり、
前記酸化アルミニウム被膜は、平均高さが10〜100nmの柱状体が分散配置されてなる多孔質表面層を有するものであり、
前記多孔質表面層の無作為に抽出した400nm角の視野内における前記柱状体の断面の面積の合計の平均値が8000〜128000nmであり、
前記多孔質表面層の無作為に抽出した400nm角の視野内における前記柱状体の数の平均値が10〜430個である、
ことを特徴とするものである。
本発明のケイ素含有アルミニウム合金樹脂複合材料においては、前記酸化アルミニウム被膜が、前記多孔質表面層と前記ケイ素含有アルミニウム合金基材との間に、微細凹部を有する多孔質中間層を更に有するものであり、前記微細凹部の平均細孔径が5〜50nmであり、前記微細凹部の平均細孔中心間距離が5〜90nmである、ことが好ましい。
また、本発明のケイ素含有アルミニウム合金樹脂複合材料の製造方法は、
ケイ素含有量が全金属元素に対して4〜14質量%であるケイ素含有アルミニウム合金基材に陽極酸化処理を施して、平均高さが10〜100nmの柱状体が分散配置されてなる多孔質表面層であって、無作為に抽出した400nm角の視野内における前記柱状体の断面の面積の合計の平均値が8000〜128000nmであり、かつ、無作為に抽出した400nm角の視野内における前記柱状体の数の平均値が10〜430個である前記多孔質表面層を有する酸化アルミニウム被膜を、前記ケイ素含有アルミニウム合金基材の表面に形成する陽極酸化処理工程と、
前記多孔質表面層を有する酸化アルミニウム被膜にシランカップリング剤を用いて表面処理を施すシランカップリング処理工程と、
前記多孔質表面層を有する酸化アルミニウム被膜及び前記シランカップリング剤を介して前記ケイ素含有アルミニウム合金基材と樹脂とを接合する接合工程と、
を含むことを特徴とする。
前記陽極酸化処理工程においては、前記多孔質表面層、及び、前記多孔質表面層と前記ケイ素含有アルミニウム合金基材との間に、微細凹部を有する多孔質中間層であって、前記微細凹部の平均細孔径が5〜50nmであり、かつ、前記微細凹部の平均細孔中心間距離が5〜90nmである多孔質中間層を有する酸化アルミニウム被膜を、前記ケイ素含有アルミニウム合金基材の表面に形成することが好ましい。
また、前記シランカップリング処理工程においては、濃度が0.5〜5質量%のシランカップリング剤溶液を用いることが好ましい。
なお、本発明によってSi含有Al合金基材と樹脂とが強固に接合され、その耐久性が向上する理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、陽極酸化処理によって、Si含有Al合金基材の表面に高さ及び断面積等が特定の条件を満たす柱状体が分散配置されてなる多孔質表面層を有する酸化アルミニウム被膜を形成すると、非常に大きな表面積を有する金属接合表面が創出される。このような金属接合表面を有するSi含有Al合金基材と樹脂とを接合すると、前記金属接合表面の微細な柱状体が樹脂層に嵌入する(喰い込む)ため、アンカー効果によりSi含有Al合金基材と樹脂とが強固に接合されると推察される。しかしながら、微細な柱状体を有する金属接合表面は、Si含有Al合金基材表面のケイ素が存在する部分には形成されないため、上記のようなアンカー効果が得られず、接合耐久性が低下すると推察される。
本発明においては、Si含有Al合金基材表面のケイ素が存在する部分にシランカップリング剤が付着(好ましくは、結合)しており、このシランカップリング剤を介してSi含有Al合金基材表面のケイ素が存在する部分と樹脂とが接合しているため、接合耐久性が向上すると推察される。
本発明によれば、ケイ素を含有するアルミニウム合金基材と樹脂とが強固に接合しており、その耐久性に優れたケイ素含有アルミニウム合金樹脂複合材料を得ることが可能となる。
実施例1〜3及び比較例1〜2で得られた複合材料の引張せん断強度を示すグラフである。 実施例1及び比較例1で得られた複合材料の温水浸漬時間と引張せん断強度との関係を示すグラフである。 実施例2及び比較例1で得られた複合材料の冷熱サイクル数と引張せん断強度との関係を示すグラフである。 参考例1で得られた複合材料の冷熱サイクル数と引張せん断強度との関係を示すグラフである。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
〔ケイ素含有アルミニウム合金樹脂複合材料〕
先ず、本発明のケイ素含有アルミニウム合金樹脂複合材料について説明する。本発明のケイ素含有アルミニウム合金樹脂複合材料は、表面に酸化アルミニウム被膜を有するケイ素含有アルミニウム合金基材(Si含有Al合金基材)と、前記酸化アルミニウム被膜及びシランカップリング剤を介して接合している樹脂とを備えるものであって、
前記ケイ素含有アルミニウム合金基材中のケイ素含有量が全金属元素に対して4〜14質量%であり、
前記酸化アルミニウム被膜は、平均高さが10〜100nmの柱状体が分散配置されてなる多孔質表面層を有するものであり、
前記多孔質表面層の無作為に抽出した400nm角の視野内における前記柱状体の断面の面積の合計の平均値が8000〜128000nmであり、
前記多孔質表面層の無作為に抽出した400nm角の視野内における前記柱状体の数の平均値が10〜430個である。
(Si含有Al合金基材)
本発明において、Si含有Al合金基材としては、ケイ素含有量が所定の範囲内にあり、酸化アルミニウム被膜を形成できるものであれば特に制限はなく、JISで規定されている4000番系のもの(Al−Si合金系)を使用することができる。また、ダイキャストグレードのものも使用することができる。このようなSi含有Al合金基材の形状としては特に制限はなく、例えば、切断、プレス、切削、研削等の公知の金属加工方法によって所望の形状に加工したものを使用することができる。
このようなSi含有Al合金基材におけるケイ素含有量は4〜14質量%である。ケイ素含有量が前記下限未満になると、特表2016−522310号公報(特許文献2)に記載の方法によって、アルミニウム基材と樹脂とが強固に接合しており、その耐久性に優れたアルミニウム樹脂複合材料を得ることができる。他方、ケイ素含有量が前記上限を超えると、前記酸化アルミニウム被膜(特に、前記多孔質表面層の柱状体)を介して接合している樹脂が少なくなり、接合強度が低下する。このようなケイ素含有量としては、接合耐久性の低下がより改善するという観点から、10〜14質量%が好ましい。
本発明に用いられるSi含有Al合金基材は、その表面に酸化アルミニウム被膜を有するものである。また、この酸化アルミニウム被膜は、平均高さが10〜100nmの柱状体が分散配置されてなる多孔質表面層を有している。これにより、Si含有Al合金基材と樹脂とが強固に接合される。柱状体の平均高さが前記下限未満になると、柱状体の高さを制御することが困難になるとともに、樹脂層への嵌入(喰い込み)が不十分となり、他方、前記上限を超えると、柱状体を形成するための陽極酸化処理時間が長くなり、製造コストが増大する。また、このような柱状体の平均高さとしては、接合強度及び生産性の観点から、10〜80nmが好ましく、20〜70nmがより好ましい。
