JP2019214689A - 熱伝導性絶縁エラストマー組成物、熱伝導性絶縁エラストマー成形体及びその製造方法 - Google Patents

熱伝導性絶縁エラストマー組成物、熱伝導性絶縁エラストマー成形体及びその製造方法 Download PDF

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【課題】 本発明は、無機フィラーの含有量が少ない場合でも熱伝導性及び絶縁性に優れる熱伝導性絶縁エラストマー成形体及びその製造方法、並びに当該熱伝導性絶縁エラストマー成形体を得るための熱伝導性絶縁エラストマー組成物を提供することを目的とする。【解決手段】 本発明の熱伝導性絶縁エラストマー組成物は、シリコーン系エラストマー及びフッ素系エラストマーからなる群より選択される少なくとも1種のエラストマー、無機フィラー、及びトリアジンジチオール系化合物を含有する。【選択図】なし

Description

本発明は、電子回路基板等の絶縁性と放熱性が求められる部材の材料として有用な、熱伝導性絶縁エラストマー組成物、熱伝導性絶縁エラストマー成形体及びその製造方法に関する。
電気・電子機器の小型化、高集積化に伴い、実装部品の発熱や使用環境の高温化が顕著となり、構成部材の放熱性向上に対する要求が高くなっている。特に自動車部材やハイパワーLEDの放熱部材には、現在、熱伝導率の高い金属やセラミックスが用いられているが、軽量化、加工性、及び形状の自由度を高めるために、高い熱伝導性、及び成形加工性を有する熱伝導性樹脂材料が求められている。特に高分子化合物からなる樹脂は、成形性に優れた安価な絶縁材料であることから、電子回路基板用基材、モータ絶縁材、及び絶縁接着剤等の様々な電子部品に用いられている。近年、これら電子部品の高密度化・高出力化に伴い、電子部品からの発熱量が増大している。このため電子部品の熱を放出させるための対策が強く求められている。
この課題に対して、従来技術では、樹脂内部にアルミナやシリカなどの無機物からなるフィラーを充填し、樹脂の熱伝導度を高める方法が用いられている。例えば、特許文献1及び2では、結晶性シリカ、及び酸化アルミニウム等の無機フィラーを高分子樹脂中に添加して熱伝導性を付与する技術が提案されている。この場合、無機フィラーが繋がって形成される連続体が熱の伝導路として機能する。すなわち、樹脂中に充填された無機フィラーは相互に接触している必要があり、効率的な熱伝導のためには多量の無機フィラーを充填する必要があった。更に、従来の熱伝導性絶縁樹脂成形体は、無機フィラーを多量に添加する必要があったため、以下の技術的課題を有していた。(1)重量が重い。(2)無機フィラーは硬いため加工性が悪い。(3)無機フィラーと樹脂の界面に空隙が発生し易く、そこに水が滞留するため耐湿性が低い。(4)無機フィラーは高価であるため製造コストが高い。(5)無機フィラーの充填量が多い樹脂成形体は、形状を保持するために一定の厚みが必要であり、薄型化が困難である。これらの課題を解決するために、特許文献3では、高分子化合物を含むコア粒子と、該コア粒子を被覆する、熱伝導性かつ絶縁性の無機化合物を含むシェルとを備えるコア/シェル粒子の集合体により成形される熱伝導性絶縁樹脂成形体が提案されている。
特開平11−233694号公報 特許第3559137号公報 特許第5278488号公報
しかし、特許文献3に記載の熱伝導性絶縁樹脂成形体は、高分子化合物を含むコア粒子が無機化合物を含むシェルで被覆されているため、熱伝導性が低いという問題がある。また、従来の熱伝導性絶縁樹脂成形体は、樹脂中に充填された無機フィラーが凝集しやすく、無機フィラーが繋がって形成される連続体が形成されにくいため、十分な熱伝導性が得られないという問題があった。
本発明は、無機フィラーの含有量が少ない場合でも熱伝導性及び絶縁性に優れる熱伝導性絶縁エラストマー成形体及びその製造方法、並びに当該熱伝導性絶縁エラストマー成形体を得るための熱伝導性絶縁エラストマー組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、熱伝導性絶縁エラストマー組成物中に、無機フィラーと共にトリアジンジチオール系化合物を添加することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の構成からなる。
[1]
シリコーン系エラストマー及びフッ素系エラストマーからなる群より選択される少なくとも1種のエラストマー、無機フィラー、及び下記一般式(1)で表されるトリアジンジチオール系化合物を含有する熱伝導性絶縁エラストマー組成物。
Figure 2019214689
(式中、M及びMはそれぞれ独立にH、Li、Na、K、又はCsであり、RはS、O、又はNRであり、RはH、又はアルキル基、ハロゲン化アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基、アルケニル基、ハロゲン化アルケニル基、ヒドロキシアルケニル基、アルコキシアルケニル基、フェニル基、ハロゲン化フェニル基、ヒドロキシフェニル基、アルコキシフェニル基、ビフェニル基、ハロゲン化ビフェニル基、ヒドロキシビフェニル基、アルコキシビフェニル基、ナフチル基、ハロゲン化ナフチル基、ヒドロキシナフチル基、アルコキシナフチル基、カルボキシル基、エステル基、ウレタン基、アゾ基、シアノ基、アミノ基、アミド基、及びアルコキシシリル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する有機基であり、Rは前記有機基と同じであり、あるいはNRとRはヘテロ環を構成する。)
[2]
前記トリアジンジチオール系化合物は、下記一般式(2)〜(4)で表されるトリアジンジチオール系化合物の少なくとも1種である[1]に記載の熱伝導性絶縁エラストマー組成物。
Figure 2019214689
(式中、M、M、R、及びRは前記と同じである。)
Figure 2019214689
(式中、M及びMは前記と同じであり、RはS、O、−NHCHCHO−、−N(CH)CHCHO−、−N(C)CHCHO−、−NHCHCHCHCHO−、−N(C)CHCHCHCHO−、−NHCH(CHCHO−、−NHCHCH(CH)O−、−NHCO−、−N(C)CO−、−NHC10O−、−N(CHCHCHO−、−N(CHCHNCHCHO−、−N(CHCHOH)CHCHO−、−N(CHCHCHOH)CHCHCHO−、−N(CHCH(CH)OH)CHCH(CH)O−、−N(CHCHCHCHOH)CHCHCHCHO−、−NHCHO−、−NHC11O−、又は−N(C)CO−であり、Rはアルキレン基であり、Rはアルコキシ基であり、R及びRはそれぞれ独立にアルコキシ基又はアルキル基である。)
Figure 2019214689
(式中、M、M、及びR〜Rは前記と同じであり、Rは水素又はアルキル基であり、Rはアルキレン基又はアルキレンオキシ基であり、RとRは互いに結合して環を形成してもよい。)
[3]
前記無機フィラーは、窒化アルミニウムフィラー及び窒化ホウ素フィラーからなる群より選択される少なくとも1種を含む[1]又は[2]に記載の熱伝導性絶縁エラストマー組成物。
[4]
前記無機フィラーの含有量は、前記エラストマー100質量部に対して20〜400質量部である[1]〜[3]のいずれかに記載の熱伝導性絶縁エラストマー組成物。
[5]
前記トリアジンジチオール系化合物の含有量は、前記無機フィラー100質量部に対して5×10−7〜5質量部である[1]〜[4]のいずれかに記載の熱伝導性絶縁エラストマー組成物。
[6]
[1]〜[5]のいずれかに記載の熱伝導性絶縁エラストマー組成物から得られる熱伝導性絶縁エラストマー成形体。
[7]
前記熱伝導性絶縁エラストマー成形体は、熱伝導性絶縁エラストマーシートである[6]に記載の熱伝導性絶縁エラストマー成形体。
[8]
