以下に、本発明の実施形態に係る端子付き電線、端子付き電線の製造方法、および端子圧着装置につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
[第1実施形態]
図1から図24を参照して、第1実施形態について説明する。本実施形態は、端子付き電線、端子付き電線の製造方法、および端子圧着装置に関する。図1は、実施形態に係る圧着端子の圧着前の状態を示す斜視図、図2は、実施形態に係る圧着端子の圧着前の状態を示す側面図、図3は、実施形態に係る圧着端子の圧着後を示す斜視図、図4は、実施形態に係る圧着端子の圧着後を示す側面図、図5は、実施形態に係る圧着端子において、貼付工程が実行される前の状態を示す斜視図、図6は、実施形態に係る圧着端子において凸部が形成された状態を示す平面図、図7は、実施形態に係る圧着端子の凸部の断面図、図8は、実施形態に係る圧着端子の凸部の断面図、図9は、実施形態に係る圧着端子において止水部材が貼付された状態を示す平面図、図10は、実施形態の端子連鎖体を示す平面図である。
図11は、実施形態に係る端子圧着装置の側面図、図12は、実施形態に係る端子圧着装置の正面図、図13は、実施形態に係る第一および第二の金型を示す斜視図、図14は、実施形態に係る第一金型の側面図、図15は、実施形態に係る第一金型の正面図、図16は、実施形態に係る第一金型の平面図、図17は、実施形態に係る凸部の拡大図、図18は、実施形態に係る凸部の断面図、図19は、実施形態に係る第一凸部の断面図、図19は、実施形態に係る第二凸部の断面図である。図7には、図6のVII−VII断面が示されている。図8には、図7のVIII−VIII断面が示されている。図18には、図15のXVIII−XVIII断面が示されている。図19には、図14のXIX−XIX断面が示されている。図20には、図14のXX−XX断面が示されている。
まず、本実施形態に係る圧着端子1について説明する。図1等に示す圧着端子1は、電線50に対して圧着される端子である。圧着端子1は、電線50と一体になった状態で相手側端子(図示略)に対して電気的に接続される。圧着対象の電線50は、端部の被覆52が取り除かれて芯線51が所定の長さ露出している。芯線51は、複数本の素線の集合体であってもよく、同軸ケーブルのような単線であってもよい。圧着端子1は、電線50の端部に圧着されることで、露出している芯線51に対して電気的に接続される。
圧着端子1は、端子金具10および止水部材20を有する。端子金具10は、圧着端子1の主体部分である。端子金具10は、母材としての導電性の金属板(例えば銅板、銅合金板)から形成される。端子金具10は、母材に対する打ち抜き加工や折り曲げ加工等により、相手側端子や電線50との接続が可能な所定の形状に形成される。端子金具10は、端子接続部11および電線接続部12を有する。端子接続部11は、相手側端子に対して電気的に接続される部分である。電線接続部12は、電線50に対して圧着される部分であり、芯線51に対して電気的に接続される。
端子接続部11と電線接続部12との間には、連結部13が設けられている。言い換えると、端子接続部11と電線接続部12とは連結部13を介して連結されている。連結部13は、端子接続部11の側壁11a,11aと、電線接続部12の側壁であるバレル片部15,16とを繋いでいる。連結部13の高さは、バレル片部15,16や側壁11aの高さよりも低くなっている。より詳しくは、連結部13の高さは、端子接続部11から電線接続部12へ向かうに従って低くなっている。
端子金具10は、雄端子であっても雌端子であってもよい。端子接続部11は、端子金具10が雄端子である場合、雄型に成型され、端子金具10が雌端子である場合、雌型に成型される。本実施形態の端子金具10は、雌端子である。
圧着端子1の説明において、相手側端子との接続方向、すなわち相手側端子との挿入方向を第一方向Lと称する。第一方向Lは、圧着端子1の長手方向である。圧着端子1の並列配置方向を第二方向Wと称する。並列配置方向は、後述するように端子連鎖体30において圧着端子1が並列配置される方向であり、圧着端子1の幅方向である。圧着端子1において、第一方向Lおよび第二方向Wの何れとも直交する方向を第三方向Hと称する。第三方向Hは、圧着端子1の高さ方向である。
成型工程において、圧着端子1は、平板な板状に成型され、この状態から、端子接続部成形工程において、端子接続部11が図1に示すように筒状に形成される。端子接続部成形工程では、端子接続部11に対する折り曲げ加工等がなされる。本実施形態の端子接続部11の形状は、断面形状が矩形の筒形状である。電線接続部12は、電線接続部成形工程において、断面形状がU字状となるように成型される。電線接続部成形工程では、電線接続部12に対する折り曲げ加工等がなされる。また、電線接続部12には、貼付工程において、止水部材20が貼り付けられる。貼付工程は、電線接続部成形工程よりも前に実行されても、電線接続部成形工程の後で実行されてもよい。
