JP2019178662A - 燃料噴射制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】低圧燃料通路内の燃料圧力を検出しなくても、同燃料圧力の脈動による気筒間のポート噴射量のばらつきを抑制できる内燃機関の燃料噴射制御装置を提供する。【解決手段】V型6気筒の内燃機関は、気筒別のポート噴射弁及び筒内噴射弁と、6つの気筒#1〜#6でそれぞれ1回ずつ燃焼が行われる期間に3回の加圧動作を行う高圧燃料ポンプと、同内燃機関の2つのバンクの空燃比をそれぞれ検出するバンク別の空燃比センサと、を備えている。こうした内燃機関の燃料噴射制御装置は、両バンクの空燃比検出値AF1,AF2の偏差ΔAFから脈動補正量を求め、両バンクのポート噴射弁の噴射量指令値の間に脈動補正行分の差を設けるようにしている。【選択図】図4

Description

本発明は、ポート噴射弁と筒内噴射弁とを備えるマルチ噴射式の内燃機関に適用される燃料噴射制御装置に関する。
特許文献1に見られるように、上記のようなマルチ噴射式の内燃機関では、フィードポンプが燃料タンクから汲み出した低圧の燃料を、低圧燃料通路を通じてポート噴射弁に供給している。また、高圧燃料ポンプが低圧燃料通路の低圧燃料を吸引して加圧することで高圧となった燃料を、高圧燃料通路を通じて筒内噴射弁に供給している。こうしたマルチ噴射式の内燃機関では、高圧燃料ポンプの加圧動作に応じて低圧燃料通路内の燃料圧力に脈動が発生して、各気筒のポート噴射弁の燃料噴射量(ポート噴射量)にばらつきが生じてしまうことがある。
特開2016−003636号公報
低圧燃料通路内の燃料圧力を検出し、各気筒のポート噴射弁の噴射の都度、その検出結果に応じてポート噴射量を補正すれば、燃料圧力の脈動によるポート噴射量のばらつきを抑えることが可能となる。しかしながら、そうした場合には、低圧燃料通路内の燃料圧力を検出するセンサの追加設置が必要となり、その分の内燃機関の製造コストが増加してしまう。
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、低圧燃料通路内の燃料圧力を検出せずとも、同燃料圧力の脈動による気筒間のポート噴射量のばらつきを抑制できる内燃機関の燃料噴射制御装置を提供することにある。
上記課題を解決する内燃機関の燃料噴射制御装置は、吸気ポート内に燃料を噴射するポート噴射弁と燃焼室内に燃料を噴射する筒内噴射弁とがそれぞれ設けられたN個の気筒と、フィードポンプが燃料タンクから吸引して吐出した低圧の燃料をポート噴射弁に供給するための燃料通路である低圧燃料通路と、高圧燃料ポンプが低圧燃料通路から吸引して加圧した高圧の燃料を筒内噴射弁に供給するための燃料通路である高圧燃料通路と、各気筒で燃焼した混合気の空燃比を検出する空燃比センサと、が設けられた内燃機関であって、各気筒でそれぞれ1回ずつ燃焼が行われる期間に高圧燃料ポンプが(N/2)回の加圧動作を行う内燃機関に適用される。
上記のように構成された内燃機関では、高圧燃料ポンプが加圧動作を1回行う毎に、2つの気筒で燃焼が行われる。そのため、高圧燃料ポンプの加圧動作により生じる低圧燃料通路内の燃料圧力の脈動の1周期毎に、2つの気筒で燃料噴射が行われることになる。ここで、気筒のうちの一つを燃焼順序の起点としたときに同燃焼順序が奇数番目となっている気筒の群を第1気筒群とし、同燃焼順序が偶数番目となっている気筒の群を第2気筒群とする。このときの第1気筒群の各気筒でポート噴射弁の燃料噴射が行われるときの上記脈動の位相は同位相となる。そして、第2気筒群の各気筒でポート噴射弁の燃料噴射が行われる時期の上記脈動の位相はいずれも、第1気筒群の各気筒でポート噴射弁の燃料噴射が行われるときの位相から半波長分ずれた位相となる。よって、上記脈動により生じるポート噴射量のずれは、第1気筒群の各気筒、第2気筒群の各気筒でそれぞれ同じとなる。このように上記内燃機関では、高圧燃料ポンプの加圧動作による低圧燃料通路内の燃料圧力の脈動により、第1気筒群の各気筒と第2気筒群の各気筒との間にポート噴射量のずれが生じる。そして、ポート噴射量のずれは、空燃比のずれとして現れる。そのため、第1気筒群の気筒で燃焼した混合気の空燃比と第2気筒群の気筒で燃焼した混合気の空燃比との偏差から、上記脈動による第1気筒群と第2気筒群との間のポート噴射量のずれ量を求めることができる。
