図1は本発明を適用した汎用コンバインの全体側面図であり、図2は刈取部及びリールの要部構成を示す側面図である。図示する汎用コンバインは、稲や麦や豆類等の作物の刈取作業を行うものである。この汎用コンバインは、左右一対のクローラ式走行装置(走行部)1を有する走行機体2と、走行機体2の前部に昇降自在に連結された刈取部3と、左右方向に延びる筒状に成形されたリール4と、該リール4を自身の軸回りに回転駆動可能な状態で昇降可能且つ前後進可能に刈取部3側に支持する可動機構6とを備えている。
上記刈取部3は、後側半部のフィーダ7及び前側半部の刈取フレーム8を一体的に有している。刈取フレーム8の左右の側壁からは前方に向かって分草体9がそれぞれ突設されている。この左右の側壁間における下部後方寄り部分には、左右方向に延びる円柱状の掻込オーガ11が軸回りに回転駆動可能に支持されている。この掻込オーガ11の前方斜め下方には、左右方向に延びるレシプロ式の刈刃12が設置されている。ちなみに、前記リール4は平面視で刈取フレーム8の左右の側壁間に配設されている。
フィーダ7は、刈刃12によって刈取られた作物を後方搬送するフィーダコンベア13をボックス状のケースに内装している。このフィーダ7は、平面視で、走行機体2の前進方向右側部分に設けられた操縦部14の左側方に位置している。上述の刈取部3は、このフィーダ7の後端部の揺動軸3aを支点として、上下揺動可能に走行機体2の前部に支持されている。ちなみに、上述の刈取フレーム8は、操縦部14及びフィーダ7の前方において、正面視で、両者の左右幅全体を占める範囲に形成されている。
この刈取部3と、走行機体2の前部との間には、伸縮作動によって該刈取部3を走行機体2に対して昇降させる油圧式の刈取側昇降アクチュエータであるリフトシリンダ16が設けられている。このリフトシリンダ16を伸縮作動させることにより、刈取部3が走行機体2に対して揺動軸3aを支点として上下揺動(昇降)される。
上記リール4は、左右方向に延びる角柱状(図示する例では六角柱)に形成されたフレーム17によって構成されている。このフレーム17の周囲には、タイン18が吊下げ支持された状態で支持されている。このタイン18は、前記フレーム17の多角形の側面形状の各頂点部分に、左右に複数並べられた状態で、設けられている。ちなみに、タイン18は、リール4の回転中も、自重によって下方に向いた状態で維持され、その移動軌跡Dは図2に仮想線で示す通り歪んだ円弧状をなす。
回転するリール4のタイン18によって後方に掻込まれた圃場の作物の穀稈は、左右方向に往復スライド駆動される刈刃12によって刈取られ、掻込オーガ11によって後方(フィーダ7側)に送られる。フィーダ7側に導入された作物は、フィーダコンベア13によって走行機体2側まで後方搬送される。
上記走行機体2の左側半部には、前記フィーダ7によって走行機体2側に搬送されてきた稲や麦や豆類等の作物の脱穀処理を行うとともに該脱穀処理された処理物から籾等の穀粒を選別する脱穀部(脱穀装置)19が設置されている。この走行機体2の右側半部には、脱穀部19で脱穀・選別処理された穀粒を貯留するグレンタンク21と、該グレンタンク21の前方に配置され且つオペレータが乗込む上述の前記操縦部14とが設けられている。
また、この走行機体2は、図示しない油圧シリンダ等のアクチュエータによって、左右のクローラ式走行装置1に対して昇降して車高を変化させることが可能である。
脱穀部19は、フィーダコンベア13からの作物が導入される扱室22と、該扱室22の真下側に形成された選別室23とを有している。扱室22内には、前後方向に延びる円柱状の扱胴24が自身の軸回りに回転自在に軸支されている。選別室23内の上部には、前後動する揺動選別体26が設置され、選別室23内の下部前側には後方斜め上方の選別風を起風する唐箕ファン27が配置され、選別室23内の下部の前後方向中途部には、一番ラセン28及び二番ラセン29が設けられている。ちなみに、二番ラセン29は、一番ラセン28よりも後方に配置されている。