なお、多孔質表面層の柱状体の平均高さは、特表2016−522310号公報に記載の方法に準拠して、以下のように測定することができる。すなわち、走査型電子顕微鏡(SEM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)により、酸化アルミニウム被膜の多孔質表面層の縦断面を撮影する。得られたSEM像又はTEM像に基づいて、多孔質表面層の上端(多孔質表面層の表面)と下端(多孔質表面層と多孔質中間層(多孔質中間層がない場合にはアルミニウム基材)との界面)との距離の最大値と最小値を測定する。この最大値と最小値の算術平均値を算出し、得られた算術平均値と前記最小値との差が標準偏差σの3倍(3σ)となる正規分布を求める。この正規分布における平均値を多孔質表面層の平均高さ、すなわち、柱状体の平均高さとする。
また、前記多孔質表面層においては、無作為に抽出した400nm角の視野内における前記柱状体の断面の面積の合計の平均値が8000〜128000nmであることが必要である。前記柱状体の断面の面積の合計の平均値が前記下限未満になると、柱状体が細くなりすぎ、柱状体自体の強度が不足し、他方、前記上限を超えると、柱状体の側面部の空間が狭くなり、樹脂が侵入することができる空間の大きさが不足する。また、このような柱状体の断面の面積の合計の平均値としては、柱状体の強度と樹脂が侵入する空間を確保するという観点から、16000〜104000nmが好ましく、32000〜80000nmがより好ましい。
さらに、前記多孔質表面層においては、無作為に抽出した400nm角の視野内における前記柱状体の数の平均値が10〜430個である必要がある。前記柱状体の数の平均値が前記下限未満になると、樹脂層に嵌入する(喰い込む)表面積が不足し、他方、前記上限を超えると、樹脂が侵入することができる空間が不足する。また、このような柱状体の数の平均値としては、樹脂層に嵌入する(喰い込む)表面積と樹脂が侵入する空間を確保するという観点から、50〜350個が好ましく、80〜250個がより好ましい。
また、前記多孔質表面層においては、無作為に抽出した400nm角の視野内における前記柱状体の断面の周囲の長さの合計の平均値が1000〜27000nmであることが好ましく、3000〜23000nmであることがより好ましく、5000〜20000nmであることが特に好ましい。前記柱状体の断面の周囲の長さの合計の平均値が前記下限未満になると、柱状体が細くなりすぎ、柱状体自体の強度が不足する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、柱状体の側面部の空間が狭くなり、樹脂が侵入することができる空間の大きさが不足する傾向にある。
なお、多孔質表面層の柱状体の数の平均値、柱状体の断面の面積の合計の平均値、柱状体の断面の周囲の長さの合計の平均値は、特表2016−522310号公報に記載の方法に準拠して、以下のように画像解析を行い、測定することができる。
すなわち、先ず、SEM又はTEMにより、酸化アルミニウム被膜の多孔質表面層の横断面を撮影する。得られたSEM像又はTEM像についてノイズを除去した後、得られた画像について二値化処理を行う。具体的には、ノイズ除去後の画像において、柱状体部分とその他の部分を区別するための輝度値(閾値)を設定し、この閾値以上の輝度値を有する領域を抽出して二値画像を得る。次に、得られた二値画像について、抽出した前記領域の分離処理を行う。この分離処理は、例えば、Watershed細分化処理により行うことができる。具体的には、前記二値画像に基づいて、ユークリッド距離地図(EDM)を作成し、極限浸食点(UEPs、EDMの極大又は頂点)を見つけ、各UEPを可能な限り、そのUEPの領域の端(縁)に到達するまで、又は、他(隣)の(成長している)UEPの領域の縁に到着するまで拡張し、抽出した前記領域を分離する。この分離した前記領域の中から、柱状体の断面として認識できる最小の大きさを決定し、この最小の大きさ以上の領域を柱状体領域として抽出する。
このようにして抽出した柱状体領域の数、面積、周囲の長さを求めることによって、多孔質表面層の柱状体の数の平均値、柱状体の断面の面積の合計の平均値、柱状体の断面の周囲の長さを得ることができる。
具体的には、多孔質表面層の横断面のSEM像又はTEM像において、400nm角の視野を無作為に抽出し、この視野内において、前記方法にしたがって柱状体領域を抽出する。この抽出した柱状体領域をカウントし、これを400nm角の視野内における柱状体の数とする。この柱状体の数を、無作為に抽出した5箇所の400nm角の視野において求め、それらの平均値を400nm角の視野内における柱状体の数の平均値とする。
また、抽出した各柱状体領域の面積を求め、これを柱状体の断面の面積として400nm角の視野内における柱状体の断面の面積の合計を求める。この柱状体の断面の面積の合計を、無作為に抽出した5箇所の400nm角の視野において求め、それらの平均値を400nm角の視野内における柱状体の断面の面積の合計の平均値とする。
さらに、抽出した柱状体領域の周囲の長さを求め、これを柱状体の断面の周囲の長さとして400nm角の視野内における柱状体の断面の周囲の長さの合計を求める。この柱状体の断面の周囲の長さの合計を、無作為に抽出した5箇所の400nm角の視野において求め、それらの平均値を400nm角の視野内における柱状体の断面の周囲の長さの合計の平均値とする。
なお、このような画像解析は、一つの画像解析ソフトによって、又は複数の画像解析ソフトや各種解析処理ソフトを組合せることによって行うことができる。このような画像解析ソフトとしては、例えば、ImageJ(アメリカ国立衛生研究所にて開発された画像処理ソフトウェア)等が挙げられる。
また、本発明のケイ素含有アルミニウム合金樹脂複合材料においては、前記酸化アルミニウム被膜が、前記多孔質表面層と前記Si含有Al合金基材との間に、微細凹部を有する多孔質中間層を更に有するものであることが好ましい。これにより、Si含有Al合金基材と樹脂とがより強固に接合される傾向にある。また、このような多孔質中間層は、1層からなるものであっても、2層以上からなるものであってもよい。
このような多孔質中間層においては、前記微細凹部の平均細孔径が5〜50nmであることが好ましく、5〜30nmであることがより好ましく、10〜20nmであることが特に好ましい。微細凹部の平均細孔径が前記下限未満になると、樹脂の侵入によるアンカー効果が十分に得られない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、多孔質中間層の均質性が低下する傾向にある。
また、前記多孔質中間層においては、前記微細凹部の平均細孔中心間距離が5〜90nmであることが好ましく、10〜70nmであることがより好ましく、20〜50nmであることが特に好ましい。微細凹部の平均細孔中心間距離が前記下限未満になると、凹部細孔を形成する均質な壁面が得られにくくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、多孔質中間層表面の単位面積当たりの細孔数が減少し、樹脂が侵入することができる空間の大きさが不足する傾向にある。
なお、多孔質中間層の微細凹部の平均細孔径及び平均細孔中心間距離は、特表2016−522310号公報に記載の方法に準拠して、以下のように測定することができる。すなわち、SEM又はTEMにより、酸化アルミニウム被膜の多孔質中間層の表面のSEM像を撮影する。得られたSEM像又はTEM像において、細孔を無作為に抽出し、この細孔の断面における最大長さを測定し、これを細孔直径とする。この細孔直径を無作為に抽出した5個の細孔において測定し、それらの平均値を微細凹部の平均細孔径とする。