図1および図6に示すように、電線接続部12は、底部14、第一バレル片部15、および第二バレル片部16を有する。底部14は、U字状に形成された電線接続部12の底壁となる部位である。底部14には、圧着加工の際に電線50の端部が載置される。第一バレル片部15および第二バレル片部16は、U字状に形成された電線接続部12の側壁となる部位である。第一バレル片部15および第二バレル片部16は、底部14における第二方向Wの端部につながっている。第一バレル片部15および第二バレル片部16は、底部14の幅方向の端部から、幅方向と交差する方向に向けて突出している。U字状に形成された電線接続部12では、底部14に電線50の端部が載置されると、第一バレル片部15および第二バレル片部16が第二方向Wの両側から電線50を囲む。
第一バレル片部15および第二バレル片部16は、底部14側の根元から先端15a,16aの端面までの長さが互いに等しくてもよく、一方の長さが他方の長さよりも長くてもよい。本実施形態の圧着端子1では、第一バレル片部15における根元から先端15aまでの長さよりも、第二バレル片部16における根元から先端16aまでの長さが長い。第一バレル片部15および第二バレル片部16は、例えば、互いに重なり合いながら電線50に対して巻き付けられる。本実施形態では、第一バレル片部15の外側に第二バレル片部16が重なる。なお、第一バレル片部15および第二バレル片部16は、所謂Bクリンプと称する加締めがなされてもよい。Bクリンプでは、第一バレル片部15および第二バレル片部16のそれぞれが底部14側に向けて折り曲げられて先端15a,16aが電線50に向けて押しつけられるように加締められる。本実施形態の圧着端子1には、後述する止水部材20が設けられ、前者の加締め処理が採用される。
電線50の端部は、電線接続部12のU字の開口部、すなわち先端15a,16aの隙間からU字状の内側の空間に挿入される。電線接続部12は、電線50の端部が挿入されやすいように形成されている。具体的には、電線接続部12は、底部14側から先端15a,16aの端面へ向かうにつれて第一バレル片部15と第二バレル片部16との第二方向Wにおける間隔が広がっている。
第一バレル片部15および第二バレル片部16では、図2乃至図6に示すように、芯線圧着部12Aと被覆圧着部12Bとの間に連結圧着部12Cが介在している。第一バレル片部15および第二バレル片部16は、それぞれ圧着部12A,12C,12Bがこの順序で第一方向Lに沿って連続している一枚の片部である。
芯線圧着部12Aは、電線50の先端の芯線51に対して圧着される部位である。芯線圧着部12Aは、各バレル片部15,16における最も連結部13寄りの部位である。被覆圧着部12Bは、被覆52の端部に対して圧着される部位である。被覆圧着部12Bは、各バレル片部15,16における最も連結部13側から遠い側に位置する部位である。連結圧着部12Cは、芯線圧着部12Aと被覆圧着部12Bとを繋ぐ部位である。連結圧着部12Cは、電線50における芯線51と被覆52との境界部分に対して圧着される。電線接続部12は、電線50に対して圧着されることで芯線51および被覆52を一体に覆う。電線接続部12が電線50に対して巻き付けられて圧着されることで、図3、図4等に示す端子付き電線2が作成される。
図5および図6に示すように、電線接続部12の内壁面、すなわち電線50を覆う側の壁面には、セレーション領域17が設けられている。セレーション領域17は、芯線51を保持する芯線保持領域である。セレーション領域17は、電線接続部12の内壁面において、芯線51に対して巻き付けられる部分を含む領域である。セレーション領域17には、複数の凹部、複数の凸部、または凹部と凸部の組み合わせが配置される。凹部や凸部は、電線接続部12と芯線51との接触面積を増やし、両者の密着強度を高める。本実施形態のセレーション領域17は、矩形の領域であり、第一方向Lおよび第二方向Wに沿って複数の凹部17aが配列されている。本実施形態では、セレーション領域17に凹部17aを形成する工程をセレーション形成工程と称する。
図7および図8に示すように、底部14には、第一凸部42が形成されている。第一凸部42は、例えば、プレス加工によって形成される。底部14に対して第一凸部42を形成する工程を第一の凸部形成工程と称する。第一の凸部形成工程は、他の工程と並行して行われてもよく、他の工程とは独立して行われてもよい。第一の凸部形成工程は、例えば、セレーション形成工程の後で実行される。
