以下に、本発明の実施形態に係る端子付き電線の製造方法、端子付き電線および端子圧着装置につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
[実施形態]
図1から図19を参照して、実施形態について説明する。本実施形態は、端子付き電線の製造方法、端子付き電線および端子圧着装置に関する。図1は、実施形態に係る圧着端子の圧着前の状態を示す斜視図、図2は、実施形態に係る圧着端子の圧着前の状態を示す側面図、図3は、実施形態に係る圧着端子の圧着後を示す斜視図、図4は、実施形態に係る圧着端子の圧着後を示す側面図、図5は、実施形態に係る圧着端子において、貼付工程が実行される前の状態を示す斜視図、図6は、実施形態に係る圧着端子において止水部材が貼付された状態を示す平面図、図7は、実施形態に係る第一および第二の金型を示す斜視図、図8は、実施形態に係る第二金型の正面図、図9は、実施形態に係る第二金型の拡大正面図、図10は、実施形態に係る第二金型の斜視図である。
図12には、図11のXII−XII断面が示されている。図14には、図11のXIV−XIV断面が示されている。
まず、本実施形態に係る圧着端子1について説明する。図1等に示す圧着端子1は、電線50に対して圧着される端子である。圧着端子1は、電線50と一体になった状態で相手側端子(図示略)に対して電気的に接続される。圧着対象の電線50は、端部の被覆52が取り除かれて芯線51が所定の長さ露出している。芯線51は、複数本の素線の集合体であってもよく、同軸ケーブルのような単線であってもよい。圧着端子1は、電線50の端部に圧着されることで、露出している芯線51に対して電気的に接続される。
圧着端子1は、端子金具10および止水部材20を有する。端子金具10は、圧着端子1の主体部分である。端子金具10は、母材としての導電性の金属板(例えば銅板、銅合金板)から形成される。端子金具10は、母材に対する打ち抜き加工や折り曲げ加工等により、相手側端子や電線50との接続が可能な所定の形状に形成される。端子金具10は、端子接続部11および電線接続部12を有する。端子接続部11は、相手側端子に対して電気的に接続される部分である。電線接続部12は、電線50に対して圧着される部分であり、芯線51に対して電気的に接続される。
端子接続部11と電線接続部12との間には、連結部13が設けられている。言い換えると、端子接続部11と電線接続部12とは連結部13を介して連結されている。連結部13は、端子接続部11の側壁11a,11aと、電線接続部12の側壁であるバレル片部15,16とを繋ぐ側壁13a,13aを有する。一方の側壁13aは、一方の側壁11aと第一バレル片部15とを繋ぎ、他方の側壁13aは、他方の側壁11aと第二バレル片部16とを繋ぐ。側壁13aの高さは、バレル片部15,16や側壁11aの高さよりも低くなっている。より詳しくは、側壁13aの高さは、端子接続部11から電線接続部12へ向かうに従って低くなっている。
端子金具10は、雄端子であっても雌端子であってもよい。端子接続部11は、端子金具10が雄端子である場合、雄型に成型され、端子金具10が雌端子である場合、雌型に成型される。
圧着端子1の説明において、相手側端子との接続方向、すなわち相手側端子との挿入方向を第一方向Lと称する。第一方向Lは、圧着端子1の長手方向である。圧着端子1の幅方向を第二方向Wと称する。圧着端子1において、第一方向Lおよび第二方向Wの何れとも直交する方向を第三方向Hと称する。第三方向Hは、圧着端子1の高さ方向である。電線接続部12は、後述するように、第三方向Hに沿って移動する第二金型113によって電線50に対して圧着される。
成型工程において、圧着端子1は、平板な板状に成型され、この状態から、端子接続部成形工程において、端子接続部11が図1に示すように筒状に形成される。端子接続部成形工程では、端子接続部11に対する折り曲げ加工等がなされる。本実施形態の端子接続部11は、断面形状が矩形の筒形状に形成される。電線接続部12は、電線接続部成形工程において、断面形状がU字状となるように成形される。電線接続部成形工程では、電線接続部12に対する折り曲げ加工等がなされる。また、電線接続部12には、貼付工程において、止水部材20が貼付けられる。貼付工程は、電線接続部成形工程よりも前に実行されても、電線接続部成形工程の後で実行されてもよい。
