JP2019192540A - リチウムイオン二次電池用電極製造用ペーストの製造方法、リチウムイオン二次電池用電極の製造方法、リチウムイオン二次電池用電極およびリチウムイオン二次電池 - Google Patents

リチウムイオン二次電池用電極製造用ペーストの製造方法、リチウムイオン二次電池用電極の製造方法、リチウムイオン二次電池用電極およびリチウムイオン二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】リチウムイオン二次電池用電極の設計自由度を下げることなく、電池特性が良好なリチウムイオン二次電池を安定的に得ることができる電極製造用ペーストを得るための電極製造用ペーストの製造方法を提供する。【解決手段】本発明のリチウムイオン二次電池用電極製造用ペーストの製造方法は、活物質、バインダーおよび分散媒を含むペースト前駆体に、導電助剤分散液を添加して湿式混合することにより電極製造用ペーストを調製する工程(B)を含む。【選択図】なし

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池用電極製造用ペーストの製造方法、リチウムイオン二次電池用電極の製造方法、リチウムイオン二次電池用電極およびリチウムイオン二次電池に関する。
リチウムイオン二次電池に用いられる電極は、一般的に電極活物質層と集電体から主に構成されている。例えば、電極活物質層は、アルミニウム箔や銅箔等の集電体表面に、活物質、導電助剤およびバインダー等を含む電極製造用ペーストを塗布して乾燥することにより作製することができる。
電極製造用ペーストの製造方法としては、例えば、特許文献1および2に記載の方法が挙げられる。
特許文献1(特開2012−243470号)には、活物質及びバインダーを含む原料に溶媒を添加して混練することにより固練り状の混練物を得る固練り工程と、固練り工程で得られた混練物を溶媒で希釈して該混練物から活物質層形成用スラリーを得る希釈工程とを含む、電極製造用ペーストの製造方法が記載されている。
特許文献2(特開2016−103391号)には、超音波型分散機を用いて導電助剤、バインダー、有機溶媒の混合物を分散処理して導電助剤分散ペーストを得る工程、正極活物質と前工程で得られた導電助剤分散ペーストを混合する工程からなることを特徴とする正極活物質ペーストの製造方法が記載されている。
特開2012−243470号 特開2016−103391号
ここで、電極活物質層に不均一な部分があると、得られるリチウムイオン二次電池の性能が低下してしまう場合がある。このような不均一な電極活物質層は、電極製造用ペーストが不均一な場合に得られやすい。よって、均一な電極活物質層を得るためには電極製造用ペーストの中で、活物質、導電助剤およびバインダー等の各成分を均一に分散させることが極めて重要になる。
しかしながら、本発明者の検討により、特許文献1に記載されている製造方法により得られた電極製造用ペーストには微細な凝集物が存在する場合があり、このような電極製造用ペーストを用いて作製した電極を備えるリチウムイオン二次電池はサイクル特性やレート特性等の電池特性に劣る場合があることが明らかになってきた。
また、特許文献2に記載されている製造方法では、導電助剤分散ペースト中の導電助剤とバインダーの比率が導電助剤分散ペースト作製工程によって決定されるので、様々な特性が求められるリチウムイオン二次電池用電極の多様な設計に適用することが難しいことや、各工程でそれぞれ別のミキサーを用いなければならず、工程が複雑であることが明らかになってきた。
そこで、本発明ではリチウムイオン二次電池用電極の設計自由度を下げることなく、電池特性が良好なリチウムイオン二次電池を安定的に得ることができる電極製造用ペーストを得るための電極製造用ペーストの製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、電極製造用ペースト中に微細な凝集物が発生してしまう要因について鋭意検討した。その結果、粉末状態のバインダーと導電助剤分散液が接触すると塊が生じ、この塊が電極製造用ペースト中の微細な凝集物の原因であり、さらに、得られるリチウムイオン二次電池の電池特性の悪化の要因であることを知見した。
本発明者らは、上記知見をもとにさらに検討を重ねた。その結果、活物質、バインダーおよび分散媒を含むペースト前駆体に、導電助剤分散液を添加して湿式混合することによって、電極製造用ペースト中の微細な凝集物の発生を抑制でき、その結果、電池特性が良好なリチウムイオン二次電池を安定的に得ることができることを見出して本発明を完成させた。
本発明はこのような知見に基づいて発案されたものである。
すなわち、本発明によれば、以下に示すリチウムイオン二次電池用電極製造用ペーストの製造方法、リチウムイオン二次電池用電極の製造方法、リチウムイオン二次電池用電極およびリチウムイオン二次電池が提供される。