上記内燃機関の燃料噴射制御装置では、第1気筒群の各気筒と第2気筒群の各気筒とでポート噴射弁の噴射量指令値に脈動補正量分の差を設けるようにしている。そして、その脈動補正量を、第1気筒群の気筒で燃焼した混合気の空燃比と第2気筒群の気筒で燃焼した混合気の空燃比との偏差を空燃比センサの検出結果から求め、その偏差に応じて決定している。そのため、上記内燃機関の燃料噴射制御装置によれば、低圧燃料通路内の燃料圧力を検出しなくても、同燃料圧力の脈動による気筒間のポート噴射量のばらつきを抑制することができる。
燃料噴射制御装置の一実施形態が適用される内燃機関の模式図。 同内燃機関の燃料系の模式図。 上記実施形態の燃料噴射制御装置の模式図。 上記内燃機関における高圧燃料ポンプのプランジャストローク、低圧側燃圧、空燃比検出値の推移を示すタイムチャート。 同燃料噴射制御装置における脈動補正量算出マップの設定態様の一例を示すグラフ。 同燃料噴射制御装置が実行する脈動補正量設定ルーチンのフローチャート。 直列4気筒の内燃機関における高圧燃料ポンプのプランジャストローク、低圧側燃圧、空燃比検出値の推移を示すタイムチャート。
以下、燃料噴射制御装置の一実施形態を、図1〜図6を参照して詳細に説明する。本実施形態の燃料噴射制御装置は、車載用の内燃機関に適用されている。
図1に示すように、本実施形態の燃料噴射制御装置が適用される内燃機関は、第1バンク11及び第2バンク12の2つのバンクに分かれて気筒が配列されたV型の気筒配列を有している。第1バンク11には、気筒#1、気筒#3、及び気筒#5の3つの気筒が、第2バンク12には、気筒#2、気筒#4、及び気筒#6の3つの気筒が、それぞれ設けられており、この内燃機関の気筒数は6個となっている。また、この内燃機関では、気筒#1から気筒#2、気筒#3、気筒#4、気筒#5、気筒#6の順に燃焼が行われる。ここで、気筒#1を燃焼順序が1番目の気筒として選択したときに燃焼順序が奇数番目となる気筒(#1、#3、#5)はいずれも、第1バンク11に設けられた気筒となっている。また、このときの燃焼順序が偶数番目となる気筒(#2、#4、#6)はいずれも、第2バンク12に設けられた気筒となっている。
内燃機関は、各気筒#1〜#6の燃焼室18に導入する吸気が流れる吸気管13を備えている。吸気管13には、吸気の流量を検出するエアフローメータ14と、吸気の流量を調整するための弁であるスロットルバルブ15と、が設けられている。吸気管13を通過した吸気は、分枝管である吸気マニホールド16において気筒別に分岐され、気筒別の吸気ポート17を通って各気筒#1〜#6に流入する。
また、内燃機関の各気筒#1〜#6には、吸気ポート17内に燃料を噴射するポート噴射弁19と、燃焼室18内に燃料を噴射する筒内噴射弁20とがそれぞれ設けられている。各気筒#1〜#6の燃焼室18では、吸気ポート17を通じて流入した吸気と、ポート噴射弁19及び筒内噴射弁20が噴射した燃料との混合気の燃焼が行われる。燃焼により生じた排気は、気筒別の排気ポート21を通じて燃焼室18から排出される。第1バンク11の各気筒#1、#3、#5の排気は、排気集合管である排気マニホールド22Aにて合流した後、排気を浄化するための触媒装置24Aを通って外部に放出される。一方、第2バンク12の各気筒#2、#4、#6の排気は、排気マニホールド22Bにて合流した後、触媒装置24Bを通って外部に放出される。なお、両バンクの排気マニホールド22A、22Bの排気合流部には、空燃比センサ23A、23Bがそれぞれ設けられている。こうした内燃機関では、第1バンク11の各気筒#1、#3、#5で燃焼した混合気の空燃比が空燃比センサ23Aにより検出され、第2バンク12の各気筒#2、#4、#6で燃焼した混合気の空燃比が空燃比センサ23Bにより検出される。