[6]又は[7]に記載の熱伝導性絶縁エラストマー成形体の製造方法であって、前記無機フィラーと前記トリアジンジチオール系化合物とを接触させて、前記無機フィラーの表面に前記トリアジンジチオール系化合物を付着させて表面修飾無機フィラーを得る工程A、前記表面修飾無機フィラーを前記エラストマー中に分散させて前記熱伝導性絶縁エラストマー組成物を得る工程B、及び前記熱伝導性絶縁エラストマー組成物を成形する工程Cを含む熱伝導性絶縁エラストマー成形体の製造方法。
[9]
前記工程Cにおいて、前記熱伝導性絶縁エラストマー組成物を加圧及び/又は加熱して成形する[8]に記載の熱伝導性絶縁エラストマー成形体の製造方法。
本発明の熱伝導性絶縁エラストマー組成物は、無機フィラーと共にトリアジンジチオール系化合物を含有している。トリアジンジチオール系化合物を無機フィラーの表面に付着させることにより、トリアジンジチオール系化合物により表面修飾された無機フィラー(表面修飾無機フィラー)が得られる。当該表面修飾無機フィラーは、従来の無機フィラーに比べて分散性が高いため、エラストマー中で凝集しにくい。そのため、エラストマー中に、表面修飾無機フィラーが繋がって形成される連続体が形成されやすい。その結果、本発明の熱伝導性絶縁エラストマー組成物から得られる熱伝導性絶縁エラストマー成形体は、無機フィラーの含有量が少ない場合でも優れた熱伝導性を有する。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の熱伝導性絶縁エラストマー組成物は、シリコーン系エラストマー及びフッ素系エラストマーからなる群より選択される少なくとも1種のエラストマー、無機フィラー、及び下記一般式(1)で表されるトリアジンジチオール系化合物を含有する。
Figure 2019214689
(式中、M及びMはそれぞれ独立にH、Li、Na、K、又はCsであり、RはS、O、又はNRであり、RはH、又はアルキル基、ハロゲン化アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基、アルケニル基、ハロゲン化アルケニル基、ヒドロキシアルケニル基、アルコキシアルケニル基、フェニル基、ハロゲン化フェニル基、ヒドロキシフェニル基、アルコキシフェニル基、ビフェニル基、ハロゲン化ビフェニル基、ヒドロキシビフェニル基、アルコキシビフェニル基、ナフチル基、ハロゲン化ナフチル基、ヒドロキシナフチル基、アルコキシナフチル基、カルボキシル基、エステル基、ウレタン基、アゾ基、シアノ基、アミノ基、アミド基、及びアルコキシシリル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する有機基であり、Rは前記有機基と同じであり、あるいはNRとRはヘテロ環を構成する。)
<エラストマー>
シリコーン系エラストマー及びフッ素系エラストマーは公知のものを特に制限なく使用することができ、熱伝導性絶縁エラストマー成形体の用途等に応じて適宜選択する。前記エラストマーは1種で用いてもよく、併用してもよい。なお、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ゴム系エラストマー、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、及びポリウレタン系エラストマーなどの他のエラストマー、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、及びゴムを前記組成物中に適宜配合してもよい。これらは1種配合してもよく、2種以上配合してもよい。
シリコーン系エラストマーは特に制限されず、例えば、下記一般式(5)で表される構造単位を有するものが挙げられる。
Figure 2019214689
シリコーン系エラストマーとしては、前記一般式(5)において、全てのRがメチル基であるポリジメチルシロキサン、前記メチル基の一部が他のアルキル基、ビニル基、フェニル基、及びフルオロアルキル基等の置換基の1種以上で置換された各種のポリオルガノシロキサンが挙げられる。これらは1種で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記一般式(5)において、nは特に制限されないが、5〜100000の整数であることが好ましい。
シリコーン系エラストマーは、耐熱性の観点から、付加反応または過酸化物によって硬化する架橋タイプであることが好ましい。架橋タイプのシリコーン系エラストマーとしては、例えば、1分子中に、ケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上、好ましくは3個以上有するものが挙げられる。ケイ素原子に結合したアルケニル基の含有量が前記数値範囲より少ないと、硬化が付加反応によって行われる場合には、得られる組成物が十分に硬化しない。前記アルケニル基としてはビニル基が好ましい。前記アルケニル基は、分子鎖末端のケイ素原子、又は分子鎖末端以外のケイ素原子のいずれに結合していてもよいが、少なくとも1個のアルケニル基が分子鎖末端のケイ素原子に結合していることが好ましい。
付加反応によって硬化するシリコーン系エラストマーとしては、例えば、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、及び分子鎖両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン等を挙げることができる。これらは1種で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
過酸化物によって硬化するシリコーン系エラストマーとしては、例えば、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端メチルフェニルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチル(3,3,3-トリフルオロプロピル)ポリシロキサン、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、及び分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体等が挙げられる。これらは1種で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
付加反応によって硬化を行う場合には、例えば、硬化剤としてオルガノハイドロジェンポリシロキサンを用い、白金系触媒の存在下で反応が行われる。過酸化物によって硬化を行う場合には、例えば、硬化剤として有機過酸化物を用いる。前記硬化剤及び触媒は、いずれも当該技術分野において公知のものを使用することができる。
フッ素系エラストマーは特に制限されず、例えば、ビニリデンフロライド/ヘキサフロロプロペン系共重合体、ビニリデンフロライド/ヘキサフロロプロペン/テトラフロロエチレン系共重合体、及びテトラフロロエチレン/プロピレン系共重合体等が挙げられる。また、これらの共重合体にエチレンやパーフロロアルキルビニルエーテルを更に共重合させたものでもよい。また、フッ素ゴム(ビニリデンフロライド/ヘキサフロロプロペン/テトラフロロエチレン系共重合体)とフッ素樹脂(テトラフロロエチレン/エチレン交互共重合体及びポリビニリデンフロライド)とのブロック共重合体であるフッ素系熱可塑性エラストマーも使用できる。これらは1種で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、フッ素系エラストマーとしては、パーフルオロエラストマーを用いることもできる。パーフルオロエラストマーとしては、例えば、パーフルオロオレフィンと、パーフルオロ(アルキルビニル)エーテル、パーフルオロ(アルコキシビニル)エーテル、及びその混合物からなる群より選択されたパーフルオロビニルエーテルと、硬化部位モノマーとの共重合単位を含有するパーフルオロエラストマー等が挙げられる。
