次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るコンバイン100の全体的な構成を示す側面図である。
以下の説明で「前」とは、コンバイン100が刈取時に進行する方向を意味し、「後」とは、その反対の方向を意味する。また、「左」及び「右」とは、運転座席に座るオペレータから見て左及び右を意味する。
図1に示す本実施形態のコンバイン100は、いわゆる自脱型コンバインとして構成されている。このコンバイン100は、左右1対の走行装置2によって支持された走行機体1と、走行機体1の前部に配置された刈取装置(刈取部)3と、を主要な構成として備えている。
走行機体1は、左右1対で配置された走行装置2によって支持される。走行機体1には、駆動源としての図略のエンジンが支持される。走行機体1の前部には、オペレータが座って運転操作を行うための運転座席が配置されている。運転座席は、走行機体1の中央よりも右側に配置されている。
走行装置2は、無端状のクローラを用いて構成されており、走行機体1の下部に設けられている。走行装置2がエンジンによって駆動されることで、走行機体1が圃場を走行することができる。
左右1対の走行装置2を互いに等しい速度で前進方向に駆動することで、走行機体1を真っ直ぐ前進させることができる。走行装置2を互いに異なる速度で前進方向に駆動することで、走行機体1が前進する向きを変更することができる。
刈取装置3は、刈取フレーム30を介して走行機体1の前部に装着される。本実施形態において、刈取装置3は6条刈り用とされ、同時に6条分の穀稈を刈り取ることができる。コンバイン100は図略の油圧シリンダを備えており、油圧シリンダを駆動することで刈取装置3を昇降させることができる。
刈取装置3は、刈刃装置31と、穀稈引起し装置32と、穀稈搬送装置5と、分草体33と、を備える。
刈刃装置31は、刈取フレーム30の下方に配置されている。刈刃装置31は、圃場の未刈穀稈の株元を切断するために往復移動する刈刃を有している。
穀稈引起し装置32は、刈取フレーム30の前方に配置され、圃場の未刈穀稈を引き起こすとともに、起立させられた未刈穀稈の株元側を後方に掻き込む。そして、掻き込まれた未刈穀稈の株元側が、刈刃装置31によって切断される。
分草体33は、穀稈引起し装置32の下方前部に凸状に取り付けられ、圃場の未刈穀稈を分草する。本実施形態において、分草体33は、6条分の未刈穀稈を1条(1列)ずつ分草できるように、適宜の間隔をあけて機体左右方向で7つ並べて配置されている。それぞれの分草体33は、刈取フレーム30に固定された分草フレーム34の前端に固定されている。
穀稈搬送装置5は、穀稈引起し装置32と後述のフィードチェーン11の前端部との間に配置されている。穀稈搬送装置5は、刈刃装置31によって刈り取られた刈取穀稈を保持し、フィードチェーン11に向けて搬送する。
この構成で、コンバイン100は、エンジンによって走行装置2を駆動して圃場内を移動しながら、刈取装置3を駆動して圃場の未刈穀稈を連続的に刈り取ることができる。
走行機体1は、フィードチェーン11を有する脱穀装置12と、脱穀後の穀粒を貯留するグレンタンク13と、を備える。脱穀装置12及びグレンタンク13は左右に並べて設けられ、脱穀装置12が左側、グレンタンク13が右側に配置されている。グレンタンク13には、その内部に貯留される穀粒を機体の外部に排出する穀粒排出オーガ14が設けられている。
脱穀装置12は、穀稈脱穀用の扱胴21と、揺動選別盤22と、唐箕ファン23と、処理胴24と、排塵ファン25と、を備える。揺動選別盤22は、扱胴21の下方に落下する脱粒物を選別する揺動選別機構として構成される。唐箕ファン23は、揺動選別盤22に選別風を供給する。処理胴24は、扱胴21の後部から取り出される脱穀排出物を再処理する。排塵ファン25は、揺動選別盤22の後部の排塵を機外に排出する。
以上の構成で、刈取装置3から穀稈搬送装置5によって送られてきた刈取穀稈の株元側は、フィードチェーン11の前端側に受け継がれる。そして、フィードチェーン11の搬送により、穀稈の穂先側が脱穀装置12内に導入され、扱胴21によって脱穀される。
フィードチェーン11の後端側(送り終端側)には、排藁チェーン26が配置されている。フィードチェーン11の後端側から排藁チェーン26に受け継がれた排藁は、長い状態で走行機体1の後方に排出されるか、又は脱穀装置12の後方側に設けた排藁カッタ27にて適宜長さに短く切断された後、走行機体1の後下方に排出される。なお、排藁とは、穀粒が脱粒された稈を意味する。
揺動選別盤22の下方には、揺動選別盤22にて選別された穀粒(一番選別物)を取り出す一番コンベア28と、枝梗付き穀粒等の二番選別物を取り出す二番コンベア29と、が設けられている。本実施形態では、走行機体1の進行方向前側から一番コンベア28、二番コンベア29の順で、側面視において走行機体1の上面側に機体左右方向に配置されている。