図1および図6に示すように、電線接続部12は、底部14、第一バレル片部15、および第二バレル片部16を有する。底部14は、U字状に形成された電線接続部12の底壁となる部位である。底部14には、圧着加工の際に電線50の端部が載置される。第一バレル片部15および第二バレル片部16は、U字状に形成された電線接続部12の側壁となる部位である。第一バレル片部15および第二バレル片部16は、底部14における第二方向Wの端部につながっている。図1に示すように、第一バレル片部15および第二バレル片部16は、底部14の幅方向の端部から、幅方向と交差する方向に向けて突出している。U字状に形成された電線接続部12では、底部14に電線50の端部が載置されると、第一バレル片部15および第二バレル片部16が第二方向Wの両側から電線50を囲む。
第一バレル片部15および第二バレル片部16は、底部14側の根元から先端15a,16aの端面までの長さが互いに等しくてもよく、一方の長さが他方の長さよりも長くてもよい。本実施形態の圧着端子1では、第一バレル片部15における根元から先端15aまでの長さよりも、第二バレル片部16における根元から先端16aまでの長さが長い。第一バレル片部15および第二バレル片部16は、例えば、互いに重なり合いながら電線50に対して巻き付けられる。本実施形態では、第一バレル片部15の外側に第二バレル片部16が重なる。
電線50の端部は、電線接続部12のU字の開口部、すなわち先端15a,16aの隙間からU字状の内側の空間に挿入される。電線接続部12は、電線50の端部が挿入されやすいように形成されている。具体的には、電線接続部12は、底部14側から先端15a,16aの端面へ向かうにつれて第一バレル片部15と第二バレル片部16との第二方向Wの間隔が広がっている。
第一バレル片部15および第二バレル片部16は、図2乃至図6に示すように、芯線圧着部12Aと被覆圧着部12Bとの間に連結圧着部12Cが介在している。第一バレル片部15および第二バレル片部16は、それぞれ圧着部12A,12C,12Bがこの順序で第一方向Lに沿って連続している一枚の片部である。
本実施形態では、第一方向Lにおいて、電線接続部12から見た端子接続部11側を「前側」と称し、端子接続部11から見た電線接続部12側を「後側」と称する。
芯線圧着部12Aは、電線50の先端の芯線51に対して圧着される部位である。芯線圧着部12Aは、各バレル片部15,16における最も連結部13寄りの部位である。つまり、芯線圧着部12Aは、電線接続部12における最も前側の部位である。被覆圧着部12Bは、被覆52の端部に対して圧着される部位である。被覆圧着部12Bは、各バレル片部15,16における最も後側に位置する部位である。連結圧着部12Cは、芯線圧着部12Aと被覆圧着部12Bとを繋ぐ部位である。連結圧着部12Cは、電線50における芯線51と被覆52との境界部分に対して圧着される。電線接続部12は、電線50に対して圧着されることで芯線51および被覆52を一体に覆う。電線接続部12が電線50に対して巻き付けられて圧着されることで、図3、4等に示す端子付き電線2が作成される。
図5および図6に示すように、電線接続部12の内壁面、すなわち電線50を覆う側の壁面には、セレーション領域17が設けられている。セレーション領域17は、芯線51を保持する芯線保持領域である。セレーション領域17は、電線接続部12の内壁面において、芯線51に対して巻き付けられる部分を含む領域である。セレーション領域17には、複数の凹部、複数の凸部、または凹部と凸部の組み合わせが配置される。凹部や凸部は、電線接続部12と芯線51との接触面積を増やし、両者の密着強度を高める。本実施形態のセレーション領域17は、矩形の領域であり、第一方向Lの互いに異なる位置に複数の凹部17aが形成されている。
ここで、芯線51と、芯線51に対して圧着された電線接続部12との間に水が浸入してしまうことは好ましくない。例えば、芯線51の金属材料と電線接続部12の金属材料とがイオン化傾向の大きさの異なるものである場合、腐食の可能性がある。一例として、芯線51の材料がアルミニウム、電線接続部12の材料が銅である場合、芯線51が腐食してしまう可能性がある。本実施形態の圧着端子1には止水部材20が設けられている。止水部材20は、電線接続部12と芯線51との間への水の浸入を抑制する。
止水部材20は、例えば、アクリル系粘着剤等の粘着剤を主とするシート状に形成された部材である。本実施形態の止水部材20としては、シート状の不織布に粘着剤を染み込ませて形成された粘着シートであって、両面に粘着効果を有するものが用いられる。
