JP2004273976A - 積層セラミックコンデンサの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】導電膜に導体切れが生じるのを極力回避し、良好な電気特性を有する薄層・多層化された大容量の積層セラミックコンデンサを製造する。
【解決手段】導電膜形成工程11で薄膜形成法によりフィルム上に導電膜を形成し、セラミックシート作製工程12aで焼結助剤を含有していない第1のセラミックシートを作製し、セラミックシート作製工程12bで焼結助剤を含有した第2のセラミックシートを作製する。転写工程13aで第1のセラミックシートの一方の面に導電膜を転写し、セラミック層形成工程13bで第1のセラミックシートの他方の面と第2のセラミックシートとが密着するように第1のセラミックシート、第2のセラミックシート、及び第1のセラミックシートを積層して積層体を作製し、焼成工程14、外部導体形成工程15等を経て積層セラミックコンデンサを製造する。
【選択図】 図2
【解決手段】導電膜形成工程11で薄膜形成法によりフィルム上に導電膜を形成し、セラミックシート作製工程12aで焼結助剤を含有していない第1のセラミックシートを作製し、セラミックシート作製工程12bで焼結助剤を含有した第2のセラミックシートを作製する。転写工程13aで第1のセラミックシートの一方の面に導電膜を転写し、セラミック層形成工程13bで第1のセラミックシートの他方の面と第2のセラミックシートとが密着するように第1のセラミックシート、第2のセラミックシート、及び第1のセラミックシートを積層して積層体を作製し、焼成工程14、外部導体形成工程15等を経て積層セラミックコンデンサを製造する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、積層セラミックコンデンサの製造方法に関し、より詳しくは誘電体セラミック層(以下、「誘電体層」という)となるべき複数枚のセラミックグリーンシート(以下、「セラミックシート」という)を導電膜と導電膜との間に介装した積層セラミックコンデンサの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、各種電子機器の分野では、セラミック焼結体に内部導体を内蔵させた積層セラミックコンデンサが多用されている。
【0003】
この種の積層セラミックコンデンサでは、内部導体と内部導体との間に誘電体層となるべきセラミックシートが介装されているが、最近では、小型化・大容量化や低価格化の要請から、誘電体層の厚みを1μm程度まで薄層化したものが開発されている。
【0004】
また、内部導体を形成する導電性材料についても、AgやPd等の貴金属材料に代えて、CuやNi等の比較的安価な卑金属材料を使用した積層セラミックコンデンサが開発され、これにより低価格化が図られている。
【0005】
ところで、積層セラミックコンデンサの大容量化を図るためには、誘電体層の積層数を増加させるのが効果的であると考えられるが、この場合、内部導体が形成されている部分は内部導体が形成されていない部分に比べ、内部導体の膜厚分だけ厚くなり、このため積層体に歪が生じ易くなる。したがって、内部導体の膜厚は、極力薄くする必要がある。
【0006】
しかしながら、通常のスクリーン印刷法で薄膜の内部導体を形成しようとした場合、セラミックシートとの共焼時に所謂「導体切れ」が生じて内部導体が玉化し、このため静電容量の低下を招く。しかも、スクリーン印刷法に供される導電性ペーストは、導電性粉末、有機バインダ及び有機溶媒との混合物であるため、内部導体の焼成前の厚みは、導電性材料のみの厚みに比べて2〜3倍と厚くなる。このようにスクリーン印刷法で内部導体を形成しようとしても、その薄膜化には限界があり、内部導体の厚みに起因して生じる積層体の歪を十分に緩和することはできない。
【0007】
そこで、従来より、真空蒸着法やスパッタリング法等の薄膜形成法により内部導体(導電膜)を形成する方法が提案されている(特許文献1及び2)。
【0008】
特許文献1及び2では、前記薄膜形成法によりフィルム上に金属膜を形成した後、該金属膜をセラミックシートに転写し、これによりセラミックシート上に薄層で緻密な内部導体(導電膜)を形成しており、したがって内部導体が薄層の金属膜のみで形成されているので、内部導体の膜厚に起因する積層体の歪を大幅に緩和することができる。
【0009】
【特許文献1】
特開昭64−42809号公報
【特許文献2】
特開平6−61090号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1及び2のように薄膜形成法により形成された導電膜は、導電性ペーストを使用して形成された内部導体に比べ、膜厚を薄くすることは可能であるが、導電膜の膜厚が極端に薄くなると、導電性ペーストを使用したスクリーン印刷法の場合と同様、導電膜が途切れて玉化が生じる。そして、このような導電膜の玉化を防止する方法としては、セラミックシートに焼結助剤を添加して積層体の焼結温度を低下させるのが効果的であると考えられる。
【0011】
ところで、焼結助剤として、従来より、SiO2やSiO2−B2O3系ガラス成分を含有したものが知られているが、特に1100℃以下の低温でBaTiO3系セラミック材料を焼結させる場合は、SiO2−B2O3−Li2O−BaO系ガラス材が有効であるとされている。
【0012】
しかしながら、単に、前記焼結助剤をセラミックシートに添加して低温焼結させた場合は、誘電体層となるべきセラミックシートと導電膜との界面で、焼結助剤の液相が導電膜と反応し、このため界面に異相を生成したり、誘電体層中に異相が拡散してしまうおそれがあり、その結果、積層セラミックコンデンサの絶縁抵抗の低下を招くという問題点があった。
【0013】
本発明はこのような問題点に鑑みなされたものであって、導電膜に導体切れが生じるのを極力回避し、良好な電気特性を有する薄層・多層化された大容量の積層セラミックコンデンサを製造することのできる積層セラミックコンデンサの製造方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明に係る積層セラミックコンデンサは、誘電体セラミック層となるべき複数枚のセラミックグリーンシートを導電膜と導電膜との間に介装した積層セラミックコンデンサの製造方法であって、金属箔状の導電膜を薄膜形成法によりフィルム上に形成する導電膜形成工程と、セラミック原料粉末に加工処理を施して第1及び第2のセラミックグリーンシートを作製するセラミックグリーンシート作製工程と、前記第1のセラミックグリーンシートの一方の面に前記導電膜を接合し、前記第2のセラミックグリーンシートが前記第1のセラミックグリーンシートの他方の面間で挟持されるように前記第1のセラミックグリーンシート、前記第2のセラミックグリーンシート、及び前記第1のセラミックグリーンシートを順次積層し、積層体を作製する積層体作製工程と、前記積層体を焼成して焼結体を得る焼成工程とを含み、前記導電膜と接する前記第1のセラミックグリーンシートは焼結助剤成分を含有せず、前記導電膜と接しない第2のセラミックグリーンシートは焼結助剤成分を含有することを特徴としている。
【0015】
上記製造方法によれば、導電膜と接する前記第1のセラミックグリーンシートは焼結助剤成分を含有せず、前記導電膜と接しない第2のセラミックグリーンシートは焼結助剤成分を含有するので、焼成処理を行っても焼結助剤の液相成分が導電膜と反応するのを回避することができ、したがって誘電体層と導電膜との界面に異相が生成したり、誘電体層中に異相が拡散することもなくなる。
【0016】
また、本発明の積層セラミックコンデンサの製造方法は、前記誘電体層の厚みは、1.5μm未満であることを特徴としている。
【0017】
上記製造方法によれば、誘電体層の厚みが1.5μm未満と薄いため、焼結助剤を含有した第2のセラミックシートシート中の前記焼結助剤が第1のセラミックシートにも拡散するため、低温焼結が可能となる。
【0018】