また、無作為に抽出した細孔の中心と、この細孔に最も近接した細孔の中心との間の距離を測定し、これを細孔中心間距離とする。この細孔中心間距離を無作為に抽出した5個の細孔において測定し、それらの平均値を微細凹部の平均細孔中心間距離とする。
また、前記多孔質中間層の平均厚さとしては、300nm〜20μmが好ましく、300nm〜15μmがより好ましく、500nm〜10μmが特に好ましい。多孔質中間層の平均厚さが前記下限未満になると、均質な多孔質中間層が得られにくくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、多孔質中間層を形成するための陽極酸化処理時間が長くなり、製造コストが増大する傾向にある。
なお、多孔質中間層の平均厚さは、特表2016−522310号公報に記載の方法に準拠して、以下のように測定することができる。すなわち、SEM又はTEMにより、酸化アルミニウム被膜の多孔質中間層の縦断面を撮影する。得られたSEM像又はTEM像に基づいて、多孔質中間層の上端(多孔質表面層と多孔質中間層との界面(多孔質表面層がない場合には多孔質中間層の表面))と下端(多孔質中間層とアルミニウム基材との界面)との距離を測定する。この距離を無作為に抽出した5箇所について測定し、その平均値を多孔質中間層の平均厚さとする。
また、前記多孔質中間層における微細凹部の形態としては、目的とするケイ素含有アルミニウム合金樹脂複合材料の性能(特に接合強度、接合耐久性)を実現するために必要な多孔質中間体の性能を発現するものであれば特に制限はなく、例えば、Si含有Al合金基材の表面に対して垂直な方向や一定の角度を有する方向に成長した配向性を有するもの、Si含有Al合金基材の表面に対してランダムな方向に成長した配向性のないもの(例えば、アリの巣状構造、3次元的に網目状に凹部孔が絡み合うような3次元網目状構造、ランダム形状の構造)、ストレートで配向性のないもの等が挙げられる。
(シランカップリング剤)
本発明に用いられるシランカップリング剤としては特に制限はなく、アミノ系、エポキシ系、メタクリル系、アクリル系、メルカプト系等の各種シランカップリング剤が挙げられる。これらのうち、樹脂との親和性が高いという観点から、アミノ系シランカップリング剤及びメルカプト系シランカップリング剤が好ましく、水溶液中で非常に安定しているという観点から、アミノ系シランカップリング剤がより好ましい。
(樹脂)
本発明に用いられる樹脂としては、射出成形や熱プレス成形等の一般的な樹脂成形に利用できる樹脂であることが好ましいが、特に制限はなく、例えば、汎用プラスチック、汎用エンジニアリングプラスチック、スーパーエンジニアリングプラスチックといった熱可塑性樹脂や、熱硬化性樹脂が挙げられ、各種用途に応じて適宜選択することができる。このような熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂は1種を単独で用いても2種以上を併用しでもよい。
前記汎用プラスチックとしては、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、メチルメタクリレート−アクリロニトリル−スチレン共重合体(MAS樹脂)、メチルメタクリレート−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(MABS樹脂)、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS樹脂)といった芳香族ビニル系樹脂;ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメタクリル酸、これらの共重合体、アクリルゴムといったアクリル系樹脂;ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル−メチルアクリレート共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体といったシアン化ビニル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、エチレン−プロピレン−ジエンモノマーゴム、エチレン−プロピレンゴムといったポリオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンといったポリ塩化ビニル系樹脂;ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。
前記汎用エンジニアリングプラスチックとしては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12といったポリアミド;ポリアセタール(ポリオキシメチレン)、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、超高分子量ポリエチレン等が挙げられる。
前記スーパーエンジニアリングプラスチックとしては、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィドといったポリアリーレンスルフィド、、ポリアリレート、非晶ポリアリレート、熱可塑性ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、熱可塑性ポリイミド、液晶ポリエステルといった液晶ポリマー;ポリテトラフロロエチレン、フッ素化エチレンプロピレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニルといったフッ素樹脂等が挙げられる。
また、その他の熱可塑性樹脂としては、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、酸または酸無水物変性ポリオレフィン系樹脂、エポキシ変性ポリオレフィン樹脂、環状ポリオレフィン、酸または酸無水物変性アクリル系エラストマー、エポキシ変性アクリルエラストマー、シリコーンゴム、フッ素ゴム、天然ゴム、イミド基含有ビニル系樹脂、ポリ1,4−シクロヘキサンジメチルテレフタレート、ポリ乳酸、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルアミド等が挙げられる。
前記熱硬化性樹脂としては、特に制限はないが、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹指、熱硬化性ポリアミドイミド、熱硬化性シリコーン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ユリア樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。
(ケイ素含有アルミニウム合金樹脂複合材料)
本発明のケイ素含有アルミニウム合金樹脂複合材料は、表面に前記酸化アルミニウム被膜を有するSi含有Al合金基材と、前記酸化アルミニウム被膜と前記シランカップリング剤とを介して接合している前記樹脂とを備えるものである。