揺動選別盤22は、扱胴21の下方に落下した脱穀物を揺動選別(比重選別)するように構成されている。揺動選別盤22から落下した穀粒(一番選別物)は、その穀粒中の粉塵が唐箕ファン23からの選別風によって除去され、一番コンベア28に落下する。一番コンベア28のうち脱穀装置12におけるグレンタンク13寄りの一側壁(実施形態では右側壁)から外向きに突出した終端部には、上下方向に延びる一番揚穀筒40が接続されている。一番コンベア28から取り出された穀粒は、一番揚穀筒40内の一番揚穀コンベア(図示せず)によってグレンタンク13に搬入されて貯留される。
揺動選別盤22は、揺動選別(比重選別)によって、枝梗付き穀粒等の二番選別物(穀粒と藁屑等が混在した再選別用の還元再処理物)を二番コンベア29に落下させるように構成されている。二番コンベア29によって取り出された二番選別物は、二番還元コンベア41及び二番処理部42を介して揺動選別盤22の上面側に戻されて再選別される。また、扱胴21からの脱粒物中の藁屑及び粉塵等は、唐箕ファン23からの選別風によって、走行機体1の後部から圃場に向けて排出される。
次に、図2以降を参照して、本実施形態のコンバイン100が備える刈高さ検知機構51を説明する。図2は、分草体33と刈高さ検知機構51を正面側から見た様子を示す斜視図である。図3は、刈高さ検知機構51を詳細に示す拡大側面図である。図4は、ランナー52に左右方向の外力が加わる様子を示す拡大正面図である。
図2に示すように、機体左端側の分草体33の後方には、刈高さ検知機構51が設けられている。
刈高さ検知機構51は、ランナー(接地部材)52と、前側支持部53と、後側支持部54と、第1ポテンショメータ(上下検出センサ)46と、第2ポテンショメータ(外力検出センサ)47と、接圧調整機構57と、を備える。
ランナー52は、最も左に位置する分草体33の後下方であって、当該分草体33を支持する分草フレーム34の下方に配置されている。ランナー52は機体の前後方向に細長く形成され、その下面には、地面と接触可能な接地面が形成されている。ランナー52は、前側支持部53及び後側支持部54により分草フレーム34に対して吊り下げられている。
前側支持部53は、図2から図4までに示すように、第1ブラケット61と、上下検出アーム66と、バネロッド63と、第2ブラケット62と、左右検出アーム67と、ステー64と、を備える。
第1ブラケット61は、板状に形成されており、最も左の分草体33を支持する分草フレーム34に固定されている。第1ブラケット61は、分草フレーム34から下方に延びるように構成されている。
上下検出アーム66は、第1ブラケット61に、左右水平方向の軸を中心として回転可能に支持されている。上下検出アーム66は回転中心から前方に延びており、その先端部には、バネロッド63の上端部が連結される。
バネロッド63は、バネ線を螺旋状に巻いた細長いコイルにより構成されている。このコイルの長手方向両端部には、短い棒状の連結部材がそれぞれ固定されている。バネロッド63は、その長手方向が上下方向を向くように配置されている。
バネロッド63の上端部は、上下検出アーム66の先端部に、左右水平方向に配置された連結軸48を中心として回転可能に連結される。バネロッド63の下端部は、ランナー52の前後方向中途部に対し、左右水平方向の連結軸49を中心として回転可能に連結される。
第2ブラケット62は、バネロッド63の上端部の連結部材に固定されている。第2ブラケット62は、側面視でL字状に折り曲げられた板状の小さな部材として構成されている。
左右検出アーム67は、第2ブラケット62に、前後水平方向の軸を中心として回転可能に支持されている。左右検出アーム67は回転中心から下方へ延びており、その先端部が、後述のステー64の上端と前後に重なっている。左右検出アーム67には、直線状のスライド溝68が、前後方向に貫通するように形成されている。スライド溝68の長手方向は、左右検出アーム67の長手方向と平行である。
ステー64は、バネロッド63の下端の連結部材に固定されている。ステー64は、バネロッド63の下端から、バネロッド63にほぼ平行となるように上方に延びている。ステー64は、バネロッド63の前方に配置されている。ステー64の先端には、前方へ突出する丸棒状のピン65が固定されている。このピン65は、左右検出アーム67に形成されたスライド溝68に差し込まれている。
第1ポテンショメータ46は、第1ブラケット61に固定されている。第1ポテンショメータ46は、上下検出アーム66の回転角度を検出することができる。
第2ポテンショメータ47は、第2ブラケット62に固定されている。第2ポテンショメータ47は、左右検出アーム67とともに、バネロッド63の前方に配置されている。第2ポテンショメータ47は、左右検出アーム67の回転角度を検出することができる。
後側支持部54は、図2及び図5に示すように、第3ブラケット71と、バネロッド72と、を備える。