止水部材20は、例えば、図5に示す平板状の電線接続部12の内壁面に対して貼り付けられる。止水部材20は、図6に示すように、所定形状に形成されており、第一止水部21、第二止水部22、および第三止水部23を有する。第一止水部21は、圧着完了後に第一バレル片部15と第二バレル片部16とが重なり合う部分を止水する。つまり、第一止水部21は、互いに重なり合う第一バレル片部15と第二バレル片部16との間に挟み込まれてバレル片部15,16の間に止水領域を形成する。本実施形態の第一止水部21は、第二バレル片部16に配置されており、第一方向Lに沿って延在している。
第二止水部22は、芯線51の先端よりも端子接続部11側を止水する。第二止水部22は、電線接続部12における端子接続部11側の端部に配置されており、第二方向Wに沿って延在している。第二止水部22の少なくとも一部は、芯線51が載置される領域に設けられることが望ましい。第二止水部22は、例えば、重なり合うバレル片部15,16の間に挟み込まれることにより、バレル片部15,16の隙間に止水領域を形成する。第二止水部22は、圧着工程において互いに重なり合うことにより、芯線51の先端よりも端子接続部11側の隙間を塞ぐこともできる。第二止水部22は、電線接続部12と芯線51との間への端子接続部11側からの浸水を抑制する。
第三止水部23は、電線接続部12と被覆52との隙間からの水の浸入を抑制する。第三止水部23は、電線接続部12における端子接続部11側と反対側の端部に配置されており、第二方向Wに沿って延在している。第三止水部23は、被覆52と電線接続部12との間に挟み込まれることにより、被覆52と電線接続部12との間に止水領域を形成する。
以上示した端子金具10は、母材となる一枚の金属板に対するプレス工程を経て、図5に示す平板状の電線接続部12を有する形態に加工される。その後の貼付工程において、その平板状の電線接続部12に止水部材20が貼付される。しかる後、この端子金具10は、電線接続部成形工程においてU字状の電線接続部12が形成される。
圧着工程は、図7に示す第一金型112および第二金型113を有する端子圧着装置100によってなされる。端子圧着装置100は、この技術分野においてアプリケータと称される装置である。
第一金型112と第二金型113とは対をなしている。第一金型112と第二金型113とは上下方向において間隔をあけて配置されている。第一金型112および第二金型113は、図7に示すように圧着端子1および電線50を間に挟み込むことで、圧着端子1を電線50に対して圧着させる。第一金型112は、圧着端子1を下方から支持する金型である。第一金型112は、二つの下型が形成されたものであり、第一の下型としての第一アンビル112Aおよび第二の下型としての第二アンビル112Bを有する。第一アンビル112Aと第二アンビル112Bとは、例えば、一体に成形される。第二金型113は、第一金型112に対して上方に配置されている。第二金型113は、二つの上型が形成されたものであり、第一の上型としての第一クリンパ113Aおよび第二の上型としての第二クリンパ113Bを有する。端子圧着装置100は、第二金型113を第三方向Hに沿って上下動させる駆動装置を有する。
第一アンビル112Aと第一クリンパ113Aとは上下方向において互いに対向している。第一アンビル112Aおよび第一クリンパ113Aは、芯線圧着部12Aを圧着させる。すなわち、第一アンビル112Aおよび第一クリンパ113Aは、その相互間の間隔を狭めていくことにより、U字状の芯線圧着部12Aを電線50の芯線51に対して巻き付け、芯線51に圧着させる。
第二アンビル112Bと第二クリンパ113Bとは上下方向において互いに対向している。第二アンビル112Bおよび第二クリンパ113Bは、被覆圧着部12Bを圧着させる。すなわち、第二アンビル112Bおよび第二クリンパ113Bは、その相互間の間隔を狭めていくことによって、U字状の被覆圧着部12Bを被覆52に対して巻き付け、被覆52に圧着させる。
図7に示すように、第一アンビル112Aおよび第二アンビル112Bには、それぞれの上側の先端に、下方に向けて凹ませた凹状面112A1,112B1が形成されている。それぞれの凹状面112A1,112B1は、U字状の芯線圧着部12AとU字状の被覆圧着部12Bのそれぞれの底部14の形状に合わせて、断面形状が弧状となるように形成されている。端子圧着装置100において、それぞれの凹状面112A1,112B1が圧着位置となる。底部14を下側にして供給されてきた圧着端子1は、芯線圧着部12Aの底部14が第一アンビル112Aの凹状面112A1に載置され、被覆圧着部12Bの底部14が第二アンビル112Bの凹状面112B1に載置される。第一金型112は、凹状面112A1,112B1を上方に露出させた状態で端子圧着装置100の基台によって支持されている。