本発明によれば、
リチウムイオン二次電池用電極製造用ペーストの製造方法であって、
活物質、バインダーおよび分散媒を含むペースト前駆体に、導電助剤分散液を添加して湿式混合することにより電極製造用ペーストを調製する工程(B)を含むリチウムイオン二次電池用電極製造用ペーストの製造方法が提供される。
また、本発明によれば、
集電体の少なくとも一方の面に、上記リチウムイオン二次電池用電極製造用ペーストを塗布して乾燥することによって、上記リチウムイオン二次電池用電極製造用ペーストの固形分により形成された活物質層を形成する工程、を含むリチウムイオン二次電池用電極の製造方法が提供される。
また、本発明によれば、
集電体と、上記集電体の少なくとも一方の面に設けられ、かつ、上記リチウムイオン二次電池用電極製造用ペーストの製造方法により得られたリチウムイオン二次電池用電極製造用ペーストの固形分により形成された活物質層と、を含むリチウムイオン二次電池用電極が提供される。
また、本発明によれば、
正極と、電解質層と、負極とを少なくとも備えた電池であって、
上記正極および上記負極のうち少なくとも一方が上記リチウムイオン二次電池用電極を含むリチウムイオン二次電池が提供される。
本発明によれば、リチウムイオン二次電池用電極の設計自由度を下げることなく、電池特性が良好なリチウムイオン二次電池を安定的に得ることができる電極製造用ペーストを得るための電極製造用ペーストの製造方法を提供することができる。
本発明に係る実施形態のリチウムイオン二次電池用電極の構造の一例を示す断面図である。 本発明に係る実施形態のリチウムイオン二次電池の構造の一例を示す断面図である。
以下に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図において各構成要素は本発明が理解できる程度の形状、大きさおよび配置関係を概略的に示したものであり、実寸とは異なっている。また、数値範囲の「A〜B」は特に断りがなければ、A以上B以下を表す。
なお、本実施形態では特に断りがなければ、活物質を含む層を電極活物質層と呼び、集電体上に電極活物質層を形成させたものを電極と呼ぶ。
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池用電極製造用ペーストの製造方法は、以下の工程(B)を含み、必要に応じて工程(B)の前に工程(A)を含む。
(A)粉末状態の活物質および粉末状態のバインダーを少なくとも含む混合物に、分散媒を加えて混練し、ペースト前駆体を調製する工程
(B)活物質、バインダーおよび分散媒を含むペースト前駆体に、導電助剤分散液を添加して湿式混合することにより電極製造用ペーストを調製する工程
本発明者の検討により、特許文献1の製造方法において、導電助剤ペーストを用いて固練り上の混練物を得る固練り工程を経て電極製造用ペーストを作製した場合、電極製造用ペースト中に微細な凝集物が存在する場合があり、このような電極製造用ペーストを用いて作製した電極を備えるリチウムイオン二次電池はサイクル特性やレート特性等の電池特性に劣る場合があることが明らかになってきた。また、特許文献2に記載されている製造方法では、導電助剤分散ペースト中の導電助剤とバインダーの比率が導電助剤ペースト作製工程によって決定されるので、多様な電極設計に対して導電助剤ペーストをそれぞれ作製しなければならず、設計の自由度が低いことが明らかになった。
本発明者らは、電極製造用ペースト中に微細な凝集物が発生してしまう要因について鋭意検討した。その結果、粉末状態のバインダーと導電助剤分散液が接触すると塊が生じ、この塊が電極製造用ペースト中の微細な凝集物の原因であり、さらに、得られるリチウムイオン二次電池の電池特性の悪化の要因であることを知見した。
本発明者らは、上記知見をもとにさらに検討を重ねた。その結果、活物質、バインダーおよび分散媒を含むペースト前駆体に、導電助剤分散液を添加して湿式混合することにより、工程(B)において導電助剤の凝集を抑制しながら、電極製造用ペーストを構成する各材料の分散性を高めることができることを明らかにした。そして、このようにして得られた電極製造用ペーストを用いて得られた電極を備えるリチウムイオン二次電池は電池特性に優れることを見出した。
以下、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池用電極製造用ペーストの製造方法について、詳細に説明する。
<電極製造用ペーストの構成材料>
はじめに、本実施形態に係る電極製造用ペーストの製造方法で用いる各構成材料について説明する。本実施形態に係る電極製造用ペーストは、活物質(a)、導電助剤(b)、バインダー(c)および分散媒(d)を必須成分として含む。
本実施形態に係る活物質(a)は用途に応じて適宜選択される。正極を作製するときは正極活物質を使用し、負極を作製するときは負極活物質を使用する。