第一凸部42は、底部14の内側面14bに形成されている。内側面14bは、電線接続部12が電線50に対して巻き付けられて圧着される際に内側を向く面である。言い換えると、内側面14bは、底部14において、電線50と接触し、電線50に圧着される面である。第一凸部42は、第一方向Lに沿った端面42aを有する。底部14において、内側面14bとは反対側の面を外側面14aと称する。外側面14aは、電線接続部12が電線50に対して巻き付けられて圧着される際に外側を向く面である。外側面14aは、底部14が第一金型112に載置された際に、第三方向Hにおいて凹状面112A1、112B1(図13参照)と対向する面である。
第一凸部42が形成されることで、底部14には凹部41が形成される。凹部41は、底部14の外側面14aに形成されている。図6および図7に示すように、第一凸部42および凹部41は、第一方向Lに沿って延在している。電線50の芯線51は、第一凸部42に載置されて第一方向Lに沿って延在する。つまり、第一凸部42は、芯線51の軸方向に沿って延在する。第一凸部42は、第一方向Lに沿った長さが第二方向Wに沿った幅よりも大きい細長形状に形成されている。図8に示すように、第一方向Lと直交する断面における第一凸部42の形状は、湾曲形状であり、例えば、略円弧形状である。第一凸部42は、底部14における第二方向Wの中央部に形成される。従って、U字状に折り曲げられた後の電線接続部12において、第一凸部42はU字の底部に位置する。
図7に示すように、第一凸部42は、芯線圧着部12Aおよび連結圧着部12Cに形成されている。すなわち、第一凸部42は、芯線圧着部12Aから連結圧着部12Cにかけて第一方向Lに沿って延在している。本実施形態の第一凸部42は、主として芯線圧着部12Aに形成されており、第一凸部42における端部が連結圧着部12Cに形成されている。第一凸部42が形成される位置および範囲は、圧着工程において電線50の芯線51が載置される位置および範囲と対応している。すなわち、第一凸部42は、載置される芯線51と接触して芯線51を支持することができる位置および範囲に設けられている。第一凸部42は、例えば、露出している芯線51の先端から基端までを支持することができるように設けられる。
ここで、芯線51と、芯線51に対して圧着された電線接続部12との間に水が浸入してしまうことは好ましくない。例えば、芯線51の金属材料と電線接続部12の金属材料とがイオン化傾向の大きさの異なるものである場合、腐食の可能性がある。一例として、芯線51の材料がアルミニウム、電線接続部12の材料が銅である場合、芯線51が腐食してしまう可能性がある。本実施形態の圧着端子1には止水部材20が設けられている。止水部材20は、電線接続部12と芯線51との間への水の浸入を抑制する。
止水部材20は、例えば、アクリル系粘着剤等の粘着剤を主とするシート状に形成された部材である。本実施形態の止水部材20としては、シート状の不織布に粘着剤を染み込ませて形成された粘着シートであって、両面に粘着効果を有するものが用いられる。
止水部材20は、例えば、図6に示す平板状の電線接続部12の内壁面に対して貼り付けられる。止水部材20は、図9に示すように、所定形状に形成されており、第一止水部21、第二止水部22、および第三止水部23を有する。第一止水部21は、圧着完了後に第一バレル片部15と第二バレル片部16とが重なり合う部分を止水する。つまり、第一止水部21は、互いに重なり合う第一バレル片部15と第二バレル片部16との間に挟み込まれてバレル片部15,16の間に止水領域を形成する。本実施形態の第一止水部21は、第二バレル片部16に配置されており、第一方向Lに沿って延在している。
第二止水部22は、芯線51の先端よりも端子接続部11側を止水する。第二止水部22は、電線接続部12における端子接続部11側の端部に配置されており、第二方向Wに沿って延在している。第二止水部22の少なくとも一部は、芯線51が載置される領域に設けられることが望ましい。第二止水部22は、例えば、重なり合うバレル片部15,16の間に挟み込まれることにより、バレル片部15,16の隙間に止水領域を形成する。第二止水部22は、圧着工程において互いに重なり合うことにより、芯線51の先端よりも端子接続部11側の隙間を塞ぐこともできる。第二止水部22は、電線接続部12と芯線51との間への端子接続部11側からの浸水を抑制する。
第三止水部23は、電線接続部12と被覆52との隙間からの水の浸入を抑制する。第三止水部23は、電線接続部12における端子接続部11側と反対側の端部に配置されており、第二方向Wに沿って延在している。第三止水部23は、被覆52と電線接続部12との間に挟み込まれることにより、被覆52と電線接続部12との間に止水領域を形成する。
