JP2012151294A - 積層電子部品 - Google Patents

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Abstract

【課題】機械的強度が向上すると共に、信頼性の向上を図ることができる積層電子部品を提供すること。
【解決手段】内部電極層2と誘電体層3とが交互に積層された積層体を有する積層電子部品である。内部電極層3は不連続部分3aを有し、誘電体層2と内部電極層3との界面には、MgおよびCrを主成分として含む針状偏析物2a,2a1,2a2が存在し、針状偏析物2a,2a1,2a2が、内部電極層3に沿って不連続部分3aを塞ぐように配置してある。
【選択図】図2

Description

本発明は、電極層と誘電体層が交互に積層された積層セラミックコンデンサなどの積層電子部品に関する。
電子部品としての積層セラミックコンデンサは、小型、大容量、高信頼性の電子部品として様々な用途に利用されている。従って、積層セラミックコンデンサが使用される温度環境も多岐にわたっている。例えば、自動車のエンジンルーム内に搭載するエンジン電子制御ユニット(ECU)、クランク角センサ、アンチロックブレーキシステム(ABS)などの各種電子装置が置かれる温度環境は、−20℃程度から+130℃程度の広範囲にわたり、各種電子部品に設置される電子部品も広範な温度環境に曝されることとなる。
これらの電子装置に用いられるコンデンサ等の電子部品は、静電容量の温度依存性が、広い範囲において平坦である等の電気的特性に加えて、低温から高温までの繰り返し熱衝撃に耐えうる機械的強度が求められる。
セラミックコンデンサ等の積層電子部品の機械的強度を向上させる従来技術としては、例えば特許文献1に記載されるものが挙げられる。特許文献1に代表されるような従来技術は、セラミックコンデンサの誘電体層内に針状の2次相を形成したものであり、セラミックグレイン間の境界相の強度向上に寄与するものである。
また、内部電極層に誘電体の粗大粒子を形成する従来技術が、例えば特許文献2に記載されている。このような従来技術では、粗大粒子が層間の剥離強度をある程度向上させる。しかしながら粗大粒子の形状が、球もしくは正多面体に近い等方体形状であるため誘電体層との接触面積が少ない。したがって、粒の大きさの割には誘電体層間の接続力が弱く、剥離強度が不十分であった。
さらに、特許文献3では、内部電極層の不連続部分を貫通する針状偏析物(BaおよびTiを主成分とする)を形成することにより、静電容量を損なうことなく、機械的強度を向上させることが提案されている。この特許文献3に記載の電子部品においては、機械的強度が向上することが確認されたが、さらに静電容量の向上と信頼性の向上が望まれている。
特開平8−22929号公報 特開2003−77761号公報 特開2008−258190号公報
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、機械的強度が向上すると共に、信頼性の向上を図ることができる積層電子部品を提供することである。
上記目的を達成するために、本発明に係る積層電子部品は、
内部電極層と誘電体層とが交互に積層された積層体を有する積層電子部品であって、
前記内部電極層は不連続部分を有し、
前記誘電体層と前記内部電極層との界面には、MgおよびCrを主成分として含む針状偏析物が存在し、
前記針状偏析物が、前記内部電極層に沿って前記不連続部分を塞ぐように配置してあることを特徴とする。
本発明の積層電子部品は、不連続部分を持つ内部電極を有し、この不連続部分を塞ぐように、内部電極層に沿って配置してある針状偏析物が存在する。針状偏析物は、MgおよびCrを主成分として含み、不連続部分を塞ぐように、内部電極層に沿って配置してある。このため、機械的強度の向上および進行性クラックの抑制を図れると共に、静電容量の向上および信頼性の向上を図ることが可能である。
本発明において、機械的強度の向上および進行性クラックの抑制を図れるのみでなく、静電容量の向上および信頼性の向上を図ることが可能な理由は、たとえば次のように考えられる。CrはSiやMnと比べ硬度が高いため、進行性クラックを抑制する効果が高いと考えられる。また、SiやMnと比べ、MgやCrの方が伝導率が高く、容量取得率を上げる効果が高いため、偏析の成分は、Mg−Crであることで他の成分の偏析に比べ優れている。
好ましくは、前記誘電体層が、一般式ABOで表され、ペロブスカイト型結晶構造を有する主成分と、MgおよびCrを少なくとも含む副成分とを有する誘電体磁器組成物で構成してある。また、好ましくは、前記主成分100モルに対して、酸化物換算で、Mgを0.5〜4モル、さらに好ましくは1.0〜1.9モル含み、Crを好ましくは0.1〜0.5モル、さらに好ましくは0.1〜0.3モル含み、MgとCrとのモル数の比率(Mg/Cr)が、好ましくは2.5〜20、さらに好ましくは5〜19である。Mg,CrおよびMg/Crの比率を、このような範囲とすることにより、より確実に、Mg−Crを主成分とする針状偏析物を形成することが可能となる。
好ましくは、前記内部電極層に垂直な所定面積の断面における前記不連続部分の長さの合計(Lt)に対して、前記針状偏析物で塞がれている前記不連続部分の長さの合計(mt)の割合(mt/Lt)が、40%以上である。mt/Ltを大きくすることで、積層電子部品の静電容量の向上を図りつつ機械的強度を向上させることができる。