正極活物質としてはリチウムイオン二次電池の正極に使用可能な通常の正極活物質であれば特に限定されない。例えば、リチウム−ニッケル複合酸化物、リチウム−コバルト複合酸化物、リチウム−マンガン複合酸化物、リチウム−ニッケル−マンガン複合酸化物、リチウム−ニッケル−コバルト複合酸化物、リチウム−ニッケル−アルミニウム複合酸化物、リチウム−ニッケル−コバルト−アルミニウム複合酸化物、リチウム−ニッケル−マンガン−コバルト複合酸化物、リチウム−ニッケル−マンガン−アルミニウム複合酸化物、リチウム−ニッケル−コバルト−マンガン−アルミニウム複合酸化物等のリチウムと遷移金属との複合酸化物;TiS、FeS、MoS等の遷移金属硫化物;MnO、V、V13、TiO等の遷移金属酸化物、オリビン型リチウムリン酸化物等が挙げられる。
オリビン型リチウムリン酸化物は、例えば、Mn、Cr、Co、Cu、Ni、V、Mo、Ti、Zn、Al、Ga、Mg、B、Nb、およびFeよりなる群のうちの少なくとも1種の元素と、リチウムと、リンと、酸素とを含んでいる。これらの化合物はその特性を向上させるために一部の元素を部分的に他の元素に置換したものであってもよい。
これらの中でも、オリビン型リチウム鉄リン酸化物、リチウム−ニッケル複合酸化物、リチウム−コバルト複合酸化物、リチウム−マンガン複合酸化物、リチウム−ニッケル−マンガン複合酸化物、リチウム−ニッケル−コバルト複合酸化物、リチウム−ニッケル−アルミニウム複合酸化物、リチウム−ニッケル−コバルト−アルミニウム複合酸化物、リチウム−ニッケル−マンガン−コバルト複合酸化物、リチウム−ニッケル−マンガン−アルミニウム複合酸化物、リチウム−ニッケル−コバルト−マンガン−アルミニウム複合酸化物が好ましい。これらの正極活物質は作用電位が高いことに加えて容量も大きく、大きなエネルギー密度を有する。
正極活物質は、一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
負極活物質としては、リチウムイオン二次電池の負極に使用可能な通常の負極活物質であれば特に限定されない。例えば、リチウムを吸蔵する黒鉛、非晶質炭素、ダイヤモンド状炭素、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン等の炭素材料;リチウム金属、リチウム合金等のリチウム系金属材料;Si、SiO、SiOx(0<x≦2)、Si含有複合材料等のSi系材料;ポリアセン、ポリアセチレン、ポリピロール等の導電性ポリマー材料等が挙げられる。これらの中でも炭素材料が好ましく、特に天然黒鉛や人造黒鉛等の黒鉛質材料が好ましい。
負極活物質は1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
電極製造用ペースト中の活物質(a)の含有量は、本実施形態に係る電極製造用ペーストの固形分の全量を100質量部としたとき、90質量部以上99質量部以下であることが好ましく、94質量部以上98質量部以下であることがより好ましい。
導電助剤(b)は、電子伝導性を有しており、電極の導電性を向上させるものであれば特に限定されない。本実施形態に係る導電助剤(b)として、例えば、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノブラシ、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、グラフェン、グラファイト等の炭素材料が挙げられる。これらの導電助剤(b)は1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
電極製造用ペースト中の導電助剤(b)の含有量は、本実施形態に係る電極製造用ペーストの固形分の全量を100質量部としたとき、0.1質量部以上8質量部以下であることが好ましく、0.2質量部以上4質量部以下であることがより好ましい。
バインダー(c)は、電極形成が可能であり、十分な電気化学的安定性を有していれば特に限定されないが、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン系樹脂(例えば、PVDF等)、フッ素ゴム等のフッ素系バインダー樹脂が挙げられる。これらのバインダーを1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
電極製造用ペースト中のバインダー(c)の含有量は、本実施形態に係る電極製造用ペーストの固形分の全量を100質量部としたとき、0.5質量部以上8質量部以下であることが好ましく、1質量部以上4質量部以下であることがより好ましい。
分散媒(d)は、バインダー(c)を溶解できるものであれば特に限定されないが、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)が挙げられる。また、NMPには、水やアルコール等の他の分散媒を混合させてもよい。