硬化部位モノマーとしては、ヨウ素や臭素を含む硬化部位モノマー、シアノ基を含む硬化部位モノマーが挙げられる。ヨウ素や臭素を含む硬化部位モノマーとしては、例えば、CF=CF(CFI、CF=CF(CFBr、及びI(CFI等が挙げられる。また、シアノ基を含む硬化部位モノマーとしては、例えば、シアノ基含有パーフルオロビニルエーテルが挙げられ、具体的には、CF=CFO(CFOCF(CF)CN(n:2〜4)、CF=CFO(CFCN(n:2〜12)、CF=CFO[CFCF(CF)O](CFCN(n:2、m:1〜5)、CF=CFO[CFCF(CF)O](CFCN(n:1〜4、m:1〜2)、及びCF=CFO[CFCF(CF)O]CFCF(CF)CN(n:0〜4)等が挙げられる。パーフルオロエラストマーは、公知の方法により合成してもよいが、市販されているものを用いてもよい。
<無機フィラー>
無機フィラーは公知のものを特に制限なく使用することができる。無機フィラーとしては、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル;アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、酸化クロム、酸化チタン;窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化シリコン、窒化チタン、窒化タンタル、窒化クロム;ホウ化チタン、ホウ化ジルコニウム、ホウ化ハフニウム、ホウ化イットリウム、ホウ化バナジウム、2ホウ化マグネシウム、ホウ化ニオブ、ホウ化タンタル、ホウ化タリウム;炭化ホウ素、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化バナジウム、炭化ニオブ、炭化タンタル、炭化クロム、炭化モリブデン、炭化タングステン、炭化IIタングステン炭化珪素;Fe−Si合金、Fe−Al合金、Fe−Si−Al合金、Fe−Si−Cr合金、Fe−Ni合金、Fe−Ni−Co合金、Fe−Ni−Mo合金、Fe−Co合金、Fe−Si−Al−Cr合金、Fe−Si−B合金、Fe−Si−Co−B合金;Mn−Znフェライト、Mn−Mg−Znフェライト、Mg−Cu−Znフェライト、Ni−Znフェライト、Ni−Cu−Znフェライト、Cu−Znフェライトなどが挙げられる。これらは1種で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、熱伝導性及び電気絶縁性の観点から、好ましくは、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、酸化クロム、酸化チタン、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化シリコン、窒化チタン、窒化クロム、窒化タンタル、ホウ化チタン、ホウ化ジルコニウム、ホウ化ハフニウム、ホウ化イットリウム、ホウ化バナジウム、2ホウ化マグネシウム、ホウ化ニオブ、ホウ化タンタル、ホウ化タリウム、及びホウ化モリブデンからなる群より選択される少なくとも1種であり、より好ましくは、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、酸化クロム、酸化チタン、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化シリコン、窒化チタン、窒化クロム、ホウ化チタン、ホウ化ジルコニウム、ホウ化ハフニウム、ホウ化イットリウム、ホウ化バナジウム、2ホウ化マグネシウム、ホウ化ニオブ、ホウ化タンタル、ホウ化タリウム、及びホウ化モリブデンからなる群より選択される少なくとも1種であり、さらに好ましくは、窒化アルミニウム及び窒化ホウ素からなる群より選択される少なくとも1種である。
無機フィラーは、長さ・幅・厚み方向で極端な差がない粒子であることが好ましく、アスペクト比は0.8〜1.0であることが好ましい。無機フィラーの形状は、球状だけでなく、針状、塊状、立方体や十二面体といった多面体状であってもよい。
無機フィラーの粒径は特に制限されないが、好ましくは0.1〜500μm、より好ましくは0.5〜300μm、さらに好ましくは1〜200μm以上であり、粒径が500μmを超えると、熱伝導性、表面外観の観点から好ましくなく、粒径が0.1μm未満では、分散性が低下したり、コストアップになり好ましくない傾向を示す。
熱伝導性絶縁エラストマー組成物中における無機フィラーの含有量は特に制限されないが、優れた熱伝導性を得る観点から、前記エラストマー100質量部に対して、好ましくは20〜400質量部であり、より好ましくは25〜350質量部であり、さらに好ましくは30〜300質量部であり、20質量部未満では、熱伝導性が低下する傾向になり、400質量部を超えると、柔軟性が低下する傾向にある。
<トリアジンジチオール系化合物>
本発明で用いられるトリアジンジチオール系化合物は、下記一般式(1)で表される。トリアジンジチオール系化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
Figure 2019214689
(式中、M及びMはそれぞれ独立にH、Li、Na、K、又はCsであり、RはS、O、又はNRであり、RはH、又はアルキル基、ハロゲン化アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基、アルケニル基、ハロゲン化アルケニル基、ヒドロキシアルケニル基、アルコキシアルケニル基、フェニル基、ハロゲン化フェニル基、ヒドロキシフェニル基、アルコキシフェニル基、ビフェニル基、ハロゲン化ビフェニル基、ヒドロキシビフェニル基、アルコキシビフェニル基、ナフチル基、ハロゲン化ナフチル基、ヒドロキシナフチル基、アルコキシナフチル基、カルボキシル基、エステル基、ウレタン基、アゾ基、シアノ基、アミノ基、アミド基、及びアルコキシシリル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する有機基であり、Rは前記有機基と同じであり、あるいはNRとRはヘテロ環を構成する。)
前記アルキル基は、直鎖状、分岐状、又は環状のいずれであってもよい。前記アルキル基の炭素数は特に制限されないが、好ましくは1〜40であり、より好ましくは1〜30である。
前記アルケニル基は、直鎖、分岐、又は環状のいずれであってもよい。前記アルケニル基の炭素数は特に制限されないが、好ましくは1〜40であり、より好ましくは1〜30である。
前記ハロゲンは特に制限されず、例えば、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素が挙げられる。
前記アルコキシ基の炭素数は特に制限されないが、好ましくは1〜40であり、より好ましくは1〜30である。
前記トリアジンジチオール系化合物は、下記一般式(2)〜(4)で表されるトリアジンジチオール系化合物の少なくとも1種であることが好ましい。
Figure 2019214689
(式中、M、M、R、及びRは前記と同じである。)
前記一般式(2)において、Rは、好ましくは、−H、−CH、−C、−C、−CHCHCN、又は−CHCH=CHであり、Rは、好ましくは、−C16CH=CHC17、−C16CH=CH、−CCH=CHC、−CCH=CHCOCH、−CCH=CH、−CHCH=CH、−CHCH=CH、−CHNHCOC(CH)=CH、−CNHC、−CN=NC、−C[C(CHOH、−C、−C、−CHCOOH、−CHCOOC、−CHCOOC17、−CHCH(C、−CHCHOH、−CHCHCHCHOH、−CH(CHCHOH、−CHCH(CH)OH、−COH、−C10OH、−CH、−CH13、−CH15、−CH17、−CHCH、−CHCH13、−CHCH17、−CHCH1021、−CHCHCH17、−C17、−C、−C、−CSi(OCH、−CSi(OCH、−C12Si(OCH、−C1020Si(OCH、−CHCHNHCSi(OCH、−CSi(OC、−CSi(OCHCH、−CSi(CHOCH、又は−CSi(CHOSi(CHである。