好ましくは、前記不連続部分を塞ぐように配置してある前記針状偏析物のうち、前記不連続部分を貫通せずに前記不連続部分を塞ぐように、前記誘電体層と前記内部電極層との界面で、前記内部電極層に沿って配置してある前記針状偏析物の割合が、30%以上である。
不連続部分を貫通して不連続部分を塞ぐ偏析物が多く存在する場合に比べ、不連続部分を貫通せずに不連続部分を塞ぐ偏析物が多く存在する場合には、機械的強度(剥離強度)については同等以上であり、しかも信頼性の観点でも優れていることが本発明者等により確認できた。初期不良の発生は、進行性クラックの発生が原因のひとつとして考えられる。絶縁体である誘電体よりも、金属である偏析の方が伝導率が高いため、不連続部分を貫通して不連続部分を塞ぎ誘電体層間をブリッジする針状偏析物の形態よりも、ブリッジしない形態で不連続部分を埋める(不連続部分を貫通せずに不連続部分を塞ぐ)針状偏析物の方が、絶縁層間の距離を保ちながら強度を増すことができるためと考えられる。
図1は本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの断面図である。 図2は図1に示す誘電体層の要部拡大断面図である。 図3は図2に示す針状偏析が不連続部分を塞ぐ閉塞割合を求める模式図である。 図4は剥離強度試験の模式図である。
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
<積層セラミックコンデンサ1>
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサ1は、誘電体層2と、内部電極層3と、が交互に積層された構成のコンデンサ素子本体10を有する。この素子本体10の両端部には、素子本体10の内部で交互に配置された内部電極層3と各々導通する一対の外部電極4が形成してある。素子本体10の形状に特に制限はないが、通常、直方体状とされる。また、その寸法にも特に制限はなく、用途に応じて適当な寸法とすればよい。
<誘電体層2>
誘電体層2は、誘電体磁器組成物から構成されている。該誘電体磁器組成物は、主成分として、一般式ABO(Aは、Ba、CaおよびSrからなる群から選ばれる少なくとも1つであり、Bは、Ti、ZrおよびHfからなる群から選ばれる少なくとも1つである)で表され、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物から成る主成分を含有する。さらに、副成分として、Mgの酸化物と、Crの酸化物と、必要に応じて、R元素の酸化物と、Siを含む酸化物と、を含有する。なお、酸素(O)量は、上記式の化学量論組成から若干偏倚してもよい。
主成分を構成する化合物は、本実施形態では、組成式(Ba1−x−y CaSr)TiOで表される。すなわち、Bサイト原子はTiで構成される。
本実施形態では、Bサイト原子はTiのみであるが、不純物量程度であれば、Ti以外の元素(たとえばZrやHf)がBサイト原子に含まれていてもよい。この場合、Bサイト原子100原子%に対し、Ti以外の原子の含有量が0.3原子%以下であれば不純物量とみなすことができる。
また、Aサイト原子(Ba、SrおよびCa)と、Bサイト原子(Ti)と、のモル比は、A/B比として表され、本実施形態では、A/B比は、0.98〜1.02であることが好ましい。なお、xおよびyは、いずれも任意の範囲であるが、以下の範囲であることが好ましい。
本実施形態では、上記式中xは、好ましくは0≦x≦0.5である。xはCa原子数を表し、xを上記範囲とすることにより、容量温度係数や比誘電率を制御することができる。本実施形態においては、必ずしもCaを含まなくてもよい。
本実施形態では、上記式中yは、好ましくは0≦y≦0.5である。yはSr原子数を表し、yを上記範囲とすることにより、室温での比誘電率を向上させることができる。本実施形態においては、必ずしもSrを含まなくてもよい。
Mgの酸化物の含有量は、所望の特性に応じて決定すればよいが、ABO100モルに対して、MgO換算で、好ましくは0.5〜4.0モル、さらに好ましくは1.0〜1.9モルである。該酸化物を含有させることで、所望の容量温度特性およびIR寿命が得られると共に、誘電体層2と内部電極層3との界面に、MgおよびCrを主成分とする針状偏析物を形成しやすくなる。
Crの酸化物の含有量は、所望の特性に応じて決定すればよいが、ABO100モルに対して、Cr換算で、好ましくは0.1〜0.5モル、さらに好ましくは0.1〜0.3モルである。該酸化物を含有させることで、長寿命化すると共に、誘電体層2と内部電極層3との界面に、MgおよびCrを主成分とする針状偏析物を形成しやすくなる。
また、誘電体磁器組成物に含まれるMgとCrとのモル数の比率(Mg/Cr)は、好ましくは2.5〜20、さらに好ましくは5〜19である。Mg,CrおよびMg/Crの比率を、このような範囲とすることにより、より確実に、Mg−Crを主成分とする針状偏析物を形成することが可能となる。
