JP2019173186A - 炭素繊維用サイジング剤、該サイジング剤が結合した炭素繊維およびその製造方法、該炭素繊維を含む炭素繊維強化プラスチック - Google Patents

炭素繊維用サイジング剤、該サイジング剤が結合した炭素繊維およびその製造方法、該炭素繊維を含む炭素繊維強化プラスチック Download PDF

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Abstract

【課題】炭素繊維とマトリックス樹脂との密着性(界面せん断強度)を向上することができる、炭素繊維用サイジング剤を提供すること。【解決手段】ペルオキシ基を有するラジカル重合性単量体およびエポキシ基を有するラジカル重合性単量体を含む単量体混合物を重合して得られる共重合体を含有し、前記共重合体は、Fedors法にて算出したSP値が9.5〜13.5(cal/cm3)1/2であり、活性酸素量が0.25〜2.5重量%であり、エポキシ当量が150〜3,000g/eq.であり、重量平均分子量が10,000〜200,000である、炭素繊維用サイジング剤。【選択図】なし

Description

本発明は、炭素繊維用サイジング剤、該サイジング剤が結合した炭素繊維およびその製造方法、該炭素繊維を含む炭素繊維強化プラスチック、に関する。
一般的に、炭素繊維とマトリックス樹脂を含有する炭素繊維強化プラスチック(CFRP)は、構造材として用いられている鉄と比較して比強度が高いため、航空機や輸送用機械等の軽量化を目的に用いられている。一方で、CFRPの強度は、炭素繊維自体の強度から理論的に計算される強度と比較すると低い。これは、炭素繊維とマトリックス樹脂との密着性が低いことで、炭素繊維自体の特性が十分に反映されていないためである。
この課題に対して、炭素繊維として、エポキシ基等の反応性官能基を有する化合物を含むことで若干の表面処理の効果を有するサイジング剤(表面処理剤)を炭素繊維の表面に塗布したもの(サイジング剤が塗布された炭素繊維)を使用することが知られている(特許文献1〜3)。なお、一般的に、「表面処理」とは、材料表面に密着性向上に有効となる官能基等を結合させる処理を指し、「サイジング剤」とは、繊維束の集束、工程通過時の耐摩耗性付与、マトリックス樹脂の含浸性向上および高次加工性向上等を目的として繊維表面に塗布する薬剤のことを指す。
また、炭素繊維とマトリックス樹脂との密着性を高めるための炭素繊維の表面処理として、陽極電解酸化やオゾン酸化により、炭素繊維表面を酸化することで含酸素官能基を導入する表面処理が行われている(非特許文献1)。
更に、カーボンブラックや炭素繊維等の炭素材料の表面を、ポリマーで修飾(結合)する方法として、ペルオキシ基を有するポリマーを当該炭素材料の表面にグラフト化する方法が知られている(特許文献4、5)。
特開2015−28147号公報 特開2014−47283号公報 WO2011/093297号公報 「材料」(J. soc. Mat. sci., Japan), vol.46, No.2, pp. 163−169, Feb. 1997 特開平5−271365号公報 特開2005−163203号公報
しかし、上記の特許文献1〜3のような方法では、マトリックス樹脂が、炭素繊維の表面に存在するサイジング剤の反応性官能基と反応できることから、マトリックス樹脂とサイジング剤との密着性を向上させることができるが、炭素繊維の表面に存在する含酸素官能基(例えば、カルボキシル基等)の量が少なく、サイジング剤と炭素繊維との密着性が不十分となる問題があった。
また、上記の特許文献4、非特許文献1のような方法では、処理時間の増加に伴って炭素繊維表面への含酸素官能基の導入量は増加するものの、炭素繊維自体の強度が低下することから、含酸素官能基の導入量には限界がある。
あるいは、特許文献5,6のような方法では、一般的に炭素繊維はカーボンブラックよりも比表面積が小さいため、上記で開示されたペルオキシ基を有するポリマーは、炭素繊維に対する反応効率が低い問題や、当該ペルオキシ基を有するポリマーと炭素繊維との相溶性、および当該ペルオキシ基を有するポリマーとマトリックス樹脂との相溶性が考慮されていない問題により、当該炭素材料とマトリックス樹脂との密着性(界面せん断強度)が不十分であることが判明した。
以上のような事情に鑑み、本発明は、炭素繊維とマトリックス樹脂との密着性(界面せん断強度)を向上することができる炭素繊維用サイジング剤を提供することを目的とする。
すなわち、本発明は、ペルオキシ基を有するラジカル重合性単量体およびエポキシ基を有するラジカル重合性単量体を含む単量体混合物を重合して得られる共重合体を含有し、前記共重合体は、Fedors法にて算出したSP値が9.5〜13.5(cal/cm1/2であり、活性酸素量が0.25〜2.5重量%であり、エポキシ当量が150〜3,000g/eq.であり、重量平均分子量が10,000〜200,000である、炭素繊維用サイジング剤、に関する。
また、本発明は、前記炭素繊維用サイジング剤が炭素繊維に結合した、サイジング剤が結合した炭素繊維、に関する。
また、本発明は、前記サイジング剤が結合した炭素繊維およびマトリックス樹脂を含む、炭素繊維強化プラスチック、に関する。
さらに、本発明は、前記サイジング剤が結合した炭素繊維の製造方法であって、前記炭素繊維用サイジング剤を前記炭素繊維に塗布して、サイジング剤が塗布された炭素繊維を製造する工程と、得られたサイジング剤が塗布された炭素繊維を加熱処理して、前記サイジング剤と前記炭素繊維を結合させる工程を含む、サイジング剤が結合した炭素繊維の製造方法、に関する。