なお、第1バンク11及び第2バンク12には、燃焼室18に対して吸気ポート17を開閉する吸気バルブ26を駆動する吸気カムシャフト27と、燃焼室18に対して排気ポート21を開閉する排気バルブ28を駆動する排気カムシャフト29と、がそれぞれ個別に設けられている。吸気カムシャフト27及び排気カムシャフト29は、内燃機関の出力軸であるクランクシャフト30の回転を受けて回転する。なお、吸気カムシャフト27及び排気カムシャフト29は、クランクシャフト30が2回転する毎に1回転するようになっている。
さらに内燃機関には、クランク角センサ31が設けられている。クランク角センサ31は、クランクシャフト30の回転に応じてパルス状のクランク信号を出力する。
図2に、上記内燃機関の燃料系の構成を示す。同図に示すように、燃料タンク40内には、その内部の燃料を汲み出すフィードポンプ41が設置されている。フィードポンプ41の燃料吐出口には、低圧燃料配管42が接続されている。低圧燃料配管42における燃料タンク40の内部に位置する部分には、同低圧燃料配管42内の燃料圧力(以下、低圧側燃圧と記載する)を規定の圧力(以下、設定フィード圧と記載する)に保持するためのプレッシャレギュレータ43が接続されている。
低圧燃料配管42は3つに分岐されるとともに、各々の分岐先において第1バンク側の低圧デリバリパイプ44、第2バンク側の低圧デリバリパイプ45、及び高圧燃料ポンプ46にそれぞれ接続されている。第1バンク側の低圧デリバリパイプ44には、第1バンク11の各気筒#1、#3、#5のポート噴射弁19がそれぞれ接続されている。また、第2バンク側の低圧デリバリパイプ45には、第2バンク12の各気筒#2、#4、#6のポート噴射弁19がそれぞれ接続されている。なお、各低圧デリバリパイプ44、45には、内部の燃料圧力の脈動を抑えるパルセーションダンパ47がそれぞれ設けられている。
一方、高圧燃料ポンプ46には、シリンダ48と、その内部に挿入された状態で設置されたプランジャ49と、内燃機関のカムシャフトのうちの一つ(本実施形態では第1バンク11の排気カムシャフト29)に設けられたカム50と、が設けられている。カム50には、3つのカム山が設けられており、そのカム山による押し上げ、押し下げにより、シリンダ48内でプランジャ49の往復動が行われるようになっている。シリンダ48内には、燃料を加圧するための加圧室51がプランジャ49により区画形成されている。加圧室51は、燃料圧力の脈動の伝播を抑えるためのパルセーションダンパ52と、電磁スピル弁53とを介して低圧燃料配管42に接続されている。さらに加圧室51は、逆止弁54を介して高圧燃料配管55に接続されている。電磁スピル弁53は、通電に応じて開閉して、低圧燃料配管42と加圧室51との間の燃料の流通が許容された状態と同流通が遮断された状態とを切り替える。逆止弁54は、加圧室51内の燃料圧力が高圧燃料配管55内の燃料圧力よりも低いときには閉弁して、高圧燃料配管55から加圧室51への燃料の逆流を防止する。また、逆止弁54は、加圧室51内の燃料圧力が高圧燃料配管55内の燃料圧力よりも高くなったときに開弁して、加圧室51から高圧燃料配管55への燃料吐出を許容する。
こうした高圧燃料ポンプ46に接続された高圧燃料配管55は2つに分岐されるとともに、各々の分岐先において第1バンク側の高圧デリバリパイプ56、及び第2バンク側の高圧デリバリパイプ57にそれぞれ接続されている。第1バンク側の高圧デリバリパイプ56には、第1バンク11の各気筒#1、#3、#5の筒内噴射弁20がそれぞれ接続されている。また、第2バンク側の高圧デリバリパイプ57には、第2バンク12の各気筒#2、#4、#6の筒内噴射弁20がそれぞれ接続されている。第1バンク側、及び第2バンク側の高圧デリバリパイプ56、57は、連通路58を介して相互に連通されている。また、第1バンク側の高圧デリバリパイプ56には、その内部の燃料圧力(高圧側燃圧)を検出する高圧側燃圧センサ59が取り付けられている。一方、第2バンク側の高圧デリバリパイプ57には、リリーフ弁60が取り付けられている。リリーフ弁60は、リリーフ通路61を通じて燃料タンク40に接続されており、高圧デリバリパイプ57内の燃料圧力が過上昇したときに開弁して、高圧デリバリパイプ57内の燃料を燃料タンク40に放出する。
