JP2019176131A - 積層セラミック電子部品 - Google Patents

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Abstract

【課題】たとえば高電圧または機械的応力により短絡現象が発生した後に、そのコンデンサに電流を流しても絶縁性を維持することができる積層セラミックコンデンサなどの積層セラミック電子部品を提供すること。【解決手段】誘電体層10と内部電極層12とが交互に積層されて形成されたセラミック素体4を有する積層セラミック電子部品である。誘電体層10は、チタン酸バリウムを含む主成分と、ホウ素酸化物および/またはリチウム酸化物を含む副成分とを有する。内部電極層12は、銅および/または銀を主成分として含み、誘電体層10に対する内部電極層12の被覆率が98%以下である。【選択図】図2

Description

本発明は、たとえば積層セラミックコンデンサなどの積層セラミック電子部品に関する。
たとえば特開2014−053589号公報に示されているように、積層セラミックコンデンサは、誘電体層が主としてチタン酸バリウムから成り、内部電極層が主としてニッケルから成るものが一般的であり、様々な用途で用いられている。そして、この積層セラミックコンデンサについては、誘電体層に対する内部電極層の被覆率が大きく、内部電極層の電極途切れが少ないほど、静電容量が大きくなり性能が良いと考えられてきた。
ところが、特に、内部電極層が主としてニッケルから成る積層セラミックコンデンサにおいて、たとえば高電圧または機械的応力により短絡現象が発生した後に、そのコンデンサに電流を流すと、コンデンサが発熱して実装基板を加熱するおそれがあることが、本発明者により見出された。
特開2014−053589号公報
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、たとえば高電圧または機械的応力により短絡現象が発生した後に、そのコンデンサに電流を流しても絶縁性を維持することができる積層セラミックコンデンサなどの積層セラミック電子部品を提供することである。
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係る積層セラミック電子部品は、
誘電体層と内部電極層とが交互に積層されて形成されたセラミック素体を有する積層セラミック電子部品であって、
前記誘電体層は、チタン酸バリウムを含む主成分と、ホウ素酸化物および/またはリチウム酸化物を含む副成分とを有し、
前記内部電極層は、銅および/または銀を主成分として含み、
前記誘電体層に対する前記内部電極層の被覆率が98%以下であることを特徴とする。
本発明の第1の観点に係る積層セラミック電子部品では、内部電極層は、銅または銀を主成分として含む。また、誘電体層は、チタン酸バリウムを含む主成分と、ホウ素酸化物および/またはリチウム酸化物を含む副成分とを有する。しかも、誘電体層に対する内部電極層の被覆率が98%以下である。
このような条件を満足することで、本発明の第1の観点に係る積層セラミック電子部品では、たとえば高電圧または機械的応力により短絡現象が発生した後に、その電子部品に電流を流すことで絶縁性を復帰させることができる。そのため、短絡現象が発生した電子部品に再び電流を流したとしても、絶縁性が確保されているため、発熱するおそれが少ない。
なお、短絡現象が発生した電子部品に再び電流を流すことで、絶縁性が復帰するのは、次に示す理由であると考えられる。すなわち、上記の条件が満足される場合には、内部電極層の短絡が生じた部分に電流が再度流れることで、内部電極層が溶解して飛散し、絶縁性が復帰すると考えられる。
好ましくは、前記内部電極層の被覆率が60%以上で90%以下である。このように構成することで、短絡後に絶縁性が復帰しやすいと共に、初期静電容量(短絡前の静電容量)も大きい。
好ましくは、前記内部電極層の積層方向の中央部に比較して、前記積層方向の最外層での前記内部電極層の被覆率が小さい。積層方向の最外層では、積層方向の中央部に比較して、内部電極層の短絡が生じやすい。そこで、積層方向の最外層での内部電極層の被覆率を小さくすることで、そこでの絶縁復帰を生じさせやすくできる。積層方向の中央部に位置する内部電極層では、比較的に被覆率を大きくすることで、初期静電容量を大きくすることができる。
また、上記目的を達成するために、本発明の第2の観点に係る積層セラミック電子部品は、
誘電体層と内部電極層とが交互に積層されて形成されたセラミック素体を有する積層セラミック電子部品であって、
前記誘電体層は、チタン酸バリウムを含む主成分と、ホウ素酸化物および/またはリチウム酸化物を含む副成分とを有し、
前記内部電極層は、銅および/または銀を主成分として含み、
前記内部電極層では、長手方向に沿って所定長さの範囲内に、前記内部電極層を構成する導電性粒子が存在する電極存在領域と、前記導電性粒子が存在しない電極不存在領域とが交互に配置されており、前記電極不存在領域が2以上で存在することを特徴とする。
本発明の第2の観点に係る積層セラミック電子部品では、内部電極層は、銅または銀を主成分として含む。また、誘電体層は、チタン酸バリウムを含む主成分と、ホウ素酸化物および/またはリチウム酸化物を含む副成分とを有する。しかも、内部電極層では、長手方向に沿って所定長さの範囲内に、前記内部電極層を構成する導電性粒子が連続して存在する電極存在領域と、前記導電性粒子が存在しない電極不存在領域とが交互に配置されており、前記電極不存在領域が2以上で存在する。
このような条件を満足することで、本発明の第2の観点に係る積層セラミック電子部品では、たとえば高電圧または機械的応力により短絡現象が発生した後に、その電子部品に電流を流すことで絶縁性を復帰させる(自己修復特性)ことができる。そのため、短絡現象が発生した電子部品に再び電流を流したとしても、絶縁性が確保されているため、発熱するおそれが少ない。
なお、短絡現象が発生した電子部品に再び電流を流すことで、絶縁性が復帰するのは、次に示す理由であると考えられる。すなわち、上記の条件が満足される場合には、内部電極層の短絡が生じた部分に電流が再度流れることで、内部電極層が溶解して飛散し、絶縁性が復帰すると考えられる。