<電極製造用ペーストの製造方法>
次に、本実施形態に係る電極製造用ペーストの製造方法について説明する。
本実施形態に係る電極製造用ペーストの製造方法は、活物質(a)と、導電助剤(b)と、バインダー(c)と、分散媒(d)と、を含むリチウムイオン二次電池の電極製造用ペーストを製造するための製造方法であり、以下の工程(B)を含み、必要に応じて工程(B)の前に工程(A)を含む。
(A)粉末状態の活物質(a)および粉末状態のバインダー(c)を少なくとも含む混合物に、分散媒(d)を加えて混練し、ペースト前駆体を調製する工程
(B)活物質(a)、バインダー(c)および分散媒(d)を含むペースト前駆体に、導電助剤分散液を添加して湿式混合することにより電極製造用ペーストを調製する工程
以下、各工程について説明する。
[(A)ペースト前駆体を調製する工程]
(A)ペースト前駆体を調製する工程では、例えば、ミキサー等の混合機を用いて、粉末状態の活物質(a)および粉末状態のバインダー(c)を混合して混合粉末とし、この混合粉末に分散媒(d)を追加して混練することにより、ペースト前駆体を調製することができる。
混練を行う混合機としては、バッチ式のミキサーを用いることが好ましく、遊星運動型プラネタリーミキサーを用いることがより好ましい。このような混合機を用いることにより、活物質(a)の分散を促進させることができるとともに、粉末としてのバインダー(c)を十分に分散媒に溶解することができる。なお、遊星運動型ミキサーは、撹拌機構として自転と公転を有するブレードを持つミキサーをいう。
工程(A)における上記混練の混練時間は特に限定されないが、例えば5分以上1時間以下である。
工程(A)における上記混練の温度は、特に限定されないが、例えば20℃以上70℃以下である。
また、工程(A)で調製されるペースト前駆体の固形分濃度は、70質量%以上90質量%以下に調節することが好ましい。
ペースト前駆体の固形分濃度が90質量%以下であると、粉末状態のバインダ(c)の分散媒(d)への溶解性を向上させることができ、より一層良好なペースト前駆体を調製することができる。また、ペースト前駆体の固形分濃度が70質量%以上であると、粉末状態の活物質(a)の粒子に、強いせん断力をかけることができ、活物質(a)の分散性をより一層高めることができるため、より一層良好なペースト前駆体を調製することができる。
したがって、ペースト前駆体の固形分濃度が70質量%以上90質量%以下の範囲内であることを満たすと、得られる電極製造用ペーストは、電極活物質の分散性に優れるため、このような電極製造用ペーストを用いると、より一層均一な電極活物質層を得ることができる。その結果、より一層電池特性に優れたリチウムイオン二次電池を得ることができる。
[(B)電極製造用ペーストを調製する工程]
(B)電極製造用ペーストを調製する工程では、活物質(a)、バインダー(c)および分散媒(d)を含むペースト前駆体に、導電助剤分散液(導電助剤(b)を含む分散液)を添加して湿式混合することにより電極製造用ペーストを調製する。本実施形態に係る導電助剤分散液は、本発明の効果を損なわない範囲で、導電助剤(b)以外の添加剤を含んでもよいし、導電助剤(b)のみを含んでもよいが、導電助剤(b)のみを含むことが好ましい。
混合を行う混合機としては、工程(A)で用いた遊星運動型ミキサーを引き続き用いるのが好ましいが、上記ペースト前駆体および導電助剤分散液を飛散なく混合できるものであれば、特に限定されるものではない。
この結果として、得られる電極製造用ペーストは、導電助剤の分散性に優れるため、このような電極製造用ペーストを用いると、より一層均一な電極活物質層を得ることができる。その結果、より一層電池特性に優れたリチウムイオン二次電池を得ることができる。
工程(B)における上記混練の混練時間は特に限定されないが、例えば10分以上1時間以下である。
工程(B)における上記混練の温度は、特に限定されないが、例えば15℃以上30℃以下である。
ここで、工程(B)では、分散媒(d)を更に追加して、電極製造用ペーストの粘度を塗工に適した粘度に調整してもよい。また、ペースト中に巻き込んだ気泡を取り除くことを目的とした、真空脱泡工程を行ってもよい。これにより、ペーストの塗工性を向上させることができる。
真空脱泡は混合機の容器や軸部にシール処理を施して気泡を除去してもよいし、別の容器に移してから行ってもよい。
<リチウムイオン二次電池用電極の製造方法>
次に、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池用電極100の製造方法について説明する。図1は、本発明に係る実施形態のリチウムイオン二次電池用電極100の構造の一例を示す断面図である。