フィーダ7から脱穀部19に全稈導入された作物は扱室22内で回転する扱胴24によって後方搬送されながら脱穀処理され、その処理物は、選別室23に落下する。選別室23に落下した処理物は揺動選別体26によって揺動選別されるとともに、上記選別風によって選別(風選)される。
具体的には、一番ラセン28側に落下する一番物と、二番ラセン29側に落下する二番物と、後方斜め上方に送られる藁屑等の排出物とに選別される。一番物は、一番ラセン28により、穀粒としてグレンタンク21内に搬送され、二番物は、二番ラセン29により、選別室23内に再投入されて選別され、排出物は走行機体2の後端側から機外に排出される。
なお、揺動選別体26の後半部には、前後方向に並列配置された複数のフィン31aによりなるチャフシーブ31が設置されている。そして、このチャフシーブ31は、フィン31aをより鉛直方向に向ける開作動時には、開度が大きくなる一方で、フィン31aをより水平方向に向ける閉作動時には、開度が小さくなる。揺動選別体28を吹抜ける選別風の風量は、上記開度が大きい状態では増加する一方で、上記開度が小さい状態では減少する。このような風量の調整によって、処理物の量に応じた最適な風選を行うことが可能になる。
グレンタンク21内の穀粒は、走行機体2の後端部に支持された排出オーガ32によって機外に排出される。具体的には、全体が上下揺動可能且つ水平回動可能なように排出オーガ32の基端部が走行機体2に支持され、該排出オーガ32の先端部には穀粒を排出する排出部32aが設けられており、上下揺動又は水平回動によって排出オーガ32の排出部32aを所定位置に移動させ、その場で穀粒を排出させることができる。
図3はリールを可動機構によって前後進させる状態を示す側面図であり、図4はリールを可動機構によって昇降させる状態を示す側面図である。上記可動機構6は、下端部がフィーダ7に前後揺動可能に支持され且つ左右に並列配置された複数の前後進アーム33と、左右両端に位置する前後進アーム33の上端部にそれぞれ上下揺動可能に後端部が支持された一対の昇降アーム34と、伸縮作動によって全ての前後進アーム33を同一姿勢でまとめて前後揺動駆動させる単一の油圧式の前後進シリンダ(リール側前後進アクチュエータ)36と、左右の昇降アーム34の中途部と刈取フレーム8との間にそれぞれ配置され且つ伸縮作動によって該左右の昇降アーム34を同一姿勢で上下揺動駆動させる油圧式の一対の昇降シリンダ(リール側昇降アクチュエータ)37とを備えている。
左右の昇降アーム34の前端部間には、上述の左右方向のリール4が自身の軸回りに回転駆動可能に架設して支持される。
前後進アーム33の前後揺動位置(リール4の前後進位置)は、該前後進アーム33の下端(揺動支点)側に設けられたポテンショメータからなるリール前後進位置検出手段38によって検出される。
昇降アーム34の上下揺動位置(リール4の昇降位置)は、ポテンショメータからなるリール昇降高さ検出手段39によって検出される。具体的には、くの字状に屈曲した状態で互いが回動するように連結された一対の検出リンク41,42の該接続部分の角度が昇降シリンダ37の伸縮作動に伴って増減するように該一対の検出リンク41,42が、該昇降シリンダ37に設けられている。この接続部分の角度の増減を前記リール昇降高さ検出手段39によって検出する。
なお、リール昇降高さ検出手段39は、図示する例では、検出リンク41,42の屈曲角度を検出することにより、リール4の昇降高さを検出したが、この検出リンク41,42をワイヤ(図示しない)としてもよい。具体的には、昇降シリンダ37と、検出アーム(図示しない)とをワイヤによって連結し、検出アームを弾性部材によって一方側揺動方向に付勢させる。そして、昇降シリンダ37の伸長駆動(リール4の上昇駆動)に伴うワイヤの引き作動によって、前記検出アームが上記弾性部材の弾性力に抗して他方側に揺動される。該構成の検出アームの揺動位置をポテンショメータ等のリール昇降高さ検出手段39によって検知することにより、リール4の昇降高さを検出することが可能になる。このような構成によれば、リール昇降高さ検出手段39を、昇降シリンダ37からより離した位置に配置可能になる。