好ましくは、前記所定長さの範囲が50μmである。この所定長さ範囲内で、電極不存在領域が2以上で存在することで、自己修復特性が向上する。
好ましくは、前記内部電極層では、長手方向に沿って所定長さの範囲内に、前記電極不存在領域が2〜10個、さらに好ましくは、2〜5個の範囲で存在する。このように構成することで、初期静電容量(短絡前の静電容量)も向上すると共に、自己修復特性も向上する。
好ましくは、前記内部電極層の積層方向の中央部に比較して、前記積層方向の最外層での前記内部電極層の長手方向に沿って所定長さの範囲内での前記電極不存在領域の数が多い。積層方向の最外層では、積層方向の中央部に比較して、内部電極層の短絡が生じやすい。そこで、積層方向の最外層での内部電極層における電極不存在領域の数を多くすることで、そこでの絶縁復帰を生じさせやすくできる。積層方向の中央部に位置する内部電極層では、比較的に電極不存在領域の数を少なくすることで、初期静電容量を大きくすることができる。
本発明の第1および第2の観点において、好ましくは、前記内部電極層には、チタン酸バリウムを主成分とする誘電体粒子が含まれている。このように構成することで、短絡後に絶縁性が復帰しやすい。
本発明の第1および第2の観点において、好ましくは、前記内部電極層には、空隙が含まれている。このように構成することで、短絡後に絶縁性が復帰しやすい。
本発明の第1および第2の観点において、好ましくは、前記内部電極層の積層方向の中央部に比較して、前記積層方向の最外層での前記内部電極層に含まれる前記空隙の面積比率が大きい。このように構成することで、短絡後に絶縁性が復帰しやすい。その理由としては、積層方向の最外層での内部電極層に含まれる空隙の面積比率が大きいと、熱が素子本体の外に逃げ難くなるためではないかと考えられる。
図1は、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの概略断面図である。 図2は、図1に示すコンデンサにおける内部電極層と誘電体層の積層構造の拡大断面写真を模式化した概略図である。
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
積層セラミックコンデンサの全体構成
まず、本発明に係る積層セラミック電子部品の一実施形態として、積層セラミックコンデンサの全体構成について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ2は、コンデンサ素体4と、第1端子電極6と第2端子電極8とを有する。コンデンサ素体4は、内側誘電体層10と、内部電極層12とを有し、内側誘電体層10の間に、内部電極層12が交互に積層してある。
内側誘電体層10と、内部電極層12とが交互に積層される部分が内装領域(容量領域)である。コンデンサ素体4は、その積層方向Z(Z軸)の両端面に、外装領域を有する。外装領域は、内装領域を構成する内側誘電体層10よりも厚い誘電体層で構成してある。
交互に積層される一方の内部電極層12は、コンデンサ素体4のX軸方向第1端部の外側に形成してある第1端子電極6の内側に対して電気的に接続してある。また、交互に積層される他方の内部電極層12は、コンデンサ素体4のX軸方向第2端部の外側に形成してある第2端子電極8の内側に対して電気的に接続してある。
内側誘電体層10および外装領域を構成する誘電体層の材質は、同じでも異なっていても良く、特に限定されず、たとえばABOなどのペロブスカイト構造の誘電体材料で構成される。ABOにおいて、Aは、たとえばBa、Ca、Srなどの少なくとも一種、Bは、Ti,Zrなどの少なくとも一種である。A/Bのモル比は、特に限定されず、0.980〜1.200である。
特に好ましくは、内側誘電体層10は、チタン酸バリウム(BaTiO3 )を含む主成分と、ホウ素酸化物および/またはリチウム酸化物を含む副成分とを有する。ホウ素酸化物としては、Bが例示され、リチウム酸化物としては、LiOが例示される。
主成分であるチタン酸バリウムは、たとえば組成式BaTiO2+m で表され、組成式中のmが0.995≦m≦1.100であり、BaとTiとの比が0.995≦Ba/Ti≦1.100である。
主成分であるチタン酸バリウム100モルに対して、副成分としてのホウ素酸化物は、B換算で、好ましくは2.5〜20モルの範囲で誘電体層10に含まれることが好ましい。あるいは、主成分であるチタン酸バリウム100モルに対して、副成分としてのリチウム酸化物は、LiO換算で、好ましくは2.5〜20モルの範囲で誘電体層10に含まれることが好ましい。
誘電体層10に含まれてもよいその他の副成分としては、たとえば下記の副成分が例示される。MgO、CaO、SrO、BaOから選択される少なくとも1種、あるいは、SiO、Alから選択される少なくとも1種、あるいは、MnO、Cr、Vから選択される少なくとも一種、あるいは、Rの酸化物(R)(Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu)から選択される少なくとも一種などが例示される。これらのその他の副成分は、チタン酸バリウム100モルに対して、たとえば0〜10モル、好ましくは1〜5モルの範囲で含まれていてもよい。
内部電極層12は、銅(Cu)および/または銀(Ag)を主成分として含む。「銅(Cu)および/または銀(Ag)を主成分として含む」とは、それらの金属を含む合金を主成分として含んでもよいという趣旨である。また、「主成分として含む」とは、内部電極層12において、銅、銀、またはそれらの合金の含有割合が、80重量%以上であるという趣旨である。内部電極層12には、銅または銀またはそれらの合金以外の元素が含まれていてもよい。
なお、銅(Cu)および/または銀(Ag)を含む合金としては、特に限定されないが、Ag−Pd合金などが例示される。