本発明の炭素繊維用サイジング剤における効果の作用メカニズムの詳細は不明な部分があるが、以下のように推定される。ただし、本発明は、この作用メカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
本発明の炭素繊維用サイジング剤は、ペルオキシ基を有するラジカル重合性単量体およびエポキシ基を有するラジカル重合性単量体を含む単量体混合物を重合して得られる共重合体を含有し、前記共重合体は、Fedors法にて算出したSP値が9.5〜13.5(cal/cm1/2であり、活性酸素量が0.25〜2.5重量%であり、エポキシ当量が150〜3,000g/eq.であり、重量平均分子量が10,000〜200,000である。前記共重合体が有するペルオキシ基は、その分解により生成したラジカルが炭素繊維の表面に存在する多環縮合芳香環に対して、付加反応を生じさせるため、本発明の炭素繊維用サイジング剤は、炭素繊維に化学結合できるものと推定される。また、前記共重合体が有するエポキシ基は、マトリックス樹脂に存在するエポキシ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、エステル基等の極性官能基と反応できるため、本発明の炭素繊維用サイジング剤は、マトリックス樹脂に化学結合できるものと推定される。
また、前記共重合体は、上記の特定のSP値を有するため、共重合体と炭素繊維との親和性や、炭素繊維に結合した共重合体とマトリックス樹脂との親和性を高めることができること、さらに、前記共重合体は、上記の特定の、活性酸素量、エポキシ当量、および重量平均分子量を有するため、炭素繊維やマトリックス樹脂に対して、効率よく上記の化学結合を進行させることができることから、共重合体と炭素繊維との密着性、および炭素繊維に結合した共重合体とマトリックス樹脂との密着性を向上させることができるものと推定される。その結果、本発明の炭素繊維用サイジング剤は、炭素繊維とマトリックス樹脂との密着性(界面せん断強度)を向上することができる。
よって、本発明の炭素繊維用サイジング剤は、サイジング剤が本来有する集束性等の機能に加えて、炭素繊維の表面処理により炭素繊維とマトリックス樹脂との密着性(界面せん断強度)を向上する機能を併せ持つ。
本発明の炭素繊維用サイジング剤は、少なくとも、ペルオキシ基を有するラジカル重合性単量体およびエポキシ基を有するラジカル重合性単量体を含む単量体混合物を重合して得られる共重合体を含有する。
<ペルオキシ基を有するラジカル重合性単量体>
前記ペルオキシ基を有するラジカル重合性単量体は、分子内にペルオキシ基およびエチレン性不飽和基を有する単量体であれば、その種類に特に制限はなく使用でき、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。前記ペルオキシ基を有するラジカル重合性単量体は、共重合体を保管する際の保存安定性の向上と、炭素繊維の表面に結合させる際のラジカル発生効率の向上を両立する観点から、ペルオキシカーボネート基を有するラジカル重合性単量体を用いることが好ましく、下記一般式(1)および/または下記一般式(2)で表される単量体を用いることがより好ましい。
Figure 2019173186
(式(1)中、Rは水素原子またはメチル基、Rは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、RおよびRは独立して炭素数1〜4のアルキル基、Rは炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基、アルキル置換フェニル基、または炭素数3〜12のシクロアルキル基を示し、nは1または2である。)
Figure 2019173186
(式(2)中、Rは水素原子またはメチル基、Rは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、RおよびRは独立して炭素数1〜4のアルキル基、R10は炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基、アルキル置換フェニル基、または炭素数3〜12のシクロアルキル基を示し、mは1または2である。)
前記一般式(1)で表される単量体は、ペルオキシ基の分解に伴うラジカルの生成とそれに続くラジカルの水素引抜反応により生成するアルコール等の揮発性有機化合物が共重合体内部に残存すると、炭素繊維強化プラスチックを作製する際にボイドとなり強度低下を招く可能性があり、生成する揮発性有機化合物の沸点を低下させる観点から、RおよびRは、メチル基であることが好ましく、また、Rは、メチル基であることが好ましい。前記一般式(2)で表される単量体も同様に、ペルオキシ基の分解に伴うラジカルの生成とそれに続くラジカルの水素引抜反応により生成するアルコール等の揮発性有機化合物が共重合体内部に残存すると、炭素繊維強化プラスチックを作製する際にボイドとなり強度低下を招く可能性があり、生成する揮発性有機化合物の沸点を低下させる観点から、RおよびRは、メチル基であることが好ましく、また、R10は、メチル基であることが好ましい。
前記一般式(1)で表される単量体としては、例えば、t−ブチルペルオキシ(メタ)アクリロイロキシエチルカーボネート、t−アミルペルオキシ(メタ)アクリロイロキシエチルカーボネート、t−ヘキシルペルオキシ(メタ)アクリロイロキシエチルカーボネート、t−ブチルペルオキシ(メタ)アクリロイロキシエトキシエチルカーボネート、t−ヘキシルペルオキシ(メタ)アクリロイロキシエトキシエチルカーボネート等が挙げられる。なお、t−ブチルペルオキシ(メタ)アクリロイロキシエチルカーボネートは、t−ブチルペルオキシアクリロイロキシエチルカーボネート、および/またはt−ブチルペルオキシメタクリロイロキシエチルカーボネートを示し、本発明における「(メタ)」は同様の意味である。