図7に示すように、第二金型113は、凹状の加締め部114を有する。加締め部114は、第二金型113の下面、すなわち第一金型112と対向する面に設けられている。加締め部114は、第一金型112から遠ざかる方向に向けて凹んだ溝部である。加締め部114は、芯線加締め部114Aおよび被覆加締め部114Bを有する。芯線加締め部114Aは、加締め部114において、第一クリンパ113Aに形成された部分である。芯線加締め部114Aは、第三方向Hにおいて第一アンビル112Aの凹状面112A1と対向している。
被覆加締め部114Bは、加締め部114において、第二クリンパ113Bに形成された部分である。被覆加締め部114Bは、第三方向Hにおいて第二アンビル112Bの凹状面112B1と対向している。
加締め部114は、第一壁面115、第二壁面116、および凹状壁面117を有する。第一壁面115および第二壁面116は、第三方向Hに沿って延在する壁面である。言い換えると、第一壁面115および第二壁面116は、第一金型112に対して第二金型113が相対移動する方向に沿って延在している。第一壁面115と第二壁面116とは、第二方向Wにおいて互いに対向している。第一壁面115は、第一バレル片部15を案内する。第二壁面116は、第二バレル片部16を案内する。
凹状壁面117は、第一壁面115と第二壁面116とをつないでいる。凹状壁面117は、第一金型112から遠ざかる方向に向けて凹んでいる。加締め部114は、第一壁面115、第二壁面116、および凹状壁面117を第一バレル片部15および第二バレル片部16に接触させつつ、第一バレル片部15および第二バレル片部16を電線50の端部に巻き付けながら加締めていく。
図8に示すように、第一壁面115および第二壁面116は、第三方向Hに沿って下方へ向かうに従って第二方向Wの間隔が広がっている。第一壁面115および第二壁面116は、それぞれ上部に平面部115U,116Uを有する。平面部115Uと平面部116Uとは、実質的に平行である。平面部115U,116Uは、実質的に第二方向Wと直交する面である。なお、平面部115U,116Uは、上方へ向かうに従って互いに近づくように、第三方向Hに対してわずかに傾斜していてもよい。平面部115U,116Uの上端は、凹状壁面117とつながっている。
図9乃至図11に示すように、凹状壁面117は、芯線側の壁面117Aおよび被覆側の壁面117Bを有する。芯線側の壁面117Aは、凹状壁面117における第一クリンパ113Aに形成された部分である。被覆側の壁面117Bは、凹状壁面117における第二クリンパ113Bに形成された部分である。芯線側の壁面117Aと被覆側の壁面117Bとは中間壁面117Cを介してつながっている。中間壁面117Cは、凹状壁面117における第一クリンパ113Aと第二クリンパ113Bとの境界部に形成された部分である。
被覆側の壁面117Bは、第一湾曲面117B1、第二湾曲面117B2、および平坦面117B3を有する。第一湾曲面117B1は、第一壁面115と連続している湾曲面である。第一湾曲面117B1は、第二壁面116側とは反対側に向けて凹状に湾曲している。第一湾曲面117B1は、第三方向Hに沿って上方へ向かうに従って徐々に第二壁面116側へ向かうように湾曲している。第一湾曲面117B1は、第一バレル片部15を案内しながら第一バレル片部15を折り曲げる。
第二湾曲面117B2は、第二壁面116と連続している湾曲面である。第二湾曲面117B2は、第一壁面115側とは反対側に向けて凹状に湾曲している。第二湾曲面117B2は、第三方向Hに沿って上方へ向かうに従って徐々に第一壁面115側へ向かうように湾曲している。第二湾曲面117B2は、第二バレル片部16を案内しながら第二バレル片部16を折り曲げる。
平坦面117B3は、第一金型112と対向する平面である。平坦面117B3は、第一湾曲面117B1と第二湾曲面117B2とをつないでいる。平坦面117B3は、第一湾曲面117B1および第二湾曲面117B2の端部と連続しており、かつ第一湾曲面117B1および第二湾曲面117B2と滑らかにつながっている。本実施形態の平坦面117B3は、第三方向Hと直交する面である。平坦面117B3は、被覆側の壁面117Bにおける第二方向Wの中央部に形成されている。
芯線側の壁面117Aは、第一湾曲面117A1および第二湾曲面117A2を有する。第一湾曲面117A1は、第一壁面115とつながっている。第二湾曲面117A2は、第二壁面116とつながっている。芯線側の壁面117Aにおいては、第一湾曲面117A1と第二湾曲面117A2とが連続している。つまり、芯線側の壁面117Aは、平坦面を有していない。