本発明のケイ素含有アルミニウム合金樹脂複合材料においては、Si含有Al合金基材と樹脂とが酸化アルミニウム被膜及びシランカップリング剤を介して接合していればよく、Si含有Al合金基材や樹脂に、それぞれ他の層(例えば、他の樹脂層や無機層等)が積層されていてもよい。このような他の層の構成は特に制限されず、ケイ素含有アルミニウム合金樹脂複合材料の用途等に応じて設計を適宜変更できる。
また、本発明の金属樹脂複合材料における前記樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲において、各種添加剤を配合することができる。添加剤を配合することによって、樹脂の弾性率の向上(炭素繊維、ガラス繊維といった無機フィラーによる効果)、極性変化(ゴム、エラストマー、他の樹脂による効果)、劣化抑制、分解反応の遅延化(酸化防止剤等による効果)等の効果により、接合強度の更なる向上、樹脂−金属界面の濡れ性の向上、界面接着性の更なる向上、長期安定性(耐熱性、耐湿熱性、耐水性等)の向上等が期待できる。
このような添加剤としては特に制限はないが、例えば、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解抑制剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、離型剤、結晶核剤、粘度調整剤、着色剤、染料、抗菌剤、シランカップリング剤等の表面処理剤;グラファイト、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、カーボンナノプレートレット、グラフエン、数層グラフエン、ナノグラファイト(グラフェンナノリボン等)、ナノグラフェン、カーボンナノホーン、カーボンナノコーン、カーボンナノコイル、フラーレンといったカーボン系ナノフィラー、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維といった合成繊維、セルロース、キチン、キトサンといった天然繊維等の繊維状物質;雲母(マイカ)鉱物およびカオリン鉱物といった層状ケイ酸塩、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、酸化チタン、シリカ、ウイスカー、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ダイヤモンド、酸化亜鉛といった無機充填剤等が挙げられる。なお、これらの添加剤を多量に加えると衝撃強度の低下を招くおそれがあるので注意を要する。また、ゴム、エラストマー、軟質樹脂成分及び/又は可塑剤等の有機系添加剤を加えてもよい。ただし、有機系添加剤を多量に加えると高温剛性率及び荷重たわみ温度の低下を招くおそれがあるので注意を要する。
このような添加剤の種類は特に限定されないが、樹脂との相容性が極端に低下しない成分、もしくは相溶性が低下しても化学的変性や相容化剤の添加により相容性が改善される成分が好ましい。また、このような添加剤は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
また、このような添加剤の配合方法としては、樹脂中に添加剤を分散させることができる方法であれば特に制限はなく、例えば、溶媒中で樹脂と添加剤とを混合する方法、一軸または多軸のベン卜を有する押出機、ゴムロール機、またはバンバリーミキサー等を用いて、樹脂と添加剤とを溶融混練する方法等、従来公知の方法を採用することができる。また、樹脂として低粘度の熱硬化性樹脂を用いる場合には自公転ミキサーを用いて複合化処理を施すことにより混合することも可能である。
〔ケイ素含有アルミニウム合金樹脂複合材料の製造方法〕
次に、本発明のケイ素含有アルミニウム合金樹脂複合材料の製造方法について説明する。本発明のケイ素含有アルミニウム合金樹脂複合材料の製造方法は、前記Si含有Al合金基材に陽極酸化処理を施して、所定の条件を満たす柱状体が分散配置されてなる前記多孔質表面層を備える酸化アルミニウム被膜(好ましくは、前記多孔質表面層と前記Si含有Al合金基材との間に、所定の条件を満たす微細凹部を有する多孔質中間層を更に備える酸化アルミニウム被膜)を、前記Si含有Al合金基材の表面に形成する陽極酸化処理工程と、
前記多孔質表面層を有する酸化アルミニウム被膜にシランカップリング剤を用いて表面処理を施すシランカップリング処理工程と、
前記多孔質表面層を有する酸化アルミニウム被膜及び前記シランカップリング剤を介して前記ケイ素含有アルミニウム合金基材と樹脂とを接合する接合工程と、
を含む方法である。
(陽極酸化処理工程)
本発明にかかる陽極酸化処理工程において、陽極酸化処理方法としては、前記Si含有Al合金基材の表面に、所定の条件を満たす柱状体が分散配置されてなる前記多孔質表面層を有する酸化アルミニウム被膜(好ましくは、前記多孔質表面層と前記Si含有Al合金基材との間に、所定の条件を満たす微細凹部を有する多孔質中間層を更に備える酸化アルミニウム被膜)が形成される方法であれば特に制限はないが、前記Si含有Al合金基材の表面に対して複数回の陽極酸化処理を施す方法が好ましい。例えば、前記Si含有Al合金基材を陽極、不溶性電極を陰極として、電解溶液中で電気分解を行い(電解法)、前記Si含有Al合金基材の表面に複数回の陽極酸化処理を施すことによって、前記多孔質表面層を(好ましくは、前記多孔質中間層を更に)有する酸化アルミニウム被膜(陽極酸化被膜)を形成させることができる。
また、本発明にかかる陽極酸化処理工程において、複数回の陽極酸化処理のそれぞれについては、公知の陽極酸化処理を採用することができる。このような陽極酸化処理において実施する電解法、この電解法で使用する陰極及び電解溶液、この電解溶液の濃度及び温度、電解法における電流密度、電圧、電解処理時間等の電解処理条件は特に制限はなく、目的とする酸化アルミニウム被膜の形状及び構造等、すなわち、目的とする多孔質表面層の形状及び構造等、目的とする多孔質中間層の形状及び構造等を形成することができる陽極酸化処理の方法や条件を適宜選択することができる。
前記電解法としては特に制限はなく、例えば、サイクリック法、定電流法、定電位法、パルス定電位法、又はパルス定電流法等を採用することができる。前記陰極としては電解溶液と反応したり、導電性の著しく低いものでない限り、特に制限はなく、例えば、白金、鉛、ステンレス、カーボン等からなる不溶性導電板を用いることができ、中でも、白金板が好ましい。
前記電解溶液としては特に制限はなく、例えば、燐酸、クロム酸、シュウ酸、硫酸等の酸性溶液が挙げられ、中でも、シュウ酸溶液、硫酸溶液が好ましい。これらの酸性溶液は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。このような電解溶液の濃度としては、使用する電解溶液の種類や形成する多孔質表面層及び多孔質中間層の形状や構造等、さらに他の条件に応じて適宜選択されるが、例えば、0.01〜10mol/Lが好ましく、0.01〜1mol/Lがより好ましい。また、電解溶液の温度としては−10〜80℃が好ましく、−10〜60℃がより好ましい。前記範囲内の温度で陽極酸化処理を実施することにより、前記Si含有Al合金基材の表面に前記多孔質表面層及び多孔質中間層を容易に形成することができる。一方、電解溶液の温度が前記下限未満になると、所定の条件を満たす柱状体からなる前記多孔質表面層及び前記多孔質中間層が形成しにくくなる傾向にあり、他方、前記上限を超える場合も、生成した酸化アルミニウム被膜が再度溶解するため、所定の条件を満たす柱状体からなる前記多孔質表面層及び前記多孔質中間層が形成しにくくなる傾向にある。