前記一般式(2)で表される単量体としては、例えば、t−ブチルペルオキシ(メタ)アリルカーボネート、t−アミルペルオキシ(メタ)アリルカーボネート、t−ヘキシルペルオキシ(メタ)アリルカーボネート等が挙げられる。
<エポキシ基を有するラジカル重合性単量体>
前記エポキシ基を有するラジカル重合性単量体は、分子内にエポキシ基およびエチレン性不飽和基を有する単量体であれば、その種類に特に制限はなく使用でき、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。前記エポキシ基を有するラジカル重合性単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、マレイン酸ジグリシジル、イタコン酸ジグリシジル、アリルコハク酸ジグリシジル、p−スチレンカルボン酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、メタアリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル、p−グリシジルスチレン、3,4−エポキシ−1−ブテン、3,4−エポキシ−3−メチル−1−ブテン、ビニルシクロヘキセンモノオキシド等が挙げられる。
<その他のラジカル重合性単量体>
前記単量体混合物には、前記ペルオキシ基を有するラジカル重合性単量体および前記エポキシ基を有するラジカル重合性単量体以外のラジカル重合性単量体(以下、その他のラジカル重合性単量体ともいう)を用いることができる。前記その他のラジカル重合性単量体は、分子内にエチレン性不飽和基を有するものであり、かつ得られる共重合体のFedors法にて算出したSP値が9.5〜13.5(cal/cm1/2であり、活性酸素量が0.25〜2.5重量%であり、エポキシ当量が150〜3,000g/eq.であり、重量平均分子量が10,000〜200,000である範囲を満たす限り、その種類に特に制限なく使用でき、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。ただし、前記ペルオキシ基を有するラジカル重合性単量体におけるペルオキシ基は、アミノ基の存在下で分解する可能性があるため、前記その他のラジカル重合性単量体としては、第一級アミノ基、第二級アミノ基、第三級アミノ基を有するラジカル重合性単量体は使用しないことが好ましい。
前記その他のラジカル重合性単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレ−ト、2−エチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と脂環族アルコールとのエステル化合物;メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、(2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチル(メタ)アクリレート、(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート等の鎖状または環状のエーテル結合を有する単量体;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等のアリール(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン等の(メタ)アクリルアミド系単量体;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体;メチルビニルエーテル等のビニルエーテル系単量体;酢酸ビニル等のビニルエステル系単量体;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル系単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基を有する単量体;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸等のカルボキシル基を有する単量体;スチレンスルホン酸ナトリウム、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム、N,N,N−トリメチルアミノエチル(メタ)アクリレートクロライド2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のイオン性官能基を有する単量体等が挙げられる。これらの中でも、炭素繊維とマトリックス樹脂の双方との結合形成反応を効率的に進行させる上で、炭素繊維とマトリックス樹脂の双方との親和性を確保する観点から、(メタ)アクリル酸と脂環族アルコールとのエステル化合物、スチレン系単量体、鎖状または環状のエーテル結合を有する単量体を用いることが好ましい。
また、前記その他のラジカル重合性単量体は、炭素繊維とマトリックス樹脂の双方との親和性を確保する観点から、SP値が9.8〜12.0程度であるものを使用することが好ましく、10.0〜11.0程度であるものを使用することがより好ましい。
<共重合体>
本発明の共重合体は、Fedors法にて算出したSP値が9.5〜13.5(cal/cm1/2であり、活性酸素量が0.25〜2.5重量%であり、エポキシ当量が150〜3,000g/eq.であり、重量平均分子量が10,000〜200,000である。