第3ブラケット71は、小さな板状に形成されており、刈取フレーム30の適宜の位置に固定されている。
バネロッド72は、前側支持部53のバネロッド63と同様の構成であり、バネ線を巻いて形成されるコイルと、このコイルの両端に固定される連結部材と、を備える。バネロッド72は、その長手方向が上下方向を向くように配置されている。バネロッド72の上端部は、第3ブラケット71に対して回転不能に固定される。バネロッド72の下端部は、ランナー52の後端部に対し、左右水平方向に配置した連結軸50を中心として回転可能に連結される。この連結軸50を中心として、ランナー52を回転させることができる。
接圧調整機構57は、ランナー52が地面に押し付けられる接圧の大きさを調整する。この接圧調整機構57は、図5に示すように、引張バネ75と、電動モータ76と、ネジ軸77と、スライド部材78と、引張部材79と、を備える。
引張バネ75は公知のコイルバネとして構成されており、その長手方向が上下方向を向くように配置されている。引張バネ75の上端は、スライド部材78に固定されるステー73に連結され、引張バネ75の下端は、ランナー52に固定されるステー74に連結されている。
引張バネ75がランナー52に取り付けられる場所は、ランナー52の回転中心である連結軸50よりも前方である。従って、引張バネ75は、ランナー52の前部の重量を支持する方向のバネ力を作用させることができる。
電動モータ76は、刈取フレーム30の適宜の位置に固定されている。この電動モータ76の出力軸は、図示しないウォームギア機構を介して、ネジ軸77と連結されている。
ネジ軸77は、刈取フレーム30の適宜の位置に、その回転軸を概ね上下方向に向けて回転可能に支持されている。ネジ軸77の外周面にはオネジが形成されている。
スライド部材78は、ネジ軸77と平行な向きでスライド移動可能となるように、刈取フレーム30に支持されている。スライド部材78には図略の回り止め機構が設けられている。この構成で、電動モータ76を駆動してネジ軸77を回転させることにより、スライド部材78を上下にネジ送り移動させることができる。
引張部材79は、細長い棒状の部材として構成されている。引張部材79は、例えばピアノ線を用いて構成することができる。引張部材79は、引張バネ75と同様に、スライド部材78と、ランナー52と、を連結している。
スライド部材78のステー73には、連結ピン80が固定されている。引張部材79の上端にはU字状に折り返された曲げ部81が形成されており、連結ピン80は、この曲げ部81の内部に差し込まれている。これにより、引張部材79の上端がスライド部材78に連結される。引張部材79の下端は、ランナー52に固定されたステー74に対し、左右水平方向の軸を中心として回転可能に連結される。
引張部材79に形成された曲げ部81の内部空間は、引張バネ75の軸方向に沿って細長く形成されている。従って、連結ピン80と引張部材79との連結部分には、ある程度の遊びが形成されている。
以上の構成で、ランナー52には、その自重が、後端部の連結軸50を中心として、前端部を下方へ移動させるように作用する。従って、刈取時においては、図3に示すようにランナー52の下面が地面に接触し、地面の凹凸に応じて上下に移動する。
ランナー52が圃場の緩やかな凸部に乗り上げる場合、バネロッド63の下端が押し上げられる。バネロッド63は、変形しない状態では、コイル部のバネ線が互いに接触している。従って、バネロッド63は、ランナー52の上昇に連動して、上下検出アーム66の先端を押し上げる。
ランナー52が圃場の緩やかな凹部に落ち込む場合、当該ランナー52は自重により下降する。バネロッド63は、軸方向の引張方向では、ランナー52の自重程度の大きさの力では殆ど弾性変形しないように構成されている。従って、バネロッド63は、ランナー52の下降に連動して、上下検出アーム66の先端を引き下げる。
このように、上下検出アーム66の角度は、ランナー52の高さ、言い換えれば、分草フレーム34(刈取装置3)に対する地面の相対的な高さに応じて変化する。
図示しないが、コンバイン100には、コンピュータからなる刈取制御装置が設けられている。刈取制御装置は、上下検出アーム66の回転を第1ポテンショメータ46によって検出し、この検出結果に応じて刈取装置3を昇降させることで、刈刃装置31の地面に対する高さが一定になるように制御する。これにより、図2に示す刈刃装置31が備える刈刃31aが穀稈を刈り取る高さを一定にすることができる。
ランナー52の後端には、引張バネ75が連結されている。図5は引張バネ75が自然長の状態であるが、この図5の状態から電動モータ76の駆動によりスライド部材78を少し上方に移動させると、伸ばされた引張バネ75の弾性力が、ランナー52を引き上げるように作用する。この結果、ランナー52の自重の一部が相殺されて、ランナー52の地面に対する接圧が減少する。