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池用電極100の製造方法は、例えば、以下の(1)および(2)の2つの工程を少なくとも含む。
(1)上記電極製造用ペーストの製造方法により電極製造用ペーストを作製する工程
(2)得られた上記電極製造用ペーストを用いてリチウムイオン二次電池用電極100を形成する工程
以下、各工程について説明する。
[(1)電極製造用ペーストを作製する工程]
本実施形態における(1)電極製造用ペーストを作製する工程は、前述した本実施形態に係る電極製造用ペーストの製造方法を用いて電極製造用ペーストを調製する。ここでは説明は省略する。
[(2)得られた電極製造用ペーストを用いて電極を形成する工程]
電極を形成する工程では、例えば、上記工程(1)により得られた電極製造用ペーストを集電体101上に塗布して乾燥し、電極活物質層103を形成することにより、集電体101に電極活物質層103が形成されたリチウムイオン二次電池用電極100を得る。
電極製造用ペーストを集電体101に塗布する方法は、一般に公知の方法を用いることができる。例えば、リバースロール法、ダイレクトロール法、ドクターブレード法、ナイフ法、エクスルトルージョン法、カーテン法、グラビア法、バー法、ディップ法およびスクイーズ法等を挙げることができる。
電極製造用ペーストは、集電体101の片面のみに塗布しても両面に塗布してもよい。集電体101の両面に塗布する場合は、片面ずつ逐次でも、両面同時に塗布してもよい。また、集電体101の表面に連続で、あるいは、間欠で塗布してもよい。塗布層の厚さ、長さや幅は、電池の大きさに応じて、適宜決定することができる。
塗布した電極製造用ペーストの乾燥方法は、一般に公知の方法を用いることができる。特に、熱風、赤外線、遠赤外、電子線および低温風を単独あるいは組み合わせて用いることが好ましい。乾燥温度は、通常は30℃以上350℃以下の範囲である。
本実施形態に係る集電体101としては、リチウムイオン二次電池に使用可能な通常の集電体であれば特に限定されないが、正極集電体層としては、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル、チタンまたはこれらの合金等を用いることができ、その形状としては箔、平板状、メッシュ状等が挙げられる。価格や入手容易性、電気化学的安定性等の観点から、例えば厚さが0.001〜0.05mmの範囲のアルミニウム箔を好適に用いることができる。
また、負極集電体としては、銅、ステンレス鋼、ニッケル、チタンまたはこれらの合金を用いることができる。その形状としては、箔、平板状、メッシュ状が挙げられる。価格や入手容易性、電気化学的安定性等の観点から、例えば厚さが0.001〜0.05mmの範囲の銅箔を好適に用いることができる。
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池用電極100は、必要に応じてプレスしてもよい。プレスの方法としては、一般的に公知の方法を用いることができる。例えば、金型プレス法やカレンダープレス法等が挙げられる。プレス圧は特に限定されないが、例えば0.5〜3t/cmの範囲である。
本実施形態に係る電極活物質層103の厚みや密度は、電池の使用用途等に応じて適宜決定されるため特に限定されず、一般的に公知の情報に準じて設定することができる。
<リチウムイオン二次電池用電極>
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池用電極100は、上述したリチウムイオン二次電池用電極100の製造方法により得ることができる。
<リチウムイオン二次電池>
以下、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池150について説明する。図2は、本発明に係る実施形態のリチウムイオン二次電池150の構造の一例を示す断面図である。
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池150は、正極120と、電解質層110と、負極130とを少なくとも備え、正極120および負極130のうち少なくとも一方が本実施形態に係るリチウムイオン二次電池用電極100を含む。また、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池150は、必要に応じてセパレーターを含んでもよい。
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池150は、公知の方法に準じて作製することができる。
電極は、例えば、積層体や捲回体が使用できる。外装体としては、金属外装体やアルミラミネート外装体が適宜使用できる。電池の形状は、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角型、扁平型等いずれの形状であってもよい。