また、前記焼結助剤は、SiO2又はSiO2−B2O3系化合物であるのが好ましく、前記薄膜形成法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、電解めっき法、及び無電解めっき法のうちの少なくとも1種であるのが好ましい。
【0019】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳説する。
【0020】
図1は本発明の製造方法により製造された積層セラミックコンデンサの一実施の形態を示す模式断面図であって、該積層セラミックコンデンサは、チタン酸バリウム(BaTiO3)等の誘電体セラミックス材料を主成分としたセラミック焼結体1の両端面にAg等の導電性材料からなる外部導体2a、2bが形成されると共に、該外部導体2a、2bの表面にはNi、Cu、Ni−Cu合金等からなる第1のめっき皮膜3a、3bが形成され、さらに該第1のめっき皮膜3a、3bの表面にはSnやはんだ等のSn合金からなる第2のめっき皮膜4a、4bが形成されている。
【0021】
上記セラミック焼結体1は、複数の誘電体層からなる誘電体ブロック5と、該誘電体ブロック5を保護する一対の保護層6a、6bとで構成されている。
【0022】
また、誘電体ブロック5は、内部導体7(7a〜7d)と接する第1の誘電セラミック層8(8a〜8d)と、内部導体7(7a〜7d)と接していない第2の誘電セラミック層9(9a〜9c)とから形成され、第1の誘電セラミック層8の内部導体が形成されていない面間で前記第2の誘電セラミック層9が挟持されるように第1の誘電セラミック層8d、第2の誘電セラミック層9c、第1の誘電セラミック層8c、第2の誘電セラミック層9b、第1の誘電セラミック層8b、第2の誘電セラミック層9a、第1の誘電セラミック層8aの順で積層されている。そして、第1の誘電セラミック層8は焼結助剤が含有されていないセラミックシート(第1のセラミックシート)で形成されると共に、第2の誘電セラミック層9は焼結助剤が含有されたセラミックシート(第2のセラミックシート)で形成され、2個の第1の誘電セラミック層8と1個の第2の誘電セラミック層9で1個の誘電体層を構成している。
【0023】
さらに、内部導体7a〜7dは、積層方向に並設状態となるように前記第1の誘電セラミック層8a〜8dの界面に沿って形成されると共に、内部導体7a、7cは外部導体2aに電気的に接続され、内部導体7b、7dは外部導体2bに電気的に接続され、内部導体7a、7cと内部導体7b、7dとの間で静電容量を形成している。
【0024】
次に、上記積層セラミックコンデンサの製造方法を説明する。
【0025】
図2は本発明に係る積層セラミックコンデンサの製造方法の一実施の形態(第1の実施の形態)を示す製造工程図である。
【0026】
まず、導電膜形成工程11では、例えばポリエチレンフタレート(PET)からなるフィルムの表面にシリコン等を塗布して離型処理を施し、次いで、図3(a)に示すように、前記フィルム21の表面に薄膜形成法により金属箔状の導電膜22を形成する。
【0027】
ここで、薄膜形成法としては金属箔状の導電膜22を形成することができるのであれば特に限定されることはなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、電解めっき法、還元剤を使用した自己触媒型の無電解めっき法等、任意の薄膜形成法を使用することができる。
【0028】
また、導電膜材料としては、内部導体としての機能を有するものであれば特に限定されるものではなく、Pt、Pd−Ag、Ni、Cu等を使用することができるが、経済的観点を考慮するとNiやCu等の卑金属材料を使用するのが望ましい。
【0029】
次に、周知のフォトリソグラフィ技術を使用して導電膜22を所定パターンに形成する。
【0030】
すなわち、まず、図3(b)に示すように、導電膜22の表面にフォトレジスト23を塗布してプリベークし、この後、不図示のフォトマスクを介して上方から紫外光を照射し、フォトレジスト23を感光させて現像、ポストベークし、図3(c)に示すように、フォトマスクパターンをフォトレジスト23に転写する。
【0031】
次いで、図3(d)に示すように、フォトレジスト23で被覆されていない導電膜部分をエッチング除去し、その後、フォトレジスト23を溶剤で除去し、図3(e)に示すように、フィルム21上に所定パターンの導電膜22を形成する。
【0032】
次に、セラミックシート作製工程12aでは、セラミック原料粉末に加工処理を施して焼結助剤を含有していない第1のセラミックシートを作製する。
【0033】
ここで、セラミック原料粉末の主成分としては、BaTiO3に代表される正方晶ペロブスカイト構造(一般式ABO3)の複合酸化物からなる誘電体セラミック粉末を使用することができる。
【0034】
この場合、Aサイト原子とBサイト原子とのモル比A/Bは化学量論的には1.000であるが、例えばモル比A/Bを0.95〜1.05の範囲で変化させるのが好ましく、特に非還元性のセラミック原料粉末を得るためには、モル比A/Bが1.000〜1.035の範囲であるのが好ましい。
【0035】
また、前記誘電体セラミック粉末の結晶軸の軸比c/aは1.007〜1.010であるのが好ましい。これは軸比c/aが高くなるほど、より高い誘電率が得られるためであり、また軸比c/aが1.007未満になると静電容量の温度特性が悪化するおそれがあるからである。
【0036】
そして、前記誘電体セラミック粉末には、必要に応じてDy等の希土類元素やCa、Zr、Mn、Mg等の元素の化合物を添加するのも好ましい。
【0037】
尚、上記各添加物は、有機溶媒中に分散させた誘電体セラミック粉末に添加するため、有機溶媒に可溶なアルコキシド化合物、アセチルアセトネート、或いは金属石鹸の形態で添加するのが好ましい。
【0038】
また、上記添加物を誘電体セラミック粉末に添加した場合は、添加後に蒸発乾燥処理や熱処理を行なって有機溶媒を除去し、これによりセラミック原料粉末が製造される。
【0039】
次に、該セラミック原料粉末にポリビニルブチラール系バインダ及びエタノール等の有機溶媒を加えて、ボールミルにより湿式混合し、第1のセラミックスラリーを作製し、ドクターブレード法によりシート成形し、これにより焼結助剤を含まない第1のセラミックシートを作製する。
【0040】
このように第1のセラミックシートに焼結助剤を含有させないようにしたのは以下の理由による。
【0041】
スパッタリング法や無電解めっき法等の薄膜形成法によって作製された金属箔状の導電膜は、微細な結晶子を有する金属膜で形成されている。そして、後述する焼成工程で、前記微細な結晶子を有する金属膜は結晶化が進行して金属箔へと結晶成長するが、微細な結晶子の状態ではセラミックシートに含有される焼結助剤の液相と反応して容易に異相を生成したり、液相成分中に拡散してしまい、その結果導電膜が拡散消失してしまう。
【0042】
そこで、導電膜と接する第1のセラミックシートに焼結助剤を含有させないこととし、焼結助剤の液相成分と導電膜との反応を抑止している。
【0043】
一方、セラミックシート作製工程12bでは、前記添加物に加え、焼結助剤としてSiO2やSiO2−B2O3系化合物を添加し、その他はセラミックシート作製工程12aと同様の手順で第2のセラミックシートを作製する。
【0044】
このように第2のセラミックシートに焼結助剤を含有させるようにしたのは以下の理由による。
【0045】
第1のセラミックシートは、上述したように焼結助剤を含有していないため、低温で焼結させることは困難である。
【0046】
しかしながら、誘電体層の厚みを薄層にした場合、例えば1.5μm未満に薄くした場合は、第2のセラミックシートに焼結助剤を含有させることにより、該第2のセラミックシート中の焼結助剤が第1のセラミックシートに拡散し、その結果、低温焼結を行うことが可能となる。
【0047】
そこで、導電膜と接しない第2のセラミックシートには焼結助剤を含有させている。
【0048】
尚、セラミックシートに含有されているバインダの種類によっては、添加された焼結助剤と反応して凝集物を形成する等、セラミックスラリーの分散性を低下させるため、セラミックシート中に欠陥が生じ易くなって積層セラミックコンデンサの信頼性を損なうおそれがある。
【0049】