このようにスライド部材78を上下方向に移動させることにより、引張バネ75を伸ばす長さを変更することができる。この結果、ランナー52の接圧を、圃場の土の硬さ等に応じた適切な大きさになるように調整することができる。
スライド部材78を上下動するとき、連結ピン80も同時に移動する。しかし、スライド部材78の移動ストロークの下端近傍では、連結ピン80と、引張部材79の曲げ部81の上端との間には、隙間が形成されている。従って、スライド部材78がある程度上昇するまでは、当該スライド部材78が引張部材79を引き上げることはない。
ランナー52は圃場表面の凹凸に応じて上下動するが、図4の鎖線に示すように、ランナー52に大きな障害物(例えば、畔101)が側方からぶつかる等して、機体左右方向に外力が加わることがある。この場合でも、バネロッド63,72が曲がるように湾曲してランナー52を左右方向に変位させ、ランナー52に掛かる衝撃を逃がすことができる。これにより、ランナー52の破損を防止することができる。
ランナー52に左右方向の外力が加わって変位した場合、ステー64に固定されたピン65が、左右検出アーム67を回転させる。左右検出アーム67の回転を第2ポテンショメータ47によって検出することで、オペレータへの報知等の制御を必要に応じて行うことができる。
次に、制御装置111について説明する。図6は、制御装置111の電気的な構成を示すブロック図である。
図6に示す制御装置111は、ランナー52に障害物が側方から接触した場合に、オペレータに報知する処理を行う。制御装置111は、変位量取得部112と、変位方向取得部113と、旋回検出部114と、報知条件判定部115と、報知信号出力部116と、を備える。
具体的に説明すると、制御装置111は公知のコンピュータとして構成されており、CPU、ROM、RAM等を備える。前記ROMには、オペレータへの報知に関する制御を行うプログラムが記憶されている。上記のハードウェアとソフトウェアの協働により、制御装置111を、変位量取得部112、変位方向取得部113、旋回検出部114、報知条件判定部115及び報知信号出力部116として機能させることができる。
変位量取得部112は、ランナー52が左右へ変位する大きさを、第2ポテンショメータ47の出力に基づいて取得する。変位量取得部112は、取得した変位量を、報知条件判定部115に出力する。
変位方向取得部113は、ランナー52が左右の何れに変位したかを、第2ポテンショメータ47の出力に基づいて取得する。変位方向取得部113は、取得した変位方向を、報知条件判定部115に出力する。
旋回検出部114は、走行機体1の旋回を検出する。走行機体1の旋回は、オペレータのステアリング操作に基づいて検出しても良いし、左右の走行装置2の速度差から検出しても良い。旋回検出部114は、走行機体1が旋回しているか否かを、報知条件判定部115に出力する。
報知条件判定部115は、変位量取得部112、変位方向取得部113、及び旋回検出部114の出力に基づいて、分草体33の破損のおそれがある旨をオペレータに報知するか否かを判定する。報知条件判定部115は、判定結果を報知信号出力部116に出力する。
具体的には、報知条件判定部115は、ランナー52の左右方向の変位量の大きさが所定値より大きく、ランナー52の変位の向きが左から右へ向かう向きであり、かつ、走行機体1が旋回していないときに、オペレータに報知すべきと判定する。なお、報知を行う条件についての詳細は後述する。
報知信号出力部116は、オペレータへ報知すべきであると報知条件判定部115によって判定された場合に、報知信号を出力する。制御装置111は、運転座席の近傍に設けた報知ランプ117及び報知ブザー118に電気的に接続されている。報知ランプ117及び報知ブザー118は、報知部として機能する。
報知信号が入力されることにより、報知ランプ117が点灯するとともに、報知ブザー118が鳴る。これにより、分草体33に障害物が接近しており、破損のおそれがあることをオペレータに知らせることができる。
次に、分草体33が将来的に破損するおそれがある旨をオペレータに報知する条件について詳細に説明する。
図4には、ランナー52及び分草体33の位置関係が示されている。ランナー52が左右方向へ変位していない状態では、刈取装置3を正面から見たとき、ランナー52は分草体33の真下に位置する。
走行機体1の走行に伴って、障害物としての畔101が側方から刈取装置3に対して相対的に少しずつ近づき、やがて、図4に示すように、ランナー52に左側から畔101が接触した場合を考える。図4の状態では、畔101は分草体33にも近づいているが、接触までは至っていない。
通常、畔101は台形状に土を盛り上げて形成されている。従って、畔101が分草体33に衝突する前に、分草体33より低い位置にあるランナー52が、畔101の根元部に押されて左右方向に変位する。従って、畔101が分草体33に衝突する前に、畔101に押されるランナー52の左右方向の変位を検知してオペレータに報知することで、衝突回避のための適切な対応をオペレータに促すことができる。