あるいは、前記一般式(2)において、RとRは同一であって、好ましくは、−CHCH=CH、−C16CH=CHC17、−C16CH=CH、−CCH=CHC、−CCH=CHCOCH、−CCH=CH、−CHCH=CH、−CHCH=CH、−CHNHCOC(CH)=CH、−CNHC、−CN=NC、−C[C(CHOH、−C、−C、−CHCOOH、−CHCOOC、−CHCOOC17、−CHCH(C、−CHCHOH、−CHCHCHCHOH、−CH(CHCHOH、−CHCH(CH)OH、−COH、−C10OH、−CH、−CH13、−CH17、−CHCH、−CHCH13、−CHCH17、−CHCH1021、−CHCHCH17、−C17、−C、−C、−CSi(OCH、−CSi(OCH、−C12Si(OCH、−C1020Si(OCH、−CHCHNHCSi(OCH、−CSi(OC、−CSi(OCHCH、−CSi(CHOCH、又は−CSi(CHOSi(CHである。
あるいは、前記一般式(2)において、NとRとRはヘテロ環を構成し、RとRは、好ましくは、−(CHCHCHOH、−(CHCHCHOCOC17CH=CH、−(CHCHCHOCH、又は−(CHCHCHOCOC(CH)=CHである。
Figure 2019214689
(式中、M及びMは前記と同じであり、RはS、O、−NHCHCHO−、−N(CH)CHCHO−、−N(C)CHCHO−、−NHCHCHCHCHO−、−N(C)CHCHCHCHO−、−NHCH(CHCHO−、−NHCHCH(CH)O−、−NHCO−、−N(C)CO−、−NHC10O−、−N(CHCHCHO−、−N(CHCHNCHCHO−、−N(CHCHOH)CHCHO−、−N(CHCHCHOH)CHCHCHO−、−N(CHCH(CH)OH)CHCH(CH)O−、−N(CHCHCHCHOH)CHCHCHCHO−、−NHCHO−、−NHC11O−、又は−N(C)CO−であり、Rはアルキレン基であり、Rはアルコキシ基であり、R及びRはそれぞれ独立にアルコキシ基又はアルキル基である。)
前記一般式(3)において、Rのアルキレン基の炭素数は特に制限されないが、好ましくは1〜40であり、より好ましくは1〜30である。また、R〜Rのアルコキシ基の炭素数は特に制限されないが、好ましくは1〜30であり、より好ましくは1〜20である。また、R及びRのアルキル基の炭素数は特に制限されないが、好ましくは1〜30であり、より好ましくは1〜20である。
Figure 2019214689
(式中、M、M、及びR〜Rは前記と同じであり、Rは水素又はアルキル基であり、Rはアルキレン基又はアルキレンオキシ基であり、RとRは互いに結合して環を形成してもよい。)
前記一般式(4)において、R〜Rのアルコキシ基の炭素数は特に制限されないが、好ましくは1〜30であり、より好ましくは1〜20である。また、R及びRのアルキル基の炭素数は特に制限されないが、好ましくは1〜30であり、より好ましくは1〜20である。Rのアルキル基の炭素数は特に制限されないが、好ましくは1〜30であり、より好ましくは1〜20である。Rのアルキレン基又はアルキレンオキシ基の炭素数は特に制限されないが、好ましくは1〜20であり、より好ましくは1〜15である。RとRとが結合して形成する環としては、5員環及び6員環等が挙げられ、RとRとは結合して、プロパントリイル基(5員環を形成する場合)、ブタントリイル基(6員環を形成する場合)等を形成する。
前記一般式(1)で表されるトリアジンジチオール系化合物は、公知の方法で製造することができる。
例えば、前記一般式(2)で表されるトリアジンジチオール系化合物は、トリアジントリチオール又はその誘導体と、NHRで表されるアミン類とを混合し、反応させることにより合成することができる。なお、当該反応では、硫化水素が副生する。
また、前記一般式(3)で表されるトリアジンジチオール系化合物は、トリアジントリチオール又はその誘導体と、NCO−R−SiRで表されるアルコキシシリルアルキルイソシアネートとを混合し、反応させることにより合成することができる。前記アルコキシシリルアルキルイソシアネートとしては、例えば、3−トリメトキシシリルプロピルイソシアネート、及び3−トリエトキシシリルプロピルイソシアネート等が挙げられる。
また、前記一般式(4)で表されるトリアジンジチオール系化合物は、トリアジントリチオール又はその誘導体と、下記一般式(6)で表されるエポキシ基含有アルコキシシランとを混合し、反応させることにより合成することができる。
Figure 2019214689
(式中、R〜Rは前記と同じである。)
前記エポキシ基含有アルコキシシランとしては、例えば、ジエトキシ(3−グリシジル)メチルシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシジルプロピル(ジメトキシ)メチルシラン、3−グリシジルプロピルトリメトキシシラン、ジエトキシ(3−グリシジルオキシ)メチルシラン、3−グリシジルオキシプロピル(ジメトキシ)メチルシラン、及び3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
前記反応は、前記原料を溶剤中に分散又は溶解させるなどして混合し、更に加熱反応させることにより行うことが好ましい。それにより、目的物を短時間で容易に合成することができる。
溶剤としては、例えば、水;メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロパノール、プロピレングリコール、カルビトール、及びセルソルブ等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、及びシクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、安息香酸メチル、フタル酸ジエチル、アジピン酸ジエチル、ジブチルエーテル、及びアニソール等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン、及びデカリン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホアミド、及びメチルピロリドン等の極性溶媒、又はこれらの混合溶媒等が挙げられる。
溶剤中のトリアジントリチオール又はその誘導体の濃度は特に制限されないが、通常0.1〜500g/Lであり、好ましくは1〜100g/Lである。トリアジントリチオール又はその誘導体の濃度が1g/L未満の場合には、反応効率が悪くなる傾向があり、一方、濃度が100g/Lを超えると、溶液又は分散媒体の粘度が高くなりすぎて撹拌が困難になり、均一な反応が起こりにくくなる。
反応温度は、使用する溶剤の沸点と関係するので一義的に設定できないが、通常0〜200℃であり、好ましくは30〜160℃である。30℃未満では、反応時間が長くなり、生産性が低下する傾向にある。また、160℃を超えると、反応速度が高くなり生産性は向上するが、2量体等の副生成物が生成し、目的物との分離に特別の操作が必要となることがある。
反応終了後、溶剤を留去することで、トリアジンジチオール系化合物が白色結晶又は液体で得られるが、これを溶剤抽出又は洗浄することにより、あるいは蒸留又は結晶化することにより、精製することが可能である。また、副生成物が生成した場合には、目的物を水中でナトリウム塩とした後、不溶物を除去し、可溶物を1%−HCl溶液で中和して精製する工程を追加することが好ましい。