端子電極6および8の材質も特に限定されないが、通常、Ni,Pd,Ag,Au,Cu,Pt,Rh,Ru,Ir等の少なくとも1種、またはそれらの合金を用いることができる。通常は、Cu,Cu合金、NiまたはNi合金等や、Ag,Pd,Ag−Pd合金、Ag−Pd−Cu合金等が使用される。また、端子電極6および8は、それぞれ多層電極で構成してあってもよい。
たとえば端子電極6および8は、それぞれ、素子本体4に接する内側から、銅ペースト焼付け電極膜とニッケルメッキ膜とスズメッキ膜との三層構造を含んでもよく、銅ペースト焼付け電極膜と銀を主成分とする焼付け電極膜の2層構造を含んでもよい。あるいは、端子電極6および8は、それぞれ、樹脂と金属粒子で構成される樹脂電極膜を含んでもよい。
積層セラミックコンデンサ2の形状やサイズは、目的や用途に応じて適宜決定すればよい。積層セラミックコンデンサ2が直方体形状の場合は、通常、X軸方向寸法は、0.4〜5.7mmであるが、本実施形態では、好ましくは1.0〜4.5mmである。
積層セラミックコンデンサ2の高さ寸法(Z軸方向寸法)は、内側誘電体層10および内部電極層12の積層数などにより変化するが、一般的には、0.2〜3.2mmであるが、本実施形態では、好ましくは0.5〜2.5mmである。また、積層セラミックコンデンサ2のY軸方向寸法は、一般的には、0.2〜5.0mmであるが、本実施形態では、好ましくは0.5〜2.5mmである。
なお、図1では、図示の容易化のために、端子電極6および8の厚みを、実際よりも厚めに描いてあるが、実際には、それぞれ10〜50μm程度であり、X軸方向寸法に比較してきわめて薄い。また、図面において、X軸、Y軸およびZ軸は、相互に垂直であり、Z軸が、内側誘電体層10および内部電極層12の積層方向に一致し、X軸が、端子電極6および8の向き合う方向に一致する。
各内側誘電体層10の厚みは、数μm〜数十μmのものが一般的であるが、本実施形態では、好ましくは0.5〜20μmである。また、内部電極層12の厚みは、好ましくは0.7〜3μmである。
図2に示すように、本実施形態では、図1に示すコンデンサ2の断面写真(Z軸に平行な断面)を撮像した場合に、たとえば(10〜50μm)×(10〜50)μmの撮像範囲内で、内部電極層12の横断面に、以下の特徴が表れる。すなわち、各内部電極層12は、横断面において、X軸およびY軸の平面に全て連続しているわけではなく、複数の電極不存在領域12bを介して断続的に表れる電極存在領域12aにより構成される。電極存在領域12aでは、内部電極層12を構成する導電性粒子がX軸およびY軸の平面方向に連続している。
すなわち、本実施形態では、内部電極層12と略垂直方向に素子本体4を切断して切断面を観察した場合に、内部電極層12では、長手方向に沿って所定長さX0の範囲内に、電極存在領域12aと、電極不存在領域12bとが交互に配置されており、電極不存在領域12bが2以上で存在する。所定長さX0の範囲内とは、特に限定されないが、好ましくは50μmの範囲内である。
電極不存在領域12bは、切断面において、内部電極層12の長手方向に沿って断続的に現れ、導電性粒子が存在しない領域である。この電極不在領域12bは、誘電体層10を構成する誘電体粒子により隣接する誘電体層同士が接続している領域と、誘電体粒子も導電性粒子も存在しない空隙(ボイド)20が存在している領域とを有する。なお、空隙20は、誘電体層10にも存在する。また、内部電極層12の内部に、誘電体粒子10aが内包されていてもよい。
電極不存在領域12bは、各内部電極層12において、X軸方向またはY軸方向またはその間の平面方向に連続して形成されるわけではなく、内部電極層12の平面(X−Y軸平面)に、島状に表れる。したがって、各内部電極層12の電極存在領域12aは、いずれかの横断面(切断面)で接続してあり、全体的に見れば、図1に示すように、X軸方向およびY軸方向に連続している。電極不存在領域12bのX軸方向幅またはY軸方向幅(あるいはX軸とY軸との中間方向の幅)は、内部電極層12の厚みの1〜10倍程度である。
また、本実施形態では、複数の電極不存在領域12bのために、内部電極層12は、その間に配置される誘電体層12を積層方向から100%で覆うことなく、98%以下、好ましくは、60〜90%の被覆率で誘電体層を覆っている。なお、内部電極層12の被覆率は、内部電極層12の断面において、電極不存在領域12bを除いた電極存在領域12aの総和の長さを、理想的に連続している電極長さで割り算した値(%表示)として算出される。
本発明者は、積層セラミックコンデンサ2などの電子部品において、鋭意検討した結果、以下の条件を満足することで、絶縁復帰特性に優れる電子部品が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本実施形態の内部電極層12は、銅または銀を主成分として含む。また、誘電体層10は、チタン酸バリウムを含む主成分と、ホウ素酸化物および/またはリチウム酸化物を含む副成分とを有する。しかも、誘電体層10に対する内部電極層12の被覆率が98%以下である。
もしくは、本実施形態の積層セラミックコンデンサ2は、以下の条件を満足する。本実施形態の内部電極層12は、銅または銀を主成分として含む。また、誘電体層10は、チタン酸バリウムを含む主成分と、ホウ素酸化物および/またはリチウム酸化物を含む副成分とを有する。しかも、誘電体層10では、長手方向に沿って所定長さX0の範囲内に、電極存在領域12aと電極不存在領域12bとが交互に配置されており、電極不存在領域12bが2以上で存在する。
上記のような条件を満足することで、本実施形態の積層セラミックコンデンサ2では、たとえば高電圧または機械適応力により短絡現象が発生した後に、その積層セラミックコンデンサ2の端子電極6,8間に電流(定格電圧で)を流すことで絶縁性を復帰させることができる。そのため、短絡現象が発生した積層セラミックコンデンサ2に再び電圧を印加したとしても、絶縁性が確保され、電流が流れず発熱するおそれが少ない。