(電解質層)
電解質層110に使用される電解質としては、公知のリチウム塩がいずれも使用でき、活物質の種類に応じて選択すればよい。例えば、LiClO、LiBF、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiB10Cl10、LiAlCl、LiCl、LiBr、LiB(C、CFSOLi、CH SOLi、LiCFSO、LiCSO、Li(CFSON、低級脂肪酸カルボン酸リチウム等が挙げられる。
電解質を溶解する溶媒としては、電解質を溶解させる液体として通常用いられるものであればとくに限定されるものではなく、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ビニレンカーボネート(VC)等のカーボネート類;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等のラクトン類;トリメトキシメタン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、2−エトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等のエーテル類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン等のオキソラン類;アセトニトリル、ニトロメタン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド等の含窒素類;ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等の有機酸エステル類;リン酸トリエステルやジグライム類;トリグライム類;スルホラン、メチルスルホラン等のスルホラン類;3−メチル−2−オキサゾリジノン等のオキサゾリジノン類;1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、ナフタスルトン等のスルトン類等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
(セパレーター)
電解質層110に用いられるセパレーターとしては、例えば、多孔性セパレーターが挙げられる。セパレーターの形態は、膜、フィルム、不織布等が挙げられる。
多孔性セパレーターとしては、例えば、ポリプロピレン系、ポリエチレン系等により形成されたポリオレフィン系多孔性セパレーター;ポリビニリデンフルオリド、ポリエチレンオキシド、ポリアクリロニトリル、ポリビニリデンフルオリドヘキサフルオロプロピレン共重合体等により形成された多孔性セパレーターが挙げられる。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
また、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
<正極製造用ペーストの作製>
(1)工程(A)
遊星型プラネタリーミキサーに、正極活物質(a)として、平均粒子径8.4μm、BET比表面積0.44m/gの層状結晶構造を有するニッケル複合酸化物(LiNi0.8Co0.1Mn0.1)1500gと、バインダーであるフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)22.96gとを投入した。
次いで、自転速度:0.25m/sec、公転速度:0.08m/sec、温度:25℃の条件下で10分間乾式混合を行い、粉体混合物を得た。
さらに、分散媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)182.8gを投入して、自転速度:0.75m/sec、公転速度:0.24m/sec、温度60℃の条件下で15分間固練りを行った。そして、NMPを121.8g加えて、自転速度:0.75m/sec、公転速度:0.24m/sec、温度25℃の条件下で15分間混練することで、固形分濃度が83%のペースト前駆体を得た。
(2)工程(B)
工程(B)を実施するに先立って、導電助剤(b)としてカーボンナノチューブ(CNT)50g、分散媒としてNMPを用い、これらを高速分散機で分散処理して6質量%濃度の導電助剤分散液を作製した。
工程(A)で得られたペースト前駆体に、上記の導電助剤分散液127.6g投入し、自転速度:0.25m/sec、公転速度:0.08m/sec、温度:25℃の条件下で10分間湿式混合を行ったのち、粘度調整としてNMPを141.9g投入して自転速度:0.25m/sec、公転速度:0.08m/sec、温度:25℃の条件下で10分間湿式混合した。次いで、真空脱泡を行い、正極製造用ペーストを得た。
このときの電極組成は正極活物質:導電助剤:バインダー=98:0.5:1.5(質量比)となっている。