このような電解法における電流密度としては特に制限はなく、例えば、0.002〜2.5A/dmが好ましく、0.002〜1.0A/dmがより好ましく、0.002〜0.5A/dmが特に好ましい。電流密度が前記下限未満になると、多孔質表面層及び多孔質中間層の形成速度が非常に遅くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、生成した酸化アルミニウム被膜が再度溶解するため、所定の条件を満たす柱状体からなる前記多孔質表面層及び前記多孔質中間層が形成しにくくなる傾向にある。
また、前記電解法における電圧としては1.0〜30Vが好ましく、1.0〜20Vがより好ましく、1.0〜10Vが特に好ましい。電解処理時間としては30秒間〜100分間が好ましく、30秒間〜60分間がより好ましく、30秒間〜30分間が特に好ましい。
本発明にかかる陽極酸化処理工程において、複数回の陽極酸化処理を行う場合、各回の処理条件を、〔2回目以降の陽極酸化処理により形成される層の厚さ〕≧〔1回目の陽極酸化処理により形成される層の厚さ〕を満たすように設定することが好ましく、〔2回目以降の陽極酸化の処理条件(電流密度及び/又は電圧)〕>〔1回目以降の陽極酸化の処理条件(電流密度及び/又は電圧)〕となるように設定することがより好ましく、〔2回目以降の陽極酸化の処理条件(電流密度及び/又は電圧)〕が〔1回目以降の陽極酸化の処理条件(電流密度及び/又は電圧)〕の1〜5倍となるように設定することが特に好ましい。これにより、所定の条件を満たす柱状体からなる前記多孔質表面層を有する酸化アルミニウム被膜(好ましくは、前記多孔質表面層と前記Si含有Al合金基材との間に、所定の条件を満たす微細凹部を有する多孔質中間層を更に備える酸化アルミニウム被膜)を前記Si含有Al合金基材の表面に容易に形成することができる。
さらに、前記1回目の陽極酸化処理における条件としては、電解溶液の濃度が0.01〜10mol/L(より好ましくは0.01〜1mol/L)であり、電解溶液の温度が−10〜60℃であり、電流密度が0.002〜1.0A/dm(より好ましくは0.002〜0.5A/dm)であり、電圧が1.0〜30V(より好ましくは1.0〜10V)であり、電解処理時間が30秒間〜100分間(より好ましくは30秒間〜30分間)であることが好ましく、前記2回目以降の、陽極酸化処理における条件としては、電解溶液の濃度が0.01〜10mol/L(より好ましくは0.01〜1mol/L)であり、電解溶液の温度が−10〜60℃であり、電流密度が0.002〜1.0A/dm(より好ましくは0.002〜0.5A/dm)であり、電圧が1.0〜30V(より好ましくは1.0〜20V)であり、電解処理時間が30秒間〜100分間(より好ましくは30秒間〜60分間)であることが好ましい。これにより、所定の条件を満たす柱状体からなる前記多孔質表面層を有する酸化アルミニウム被膜(好ましくは、前記多孔質表面層と前記Si含有Al合金基材との間に、所定の条件を満たす微細凹部を有する多孔質中間層を更に備える酸化アルミニウム被膜)を前記Si含有Al合金基材の表面に更に容易に形成することができる。
本発明のケイ素含有アルミニウム合金樹脂複合材料の製造方法においては、このような陽極酸化処理の前に、従来の陽極酸化処理の前に通常行われる予備処理(バフ研磨処理、ヘアーライン処理、梨地・模様付処理等)や前処理(脱脂処理、エッチング処理、電解研磨処理等の表面の清浄・溶解処理)を前記Si含有Al合金基材の処理面に適宜施すことができる。さらに、前記陽極酸化処理の後に、従来の陽極酸化処理の後に通常行われる後処理(水洗処理、封孔処理等)を適宜行うこともできる。また、前記陽極酸化処理の後に、リン酸溶液を用いて酸化アルミニウム被膜を処理してもよい。なお、本発明のケイ素含有アルミニウム合金樹脂複合材料の製造方法においては、後述するシランカップリング処理を行うため、前記Si含有Al合金基材の表面のSi含有量を低減するためのデスマット処理を行う必要はない。
前記脱脂処理は、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、界面活性剤等を含む通常の脱脂浴を用いて行うことができ、処理条件としては、浸漬温度が15〜55℃であることが好ましく、25〜40℃であることがより好ましく、浸漬時間が1〜10分間であることが好ましく、3〜6分間であることがより好ましい。
前記エッチング処理は、例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、炭酸ナトリウム(NaCO)等のアルカリ水溶液等を用いて行うことができ、処理条件としては、アルカリ水溶液の濃度が20〜200g/Lであることが好ましく、50〜150g/Lであることがより好ましく、浸漬温度が30〜70℃であることが好ましく、40〜60℃であることがより好ましく、浸漬時間が0.5〜5分間であることが好ましく、1〜3分間であることがより好ましい。また、塩酸、硝酸、硫酸、弗酸等の酸水溶液を用いて酸性エッチング処理を行うこともでき、処理条件としては、酸水溶液の濃度が20〜200g/Lであることが好ましく、浸漬温度が30〜70℃であることが好ましく、40〜60℃であることがより好ましく、浸漬時間が0.5〜5分間であることが好ましく、1〜3分間であることがより好ましい。
前記電解研磨処理は、例えば、リン酸、リン酸−硫酸、リン酸−硫酸−クロム酸、過塩素酸−無水酢酸、過塩素酸−エタノール、硝酸等の水溶液を用いて行うことができ、処理条件としては、電流密度が1〜10A/dmであることが好ましく、浴電圧が20〜30Vであることが好ましく、処理時間が1〜5分間であることが好ましい。
前記水洗処理においては、例えば、酸化アルミニウム被膜が形成された前記Si含有Al合金基材を温度5〜60℃(より好ましくは10〜50℃)で水洗することが好ましい。より具体的には、常温の水道水で複数回洗浄した後、50℃程度の水で30秒程度洗浄することが好ましい。
このように、所定の条件を満たす柱状体からなる前記多孔質表面層を有する酸化アルミニウム被膜を前記Si含有Al合金基材の表面に形成することによって、前記Si含有Al合金基材の表面と樹脂との接触(密着)が容易になるとともに、前記多孔質表面層に接触する樹脂が前記柱状体に絡まり、酸化アルミニウム被膜の微細凹部への侵入が促進され、さらに、前記多孔質表面層の微細な柱状体が樹脂層に嵌入する(喰いこむ)ため、前記Si含有Al合金基材と樹脂とを簡便かつ強固に接合することが可能となる。
(シランカップリング処理工程)
本発明にかかるシランカップリング処理工程において、シランカップリング処理方法としては特に制限はなく、従来公知の方法を採用することができる。前記シランカップリング処理方法に用いられるシランカップリング剤についても特に制限はなく、アミノ系、エポキシ系、メタクリル系、アクリル系、メルカプト系等の公知のシランカップリング剤が挙げられ、中でも、樹脂との親和性が高いという観点から、アミノ系シランカップリング剤及びメルカプト系シランカップリング剤が好ましく、水溶液中で非常に安定しているという観点から、アミノ系シランカップリング剤がより好ましい。