なお、短絡現象が発生した積層セラミックコンデンサ2に再び電流を流すことで、絶縁性が復帰するのは、次に示す理由であると考えられる。すなわち、上記の条件が満足される場合には、内部電極層12の短絡が生じた部分に電流が再度流れることで、内部電極層12が溶解して飛散し、絶縁性が復帰すると考えられる。短絡現象を発生させる高電圧としては、特に限定されないが、その積層セラミックコンデンサ2における定格電圧(10〜630V)の2.5倍以上の電圧である。
本実施形態では、好ましくは、内部電極層12の被覆率が60%以上で90%以下である。このように構成することで、短絡後に絶縁性が復帰しやすいと共に、初期静電容量(短絡前の静電容量)も大きい。
また、本実施形態では、図1に示す内部電極層12の積層方向(Z軸方向)の中央部に比較して、積層方向の最外層での内部電極層12の被覆率が小さい。たとえば積層方向の中央部での被覆率をCcとし、積層方向の最外層での被覆率をCeとした場合に、Ce/Ccは、好ましくは、1より小さく、さらに好ましくは0.8〜0.98である。
積層方向の最外層では、積層方向の中央部に比較して、内部電極層12同士の短絡が生じやすい。そこで、積層方向の最外層での内部電極層12の被覆率を小さくすることで、そこでの絶縁復帰を生じさせやすくできる。積層方向の中央部に位置する内部電極層12では、比較的に被覆率を大きくすることで、初期静電容量を大きくすることができる。
もしくは、本実施形態では、内部電極層12において、長手方向に沿って所定長さX0の範囲内に、電極不存在領域12bが、好ましくは2〜10個、さらに好ましくは2〜5個の範囲で存在する。このように構成することで、短絡後に絶縁性が復帰しやすいと共に、初期静電容量(短絡前の静電容量)も大きい。
また、本実施形態では、図1に示す内部電極層12の積層方向(Z軸方向)の中央部に比較して、積層方向の最外層での内部電極層12の長手方向(X軸方向またはY軸方向またはこれらの中間の方向)に沿って所定長さX0の範囲内での電極不存在領域12bの数が大きい。たとえば積層方向の中央部での電極不存在領域の数をEcとし、積層方向の最外層での電極不存在領域の数をEeとした場合に、Ec/Eeは、好ましくは、1より小さく、さらに好ましくは0.2〜0.8である。
積層方向の最外層では、積層方向の中央部に比較して、内部電極層12同士の短絡が生じやすい。そこで、積層方向の最外層での内部電極層12の電極不存在領域の数を大きくすることで、そこでの絶縁復帰を生じさせやすくできる。積層方向の中央部に位置する内部電極層12では、比較的に電極不存在領域の数を小さくすることで、初期静電容量を大きくすることができる。
さらに本実施形態では、図2に示すように、内部電極層12の電極存在領域12aには、チタン酸バリウムを主成分とする誘電体粒子10aが含まれている。このように構成することで、短絡後に絶縁性が復帰しやすい。
また本実施形態では、内部電極層12の電極不存在領域12bには、空隙20が含まれている。このように構成することで、短絡後に絶縁性が復帰しやすい。さらに本実施形態では、誘電体層10にも空隙20が含まれている。空隙20の大きさは、特に限定されないが、好ましくは0.2〜3μmの断面積換算径である。なお、断面積換算径とは、断面においての空隙20の断面積を測定し、その断面積を持つ円の直径に換算したサイズである。
本実施形態では、内部電極層12の積層方向の中央部に比較して、積層方向の最外層での内部電極層12に含まれる空隙20の面積比率が大きい。たとえば積層方向の中央部での内部電極層12の面積に対する空隙20の面積比率をVcとし、積層方向の最外層での内部電極層12の面積に対する空隙20の面積比率をVeとした場合に、Vc/Veは、好ましくは、1より小さく、さらに好ましくは0.2〜0.8である。
このように構成することで、短絡後に絶縁性が復帰しやすい。その理由としては、積層方向の最外層での内部電極層12に含まれる空隙の面積比率が大きいと、熱が素子本体4の外に逃げ難くなるためではないかと考えられる。
特に本実施形態では、図1に示す素子本体4の外表面に近い部分に位置する誘電体層10に含まれるホウ素の含有量(Bs)が、素子本体の中心部分に位置する誘電体層10に含まれるホウ素の含有量(Bc)に比較して少ないことが好ましい。
このように構成することで、端子電極6および8と素子本体4との接合強度が向上することや、外表面に含まれるホウ素が空気中の水分と反応して外表面の強度が低下してしまう不具合が発生しにくくなるなどの理由により、積層セラミックコンデンサ2の撓み強度あるいはクラック強度が向上する。
なお、含有比率Bs/Bcは、好ましくは0.5〜0.95であり、この含有比率Bs/Bcを適切に制御するには、素子本体4の脱バインダ時間、焼成時間、アニール時間などを制御すればよい。これらの時間が長いほど、含有比率Bs/Bcが小さくなる傾向にある。
積層セラミックコンデンサの製造方法
次に、本発明の一実施形態としての積層セラミックコンデンサ2の製造方法について説明する。
まず、焼成後に図1に示す内側誘電体層10を構成することになる内側グリーンシートおよび外装領域の外側誘電体層を構成することとなる外側グリーンシートを製造するために、内側グリーンシート用ペーストおよび外側グリーンシート用ペーストを準備する。
内側グリーンシート用ペーストおよび外側グリーンシート用ペーストは、通常、セラミック粉末と有機ビヒクルとを混練して得られた有機溶剤系ペースト、または水系ペーストで構成される。
セラミック粉末の原料としては、上述した誘電体層10を構成することになる複合酸化物や酸化物となる各種化合物、たとえば炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物などから適宜選択され、混合して用いることができる。セラミック粉体の原料は、本実施形態では、平均粒子径が好ましくは0.01〜1μm程度の粉体として用いられる。なお、内側グリーンシートをきわめて薄いものとするためには、グリーンシート厚みよりも細かい粉体を使用することが望ましい。
有機ビヒクルとは、バインダを有機溶剤中に溶解したものである。有機ビヒクルに用いるバインダは特に限定されず、アクリル、エチルセルロース等の通常の各種バインダから適宜選択すればよい。