しかしながら、導電膜と接する第1のセラミックシートが焼結助剤を含有していないため、緻密で欠陥の少ないセラミックシートを形成することができることができ、これにより積層セラミックコンデンサの信頼性を確保することができる。
【0050】
次に、積層体作製工程13に進み、誘電体層となるべきセラミック層を内蔵した積層体を作製する。
【0051】
すなわち、積層体作製工程13は転写工程13aとセラミック層形成工程13bに区分され、まず、転写工程13aでは、導電体形成工程11でフィルム21上に形成された導電膜22を、セラミックシート作製工程12で作製された第1のセラミックシート24上に転写する。
【0052】
具体的には、図4(a)に示すように、第1のセラミックシート24と導電膜22とが当接するように第1のセラミックシート24上にフィルム21を配置し、加熱下でフィルム21を矢印A方向に押圧し、その後、フィルム21を剥がすことにより、図4(b)に示すように、第1のセラミックシート24上に導電膜22が転写される。
【0053】
次に、セラミック層形成工程13bでは、導電膜が転写された第1のセラミックシートの導電膜が転写されていない面上に第2のセラミックシートを所定枚数圧着し、次いで、該第2のセラミックシートの表面に第1のセラミックシートを積層し、1個の誘電体層となるべきセラミック層を作製する。
こうして作製されるセラミックシートを適宜所定枚数積層して圧着し、誘電体ブロック5となるべき積層セラミック層を形成し、さらに保護層6a、6bとなる適数枚の第2のセラミックシートで前記積層セラミック層を挟持し、積層体を形成する。
【0054】
次いで、焼成工程14に進み、窒素雰囲気下で所定温度に加熱し、バインダを分解させて該バインダを除去した後、所定の還元性雰囲気及び温度で焼成処理を施し、セラミック焼結体1を作製する。
【0055】
その後、外部導体形成工程15では、Ag等の導電性材料にガラスフリットを含有させた導電性ペーストを使用し、該導電性ペーストをセラミック焼結体1の両端面に塗布した後、焼付処理を行なって外部導体2a、2bを形成する。
【0056】
最後にめっき工程16では、電解めっきを行い、Ni、Cu、Ni−Cu合金等からなる第1のめっき皮膜3a、3b、及びSnやはんだ等のSn合金からなる第2のめっき皮膜4a、4bを外部導体2a、2bの表面に形成し、これにより積層セラミックコンデンサが製造される。
【0057】
このように本第1の実施の形態では、第1のセラミックシートに焼結助剤が含有されていないので、焼結助剤が導電膜と反応することもなく、したがって導電膜の一部が焼失して導体被覆率が低下するのを極力回避することができる。また、第2のセラミックシートには焼結助剤が含有されているので、低温焼結させることが可能であり、高い静電容量や良好な比抵抗を有する薄層・多層化された大容量の積層セラミックコンデンサを容易に製造することができる。
尚、本発明は上記実施の形態に限定されることはく、積層体の作製方法についても、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0058】
図5は第2の実施の形態を示す要部製造工程図であって、本第2の実施の形態では、搬送フィルム上に導電膜を形成した後、第1のセラミックスラリーを使用して前記導電膜上に直接第1のセラミックシートを作製している。
【0059】
すなわち、導電膜形成工程25では、第1の実施の形態と同様、図6に示すように、搬送フィルム28上に導電膜29を形成する。
【0060】
次いで、セラミックシート作製工程26a、26bでは、第1の実施の形態と同様、焼結助剤を含有していない第1のセラミックスラリー及び焼結助剤を含有した第2のセラミックスラリーを作製する。
【0061】
そして、まず、第2のセラミックスラリーを使用し、ドクターブレード法により成形加工を施し、焼結助剤を含有した第2のセラミックシートを作製する。
【0062】
次に、図6に示すように、矢印B方向に稼動する搬送フィルム28上の導電膜29に第1のセラミックスラリー30を載置し、ブレード32で所定膜厚に膜厚調整しながら第1のセラミックスラリー30に成形加工を施し、導電膜29上に直接第1のセラミックシート31を作製する。
【0063】
続く積層体作製工程27では、上述のようにして形成された第1のセラミックシートの表面に前記第2のセラミックシートを圧着し、次いで、該第2のセラミックシートの表面に第1のセラミックシートを圧着する。
【0064】
そして、このようにして形成された積層物を所定個数重ね合わせて積層セラミック層を形成し、さらに保護層6a、6bとなる適数枚の第2のセラミックシートで前記積層セラミック層を挟持し、積層体を作製する。
【0065】
そしてその後は第1の実施の形態と同様、焼成工程14→外部導体形成工程15→めっき工程16を実行し、これにより積層セラミックコンデンサが製造される。
【0066】
このように本第2の実施の形態でも、導電膜と接する第1のセラミックシートには焼結助剤が含有されていないので、焼結助剤が導電膜29と反応することもなく、したがって導電膜の一部が焼失して導体被覆率が低下するのを極力回避することができる。また、第2のセラミックシートには焼結助剤が含有されているので、低温焼結させることが可能であり、高い静電容量や良好な比抵抗を有する薄層・多層化された大容量の積層セラミックコンデンサを製造することができる。
しかも、本第2の実施の形態では、導電膜29上に直接第1のセラミックシート31を作製することにより、第1のセラミックシート31と導電膜29とを接合させているので、第1の実施の形態のような転写工程が不要となり、製造工程の簡略化が可能となる。
【0067】
図7は第3の実施の形態を示す要部製造工程図であって、本第3の実施の形態では、積層処理工程34が、上述したセラミックシート作製工程及び積層体作製工程を包含しており、該積層処理工程34でフィルム上に形成された導電膜上に第1及び第2のセラミックグリーンシートを連続的に積層し、誘電体層となるべきセラミック層を内蔵した積層体を作製している。
【0068】
すなわち、導電膜形成工程33では、第1及び第2の実施の形態と同様、図8に示すように、搬送フィルム35上に導電膜36を形成する。
【0069】
次いで、積層処理工程34では、第1の実施の形態と同様、焼結助剤を含有していない第1のセラミックスラリー及び焼結助剤を含有した第2のセラミックスラリーを作製する。
【0070】
そして、図7の第1のシート成形工程34aでは、図8に示すように、矢印C方向に稼動する搬送フィルム35上の導電膜36に第1のセラミックスラリー37aを載置し、ブレード38で所定膜厚に膜厚調整しながら導電膜36上に第1のセラミックシート41aを形成する。
【0071】
次いで、第2のシート成形工程34bでは、第1のセラミックシート41a上に第2のセラミックスラリー37bを載置し、ブレード39で所定膜厚に膜厚調整しながら前記第1のセラミックシート41a上に第2のセラミックシート41bを形成する。
【0072】
さらに、第3のシート成形工程34cでは、第2のセラミックシート41b上に第1のセラミックスラリー37a′を載置し、ブレード40で所定膜厚に膜厚調整しながら前記第2のセラミックシート41b上に第1のセラミックシート41a′を形成する。
【0073】
こうして作製された導電膜付きセラミックシートを複数枚圧着して積層セラミック層を形成し、さらに保護層6a、6bとなる適数枚の第2のセラミックシートで前記積層セラミック層を挟持し、積層体を形成する。
【0074】
そしてこの後、第1及び第2の実施の形態と同様、焼成工程14→外部導体形成工程15→めっき工程16を実行することにより、積層セラミックコンデンサが製造される。
【0075】
このように本第3の実施の形態でも、導電膜と接する第1のセラミックシートには焼結助剤が含有されていないので、焼結助剤が導電膜33と反応することもなく、したがって導電膜の一部が焼失して導体被覆率が低下するのを極力回避することができる。また、第2のセラミックシートには焼結助剤を含有されているので、低温焼結させることが可能であり、高い静電容量や良好な比抵抗を有する薄層・多層化された大容量の積層セラミックコンデンサを製造することができる。