前記共重合体は、炭素繊維に結合した共重合体とマトリックス樹脂との親和性を高め、共重合体とマトリックス樹脂との密着性を向上させる観点から、Fedors法にて算出したSP(溶解度パラメータ)値が、9.8(cal/cm1/2以上であることが好ましく、そして、共重合体と炭素繊維との親和性を高める観点から、Fedors法にて算出したSP値が、12.0(cal/cm1/2以下であることが好ましく、11.0(cal/cm1/2以下であることがより好ましい。前記Fedors法は、R.F.Fedors,Polymer Engineering and Science,14,147−154(1974)に記載の以下の式に基づく。なお、前記共重合体のSP値は、前記単量体混合物中に含まれる全ての単量体が重合したものとみなし、当該単量体混合物に含まれる単量体の仕込み比率に基づいて算出される。
δ(SP値)〔単位:(cal/cm1/2〕=(ΣΔei/ΣΔvi)1/2
[ここで、Δei:原子及び原子団の蒸発エネルギー(cal/mol)、Δvi:モル体積(cm/mol)である。]
前記共重合体は、共重合体と炭素繊維との反応を効率的に進行させ、炭素繊維上の共重合体量を高める観点から、活性酸素量が、0.3重量%以上であることが好ましく、そして、共重合体と炭素繊維とを結合させる際に生じてしまう共重合体間での過度な架橋反応は、マトリックス樹脂が共重合体内部に進入することが困難となる結果、共重合体とマトリックス樹脂との密着性が不十分となるおそれがある観点から、活性酸素量が、2.0重量%以下であることが好ましく、1.0重量%以下であることがより好ましい。なお、前記活性酸素量とは、1分子当たりの過酸化結合量を示す数値であり、ヨードメトリーによる酸化還元滴定(滴定液が0.1Nチオ硫酸ナトリウム水溶液)により測定できる。
前記共重合体は、共重合体を構成するペルオキシ基を有するラジカル重合性単量体の割合を高めて、共重合体と炭素繊維との密着性を向上させる観点から、エポキシ当量が、150g/eq.以上であることが好ましく、そして、炭素繊維に結合した共重合体とマトリックス樹脂との密着性を向上させる観点から、エポキシ当量が、2,000g/eq.以下であることが好ましく、1,000g/eq.以下であることがより好ましい。なお、前記エポキシ当量は、JIS K−7236記載の指示薬滴定法に準じて測定できる。この場合、クロロホルムに対する溶解性の低い共重合体については、クロロホルムの代わりに当該共重合体の溶解性の高い溶剤(例えば、メタノール、イソプロパノール、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド等)を用いることができる。
前記共重合体は、共重合体1分子当たりのペルオキシ基の量を増やして、共重合体と炭素繊維との反応効率を高める観点から、重量平均分子量が、20,000以上であることが好ましく、30,000以上であることがより好ましく、そして、共重合体と炭素繊維とを結合させる際に共重合体間での過度な架橋反応を抑制し、炭素繊維に結合した共重合体とマトリックス樹脂との密着性を向上させる観点から、重量平均分子量が、150,000以下であることが好ましく、100,000以下であることがより好ましい。前記重量平均分子量は、以下の条件下、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定できる。測定条件は、測定装置がHLC−8320GPC(東ソー社製)、カラムがTSKgel SuperMultiporeHZ−M(東ソー社製)、カラム温度が40℃、溶媒がテトラヒドロフラン、流速が0.35mL/分、検出器がRI、試料濃度が0.2%、試料注入量が10μL、標準物質がポリスチレンである。なお、テトラヒドロフランへの溶解性が低い共重合体については、ジメチルホルムアミドを使用する。
また、前記共重合体の構造としては、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体およびグラフト共重合体のいずれの構造であってもよいが、工業的な生産性の容易さの観点から、ランダム共重合体が好ましい。
また、本発明の共重合体は、上記の特定の、SP値、活性酸素量、およびエポキシ当量を、前記単量体混合物に含まれる単量体成分およびその配合量によっても制御でき得る。
前記ペルオキシ基を有するラジカル重合性単量体の割合は、前記単量体混合物に含まれる全ての単量体成分中、2重量%以上であることが好ましく、5重量%以上であることがより好ましく、10重量%以上であることがさらに好ましく、そして、50重量%以下であることが好ましく、30重量%以下であることがより好ましく、20重量%以下であることがさらに好ましい。
前記エポキシ基を有するラジカル重合性単量体の割合は、前記単量体混合物に含まれる全ての単量体成分中、10重量%以上であることが好ましく、15重量%以上であることがより好ましく、20重量%以上であることがさらに好ましく、そして、95重量%以下であることが好ましく、80重量%以下であることがより好ましく、60重量%以下であることがさらに好ましく、40重量%以下であることがよりさらに好ましい。
前記ペルオキシ基を有するラジカル重合性単量体および前記エポキシ基を有するラジカル重合性単量体の合計の割合は、前記単量体混合物に含まれる全ての単量体成分中、10重量%以上であることが好ましく、20重量%以上であることがより好ましく、30重量%以上であることがさらに好ましい。
また、前記その他のラジカル重合性単量体を用いる場合、前記その他のラジカル重合性単量体の割合は、前記単量体混合物に含まれる全ての単量体成分中、30重量%以上であることが好ましく、40重量%以上であることがより好ましく、50重量%以上であることがさらに好ましく、そして、90重量%以下であることが好ましく、80重量%以下であることがより好ましい。
<共重合体の製造方法>