Siを含む酸化物の含有量は、所望の特性に応じて決定すればよいが、ABO100モルに対して、SiO換算で、好ましくは0.1〜4.0モルである。該酸化物を含有させることで、主に誘電体磁器組成物の焼結性を向上させる。なお、Siを含む酸化物としては、Siと他の金属元素(たとえば、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属)との複合酸化物等であってもよいが、本実施形態では、SiとBaおよびCaとの複合酸化物である(Ba,Ca)SiOが好ましい。
誘電体磁器組成物に含まれるCrとSiとのモル数の比率(Cr/Si)は、好ましくは0.19〜0.96である。この比率が小さすぎると、Mg−Crを主成分とする針状偏析物を形成することが困難になる傾向にあり、大きすぎると、偏析物の形状・方向性の制御が困難となる傾向にある。
R元素の酸化物の含有量は、所望の特性に応じて決定すればよいが、ABO100モルに対して、R換算で、好ましくは0.2〜2.5モルである。該酸化物を含有させることで、IR寿命を向上させるという利点を有する。R元素は、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuからなる群から選ばれる少なくとも1つであり、Y、Dy、GdおよびHoからなる群から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
本実施形態では、上記の誘電体磁器組成物は、さらに、所望の特性に応じて、その他の副成分を含有してもよい。
たとえば、本実施形態に係る誘電体磁器組成物には、Mnの酸化物が含有されていてもよい。該酸化物の含有量は、ABO100モルに対して、各酸化物換算で、0.02〜0.30モルであることが好ましい。
また、本実施形態に係る誘電体磁器組成物には、V、Ta、Nb、MoおよびWから選ばれる少なくとも1つの元素の酸化物が含有されていてもよい。該酸化物の含有量は、ABO100モルに対して、各酸化物換算で、0.02〜0.30モルであることが好ましい。
誘電体層2の厚みは、特に限定されず、所望の特性や用途等に応じて適宜決定すればよい。また、誘電体層2の積層数は、特に限定されないが、20以上であることが好ましく、より好ましくは50以上、特に好ましくは、100以上である。
誘電体層2は、誘電体粒子(図示省略)と、隣接する複数の誘電体粒子間に形成された粒界(図示省略)と、後述する偏析物2,2a1,2a2,2a3とを含む。本実施形態では、誘電体粒子は、主成分粒子(ABO粒子)単独であっても良く、主成分粒子(ABO粒子)に対し、R元素、MgやSiなどの副成分元素が固溶(拡散)した粒子であってもよい。
誘電体粒子の結晶粒子径は、特に限定されないが、好ましくは、0.1〜0.5μmである。誘電体粒子の結晶粒子径は、たとえば、以下のようにして測定される。すなわち、素子本体10を誘電体層2および内部電極層3の積層方向に切断し、その断面において誘電体粒子の平均面積を測定し、円相当径として直径を算出し1.27倍した値である。そして、結晶粒子径を200個以上の誘電体粒子について測定し、得られた結晶粒子径の累積度数分布から累積が50%となる値を平均結晶粒子径(単位:μm)とすればよい。なお、結晶粒子径は、誘電体層2の厚さなどに応じて決定すればよい。
<内部電極層3と針状偏析物>
内部電極層3に含有される導電材は特に限定されないが、本実施形態では、NiまたはNi合金が好ましい。Ni合金としては、Mn,Cr,CoおよびAlから選択される1種以上の元素とNiとの合金が好ましく、合金中のNi含有量は95重量%以上であることが好ましい。なお、NiまたはNi合金中には、P等の各種微量成分が0.1重量%程度以下含まれていてもよい。内部電極層3の厚さは用途等に応じて適宜決定すればよい。
図2は、図1に示す積層セラミックコンデンサ1の断面における中央部分S1、内部電極層3の重なり初め部分S2、または内部電極層3の引出部分S3における断面の拡大図である。図2に示すように、内部電極層3を拡大すると、内部電極が形成されるべき部分に、実際には内部電極が形成されていない部分(不連続部3a)が存在する。この不連続部3aは、焼成時において、導電材粒子(主にNi粒子)が粒成長により球状化した結果、隣接していた導電材粒子との間隔が開き、導電材が存在しなくなった領域である。
図2に示す断面においては、この不連続部3aにより、内部電極層3は不連続であるように見えるが、不連続部3aは内部電極層3の主面に点在している。したがって、図2に示す断面では内部電極層3が不連続となっていても、他の断面においては連続しており、内部電極層3の導通は確保されている。不連続部3aは、理想長さ(たとえば焼成前の内部電極層3の長さ)に対して、通常3〜35%の割合で内部電極層3に形成される。
本実施形態では、誘電体層2と内部電極層3との界面で、MgおよびCrを主成分として含む針状偏析物2a,2a1,2a2が存在する。この針状偏析物2a,2a1,2a2は、誘電体層2と内部電極層3との界面で、内部電極層3に沿って不連続部3aを塞ぐように配置してある。本実施形態では、誘電体層2と内部電極層3との界面以外で、内部電極層3に接触しないように配置してある針状偏析物2a3が存在しても良いが、その数(n3)は、誘電体層2と内部電極層3との界面で不連続部分3aを塞ぐように位置に存在する針状偏析物2a,2a1,2a2の数(n1)に比較して少ないことが好ましい。所定の視野面積における全ての針状偏析物の数(n0)に対して、不連続部3aを塞ぐように界面に存在する針状偏析物2a,2a1,2a2の数(n1)の比率(n1/n0)は、好ましくは0.3以上、さらに好ましくは0.5以上である。