以上示した端子金具10は、母材となる一枚の金属板に対するプレス工程を経て、図5に示す平板状の電線接続部12を有する形態に加工される。更に、第一の凸部形成工程によって底部14に第一凸部42が形成される。その後の貼付工程において、平板状の電線接続部12に止水部材20が貼付される。しかる後、この端子金具10には、電線接続部成形工程において、U字状の電線接続部12が形成される。
本実施形態では、上記の各工程によって、図10に示す端子連鎖体30が形成される。端子連鎖体30は、複数の圧着端子1が連鎖したものであり、一枚の金属板から形成される。端子圧着装置100には、端子連鎖体30が供給される。端子圧着装置100は、端子連鎖体30に対して圧着工程および端子切断工程を実行する。圧着工程は、端子連鎖体30の一つの圧着端子1を電線50に対して加締めて圧着させる工程である。端子切断工程は、電線50に対して加締められた圧着端子1を端子連鎖体30から切り離す工程である。
端子連鎖体30は、圧着端子1の集合体である。端子連鎖体30は、連結片31、複数の圧着端子1、および複数の繋ぎ部32を有する。連結片31、圧着端子1、および繋ぎ部32は、同一の母材から形成されており、一体である。端子連鎖体30において、それぞれの圧着端子1は同一方向を向いており、かつ等間隔で並列に配置されている。端子連鎖体30では、各圧着端子1の一方の端部が連結片31によって互いに繋がれている。連結片31の形状は、例えば、矩形の細長い板状である。連結片31は、第二方向Wに沿って延在している。電線接続部12は、繋ぎ部32を介して連結片31とつながっている。より詳しくは、繋ぎ部32は、底部14における端子接続部11側とは反対側の端部を連結片31に繋いでいる。
連結片31には、複数の端子送り孔31aが形成されている。端子送り孔31aは、端子連鎖体30の送り方向に沿って等間隔で配置されている。端子送り孔31aは、連結片31を板厚方向に貫通している貫通孔である。端子送り孔31aによって、後述する圧着装置102に対する圧着端子1の位置決めがなされる。端子連鎖体30は、リール状に巻き取られた状態で端子圧着装置100に対してセットされる。
図11に示すように、端子圧着装置100は、端子供給装置101、圧着装置102、および駆動装置103を有する。端子圧着装置100は、この技術分野においてアプリケータと称される装置である。端子供給装置101は、所定の圧着位置に圧着端子1を供給する装置である。圧着装置102は、所定の圧着位置で電線50に対して圧着端子1を圧着させる装置である。駆動装置103は、端子供給装置101および圧着装置102を動作させる装置である。
端子供給装置101は、電線接続部12を第一金型112に設置する設置工程を実行する。より詳しくは、端子供給装置101は、リール状に巻き取られている端子連鎖体30を外周側から順次引き出す。端子供給装置101は、引き出した端子連鎖体30の圧着端子1を先頭側から順に圧着位置に供給する。端子供給装置101は、先頭の圧着端子1が電線50に対して圧着され、かつ連結片31から切り離されると、新たに先頭となった圧着端子1を圧着位置に供給する。端子供給装置101は、一つの圧着端子1の圧着工程および端子切断工程が完了する毎に設置工程を行って次の圧着端子1を圧着位置に供給する。
圧着装置102は、供給された圧着端子1を電線50に圧着させる圧着工程と、この圧着端子1を連結片31から切り離す端子切断工程とを実行する。圧着装置102は、圧着機110および端子切断機構120を有する。
圧着機110は、圧着端子1を電線50の端部に加締めることにより、圧着端子1を電線50に圧着させる装置である。本実施形態の圧着機110は、圧着端子1の第一バレル片部15および第二バレル片部16を電線50の芯線51および被覆52に対して巻き付けるように加締めることで圧着端子1を電線50に圧着させる。圧着機110は、フレーム111、第一金型112、第二金型113、および動力伝達機構114を有する。
フレーム111は、端子圧着装置100が載置される載置台に対して固定される。第一金型112は、フレーム111によって支持されている。第一金型112と第二金型113とは対をなしている。第一金型112と第二金型113とは上下方向において間隔をあけて配置されている。第一金型112および第二金型113は、圧着工程において、図13に示すように圧着端子1および電線50を間に挟み込むことで、圧着端子1を電線50に対して圧着させる。
第一金型112は、圧着端子1を下方から支持する金型である。第一金型112は、二つの下型が形成されたものであり、第一の下型としての第一アンビル112Aおよび第二の下型としての第二アンビル112Bを有する。第一アンビル112Aと第二アンビル112Bとは、例えば、一体に成形される。第二金型113は、第一金型112に対して上方に配置されている。第二金型113は、二つの上型が形成されたものであり、第一の上型としての第一クリンパ113Aおよび第二の上型としての第二クリンパ113Bを有する。