【0076】
しかも、本第3の実施の形態では、導電膜33上に直接第1及び第2のセラミックシート41a、41b、41a′を連続処理して形成しているので、製造工程のより一層の簡略化が可能となる。
尚、上記実施の形態では、外部導体は、セラミック焼結体を作製した後、外部導体を形成しているが、焼成前の積層体に外部導体となるべき導電性ペーストを塗布し、その後共焼成することによりセラミック焼結体と外部導体とを同時に作製するようにしてもよい。
【0077】
また、上記実施の形態では導電膜をフォトリソグラフィ技術を使用して形成しているが、フィルム上に導電膜を形成し、次いでスクリーン印刷等により所定パターンのレジスト膜を形成し、その後レジスト膜が形成されていない部分の導電膜を硝酸等の酸性溶液で除去した後、溶剤でレジスト膜を除去し、これにより所定パターンの導電膜を形成するようにしてもよい。
【0078】
【実施例】
まず、Ba0.952Ca0.05TiO3の組成を有する誘電体セラミックの原料を調製した後、空気中850℃で熱処理し、その後解砕して誘電体セラミック粉末を作製した。尚、該誘電体セラミック粉末の平均粒径は120nmであった。
【0079】
次に、添加物として、Dy、Mg、Mn、Baを含有した有機溶媒に可溶なアルコキシド化合物を用意し、有機溶媒中に分散させた前記誘電体セラミック粉末に添加し、その後、蒸発乾燥処理を施し、更に、熱処理を施すことにより、有機溶媒を除去し、セラミック原料粉末を作製した。
【0080】
次に、該セラミック原料粉末にポリビニルブチラール系バインダおよびエタノール等の有機溶媒を加えて、ボールミルにより湿式混合し、第1のセラミックスラリーを作製し、ドクターブレード法によりシート成形し、これにより焼結助剤を含まない厚みが0.3μmの矩形の第1のセラミックシートを作製した。
【0081】
また、焼結助剤としてSiO2−B2O3−Li2O−BaO系化合物を用意し、Dy、Mg、Mn、Baを含有したアルコキシド化合物に加え、これら焼結助剤を誘電体セラミック粉末に添加し、他は第1のセラミックシートと同様の作製方法で厚み1μmの第2のセラミックシートを作製した。
【0082】
次に、真空蒸着法により、PETフィルム上に、Cu薄膜を形成し、更に電解めっき法によりCu薄膜上にNi薄膜を形成し、その後、パターン状にレジスト処理を施し、厚み0.25μmの金属箔を作製した。
【0083】
次に、焼結助剤を含有していない第1のセラミックシート上に、金属箔を熱転写し内部導体を形成した。
【0084】
次いで、内部導体が形成された第1のセラミックシート、内部導体の形成されていない第2のセラミックシート、更に内部導体が形成された第1のセラミックシートを内部導体の引出部が互い違いとなるように順次積層し、積層体を作製した。
次に、該積層体を、N2雰囲気中にて350℃の温度に加熱し、バインダを分解させた後、酸素分圧10−9〜10−12MPaのH2−N2−H2Oガスからなる還元性雰囲気中において1050℃で2時間焼成し、セラミック焼結体を得た。
【0085】
次いで、セラミック焼結体の両端面に、B2O3−Li2O−SiO2−BaO系のガラス材を含有したAgを主成分とする導電性ペーストを塗布し、N2雰囲気中において600℃の温度で焼き付け、内部導体と電気的に接続された外部導体を形成し、これにより積層セラミックコンデンサを製造した。
【0086】
このようにして製造された積層セラミックコンデンサの外形寸法は、幅は1.25mm、長さが2.0mm、厚さが0.8mmであった。また、有効誘電体セラミック層の総数は5であり、一層当たりの対向電極面積は1.9×10−6m2であった。
【0087】
また、比較例として、第1のセラミックシートにも第2のセラミックシートと同様の焼結助剤を含有させた積層セラミックコンデンサを作製した。
【0088】
次に、誘電体層及び内部導体の厚み、導体被覆率、静電容量、比抵抗を求めた。
【0089】
ここで、誘電体層及び内部導体の厚みは、各試料の断面を研磨し、倍率1万倍の走査型電子顕微鏡で観察して求めた。
【0090】
導体被覆率は、各試料の内部導体面を誘電体層から剥離し、導体面に穴が形成されている様子を倍率500倍の顕微鏡写真で撮影し、これを画像解析処理することによって定量化した。
【0091】
静電容量は自動ブリッジ式測定器を用いた。
【0092】
また、比抵抗は、絶縁抵抗計を使用し、4Vの直流電圧を2分間印加し、温度25℃での絶縁抵抗を求め、該絶縁抵抗から算出した。
【0093】
表1はその測定結果である。
【0094】
【表1】
この表1から明らかなように比較例は、内部導体(導電膜)と接する第1のセラミックシートにも焼結助剤が含有されているため、内部導体の一部が焼失して導体被覆率が50%に低下し、このため静電容量や比抵抗が低くなることが分った。
【0095】
これに対して実施例では、内部導体(導電膜)と接する第1のセラミックシートが焼結助剤を含有していないため、内部導体の焼失は極力抑制され、導体被覆率も90%と高く、高い静電容量と比抵抗を確保できることが分った。
【0096】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明に係る積層セラミックコンデンサの製造方法は、誘電体セラミック層となるべき複数枚のセラミックグリーンシートを導電膜と導電膜との間に介装した積層セラミックコンデンサの製造方法であって、金属箔状の導電膜を薄膜形成法によりフィルム上に形成する導電膜形成工程と、セラミック原料粉末に加工処理を施して第1及び第2のセラミックグリーンシートを作製するセラミックグリーンシート作製工程と、前記第1のセラミックグリーンシートの一方の面に前記導電膜を接合し、さらに、前記第2のセラミックグリーンシートが前記第1のセラミックグリーンシートの他方の面間で挟持されるように前記第1のセラミックグリーンシート、前記第2のセラミックグリーンシート、及び前記第1のセラミックグリーンシートを順次積層し、積層体を作製する積層体作製工程と、前記積層体を焼成して焼結体を得る焼成工程とを含み、前記導電膜と接する前記第1のセラミックグリーンシートは焼結助剤成分を含有せず、前記導電膜と接しない第2のセラミックグリーンシートはSiO2又はSiO2−B2O3系化合物からなる焼結助剤成分を含有しているので、焼結助剤が導電膜と反応するのを回避することができ、したがって導電膜の一部が焼失するのを極力抑制することができる。また、第2のセラミックシートが焼結助剤を含んでいるので、低温焼結が可能であり、電気的特性を損なうことのない薄層・多層化された積層セラミックコンデンサを製造することができる。
【0097】
また、前記誘電体層の厚みは、1.5μm未満であるので、誘電体層は極薄とすることができ、したがって第2のセラミックシートに含有された焼結助剤が第1のセラミックシート中に拡散してくるため、容易に低温焼結を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法で製造された積層セラミックコンデンサの模式断面図である。
【図2】本発明に係る積層セラミックコンデンサの製造方法の一実施の形態(第1の実施の形態)を示す製造工程図である。
【図3】導電膜の形成手順を示す図である。
【図4】導電膜のセラミックシートへの転写手順を示す図である。
【図5】積層セラミックコンデンサの製造方法の第2の実施の形態を示す要部製造工程図である。
【図6】第2の実施の形態における第1のセラミックシートの形成手順を示す図である。
【図7】積層セラミックコンデンサの製造方法の第3の実施の形態を示す要部製造工程図である。
【図8】積層セラミックシートの形成手順を示す図である。
【符号の説明】
11 導電膜形成工程
12a、12b セラミックシート作製工程
13 積層体作製工程
14 焼成工程
22 導電膜
26a、26b セラミックシート作製工程
27 積層体作製工程
29 導電膜
31 第1のセラミックシート
34 積層処理工程(セラミックシート作製工程、積層体作製工程)
36 導電膜
41a、41a′ 第1のセラミックシート
41b 第2のセラミックシート
【発明の属する技術分野】