図12に示すように、中間壁面117Cは、第一湾曲面117C1、第二湾曲面117C2、および平坦面117C3を有する。第一湾曲面117C1は、第一壁面115とつながっている。第二湾曲面117C2は、第二壁面116とつながっている。平坦面117C3は、第一湾曲面117C1と第二湾曲面117C2とをつないでいる。平坦面117C3は、第一湾曲面117C1および第二湾曲面117C2の端部と連続しており、かつ第一湾曲面117C1および第二湾曲面117C2と滑らかにつながっている。中間壁面117Cにおいて、平坦面117C3の幅Wd1は、芯線側の壁面117Aへ向かうに従って狭くなる。平坦面117C3の幅Wd1は、被覆側の壁面117Bとの境界部において最も大きい。また、平坦面117C3の幅Wd1は、例えば、芯線側の壁面117Aとの境界部において0となる。なお、平坦面117C3の幅Wd1は、芯線側の壁面117Aとの境界部よりも第二クリンパ113B側において0となってもよい。
本実施形態の第二金型113では、図13を参照して説明するように、被覆加締め部114Bにおける第一湾曲面117B1および第二湾曲面117B2の曲率が、芯線加締め部114Aにおける第一湾曲面117A1および第二湾曲面117A2の曲率よりも小さい。図13に示すように、被覆加締め部114Bの第一湾曲面117B1の曲率は、芯線加締め部114Aの第一湾曲面117A1の曲率よりも小さい。言い換えると、第一湾曲面117B1の湾曲度合いは、第一湾曲面117A1の湾曲度合いよりも緩やかである。
具体的に説明すると、第一湾曲面117B1における高さ寸法HBに対する幅寸法WBの比率RtBは、第一湾曲面117A1における高さ寸法HAに対する幅寸法WAの比率RtAよりも小さい。比率RtB,RtAは、それぞれ下記式(1)、(2)で表される。
RtB=WB/HB…(1)
RtA=WA/HA…(2)
RtB<RtA…(3)
なお、本実施形態では、第一湾曲面117B1の形状と第二湾曲面117B2の形状とが対称である。つまり、本実施形態において、被覆側の壁面117Bの形状は、中心線C1に関して対称である。中心線C1は、加締め部114における第二方向Wの中心線である。また、第一湾曲面117A1の形状と第二湾曲面117A2の形状とが対称である。つまり、芯線側の壁面117Aの形状は、中心線C1に関して対称である。
本実施形態の第二金型113では、高さ寸法HBが高さ寸法HAよりも大きい。高さ寸法HBが大きくされることで、第一湾曲面117B1および第二湾曲面117B2が第三方向Hに沿って長く延在している。言い換えると、本実施形態では、第一バレル片部15および第二バレル片部16を折り曲げ始めるタイミングを早めるように、第一湾曲面117B1および第二湾曲面117B2が下方まで延長されている。従って、本実施形態の第二金型113によって圧着がなされる場合、被覆圧着部12Bのバレル片部15,16は、圧着工程におけるより早いタイミングで内側に向けて倒れ込み始める。言い換えるならば、被覆圧着部12Bのバレル片部15,16は、圧着工程において折れ曲がり始めてから被覆52に対する圧着が完了するまでの期間が長くなっている。高さ寸法HBは、例えば、高さ寸法HAのおよそ2倍の値とされる。
また、本実施形態の第二金型113では、被覆側の壁面117Bが平坦面117B3を有する。平坦面117B3は、第二バレル片部16が第一バレル片部15側へ向けて倒れるタイミングおよび倒れ込む速度を調整する。本実施形態の第二金型113は、以下に図14乃至図17を参照して説明するように、第一バレル片部15と第二バレル片部16との衝突を抑制することができる。
図14乃至図17は、図11のXIV−XIV断面に対応する位置の断面図である。図14には、圧着工程の初期の状態が示されている。圧着工程において、電線接続部12および電線50は、第一金型112に載置される。本実施形態では、圧着前の電線接続部12において、第一バレル片部15に屈曲部15bが設けられている。第一バレル片部15は、屈曲部15bにおいて第二バレル片部16側に向けて折れ曲がっている。屈曲部15bにおける折れ角は、圧着工程における第一バレル片部15の巻き込みがスムーズに進行するように定められている。第一バレル片部15は、例えば、屈曲部15bから先端15aへ向かうに従って第二バレル片部16側へ向かうように折れ曲がっている。屈曲部15bは、例えば、電線接続部成形工程において形成される。