なお、こうした内燃機関の燃料系では、フィードポンプ41が燃料タンク40から吸引して吐出した低圧の燃料をポート噴射弁19に供給するための燃料通路である低圧燃料通路が、低圧燃料配管42及び低圧デリバリパイプ44、45により構成されている。また、低圧燃料通路から高圧燃料ポンプ46が吸引して加圧した高圧の燃料を筒内噴射弁20に供給するための燃料通路である高圧燃料通路が、高圧燃料配管55及び高圧デリバリパイプ56、57により構成されている。
続いて、こうした内燃機関の燃料系に設けられた高圧燃料ポンプ46の加圧動作について説明する。高圧燃料ポンプ46では、シリンダ48でのプランジャ49の往復動に応じて加圧室51の容積が変化する。以下の説明では、加圧室51の容積が拡大する方向へのプランジャ49の動作を同プランジャ49の下降と記載し、加圧室51の容積が縮小する方向へのプランジャ49の動作を同プランジャ49の上昇と記載する。
高圧燃料ポンプ46において、電磁スピル弁53が閉弁した状態でプランジャ49が下降を開始すると、加圧室51の容積の拡大に伴って、低圧燃料配管42から加圧室51に燃料が流入するようになる。ここで、プランジャ49が上昇に転じる前に電磁スピル弁53を閉弁すると、その後のプランジャ49の上昇に伴う容積の縮小により、加圧室51に流入した燃料が加圧される。そして、加圧室51内の燃料圧力が高圧燃料配管55内の燃料圧力を上回ると、逆止弁54が開弁して、加圧室51内の加圧された燃料が高圧燃料配管55に吐出される。このように高圧燃料ポンプ46は、プランジャ49の往復動毎に、低圧燃料配管42の燃料を加圧して高圧燃料配管55に吐出する。なお、こうした高圧燃料ポンプ46では、プランジャ49の下降中における電磁スピル弁53の閉弁時期を変え、低圧燃料配管42から加圧室51への燃料の流入量を増減することで、加圧動作毎の高圧燃料配管55への燃料の吐出量が調整されている。
図3に、以上のように構成された内燃機関に適用される本実施形態の燃料噴射制御装置62の構成を示す。同図に示すように、燃料噴射制御装置62は、燃料噴射制御に係る演算処理を行う演算処理回路63と、燃料噴射制御用のプログラムやデータが記憶されたメモリ64と、を備えている。また、燃料噴射制御装置62には、上述したエアフローメータ14、各バンクの空燃比センサ23A、23B、クランク角センサ31、高圧側燃圧センサ59に加え、運転者のアクセルペダルの踏込み量(アクセルペダル開度)を検出するアクセルペダル開度センサ65が接続されている。
燃料噴射制御装置62は、メモリ64に記憶されたプログラムを演算処理回路63が読み込んで実行することで、内燃機関の燃料噴射制御を行っている。燃料噴射制御は、下記の態様で行われる。
燃料噴射制御に際して燃料噴射制御装置62はまず、各気筒#1〜#6の燃焼室18に流入する空気量(シリンダ流入空気量)に基づき、燃焼室18で燃焼する混合気の空燃比を同空燃比の目標値である目標空燃比とするために必要な燃料の量を、要求噴射量の値として演算する。シリンダ流入空気量は、上記各センサの検出結果に基づき推定して求められている。また、要求噴射量の値には、空燃比センサ23A、23Bの検出値と目標空燃比との偏差に応じたフィードバック補正が施される。
続いて、燃料噴射制御装置62は、内燃機関の運転状況に応じて、ポート噴射弁19の燃料噴射(ポート噴射)及び筒内噴射弁20の燃料噴射(筒内噴射)の燃料噴射の分担比率を決定する。そして、燃料噴射制御装置62は、分担比率と要求噴射量から、ポート噴射弁19の燃料噴射量(ポート噴射量)の指令値であるポート噴射量指令値と、筒内噴射弁20の燃料噴射量(筒内噴射量)の指令値である筒内噴射量指令値と、をそれぞれ算出する。