熱伝導性絶縁エラストマー組成物中におけるトリアジンジチオール系化合物の含有量は特に制限されないが、優れた熱伝導性を得る観点から、前記無機フィラー100質量部に対して、好ましくは5×10−7〜5質量部、より好ましくは1×10−6〜4質量部、さらに好ましくは1.5×10−6〜3質量部であり、5×10−7質量部未満では、熱伝導性、分散性が低下する傾向にあり、5質量部を超えると、コストアップになる傾向にある。
<その他の成分>
熱伝導性絶縁エラストマー組成物には、芳香族アミン系、ヒンダードフェノール系、リン系、及び硫黄系などの酸化防止剤を配合することが好ましい。これらは1種で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
芳香族アミン系酸化防止剤としては、例えば、フェニルナフチルアミン、4,4’−ジメトキシジフェニルアミン、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、及び4−イソプロポキシジフェニルアミンなどが挙げられる。これらは1種で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−トルエン、n−オクタデシル−β−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、テトラキス〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6’−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、カルシウム(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシーベンジルーモノエチル−フォスフェート)、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ペンテリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、ビス〔3,3−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)酪酸〕グリコールエステル、トリフェノール、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)、N,N’−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン、2,2’−オキサミドビス〔エチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,1,3−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナミックアヒドトリエステルウイズ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−S−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)、及びN,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナアミド)などが挙げられる。これらは1種で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
リン系酸化防止剤としては、例えば、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸誘導体、フェニルホスホン酸、ポリホスホネート、及びジホスファイト系化合物などのリンを含む化合物が挙げられる。具体例としては、トリフェニルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリ(ノニルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、及びビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。これらは1種で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
硫黄系酸化防止剤としては、例えば、チオエーテル系、ジチオ酸塩系、メルカプトベンズイミダゾール系、チオカルバニリド系、及びチオジプロピオンエステル系などの硫黄を含む化合物が挙げられる。具体例としては、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ジドデシルチオジプロピオネート、ジテトラデシルチオジプロピオネート、ジオクタデシルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)、チオビス(N−フェニル−β−ナフチルアミン)、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、テトラメチルチウラムモノサルファイド、テトラメチルチウラムジサルファイド、ニッケルジブチルジチオカルバメート、ニッケルイソプロピルキサンテート、及びトリラウリルトリチオホスファイト等が挙げられる。これらは1種で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
酸化防止剤の配合(含有)量は、エラストマー100質量部に対して0.01〜3質量部が好ましく、より好ましくは0.05〜2質量部、さらに好ましくは0.1〜1質量部である。酸化防止剤を2種以上配合する場合、酸化防止剤の配合量の合計は5質量部以下であることが好ましい。
熱伝導性絶縁エラストマー組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて架橋剤を配合してもよい。架橋剤としては、エラストマーが持つ官能基と反応する架橋剤である限り特に限定されず、例えば、エポキシ系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、酸無水物系架橋剤、シラノール系架橋剤、メラミン樹脂系架橋剤、金属塩系架橋剤、金属キレート系架橋剤、及びアミノ樹脂系架橋剤などが挙げられる。これらは1種で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
エポキシ系架橋剤は、分子中に2つ以上のエポキシ基(グリシジル基)を持つ多官能エポキシ化合物であれば特に制限されず、具体的には、2つのエポキシ基を持つ1,6−ジハイドロキシナフタレンジグリシジルエーテルや1,3−ビス(オキシラニルメトキシ)ベンゼン、3つのエポキシ基を持つ1,3,5−トリス(2,3−エポキシプロピル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオンやジグリセロールトリグリシジルエーテル、4つのエポキシ基を持つ1−クロロ−2,3−エポキシプロパン・ホルムアルデヒド・2,7−ナフタレンジオール重縮合物やペンタエリスリトールポリグリシジルエーテルが挙げられる。これらのうち、骨格に耐熱性を保有した多官能のエポキシ化合物が好ましい。特に、ナフタレン構造を骨格にもつ2官能、もしくは4官能のエポキシ化合物、又はトリアジン構造を骨格にもつ3官能のエポキシ化合物が好ましい。