図14では、第二バレル片部16の先端16aは第二湾曲面117B2に接触している。第二湾曲面117B2は、第二バレル片部16の先端16aを第一壁面115側に向けて押圧する。第二バレル片部16は、第二湾曲面117B2から受ける押圧力F1により、先端16aが第一壁面115へ近づくように折れ曲がる。第二バレル片部16は、例えば、図14に示すように長手方向の中央部において折れ曲がる。図14に示すように、第一壁面115は、第一バレル片部15の屈曲部15bに接触する。第一壁面115は、屈曲部15bと摺動しながら、屈曲部15bを第一湾曲面117B1に向けて案内する。
第二金型113が更に降下すると、図15に示すように、第一バレル片部15が第一湾曲面117B1と接触する。このように、本実施形態の第二金型113は、第二バレル片部16の先端16aが第二湾曲面117B2に沿って移動している間に第一バレル片部15が第一湾曲面117B1と接触するように構成されている。つまり、第一湾曲面117B1が第一バレル片部15の屈曲部15bに接触している期間と、第二湾曲面117B2が第二バレル片部16の先端16aに接触している期間とが重なる。
第一湾曲面117B1は、第一バレル片部15に対して第二壁面116側に向かう押圧力F2を加える。第一バレル片部15は、押圧力F2によって折れ曲がる。第一バレル片部15は、例えば、第一バレル片部15の全体が第二壁面116側へ倒れるようにして折れ曲がる。第二バレル片部16は、第二湾曲面117B2に沿って摺動しながら、第一壁面115側へ向けて更に倒れ込んでいく。第二バレル片部16の先端16a側の部分は、電線50に覆い被さるように傾斜していく。
第二金型113が更に降下すると、図16に示すように、第二バレル片部16の先端16aが平坦面117B3と接触する。平坦面117B3は、第二バレル片部16の先端16aを第二方向Wに沿って案内する。平坦面117B3は、先端16aを水平方向にスライド移動させる。ここで、本実施形態の平坦面117B3は、中心線C1よりも第一壁面115側まで延在している。従って、先端16aは、中心線C1を越えて第一壁面115側の領域に入ってからも第二方向Wに沿って水平移動する。その結果、少なくとも、先端16aが中心線C1を越えてからの第二バレル片部16の倒れ込みが抑制される。
つまり、本実施形態の平坦面117B3は、以下の第一から第三の機能のうち少なくとも一つを有する。第一の機能は、第二バレル片部16の傾斜角度θの変化を抑制する機能である。なお、傾斜角度θは、第二方向Wに対する第二バレル片部16の傾斜角度であり、例えば、第二バレル片部16の先端部分の傾斜角度である。第二の機能は、第二金型113の降下量に対する傾斜角度θの変化率を低減させる機能である。第三の機能は、第二バレル片部16の先端16aが水平方向又は斜め上方を向いている状態から斜め下方を向く状態に変化するタイミングを遅らせる機能である。
第二バレル片部16が平坦面117B3によって案内されている間に、第一バレル片部15は、第一湾曲面117B1によって第二壁面116側に向けて折り曲げられていく。
第二金型113が更に降下すると、図17に示すように、第一バレル片部15が第二バレル片部16と電線50との間に入り込む。第一湾曲面117B1は、前記第二バレル片部16の先端16aが平坦面117B3に沿って移動している間に、第一バレル片部15を第二壁面116側に向けて折り曲げ、第一バレル片部15の先端15aを第二バレル片部16と電線50との間に入り込ませる。第二バレル片部16の先端部分は、平坦面117B3によって案内されながら第一壁面115側に向けて進み、第一バレル片部15を上方から覆う。
第一バレル片部15は、第二バレル片部16と電線50との間に入り込み、電線50の被覆52に対して巻き付けられる。また、第二バレル片部16は、第一バレル片部15の外側に巻き付けられる。第二金型113が更に降下すると、第一バレル片部15および第二バレル片部16が電線50に対して圧着され、圧着工程が完了する。圧着工程によって圧着端子1が電線50に圧着され、図3および図4に示す端子付き電線2となる。
このように、本実施形態に係る第二金型113は、第二バレル片部16の先端16aを第一バレル片部15の先端15aよりも上方に位置付けたままで第一バレル片部15を倒れ込ませることができる。よって、本実施形態の第二金型113は、圧着工程において第一バレル片部15の先端15aと第二バレル片部16の先端16aとの衝突を生じにくくさせることができる。よって、本実施形態に係る第二金型113は、電線50に対するバレル片部15,16の巻き付け性を向上させることができる。本実施形態の端子付き電線の製造方法によれば、第一バレル片部15と第二バレル片部16との衝突による座屈やメッキ剥がれを抑制することができる。また、電線50に対するバレル片部15,16の巻き付け性が向上することで、端子付き電線2の性能、例えば固着性能や電気的抵抗性能が安定する。