図5は、本汎用コンバインの動力伝動系統図である。エンジン43から出力された動力は伝動最上流側で走行系の動力と作業系の動力とに分岐される。走行系の動力は、走行HST44及びトランスミッション46を介して左右のクローラ式走行装置1,1に伝動される。作業系の動力は、脱穀クラッチ47を介して、脱穀駆動軸48に断続伝動される。脱穀駆動軸48の回転駆動は、脱穀部19の各部を駆動させる他、刈取クラッチ49を介して刈取部3及びリール4側に断続伝動される。
走行HST44はエンジン43側から入力された回転動力を正逆転切換して出力する機能を有するとともに、該回転動力を無段階に変速して出力する機能を有する。トランスミッション46には走行HST44から出力された動力が入力される。トランスミッション46は、入力された回転動力の制動及び変速を行い、その駆動力又は制動力を左右のクローラ式走行装置1,1に分配して伝える。例えば、このトランスミッション46によって左右のクローラ式走行装置1,1に同一回転数の回転動力が伝動されれば、走行機体2が直進走行する一方で、異なる回転数の回転動力が伝動されれば、低速の動力が伝動された側に走行機体2が旋回走行される。
刈取クラッチ49によって断続伝動される動力は、フィーダ駆動軸51に伝動される。フィーダ駆動軸51は、フィーダコンベア13を搬送駆動させる他、分岐軸52に伝動される。分岐軸52の動力は、掻込オーガ駆動軸53に伝動されて掻込オーガ11を掻込駆動させるとともに、刈刃駆動軸54に伝動されて刈刃12を刈取駆動させる。
また、分岐軸52の動力は、リール変速装置55にも伝動される。このリール変速装置55は、分岐軸52の動力がチェーン伝動される入力軸56と、該入力軸56と一体回転する入力プーリ57と、出力軸58と、該出力軸58と一体回転する出力プーリ59と、入力プーリ57と出力プーリ59との掛け回されるVベルト61とから構成される。
入力軸56の動力は、変速アクチュエータ62(図8参照)を介した入力プーリ57と出力プーリ59とVベルト61の作動により、無段階で変速され出力軸58に伝動される。具体的には、入力プーリ57及び出力プーリ59がそれぞれ幅方向に分割される割プーリであって、変速アクチュエータ62によって、各割プーリ57,59の一対の分割体を互いに離間・近接させる方向に移動させることにより、入力軸56から出力軸58に伝動される動力の速度比を無段階で切換える。
そして、この出力軸58の動力は、リール4の回転軸63にチェーン伝動され、該リール4を回転駆動させる。すなわち、リール変速装置55は、リール4の回転数を無段階で変更するように構成されている。ちなみに、左右一方の昇降アーム34は、このリール4に動力を伝動する各種伝動部材を収容する伝動ケース34Aになる。
図6は、操縦部の斜視図である。操縦部14は、オペレータが着座する座席64(図1参照)と、該座席64の側方に配置された主変速レバー(変速操作具)66及び副変速レバー67と、座席64の前方に配置されたマルチステアリングレバー(操向操作具,昇降操作具)68と、主変速レバー66及び副変速レバー67の後方に配置されたスイッチパネル69を備えている。
主変速レバー66は、走行HST44を介した走行変速操作を行う。主変速レバー66は、走行HST44をニュートラル状態とする前後中立位置から左右一方側への揺動によって、該中立位置からの前方揺動が可能になる一方で、中立位置からの左右他方側への揺動によって、該中立位置からの後方揺動が可能になる。そして、主変速レバー66の中立位置からの前方揺動によって、走行HST44を介した前進走行側への増速操作を行う一方で、主変速レバー66の中立位置からの後方揺動によって、走行HST44を介した後進走行側への増速操作を行う。
この主変速レバー66の上端部には左右方向に長いグリップ66aが形成されている。このグリップ66aの側部には、該グリップ66aを把持しながら押し操作可能なモーメンタリ式の掻込スイッチ(操作手段)71が設けられ、該グリップ66aの背面側には、オルタネート式の倒伏スイッチ(操作手段)72が配設されている。