また、用いる有機溶剤も特に限定されず、印刷法やシート法など、利用する方法に応じて、ターピネオール、ブチルカルビトール、アルコール、メチルエチルケトン、アセトン、トルエン等の各種有機溶剤から適宜選択すればよい。
グリーンシート用ペースト中には、必要に応じて、各種分散剤、可塑剤、誘電体、副成分化合物、ガラスフリット、絶縁体などから選択される添加物が含有されていてもよい。
可塑剤としては、フタル酸ジオクチルやフタル酸ベンジルブチルなどのフタル酸エステル、アジピン酸、燐酸エステル、グリコール類などが例示される。
次いで、図1に示す内部電極層12を形成するための内部電極パターン層用ペーストを準備する。内部電極パターン層用ペーストは、上記した各種導電性金属または合金からなる導電材と、上記した有機ビヒクルとを混練して調製する。導電材の代わりに、酸化物、有機金属化合物またはレジネート等も用いることができる。上記した酸化物、有機金属化合物およびレジネートは、焼成後に上記した導電材となる。なお、内部電極パターン層用ペーストには、必要に応じて、共材としてセラミック粉末(たとえばチタン酸バリウム粉末)が含まれていても良い。共材は、焼成過程において導電性粉末の焼結を抑制する作用を奏する。
上記にて調整した内側グリーンシート用ペーストおよび内部電極パターン層用ペーストを使用して、図1に示すように、焼成後に内側誘電体層10となる内側グリーンシートと、焼成後に内部電極層12となる内部電極パターン層と、を交互に積層し、焼成後に内装領域となる内部積層体を製造する。そして、内部積層体を製造した後に、または、その前に、外側グリーンシート用ペーストを使用して、焼成後に外装領域の外側誘電体層となる外側グリーンシートを形成する。
具体的には、まず、ドクターブレード法などにより、支持体としてのキャリアシート(たとえばPETフィルム)上に、内側グリーンシートを形成する。内側グリーンシートは、キャリアシート上に形成された後に乾燥される。
次いで、上記にて形成した内側グリーンシートの表面に、内部電極パターン層用ペーストを用いて、内部電極パターン層を形成し、内部電極パターン層を有する内側グリーンシートを得る。そして、得られた内部電極パターン層を有する内側グリーンシートを交互に積層し、内部積層体を得る。なお、内部電極パターン層の形成方法としては、特に限定されないが、印刷法、転写法などが例示される。なお、接着層を介して内部電極パターン層を有する内側グリーンシートを積層してもよい。
外側グリーンシートは、内側グリーンシートと同様に、支持体としてのキャリアシート上に形成される。外側グリーンシートは、キャリアシート上に形成された後に乾燥される。なお、外側グリーンシートの厚みは、内側グリーンシートよりも十分に厚い。
なお、外側グリーンシートに内部積層体を積層するかわりに、外側グリーンシートに直接内側グリーンシートと内部電極パターン層とを交互に所定数積層してもよい。また、複数枚の内側グリーンシートと複数枚の内部電極パターン層とを交互に積層した積層体ユニットを予め作製しておき、それらを外側グリーンシートに所定数積層してもよい。
得られたグリーン積層体は、たとえば切断線に沿って所定の寸法に切断され、グリーンチップとする。グリーンチップは、固化乾燥により可塑剤が除去され固化される。固化乾燥後のグリーンチップは、メディアおよび研磨液とともに、バレル容器内に投入され、水平遠心バレル機などにより、バレル研磨される。バレル研磨後のグリーンチップは、水で洗浄され、乾燥される。
乾燥後のグリーンチップに対して、脱バインダ工程、焼成工程、必要に応じて行われるアニール工程を行うことにより、図1に示すコンデンサ素体4が得られる。なお、内部電極層12となる内部電極パターン層に銅が含まれている場合には、焼成時の温度条件は、銅の融点1085°Cよりも低い温度、すなわち900〜1080°Cで行われることが好ましい。また、内部電極層12となる内部電極パターン層に銀が含まれている場合、焼成時の温度条件は、銀の融点962°Cより低い温度、すなわち、800〜960°Cで行われることが好ましい。
このようにして得られた焼結体(素子本体4)には、バレル研磨等にて端面研磨を施し、端子電極用ペーストを焼きつけて端子電極6,8が形成される。そして、必要に応じ、端子電極6,8上にめっき等を行うことによりパッド層を形成する。なお、端子電極用ペーストは、上記した内部電極パターン層用ペーストと同様にして調製すればよい。
このようにして製造された積層セラミックコンデンサ2は、ハンダ付や導電性接着剤によりプリント基板上などに実装され、各種電子機器等に使用される。
なお、本実施形態において、内部電極層12の被覆率は、内部電極パターン層用ペースト中の共材量とバインダ量、内部電極パターン層形成時のペーストの付着量、脱バインダ温度、脱バインダ処理時間、焼成温度、焼成時間、焼成雰囲気等を調整することで制御できる。
内部電極パターン層用ペーストにおいて、共材粒子の含有割合を増やすと、焼成過程における導電性粉末の焼結が抑制され、内部電極層12の被覆率は、低下する傾向となる。共材として使用するセラミック粉末の平均粒径は、好ましくは0.01〜5μmである。
また、内部電極パターン層用ペーストにおいて、バインダの含有割合を増やすと、脱バインダ過程と焼成過程とでバインダが分解して気体となって脱離することで空隙を形成し、内部電極層12の被覆率は低下する傾向となる。内部電極パターン層用ペースト中のバインダの含有割合は、導電性金属を100wt%とした場合、好ましくは1〜10wt%の範囲である。
脱バインダ温度と脱バインダ処理時間については、これらの条件を所定の範囲に調整することで、バインダが分解して気体となって脱離する際に、空隙が形成される度合いが変化し、内部電極層12の被覆率を所定の範囲内に制御することができる。
焼成温度、焼成時間、焼成雰囲気については、これらの条件を所定の範囲で調整することで、コンデンサ素体の焼結の度合いが変化し、内部電極層12の被覆率を所定の範囲内に制御することができる。
一方、電極不存在領域12bの数は、内部電極パターン層用ペースト中の各種導電性金属や合金からなる導電材の粒径、共材量、共材として使用するセラミック粉末の平均粒径、バインダの含有割合、脱バインダ温度、脱バインダ処理時間、焼成温度、焼成時間、焼成雰囲気等を調整することで制御できる。