図18および図19を参照して、本実施形態の端子付き電線2について説明する。図18は、実施形態に係る端子付き電線の斜視図、図19は、実施形態に係る端子付き電線の被覆圧着部の断面図である。図19には、図18のXIX−XIX断面が示されている。
図18および図19に示すように、本実施形態の端子付き電線2は、平坦部12Dを有する。平坦部12Dは、被覆圧着部12Bにおける頂部に形成される。言い換えると、平坦部12Dは、電線接続部12を軸方向視した場合に、電線50を挟んで底部14側とは反対側の端部に形成される。平坦部12Dは、第一方向Lに沿って被覆圧着部12Bの一端から他端まで延在する。
図19に示すように、平坦部12Dは、被覆圧着部12Bにおける第二方向Wの中央部に形成される。平坦部12Dの位置および幅は、被覆側の壁面117Bにおける平坦面117B3の位置および平坦面117B3の幅に対応している。被覆圧着部12Bに平坦部12Dが形成された端子付き電線2は、平坦面117B3を有する第二金型113によって電線50に圧着されたものである。従って、この端子付き電線2は、バレル片部15,16の巻き付け性を向上させた端子圧着装置100や端子付き電線の製造方法によって製造されたものである。
以上説明したように、本実施形態に係る端子付き電線の製造方法は、電線接続部成形工程、貼付工程、および圧着工程を含む。電線接続部成形工程は、断面形状がU字状となるように電線接続部12を成形し、かつ第一バレル片部15に屈曲部15bを成形する工程である。貼付工程は、電線接続部12に対して止水部材20を貼付する工程である。圧着工程は、電線50に対して、芯線51および被覆52を一体に覆うように第一バレル片部15および第二バレル片部16を巻き付けて圧着させる工程である。
圧着工程において、第一金型112が電線接続部12および電線50を支持する。第一金型112に対して相対移動する第二金型113が第一バレル片部15を芯線51および被覆52に対して巻き付け、かつ第二バレル片部16を第一バレル片部15の外側に巻き付ける。
第二金型113は、第一金型112と対向する凹状の加締め部114を有する。加締め部114は、第一壁面115、第二壁面116、および凹状壁面117を有する。第一壁面115および第二壁面116は、第一金型112と第二金型113との相対移動の方向に沿って延在している。第一壁面115は第一バレル片部15を案内し、第二壁面116は第二バレル片部16を案内する。凹状壁面117は、第一壁面115と第二壁面116とをつないでいる。
凹状壁面117は、第一バレル片部15を案内しながら第一バレル片部15を折り曲げる第一湾曲面117B1と、第二バレル片部16を案内しながら第二バレル片部16を折り曲げる第二湾曲面117B2と、平坦面117B3とを有する。平坦面117B3は、第一金型112と対向し、第一湾曲面117B1と第二湾曲面117B2とをつないでいる。
圧着工程において、第二バレル片部16の先端16aが平坦面117B3に沿って移動している間に、第一湾曲面117B1が第一バレル片部15を第二壁面116側に向けて折り曲げ、第一バレル片部15の先端15aを第二バレル片部16と電線50との間に入り込ませる。従って、本実施形態の第二金型113は、第一バレル片部15の先端15aと第二バレル片部16の先端16aとの衝突を生じにくくさせることができる。よって、本実施形態の端子付き電線の製造方法は、電線50に対するバレル片部15,16の巻き付け性を向上させることができる。
本実施形態の端子付き電線の製造方法において、加締め部114は、電線接続部12を芯線51に対して圧着させる芯線加締め部114A、および電線接続部12を被覆52に対して圧着させる被覆加締め部114Bを有する。被覆加締め部114Bにおける第一湾曲面117B1および第二湾曲面117B2の曲率は、芯線加締め部114Aにおける第一湾曲面117A1および第二湾曲面117A2の曲率よりも小さい。例えば、被覆加締め部114Bにおける高さ寸法HBが芯線加締め部114Aにおける高さ寸法HAよりも大きい。このような被覆加締め部114Bは、圧着工程において第一バレル片部15が第二壁面116側に倒れ込み始めるタイミングを早め、第一バレル片部15と第二バレル片部16との衝突を生じにくくさせることができる。
また、本実施形態の第二金型113において、被覆加締め部114Bは平坦面117B3を有し、芯線加締め部114Aは、平坦面を有していない。芯線側の壁面117Aでは、第一湾曲面117A1および第二湾曲面117A2が連続している。すなわち、二つの湾曲面117A1,117A2の境界部には平坦面が実質的に存在しない。本実施形態の第二金型113は、少なくとも被覆52に対する被覆圧着部12Bの巻き付け性を向上させることができる。