次に、燃料噴射制御装置62は、ポート噴射量指令値分の燃料噴射に必要なポート噴射弁19の噴射時間と、筒内噴射量指令値分の燃料噴射に必要な筒内噴射弁20の噴射時間と、を演算する。そして、燃料噴射制御装置62は、次回に燃焼を行う気筒のポート噴射弁19及び筒内噴射弁20に対して、演算した噴射時間分の燃料噴射をそれぞれ指令する。なお、筒内噴射弁20の噴射時間は、高圧側燃圧センサ59が検出した高圧側燃圧に基づいて算出されている。これに対して、ポート噴射弁19の噴射時間は、同ポート噴射弁19に供給される低圧デリバリパイプ44,45内の燃料の圧力(低圧側燃圧)が、設定フィード圧であることを前提として算出されている。
なお、燃料噴射制御装置62は、内燃機関の運転状況に応じて、高圧側燃圧の目標値を設定している。そして、燃料噴射制御装置62は、高圧側燃圧センサ59による高圧側燃圧の検出値がその設定した目標値に近づくように高圧燃料ポンプ46の燃料吐出量を調整すべく、電磁スピル弁53の開閉制御を行っている。
さて、以上のように構成された内燃機関において高圧燃料ポンプ46は、低圧燃料配管42から間欠的に燃料吸引を行いつつ、加圧動作を行っている。高圧燃料ポンプ46が燃料吸引を行う都度、低圧燃料配管42における高圧燃料ポンプ46との接続部分における燃料圧力が低下する。これによる周期的な燃料圧力の変動が低圧燃料配管42を通じて伝播することで、低圧デリバリパイプ44、45内の燃料圧力(低圧側燃圧)に脈動が発生する。一方、上述のようにポート噴射弁19の噴射時間の算出は、低圧側燃圧が設定フィード圧であることを前提に行われている。そのため、ポート噴射弁19の噴射時の低圧側燃圧が、脈動によって設定フィード圧からずれた値となると、ポート噴射量に誤差が生じてしまう。
図4に、高圧燃料ポンプ46のプランジャストローク、各気筒#1〜#6のポート噴射の時期、低圧側燃圧、及び空燃比センサ23A、23Bの空燃比検出値AF1、AF2の関係を示す。ここでのプランジャストロークは、プランジャ49が最も下降したときの同プランジャ49の位置をプランジャストロークが「0」の位置としたときの同位置からのプランジャ49の上昇量を表している。
上述したように、プランジャ49の昇降は、排気カムシャフト29に設けられた、3つのカム山を有したカム50により行われる。排気カムシャフト29は、クランクシャフト30が2回転(720°CA)する毎に1回転する。よって、クランクシャフト30が2回転する毎にプランジャ49の昇降が3回行われることになる。よって、この内燃機関での高圧燃料ポンプ46の加圧動作の周期は、240°CA(=720°CA/3)となる。
一方、上記内燃機関では、クランクシャフト30が2回転する毎に、6つの気筒#1〜#6においてそれぞれ1回ずつ燃焼が行われる。そのため、高圧燃料ポンプ46は、内燃機関に設けられた6つの気筒#1〜#6でそれぞれ1回ずつ燃焼が行われる期間に3回の、すなわち気筒数(6個)の半分の回数の加圧動作を行うことになる。
また、ポート噴射の分担割合が0でなく、すべての気筒#1〜#6でポート噴射が行われる場合には、各気筒#1〜#6のポート噴射は120°CA(=720°CA/6)の間隔で行われる。すなわち、高圧燃料ポンプ46が加圧動作を1回行う毎に、すなわち低圧側燃圧の脈動の1周期毎に、2つの気筒でポート噴射が行われることになる。
同図4に示すように、第1バンク11に設けられた3つの気筒#1、#3、#5では、低圧側燃圧の脈動周期におけるポート噴射時の位相が同じとなる。また、第2バンク12に設けられた3つの気筒#2、#4、#6でも、低圧側燃圧の脈動周期におけるポート噴射時の位相は同じとなり、且つその位相は第1バンク11の各気筒#1、#3、#5の場合の位相から半波長分ずれた位相となる。そのため、第1バンク11の各気筒#1、#3、#5と第2バンク12の各気筒#2、#4、#6との間に、ポート噴射量の偏差が生じ、その結果、第1バンク側の空燃比センサ23Aの空燃比検出値AF1と第2バンク側の空燃比センサ23Bの空燃比検出値AF2との間にも偏差が生じるようになる。