第一アンビル112Aと第一クリンパ113Aとは上下方向において互いに対向している。第一アンビル112Aおよび第一クリンパ113Aは、芯線圧着部12Aを圧着させる。すなわち、第一アンビル112Aおよび第一クリンパ113Aは、その相互間の間隔を狭めていくことにより、U字状の芯線圧着部12Aを電線50の芯線51に対して巻き付け、芯線51に圧着させる。
第二アンビル112Bと第二クリンパ113Bとは上下方向において互いに対向している。第二アンビル112Bおよび第二クリンパ113Bは、被覆圧着部12Bを圧着させる。すなわち、第二アンビル112Bおよび第二クリンパ113Bは、その相互間の間隔を狭めていくことによって、U字状の被覆圧着部12Bを被覆52に対して巻き付け、被覆52に圧着させる。
図11に示す駆動装置103は、動力を動力伝達機構114に伝えることによって、圧着工程では第一金型112と第二金型113との間隔を狭め、電線接続部12を電線50に対して圧着させる。一方、駆動装置103は、圧着工程が完了すると第一金型112と第二金型113との間隔を広げる。本実施形態の圧着装置102では、第二金型113が第一金型112に対して上下動することにより、一対の金型112,113の間隔が変化する。
なお、第一金型112において、第一アンビル112Aと第二アンビル112Bとが別体とされ、第二金型113において第一クリンパ113Aと第二クリンパ113Bとが別体とされてもよい。この場合、駆動装置103および動力伝達機構114は、第一クリンパ113Aと第二クリンパ113Bとを別々に上下動させるように構成されてもよい。動力伝達機構114は、駆動装置103から出力された動力を第一クリンパ113Aおよび第二クリンパ113Bに伝達する。
駆動装置103は、駆動源(図示略)と、駆動源の駆動力を上下方向の動力に変換する動力変換機構(図示略)と、を有する。動力伝達機構114は、その動力変換機構の出力軸に連結されている。従って、第一クリンパ113Aおよび第二クリンパ113Bは、駆動装置103の出力(動力変換機構の出力)によって、動力伝達機構114と一体になって第一金型112に対して上下動する。駆動装置103の駆動源としては、電動機などの電動アクチュエータ、油圧シリンダなどの油圧アクチュエータ、エアシリンダなどの空気圧アクチュエータ等が適用可能である。
図13に示すように、第一アンビル112Aおよび第二アンビル112Bには、それぞれの上側の先端に、下方に向けて凹ませた凹状面112A1,112B1が形成されている。第一金型112は、凹状面112A1,112B1を上方に露出させた状態でフレーム111によって支持されている。それぞれの凹状面112A1,112B1は、U字状の芯線圧着部12AとU字状の被覆圧着部12Bのそれぞれの底部14の形状に合わせて、断面形状が弧状となるように形成されている。
この圧着機110においては、それぞれの凹状面112A1,112B1が圧着位置となる。底部14を下側にして端子供給装置101によって供給されてきた圧着端子1は、第一金型112に載置される。芯線圧着部12Aの底部14は、第一アンビル112Aの凹状面112A1に載置される。被覆圧着部12Bの底部14は、第二アンビル112Bの凹状面112B1に載置される。
ここで、本実施形態の第一金型112は、図14乃至図18に示すように、凸部115を有する。凸部115は、第一アンビル112Aの凹状面112A1に配置されている。凹状面112A1は、電線接続部12を支持する支持面であり、芯線圧着部12A、および連結圧着部12Cの一部を支持する。凸部115は、凹状面112A1の底部に配置されており、凹状面112A1の長手方向Xに沿って延在している。ここで、第一金型112の説明において、「長手方向X」は、凹状面112A1の長手方向、すなわち凹状面112A1の延在方向である。また、第一金型112の説明において、「幅方向Y」は、凹状面112A1の短手方向を示し、「高さ方向Z」は、長手方向Xおよび幅方向Yのそれぞれと直交する方向である。高さ方向Zは、典型的には鉛直方向である。第一金型112と第二金型113とは高さ方向Zにおいて対向している。
本実施形態の凸部115は、第一凸部116および第二凸部117を有する。第一凸部116は、凹状面112A1に形成されており、上方に向けて突出している。より詳しくは、第一凸部116は、図15に示すように、凹状面112A1の最下部112Auから上方に向けて突出している。第一凸部116は、図17等に示すように、凹状面112A1の長手方向Xに沿う端面116aを有する。本実施形態の端面116aは、図17に示すように、実質的に水平な面である。言い換えると、本実施形態の端面116aは、第一凸部116の突出方向に対して直交する面である。