ランナー52の左右方向への変位量に関する報知条件判定部115での判定閾値に関しては、小さ過ぎると報知が頻発してしまう一方、大き過ぎると報知が遅れてしまう。判定閾値は、上記の事情をバランス良く考慮して定めることが好ましい。
本実施形態において、ランナー52は、刈取装置3の最も左に位置する分草体33の下部に配置されている。従って、ランナー52が左から右に変位した場合は、畔101のような大きい障害物が左側からランナー52に衝突したことが疑われる。一方、ランナー52が右から左に変位した場合は、そのような大きい障害物が刈取装置3の下方を通過してランナー52に右から当たることは考えにくく、単に穀稈を刈り取った後の残稈にランナー52が引っ掛かっただけと考えられる。そこで、本実施形態の報知条件判定部115では、ランナー52が左から右へ(言い換えれば、刈取装置3の左右方向外側から中央側へ)変位している場合にだけ、オペレータに報知すべきと判定する。これにより、分草体33が破損する可能性が高い状況を精度良く報知することができる。
一般に、走行機体1が旋回しているとき、ランナー52が残稈から左右方向に押されて変位してしまい易い。そこで、本実施形態の報知条件判定部115では、走行機体1が旋回しているときは、オペレータに報知しないように構成されている。これにより、報知の精度を更に高めることができる。
次に、分草体33の破損の可能性をオペレータに報知するために制御装置111が行う処理について、図7を参照して詳細に説明する。図7は、制御装置111が行う処理を示すフローチャートである。
図7のフローが開始されると、変位量取得部112は、第2ポテンショメータ47からの出力に基づいて、ランナー52が左又は右の何れかに移動している変位の大きさを求める(ステップS101)。報知条件判定部115は、この左右方向の変位の大きさが所定値以上か否かを判断する(ステップS102)。左右方向の変位の大きさが所定値未満であった場合は、処理はステップS101に戻る。
ステップS102の判断で、ランナー52の左右方向の変位が所定値以上であった場合、変位方向取得部113は、ランナー52が変位している向きを求める(ステップS103)。報知条件判定部115は、ランナー52の変位の向きが右であるかを判断する(ステップS104)。ランナー52の変位の向きが左である場合、処理はステップS101に戻る。
ステップS104の判断で、ランナーの変位の向きが右である場合、旋回検出部114は、走行機体1の旋回状態を検出する(ステップS105)。報知条件判定部115は、走行機体1が旋回しているか否かを判断する(ステップS106)。走行機体1が旋回している場合、処理はステップS101に戻る。
ステップS106の判断で、走行機体1が旋回していない場合、報知信号出力部116は、報知ランプ117及び報知ブザー118に対して報知信号を出力する(ステップS107)。その後、処理はステップS101に戻る。
以上の処理により、ランナー52に左右方向の外力が加わり、所定の条件を満たす場合に、オペレータに報知することができる。従って、畔101等との接触による分草体33の破損を未然に防止することができる。
上述のとおり、畔際を右回りで刈り取る場合は、最も左にある分草体33が、最も左の穀稈列と、畔101と、の間を通過するようにコンバイン100を操作する必要がある。運転座席は走行機体1の右側に配置されているので、最も左の分草体33はオペレータが視認しにくく、畔101との距離を把握しにくい。しかしながら、本実施形態のコンバイン100では、分草体33と畔101とが接近して、衝突する可能性がある程度増大した場合は、報知によりオペレータに注意を促すことができる。従って、オペレータは、畔101と分草体33との衝突を回避しつつ、かつ、刈残しを生じさせずに、刈取作業を容易に行うことができる。
次に、接圧調整機構57の電動モータ76によってランナー52を引き上げる構成について説明する。図8は、ランナー52を非使用位置へ上昇させた状態を示す側面図である。
上述のとおり、図5に示す電動モータ76がネジ軸77を駆動してスライド部材78を上昇させることによって、引張バネ75の上端の連結位置が変更される。これによって、引張バネ75がランナー52を引き上げるバネ力が増加するので、ランナー52が地面に接触する接圧を小さくすることができる。
電動モータ76を更に駆動してスライド部材78を上昇させると、やがて、引張部材79の曲げ部81の上端に連結ピン80が接触する。その後は、スライド部材78の上昇変位は、引張部材79を介してランナー52に伝達される。従って、ランナー52は引張部材79によって引っ張られ、上昇する。
引張部材79は引張バネ75と異なり、弾性変形しない。従って、ランナー52が引張部材79により引き上げられた状態では、振動等によってランナー52が下方へ移動するのを阻止することができる。