前記共重合体は、少なくとも、前記ペルオキシ基を有するラジカル重合性単量体および前記エポキシ基を有するラジカル重合性単量体を含む単量体混合物を重合して得られる。前記重合の方法は、工業的な生産性の容易さの観点から、ラジカル重合法を用いればよく、前記ラジカル重合法としては、懸濁重合法、溶液重合法、分散重合法、乳化重合法、沈殿重合法、塊状重合法等が挙げられる。
前記ラジカル重合法における開始剤(重合開始剤)としては、一般的に使用される有機過酸化物、アゾ化合物等を使用することができる。前記重合開始剤は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
前記重合開始剤は、重合開始剤の急激な分解を抑制し、重合開始剤や前記単量体の残存を抑制する観点から、10時間半減期温度(以下、T10とも称す)が、40℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましく、そして、90℃以下であることが好ましく、80℃以下であることがより好ましく、70℃以下であることがさらに好ましい。
前記重合開始剤としては、例えば、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート(T10=51℃)、t−ヘキシルパーオキシピバレート(T10=53℃)、t−ブチルパーオキシピバレート(T10=55℃)、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド(T10=59℃)、ジラウロイルパーオキサイド(T10=62℃)、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(T10=65℃)、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン(T10=66℃)、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキシルヘキサノエート(T10=70℃)、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキサイド(T10=71℃)、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(T10=72℃)、ベンゾイルパーオキサイド(T10=74℃)、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(T10=95℃)、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート(T10=97℃)、t−ブチルパーオキシラウレート(T10=98℃)、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(T10=99℃)、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート(T10=99℃)、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート(T10=99℃)、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン(T10=100℃)、t−ブチルパーオキシアセテート(T10=102℃)、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタン(T10=103℃)、t−ブチルパーオキシベンゾエート(T10=104℃)、n−ブチル−4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレレート(T10=105℃)、ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(T10=119℃)、ジクミルパーオキサイド(T10=116℃)、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド(T10=116℃)、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(T10=118℃)、t−ブチルクミルパーオキサイド(T10=120℃)、ジ−t−ブチルパーオキサイド(T10=124℃)等の有機過酸化物;2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(T10=51℃)、2,2−アゾビス(イソブチロニトリル)(T10=65℃)、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(T10=67℃)等のアゾ系重合開始剤等が挙げられる。
前記重合開始剤の使用量は、前記単量体混合物100重量部に対して、0.01〜10重量部程度である。
また、前記重合では、重合溶媒を使用することが好ましい。前記重合溶媒は、前記単量体成分を重合できるものであれば、その種類に特に制限はなく使用でき、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。前記重合溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、n−ブタノール、イソブタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸t−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル等のエステル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコール系溶媒;ホルムアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒等が挙げられる。