第二凸部117は、端面116aから上方に向けて突出している。本実施形態の凸部115は、三つの第二凸部117を有する。第二凸部117は、凹状面112A1の長手方向Xに沿って間隔を空けて並んでいる。つまり、複数の第二凸部117は、電線接続部12および電線50が第一金型112に載置された状態(図22参照)において芯線51の軸方向に沿って並ぶように配置されている。
第二凸部117は、前側凸部117aと、後側凸部117bと、中間凸部117cと、を有する。前側凸部117aは、端面116aにおける長手方向Xの一端に配置されている。後側凸部117bは、端面116aにおける長手方向Xの他端に配置されている。前側凸部117aは、露出している芯線51の先端51a側を支持する。後側凸部117bは、露出している芯線51の基端51b側を支持する。中間凸部117cは、前側凸部117aと後側凸部117bとの間に配置されている。中間凸部117cは、前側凸部117aおよび後側凸部117bのそれぞれとの間に間隔を空けて配置されている。前側凸部117aと中間凸部117cとの間隔L1は、中間凸部117cと後側凸部117bとの間隔L2と等しい。つまり、前側凸部117a、中間凸部117c、および後側凸部117bは、凹状面112A1の長手方向Xに沿って等間隔で配置されている。
本実施形態の凸部115は、圧着工程において底部14が前側凸部117aと中間凸部117cとの間、および中間凸部117cと後側凸部117bとの間に入り込むことができるように構成されている。例えば、前側凸部117aと中間凸部117cとの間隔L1、および中間凸部117cと後側凸部117bとの間隔L2は、少なくとも底部14の板厚t1(図21参照)よりも大きい。間隔L1,L2は、板厚t1の二倍とされてもよく、板厚t1の二倍よりも大きくされてもよい。
第二凸部117において、長手方向Xの中央部121は、半円柱状に形成されている。中央部121の断面形状は、図20に示すように、半円形状である。図17に示すように、中央部121は、高さH1が長手方向Xに沿って一定である。本実施形態では、前側凸部117a、後側凸部117b、および中間凸部117cの高さH1が等しい。
第二凸部117において、長手方向Xの端部122は、曲面形状に形成されている。図17に示すように、側面視における端部122の形状は、長手方向Xに沿って先端側へ向うに従って高さH2が小さくなる湾曲形状である。端部122は、長手方向Xの先端側に向けて凸の湾曲形状に形成されている。前側凸部117aおよび後側凸部117bにおいて、一方の端部122aの曲率半径は、他方の端部122bの曲率半径よりも大きい。他方の端部122bは、一方の端部122aよりも、長手方向Xにおける凸部115の中央寄りに位置している。中間凸部117cにおいては、両方の端部122bの曲率半径が等しい。
端子供給装置101は、設置工程において、図21に示すように、第一アンビル112Aの凸部115を底部14の凹部41に挿入させる。本実施形態の凸部115は、設置工程において前側凸部117a、中間凸部117c、および後側凸部117bが凹部41に対して挿入可能なように構成されている。すなわち、長手方向Xに沿った凸部115の長さL3は、第一方向Lに沿った凹部41の長さL4よりも小さい。また、凸部115は、設置工程において前側凸部117a、中間凸部117c、および後側凸部117bが凹部41の底面41aに接触可能なように構成されている。すなわち、高さ方向Zに沿った凸部115の高さH3は、第三方向Hに沿った凹部41の深さH4よりも大きい。電線接続部12の底部14は、前側凸部117a、中間凸部117c、および後側凸部117bによって下方から支持される。
第一金型112に載置された電線接続部12に対して、図22に示すように、電線50が載置される。電線50は、底部14の内側面14bに載置される。より詳しくは、電線50は、露出した芯線51を第一凸部42に接触させるようにして底部14に載置される。前側凸部117a、中間凸部117c、および後側凸部117bは、底部14を挟んで第三方向Hにおいて芯線51と対向する。前側凸部117aは、露出した芯線51における先端51a側の部分と対向する。後側凸部117bは、露出した芯線51における基端51b側の部分と対向する。
圧着工程において、電線50および底部14には、下方に向う押圧力F1が作用する。押圧力F1は、第二金型113が第一金型112に向けて下降し、電線50および電線接続部12を第一金型112との間に挟み込むことにより発生する(図13参照)。押圧力F1により、底部14には、凸部115の形状に応じた変形が生じる。図23には、圧着工程によって製造された端子付き電線2の断面が示されている。