<正極の作製>
得られた正極製造用ペーストを集電体であるアルミニウム箔の両面にダイコータを用いて間欠的に塗布し、乾燥した。次いで、得られた電極をプレスして、正極を得た。
この正極極を、後に正極端子と接続する耳部を残した状態で縦125mm、横65mmに打ちぬいた(耳部の寸法は除く)。
<負極の作製>
負極活物質として表面が非晶質の炭素で被覆された天然黒鉛100gと、導電助剤として約30nmの1次粒子が連鎖状に凝集したカーボンブラック(窒素吸着BET法による比表面積:60m/g)1.0gとを増粘剤であるカルボキシルメチルセルロース(CMC)の1.0質量%水溶液に入れ、遊星型プラネタリーミキサーで混合した。ついで、バインダーとしてスチレンブタジエンゴム(SBR)を水に分散した固形分濃度40質量%のSBR水溶液を5.208g添加し、適宜水を加えてペースト粘度を調整しながら遊星運動型プラネタリーミキサーを用いて、これらの材料を混合することにより、リチウムイオン二次電池用の負極製造用ペーストを得た。
得られた負極製造用ペーストを集電体である銅箔の両面にダイコータを用いて間欠的に塗布、乾燥し、さらにプレスをすることで正極を得た。
この負極を、後に負極端子と接続する耳部を残した状態で縦130mm、横70mmに打ちぬいた(ただし耳部の寸法は除く)。
<電極体の作製>
縦131mm、横70mmのセパレーターを準備し、セパレーターを介して正極を6層、負極を7層積層した。同極性の耳部が同じ位置に重なるようにして繰り返し交互に積み重ね、最外層が負極となるようにした。
負極の耳部を互いに溶接し、さらにニッケル製の負極端子の一端を溶接した。正極の耳部も互いに溶接し、さらにアルミニウム製の正極端子の一端を溶接した。
<ラミネート電池の作製>
正極端子および負極端子が取り付けられた電極体を、ラミネートフィルムからなる可撓性の容器に電解液とともに収容した。このとき、正極端子の他端と負極端子の他端とは容器の外側に引き出された状態となり、外部の負荷と電池とが電気的に接続可能な構成となっている。
<電池特性評価>
(レート特性)
次に、作製した電池を用いて充放電試験をおこなった。20℃雰囲気において、上限電圧4.2V、充電電流2300mA、合計充電時間150分の条件で定電流・定電圧充電をおこなった。その後、下限電圧2.5V、放電電流2300mAの条件で定電流放電(1C放電)をおこなった。
次いで、60分間の休止時間を設けた後、20℃雰囲気において、上限電圧4.2V、充電電流2300mA、合計充電時間150分の条件で定電流・定電圧充電をおこなった。その後、下限電圧2.5V、放電電流6900mAの条件で再び定電流放電(3C放電)をおこなった。1C放電時の放電容量に対する3C放電容量(100×(3C放電の放電容量)/(1C放電の放電容量))を計算した。得られた結果を表1に示す。
(サイクル特性)
20℃雰囲気において、上限電圧4.2V、充電電流2300mA、合計充電時間150分の条件で定電流・定電圧充電をおこなった。その後、下限電圧2.5V、放電電流2300mAの条件で定電流放電(1C放電)をおこなった。次いで、上記の充電と放電のサイクルを繰り返し行い、1サイクル目の放電容量の70%になったときのサイクル数を求めた。得られた結果を表1に示す。
(実施例2)
導電助剤分散液に用いた導電助剤(b)をアセチレンブラックにした以外は、実施例1と同様の条件で製造を行い、各評価を行った。
(比較例1)
電極製造ペーストを実施するに先立って、導電助剤(b)としてカーボンナノチューブ(CNT)50g、分散媒としてNMPを用い、これらを高速分散機で分散処理して6質量%濃度の導電助剤分散液を作製した。
次いで、遊星型プラネタリーミキサーに、正極活物質(a)として、平均粒子径8.4μm、BET比表面積0.44m/gの層状結晶構造を有するニッケル複合酸化物(LiNi0.8Co0.1Mn0.1)1500gと、バインダーであるフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)22.96gと、上記の導電助剤分散液127.6g投入した。
さらに、分散媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)62.8gを投入して、自転速度:0.75m/sec、公転速度:0.24m/sec、温度60℃の条件下で15分間固練りを行った。そして、NMPを121.8g加えて、自転速度:0.75m/sec、公転速度:0.24m/sec、温度25℃の条件下で15分間混練することで、ペースト前駆体を得た。
上記で得られたペースト前駆体に、上記のNMP120.0g投入し、自転速度:0.25m/sec、公転速度:0.08m/sec、温度:25℃の条件下で10分間湿式混合を行ったのち、粘度調整としてNMPを141.9g投入して自転速度:0.25m/sec、公転速度:0.08m/sec、温度:25℃の条件下で10分間湿式混合した。次いで、真空脱泡を行い、電極製造用ペーストを得た。