本発明は、積層セラミックコンデンサの製造方法に関し、より詳しくは誘電体セラミック層(以下、「誘電体層」という)となるべき複数枚のセラミックグリーンシート(以下、「セラミックシート」という)を導電膜と導電膜との間に介装した積層セラミックコンデンサの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、各種電子機器の分野では、セラミック焼結体に内部導体を内蔵させた積層セラミックコンデンサが多用されている。
【0003】
この種の積層セラミックコンデンサでは、内部導体と内部導体との間に誘電体層となるべきセラミックシートが介装されているが、最近では、小型化・大容量化や低価格化の要請から、誘電体層の厚みを1μm程度まで薄層化したものが開発されている。
【0004】
また、内部導体を形成する導電性材料についても、AgやPd等の貴金属材料に代えて、CuやNi等の比較的安価な卑金属材料を使用した積層セラミックコンデンサが開発され、これにより低価格化が図られている。
【0005】
ところで、積層セラミックコンデンサの大容量化を図るためには、誘電体層の積層数を増加させるのが効果的であると考えられるが、この場合、内部導体が形成されている部分は内部導体が形成されていない部分に比べ、内部導体の膜厚分だけ厚くなり、このため積層体に歪が生じ易くなる。したがって、内部導体の膜厚は、極力薄くする必要がある。
【0006】
しかしながら、通常のスクリーン印刷法で薄膜の内部導体を形成しようとした場合、セラミックシートとの共焼時に所謂「導体切れ」が生じて内部導体が玉化し、このため静電容量の低下を招く。しかも、スクリーン印刷法に供される導電性ペーストは、導電性粉末、有機バインダ及び有機溶媒との混合物であるため、内部導体の焼成前の厚みは、導電性材料のみの厚みに比べて2〜3倍と厚くなる。このようにスクリーン印刷法で内部導体を形成しようとしても、その薄膜化には限界があり、内部導体の厚みに起因して生じる積層体の歪を十分に緩和することはできない。
【0007】
そこで、従来より、真空蒸着法やスパッタリング法等の薄膜形成法により内部導体(導電膜)を形成する方法が提案されている(特許文献1及び2)。
【0008】
特許文献1及び2では、前記薄膜形成法によりフィルム上に金属膜を形成した後、該金属膜をセラミックシートに転写し、これによりセラミックシート上に薄層で緻密な内部導体(導電膜)を形成しており、したがって内部導体が薄層の金属膜のみで形成されているので、内部導体の膜厚に起因する積層体の歪を大幅に緩和することができる。
【0009】
【特許文献1】
特開昭64−42809号公報
【特許文献2】
特開平6−61090号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1及び2のように薄膜形成法により形成された導電膜は、導電性ペーストを使用して形成された内部導体に比べ、膜厚を薄くすることは可能であるが、導電膜の膜厚が極端に薄くなると、導電性ペーストを使用したスクリーン印刷法の場合と同様、導電膜が途切れて玉化が生じる。そして、このような導電膜の玉化を防止する方法としては、セラミックシートに焼結助剤を添加して積層体の焼結温度を低下させるのが効果的であると考えられる。
【0011】
ところで、焼結助剤として、従来より、SiO2やSiO2−B2O3系ガラス成分を含有したものが知られているが、特に1100℃以下の低温でBaTiO3系セラミック材料を焼結させる場合は、SiO2−B2O3−Li2O−BaO系ガラス材が有効であるとされている。
【0012】
しかしながら、単に、前記焼結助剤をセラミックシートに添加して低温焼結させた場合は、誘電体層となるべきセラミックシートと導電膜との界面で、焼結助剤の液相が導電膜と反応し、このため界面に異相を生成したり、誘電体層中に異相が拡散してしまうおそれがあり、その結果、積層セラミックコンデンサの絶縁抵抗の低下を招くという問題点があった。
【0013】
本発明はこのような問題点に鑑みなされたものであって、導電膜に導体切れが生じるのを極力回避し、良好な電気特性を有する薄層・多層化された大容量の積層セラミックコンデンサを製造することのできる積層セラミックコンデンサの製造方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明に係る積層セラミックコンデンサは、誘電体セラミック層となるべき複数枚のセラミックグリーンシートを導電膜と導電膜との間に介装した積層セラミックコンデンサの製造方法であって、金属箔状の導電膜を薄膜形成法によりフィルム上に形成する導電膜形成工程と、セラミック原料粉末に加工処理を施して第1及び第2のセラミックグリーンシートを作製するセラミックグリーンシート作製工程と、前記第1のセラミックグリーンシートの一方の面に前記導電膜を接合し、前記第2のセラミックグリーンシートが前記第1のセラミックグリーンシートの他方の面間で挟持されるように前記第1のセラミックグリーンシート、前記第2のセラミックグリーンシート、及び前記第1のセラミックグリーンシートを順次積層し、積層体を作製する積層体作製工程と、前記積層体を焼成して焼結体を得る焼成工程とを含み、前記導電膜と接する前記第1のセラミックグリーンシートは焼結助剤成分を含有せず、前記導電膜と接しない第2のセラミックグリーンシートは焼結助剤成分を含有することを特徴としている。
【0015】
上記製造方法によれば、導電膜と接する前記第1のセラミックグリーンシートは焼結助剤成分を含有せず、前記導電膜と接しない第2のセラミックグリーンシートは焼結助剤成分を含有するので、焼成処理を行っても焼結助剤の液相成分が導電膜と反応するのを回避することができ、したがって誘電体層と導電膜との界面に異相が生成したり、誘電体層中に異相が拡散することもなくなる。
【0016】
また、本発明の積層セラミックコンデンサの製造方法は、前記誘電体層の厚みは、1.5μm未満であることを特徴としている。
【0017】
上記製造方法によれば、誘電体層の厚みが1.5μm未満と薄いため、焼結助剤を含有した第2のセラミックシートシート中の前記焼結助剤が第1のセラミックシートにも拡散するため、低温焼結が可能となる。
【0018】
また、前記焼結助剤は、SiO2又はSiO2−B2O3系化合物であるのが好ましく、前記薄膜形成法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、電解めっき法、及び無電解めっき法のうちの少なくとも1種であるのが好ましい。
【0019】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳説する。
【0020】
図1は本発明の製造方法により製造された積層セラミックコンデンサの一実施の形態を示す模式断面図であって、該積層セラミックコンデンサは、チタン酸バリウム(BaTiO3)等の誘電体セラミックス材料を主成分としたセラミック焼結体1の両端面にAg等の導電性材料からなる外部導体2a、2bが形成されると共に、該外部導体2a、2bの表面にはNi、Cu、Ni−Cu合金等からなる第1のめっき皮膜3a、3bが形成され、さらに該第1のめっき皮膜3a、3bの表面にはSnやはんだ等のSn合金からなる第2のめっき皮膜4a、4bが形成されている。
【0021】
上記セラミック焼結体1は、複数の誘電体層からなる誘電体ブロック5と、該誘電体ブロック5を保護する一対の保護層6a、6bとで構成されている。
【0022】
また、誘電体ブロック5は、内部導体7(7a〜7d)と接する第1の誘電セラミック層8(8a〜8d)と、内部導体7(7a〜7d)と接していない第2の誘電セラミック層9(9a〜9c)とから形成され、第1の誘電セラミック層8の内部導体が形成されていない面間で前記第2の誘電セラミック層9が挟持されるように第1の誘電セラミック層8d、第2の誘電セラミック層9c、第1の誘電セラミック層8c、第2の誘電セラミック層9b、第1の誘電セラミック層8b、第2の誘電セラミック層9a、第1の誘電セラミック層8aの順で積層されている。そして、第1の誘電セラミック層8は焼結助剤が含有されていないセラミックシート(第1のセラミックシート)で形成されると共に、第2の誘電セラミック層9は焼結助剤が含有されたセラミックシート(第2のセラミックシート)で形成され、2個の第1の誘電セラミック層8と1個の第2の誘電セラミック層9で1個の誘電体層を構成している。