本実施形態では、誘電体層2と内部電極層3との界面以外に存在する針状偏析物2a3を除き、誘電体層2と内部電極層3との界面に存在する針状偏析物2a,2a1,2a2が、内部電極層3の不連続部分3aを塞ぐ閉塞割合は、以下のようにして定義される。
たとえば図3に示すように、内部電極層3に垂直な所定の視野面積の断面写真において、まず、内部電極層3の不連続部分3aの長さL1,L2,L3,L4,L5,L6…の合計(Lt)を求める。次に、同じ視野面積の断面写真において、針状偏析物2a,2a1,2a2で塞がれている不連続部分3aの長さm1,m2,m3,m4…の合計(mt)を求める。その際に、不連続部分3aを完全に塞いでいる針状偏析物2aのみでなく、不連続部分3aの一部のみを塞いでいる針状偏析物2a1と、不連続部分3aを貫通しており隣接する誘電体層2を跨いでいる針状偏析物2a2とに関しても、塞いでいる不連続部分3aの長さm3,m4をカウントする。
そして、これらの不連続部分3aの長さ合計(Lt)に対して、塞がれている不連続部分3aの長さの合計(mt)の割合(mt/Lt)を求め、それを閉塞割合として定義する。本実施形態では、その閉塞割合(mt/Lt)は、40%以上、さらに好ましくは47%以上、特に好ましくは67%以上である。閉塞割合の上限は、100%である。mt/Ltを大きくすることで、積層セラミックコンデンサ1の静電容量の向上を図りつつ機械的強度を向上させることができる。mt/Ltは、たとえば素子本体10を焼成する際の焼成条件、焼成後のアニール温度、副成分としてのMg、Cr、Siの添加量などを変化させることで制御できる。
なお、所定の視野面積とは、たとえば、倍率7000倍の倍率で複数視野分測定した場合の平均値とすることが好ましい。また、倍率についても、特に制限されず適宜設定すればよいが、1視野の範囲に、少なくとも一対の内部電極層3が含まれるような倍率が好ましい。このような倍率とすることで、内部電極層3に接する形態で存在する偏析物2aの割合を含めて観察できるからである。
本実施形態では、特定の視野面積において、観察される針状偏析物2a,2a1〜2a3の合計の面積割合は、誘電体層2の面積100%に対し、好ましくは0.05〜3.0%、より好ましくは0.5〜3.0%である。偏析物の面積割合を算出する方法としては、特に制限されないが、上記の視野において、誘電体層2および内部電極層3とは異なるコントラストを有する領域を偏析物2aとし、目視あるいは画像処理を行うソフトウェア等によりその面積割合を算出すればよい。
本実施形態では、特定の視野面積において、不連続部分3aを塞ぐように配置してある針状偏析物2,2a,2a1,2a2のうち、不連続部分3aを貫通せずに不連続部分3aを塞ぐように、誘電体層2と内部電極層3との界面で、内部電極層3に沿って配置してある針状偏析物2,2a,2a1の割合が、好ましくは30%以上、さらに好ましくは50%以上、特に好ましくは70%以上である。
不連続部分3aを貫通して不連続部分3aを塞ぐ偏析物2a2が多く存在する場合に比べ、不連続部分3aを貫通せずに不連続部分3aを塞ぐ偏析物2a,2a1が多く存在する場合には、機械的強度(剥離強度)については同等以上であり、しかも信頼性の観点でも優れていることが本発明者等により確認できた。初期不良の発生は、進行性クラックの発生が原因のひとつとして考えられる。絶縁体である誘電体よりも、金属である偏析の方が伝導率が高いため、不連続部分3aを貫通して不連続部分3aを塞ぎ誘電体層2間をブリッジする針状偏析物2a2の形態よりも、ブリッジしない形態で不連続部分3aを埋める(不連続部分を貫通せずに不連続部分を塞ぐ)針状偏析物2a,2a1の方が、誘電体層2の厚みを保ちながら強度を増すことができるためと考えられる。
針状偏析物2a,2a1〜2a3の有無は、たとえば電子顕微鏡(SEM)の2次電子像もしくは反射電子像にて、電極や誘電体と比較して、コントラストの違いから確認できる。異なるコントラストを有するか否かの判断は、目視により行ってもよいし、画像処理を行うソフトウェア等により判断してもよい。また、この針状偏析物2a,2a1〜2a3の主成分が、MgおよびCrであることは、たとえば電子線マイクロアナライザ(EPMA)を用いて確認する事ができる。また、簡易的にはエネルギー分散型検出器(EDS)を用いて確認することもできる。本実施形態の針状偏析物2a,2a1〜2a3は、主成分が、MgおよびCrであり、その他の微量成分を含んでも良いが、微量成分は、針状偏析物2a,2a1〜2a3の全体に対して、15モル%以下である。
本実施形態において、針状偏析物2a,2a1〜2a3とは、偏析物試料の断面を電子顕微鏡等で確認した際に、偏析物の長さが最も長い線分の距離を長さとし、その長さに対して垂直で、試料の交点の線分が最も長くなる距離を厚さとしたとき、試料の長さが厚さの1.8倍以上であるものを針状偏析物とみなす。本実施形態において、針状偏析物2a,2a1〜2a3の厚みは、好ましくは、内部電極層3の厚みの0.1〜0.5倍である。
<外部電極4>
外部電極4に含有される導電材は特に限定されないが、本発明では安価なNi,Cuや、これらの合金を用いることができる。外部電極4の厚さは用途等に応じて適宜決定すればよい。
<積層セラミックコンデンサ1の製造方法>