内部電極パターン層用ペースト中の各種導電性金属や合金からなる導電材の粒径を大きくすると、電極が焼成過程で互いに集まって結合することが抑制され、電極不存在領域12bの数が増加する傾向となる。各種導電性金属や合金からなる導電材の平均粒径は、好ましくは0.2〜3μmである。
被覆率と同様に、共材粒子の含有割合を増やすと、電極不存在領域12bの数は増加する傾向となり、電極不存在領域の個数は、共材粒子の含有割合により制御できる。ただし、電極不存在領域の数は、共材として使用するセラミック粉末の平均粒径および内部電極層の厚みによっても変化する。すなわち、内部電極層の厚みに対して、共材粉末の平均粒径が大きいと、電極不存在領域の数は多くなる。内部電極層の厚み(T)に対する共材粉末の平均粒径(D)の比率(D/T)が、0.5〜10の範囲にあることが好ましい。
被覆率と同様に、内部電極パターン層用ペーストにおいて、バインダの含有割合を増やすと、脱バインダ過程と焼成過程とでバインダが分解して気体となって脱離することで空隙が形成され、電極不存在領域12bの数は増加する傾向となる。
また、脱バインダ温度と脱バインダ処理時間については、これらの条件を所定の範囲に調整することで、バインダが分解して気体となって脱離する際に、空隙が形成される度合いが変化し、電極不存在領域12bの数を所定の範囲内に制御することができる。
焼成温度、焼成時間、焼成雰囲気については、これらの条件を所定の範囲で調整することで、電極不存在領域12bの数を制御することができる。特に焼成温度が高い、もしくは焼成時間が長いと、導電性粉末の焼結が促進されて空隙20の個数が増加する。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
たとえば、本発明の積層セラミック電子部品は、積層セラミックコンデンサに限らず、その他の積層型セラミック電子部品に適用することが可能である。その他の積層型セラミック電子部品としては、誘電体層が内部電極を介して積層される全ての電子部品であり、たとえばバンドパスフィルタ、積層三端子フィルタ、圧電素子、PTCサーミスタ、NTCサーミスタ、バリスタなどが例示される。
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
実験例1
まず、主原料の原料紛体として粒子径が0.05〜1μmのBaTiO粉末を準備し、次にMgCO、MnCO、Y、SiO、Bを副成分として準備した。なお、副成分はあらかじめ予備解砕を行い、チタン酸バリウム原料の粒子径よりも小さい0.03〜0.2μm程度に加工した。
次に上記で準備した各原料粉末を主原料100モルに対して、MgCO粉末を1.5モル、MnCO粉末を0.2モル、Y粉末を1.0モル、B粉末を10モル秤量した。これら各粉末をボールミルで湿式混合、乾燥して、容量領域の誘電体原料を得た。このとき添加したMgCO、MnCOは、焼成後にはそれぞれMgO、MnOとして誘電体層10中に含有されることとなる。
次いで、得られた誘電体原料:100重量部と、アクリル樹脂:7重量部と、可塑剤としてのフタル酸ブチルベンジル(BBP):4重量部と、溶媒としてのメチルエチルケトン:80重量部とをボールミルで混合してペースト化し、内側誘電体層用ペーストを得た。
また、上記とは別に、Cu粒子:56重量部と、テルピネオール:40重量部と、エチルセルロース:4重量部と、ベンゾトリアゾール:1重量部と、共材としてのチタン酸バリウム粒子:50重量部とを、3本ロールにより混練し、ペースト化して内部電極層用ペーストを作製した。Cu粒子の平均粒径は、1μmであった。なお共材として用いたチタン酸バリウム粒子の平均粒径は、1μmであった。
さらに、外装領域の誘電体原料として、平均粒子径が、容量領域の誘電体粒子と同じ粒径の主原料粉末を準備した。容量領域の誘電体原料と同様の手法で、副成分と湿式混合とペースト化を行い、外装領域の誘電体用ペーストを得た。
そして、上記にて作製した誘電体層用ペーストを用いて、PETフィルム上にグリーンシートを形成した。次いで、外装領域を形成するための誘電体ペーストを用いて、PETフィルム上にグリーンシートを形成した。内部電極用ペーストをスクリーン印刷し、内装領域のためのグリーンシートを形成した。
内部電極層を有する内装領域のためのグリーンシートと、外装領域のためのグリーンシートを複数枚積層し、加圧接着することによりグリーン積層体とし、このグリーン積層体を所定サイズに切断することにより、グリーンチップを得た。
次いで、得られたグリーンチップについて、脱バインダ処理、焼成およびアニールを下記条件にて行って、積層セラミック焼成体を得た。
脱バインダ処理条件は、昇温速度25℃/時間、保持温度:260℃、保持時間:8時間、雰囲気:空気中とした。
焼成条件は、昇温速度200℃/時間、保持温度1000℃とし、保持時間を120分とした。降温速度は200℃/時間とした。なお、雰囲気ガスは、加湿したN+H混合ガスとし、酸素分圧が10−9MPa以下となるようにした。
アニール条件は、昇温速度:200℃/時間、保持温度1000℃、保持時間:10時間、降温速度:200℃/時間、雰囲気ガス:加湿したNガス(酸素分圧:10−8MPa以下)とした。
なお、焼成およびアニールの際の雰囲気ガスの加湿には、ウェッターを使用した。
次いで、得られた積層セラミック焼成体をバレル研磨した後、外部電極としてCuペーストを塗布し、還元雰囲気にて焼き付け処理を行い、実施例1に係る複数の積層セラミックコンデンサ試料(以下、単に「コンデンサ試料」と表記する場合がある)を得た。実施例1に係るコンデンサ試料の要部概略拡大断面図を図2に示す。なお焼成後の内部電極層の一層当たりの厚みは、平均で1.5μmであり、内部誘電体層の厚みは、平均で15μmであった。また、内部電極層と誘電体層との積層数は、10層とした。
実施例2〜8
実施例1のコンデンサ試料の製造条件の内、共材として添加するセラミック粉末の調合量を変化させた以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜8に係る複数のコンデンサ試料を作製した。