このようなシランカップリング剤は、通常、溶液(好ましくは水溶液)の状態で用いられ、例えば、前記Si含有Al合金基材の酸化アルミニウム被膜表面にシランカップリング剤溶液を塗布したり、前記酸化アルミニウム被膜を有するSi含有Al合金基材をシランカップリング剤溶液に浸漬したりすることによって、前記酸化アルミニウム被膜の表面にシランカップリング剤を付着させる。このとき、シランカップリング剤は、前記Si含有Al合金基材表面のSiが存在する部分、すなわち、前記酸化アルミニウム被膜の前記柱状体が形成されていない部分に付着し、このシランカップリング剤を介して前記酸化アルミニウム被膜の前記柱状体が形成されていない部分と樹脂とが強固に密着するため、前記Si含有Al合金基材と樹脂とを簡便にかつ強固に接合することができ、さらに、その耐久性も向上する。
前記シランカップリング剤溶液の濃度としては特に制限はないが、例えば、前記シランカップリング剤溶液に前記Si含有Al合金基材を浸漬する場合には、前記Si含有Al合金基材と樹脂とをより強固に接合できるという観点から、0.5〜5質量%が好ましく、1〜3質量%がより好ましく、1.5〜2.5質量%が特に好ましい。
(接合工程)
本発明にかかる接合工程において、前記Si含有Al合金基材と樹脂とを接合する方法としては、前記陽極酸化処理により形成された前記多孔質表面層を有する酸化アルミニウム被膜と前記シランカップリング処理により前記酸化アルミニウム被膜表面に付着したシランカップリング剤とを介して、前記Si含有Al合金基材と樹脂とを接合することができる方法であれば特に制限はなく、例えば、射出成形法、圧縮成形法、溶融圧着法、加圧プレス法等の樹脂を成形する公知の方法を適宜採用することができ、中でも、射出成形法が好ましい。
前記射出成形法としては、例えば、前記シランカップリング処理された酸化アルミニウム被膜を有する前記Si含有Al合金基材を所定の射出成形用金型に装着し、次いで、前記酸化アルミニウム被膜の多孔質表面層の表面の所望の領域に溶融状態の樹脂を射出し、その後、金型を冷却して樹脂を凝固させることによって、前記Si含有Al合金基材と樹脂とを接合する方法が挙げられる。射出時の樹脂温度としては、前記多孔質表面層表面の樹脂が流動し得る温度以上であれば特に制限はない。また、その他の射出条件についても各樹脂に応じた公知の条件を採用することができる。
また、他の射出成形法としては、例えば、前記シランカップリング処理された酸化アルミニウム被膜を有する前記Si含有Al合金基材をインサート部品として射出成形金型にインサートして金型を閉じ、次いで、高温高圧下において、溶融した樹脂を金型に射出してインサート成形することによって、前記Si含有Al合金基材と樹脂とを接合し、その後、金型を開いて離型する方法が挙げられる。成形圧力や射出速度等の条件は、使用する射出成形機、樹脂の種類及び成形する形状によって適宜設定することができる。
前記溶融圧着法としては、例えば、樹脂を射出成形や押出成形等の公知の成形方法により所定の形状に予備成形し、この予備成形された樹脂材料と、前記シランカップリング処理された酸化アルミニウム被膜を有する前記Si含有Al合金基材とを、前記酸化アルミニウム被膜の多孔質表面層の表面の所望の位置で重ね合わせ、その後、加熱しながらプレス成形して前記酸化アルミニウム被膜を有するSi含有Al合金基材に樹脂材料を溶融圧着させ、この溶融圧着されたプレス成形品を冷却することによって、前記Si含有Al合金基材と樹脂とを接合する方法が挙げられる。溶融圧着時の加熱温度としては、前記多孔質表面層表面の樹脂が流動し得る温度以上であれば特に制限はない。また、その他の溶融圧着条件についても各樹脂に応じた公知の条件を採用することができる。
前記加圧プレス法としては、例えば、前記シランカップリング処理された酸化アルミニウム被膜を有する前記Si含有Al合金基材の前記酸化アルミニウム被膜の多孔質表面層の表面の所望の位置に樹脂を配置して加圧(プレス)する方法が挙げられる。加圧(プレス)時の圧力としては特に制限はないが、前記Si含有Al合金基材と樹脂とをより強固に接合できるという観点から、10〜3000kPaが好ましく、100〜1000kPaがより好ましい。このように、前記加圧プレス法は、高圧でのプレスが不要であり、簡便な方法として有用である。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、多孔質表面層の柱状体の平均高さ、柱状体の数の平均値、柱状体断面の面積の合計の平均値、柱状体断面の周囲の長さの合計の平均値、並びに、多孔質中間層の平均厚さ、微細凹部の平均細孔径及び平均細孔中心間距離は、特表2016−522310号公報に記載の方法に準拠して、以下のように測定した。
<多孔質表面層の柱状体の平均高さ>
酸化アルミニウム被膜の多孔質表面層の縦断面のSEM像を撮影した。得られたSEM像に基づいて、多孔質表面層の上端(多孔質表面層の表面)と下端(多孔質表面層と多孔質中間層(多孔質中間層がない場合にはアルミニウム基材)との界面)との距離の最大値と最小値を測定した。この最大値と最小値の算術平均値を算出し、得られた算術平均値と前記最小値との差が標準偏差σの3倍(3σ)となる正規分布を求めた。この正規分布における平均値を多孔質表面層の平均高さ、すなわち、柱状体の平均高さとした。
<多孔質表面層の柱状体の数の平均値、柱状体断面の面積の合計の平均値、柱状体断面の周囲の長さの合計の平均値>
酸化アルミニウム被膜の多孔質表面層の横断面のSEM像(8bit画像、グレースケール)を撮影した。得られたSEM像について、ノイズを除去した後、画像解析ソフトImageJ1.47を用いて二値化処理を行なった。すなわち、前記SEM像を目視して柱状体と認識できる境目の輝度値(閾値)として170を選択し、前記SEM像において輝度値が170以上の領域を抽出して二値画像を作成した。
この二値画像について、Watershed細分化処理を行い、抽出した前記領域を分離した。すなわち、前記二値画像に基づいて、ユークリッド距離地図(EDM)を作成し、極限浸食点(UEPs)を見つけ、各UEPを可能な限り、そのUEPの領域の端(縁)に到達するまで、又は、他(隣)の(成長している)UEPの領域の縁に到着するまで拡張し、抽出した前記領域を分離した。この分離した前記領域の中から、柱状体の断面として認識できる最小の大きさを決定し、この最小の大きさ以上の領域を柱状体領域とした。
多孔質表面層の横断面のSEM像において、400nm角の視野を無作為に抽出し、この視野内において、前記方法にしたがって柱状体領域を抽出した。この抽出した柱状体領域をカウントし、これを400nm角の視野内における柱状体の数とした。この柱状体の数を、無作為に抽出した5箇所の400nm角の視野において求め、それらの平均値を400nm角の視野内における柱状体の数の平均値とした。
また、抽出した各柱状体領域の面積を、画像解析ソフトImageJ1.47を用いて求め、これを柱状体の断面の面積として400nm角の視野内における柱状体の断面の面積の合計を求めた。この柱状体の断面の面積の合計を、無作為に抽出した5箇所の400nm角の視野において求め、それらの平均値を400nm角の視野内における柱状体の断面の面積の合計の平均値とした。