副変速レバー67は、前後揺動によってトランスミッション46を介した走行変速切換を行う。
マルチステアリングレバー68は、前後揺動によってリフトシリンダ16による刈取部3の昇降操作を行うとともに、左右揺動によって、走行機体2の走行時における上述したトランスミッション46を介した左右旋回の操作(操向操作)を行う。
図7は、スイッチパネルの平面図である。スイッチパネル69には、刈取る対象となる作物を、豆と、稲との少なくとも2種類で選択可能(具体的には大豆と、稲・麦とを選択可能)な作物切替ダイヤル(作物切替検出手段)73と、後述する強制掻込制御(下降刈取制御)又は倒伏刈り制御(下降刈取制御)の実行時にリール4の刈取部3に対する相対高さを最下降位置として設定するリール下降高さ設定ダイヤル(リール下降高さ設定手段)74と、シーソースイッチである脱穀・刈取クラッチスイッチ(脱穀クラッチ断続操作手段,刈取クラッチ断続操作手段)76とを備えている。
脱穀・刈取クラッチスイッチ76を一方側に傾斜した状態と、水平な状態と、他方側に傾斜した状態との何れかに切換えることにより、脱穀クラッチ47及び刈取クラッチ49の両方を切断させる切断状態と、脱穀クラッチ47のみを接続して刈取クラッチ49を切断させる脱穀状態と、脱穀クラッチ47及び刈取クラッチ49の両方を接続させる接続状態との何れかに切換える。
該汎用コンバインによれば、刈取部3を下降させ且つリール4を回転させた状態で、走行機体2を前進走行させることにより、刈取作業を行う。具体的には、刈取作業中、リール4によって後方に掻込まれる圃場の作物を刈刃12によって刈取り、刈取られた作物は、掻込オーガ11及びフィーダコンベア13によって、走行機体2の脱穀部19まで後方搬送される。脱穀部19側まで搬送された作物は、該脱穀部19によって脱穀・選別処理され、穀粒はグレンタンク21に収容される一方で、その他の屑等の排出物は走行機体2の後端部から機外に排出される。この刈取作業中のリール4の回転速度(回転数)、昇降及び前後進等は、制御部77によって制御される。
次に、図1、図5、図6、図8及び図9に基づいて制御部77の構成を説明する。
図8は制御部の構成を示すブロック図である。制御部77は、一又は複数のマイコン等から構成され、各種情報を記憶するROM等の記憶部77aを有している。
制御部77の出力側には、上述のリフトシリンダ16、昇降シリンダ37、前後進シリンダ36及び変速アクチュエータ62と、脱穀クラッチ47及び刈取クラッチ49の断続を行う脱穀・刈取クラッチアクチュエータ78とが接続されている。
制御部77の入力側には、上述のリール前後進位置検出手段38、リール昇降高さ検出手段39、掻込スイッチ71、倒伏スイッチ72、作物切替ダイヤル73、リール下降高さ設定ダイヤル74及び脱穀・刈取クラッチスイッチ76の他、マルチステアリングレバー68による刈取部3の昇降操作を検出するポテンショメータ等の刈取部昇降操作検出手段79と、リール4の上昇操作を行うリール上昇スイッチ(リール上昇操作手段)81Aと、リール4の下降操作を行うリール下降スイッチ(リール下降操作手段)81Bと、リール4の前進操作を行うリール前進スイッチ(リール前進操作手段)82Aと、リール4の後進操作を行うリール後進スイッチ(リール後進操作手段)82Bと、車高を検出するポテンショメータ等の車高検出手段83と、刈高さを検出する刈高さ検出手段84と、刈取部3の昇降高さを検出するように上述の揺動軸3a側に設けられたポテンショメータ等の刈取部昇降高さ検出手段86と、リール4の回転数を検出する回転センサ等のリール回転数検出手段87と、脱穀・刈取クラッチアクチュエータ78によって切換えられる脱穀クラッチ47及び刈取クラッチ49の状態を検出(具体的には、「切断状態」、「脱穀状態」又は「接続状態」の何れの状態であるかを検出)する脱穀・刈取クラッチセンサ(脱穀クラッチ断続検出手段,刈取クラッチ断続検出手段)88と、作物切替検出センサ(作物切替検出手段)89と、走行機体2の走行速度(車速)を検出する回転センサ等の車速センサ(車速検出手段)91とが接続されている。