実施例9
主原料100モルに対して、副成分として、B粉末を10モルの代わりにLiOを10モル秤量した以外は、実施例7と同様にして、実施例9に係る複数のコンデンサ試料を作製した。
実施例10
Cu粒子:56重量部の代わりに、Ag粒子:56重量部を用いた以外は、実施例7と同様にして、実施例10に係る複数のコンデンサ試料を作製した。なお内部電極層にAg粒子を用いる場合、焼成工程およびアニール工程の保持温度は、Agの融点に合わせて900℃とした。
比較例1
コンデンサ試料の製造条件を、共材としてのチタン酸バリウム粒子を入れないこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1に係る複数のコンデンサ試料を作製した。
比較例2
Cu粒子:56重量部の代わりに、Ni粒子:56重量部を用いた以外は、実施例7と同様にして、比較例2に係る複数のコンデンサ試料を作製した。
比較例3
主原料100モルに対して、副成分として、ホウ素酸化物またはリチウム酸化物のいずれも含ませることなく、比較例3に係る複数のコンデンサ試料を作製した。
測定
比較例1〜3および実施例1〜10で得られたコンデンサ試料について、以下の測定を行った。結果を表1に示す。
1.内部電極被覆率
各実施例および比較例に対して、積層セラミックコンデンサ試料の内部電極層の平面に対して垂直な面を研磨して、その研磨面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて3千倍で9視野、拡大観察し、1視野あたり10個の内部電極層12における電極存在領域12aの存在割合(平均)を、内部電極の被覆率C(%)として算出した。
理想的には内部電極層12は連続性を有し、所定の設定長さLを備えるはずである。しかしながら、実際には、いわゆる球状化などによる内部電極の途切れ(電極不存在領域12b)が複数の場所で生じ、途切れ部分(電極不存在領域12b)を除いた分断された電極存在領域12aの総和の長さΣLiが現実の長さ値となる。なお、内部電極層12に途切れが全く生じていない場合、内部電極の被覆率は100%となる。
2.初期静電容量
絶縁復帰試験を行う前の実施例および比較例のそれぞれ10個のコンデンサ試料に関して、LCRメーターにて1kHz、1Vrmsの条件で、静電容量を測定し、その試料の平均値を求めた。そして、比較例1に係る基準試料の初期静電容量を100%とし、それを基準に、各実施例1〜10(比較例2〜3を含む)の各試料の静電容量の平均値を算出した。
3.絶縁復帰特性(自己修復特性)試験
各実施例および比較例のコンデンサ試料を複数準備し、それらに1000Vを印加し、内部電極の短絡を強制的に生じさせて10Ω以下となった試料を、各実施例および比較例について、それぞれ10個用意し、それらに2.5Aで通電し、10kΩ以上まで絶縁が復帰した試料の個数を調べた。表1に示す絶縁復帰の項目において、数値の分母は、試験した試料の個数であり、分子は、絶縁が復帰した試料の個数を示す。
評価1
各実施例および比較例のコンデンサ試料について、内部電極の被覆率と絶縁復帰特性との関係を評価した結果を、表1に示す。
表1の比較例2に示すように、内部電極層としてNiを含む電極では、絶縁復帰可能な試料の個数は0である。また、誘電体層にホウ素酸化物またはリチウム酸化物のいずれも含まない比較例3では、絶縁復帰可能な試料の個数は0である。さらに、内部電極層の被覆率が100%となる比較例1では、絶縁復帰可能な試料の個数は0である。
これらの比較例1〜3に対して、内部電極の被覆率が98%以下で、内部電極として銅または銀を主成分として含み、さらに誘電体層には、ホウ素またはリチウムの酸化物を含む実施例1〜10では、絶縁復帰する試料の個数が多い(絶縁復帰特性に優れている)ことも確認できた。
また、実施例1〜10を比較することで、内部電極の被覆率は、60〜90%の場合に、絶縁復帰特性に優れ、さらに初期静電容量も高いことが確認できた。また、特に、内部電極層には、銅(Cu)が含まれていることが好ましく、誘電体層にはホウ素(B)が含まれていることが好ましいことが確認できた。
また、内部電極の被覆率の制御は、内部電極層に含まれる共材粒子の含有割合により行うことができることが確認できた。より具体的には、内部電極層に含まれる共材粒子の含有割合が多過ぎると、被覆率が低下する傾向にある。
Figure 2019176131
実験例2
実施例1と同様にして、実施例11に係る複数のコンデンサ試料を作製した。すなわち実施例11では、平均粒径1μmのチタン酸バリウムを共材として用い、その含有割合は50重量部とした。また、実施例11では、内部電極層の一層当たりの厚みは、焼成後で平均1.5μmであり、内部誘電体層の一層当たりの厚みは、焼成後で平均10μmであった。
実施例12〜15
実施例11のコンデンサ試料の製造条件の内、共材として添加するセラミック粉末の調合量を変化させた以外は、実施例11と同様にして、実施例12〜15に係る複数のコンデンサ試料を作製した。
実施例16
Cu粒子:56重量部の代わりに、Ag粒子:56重量部を用いた以外は、実施例15と同様にして、実施例16に係る複数のコンデンサ試料を作製した。
実施例17
主原料100モルに対して、副成分として、B2 O3 粉末を10モルの代わりにLi2 Oを10モル秤量した以外は、実施例15と同様にして、実施例17に係る複数のコンデンサ試料を作製した。
実施例18
主原料100モルに対して、副成分として、B2 O3 粉末を5モルに加えてLi2 Oを5モルと秤量した以外は、実施例15と同様にして、実施例18に係る複数のコンデンサ試料を作製した。
比較例4
コンデンサ試料の製造条件を、共材としてのチタン酸バリウム粒子の調合量を変化させた以外は、実施例11と同様にして、比較例4に係る複数のコンデンサ試料を作製した。
比較例5
Cu粒子:56重量部の代わりに、Ni粒子:56重量部を用いた以外は、実施例15と同様にして、比較例5に係る複数のコンデンサ試料を作製した。
比較例6