このときの電極組成は正極活物質:導電助剤:バインダー=98:0.5:1.5(質量比)となっている。
(比較例2)
導電助剤分散液に用いた導電助剤(b)をアセチレンブラックにした以外は、比較例1と同様の条件で製造を行い、各評価を行った。
Figure 2019192540
実施例1〜2で得られた正極製造用ペーストを用いて得られたリチウムイオン二次電池は、それぞれレート特性およびサイクル特性に優れていた。これに対し、比較例1〜2で得られた正極製造用ペーストを用いて得られたリチウムイオン二次電池は、それぞれレート特性およびサイクル特性に劣っていた。
ここで、比較例1〜2で得られた正極製造用ペーストを用いて得られた正極をそれぞれSEM観察したところ、直径が100〜200μm程度の微小な凝集物がそれぞれ観察された。これに対し、実施例1〜2で得られた正極製造用ペーストを用いて得られた正極には、比較例1〜2で観察されたような微小な凝集物は観察されなかった。
100 リチウムイオン二次電池用電極
101 集電体
103 電極活物質層
110 電解質層
120 正極
130 負極
150 リチウムイオン二次電池

Claims (9)

  1. リチウムイオン二次電池用電極製造用ペーストの製造方法であって、
    活物質、バインダーおよび分散媒を含むペースト前駆体に、導電助剤分散液を添加して湿式混合することにより電極製造用ペーストを調製する工程(B)を含むリチウムイオン二次電池用電極製造用ペーストの製造方法。
  2. 請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用電極製造用ペーストの製造方法において、
    前記工程(B)の前に、粉末状態の活物質および粉末状態のバインダーを少なくとも含む混合物に、分散媒を加えて混練し、前記ペースト前駆体を調製する工程(A)を含むリチウムイオン二次電池用電極製造用ペーストの製造方法。
  3. 請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池用電極製造用ペーストの製造方法において、
    前記電極製造用ペーストが正極製造用ペーストである、リチウムイオン二次電池用電極製造用ペーストの製造方法。
  4. 請求項1乃至3のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用電極製造用ペーストの製造方法において、
    前記導電助剤が、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、グラフェン、カーボンナノブラシ、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックおよびグラファイトからなる群から選ばれる炭素材料を少なくとも一種類以上含むリチウムイオン二次電池用電極製造用ペーストの製造方法。
  5. 請求項1乃至4のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用電極製造用ペーストの製造方法において、
    前記バインダーがフッ素系バインダー樹脂を含み、前記分散媒がN−メチル−2−ピロリドンを含む、リチウムイオン二次電池用電極製造用ペーストの製造方法。
  6. 請求項1乃至5のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用電極製造用ペーストの製造方法において、
    前記ペースト前駆体の固形分濃度が70質量%以上90質量%以下である、リチウムイオン二次電池用電極製造用ペーストの製造方法。
  7. 集電体の少なくとも一方の面に、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用電極製造用ペーストを塗布して乾燥することによって、前記リチウムイオン二次電池用電極製造用ペーストの固形分により形成された活物質層を形成する工程、を含むリチウムイオン二次電池用電極の製造方法。
  8. 集電体と、前記集電体の少なくとも一方の面に設けられ、かつ、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用電極製造用ペーストの製造方法により得られたリチウムイオン二次電池用電極製造用ペーストの固形分により形成された活物質層と、を含むリチウムイオン二次電池用電極。
  9. 正極と、電解質層と、負極とを少なくとも備えた電池であって、
    前記正極および前記負極のうち少なくとも一方が請求項8に記載のリチウムイオン二次電池用電極を含むリチウムイオン二次電池。
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