図8には、スライド部材78を適宜の位置まで上昇させた結果、当初は図3の使用位置にあったランナー52が非使用位置まで上昇した状態が示されている。この非使用位置では、ランナー52の最下端部P1は、分草体33の最下端部P2よりも高い位置にある。従って、ランナー52を刈取装置3の下部にコンパクトに収納することができる。刈取作業を行わないときはランナー52を非使用位置まで上昇させておくことで、コンバイン100の移動時にランナー52が障害物に衝突するのを防止することができる。
本実施形態では、接圧調整機構57においてランナー52の地面に対する接圧を調整するための電動モータ76が、ランナー52を図3の使用位置と図8の非使用位置との間で昇降させるモータとしての機能をも有している。即ち、接圧調整機構57は、ランナー52の昇降機構としても機能する。従って、電動モータ76、ネジ軸77、及びスライド部材78等を共通化することで簡素な構成を実現でき、部品点数及び製造コストを減らすことができる。また、ランナー52の接圧の調整と、ランナー52の使用/非使用の切換とを、共通の操作部材で行うことが容易である。従って、操作性を高めることができる。
以上に説明したように、本実施形態のコンバイン100は、刈刃31aと、分草体33と、ランナー52と、第1ポテンショメータ46と、第2ポテンショメータ47と、報知ランプ117及び報知ブザー118と、を備える。刈刃31aは、穀稈を刈り取る。分草体33は、刈刃31aにより刈り取られる前の穀稈を分草する。ランナー52は、分草体33の下方で上下方向に移動可能に支持されて地面と接触する。第1ポテンショメータ46は、ランナー52の上下方向の位置を検出する。第2ポテンショメータ47は、ランナー52に加わる左右方向の外力を検出する。報知ランプ117及び報知ブザー118は、第2ポテンショメータ47の出力に基づいてオペレータに報知する。
これにより、分草体33の下方に位置するランナー52に畔101等の障害物等から外力が加わっていることを、オペレータに報知することができる。従って、畔101と分草体33とが接触する前にオペレータの対応を促すことができるので、分草体33の破損を防止することができる。
また、本実施形態のコンバイン100において、ランナー52は、左右方向に移動可能に支持されている。第2ポテンショメータ47は、左右方向の外力に応じてランナー52が左右方向に移動する変位を検出する。報知ランプ117及び報知ブザー118は、前記変位が所定値以上になった場合に報知を行う。
これにより、ランナー52に加わる左右方向の外力を、ランナー52が左右方向に移動することで逃がすことができる。また、畔101等の障害物によってランナー52がある程度押されるまで(即ち、障害物が分草体33にある程度近づくまで)は報知が行われないので、不必要な報知を防止することができる。
また、本実施形態のコンバイン100においては、報知ランプ117及び報知ブザー118は、第2ポテンショメータ47で検出された外力の方向が、左から右(即ち、走行機体1の左右方向外方から中央側)に向かう方向である場合に、報知を行う。
即ち、ランナー52に右から左に外力が加わる場合は、分草体33を破損させるような大きな障害物によってランナー52が押されているのではなく、単に残稈がランナー52に引っ掛かっているだけと考えられる。従って、このような場合に報知を行わないようにすることで、不必要な報知を防止することができる。
また、本実施形態のコンバイン100において、報知ランプ117及び報知ブザー118は、旋回走行時に報知を行わない。
これにより、旋回時に残稈がランナー52に引っ掛かることによる不必要な報知を防止することができる。
また、本実施形態のコンバイン100においては、ランナー52を、地面に接触する使用位置と、地面から離れた非使用位置と、の間で昇降させる電動モータ76を備える。電動モータ76は、使用位置におけるランナー52の地面に対する接圧を調整可能である。
これにより、オペレータは電動モータ76を用いて、ランナー52が地面に接触する接圧を、圃場の土の硬さ等に応じて容易に調整することができる。また、当該電動モータ76によってランナー52を使用位置と非使用位置との間で昇降させることもできるので、簡素な構成を実現できるとともに、オペレータの操作も簡単になる。
また、本実施形態のコンバイン100においては、電動モータ76は、ランナー52を、その最下端が分草体33の最下端よりも高くなる位置まで上昇させることが可能である。
これにより、ランナー52を使用しない場合にコンパクトに収納することができるので、地面近くの障害物等にランナー52が衝突して破損することを防止できる。