例えば、同図の場合、第1バンク11の各気筒#1、#3、#5ではいずれも、脈動により低圧側燃圧が設定フィード圧よりも高くなっている時期にポート噴射が行われ、第2バンク12の各気筒#2、#4、#6ではいずれも、脈動により低圧側燃圧が設定フィード圧よりも低くなっている時期にポート噴射が行われる。そのため、第1バンク11の各気筒#1、#3、#5では、ポート噴射量がポート噴射量指令値よりも多くなり、空燃比が目標空燃比よりもリッチとなる。一方、第2バンク12の各気筒#2、#4、#6では、ポート噴射量がポート噴射量指令値よりも少なくなり、空燃比が目標空燃比よりもリーンとなる。なお、低圧側燃圧の脈動以外にも様々な外的要因が空燃比に影響するが、脈動の他にはバンク単位で影響のし方が大きく変わるものはない。そのため、バンク間の空燃比検出値AF1、AF2の偏差の殆どは、低圧側燃圧の脈動の影響により生じたものと考えられる。したがって、低圧側燃圧の脈動によるポート噴射量のずれ量を、バンク間の空燃比検出値AF1、AF2の偏差から求めることが可能となる。
なお、低圧側燃圧の脈動の振動数が低圧燃料通路の固有振動数に近い振動数となると、共振現象により脈動が大きくなる。一方、低圧側燃圧の脈動の振動数は、内燃機関の回転数NEとその変化速度ΔNEにより変化する。そのため、低圧側燃圧の脈動の振幅、ひいてはその脈動によるポート噴射量のずれ量は、内燃機関の回転数NE及びその変化速度ΔNEにより変化する値となる。ちなみに、低圧燃料通路の固有振動数は、構成部品の寸法形状の加工誤差のため、内燃機関の個体毎にばらつきがある。
本実施形態の燃料噴射制御装置62では、ポート噴射量指令値の算出に際し、メモリ64に記憶された脈動補正量算出マップを用いて脈動補正量の値を求めている。脈動補正量算出マップは、図5に示すような内燃機関の回転数NE及びその変化速度ΔNEと、脈動補正量の値との関係を記憶したものとなっている。そして、燃料噴射制御装置62は、第1バンク11の各気筒#1、#3、#5のポート噴射量指令値には脈動補正量の値の1/2分の減量補正を、第2バンク12の各気筒#2、#4、#6のポート噴射量指令値には脈動補正量の値の1/2分の増量補正を、それぞれ行っている。すなわち、燃料噴射制御装置62は、第1バンク11の各気筒#1、#3、#5のポート噴射量指令値と第2バンク12の各気筒#2、#4、#6のポート噴射量指令値との間に脈動補正量分の差を設けるようにしている。
さらに、燃料噴射制御装置62は、内燃機関の運転中、図6に示す脈動補正量設定ルーチンの処理を通じて、バンク間の空燃比検出値AF1、AF2の偏差に基づき、上記脈動補正量算出マップにおける脈動補正量の値を更新するようにしている。燃料噴射制御装置62は、内燃機関の運転中、規定の制御周期毎に本ルーチンの処理を繰り返し実行している。
本ルーチンの処理が開始されると、まずステップS100において、現在の内燃機関の回転数NE、その変化速度ΔNE、両バンクの空燃比センサ23A、23Bの空燃比検出値AF1、AF2が取得される。内燃機関の回転数NE、及びその変化速度ΔNEは、クランク角センサ31が出力するクランク信号のパルス間隔、及びその単位時間当たりの変化量からそれぞれ演算されている。続いて、ステップS110において、第2バンク側の空燃比センサ23Bの空燃比検出値AF2から第1バンク側の空燃比センサ23Aの空燃比検出値AF1を引いた差が、両バンクの空燃比検出値の偏差ΔAFの値として求められる。そして、続くステップS120において、偏差ΔAFに応じて、現在の内燃機関の回転数NE、及びその変化速度ΔNEにおける脈動補正量の値の更新が行われる。