前記重合における反応温度は、重合時のペルオキシ基を有するラジカル重合性単量体中のペルオキシ基の分解を抑制する観点から、ペルオキシ基を有するラジカル重合性単量体中のペルオキシ基の10時間半減期温度(T10)よりも10℃以上低い温度に設定することが好ましく、20℃以上低い温度に設定することがより好ましい。また、前記重合における反応時間は、使用する単量体や反応温度等によって異なるので一概に決定できないが、通常、4時間以上12時間以下程度である。
<炭素繊維用サイジング剤>
本発明の炭素繊維用サイジング剤は、前記共重合体を含み、さらに、当該サイジング剤の塗装性を向上させる観点から、溶媒を含むことが好ましい。前記溶媒は、共重合体を溶解、分散等できるものであれば、その種類に特に制限はなく使用でき、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。前記溶媒としては、例えば、上述した重合溶媒が挙げられる。
前記炭素繊維用サイジング剤の製造は、例えば、重合後に得られた共重合体の溶液(共重合体と重合溶媒を含む溶液)をそのまま用いてもよく、あるいは、重合後に得られた共重合体の溶液に対して、再沈殿や遠心分離等を行って分離した共重合体に、前記溶媒を混合してもよい。また、前記共重合体を、前記重合溶媒あるいは前記溶媒に分散することが困難な場合、前記共重合体と前記溶媒を含む混合物に界面活性剤、乳化剤等を添加してもよく、また、当該混合物を各種分散機によって分散処理を行ってもよい。
また、前記炭素繊維用サイジング剤には、サイジング剤の取扱性向上やサイジング剤の機能である、繊維束の集束、工程通過時の摩擦による炭素繊維の糸切れや毛羽立ち等の防止、マトリックス樹脂の含浸性向上および高次加工性向上等の目的で、例えば、レオロジーコントロール剤、pH調整剤、防腐剤、分散安定剤、エポキシ化合物、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエチレングリコール、ポリウレタン、ポリエステル等を加えることができる。
<サイジング剤が結合した炭素繊維>
本発明のサイジング剤が結合した炭素繊維は、前記炭素繊維用サイジング剤が炭素繊維に結合したものである。
前記炭素繊維は、その種類に制限はなく使用でき、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。前記炭素繊維としては、例えば、PAN系、ピッチ系、その他の繊維を前駆体とした炭素繊維が挙げられる。前記炭素繊維は、単繊維が、直径0.5〜20μmであることが好ましく、1〜10μmであることがより好ましい。前記炭素繊維の形態としては、例えば、チョップドストランド、ストランド、織物、不織布等を用いることができる。
また、前記炭素繊維は、前記炭素繊維の表面の含酸素官能基の種類および量、予め表面処理剤で処理されたものについても特に制限はなく使用できるが、前記共重合体が有するペルオキシ基の分解により生成したラジカルが、炭素繊維の表面に存在する多環縮合芳香環に対する付加反応を生じさせる観点から、炭素繊維の表面に、多環縮合芳香環を有することが好ましい。
<サイジング剤が結合した炭素繊維の製造方法>
本発明のサイジング剤が結合した炭素繊維の製造方法は、前記炭素繊維用サイジング剤を前記炭素繊維に塗布して、サイジング剤が塗布された炭素繊維を製造する工程と、得られたサイジング剤が塗布された炭素繊維を加熱処理して、前記サイジング剤と前記炭素繊維を結合させる工程を含む。
前記サイジング剤が塗布された炭素繊維を製造する工程において、前記塗布の方法は、例えば、ディップ、ローラー・刷毛等、スプレー等の塗布方法が挙げられる。
前記サイジング剤が塗布された炭素繊維において、加熱処理による炭素繊維に結合する共重合体の量を高める観点から、炭素繊維に対するサイジング剤の付着量は、炭素繊維100重量部に対して、0.1重量部以上であることが好ましく、0.5重量部以上であることがより好ましく、1重量部以上であることがさらに好ましく、そして、工程中での炭素繊維の取り回し性を向上させる観点から、炭素繊維に対するサイジング剤の付着量は、炭素繊維100重量部に対して、20重量部以下であることが好ましく、10重量部以下であることがより好ましく、5重量部以下であることがさらに好ましい。
また、前記サイジング剤と前記炭素繊維を結合させる工程において、前記加熱処理の方法は、例えば、熱源を用いる方法、マイクロ波等の電磁波を用いる方法等が挙げられる。サイジング剤が塗布された炭素繊維を加熱処理することで、共重合体が溶融し、かつペルオキシ基からラジカルが発生することにより、共重合体を炭素繊維上に効率よく結合させることができる。前記加熱処理において、処理温度および処理時間等の条件に特に制限はなく、共重合体の溶融粘度、ラジカル発生速度、要求される生産速度に応じて、適宜選択することができる。
前記サイジング剤が結合した炭素繊維において、炭素繊維に結合した共重合体とマトリックス樹脂との密着性を向上させる観点から、炭素繊維に対するサイジング剤の結合量は、炭素繊維100重量部に対して、0.01重量部以上であることが好ましく、0.03重量部以上であることがより好ましく、0.1重量部以上であることがさらに好ましく、そして、共重合体が過剰に結合すると、前記炭素繊維を結合させる工程において副生するアルコール等の揮発性有機化合物が共重合体の内部に残存し、炭素繊維強化プラスチックを作製する際にボイドの原因となる可能性が高まる観点から、炭素繊維に対するサイジング剤の結合量は、炭素繊維100重量部に対して、2.0重量部以下であることが好ましく、1.0重量部以下であることがより好ましく、0.5重量部以下であることがさらに好ましい。