本実施形態の端子圧着装置100は、第一金型112と、第二金型113と、第一金型112と第二金型113とを第三方向Hに相対移動させる駆動装置と、を有する。第一金型112は、圧着端子1の電線接続部12を支持する金型である。第二金型113は、第一金型112との間に電線接続部12および電線50を挟み込み、電線接続部12の第一バレル片部15を電線50の芯線51および被覆52に対して一体に巻き付け、かつ電線接続部12の第二バレル片部16を第一バレル片部15の外側に巻き付ける金型である。
第二金型113は、第一金型112と対向する凹状の加締め部114を有する。加締め部114は、第一壁面115、第二壁面116、および凹状壁面117を有する。第一壁面115および第二壁面116は、第一金型112と第二金型113との相対移動の方向に沿って延在している。第一壁面115は第一バレル片部15を案内し、第二壁面116は第二バレル片部16を案内する。凹状壁面117は、第一壁面115と第二壁面116とをつないでいる。
凹状壁面117は、第一バレル片部15を案内しながら第一バレル片部15を折り曲げる第一湾曲面117B1と、第二バレル片部16を案内しながら第二バレル片部16を折り曲げる第二湾曲面117B2と、平坦面117B3とを有する。平坦面117B3は、第一金型112と対向し、第一湾曲面117B1と第二湾曲面117B2とをつないでいる。
第一湾曲面117B1の形状は、第二バレル片部16の先端16aが平坦面117B3に沿って移動している間に、第一バレル片部15を第二壁面116側に向けて折り曲げ、第一バレル片部15の先端15aを第二バレル片部16と電線50との間に入り込ませる形状である。よって、本実施形態の端子圧着装置100は、電線50に対するバレル片部15,16の巻き付け性を向上させることができる。
本実施形態の端子付き電線2は、芯線51の先端が被覆52から露出している電線50と、圧着端子1とを有する。圧着端子1は、電線接続部12を有し、芯線51および被覆52を一体に覆うように電線接続部12の第一バレル片部15および第二バレル片部16が巻き付けられて圧着されている。電線接続部12は、芯線51に対して圧着された芯線圧着部12Aおよび被覆52に対して圧着された被覆圧着部12Bを有する。被覆圧着部12Bの頂部には、電線50の軸方向に沿って延在する平坦部12Dが形成されている。
[実施形態の変形例]
実施形態の変形例について説明する。平坦面117B3が設けられる範囲は、上記実施形態に例示された範囲には限定されない。例えば、上記実施形態では被覆側の壁面117Bにおける第一方向Lの一端から他端まで平坦面117B3が延在している。これに変えて、平坦面117B3が被覆側の壁面117Bにおける第一方向Lの一部の範囲に設けられてもよい。
電線接続部12において、平坦部12Dが形成される範囲は、上記実施形態に例示された範囲には限定されない。例えば、上記実施形態では被覆圧着部12Bにおける第一方向Lの一端から他端まで平坦部12Dが延在している。これに代えて、平坦部12Dが被覆圧着部12Bにおける第一方向Lの一部の範囲に形成されてもよい。
第二方向Wに沿った平坦面117B3の幅は、一定でなくてもよい。例えば、第一方向Lの位置に応じて平坦面117B3の幅が異なっていてもよい。一例として、電線50に対するバレル片部15,16の巻き付けが先行して開始される部分では、他の部分と比較して平坦面117B3の幅が大きくされてもよい。例えば、被覆圧着部12Bにおいて、芯線圧着部12A側の端部において第一バレル片部15と第二バレル片部16とのラップが最初に開始されるとする。この場合、被覆側の壁面117Bにおける芯線側の壁面117A側の端部において平坦面117B3の幅が最大とされてもよい。
第二方向Wに沿った平坦部12Dの幅は、一定でなくてもよい。例えば、第一方向Lの位置に応じて平坦部12Dの幅が異なっていてもよい。一例として、電線50に対するバレル片部15,16の巻き付けが先行して開始される部分では、他の部分と比較して平坦部12Dの幅が大きくされてもよい。例えば、被覆圧着部12Bにおいて、芯線圧着部12A側の端部において第一バレル片部15と第二バレル片部16とのラップが最初に開始されるとする。この場合、被覆圧着部12Bにおける芯線圧着部12A側の端部において平坦部12Dの幅が最大とされてもよい。
上記の実施形態に開示された内容は、適宜組み合わせて実行することができる。