本実施形態の積層セラミックコンデンサ1は、従来の積層セラミックコンデンサと同様に、ペーストを用いた通常の印刷法やシート法によりグリーンチップを作製し、これを焼成した後、外部電極を印刷または転写して焼成することにより製造される。以下、製造方法について具体的に説明する。
まず、誘電体層を形成するための誘電体原料を準備し、これを塗料化して、誘電体層用ペーストを調製する。
誘電体原料として、まずABOの原料と、Mgの酸化物の原料と、Rの酸化物の原料と、Siを含む酸化物の原料と、を準備する。これらの原料としては、上記した成分の酸化物やその混合物、複合酸化物を用いることができるが、その他、焼成により上記した酸化物や複合酸化物となる各種化合物、たとえば、炭酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物等から適宜選択し、混合して用いることもできる。
なお、ABOの原料は、いわゆる固相法の他、各種液相法(たとえば、シュウ酸塩法、水熱合成法、アルコキシド法、ゾルゲル法など)により製造されたものなど、種々の方法で製造されたものを用いることができる。
さらに、誘電体層に、上記の主成分および副成分以外の成分が含有される場合には、該成分の原料として、上記と同様に、それらの成分の酸化物やその混合物、複合酸化物を用いることができる。また、その他、焼成により上記した酸化物や複合酸化物となる各種化合物を用いることができる。
誘電体原料中の各化合物の含有量は、焼成後に上述した誘電体磁器組成物の組成となるように決定すればよい。塗料化する前の状態で、誘電体原料の粒径は、通常、平均粒径0.1〜1μm程度である。
誘電体層用ペーストは、誘電体原料と有機ビヒクルとを混練した有機系の塗料であってもよく、水系の塗料であってもよい。
有機ビヒクルとは、バインダを有機溶剤中に溶解したものである。バインダは特に限定されず、エチルセルロース、ポリビニルブチラール等の通常の各種バインダから適宜選択すればよい。有機溶剤も特に限定されず、印刷法やシート法などに応じて、テルピネオール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエン等の各種有機溶剤から適宜選択すればよい。
また、誘電体層用ペーストを水系の塗料とする場合には、水溶性のバインダや分散剤などを水に溶解させた水系ビヒクルと、誘電体原料とを混練すればよい。水溶性バインダは特に限定されず、たとえば、ポリビニルアルコール、セルロース、水溶性アクリル樹脂などを用いればよい。
内部電極層用ペーストは、上記したNiやNi合金からなる導電材、あるいは焼成後に上記したNiやNi合金となる各種酸化物、有機金属化合物、レジネート等と、上記した有機ビヒクルとを混練して調製すればよい。また、内部電極層用ペーストには、共材が含まれていてもよい。共材としては特に制限されないが、主成分と同様の組成を有していることが好ましい。
外部電極用ペーストは、上記した内部電極層用ペーストと同様にして調製すればよい。
上記した各ペースト中の有機ビヒクルの含有量に特に制限はなく、通常の含有量、たとえば、バインダは1〜5重量%程度、溶剤は10〜50重量%程度とすればよい。また、各ペースト中には、必要に応じて各種分散剤、可塑剤、誘電体、絶縁体等から選択される添加物が含有されていてもよい。これらの総含有量は、10重量%以下とすることが好ましい。
印刷法を用いる場合、誘電体層用ペーストおよび内部電極層用ペーストを、PET等の基板上に印刷、積層し、所定形状に切断した後、基板から剥離してグリーンチップとする。
また、シート法を用いる場合、誘電体層用ペーストを用いてグリーンシートを形成し、この上に内部電極層用ペーストを印刷した後、これらを積層し、所定形状に切断してグリーンチップとする。
焼成前に、グリーンチップに脱バインダ処理を施す。脱バインダ条件としては、昇温速度を好ましくは5〜300℃/時間、保持温度を好ましくは180〜400℃、温度保持時間を好ましくは0.5〜24時間とする。また、脱バインダ処理における雰囲気は、空気もしくは還元性雰囲気とする。
脱バインダ後、グリーンチップの焼成を行う。本実施形態の焼成工程では、昇温速度を好ましくは200℃/時間以上とする。焼成時の保持温度は、好ましくは1000〜1300℃であり、その保持時間は、好ましくは0.1〜4時間である。
焼成時の雰囲気は、還元性雰囲気とすることが好ましく、雰囲気ガスとしてはたとえば、NとHとの混合ガスを加湿して用いることができる。
また、焼成時の酸素分圧は、内部電極層用ペースト中の導電材の種類に応じて適宜決定されればよいが、導電材としてNiやNi合金等の卑金属を用いる場合、雰囲気中の酸素分圧は、1.0×10−8〜1.0×10−2Paとすることが好ましい。降温速度は、好ましくは50℃/時間以上である。
本実施形態では、焼成後の素子本体に対し、アニール処理(誘電体層の酸化処理)を行うことが好ましい。具体的には、アニール処理における保持温度は、好ましくは950〜1250°C、さらに好ましくは1060〜1250°Cであり、保持時間は、好ましくは0.1〜4時間である。また、酸化処理時の雰囲気は、加湿したNガス(酸素分圧:1.0×10−3〜1.0Pa)とすることが好ましい。
上記した脱バインダ処理、焼成および酸化処理において、Nガスや混合ガス等を加湿する場合には、たとえばウェッター等を使用すればよい。この場合、水温は5〜75℃程度が好ましい。