偏差ΔAF(=AF2−AF1)の値は、第1バンク11の空燃比が第2バンク12の空燃比よりもリッチなときには正の値となり、第1バンク11の空燃比が第2バンク12の空燃比よりもリーンなときには負の値となる。一方、上述のように本実施形態では、第1バンク11の各気筒#1、#3、#5のポート噴射量指令値に対しては脈動補正量の値の1/2分の減量補正を、第2バンク12の各気筒#2、#4、#6のポート噴射量指令値に対しては脈動補正量の値の1/2分の増量補正を、それぞれ行っている。こうした場合、現在の回転数NE及び変化速度ΔNEにおける脈動補正量の値が低圧側燃圧の脈動によるバンク間のポート噴射量のずれ量よりも小さいときには偏差ΔAFは正の値となり、同ずれ量よりも大きいときには偏差ΔAFは負の値となる。上記ステップS120では、偏差ΔAFが正の値の場合には更新前よりも大きい値となり、偏差ΔAFが負の値の場合には更新前よりも小さい値となるように、現在の回転数NE及び変化速度ΔNEにおける脈動補正量の値を更新している。これにより、空燃比検出値AF1、AF2の偏差から把握されるバンク間のポート噴射量のずれ量に次第に近づくように、脈動補正量の値が更新され、そうした更新の繰り返しにより、上記ずれ量が脈動補正量の値として学習される。
なお、本実施形態では、工場出荷時の脈動補正量算出マップには、回転数NE、変化速度ΔNE毎の脈動補正量の初期値として、予め実験等で求められたバンク間のポート噴射量のずれ量のばらつき範囲の中央値が記憶されている。これに対して、低圧側燃圧の脈動の発生状況の個体差が大きい場合などには、脈動補正量算出マップにおける脈動補正量の初期値を「0」として、脈動補正量の値を一から学習するようにしてもよい。
こうした本実施形態の燃料噴射制御装置では、両バンクの空燃比検出値AF1、AF2の偏差ΔAFから、低圧側燃圧の脈動によるバンク間のポート噴射量のばらつきを求めている。そのため、低圧側燃圧を直接検出するセンサを設けずとも、低圧側燃圧の脈動による気筒間のポート噴射量のばらつきを抑制することができる。
なお、本実施形態の適用対象となる内燃機関では、第1バンク11に設けられた気筒#1、#3、#5が、気筒#1を燃焼順序が1番目の気筒として選択したときに同燃焼順序が奇数番目となる第1気筒群の気筒となる。また、第2バンク12に設けられた気筒#2、#4、#6が、同燃焼順序が偶数番目となる第2気筒群の気筒となる。
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
上記実施形態では、V型の気筒配列を有した内燃機関における2つのバンクにそれぞれ個別に設けられた空燃比センサの空燃比検出値の偏差から低圧側燃圧の脈動によるポート噴射量のずれ量を求めるようにしていた。これに対して、L型(直列側)の気筒配列の内燃機関の多くでは、全気筒の空燃比を同じ空燃比センサで検出している。また、V型の内燃機関でも、両バンクの排気の合流部に空燃比センサが設けられている場合がある。こうした場合にも、気筒数をN個としたときに、各気筒でそれぞれ1回ずつ燃焼が行われる期間に高圧燃料ポンプが(N/2)回の加圧動作を行う内燃機関であれば、低圧側燃圧の脈動によるポート噴射量のずれ量を空燃比検出値から求め、そのずれ領分のポート噴射量の補正を行うことが可能である。
図7は、直列4気筒の内燃機関における高圧燃料ポンプのプランジャストローク、各気筒#1〜#4のポート噴射の時期、低圧側燃圧、及び空燃比センサの検出値の関係を示す。なお、この内燃機関は、カムシャフトに設けられた2つのカム山を有したカムにより高圧燃料ポンプのプランジャの昇降が行われるものとなっている。また、この内燃機関では、気筒#1、気筒#3、気筒#4、気筒#2の順で燃焼が行われるようになっている。
この内燃機関では、クランクシャフトの2回転(720°CA)毎にプランジャの昇降が2回行われる。すなわち、この内燃機関の高圧燃料ポンプ46の加圧動作の周期は、360°CA(=720°CA/2)となっている。また、この内燃機関では、クランクシャフトの2回転毎に、4つの気筒#1〜#4においてそれぞれ1回ずつ燃焼が行われる。そのため、高圧燃料ポンプは、内燃機関に設けられた4つの気筒#1〜#4でそれぞれ1回ずつ燃焼が行われる期間に2回の、すなわち気筒数(4個)の半分の回数の加圧動作を行うことになる。さらに、この内燃機関では、各気筒#1〜#4のポート噴射が180°CA(=720°CA/4)の間隔で行われる。よって、こうした内燃機関でも、低圧側燃圧の脈動の1周期毎に、2つの気筒でポート噴射が行われることになる。