次に、本発明の第2実施形態を説明する。図9は、第2実施形態に係るコンバインに関し、分草体33と刈高さ検知機構51xを正面側から見た様子を示す斜視図である。図10は、第2実施形態のコンバインの昇降機構57xを背面側から見た様子を示す斜視図である。なお、本実施形態の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
本実施形態のコンバインが備える刈高さ検知機構51xは、第1実施形態の接圧調整機構57に代えて、昇降機構57xを備える。本実施形態では、第1実施形態における引張バネ75に相当する構成が省略されており、ランナー52の接圧は調整されない。本実施形態において、ランナー52、前側支持部53、後側支持部54、第1ポテンショメータ46及び第2ポテンショメータ47の構成は、第1実施形態と同様である。
昇降機構57xについて詳細に説明する。昇降機構57xは、ハウジング91と、電動モータ76と、ネジ軸77と、スライド部材78と、回転リンク94と、引上げリンク95と、ロッド96と、を備える。
ハウジング91は、刈取装置3の適宜の位置に固定されている。ハウジング91の前部には、ウォームギアケース85が固定される。ウォームギアケース85の内部には、図略のウォームギア機構が配置される。
電動モータ76は、ウォームギアケース85の上部に固定されている。電動モータ76は、正逆転が可能なモータとして構成されている。この電動モータ76の出力軸は、前記ウォームギア機構を介してネジ軸77と連結されている。
ネジ軸77は、ハウジング91の内部に配置されている。ネジ軸77は、その回転軸を概ね前後方向に向けて、ハウジング91に回転可能に支持されている。
スライド部材78は、円筒状の部材として形成される。スライド部材78は、ハウジング91の内部に配置されている。スライド部材78はネジ軸77に対してネジ結合している。
図9に示すように、ハウジング91には、直線状に細長い長孔状のガイド孔91aが貫通状に形成されている。ガイド孔91aの長手方向は、ネジ軸77と平行となっている。スライド部材78には、止めピン92が突出状に固定されている。止めピン92は、ガイド孔91aに差し込まれている。
ガイド孔91aと止めピン92とにより、スライド部材78の回転を規制する回り止め機構が構成されている。電動モータ76を駆動してネジ軸77を回転させることにより、ガイド孔91aの長手方向に沿って、スライド部材78を前後にネジ送り移動させることができる。
図10に示すように、ハウジング91において前記ガイド孔91aが形成されている側と反対側には、大きな開口91bが形成されている。スライド部材78には押しピン93が突出状に設けられている。押しピン93は、開口91bを通じてハウジング91の外側に突出している。
ハウジング91の下部には、軸ボス91cが形成されている。この軸ボス91cには貫通孔が左右方向に形成されている。この貫通孔には、回転リンク94を構成する連結ピン86が差し込まれている。
回転リンク94は、連結ピン86と、第1アーム87と、第2アーム88と、を備える。
連結ピン86は、軸ボス91cの貫通孔に回転可能に支持される。連結ピン86は、第1アーム87と第2アーム88とを互いに連結する。
第1アーム87は連結ピン86の端部に固定されている。第1アーム87は、細長い板状に形成されている。第1アーム87は、連結ピン86との固定箇所から概ね上向きに直線状に延びている。第1アーム87の先端は、ネジ軸77に近接している。スライド部材78を後方へ移動させることにより、押しピン93を第1アーム87の先端近傍に接触させて、図10の矢印のように第1アーム87を押すことができる。
第2アーム88は、第1アーム87と反対側で連結ピン86の端部に固定されている。第2アーム88は、細長い板状に形成されている。第2アーム88は、連結ピン86との固定箇所から概ね前向きに直線状に延びている。第2アーム88の先端は、引上げリンク95に対して回転可能に連結されている。
引上げリンク95は、略円弧状に湾曲した細長い板状に形成されている。引上げリンク95の湾曲した部分は、図9に示すように、刈取装置3が備えるスターホイル3aの回転軌跡を迂回して避けるように配置されている。スターホイル3aは、回転することで穀稈を刈取装置3へ掻き込む公知の部材である。
ロッド96は、直線状に形成された丸棒として構成される。ロッド96の上端は、引上げリンク95の下端に固定される。ロッド96の下端は、ランナー52に固定されたステー74に対して、回転可能に連結される。
以上の構成で電動モータ76を一側に回転駆動すると、スライド部材78が後方に変位する。これに伴って、図10に示すように、押しピン93が、回転リンク94の第1アーム87を後方に押す。これに伴って回転リンク94が回転するので、第2アーム88が引上げリンク95及びロッド96を介してランナー52を引き上げる。これにより、ランナー52が地面から上昇した非使用位置とすることができる。