さらに、抽出した柱状体領域の周囲の長さを、画像解析ソフトImageJ1.47を用いて求め、これを柱状体の断面の周囲の長さとして400nm角の視野内における柱状体の断面の周囲の長さの合計を求めた。この柱状体の断面の周囲の長さの合計を、無作為に抽出した5箇所の400nm角の視野において求め、それらの平均値を400nm角の視野内における柱状体の断面の周囲の長さの合計の平均値とした。
<多孔質中間層の平均厚さ>
酸化アルミニウム被膜の多孔質中間層の縦断面のSEM像を撮影した。得られたSEM像に基づいて、多孔質中間層の上端(多孔質表面層と多孔質中間層との界面(多孔質表面層がない場合には多孔質中間層の表面))と下端(多孔質中間層とアルミニウム基材との界面)との距離を測定した。この距離を無作為に抽出した5箇所について測定し、その平均値を多孔質中間層の平均厚さとした。
<多孔質中間層の微細凹部の平均細孔径及び平均細孔中心間距離>
ウルトラミクロトームを用いて、多孔質中間層の表面が露出した薄片試料を作製した。この薄片試料を用いて、酸化アルミニウム被膜の多孔質中間層の表面のSEM像を撮影した。得られたSEM像において、細孔を無作為に抽出し、この細孔の断面における最大長さを測定し、これを細孔直径とした。この細孔直径を無作為に抽出した5個の細孔において測定し、それらの平均値を微細凹部の平均細孔径とした。
また、無作為に抽出した細孔の中心と、この細孔に最も近接した細孔の中心との間の距離を測定し、これを細孔中心間距離とした。この細孔中心間距離を無作為に抽出した5個の細孔において測定し、それらの平均値を微細凹部の平均細孔中心間距離とした。
(実施例1)
〔脱脂処理工程〕
Si含有Al合金基材としてアルミニウムダイカスト材(JIS規格、ADC12、Si含有量9.6〜12.0質量%)を使用した。このSi含有Al合金基材(18mm×45mm×1.5mm厚)の表面をアセトンで脱脂処理した後、さらに、ヘキサンで脱脂処理した。
〔陽極酸化処理工程〕
特表2016−522310号公報(特許文献2)に記載の方法に従って、脱脂処理後の前記Si含有Al合金基材に陽極酸化処理を施した。すなわち、電解液として5〜10質量%の硫酸(和光純薬工業株式会社製、純度96〜98%)水溶液を用い、脱脂処理後の前記Si含有Al合金基材を陽極、白金板を陰極(不溶性電極)とし、電圧を10〜5Vの範囲内、処理時間を5〜15分間の範囲内で調整して2回以上の陽極酸化処理を行い、前記Si含有Al合金基材の表面に所望の酸化アルミニウム被膜を形成した。その後、この酸化アルミニウム被膜を有するSi含有Al合金基材をイオン交換水で洗浄し、乾燥した。
〔リン酸処理工程〕
前記酸化アルミニウム被膜を有するSi含有Al合金基材をリン酸水溶液に浸漬し、室温で5分間攪拌した後、イオン交換水で洗浄した。この操作を複数回繰り返した。得られた酸化アルミニウム被膜を有するSi含有Al合金基材について、前記方法にしたがって、多孔質表面層の柱状体の平均高さ、柱状体の数の平均値、柱状体断面の面積の平均値、柱状体断面の周囲の長さの合計の平均値、多孔質中間層の平均厚さ、微細凹部の平均細孔径及び平均細孔中心間距離を測定した。その結果を表1に示す。
〔シランカップリング処理工程〕
3−アミノプロピルトリメトキシシランとイオン交換水とを混合して、濃度1質量%のシランカップリング剤水溶液を調製した。リン酸水溶液で表面処理した前記酸化アルミニウム被膜を有するSi含有Al合金基材を、前記シランカップリング剤水溶液に3分間浸漬させた後、風乾し、さらに、130℃の真空乾燥機中で30分間加熱して焼結させた。
〔接合工程〕
シランカップリング剤で表面処理した前記酸化アルミニウム被膜を有するSi含有Al合金基材を射出成形用金型に装着した。この金型を射出成形装置(株式会社新興セルビック製の小型射出成形機「C.Mobile」)に装着し、樹脂温度330℃、金型温度120〜150℃、保持時間30秒間の条件でポリフェニレンスルフィド(東ソー株式会社製のPPS樹脂「サスティール SGX120」、GF20%、融点281℃)を前記Si含有Al合金基材の酸化アルミニウム被膜表面上に射出して、前記Si含有Al合金基材(18mm×45mm×1.5mm厚)と前記PPS樹脂(10mm×45mm×3mm厚)とが接合(重なり部分10mm×5mm)した複合材料を得た。
(実施例2)
シランカップリング剤水溶液中の3−アミノプロピルトリメトキシシランの濃度を2質量%に変更した以外は実施例1と同様にして、前記Si含有Al合金基材と前記PPS樹脂とが接合した複合材料を作製した。
(実施例3)
シランカップリング剤水溶液中の3−アミノプロピルトリメトキシシランの濃度を5質量%に変更した以外は実施例1と同様にして、前記Si含有Al合金基材と前記PPS樹脂とが接合した複合材料を作製した。
(比較例1)
シランカップリング処理を施さなかった以外は実施例1と同様にして、前記Si含有Al合金基材と前記PPS樹脂とが接合した複合材料を作製した。
(比較例2)
電圧10V、処理時間15分間の条件で1回の陽極酸化処理を行なった以外は実施例1と同様にして、酸化アルミニウム被膜を有するSi含有Al合金基材を作製した。得られた酸化アルミニウム被膜を有するSi含有Al合金基材について、前記方法にしたがって、多孔質表面層の柱状体の平均高さ、柱状体の数の平均値、柱状体断面の面積の平均値、柱状体断面の周囲の長さの合計の平均値、多孔質中間層の平均厚さ、微細凹部の平均細孔径及び平均細孔中心間距離を測定した。その結果を表1に示す。
次に、この酸化アルミニウム被膜を有するSi含有Al合金基材を用い、シランカップリング剤水溶液中の3−アミノプロピルトリメトキシシランの濃度を2質量%に変更した以外は実施例1と同様にして、前記Si含有Al合金基材と前記PPS樹脂とが接合した複合材料を作製した。
(参考例1)
Si含有Al合金基材の代わりに、Al純度99.5質量%以上のアルミニウム基材(JIS規格、A1050、Si含有量0.25質量%以下、18mm×45mm×1.5mm厚。以下、「Al基材」と略す。)を用いた以外は実施例1と同様にして、酸化アルミニウム被膜を有するAl基材を作製した。得られた酸化アルミニウム被膜を有するAl基材について、前記方法にしたがって、多孔質表面層の柱状体の平均高さ、柱状体の数の平均値、柱状体断面の面積の平均値、柱状体断面の周囲の長さの合計の平均値、多孔質中間層の平均厚さ、微細凹部の平均細孔径及び平均細孔中心間距離を測定した。その結果を表1に示す。
次に、この酸化アルミニウム被膜を有するAl基材を用い、シランカップリング処理を施さなかった以外は実施例1と同様にして、前記Al基材と前記PPS樹脂とが接合した複合材料を作製した。
<引張せん断強度測定>
得られた複合材料について、インストロン型万能試験機(インストロン社製「Instron5566」)を用いてチャック間距離50mm、引張速度10mm/分、ロードセル10kNの条件で引張せん断試験(n=3)を行い、引張せん断強度を測定した。その結果を表2及び図1に示す。
表2及び図1に示したように、所定の柱状体が分散配置されてなる多孔質表面層を有する酸化アルミニウム被膜であって、その表面がシランカップリング処理された酸化アルミニウム被膜を表面に備えるSi含有Al基材(実施例1〜3)は、樹脂と強固に接合することが確認された。また、所定の柱状体が分散配置されてなる多孔質表面層を有する酸化アルミニウム被膜であって、シランカップリング処理されていない酸化アルミニウム被膜を表面に備えるSi含有Al基材(比較例1)も、樹脂と強固に接合することがわかった。一方、柱状体が分散配置されてなる多孔質表面層を備えていない酸化アルミニウム被膜であって、その表面がシランカップリング処理された酸化アルミニウム被膜を表面に備えるSi含有Al基材(比較例2)は、実施例1〜3及び比較例1に比べて、樹脂との接合強度に劣るものであることがわかった。