【0023】
さらに、内部導体7a〜7dは、積層方向に並設状態となるように前記第1の誘電セラミック層8a〜8dの界面に沿って形成されると共に、内部導体7a、7cは外部導体2aに電気的に接続され、内部導体7b、7dは外部導体2bに電気的に接続され、内部導体7a、7cと内部導体7b、7dとの間で静電容量を形成している。
【0024】
次に、上記積層セラミックコンデンサの製造方法を説明する。
【0025】
図2は本発明に係る積層セラミックコンデンサの製造方法の一実施の形態(第1の実施の形態)を示す製造工程図である。
【0026】
まず、導電膜形成工程11では、例えばポリエチレンフタレート(PET)からなるフィルムの表面にシリコン等を塗布して離型処理を施し、次いで、図3(a)に示すように、前記フィルム21の表面に薄膜形成法により金属箔状の導電膜22を形成する。
【0027】
ここで、薄膜形成法としては金属箔状の導電膜22を形成することができるのであれば特に限定されることはなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、電解めっき法、還元剤を使用した自己触媒型の無電解めっき法等、任意の薄膜形成法を使用することができる。
【0028】
また、導電膜材料としては、内部導体としての機能を有するものであれば特に限定されるものではなく、Pt、Pd−Ag、Ni、Cu等を使用することができるが、経済的観点を考慮するとNiやCu等の卑金属材料を使用するのが望ましい。
【0029】
次に、周知のフォトリソグラフィ技術を使用して導電膜22を所定パターンに形成する。
【0030】
すなわち、まず、図3(b)に示すように、導電膜22の表面にフォトレジスト23を塗布してプリベークし、この後、不図示のフォトマスクを介して上方から紫外光を照射し、フォトレジスト23を感光させて現像、ポストベークし、図3(c)に示すように、フォトマスクパターンをフォトレジスト23に転写する。
【0031】
次いで、図3(d)に示すように、フォトレジスト23で被覆されていない導電膜部分をエッチング除去し、その後、フォトレジスト23を溶剤で除去し、図3(e)に示すように、フィルム21上に所定パターンの導電膜22を形成する。
【0032】
次に、セラミックシート作製工程12aでは、セラミック原料粉末に加工処理を施して焼結助剤を含有していない第1のセラミックシートを作製する。
【0033】
ここで、セラミック原料粉末の主成分としては、BaTiO3に代表される正方晶ペロブスカイト構造(一般式ABO3)の複合酸化物からなる誘電体セラミック粉末を使用することができる。
【0034】
この場合、Aサイト原子とBサイト原子とのモル比A/Bは化学量論的には1.000であるが、例えばモル比A/Bを0.95〜1.05の範囲で変化させるのが好ましく、特に非還元性のセラミック原料粉末を得るためには、モル比A/Bが1.000〜1.035の範囲であるのが好ましい。
【0035】
また、前記誘電体セラミック粉末の結晶軸の軸比c/aは1.007〜1.010であるのが好ましい。これは軸比c/aが高くなるほど、より高い誘電率が得られるためであり、また軸比c/aが1.007未満になると静電容量の温度特性が悪化するおそれがあるからである。
【0036】
そして、前記誘電体セラミック粉末には、必要に応じてDy等の希土類元素やCa、Zr、Mn、Mg等の元素の化合物を添加するのも好ましい。
【0037】
尚、上記各添加物は、有機溶媒中に分散させた誘電体セラミック粉末に添加するため、有機溶媒に可溶なアルコキシド化合物、アセチルアセトネート、或いは金属石鹸の形態で添加するのが好ましい。
【0038】
また、上記添加物を誘電体セラミック粉末に添加した場合は、添加後に蒸発乾燥処理や熱処理を行なって有機溶媒を除去し、これによりセラミック原料粉末が製造される。
【0039】
次に、該セラミック原料粉末にポリビニルブチラール系バインダ及びエタノール等の有機溶媒を加えて、ボールミルにより湿式混合し、第1のセラミックスラリーを作製し、ドクターブレード法によりシート成形し、これにより焼結助剤を含まない第1のセラミックシートを作製する。
【0040】
このように第1のセラミックシートに焼結助剤を含有させないようにしたのは以下の理由による。
【0041】
スパッタリング法や無電解めっき法等の薄膜形成法によって作製された金属箔状の導電膜は、微細な結晶子を有する金属膜で形成されている。そして、後述する焼成工程で、前記微細な結晶子を有する金属膜は結晶化が進行して金属箔へと結晶成長するが、微細な結晶子の状態ではセラミックシートに含有される焼結助剤の液相と反応して容易に異相を生成したり、液相成分中に拡散してしまい、その結果導電膜が拡散消失してしまう。
【0042】
そこで、導電膜と接する第1のセラミックシートに焼結助剤を含有させないこととし、焼結助剤の液相成分と導電膜との反応を抑止している。
【0043】
一方、セラミックシート作製工程12bでは、前記添加物に加え、焼結助剤としてSiO2やSiO2−B2O3系化合物を添加し、その他はセラミックシート作製工程12aと同様の手順で第2のセラミックシートを作製する。
【0044】
このように第2のセラミックシートに焼結助剤を含有させるようにしたのは以下の理由による。
【0045】
第1のセラミックシートは、上述したように焼結助剤を含有していないため、低温で焼結させることは困難である。
【0046】
しかしながら、誘電体層の厚みを薄層にした場合、例えば1.5μm未満に薄くした場合は、第2のセラミックシートに焼結助剤を含有させることにより、該第2のセラミックシート中の焼結助剤が第1のセラミックシートに拡散し、その結果、低温焼結を行うことが可能となる。
【0047】
そこで、導電膜と接しない第2のセラミックシートには焼結助剤を含有させている。
【0048】
尚、セラミックシートに含有されているバインダの種類によっては、添加された焼結助剤と反応して凝集物を形成する等、セラミックスラリーの分散性を低下させるため、セラミックシート中に欠陥が生じ易くなって積層セラミックコンデンサの信頼性を損なうおそれがある。
【0049】
しかしながら、導電膜と接する第1のセラミックシートが焼結助剤を含有していないため、緻密で欠陥の少ないセラミックシートを形成することができることができ、これにより積層セラミックコンデンサの信頼性を確保することができる。
【0050】
次に、積層体作製工程13に進み、誘電体層となるべきセラミック層を内蔵した積層体を作製する。
【0051】
すなわち、積層体作製工程13は転写工程13aとセラミック層形成工程13bに区分され、まず、転写工程13aでは、導電体形成工程11でフィルム21上に形成された導電膜22を、セラミックシート作製工程12で作製された第1のセラミックシート24上に転写する。
【0052】
具体的には、図4(a)に示すように、第1のセラミックシート24と導電膜22とが当接するように第1のセラミックシート24上にフィルム21を配置し、加熱下でフィルム21を矢印A方向に押圧し、その後、フィルム21を剥がすことにより、図4(b)に示すように、第1のセラミックシート24上に導電膜22が転写される。
【0053】
次に、セラミック層形成工程13bでは、導電膜が転写された第1のセラミックシートの導電膜が転写されていない面上に第2のセラミックシートを所定枚数圧着し、次いで、該第2のセラミックシートの表面に第1のセラミックシートを積層し、1個の誘電体層となるべきセラミック層を作製する。
こうして作製されるセラミックシートを適宜所定枚数積層して圧着し、誘電体ブロック5となるべき積層セラミック層を形成し、さらに保護層6a、6bとなる適数枚の第2のセラミックシートで前記積層セラミック層を挟持し、積層体を形成する。
【0054】
次いで、焼成工程14に進み、窒素雰囲気下で所定温度に加熱し、バインダを分解させて該バインダを除去した後、所定の還元性雰囲気及び温度で焼成処理を施し、セラミック焼結体1を作製する。