その他にも、グリシジル基を1分子あたり2個以上含有し重量平均分子量が4000〜25000であり、かつ(X)20〜99質量%のビニル芳香族モノマー、(Y)1〜80質量%のグリシジル(メタ)アクリレート、及び(Z)0〜79質量%のエポキシ基を含有していない(X)以外のビニル基含有モノマーからなるスチレン系共重合体を挙げることができる。より好ましくは(X)が20〜99質量%、(Y)が1〜80質量%、(Z)が0〜40質量%からなる共重合体であり、さらに好ましくは(X)が25〜90質量%、(Y)が10〜75質量%、(Z)が0〜35質量%からなる共重合体である。前記(X)ビニル芳香族モノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン等が挙げられる。前記(Y)グリシジル(メタ)アクリレートとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、シクロヘキセンオキシド構造を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルグリシジルエーテル等が挙げられ、これらの中でも、反応性の高い点で(メタ)アクリル酸グリシジルが好ましい。前記(Z)その他のビニル基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、及び(メタ)アクリル酸メトキシエチル等の炭素数が1〜22のアルキル基(アルキル基は直鎖、分岐鎖でもよい)を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジルエステル、(メタ)アクリル酸フェノキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸イソボルニルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシシリルアルキルエステル等が挙げられる。また(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルジアルキルアミド、及び酢酸ビニル等のビニルエステル類、ビニルエーテル類、(メタ)アリルエーテル類等の芳香族系ビニル系単量体、エチレン、プロピレン等のα−オレフィンモノマーなども前記(Z)その他のビニル基含有モノマーとして使用可能である。
前記スチレン系共重合体の重量平均分子量は、4000〜25000であることが好ましく、より好ましくは5000〜15000である。前記スチレン系共重合体のエポキシ価は、400〜2500当量/1×10gであることが好ましく、より好ましくは500〜1500当量/1×10g、さらに好ましくは600〜1000当量/1×10gである。
カルボジイミド系架橋剤としては、1分子内にカルボジイミド基(−N=C=N−の構造)を2つ以上有するポリカルボジイミドであれば特に制限されず、例えば、脂肪族ポリカルボジイミド、脂環族ポリカルボジイミド、芳香族ポリカルボジイミド、及びこれらの共重合体などが挙げられる。好ましくは脂肪族ポリカルボジイミド又は脂環族ポリカルボジイミドである。
ポリカルボジイミドは、例えば、ジイソシアネート化合物の脱二酸化炭素反応により得ることができる。ジイソシアネート化合物としては、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3,5−トリイソプロピルフェニレン−2,4−ジイソシアネートなどが挙げられる。これらは1種のみ用いてもよいし、2種以上を共重合させて用いることもできる。また、分岐構造を導入したり、カルボジイミド基やイソシアネート基以外の官能基を共重合により導入してもよい。さらに、末端イソシアネートはそのままでも使用可能であるが、末端イソシアネートを反応させることにより重合度を制御してもよく、末端イソシアネートの一部を封鎖してもよい。
ポリカルボジイミドとしては、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、及びイソホロンジイソシアネートなどに由来する脂環族ポリカルボジイミドが好ましく、より好ましくはジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、及びイソホロンジイソシアネートに由来する脂環族ポリカルボジイミドである。
ポリカルボジイミドは、安定性と取り扱い性の観点から、1分子あたり2〜50個のカルボジイミド基を含有することが好ましく、より好ましくは5〜30個である。ポリカルボジイミド分子中のカルボジイミドの個数(すなわちカルボジイミド基数)は、ジイソシアネート化合物から得られたポリカルボジイミドであれば、重合度に相当する。例えば、21個のジイソシアネート化合物が鎖状につながって得られたポリカルボジイミドの重合度は20であり、分子鎖中のカルボジイミド基数は20である。通常、ポリカルボジイミドは、種々の長さの分子の混合物であり、カルボジイミド基数は平均値で表される。前記範囲のカルボジイミド基数を有し、室温付近で固形であるポリカルボジイミドは、粉末化できるので、エラストマーとの混合時の作業性や相溶性に優れ、均一反応性、耐ブリードアウト性の点でも好ましい。なお、カルボジイミド基数は、例えば、常法(アミンで溶解して塩酸で逆滴定を行う方法)を用いて測定できる。
ポリカルボジイミドは、安定性と取り扱い性の観点から、末端にイソシアネート基を有し、イソシアネート基含有率は0.5〜4質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜3質量%である。特に、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートやイソホロンジイソシアネートに由来するポリカルボジイミドであって、前記範囲のイソシアネート基含有率を有するものが好ましい。なお、イソシアネート基含有率は常法(アミンで溶解して塩酸で逆滴定を行う方法)を用いて測定できる。
イソシアネート系架橋剤としては、例えば、前記イソシアネート基を含有するポリカルボジイミド化合物、及び前記ポリカルボジイミド化合物の原料となるイソシアネート化合物が挙げられる。
酸無水物系架橋剤としては、安定性と取り扱い性の観点から、1分子あたり、2〜4個の無水物を含有する化合物が好ましい。このような化合物としては、例えば、フタル酸無水物、トリメリット酸無水物、及びピロメリット酸無水物などが挙げられる。
架橋剤の配合(含有)量は、押出条件、所望する発泡倍率等によって適宜調整されるが、エラストマー100質量部に対して0.1〜4.5質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜4質量部、さらに好ましくは0.1〜3質量部である。
熱伝導性絶縁エラストマー組成物には、前記酸化防止剤や架橋剤以外にも、目的に応じて種々の添加剤を配合することができる。添加剤としては、例えば、ヒンダードアミン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系、トリアゾール系、ニッケル系、及びサリチル系等の光安定剤、滑剤、充填剤、難燃剤、難燃助剤、離型剤、帯電防止剤、過酸化物等の分子調整剤、金属不活性剤、有機系及び無機系の核剤、中和剤、制酸剤、防菌剤、蛍光増白剤、有機系及び無機系の顔料、難燃性付与や熱安定性付与の目的で使用される有機系及び無機系の燐化合物などが挙げられる。前記添加剤を配合する場合、その含有量(複数の添加剤を用いる場合には合計含有量)は、熱伝導性絶縁エラストマー組成物中に30質量%以下であることが好ましく、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。
<熱伝導性絶縁エラストマー組成物>
本発明の熱伝導性絶縁エラストマー組成物の製造方法は特に制限されず、前記各成分を混合することにより製造することができる。本発明においては、前記組成物中における無機フィラーの分散性を高めて、無機フィラーが繋がって形成される連続体を形成しやすくする観点から、前記無機フィラーと前記トリアジンジチオール系化合物とを接触させて、前記無機フィラーの表面に前記トリアジンジチオール系化合物を付着させて表面修飾無機フィラーを得て、その後、得られた表面修飾無機フィラーを前記エラストマー中に分散させて熱伝導性絶縁エラストマー組成物を製造することが好ましい。