図23に示すように、圧着後の底部14には、第一凸部42の端面42aから芯線51側に向けて突出する複数の第二凸部43が形成されている。言い換えると、圧着後の底部14には、第一凸部42および複数の第二凸部43を有する凸部40が形成されている。第一凸部42は、第一金型112の第一凸部116に対応する凸部である。第二凸部43は、第一金型112の第二凸部117に対応する凸部である。第一凸部42は、芯線51の軸方向に沿った端面42aを有する。端面42aは、第一金型112の端面116aに対応している。端面42aは、例えば、第三方向Hと略直交する面である。
複数の第二凸部43は、それぞれ第一凸部42の端面42aから芯線51側に向けて突出している。第二凸部43は、先端凸部43a、基端凸部43b、および中間凸部43cを有する。先端凸部43aは、第一金型112の前側凸部117aに対応する凸部であり、前側凸部117aによって形成される。基端凸部43bは、第一金型112の後側凸部117bに対応する凸部であり、後側凸部117bによって形成される。中間凸部43cは、第一金型112の中間凸部117cに対応する凸部であり、中間凸部117cによって形成される。
図24に示すように、第二凸部43の両端には、エッジ部44が形成されている。図24の断面におけるエッジ部44の形状は、芯線51側に向けて凸の湾曲形状または屈曲形状である。先端凸部43aおよび基端凸部43bは、エッジ部44a,44bを有する。先端凸部43aにおいて、一方のエッジ部44aは、第一金型112の前側凸部117aにおける一方の端部122aに対応して形成されている。先端凸部43aにおいて、他方のエッジ部44bは、前側凸部117aにおける他方の端部122bに対応して形成されている。
基端凸部43bにおける一方のエッジ部44aは、第一金型112の後側凸部117bにおける一方の端部122aに対応して形成されている。先端凸部43aにおける他方のエッジ部44bは、後側凸部117bにおける他方の端部122bに対応して形成されている。中間凸部43cの二つのエッジ部44bは、第一金型112の中間凸部117cにおける二つの端部122bに対応して形成されている。
上記のように、本実施形態の端子付き電線2では、凸部40が六カ所のエッジ部44a,44bを有する。凸部40は、第一方向Lの両端のエッジ部44aに加えて、中間部に複数のエッジ部44bを有する。本実施形態の端子付き電線2は、以下に説明するように、中間部に形成されたエッジ部44bを有することで、電気性能が向上する。圧着工程では、図22に示すように、押圧力F1によって芯線51が底部14に向けて押圧される。その結果、芯線51と底部14との間で凝着摩耗が発生する。凝着摩耗により、例えば、芯線51の表面の酸化皮膜が取り除かれる。従って凝着摩耗は、芯線51と底部14との電気的な接続を強固なものとする。
ここで、エッジ部では、凝着摩耗の発生が促進される。エッジ部は、芯線51側に向けて凸となった形状の部分である。エッジ部は、芯線51の軸方向に沿った断面において芯線51側に向けて突出する凸形状の部分であることが好ましい。本実施形態のエッジ部44a,44bは、第三方向Hに沿った面と第一方向Lに沿った面とが交差する部分に形成されている。エッジ部44a,44bの形状は、典型的には、湾曲形状や屈曲形状である。
本実施形態の端子付き電線2では、両端のエッジ部44aにおいて凝着摩耗の発生が促進されるだけでなく、中間のエッジ部44bにおいても凝着摩耗の発生が促進される。よって、本実施形態の端子付き電線2では、底部14と芯線51との間により多くの凝着量(凝着面積)を確保することが可能となる。また、本実施形態の端子付き電線2では、凝着量のバラツキが発生しにくい。その結果、本実施形態の端子付き電線2は、電気性能が向上するという効果を奏する。
以上説明したように、本実施形態の端子付き電線2は、電線50と、電線接続部12と、を有する。電線50は、芯線51の一部が露出している被覆電線である。電線接続部12は、底部14およびバレル片部15,16を有し、芯線51に対して圧着されている。第一バレル片部15および第二バレル片部16は、底部14における幅方向の端部から延出している片部である。
底部14において、芯線51に対して圧着された部分は、第一凸部42と、複数の第二凸部43と、を有する。第一凸部42は、底部14において、芯線51側に向けて突出しており、かつ芯線51の軸方向に沿った端面42aを有する。複数の第二凸部43は、端面42aから芯線51側に向けて突出している。
本実施形態の端子付き電線2は、第一凸部42の端面42aから複数の第二凸部43が突出している。複数の第二凸部43の両端には、それぞれエッジ部44が形成される。従って、本実施形態の端子付き電線2では、凝着摩耗の発生が促進され、電気性能が向上するという効果を奏する。