脱バインダ処理、焼成および酸化処理は、連続して行なっても、独立に行なってもよい。
焼成条件および酸化処理条件を上記のように制御することで、MgおよびCrを主成分として含む針状偏析物を、内部電極層に沿って不連続部分を塞ぐように配置させることが容易になる。また、不連続部分の長さの合計(Lt)に対して、前記針状偏析物で塞がれている前記不連続部分の長さの合計(mt)の割合(mt/Lt)を、40%以上に制御することも容易になる。さらに、不連続部分を塞ぐように配置してある針状偏析物のうち、不連続部分を貫通せずに不連続部分を塞ぐように配置してある針状偏析物の割合を制御することが容易になる。
上記のようにして得られたコンデンサ素子本体に、たとえばバレル研磨やサンドブラストなどにより端面研磨を施し、外部電極用ペーストを塗布して焼成し、外部電極4を形成する。そして、必要に応じ、外部電極4の表面に、めっき等により被覆層を形成する。
このようにして製造された本実施形態の積層セラミックコンデンサは、ハンダ付等によりプリント基板上などに実装され、各種電子機器等に使用される。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々に改変することができる。
上述した実施形態では、本発明に係る積層型セラミック電子部品として積層セラミックコンデンサを例示したが、本発明に係る積層型セラミック電子部品としては、積層セラミックコンデンサに限定されず、上記構成を有する電子部品であれば何でも良い。
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
<実験例1>
まず、主成分であるABOの原料としてBaTiO粉末を準備した。また、副成分の原料としては、Mgの酸化物の原料としてMgCO粉末、Crの酸化物の原料としてCr粉末、R元素の酸化物の原料としてR粉末、Siを含む酸化物の原料として(Ba0.6 Ca0.4 )SiO(以下、BCGともいう)粉末、Mnの酸化物の原料としてMnO粉末、Vの酸化物の原料としてV粉末を、それぞれ準備した。なお、MgCOは、焼成後には、MgOとして誘電体磁器組成物中に含有されることとなる。
次に、上記で準備したBaTiO粉末(平均粒子径:0.3μm)と副成分の原料とをボールミルで15時間湿式粉砕し、乾燥して誘電体原料を得た。なお、各副成分の添加量は、焼成後の誘電体磁器組成物において主成分であるBaTiO100モルに対して、MgO、CrおよびBCGが各元素換算で、表1に示すモル数、各酸化物換算で、Yが1.0モル、MnOが0.1モル、Vが0.1モルとなるようにした。
次いで、得られた誘電体原料:100重量部と、ポリビニルブチラール樹脂:10重量部と、可塑剤としてのジオクチルフタレート(DOP):5重量部と、溶媒としてのアルコール:100重量部とをボールミルで混合してペースト化し、誘電体層用ペーストを得た。
また、上記とは別に、Ni粉末:44.6重量部と、テルピネオール:52重量部と、エチルセルロース:3重量部と、ベンゾトリアゾール:0.4重量部とを、3本ロールにより混練し、スラリー化して内部電極層用ペーストを作製した。
そして、上記にて作製した誘電体層用ペーストを用いて、PETフィルム上にグリーンシートを形成した。次いで、この上に内部電極層用ペーストを用いて、電極層を所定パターンで印刷した後、PETフィルムからシートを剥離し、電極層を有するグリーンシートを作製した。次いで、電極層を有するグリーンシートを複数枚積層し、加圧接着することによりグリーン積層体とし、このグリーン積層体を所定サイズに切断することにより、グリーンチップを得た。
次いで、得られたグリーンチップについて、脱バインダ処理、焼成および酸化処理を下記条件にて行って、焼結体としての素子本体を得た。
脱バインダ処理条件は、昇温速度:15℃/時間、保持温度:280℃、温度保持時間:8時間、雰囲気:空気中とした。
焼成条件は、昇温速度:200〜2000℃/時間、保持温度:1000〜1300℃とし、保持時間を0.5〜2時間とし、降温速度:200〜2000℃/時間、雰囲気ガス:加湿したN+H混合ガス(酸素分圧が1.0×10−10 〜1.0×10−7Pa)とした。
アニール処理条件は、昇温速度:250℃/時間、保持温度:950〜1250°C、好ましくは1060〜1250°C、保持時間:2時間、降温速度:150℃/時間、雰囲気ガス:加湿したN2ガス(酸素分圧:1.0×10−3Pa)とした。
なお、焼成および酸化処理の際の雰囲気ガスの加湿には、ウェッターを用いた。
次いで、得られた素子本体の端面をサンドブラストにて研磨した後、外部電極としてCuを塗布し、図1に示す積層セラミックコンデンサの試料を得た。得られたコンデンサ試料のサイズは、1.6mm×0.8mm×0.8mmであり、誘電体層の厚みが1.0μm、内部電極層の厚みが1.0μmであった。また、内部電極層に挟まれた誘電体層の数は350とした。
表1に示すように、得られたコンデンサ試料1〜14について、Mg−Cr偏析の有無、機械的強度、容量増加率および信頼性の試験を、それぞれ下記に示す方法により行った。
<Mg−Crの針状偏析物の有無>