前記無機フィラーと前記トリアジンジチオール系化合物とを接触させる方法は特に制限されず、例えば、前記無機フィラーと前記トリアジンジチオール系化合物とを混合する方法、前記トリアジンジチオール系化合物を溶剤に溶かした溶液、又は前記トリアジンジチオール系化合物を溶剤に分散させた分散液中に、前記無機フィラーを浸漬し、前記無機フィラーを取り出した後、乾燥する方法などが挙げられる。
<熱伝導性絶縁エラストマー成形体>
本発明の熱伝導性絶縁エラストマー成形体は、前記熱伝導性絶縁エラストマー組成物を成形することにより得られる。前記熱伝導性絶縁エラストマー成形体の製造方法は特に制限されないが、前記熱伝導性絶縁エラストマー組成物を加圧及び/又は加熱して成形することが好ましい。成形方法としては、例えば、押出成形法、金型成形法、及びホットプレス法などが挙げられる。成形時の温度及び圧力は、使用するエラストマーの種類に応じて適宜調整する。
熱伝導性絶縁エラストマー成形体の形状は用途に応じて適宜選択することができ、例えば、シート状、板状、フィルム状、及びブロック状などが挙げられる。
以下、実施例および比較例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、前記及び後記の趣旨に適合し得る範囲で適宜変更して実施することが可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
製造例1
(下記式(7)で表されるトリアジンジチオール系化合物の製造)
Figure 2019214689
トリアジントリチオール17.72g(0.1mol)及び3−トリエトキシシリルプロピルアミン0.102molをトルエン100mLに加えて、混合物を得た。ここで、トリアジントリチオールはトルエンに分散しており、3−トリエトキシシリルプロピルアミンはトルエンに溶解している。そして、混合物を140℃で30分間撹拌して反応を進行させた。反応終了後、トルエンを減圧下で留去して回収し、ガス成分を20%NaOH水溶液に吸収させて、発生した硫化水素を除去した。得られた固体をエチルエーテルで洗浄し、微量の未反応アミンを除去して、粗トリアジンジチオール系化合物を96%以上の収率で得た。その後、粗トリアジンジチオール系化合物をイソプロパノールで再結晶して精製し、上記式(7)で表されるトリアジンジチオール系化合物を得た。再結晶後の前記トリアジンジチオール系化合物の融点は235〜236℃、元素分析値はC:40.2%、N:16.0%、S:18.2%であった。なお、融点分析には三田理研工業社製の融点測定器を使用した。また、炭素と窒素分析には柳本CHNコーダーを、硫黄分析にはパーキンエルマ社製のCHNコーダーを使用した。
製造例2
(表面修飾窒化アルミニウムフィラー(B1)の製造)
製造例1で製造したトリアジンジチオール系化合物をイオン交換水に溶解させて、0.1wt%の前記トリアジンジチオール系化合物を含む水溶液を得た。そして、窒化アルミニウムフィラー(古川電子(株)製、FAN−05)100gを、前記水溶液に10分間浸漬し、その後、取り出して100℃で60分乾燥して、表面修飾窒化アルミニウムフィラー(B1)を得た。
製造例3
(表面修飾窒化ホウ素フィラー(B2)の製造)
製造例1で製造したトリアジンジチオール系化合物をイオン交換水に溶解させて、0.1wt%の前記トリアジンジチオール系化合物を含む水溶液を得た。そして、窒化ホウ素フィラー(デンカ(株)製、SP−2)100gを、前記水溶液に10分間浸漬し、その後、取り出して100℃で60分乾燥して、表面修飾窒化ホウ素フィラー(B2)を得た。
実施例1
(熱伝導性絶縁エラストマー組成物の製造)
平均重合度が8000である、ジメチルビニル基で両末端封止したジメチルポリシロキサン(A1)60質量部、及び表面修飾窒化アルミニウムフィラー(B1)40質量部を混合した後、得られた混合物を150℃に予熱した東洋精機(株)製卓上型混練機(ラボプラストミル20C200)に投入し、40rpmで10分間混練して、熱伝導性絶縁エラストマー組成物を得た。
実施例2
(熱伝導性絶縁エラストマー組成物の製造)
平均重合度が8000である、ジメチルビニル基で両末端封止したジメチルポリシロキサン(A1)50質量部、2−メチルベンゾイルパーオキサイド10部、及び表面修飾窒化ホウ素フィラー(B2)40質量部を混合した後、得られた混合物を150℃に予熱した東洋精機(株)製卓上型混練機(ラボプラストミル20C200)に投入し、40rpmで10分間混練して、熱伝導性絶縁エラストマー組成物を得た。
実施例3
(熱伝導性絶縁エラストマー組成物の製造)
平均重合度が8000である、ジメチルビニル基で両末端封止したジメチルポリシロキサン(A1)50質量部、及び表面修飾窒化アルミニウムフィラー(B1)2質量部を混合した後、得られた混合物を150℃に予熱した東洋精機(株)製卓上型混練機(ラボプラストミル20C200)に投入し、40rpmで10分間混練した。得られた混練物を取り出した後、チップ状にカットし、得られたチップとアルミナフィラー48質量部とを混合したのち、再度、40rpmで10分間混練して、熱伝導性絶縁エラストマー組成物を製造した。
実施例4、5、及び8
(熱伝導性絶縁エラストマー組成物の製造)
シリコーン系エラストマー及びフィラーの種類と配合量を、表1に示すように変更した以外は実施例3と同様の方法で熱伝導性絶縁エラストマー組成物を製造した。
実施例6
(熱伝導性絶縁エラストマー組成物の製造)
信越シリコーン KE−541−U(信越化学工業株式会社製)(A3)40質量部、2−メチルベンゾイルパーオキサイド10部、及び表面修飾窒化ホウ素フィラー(B2)2質量部を混合した後、得られた混合物を150℃に予熱した東洋精機(株)製卓上型混練機(ラボプラストミル20C200)に投入し、40rpmで10分間混練した。得られた混練物を取り出した後、チップ状にカットし、得られたチップとアルミナフィラー48質量部とを混合したのち、再度、40rpmで10分間混練して、熱伝導性絶縁エラストマー組成物を製造した。
実施例7
(熱伝導性絶縁エラストマー組成物の製造)
フィラーの種類を、表1に示すように変更した以外は実施例6と同様の方法で熱伝導性絶縁エラストマー組成物を製造した。
比較例1〜4
(熱伝導性絶縁エラストマー組成物の製造)
シリコーン系エラストマー及びフィラーの種類と配合量を、表1に示すように変更した以外は実施例1と同様の方法で熱伝導性絶縁エラストマー組成物を製造した。
〔評価方法〕
熱伝導率、耐熱性、耐湿熱性、熱抵抗、及び絶縁破壊電圧の評価を以下の方法で行った。
(評価用シートサンプルの作製)
評価用シートサンプルは、ヒートプレス機(テスター産業(株)製、SA−302−I)を用いて作製した。所定の厚みを有する型枠内に、実施例及び比較例で作製した熱伝導性絶縁エラストマー組成物を入れ、シリコーン系エラストマーの融点+20℃の温度条件で2分間溶融させた。得られた溶融物に100kgf/cmの荷重をかけ、1分後に水につけて急冷し、所定厚みの評価用シートサンプルを得た。
(熱伝導率の測定)
比熱は、TAインスツルメンツ(株)製のDSC2920を用いて測定した。実施例及び比較例で作製した熱伝導性絶縁エラストマー組成物(サンプル)10.0mgをアルミパンに入れ、室温から10℃/分の昇温温度で200℃まで昇温し、200℃に達してから5分間保持した。その後、10℃/分で降温した。同様に、基準物質としてサファイア26.8mgをアルミパンに入れ、同条件で測定した。さらに、ブランクとしてサンプルを入れていない空のアルミパンを同条件で測定した。それぞれのDSC曲線の23℃におけるHeat Flowの値を読み取り、下記式により比熱容量を算出した。

Cp=(h/H)×(m’/m)×C’p

Cp:サンプルの比熱
C’p:23℃における基準物質(サファイア)の比熱
h:ブランクとサンプルのDSC曲線の差
H:ブランクと基準物質(サファイア)のDSC曲線の差
m:サンプルの質量(g)
m’:基準物質(サファイア)の質量(g)