電動モータ76を上記と反対側に回転駆動すると、スライド部材78が前方に変位する。押しピン93が回転リンク94の第1アーム87を後方に押さなくなるので、ランナー52は自重によって下降する。これにより、ランナー52が地面に接触した使用位置とすることができる。
使用位置において、ランナー52は、その自重により定まる一定の接圧で地面に接触する。この使用位置において、ランナー52が圃場の凸部に乗ることにより上昇すると、ロッド96を介して引上げリンク95が押し上げられる。これに伴って回転リンク94が回転するが、このとき、押しピン93と接触していた第1アーム87は、当該押しピン93から離れるように移動する。このように、地面によるランナー52の押上げが押しピン93に伝達されない。ランナー52が凸部を乗り越えると、ランナー52は自重で下降し、ロッド96、引上げリンク95、及び回転リンク94は元の位置に戻る。このように、昇降機構57xによってランナー52の上下動が阻害されることはなく、ランナー52は自由に上下動することができる。
引上げリンク95の下端部には、メネジ孔が形成されたネジボス97が固定されている。ロッド96の上端部にはオネジが形成されており、この部分がネジボス97のメネジ孔にネジ結合している。この構成で、ロッド96を回転させることにより、ロッド96の実質的な長さを変更して、非使用位置におけるランナー52の高さを調整することができる。
第2実施形態では、刈高さ検知機構51xが、機体の左端側だけでなく右端側にも設けられている。本実施形態では、刈取制御装置は、左側の刈高さ検知機構51xの第1ポテンショメータ46が検出した結果と、右側の刈高さ検知機構51xの第1ポテンショメータ46が検出した結果と、の差を考慮して、刈取装置3の高さを制御する。
具体的には、左右それぞれの第1ポテンショメータ46が検出した結果の差が、所定の閾値よりも小さい場合は、刈取制御装置は、機体左端側のランナー52の高さを基準として、刈取装置3の高さを制御する。これにより、右回りで刈り取る場合に、左側の穀稈列を基準にして刈刃装置31の高さを制御することができる。
一方で、左右の第1ポテンショメータ46が検出した結果の差が閾値以上である場合は、刈取制御装置は、左右のランナー52のうち高い方のランナー52に追従させるように刈取装置3の高さを制御する。これにより、左右一側だけのランナー52が例えば圃場の溝に大きく落ち込んだ場合であっても、刈取装置3の高さが大きく下降しない。従って、ランナー52が溝に落ち込んだ側と反対側の分草体33が地面に突っ込んで破損することを防止することができる。
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
図7のステップS106の判断で、右への旋回時には報知信号を出力し、左への旋回時には報知信号を出力しないように構成しても良い。コンバイン100の運転座席は走行機体1の右寄りに設けられているので、走行機体1が右へ旋回している場合には、左に旋回している場合よりも、最も左の分草体33の周囲の状況にオペレータの注意が行き届きにくい傾向がある。従って、右旋回時においては、最も左の分草体33に対応するランナー52の左右変位を検知してオペレータに報知をすることは有効である。
刈高さ検知機構51は、機体右端側の分草体33の下側に設けられてもよい。運転座席は、機体右側に代えて機体左側に設けられてもよい。
報知ランプ117及び報知ブザー118のうち一方を省略しても良い。また、報知の方法は、オペレータが認識することができればよく、適宜に変更することができる。例えば、運転座席の近傍に設けられたディスプレイに警告を表示することによってオペレータに報知を行ってもよい。
第1実施形態において、ランナー52の地面に対する接圧を調整するための電動モータと、ランナー52を使用位置と非使用位置との間で昇降させる電動モータと、が個別に備えられても良い。
ランナー52の左右側面にロードセル等の力センサを設け、この力センサによって、ランナー52に加わる左右方向の外力を検出しても良い。この場合は、ランナー52を左右方向に移動不能に構成することもできる。
第1ポテンショメータ46に代えて、例えばロータリエンコーダによって上下検出アーム66の回転角度を検出しても良い。第2ポテンショメータ47に代えて、例えばロータリエンコーダによって左右検出アーム67の回転角度を検出しても良い。
第1実施形態において、接圧調整機構57を省略し、引張バネ75の上端の位置が変更不能に構成されても良い。
第1実施形態及び第2実施形態において、ランナー52を非使用位置としたときに、その最下端部が分草体33の最下端部より低くなっていても良い。
図7で説明したフローにおいて、ステップS103及びS104の処理を省略しても良いし、ステップS105及びS106の処理を省略しても良い。言い換えれば、ランナー52の左右方向の変位が所定値以上であれば、その変位の向きが右方向であっても、また、走行機体1が旋回状態であっても、報知信号出力部116が報知信号を出力するように構成しても良い。