まず、図1に示すように、コンデンサ試料を誘電体層2および内部電極層3に対して垂直な面で切断した。この切断面の中央部分S1、内部電極層3の重なり初め部分S2、または内部電極層3の引出部分S3について、電子顕微鏡(SEM)の2次電子像もしくは反射電子像を撮影し、針状偏析物2a,2a1〜2a3の有無を判断した。針状偏析物2a,2a1〜2a3の有無は、電極や誘電体と比較して、コントラストの違いから確認できた。
なお、偏析物試料の断面を電子顕微鏡等で確認した際に、偏析物の長さが最も長い線分の距離を長さとし、その長さに対して垂直で、試料の交点の線分が最も長くなる距離を厚さとしたとき、試料の長さが厚さの1.8倍以上であるものを針状偏析物とみなした。また、その偏析物が、MgおよびCrを主成分とする針状偏析物か否かは、電子線マイクロアナライザ(EPMA)を用いて確認した。
図2に示すように、誘電体層2と内部電極層3との界面で、内部電極層3に沿って不連続部分3aを塞ぐように配置してあるMgおよびCrを主成分として含む針状偏析物2a,2a1,2a2が存在するか否かは、次のようにして判断した。まず、電子顕微鏡写真の特定視野面積において、図2に示すように、全ての針状偏析物2a,2a1,2a2,2a3の数(n0)と、誘電体層2と内部電極層3との界面で、内部電極層3の不連続部分3aを塞ぐように配置してある針状偏析物2a,2a1,2a2の数(n1)とを測定した。その比率(n1/n0)が、0.05以上である場合に、誘電体層2と内部電極層3との界面で、内部電極層3に沿って不連続部分3aを塞ぐように配置してあるMgおよびCrを主成分として含む針状偏析物2a,2a1,2a2が存在すると判断した。針状偏析物2a,2a1,2a2が存在する場合を、表1において、Mg−Cr偏析の有無を○と表記し、上記の条件を満たさない場合には、×と表記した。
<機械的強度>
各コンデンサ試料の機械的強度(剥離強度)は、荷重測定器(INSTORN社5864)を用いて行った。図4に示すように、まず、アニール処理後のチップ試料10aを、チップ試料10aの短辺の半分の長さ分で凸になっている搭載専用の台20の上に、積層方向が地面と垂直になるように置き、チップ試料10aの平面(蓋の面)の中心付近を吸引装置22により吸引して固定した。そして、台20に乗っているチップ試料10aの反対側(上)方向から、台20の凸部とチップ試料10aが重ならない面を押す事のできる刃24を用いて、チップ試料10aの内部電極層と誘電体層との積層構造をはがすように押し込む。その際に、刃24が受ける最大荷重の値(剥離強度)を、INSTORN社製5864試験機を用いて、各試料100個について測定し、強度が低いもの50個の平均値を求めた。結果を表1に示す。剥離強度は、90N以上が好ましく、105N以上がさらに好ましい。
<信頼性>
各コンデンサ試料に対し、高温負荷信頼性試験を行い、信頼性を測定した。具体的には、各コンデンサ試料について、良品チップを2000個準備し、10個並列で200ch(計2,000個)を基板に実装し、160℃で6.3V(定格)の電圧をかけた状態での漏れ電流が、電圧をかけてから1分後の値から、2桁低くなったところを故障とした。故障するまでの時間(hr)を測定した。200のうち、故障するまでの時間(hr)が短い10chの試料について、平均値を求めた。結果を表1に示す。信頼性は、2時間(hr)以上が好ましく、3時間以上がさらに好ましい。
<静電容量の増加率>
各コンデンサ試料について、静電容量の増加率は、次のようにして求めた。まず、各コンデンサ試料について、LCRメータ4980A(アジレント・テクノロジー社)を用いて、熱処理から十数時間後に容量を測定し、既知のエージング係数から1000時間後の実測値の静電容量CRを求めた。
各コンデンサ試料を、側面方向から、積層状態が見えるように研磨し、レーザー顕微鏡(キーエンス社VK−8710)を用いて、×100のレンズで撮影し、画像処理にて被覆率を求めた。ここで、被覆率とは、内部Ni電極があるべきライン上に、実際に存在する割合のことである。コンデンサの静電容量は、内部電極の面積に比例するため、内部電極層が途切れることによって、コンデンサの静電容量は損なわれる。そこで、内部電極層の途切れ(不連続部3a)を無視するために、実際の静電容量を被覆率の値で割ることで、電極途切れによって損なわれた容量を無視した値で比較することができる。
実施例では、前述した実測値の静電容量CRは、Mg−Crの偏析が不連続部分を埋めた閉塞割合mt/Ltと、不連続部分の割合Uに関係する。すなわち、CRは、閉塞割合mt/LtとUの関数であり、CR(mt/Lt,U)で表される。Mg−Crの偏析によって埋められたことで変化した容量値(容量増加率%)を得るため、Mg−Crの偏析によって埋められていない場合の容量を仮にCIとする。容量増加率は偏析による閉塞割合mt/Ltとほぼ比例しているため、CIは、複数の閉塞割合mt/Ltから外挿して求められた近似的な予測値である。なお、容量CIは、Uの関数であり、CI(U)で表される。
次に、不連続部分の割合による容量変化を考慮するため、CR、CIのそれぞれを、被覆率(1−U)で割ってCRUとCIUを得る。すなわち、CRUとCIUは、それぞれCRU=CR/(1−U)、CIU=CI/(1−U)で表される。ここで、次の容量変化率の評価の際に対比するCRUとCIUの不連続部分の割合Uは等しいものとする。なお、不連続部の割合Uはアニール温度、焼成条件、内部電極層用ペースト印刷時のペースト厚さなどによって適宜調整可能である。