【0055】
その後、外部導体形成工程15では、Ag等の導電性材料にガラスフリットを含有させた導電性ペーストを使用し、該導電性ペーストをセラミック焼結体1の両端面に塗布した後、焼付処理を行なって外部導体2a、2bを形成する。
【0056】
最後にめっき工程16では、電解めっきを行い、Ni、Cu、Ni−Cu合金等からなる第1のめっき皮膜3a、3b、及びSnやはんだ等のSn合金からなる第2のめっき皮膜4a、4bを外部導体2a、2bの表面に形成し、これにより積層セラミックコンデンサが製造される。
【0057】
このように本第1の実施の形態では、第1のセラミックシートに焼結助剤が含有されていないので、焼結助剤が導電膜と反応することもなく、したがって導電膜の一部が焼失して導体被覆率が低下するのを極力回避することができる。また、第2のセラミックシートには焼結助剤が含有されているので、低温焼結させることが可能であり、高い静電容量や良好な比抵抗を有する薄層・多層化された大容量の積層セラミックコンデンサを容易に製造することができる。
尚、本発明は上記実施の形態に限定されることはく、積層体の作製方法についても、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0058】
図5は第2の実施の形態を示す要部製造工程図であって、本第2の実施の形態では、搬送フィルム上に導電膜を形成した後、第1のセラミックスラリーを使用して前記導電膜上に直接第1のセラミックシートを作製している。
【0059】
すなわち、導電膜形成工程25では、第1の実施の形態と同様、図6に示すように、搬送フィルム28上に導電膜29を形成する。
【0060】
次いで、セラミックシート作製工程26a、26bでは、第1の実施の形態と同様、焼結助剤を含有していない第1のセラミックスラリー及び焼結助剤を含有した第2のセラミックスラリーを作製する。
【0061】
そして、まず、第2のセラミックスラリーを使用し、ドクターブレード法により成形加工を施し、焼結助剤を含有した第2のセラミックシートを作製する。
【0062】
次に、図6に示すように、矢印B方向に稼動する搬送フィルム28上の導電膜29に第1のセラミックスラリー30を載置し、ブレード32で所定膜厚に膜厚調整しながら第1のセラミックスラリー30に成形加工を施し、導電膜29上に直接第1のセラミックシート31を作製する。
【0063】
続く積層体作製工程27では、上述のようにして形成された第1のセラミックシートの表面に前記第2のセラミックシートを圧着し、次いで、該第2のセラミックシートの表面に第1のセラミックシートを圧着する。
【0064】
そして、このようにして形成された積層物を所定個数重ね合わせて積層セラミック層を形成し、さらに保護層6a、6bとなる適数枚の第2のセラミックシートで前記積層セラミック層を挟持し、積層体を作製する。
【0065】
そしてその後は第1の実施の形態と同様、焼成工程14→外部導体形成工程15→めっき工程16を実行し、これにより積層セラミックコンデンサが製造される。
【0066】
このように本第2の実施の形態でも、導電膜と接する第1のセラミックシートには焼結助剤が含有されていないので、焼結助剤が導電膜29と反応することもなく、したがって導電膜の一部が焼失して導体被覆率が低下するのを極力回避することができる。また、第2のセラミックシートには焼結助剤が含有されているので、低温焼結させることが可能であり、高い静電容量や良好な比抵抗を有する薄層・多層化された大容量の積層セラミックコンデンサを製造することができる。
しかも、本第2の実施の形態では、導電膜29上に直接第1のセラミックシート31を作製することにより、第1のセラミックシート31と導電膜29とを接合させているので、第1の実施の形態のような転写工程が不要となり、製造工程の簡略化が可能となる。
【0067】
図7は第3の実施の形態を示す要部製造工程図であって、本第3の実施の形態では、積層処理工程34が、上述したセラミックシート作製工程及び積層体作製工程を包含しており、該積層処理工程34でフィルム上に形成された導電膜上に第1及び第2のセラミックグリーンシートを連続的に積層し、誘電体層となるべきセラミック層を内蔵した積層体を作製している。
【0068】
すなわち、導電膜形成工程33では、第1及び第2の実施の形態と同様、図8に示すように、搬送フィルム35上に導電膜36を形成する。
【0069】
次いで、積層処理工程34では、第1の実施の形態と同様、焼結助剤を含有していない第1のセラミックスラリー及び焼結助剤を含有した第2のセラミックスラリーを作製する。
【0070】
そして、図7の第1のシート成形工程34aでは、図8に示すように、矢印C方向に稼動する搬送フィルム35上の導電膜36に第1のセラミックスラリー37aを載置し、ブレード38で所定膜厚に膜厚調整しながら導電膜36上に第1のセラミックシート41aを形成する。
【0071】
次いで、第2のシート成形工程34bでは、第1のセラミックシート41a上に第2のセラミックスラリー37bを載置し、ブレード39で所定膜厚に膜厚調整しながら前記第1のセラミックシート41a上に第2のセラミックシート41bを形成する。
【0072】
さらに、第3のシート成形工程34cでは、第2のセラミックシート41b上に第1のセラミックスラリー37a′を載置し、ブレード40で所定膜厚に膜厚調整しながら前記第2のセラミックシート41b上に第1のセラミックシート41a′を形成する。
【0073】
こうして作製された導電膜付きセラミックシートを複数枚圧着して積層セラミック層を形成し、さらに保護層6a、6bとなる適数枚の第2のセラミックシートで前記積層セラミック層を挟持し、積層体を形成する。
【0074】
そしてこの後、第1及び第2の実施の形態と同様、焼成工程14→外部導体形成工程15→めっき工程16を実行することにより、積層セラミックコンデンサが製造される。
【0075】
このように本第3の実施の形態でも、導電膜と接する第1のセラミックシートには焼結助剤が含有されていないので、焼結助剤が導電膜33と反応することもなく、したがって導電膜の一部が焼失して導体被覆率が低下するのを極力回避することができる。また、第2のセラミックシートには焼結助剤を含有されているので、低温焼結させることが可能であり、高い静電容量や良好な比抵抗を有する薄層・多層化された大容量の積層セラミックコンデンサを製造することができる。
【0076】
しかも、本第3の実施の形態では、導電膜33上に直接第1及び第2のセラミックシート41a、41b、41a′を連続処理して形成しているので、製造工程のより一層の簡略化が可能となる。
尚、上記実施の形態では、外部導体は、セラミック焼結体を作製した後、外部導体を形成しているが、焼成前の積層体に外部導体となるべき導電性ペーストを塗布し、その後共焼成することによりセラミック焼結体と外部導体とを同時に作製するようにしてもよい。
【0077】
また、上記実施の形態では導電膜をフォトリソグラフィ技術を使用して形成しているが、フィルム上に導電膜を形成し、次いでスクリーン印刷等により所定パターンのレジスト膜を形成し、その後レジスト膜が形成されていない部分の導電膜を硝酸等の酸性溶液で除去した後、溶剤でレジスト膜を除去し、これにより所定パターンの導電膜を形成するようにしてもよい。
【0078】
【実施例】
まず、Ba0.952Ca0.05TiO3の組成を有する誘電体セラミックの原料を調製した後、空気中850℃で熱処理し、その後解砕して誘電体セラミック粉末を作製した。尚、該誘電体セラミック粉末の平均粒径は120nmであった。
【0079】
次に、添加物として、Dy、Mg、Mn、Baを含有した有機溶媒に可溶なアルコキシド化合物を用意し、有機溶媒中に分散させた前記誘電体セラミック粉末に添加し、その後、蒸発乾燥処理を施し、更に、熱処理を施すことにより、有機溶媒を除去し、セラミック原料粉末を作製した。
【0080】
次に、該セラミック原料粉末にポリビニルブチラール系バインダおよびエタノール等の有機溶媒を加えて、ボールミルにより湿式混合し、第1のセラミックスラリーを作製し、ドクターブレード法によりシート成形し、これにより焼結助剤を含まない厚みが0.3μmの矩形の第1のセラミックシートを作製した。