マルチステアリングレバー68の上部背面における左右一方寄りには、モーメンタリ式のリール上昇スイッチ81A及びリール下降スイッチ81Bが上下振分け配置され、左右他方寄りには、リール前進スイッチ82A及びリール後進スイッチ82Bが上下振分け配置されている。
刈高さ検出手段84は、図2に示す通り、刈取部3の下面側に形成される左右方向の支持軸92を支点に上下揺動する検知プレート(検知体)93の該上下揺動位置を検出するポテンショメータによって構成されている。そして、この検知プレート93の自由端部を圃場面Gに接地させた状態で、該検知プレート93の上下揺動位置を刈高さ検出手段84によって検出することにより、刈取部3の対地高さ(刈高さ)の検出を行う。
また、この検知プレート93は、自由端が刈取部3の下方に突出して上下揺動可能な作動状態(図2で実線で示す検知プレート93)と、自由端が刈取部3側に格納されて係脱自在に係止される係止状態(図2で仮想線で示す検知プレート93)とに切換可能に構成されている。この作動状態と係止状態も刈高さ検出手段84によって検出可能である。
なお、この刈高さ検出手段84によって刈取部3の対地高さを検出できるのは、前記検知プレート93が圃場面Gに接地している状態に限られ、それ以外の状態では、車高検出手段83及び刈取部昇降高さ検出手段86の検出結果を利用して刈取部3の対地高さを算出する。すなわち、車高検出手段83、刈高さ検出手段84及び刈取部昇降高さ検出手段86は、刈取部3の対地高さを検出する対地高さ検出手段になる。
図9(A)は大豆用の受樋の構成を示す斜視図であり、(B)は稲・麦用の受樋の構成を示す斜視図である。左右方向に延びる一番ラセン28及び二番ラセン29の下方には、側断面視U字状をなし且つ左右方向に延びる受樋94がそれぞれ着脱自在に設けられている。この他、一番ラセン28から一番物を引継いで上方搬送する搬送装置や、二番ラセン29から二番物を引継いで上方搬送する搬送装置の真下側にも、この受樋94が着脱自在に設置されている。
この受樋94は、幅方向である前後方向の両側上端部から互いに離間する方向に、取付座96,96が一体的に突出形成されている。各受樋94は、前記前後一対の取付座96,96をボルト等で固定することにより、脱穀部19に着脱可能に取付けられる。
この受樋94には、大豆用の受樋94Aと、稲・麦用の受樋94Bの2種類が用意され、大豆用受樋94Aは、泥を落とすために、多数の孔94aが穿設されている一方で、稲・麦用の受樋96Bには、そのような孔が穿設されておらず、この違いによって、作物に応じた効率的な処理を行うことが可能になる。
稲・麦用の受樋94Bを、脱穀装置19側に設置すると、該受樋94Bが脱穀装置19側に設けられていた検出スイッチである作物切替検出センサ89に接当してON作動する一方で、大豆用の受樋94Aの取付座96には、切欠き状部96aが形成され、この受樋94Aを、脱穀装置19側に設置しても、該切欠き状部96aによって、作物切替検出センサ89が取付座96に接当せず、OFF状態で保持される。この作物切替検出センサ89のON・OFFの検知によって、制御部77は、刈取作物が稲・麦であるか、或いは大豆であるかを識別可能になる。
図8に示す車速センサ(車速検出手段)91は、左右のクローラ式走行装置1のドライブシャフト又はその伝動経路の途中の伝動軸の回転数を検出することにより、車速を検出するように構成されている。
制御部77は、マルチステアリングレバー68の前揺動操作を刈取部昇降操作検出手段79によって検出し、この検出結果に基づいて、リフトシリンダ16を伸縮作動させることにより刈取部3を昇降駆動させる。すなわち、オペレータは、マルチステアリングレバー68の前後揺動によって、刈取部3の昇降操作を行う。
また、制御部77は、リール上昇スイッチ81A及びリール下降スイッチ81Bからの操作信号に基づき、昇降シリンダ37の伸縮作動によってリール4を刈取部3に対して昇降作動させ、リール前進スイッチ82A及びリール後進スイッチ82Bからの操作信号に基づき、前後進シリンダ36の伸縮作動によってリール4を刈取部3に対して前後進作動させる。すなわち、オペレータは、マルチステアリングレバー68の上部背面側に配置された4つのスイッチ81A,81B,82A,82Bによって、リール4の上下及び前後の位置調整を行う。