以上より、Mg−Crの偏析によって不連続部分が埋められることで変化した容量はCRU−CIUで表される。容量の変化割合を求めるため、変化した容量をCRUで割った値xを容量変化率(容量増加率)と定義する。すなわち、x=(CRU−CIU)×100/CRUで表される。結果を表1に示す。容量増加率(%)は、好ましくは1%以上であり、さらに好ましくは2%以上、特に好ましくは3%以上である。
Figure 2012151294
表1より、内部電極層と誘電体層との界面に内部電極層の不連続部を覆うように、Mg−Cr偏析を析出させ、十分な機械的強度、容量増加率および信頼性を得るためには、次に示す条件を満足することが好ましいことが確認できた。すなわち、主成分100モルに対して、Mgは、好ましくは0.5〜4モル、さらに好ましくは1〜1.9モルであり、Crは、好ましくは0.1〜0.5モル、さらに好ましくは0.1〜0.3モル、Mg/Crは、好ましくは2.5〜20、さらに好ましくは5〜19、Cr/Siは、好ましくは0.19〜0.96である。
<実験例2>
焼成時の冷却速度を20℃/時間とした以外は、実験例1の試料6と同様にして、コンデンサ試料20を作成し、同様な実験を行った。また、700〜900°Cでアニール処理を行うと共に、Cr/Si=0.2とした以外は、実験例1の試料6と同様にして、コンデンサ試料21を作成し、同様な実験を行った。さらに、焼成保持温度を1150℃、保持時間を0.4時間とした以外は、実験例1の試料6と同様にして、コンデンサ試料22を作成し、同様な実験を行った。さらにまた、焼成温度を1350℃とした以外は、実験例1の試料6と同様にして、コンデンサ試料23を作成し、同様な実験を行った。結果を表2に示す。
Figure 2012151294
表2に示すように、内部電極層と誘電体層との界面に内部電極層の不連続部を覆うように、Mg−Cr偏析を析出させることで、十分な機械的強度、容量増加率および信頼性を得ることができることが確認できた。
<実験例3>
アニール温度を700℃から1250℃の範囲で変化させた以外は、実験例1の試料6と同様にして、コンデンサ試料30〜36を作成し、同様な実験を行った。ただし、実験例3では、前述した方法により、内部電極層3の不連続部分3aの長さ合計(Lt)に対して、塞がれている不連続部分3aの長さの合計(mt)の割合(mt/Lt)を求め、それを閉塞割合として定義し、その閉塞割合(mt/Lt)を、各試料30〜36について求めた。結果を表3に示す。
Figure 2012151294
表3より、閉塞割合(mt/Lt)は、40%以上、さらに好ましくは47%以上、特に好ましくは67%以上であることが確認できた。
<実験例4>
焼成時の冷却速度を200℃/時間から2000℃/時間の間で変化させた以外は、実験例1の試料6と同様にして、コンデンサ試料41〜49を作成し、同様な実験を行った。ただし、実験例4では、不連続部分3aを塞ぐように配置してある針状偏析物2,2a,2a1,2a2のうち、不連続部分3aを貫通して、隣接する誘電体層2の間を跨ぐように配置してある針状偏析物2a2の割合(A粒子の割合)を求めた。さらに、不連続部分3aを塞ぐように配置してある針状偏析物2,2a,2a1,2a2のうち、不連続部分3aを貫通せずに不連続部分3aを塞ぐように、誘電体層2と内部電極層3との界面で、内部電極層3に沿って配置してある針状偏析物2,2a,2a1の割合(B粒子の割合)も求めた。結果を表4に示す。
Figure 2012151294
表4より、B粒子の割合が、好ましくは30%以上、さらに好ましくは50%以上、特に好ましくは70%以上であることが確認できた。
1… 積層セラミックコンデンサ
10… 素子本体
2… 誘電体層
2a,2a1,2a2,2a3… 針状偏析物
3… 内部電極層
3a… 不連続部
4… 外部電極

Claims (4)

  1. 内部電極層と誘電体層とが交互に積層された積層体を有する積層電子部品であって、
    前記内部電極層は不連続部分を有し、
    前記誘電体層と前記内部電極層との界面には、MgおよびCrを主成分として含む針状偏析物が存在し、
    前記針状偏析物が、前記内部電極層に沿って前記不連続部分を塞ぐように配置してあることを特徴とする積層電子部品。
  2. 前記誘電体層が、一般式ABOで表され、ペロブスカイト型結晶構造を有する主成分と、MgおよびCrを少なくとも含む副成分とを有する誘電体磁器組成物で構成してあり、
    前記主成分100モルに対して、酸化物換算で、Mgを0.5〜4モル含み、Crを0.1〜0.5モル含み、MgとCrとのモル数の比率(Mg/Cr)が、2.5〜20である請求項1に記載の積層電子部品。
  3. 前記内部電極層に垂直な所定面積の断面における前記不連続部分の長さの合計(Lt)に対して、前記針状偏析物で塞がれている前記不連続部分の長さの合計(mt)の割合(mt/Lt)が、40%以上である請求項1または2に記載の積層電子部品。
  4. 前記不連続部分を塞ぐように配置してある前記針状偏析物のうち、前記不連続部分を貫通せずに前記不連続部分を塞ぐように、前記誘電体層と前記内部電極層との界面で、前記内部電極層に沿って配置してある前記針状偏析物の割合が、30%以上である請求項3に記載の積層電子部品。
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