ここで、気筒#1を燃焼順序が1番目の気筒として選択したときに同燃焼順序が奇数番目となる気筒#1、気筒#4を第1気筒群の気筒とし、同燃焼順序が偶数番目となる気筒#3、気筒#2を第2気筒群の気筒とする。このときの第1気筒群の気筒#1、#4では、低圧側燃圧の脈動周期におけるポート噴射時の位相が同じとなる。また、第2気筒群の気筒#3、#2でも、低圧側燃圧の脈動周期におけるポート噴射時の位相は同じとなり、且つその位相は第1気筒群の場合の位相から半波長分ずれた位相となる。そのため、第1気筒群の各気筒#1、#4と第2気筒群の各気筒#3、#2との間に、ポート噴射量の偏差が生じ、その結果、空燃比検出値に360°CAを周期とした変動が生じるようになる。
このときの周期を360°CAとした空燃比検出値の変動の振幅は、第1気筒群の気筒#1、#4で燃焼した混合気の空燃比と第2気筒群の気筒#3、#2で燃焼した混合気の空燃比との偏差を表している。よって、上記空燃比検出値の変動の振幅から、高圧燃料ポンプの加圧動作に起因した低圧側燃圧の脈動による、第1気筒群の気筒と第気筒群の気筒との間のポート噴射量のずれ量を求めることができる。そして、そのずれ量を脈動補正量の値として設定し、第1気筒群の各気筒と第2気筒群と各気筒とでポート噴射量指令値にその脈動補正量分の差を設けるようにすれば、低圧側燃圧を直接検出せずとも、同低圧側燃圧の脈動による気筒間のポート噴射量のばらつきを抑制することが可能となる。
11…第1バンク、12…第2バンク、13…吸気管、14…エアフローメータ、15…スロットルバルブ、16…吸気マニホールド、17…吸気ポート、18…燃焼室、19…ポート噴射弁、20…筒内噴射弁、21…排気ポート、22A,22B…排気マニホールド、23A,23B…空燃比センサ、24A,24B…触媒装置、26…吸気バルブ、27…吸気カムシャフト、28…排気バルブ、29…排気カムシャフト、30…クランクシャフト、31…クランク角センサ、40…燃料タンク、41…フィードポンプ、42…低圧燃料配管(低圧燃料通路)、43…プレッシャレギュレータ、44,45…低圧デリバリパイプ(低圧燃料通路)、46…高圧燃料ポンプ(48…シリンダ、49…プランジャ、50…カム、51…加圧室、52…パルセーションダンパ、53…電磁スピル弁、54…逆止弁)、47…パルセーションダンパ、55…高圧燃料配管(高圧燃料通路)、56,57…高圧デリバリパイプ(高圧燃料通路)、58…連通路、59…高圧側燃圧センサ、60…リリーフ弁、61…リリーフ通路、62…燃料噴射制御装置、63…演算処理回路、64…メモリ、65…アクセルペダル開度センサ。

Claims (1)

  1. 吸気ポート内に燃料を噴射するポート噴射弁と燃焼室内に燃料を噴射する筒内噴射弁とがそれぞれ設けられたN個の気筒と、フィードポンプが燃料タンクから吸引して吐出した低圧の燃料を前記ポート噴射弁に供給するための燃料通路である低圧燃料通路と、前記低圧燃料通路から高圧燃料ポンプが吸引して加圧した高圧の燃料を前記筒内噴射弁に供給するための燃料通路である高圧燃料通路と、各気筒で燃焼した混合気の空燃比を検出する空燃比センサと、が設けられた内燃機関であって、各気筒でそれぞれ1回ずつ燃焼が行われる期間に前記高圧燃料ポンプが(N/2)回の加圧動作を行う内燃機関に適用される燃料噴射制御装置において、
    前記気筒のうちの一つを燃焼順序が1番目の気筒として選択したときに同燃焼順序が奇数番目となる気筒の群を第1気筒群とし、同燃焼順序が偶数番目となる気筒の群を第2気筒群としたとき、前記第1気筒群の各気筒と前記第2気筒群の各気筒とで前記ポート噴射弁の噴射量指令値に脈動補正量分の差を設けるとともに、
    前記第1気筒群の気筒で燃焼した混合気の空燃比と前記第2気筒群の気筒で燃焼した混合気の空燃比との偏差を前記空燃比センサの検出結果から求め、その偏差に応じて前記脈動補正量を決定する
    燃料噴射制御装置。
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