また、制御部77は、車速センサ91及び変速アクチュエータ62によって、リール4の回転速度(回転数)を車速に連動させるリール回転自動制御を行う。具体的には、このリール回転自動制御の実行中、車速が増速されるとリール4の回転数が増加する一方で、車速が減速されるとリール4の回転数が減少する。このようにして車速の増減に伴う刈取り処理量の変化に適用させる。
さらに制御部77は、掻込スイッチ71の押し操作に起因して所定条件下で強制掻込制御を実行し、倒伏スイッチ72の押し操作に起因して所定条件下で倒伏刈り制御を実行する。この強制掻込制御又は倒伏刈り制御の実行時には、上述のリール回転自動制御の実行は停止される。詳しく説明すると、強制掻込制御と、倒伏刈り制御と、リール回転自動制御とは、排他的に実行され、一の制御を実行している際は、他の2つの制御の実行は停止される。
下降刈取制御の一種である強制掻込制御の実行時、制御部77は、リール4を昇降範囲の下側且つ前後進範囲の後側の位置(強制掻込位置)に移動させ、該リール4を車速によらない所定範囲の回転速度(強制掻込回転速度)で維持させる。このような強制掻込制御によって、車速が低速の場合や走行停止している状態であっても、所定の速度で回転駆動されるリール4によって、その場の作物を強制的に掻込みながら刈取ることが可能になる。
ちなみに、前記強制掻込位置は、豆類を刈取る場合と、稲等を刈取る場合とで、その位置が異なる。具体的には、稲等(具体的には稲又は麦)を刈取る場合、刈取部3に対してリール下降高さ設定ダイヤル74で設定される最下降位置又は固定的に設定された物理的な最下降位置であって且つ最後方位置となるリール4の位置が前記強制掻込位置になる。一方、豆類(具体的には大豆)を刈取る場合、回転するリール4のタイン18が常時非接地となる下降位置であって且つ最後方位置となるリール4の位置が前記強制掻込位置になる。
また、前記強制掻込回転速度は、豆類を刈取る場合よりも、稲等を刈取る場合の方が高速に設定される。具体的には、稲等(具体的には稲又は麦)を刈取る場合、リール4は最高速度で回転駆動される。一方、豆類(具体的には大豆)を刈取る場合、リール4は、その強制掻込制御を実行する直前におけるリール4の回転速度を維持して回転駆動される。
このような強制掻込位置及び強制掻込回転速度の設定によれば、豆類等の作物を刈取る場合にタイン18が圃場の泥土を掻込むことにより汚粒の原因になることが防止される。また、リール4の回転数も低く設定されるため、高速で回転するリール4によって割られた状態で脱粒されることも効率的に防止される。
下降刈取制御の一種である倒伏刈り制御の実行時、制御部77は、リール4を昇降範囲の下側且つ前後進範囲の前側の位置(倒伏刈り位置)に移動させ、該リール4を車速によらない所定範囲の回転速度(倒伏刈り回転速度)で維持させる。このような倒伏刈り制御によって、圃場で倒伏している作物を、所定の速度で回転駆動されるリール4によって掻込みながら効率的に刈取ることが可能になる。
ちなみに、前記倒伏刈り位置は、豆類を刈取る場合と、稲等を刈取る場合とで、その位置が異なる。具体的には、稲等(具体的には稲又は麦)を刈取る場合、リール下降高さ設定ダイヤル74で設定される最下降位置又は固定的に設定された物理的な最下降位置であって且つ最前方位置となるリール4の位置が前記強制掻込位置になる。一方、豆類(具体的には大豆)を刈取る場合、回転するリール4のタイン18が常時非接地となる下降位置であって且つ最前方位置となるリール4の位置が前記倒伏刈り位置になる。
また、前記倒伏刈り回転速度は、豆類を刈取る場合よりも、稲等を刈取る場合の方が高速に設定される。具体的には、稲等(具体的には稲又は麦)を刈取る場合、リール4は最高速度で回転駆動される。一方、豆類(具体的には大豆)を刈取る場合、リール4は、その強制掻込制御を実行する直前におけるリール4の回転速度を維持して回転駆動される。