【0081】
また、焼結助剤としてSiO2−B2O3−Li2O−BaO系化合物を用意し、Dy、Mg、Mn、Baを含有したアルコキシド化合物に加え、これら焼結助剤を誘電体セラミック粉末に添加し、他は第1のセラミックシートと同様の作製方法で厚み1μmの第2のセラミックシートを作製した。
【0082】
次に、真空蒸着法により、PETフィルム上に、Cu薄膜を形成し、更に電解めっき法によりCu薄膜上にNi薄膜を形成し、その後、パターン状にレジスト処理を施し、厚み0.25μmの金属箔を作製した。
【0083】
次に、焼結助剤を含有していない第1のセラミックシート上に、金属箔を熱転写し内部導体を形成した。
【0084】
次いで、内部導体が形成された第1のセラミックシート、内部導体の形成されていない第2のセラミックシート、更に内部導体が形成された第1のセラミックシートを内部導体の引出部が互い違いとなるように順次積層し、積層体を作製した。
次に、該積層体を、N2雰囲気中にて350℃の温度に加熱し、バインダを分解させた後、酸素分圧10−9〜10−12MPaのH2−N2−H2Oガスからなる還元性雰囲気中において1050℃で2時間焼成し、セラミック焼結体を得た。
【0085】
次いで、セラミック焼結体の両端面に、B2O3−Li2O−SiO2−BaO系のガラス材を含有したAgを主成分とする導電性ペーストを塗布し、N2雰囲気中において600℃の温度で焼き付け、内部導体と電気的に接続された外部導体を形成し、これにより積層セラミックコンデンサを製造した。
【0086】
このようにして製造された積層セラミックコンデンサの外形寸法は、幅は1.25mm、長さが2.0mm、厚さが0.8mmであった。また、有効誘電体セラミック層の総数は5であり、一層当たりの対向電極面積は1.9×10−6m2であった。
【0087】
また、比較例として、第1のセラミックシートにも第2のセラミックシートと同様の焼結助剤を含有させた積層セラミックコンデンサを作製した。
【0088】
次に、誘電体層及び内部導体の厚み、導体被覆率、静電容量、比抵抗を求めた。
【0089】
ここで、誘電体層及び内部導体の厚みは、各試料の断面を研磨し、倍率1万倍の走査型電子顕微鏡で観察して求めた。
【0090】
導体被覆率は、各試料の内部導体面を誘電体層から剥離し、導体面に穴が形成されている様子を倍率500倍の顕微鏡写真で撮影し、これを画像解析処理することによって定量化した。
【0091】
静電容量は自動ブリッジ式測定器を用いた。
【0092】
また、比抵抗は、絶縁抵抗計を使用し、4Vの直流電圧を2分間印加し、温度25℃での絶縁抵抗を求め、該絶縁抵抗から算出した。
【0093】
表1はその測定結果である。
【0094】
【表1】
この表1から明らかなように比較例は、内部導体(導電膜)と接する第1のセラミックシートにも焼結助剤が含有されているため、内部導体の一部が焼失して導体被覆率が50%に低下し、このため静電容量や比抵抗が低くなることが分った。
【0095】
これに対して実施例では、内部導体(導電膜)と接する第1のセラミックシートが焼結助剤を含有していないため、内部導体の焼失は極力抑制され、導体被覆率も90%と高く、高い静電容量と比抵抗を確保できることが分った。
【0096】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明に係る積層セラミックコンデンサの製造方法は、誘電体セラミック層となるべき複数枚のセラミックグリーンシートを導電膜と導電膜との間に介装した積層セラミックコンデンサの製造方法であって、金属箔状の導電膜を薄膜形成法によりフィルム上に形成する導電膜形成工程と、セラミック原料粉末に加工処理を施して第1及び第2のセラミックグリーンシートを作製するセラミックグリーンシート作製工程と、前記第1のセラミックグリーンシートの一方の面に前記導電膜を接合し、さらに、前記第2のセラミックグリーンシートが前記第1のセラミックグリーンシートの他方の面間で挟持されるように前記第1のセラミックグリーンシート、前記第2のセラミックグリーンシート、及び前記第1のセラミックグリーンシートを順次積層し、積層体を作製する積層体作製工程と、前記積層体を焼成して焼結体を得る焼成工程とを含み、前記導電膜と接する前記第1のセラミックグリーンシートは焼結助剤成分を含有せず、前記導電膜と接しない第2のセラミックグリーンシートはSiO2又はSiO2−B2O3系化合物からなる焼結助剤成分を含有しているので、焼結助剤が導電膜と反応するのを回避することができ、したがって導電膜の一部が焼失するのを極力抑制することができる。また、第2のセラミックシートが焼結助剤を含んでいるので、低温焼結が可能であり、電気的特性を損なうことのない薄層・多層化された積層セラミックコンデンサを製造することができる。
【0097】
また、前記誘電体層の厚みは、1.5μm未満であるので、誘電体層は極薄とすることができ、したがって第2のセラミックシートに含有された焼結助剤が第1のセラミックシート中に拡散してくるため、容易に低温焼結を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法で製造された積層セラミックコンデンサの模式断面図である。
【図2】本発明に係る積層セラミックコンデンサの製造方法の一実施の形態(第1の実施の形態)を示す製造工程図である。
【図3】導電膜の形成手順を示す図である。
【図4】導電膜のセラミックシートへの転写手順を示す図である。
【図5】積層セラミックコンデンサの製造方法の第2の実施の形態を示す要部製造工程図である。
【図6】第2の実施の形態における第1のセラミックシートの形成手順を示す図である。
【図7】積層セラミックコンデンサの製造方法の第3の実施の形態を示す要部製造工程図である。
【図8】積層セラミックシートの形成手順を示す図である。
【符号の説明】
11 導電膜形成工程
12a、12b セラミックシート作製工程
13 積層体作製工程
14 焼成工程
22 導電膜
26a、26b セラミックシート作製工程
27 積層体作製工程
29 導電膜
31 第1のセラミックシート
34 積層処理工程(セラミックシート作製工程、積層体作製工程)
36 導電膜
41a、41a′ 第1のセラミックシート
41b 第2のセラミックシート
Claims (4)
- 誘電体セラミック層となるべき複数枚のセラミックグリーンシートを導電膜と導電膜との間に介装した積層セラミックコンデンサの製造方法であって、
金属箔状の導電膜を薄膜形成法によりフィルム上に形成する導電膜形成工程と、
セラミック原料粉末に加工処理を施して第1及び第2のセラミックグリーンシートを作製するセラミックグリーンシート作製工程と、
前記第1のセラミックグリーンシートの一方の面に前記導電膜を接合し、前記第2のセラミックグリーンシートが前記第1のセラミックグリーンシートの他方の面間で挟持されるように前記第1のセラミックグリーンシート、前記第2のセラミックグリーンシート、及び前記第1のセラミックグリーンシートを順次積層し、積層体を作製する積層体作製工程と、
前記積層体を焼成して焼結体を得る焼成工程とを含み、
前記導電膜と接する前記第1のセラミックグリーンシートは焼結助剤成分を含有せず、前記導電膜と接しない第2のセラミックグリーンシートは焼結助剤成分を含有することを特徴とする積層セラミックコンデンサの製造方法。 - 前記誘電体層の厚みは、1.5μm未満であることを特徴とする請求項1記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
- 前記焼結助剤は、SiO2又はSiO2−B2O3系化合物であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
- 前記薄膜形成法は、真空蒸着法、スパッタリング法、電解めっき法、及び無電解めっき法のうちの少なくとも1種であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
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