また、本実施形態の端子付き電線2において、複数の第二凸部43は、芯線51の軸方向に沿って間隔を空けて並んでいる。その結果、芯線51の軸方向に沿った互いに異なる位置にエッジ部44が配列される。よって、芯線51と凸部40との間における凝着摩耗の発生が促進される。また、芯線51の軸方向に沿って連続的に凝着摩耗が発生する。よって、端子付き電線2の電気性能が向上する。
本実施形態の端子付き電線2において、複数の第二凸部43は、先端凸部43aと、基端凸部43bと、を有する。先端凸部43aは、端面42aにおける芯線51の先端51a側に配置された第二凸部43である。基端凸部43bは、端面42aにおける芯線51の基端51b側に配置された第二凸部43である。言い換えると、基端凸部43bは、端面42aにおける先端凸部43a側とは反対側の端部に配置された第二凸部43である。
本実施形態において、複数の第二凸部43は、更に、先端凸部43aと基端凸部43bとの間に配置された中間凸部43cを有する。先端凸部43aと基端凸部43bとの間に中間凸部43cが配置されていることで、少なくとも六つのエッジ部44a,44bが形成される。多くのエッジ部44a,44bが形成されることで、端子付き電線2の電気性能が向上する。
本実施形態に係る端子付き電線の製造方法は、第一の凸部形成工程と、第二の凸部形成工程と、を含む。第一の凸部形成工程は、電線接続部12における電線50の芯線に対して圧着される面に第一凸部42を形成する工程である。第二の凸部形成工程は、芯線51に対して電線接続部12が圧着されるときに、第一凸部42の端面42aに芯線51側に向けて突出した複数の第二凸部43を形成する工程である。端面42aは、第一凸部42における芯線51の軸方向に沿った端面である。本実施形態の第二の凸部形成工程は、圧着工程の一部であり、第一金型112および第二金型113によって実行される。
本実施形態に係る端子付き電線の製造方法によれば、第一凸部42の端面42aに複数の第二凸部43が形成される。複数の第二凸部43の両端には、それぞれエッジ部44が形成される。従って、本実施形態に係る端子付き電線の製造方法は、端子付き電線2の電気性能を向上させるという効果を奏する。
本実施形態に係る端子圧着装置100は、第一金型112と、第二金型113と、を有する。第一金型112は、電線接続部12を支持する金型である。第二金型113は、第一金型112との間に電線接続部12および電線50を挟み込んで電線50の芯線51に対して電線接続部12を圧着させる金型である。
第一金型112における電線接続部12を支持する凹状面112A1は、上方に向けて突出した凸部115を有する。凸部115は、第一凸部116と、複数の第二凸部117と、を有する。第一凸部116は、凹状面112A1の延在する方向に沿った端面116aを有する。複数の第二凸部117は、端面116aから上方に向けて突出している。
本実施形態に係る端子圧着装置100は、電線接続部12に凸部40を形成することができる。凸部40は、第一金型112の第一凸部116に対応する第一凸部42、および第一金型112の第二凸部117に対応する複数の第二凸部43を有する。よって、本実施形態に係る端子圧着装置100は、芯線51と凸部40との間における凝着摩耗の発生を促進させ、端子付き電線2の電気性能を向上させることができる。
[実施形態の変形例]
実施形態の変形例について説明する。凸部115が有する第二凸部117の個数や、凸部40が有する第二凸部43の個数は、三つには限定されない。凸部115が有する第二凸部117の個数は、二つであっても、四つ以上であってもよい。凸部40に形成される第二凸部43の個数は、二つであっても、四つ以上であってもよい。
第二凸部117や第二凸部43の形状や配置は、例示した形状や配置には限定されない。長手方向Xに沿った断面における第二凸部117の形状は、円弧形状や多角形状であってもよい。第一方向Lに沿った断面における第二凸部43の形状は、円弧形状や多角形状であってもよい。
第一バレル片部15および第二バレル片部16において、芯線圧着部12Aと被覆圧着部12Bとが別体とされてもよい。すなわち、第一バレル片部15および第二バレル片部16には、連結圧着部12Cが設けられていなくてもよい。第一バレル片部15および第二バレル片部16は、所謂Bクリンプと称する加締めによって電線50に対して圧着されてもよい。例えば、第一バレル片部15および第二バレル片部16において、芯線圧着部12Aが芯線51に対してBクリンプによって加締められ、被覆圧着部12Bが被覆52の外周面に対して巻き付けられて圧着される。第一バレル片部15および第二バレル片部16において、芯線圧着部12Aと被覆圧着部12Bとが別体である場合、凸部40は、底部14における芯線圧着部12Aに対応する領域に形成される。
上記の実施形態および変形例に開示された内容は、適宜組み合わせて実行することができる。