なお、前記サイジング剤が結合した炭素繊維の製造方法では、必要に応じ、ローラーや気流等による過剰なサイジング剤を除去する工程、加熱乾燥や減圧による溶媒を蒸発する工程等を設けることができる。
<炭素繊維強化プラスチック>
本発明の炭素繊維強化プラスチック(CFRP)は、少なくとも、前記サイジング剤が結合した炭素繊維およびマトリックス樹脂を含む。
前記マトリックス樹脂は、公知のCFRPに使用される熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂であればよく、好ましくは、共重合体に存在するエポキシ基と反応可能な、例えば、エポキシ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、エステル基等の極性官能基を有するマトリックス樹脂である。前記マトリックス樹脂は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
前記熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂や不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。特に、共重合体中のエポキシ基との反応性が高い観点より、エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
前記熱可塑性樹脂は、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリーレンオキシド樹脂、ポリアリーレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。特に、共重合体中のエポキシ基との反応性が高く、成型温度が共重合体の耐熱温度よりも低い観点より、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂を用いることが好ましい。
また、前記マトリックス樹脂は、炭素繊維に結合した共重合体の親和性を高め、マトリックス樹脂と共重合体間の結合を形成させる観点から、SP値が9.0〜13.5程度であるものを使用することが好ましく、10.0〜12.5程度であるものを使用することがより好ましい。
炭素繊維強化プラスチックは、例えば、前記サイジング剤が結合した炭素繊維(炭素繊維束を含む)と前記マトリックス樹脂を混合し、得られた混合物を金型内で射出成形することにより得ることができる。また、前記炭素繊維強化プラスチックは、前記マトリックス樹脂のフィルムによって前記サイジング剤が結合した炭素繊維を挟んで溶融成形して得てもよい。
前記混合の方法は、前記サイジング剤が結合した炭素繊維と前記マトリックス樹脂を均一に混合できる公知の方法を用いることができ、例えば、一軸押出機、二軸押出機、プレス機、高速ミキサー、射出成形機、引抜成形機等が挙げられる。
また、前記射出成形する方法は、その成形方法に特に制限はなく、例えば、プレス成形法、射出成形法、RTM法、オートクレーブ法、フィラメントワインディング法等が挙げられる。
前記サイジング剤が結合した炭素繊維と前記マトリックス樹脂との混合割合は特に制限はなく、例えば、前記サイジング剤が結合した炭素繊維は、マトリックス樹脂100重量部に対して、35〜45重量部程度、65〜75重量部程度が例示できる。
なお、前記混合物には、必要に応じて、他の公知の添加剤を併用することも可能である。前記添加剤としては、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候剤、離型剤、滑剤、顔料、染料、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤、強化材等が挙げられる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
<実施例1>
<共重合体の製造>
500mLセパラブルフラスコに、スチレン140g、グリシジルメタクリレート40g、およびt−ブチルペルオキシメタクリロイロキシエチルカーボネート20gを含む単量体混合物と、2,2−アゾビス(イソブチロニトリル)5.6gと、トルエン200gを加えて混合し、窒素雰囲気下、80℃で8時間攪拌しながら重合を行い、共重合体の溶液を製造した。得られた共重合体の溶液を、メタノールで再沈殿して乾燥することで、白色粉末の共重合体を得た。得られた共重合体について、上述した測定方法に基づいて分析した結果、Mwが56,000、活性酸素量が0.44重量%、エポキシ当量が682g/eq.であった。なお、前記単量体混合物に含まれる単量体の仕込み比率に基づいて算出される共重合体のSP値は、10.3(cal/cm1/2であった。
<サイジング剤の調製およびサイジング剤が結合した炭素繊維の製造>
上記で得られた共重合体4gとアセトン196gを混合してサイジング剤を調製した。アセトンを溶媒としてソックスレー抽出を4時間行い、60℃で1時間乾燥することで、元々付着している表面処理剤を除去した炭素繊維フィラメント(T700SC 12000 東レ社製)を、前記サイジング剤に浸漬した後、サイジング剤から引き上げ、60℃で4時間の真空乾燥を実施した。真空乾燥後において、上記の表面処理剤を除去した後の炭素繊維100gに対する共重合体の付着量は、1.04gであった。次いで、真空乾燥後の炭素繊維を、強制対流式加熱炉を用いて、160℃で10分間の加熱処理を行った後、未反応の共重合体を除去するため、得られた加熱処理後の炭素繊維をアセトンを溶媒としてソックスレー抽出を4時間行い、60℃で4時間乾燥し、サイジング剤が結合した炭素繊維を製造した。得られたサイジング剤が結合した炭素繊維において、上記の表面処理剤を除去した後の炭素繊維100gに対するサイジング剤の結合量は、0.045gであった。