主原料100モルに対して、副成分として、ホウ素酸化物またはリチウム酸化物のいずれも含ませることなく、比較例6に係る複数のコンデンサ試料を作製した。
測定
比較例1、3〜6および実施例11〜18で得られたコンデンサ試料について、実験例1で行った初期静電容量の測定および絶縁復帰試験に加えて、以下の測定を行った。結果を表2に示す。
4.X0=50μmの範囲での電極不存在領域の数
被覆率の測定と同様に、各実施例および比較例に対して、積層セラミックコンデンサ試料の内部電極層の平面に対して垂直な面で研磨して、その研磨面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて3千倍で9視野、拡大観察し、1視野あたり10個の内部電極層12を観察した。そして、内部電極層12において、その長手方向に沿って所定長さX0(=50μm)の範囲内での電極不存在領域12bの数の平均値を求めた。なお、内部電極層12に途切れが全く生じていない場合、内部電極層12における電極不存在領域12bの数は0になる。
評価2
各実施例および比較例のコンデンサ試料について、電極不存在領域の個数と絶縁復帰特性との関係を評価した結果を、表2に示す。
表2の比較例5に示すように、内部電極層としてNiを含む電極では、絶縁復帰可能な試料の個数は0である。また、誘電体層にホウ素酸化物またはリチウム酸化物のいずれも含まない比較例6では、絶縁復帰可能な試料の個数は0である。さらに、内部電極層の電極不存在領域の数が1となる比較例4では、絶縁復帰可能な試料の個数は0である。
これらの比較例1、3〜6に対して、内部電極層の電極不存在領域の数が2以上で、内部電極として銅または銀を主成分として含み、さらに誘電体層には、ホウ素またはリチウムの酸化物を含む実施例では、絶縁復帰する試料の個数が多い(絶縁復帰特性または自己修復特性に優れている)ことも確認できた。
また、実施例11〜18を比較することで、内部電極層の電極不存在領域の数が、2〜5の場合に、特に自己修復特性に優れ、さらに初期静電容量も高いことが確認できた。また、特に、内部電極層には、銅(Cu)が含まれていることが好ましく、誘電体層にはホウ素(B)が含まれていることが好ましいことが確認できた。
また、内部電極における電極不存在領域の数の制御は、共材粒子の含有割合により行うことができることが確認できた。より具体的には、内部電極層に含まれる共材粒子の含有割合が多過ぎると、電極不存在領域の数が増加する傾向にある傾向にある。
Figure 2019176131
実験例1および2とは別に、内部誘電体層10および内部電極層12の厚みを変えた複数のコンデンサ試料を作製し、その絶縁復帰特性を評価した。その結果、内部誘電体層10の厚みを0.5〜20μmの範囲で変えたとしても、実施例1〜18と同様に、優れた絶縁復帰特性が得られた。また、内部電極層12の厚みを変えても、実施例1〜18と同様に、優れた絶縁復帰特性が得られることが確認できた。
2… 積層セラミックコンデンサ
4… コンデンサ素体
6… 第1端子電極
8… 第2端子電極
10… 内側誘電体層
10a… 誘電体粒子
12… 内部電極層
12a… 電極存在領域
12b… 電極不存在領域
20… 空隙

Claims (10)

  1. 誘電体層と内部電極層とが交互に積層されて形成されたセラミック素体を有する積層セラミック電子部品であって、
    前記誘電体層は、チタン酸バリウムを含む主成分と、ホウ素酸化物および/またはリチウム酸化物を含む副成分とを有し、
    前記内部電極層は、銅および/または銀を主成分として含み、
    前記誘電体層に対する前記内部電極層の被覆率が98%以下であることを特徴とする積層セラミック電子部品。
  2. 前記内部電極層の被覆率が60%以上で90%以下である請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
  3. 前記内部電極層の積層方向の中央部に比較して、前記積層方向の最外層での前記内部電極層の被覆率が小さい請求項1または2に記載の積層セラミック電子部品。
  4. 前記内部電極層には、チタン酸バリウムを主成分とする誘電体粒子が含まれている請求項1〜3のいずれかに記載の積層セラミック電子部品。
  5. 前記内部電極層には、空隙が含まれている請求項1〜4のいずれかに記載の積層セラミック電子部品。
  6. 前記内部電極層の積層方向の中央部に比較して、前記積層方向の最外層での前記内部電極層に含まれる前記空隙の面積比率が大きい請求項5に記載の積層セラミック電子部品。
  7. 誘電体層と内部電極層とが交互に積層されて形成されたセラミック素体を有する積層セラミック電子部品であって、
    前記誘電体層は、チタン酸バリウムを含む主成分と、ホウ素酸化物および/またはリチウム酸化物を含む副成分とを有し、
    前記内部電極層は、銅および/または銀を主成分として含み、
    前記内部電極層では、長手方向に沿って所定長さの範囲内に、前記内部電極層を構成する導電性粒子が存在する電極存在領域と、前記導電性粒子が存在しない電極不存在領域とが交互に配置されており、前記電極不存在領域が2以上で存在することを特徴とする積層セラミック電子部品。
  8. 前記所定長さの範囲が50μmであり、
    前記内部電極層では、長手方向に沿って前記所定長さの範囲内に、前記電極不存在領域が2〜5個の範囲で存在することを特徴とする請求項7に記載の積層セラミック電子部品。
  9. 前記内部電極層の積層方向の中央部に比較して、前記積層方向の最外層での前記内部電極層の長手方向に沿って前記所定長さの範囲内での前記電極不存在領域の数が多いことを特徴とする請求項7または8に記載の積層セラミック電子部品。
  10. 前記内部電極層には、空隙が含まれており、
    前記内部電極層の積層方向の中央部に比較して、前記積層方向の最外層での前記内部電極層に含まれる前記空隙の面積比率が大きい請求項7〜9のいずれかに記載の積層セラミック電子部品。
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