比重は、東洋精機(株)製の自動比重計D−H100を用いて測定した。作製した評価用シートサンプルをヒートプレスして、厚さ0.5mmのシートを得た。そして、当該シートを10mm×10mmのサイズに切断して比重測定用サンプルを得た。作製した比重測定用サンプルを用いて、水中置換法により比重測定を行った。
熱拡散率は、アイフェイズ(株)製の熱拡散係数測定装置ai−phase Mobile1を用いて測定した。作製した評価用シートサンプルをヒートプレスして、厚さ0.5mmのシートを得た。作製したシートを用いて、厚み方向の熱拡散率を測定した。
そして、熱伝導率は、前記方法で求めた比熱、比重、及び熱拡散率から下式により算出した。

熱伝導率(W/m・K)=比重×比熱(J/g・K)×熱拡散率(m/sec)
(耐熱性の評価)
作製した評価用シートサンプルをヒートプレスして、厚さ1mmのシートを得た。そして、当該シートを10mm×50mmのサイズに切断して耐熱性評価用サンプルを得た。耐熱性評価用サンプルを恒温槽に投入し、温度85℃で1000時間経過後、その引張伸度を測定し、初期値の50%となる温度を調べた。そして、下記基準で評価した。初期値の50%となる温度が高いほど耐熱性が高いことを示す。
◎:160℃以上
○:130℃以上160℃未満
△:110℃以上130℃未満
×:110℃未満
(耐湿熱性の評価)
作製した評価用シートサンプルをヒートプレスして、厚さ1mmのシートを得た。そして、当該シートを10mm×50mmのサイズに切断して耐湿熱性評価用サンプルを得た。耐湿熱性評価用サンプルを恒温恒湿槽に投入し、85℃×85%Rhの条件下におけるサンプルの膨張率を観察した。恒温恒湿槽投入前と投入1000時間経過後のサンプルの長さ、幅、及び厚さ(mm)をそれぞれ測定し、各方向における膨張率(%)を算出した。さらに、それらの積をとり、体積膨張率(%)を算出した。このとき恒温恒湿槽投入前の膨張率を100%とする。なお、測定には定圧ノギスを使用した。体積膨張率は小さいほど好ましい。体積膨張率が110%以下であると、脆性の悪化が小さく、良好である。体積膨張率が110%を超えると、脆性が悪化するため、高湿度下での使用は好ましくない。
(熱抵抗の測定)
作製した評価用シートサンプルをヒートプレスして、厚さ0.3mmのシートを得た。当該シートの熱抵抗は、ASTM D5470に従って測定した。熱抵抗は、0.6×10e−3(mK/W)以下であることが好ましい。なお、熱抵抗はシートの厚さにほぼ比例する。
(絶縁破壊電圧の測定)
作製した評価用シートサンプルをヒートプレスして、厚さ0.1mmのシートを得た。当該シートの絶縁破壊電圧は、JIS K6249に従って測定した。絶縁破壊電圧は、3kV以上であることが好ましい。なお、絶縁破壊電圧はシートの厚さにほぼ比例する。
Figure 2019214689
表1中の化合物は以下のとおりである。
A1:平均重合度が8000である、ジメチルビニル基で両末端封止したジメチルポリシロキサン
A2:平均重合度が10000である、ジメチルビニル基で両末端封止したジメチルポリシロキサン
A3:信越シリコーン KE−541−U(信越化学工業株式会社製)
B1:製造例2で作製した表面修飾窒化アルミニウムフィラー
B2:製造例3で作製した表面修飾窒化ホウ素フィラー
本発明の熱伝導性絶縁エラストマー成形体は、自動車部材、及び電子回路基板等の絶縁性と放熱性が求められる部材の材料として有用である。

Claims (9)

  1. シリコーン系エラストマー及びフッ素系エラストマーからなる群より選択される少なくとも1種のエラストマー、無機フィラー、及び下記一般式(1)で表されるトリアジンジチオール系化合物を含有する熱伝導性絶縁エラストマー組成物。
    Figure 2019214689
    (式中、M及びMはそれぞれ独立にH、Li、Na、K、又はCsであり、RはS、O、又はNRであり、RはH、又はアルキル基、ハロゲン化アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基、アルケニル基、ハロゲン化アルケニル基、ヒドロキシアルケニル基、アルコキシアルケニル基、フェニル基、ハロゲン化フェニル基、ヒドロキシフェニル基、アルコキシフェニル基、ビフェニル基、ハロゲン化ビフェニル基、ヒドロキシビフェニル基、アルコキシビフェニル基、ナフチル基、ハロゲン化ナフチル基、ヒドロキシナフチル基、アルコキシナフチル基、カルボキシル基、エステル基、ウレタン基、アゾ基、シアノ基、アミノ基、アミド基、及びアルコキシシリル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する有機基であり、Rは前記有機基と同じであり、あるいはNRとRはヘテロ環を構成する。)
  2. 前記トリアジンジチオール系化合物は、下記一般式(2)〜(4)で表されるトリアジンジチオール系化合物の少なくとも1種である請求項1に記載の熱伝導性絶縁エラストマー組成物。
    Figure 2019214689
    (式中、M、M、R、及びRは前記と同じである。)
    Figure 2019214689
    (式中、M及びMは前記と同じであり、RはS、O、−NHCHCHO−、−N(CH)CHCHO−、−N(C)CHCHO−、−NHCHCHCHCHO−、−N(C)CHCHCHCHO−、−NHCH(CHCHO−、−NHCHCH(CH)O−、−NHCO−、−N(C)CO−、−NHC10O−、−N(CHCHCHO−、−N(CHCHNCHCHO−、−N(CHCHOH)CHCHO−、−N(CHCHCHOH)CHCHCHO−、−N(CHCH(CH)OH)CHCH(CH)O−、−N(CHCHCHCHOH)CHCHCHCHO−、−NHCHO−、−NHC11O−、又は−N(C)CO−であり、Rはアルキレン基であり、Rはアルコキシ基であり、R及びRはそれぞれ独立にアルコキシ基又はアルキル基である。)
    Figure 2019214689
    (式中、M、M、及びR〜Rは前記と同じであり、Rは水素又はアルキル基であり、Rはアルキレン基又はアルキレンオキシ基であり、RとRは互いに結合して環を形成してもよい。)
  3. 前記無機フィラーは、窒化アルミニウムフィラー及び窒化ホウ素フィラーからなる群より選択される少なくとも1種を含む請求項1又は2に記載の熱伝導性絶縁エラストマー組成物。
  4. 前記無機フィラーの含有量は、前記エラストマー100質量部に対して20〜400質量部である請求項1〜3のいずれかに記載の熱伝導性絶縁エラストマー組成物。
  5. 前記トリアジンジチオール系化合物の含有量は、前記無機フィラー100質量部に対して5×10−7〜5質量部である請求項1〜4のいずれかに記載の熱伝導性絶縁エラストマー組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の熱伝導性絶縁エラストマー組成物から得られる熱伝導性絶縁エラストマー成形体。
  7. 前記熱伝導性絶縁エラストマー成形体は、熱伝導性絶縁エラストマーシートである請求項6に記載の熱伝導性絶縁エラストマー成形体。
  8. 請求項6又は7に記載の熱伝導性絶縁エラストマー成形体の製造方法であって、前記無機フィラーと前記トリアジンジチオール系化合物とを接触させて、前記無機フィラーの表面に前記トリアジンジチオール系化合物を付着させて表面修飾無機フィラーを得る工程A、前記表面修飾無機フィラーを前記エラストマー中に分散させて前記熱伝導性絶縁エラストマー組成物を得る工程B、及び前記熱伝導性絶縁エラストマー組成物を成形する工程Cを含む熱伝導性絶縁エラストマー成形体の製造方法。
  9. 前記工程Cにおいて、前記熱伝導性絶縁エラストマー組成物を加圧及び/又は加熱して成形する請求項8に記載の熱伝導性絶縁エラストマー成形体の製造方法。
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