<密着性(界面せん断強度)の評価>
密着性(界面せん断強度)の評価はフラグメンテーション法に基づき、式(1)より算出した。結果を表1に示す。
界面せん断強度(MPa)=単繊維の直径(μm)×臨界繊維長における繊維引張強度(MPa)/(2×臨界繊維長(μm))・・・式(1)
前記単繊維の直径(μm)は、JIS R7607の炭素繊維直径測定D法に準じて測定し、式(2)より算出した。試験は50回行い、ヘリウムネオンレーザー光の波長は0.632μm、単繊維−スクリーン間の距離は750mmとした。
単繊維の直径(μm)=2×単繊維とスクリーン間の距離(mm)×ヘリウムネオンレーザー光の波長(μm)÷スクリーン上の回折像間の距離(mm)・・・式(2)
前記臨界繊維長における繊維引張強度(MPa)は、繊維の引張強度がワイブル分布に従うと仮定して、式(3)より算出した。なお、尺度パラメーターおよび形状パラメーターは、単繊維引張試験から得られる引張強度よりワイブルプロットを作成し、現れる直線の傾き、切片より算出し、参照繊維長は1,000,000μmとした。単繊維の引張強度はJIS R7606に準じて測定し、試験は50回行い、25mmの単繊維を引張速度1.0mm/秒で引張試験を行った。
Figure 2019173186
・・・式(3)
前記臨界繊維長は、式(4)より算出した。
臨界繊維長(μm)=4/3×繊維破断片の長さの平均(μm)・・・式(4)
前記繊維破断片の長さは、以下の手順にて測定した。6−ナイロン(CM1000 東レ製)を0.1mm厚に加工したフィルムを、80℃、真空下で24時間乾燥した。直線状に引き伸ばした単繊維を上記のフィルムで挟み、260℃に設定したプレス機にて、1.6MPaにて30秒間、15MPaにて60秒間プレスした。自然冷却したフィルムから、単繊維が長軸に平行かつ短軸の中央を通るように短軸3mm×長軸30mm×厚さ0.1mmの試験片を切り出した。小型引張試験機を用いて、上記試験片の長軸方向に対して引張速度1mm/sで試験片に13%のひずみを与え、細分化された炭素繊維の破断長さをマイクロスコープで測定した。
<実施例2〜3、比較例1〜8>
<共重合体の製造>
各原料の種類とその配合量を表1および表2に示すように変えたこと以外は、実施例1と同様の操作により、共重合体を製造した。得られた各共重合体について、上述の方法に基づき、SP値、活性酸素量、重量平均分子量、およびエポキシ当量を求めた。
<サイジング剤の調製およびサイジング剤が結合した炭素繊維の製造>
上記で得られた各共重合体を用い、実施例1と同様の操作により、サイジング剤を調製し、サイジング剤が結合した炭素繊維を製造した。得られた各サイジング剤が結合した炭素繊維について、密着性(界面せん断強度)の評価をした。結果を表1および表2に示す。
Figure 2019173186
Figure 2019173186
表1および表2中、パーロイルR355は、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイドの40%トルエン溶液(日油(株)製、商品名「パーロイル355」、10時間半減期温度=59℃)を示す。

Claims (5)

  1. ペルオキシ基を有するラジカル重合性単量体およびエポキシ基を有するラジカル重合性単量体を含む単量体混合物を重合して得られる共重合体を含有し、
    前記共重合体は、Fedors法にて算出したSP値が9.5〜13.5(cal/cm1/2であり、活性酸素量が0.25〜2.5重量%であり、エポキシ当量が150〜3,000g/eq.であり、重量平均分子量が10,000〜200,000である、炭素繊維用サイジング剤。
  2. 前記ペルオキシ基を有するラジカル重合性単量体が、
    一般式(1):
    Figure 2019173186
    (式(1)中、Rは水素原子またはメチル基、Rは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、RおよびRは独立して炭素数1〜4のアルキル基、Rは炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基、アルキル置換フェニル基、または炭素数3〜12のシクロアルキル基を示し、nは1または2である。)で表される単量体、および/または、
    一般式(2):
    Figure 2019173186
    (式(2)中、Rは水素原子またはメチル基、Rは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、RおよびRは独立して炭素数1〜4のアルキル基、R10は炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基、アルキル置換フェニル基、または炭素数3〜12のシクロアルキル基を示し、mは1または2である。)で表される単量体である、請求項1記載の炭素繊維用サイジング剤。
  3. 請求項1または2記載の炭素繊維用サイジング剤が炭素繊維に結合した、サイジング剤が結合した炭素繊維。
  4. 請求項3記載のサイジング剤が結合した炭素繊維およびマトリックス樹脂を含む、炭素繊維強化プラスチック。
  5. 請求項3記載のサイジング剤が結合した炭素繊維の製造方法であって、前記炭素繊維用サイジング剤を前記炭素繊維に塗布して、サイジング剤が塗布された炭素繊維を製造する工程と、得られたサイジング剤が塗布された炭素繊維を加熱処理して、前記サイジング剤と前記炭素繊維を結合させる工程を含む、サイジング剤が結合した炭素繊維の製造方法。
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