<温水浸漬試験>
恒温水槽(ヤマト科学株式会社製「BK500」)を用いて80℃に調整したイオン交換水に、実施例1及び比較例1で得られた複合材料を浸漬した。所定時間浸漬後の複合材料について、前記方法により引張せん断強度を測定した。図2には、浸漬開始時(温水浸漬時間:0時間)に対する所定時間浸漬後の引張せん断強度の比率を示す。
図2に示した結果から明らかなように、所定の柱状体が分散配置されてなる多孔質表面層を有する酸化アルミニウム被膜であって、その表面がシランカップリング処理された酸化アルミニウム被膜を表面に備えるSi含有Al基材と樹脂とが接合した複合材料(実施例1)は、80℃の温水に500時間浸漬しても引張せん断強度は低下せず、接合耐久性に優れていることがわかった。一方、所定の柱状体が分散配置されてなる多孔質表面層を有する酸化アルミニウム被膜であって、シランカップリング処理されていない酸化アルミニウム被膜を表面に備えるSi含有Al基材と樹脂とが接合した複合材料(比較例1)は、温水浸漬時間の増加とともに引張せん断強度が低下し、80℃の温水に500時間浸漬すると引張せん断強度が浸漬開始時の約35%まで低下し、接合耐久性に劣っていることがわかった。
<冷熱衝撃試験>
実施例2、比較例1及び参考例1で得られた複合材料について、小型冷熱衝撃試験装置(エスペック株式会社製「TSE−11−A」)を用い、低温時:−40℃で20分間及び高温時:80℃で20分間の条件で冷熱衝撃試験を行なった。所定サイクル経過後の複合材料について、前記方法により引張せん断強度を測定した。図3には、実施例2及び比較例1で得られた複合材料についての試験開始時(冷熱サイクル:0回)に対する所定回数の冷熱衝撃を与えた後の引張せん断強度の比率を示す。また、図4には、参考例1で得られた複合材料についての試験開始時(冷熱サイクル:0回)と600回の冷熱衝撃を与えた後の引張せん断強度を示す。
図3に示した結果から明らかなように、所定の柱状体が分散配置されてなる多孔質表面層を有する酸化アルミニウム被膜であって、その表面がシランカップリング処理された酸化アルミニウム被膜を表面に備えるSi含有Al基材と樹脂とが接合した複合材料(実施例2)は、冷熱衝撃(ヒートショック)を600回与えても引張せん断強度は低下せず、接合耐久性に優れていることがわかった。一方、所定の柱状体が分散配置されてなる多孔質表面層を有する酸化アルミニウム被膜であって、シランカップリング処理されていない酸化アルミニウム被膜を表面に備えるSi含有Al基材と樹脂とが接合した複合材料(比較例1)は、冷熱サイクルの増加とともに引張せん断強度が低下し、冷熱衝撃(ヒートショック)を600回与えると引張せん断強度が浸漬開始時の約80%まで低下し、接合耐久性に劣っていることがわかった。
なお、図4に示した結果から明らかなように、所定の柱状体が分散配置されてなる多孔質表面層を有する酸化アルミニウム被膜であって、シランカップリング処理されていない酸化アルミニウム被膜を表面に備えるAl基材と樹脂とが接合した複合材料(参考例1)は、冷熱衝撃(ヒートショック)を600回与えても引張せん断強度は低下せず、接合耐久性に優れたものであることがわかった。すなわち、ケイ素を含有していないアルミニウム基材は、所定の柱状体が分散配置されてなる多孔質表面層を有する酸化アルミニウム被膜を表面に形成すれば、シランカップリング処理を施さなくても、樹脂と強固にかつ安定に接合することが確認された。
以上説明したように、本発明によれば、ケイ素を含有するアルミニウム合金基材と樹脂とが強固に接合しており、その耐久性に優れたケイ素含有アルミニウム合金樹脂複合材料を得ることが可能となる。したがって、本発明のケイ素含有アルミニウム合金樹脂複合材料は、家電製品、携帯電話、自動車部品、パソコン、電子部品等の種々の分野において用いられる金属樹脂複合材料として有用である。

Claims (5)

  1. 表面に酸化アルミニウム被膜を有するケイ素含有アルミニウム合金基材と、前記酸化アルミニウム被膜及びシランカップリング剤を介して接合している樹脂とを備えるケイ素含有アルミニウム合金樹脂複合材料であって、
    前記ケイ素含有アルミニウム合金基材中のケイ素含有量が全金属元素に対して4〜14質量%であり、
    前記酸化アルミニウム被膜は、平均高さが10〜100nmの柱状体が分散配置されてなる多孔質表面層を有するものであり、
    前記多孔質表面層の無作為に抽出した400nm角の視野内における前記柱状体の断面の面積の合計の平均値が8000〜128000nmであり、
    前記多孔質表面層の無作為に抽出した400nm角の視野内における前記柱状体の数の平均値が10〜430個である、
    ことを特徴とするケイ素含有アルミニウム合金樹脂複合材料。
  2. 前記酸化アルミニウム被膜が、前記多孔質表面層と前記ケイ素含有アルミニウム合金基材との間に、微細凹部を有する多孔質中間層を更に有するものであり、
    前記微細凹部の平均細孔径が5〜50nmであり、
    前記微細凹部の平均細孔中心間距離が5〜90nmである、
    ことを特徴とする請求項1に記載のケイ素含有アルミニウム合金樹脂複合材料。
  3. ケイ素含有量が全金属元素に対して4〜14質量%であるケイ素含有アルミニウム合金基材に陽極酸化処理を施して、平均高さが10〜100nmの柱状体が分散配置されてなる多孔質表面層であって、無作為に抽出した400nm角の視野内における前記柱状体の断面の面積の合計の平均値が8000〜128000nmであり、かつ、無作為に抽出した400nm角の視野内における前記柱状体の数の平均値が10〜430個である前記多孔質表面層を有する酸化アルミニウム被膜を、前記ケイ素含有アルミニウム合金基材の表面に形成する陽極酸化処理工程と、
    前記多孔質表面層を有する酸化アルミニウム被膜にシランカップリング剤を用いて表面処理を施すシランカップリング処理工程と、
    前記多孔質表面層を有する酸化アルミニウム被膜及び前記シランカップリング剤を介して前記ケイ素含有アルミニウム合金基材と樹脂とを接合する接合工程と、
    を含むことを特徴とするケイ素含有アルミニウム合金樹脂複合材料の製造方法。
  4. 前記陽極酸化処理工程において、
    前記多孔質表面層、及び
    前記多孔質表面層と前記ケイ素含有アルミニウム合金基材との間に、微細凹部を有する多孔質中間層であって、前記微細凹部の平均細孔径が5〜50nmであり、かつ、前記微細凹部の平均細孔中心間距離が5〜90nmである多孔質中間層
    を有する酸化アルミニウム被膜を、前記ケイ素含有アルミニウム合金基材の表面に形成することを特徴とする請求項3に記載のケイ素含有アルミニウム合金樹脂複合材料の製造方法。
  5. 前記シランカップリング処理工程において、濃度が0.5〜5質量%のシランカップリング剤溶液を用いることを特徴とする請求項3又は4に記載のケイ素含有アルミニウム合金樹脂複合材料の製造方法。
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