このような倒伏刈り位置及び倒伏刈り回転速度の設定によれば、豆類等の作物を刈取る場合にタイン18が圃場の泥土を掻込むことにより汚粒の原因になることが防止される。また、リール4の回転数も低く設定されるため、高速で回転するリール4によって割られた状態で脱粒されることも効率的に防止される。
すなわち、強制掻込制御や倒伏刈り制御等の下降刈取制御では、稲等を刈取る場合の制御(通常下降刈取制御)と、豆類を刈取り場合の制御(特殊下降刈取制御)で、その処理内容を異ならせる。
次に、図8、図10〜図12に基づいて、下降刈取制御を実行するための制御部77の処理内容を詳述する。
図10は、制御部の下降刈取制御を実行するための処理手順を示すメインフロー図である。制御部77は、処理が開始されると、ステップS101から処理を開始する。ステップS101では、掻込スイッチ71又は倒伏スイッチ72が操作(ON)されている状態であるか否かを確認し、操作されている状態であることが確認された場合にはステップS102に進む。
ステップS102では、脱穀・刈取クラッチセンサ88によって刈取クラッチ49が接続されている状態(具体的には前記「接続状態」であるか否か)を確認し、刈取クラッチ49が接続されて刈取部3及びリール4が駆動されている状態であればステップS103に進む一方で、刈取クラッチ49が切断されて刈取部3及びリール4が駆動停止されている状態であればステップS101に処理を戻す。
ステップS103では、下降刈取制御(強制掻込制御又は倒伏刈取り)の実行している状態であるか否かを示すフラグのON・OFFを確認し、実行されていない状態(OFF状態)が確認されれば、ステップS104に進む。ステップS104では、その時点での刈取部3の昇降位置と、リール4の昇降位置及び前後進位置とを、刈取部昇降高さ検出手段86、リール昇降高さ検出手段39及びリール前後進位置検出手段38によって検出し、この検出結果を自身の記憶部77aに記憶し、ステップS105に進む。ステップS105では、フラグをONにセットし、ステップS106に進む。
ステップS106では、下降刈取制御(強制掻込制御又は倒伏刈取り制御)のサブルーチンを実行(下降刈取制御を実行)し、この処理が終了すると、ステップS101に処理を戻す。ステップS103において、フラグが既にONになっている状態が確認されている場合、ステップS106に進む。
ステップS101において、掻込スイッチ71又は倒伏スイッチ72が操作(ON)されていない状態が確認された場合、ステップS107に進む。ステップS107では、上記フラグのON・OFFを確認し、ONであれば掻込スイッチ71又は倒伏スイッチ72がONからOFFに切換えられた直後であるとみなしてステップS108に進む一方で、OFFであればステップS101に処理を戻す。
ステップS108では、ステップS104において記憶部77aに記憶した昇降高さに刈取部3を昇降させるとともに該記憶部77aに記憶した昇降高さ及び前後進位置にリール4を昇降駆動又は前後進させ、ステップS109に進む。ステップS109では、フラグをOFFにセットし、ステップS101に処理を戻す。
ちなみに、このフラグがOFFからONに切換えられると、下降刈取制御(強制掻込制御又は倒伏刈取り制御)が実行される状態であるため、リール回転自動制御の実行は停止される。一方、このフラグがONからOFFに切換えられると、下降刈取制御(強制掻込制御又は倒伏刈取り制御)の実行が停止され、リール回転自動制御の実行が再開される。
図11は、下降刈取制御のサブルーチンの処理フロー図である。制御部77は、下降刈取制御のサブルーチン処理を開始されると、ステップS201から処理を開始する。ステップS201では、刈取る作物が豆類か、或は稲等であるかを、作物切替ダイヤル73からの操作信号に基づいて検知し、刈取る作物が豆類(本例では大豆)である場合にはステップS202に進む一方で、稲等(本例では稲又は麦)である場合にはステップS203に進む。
ステップS203では、上述した通常下降刈取制御を実行し、この下降刈取制御の処理を終了させ、図10に示すメインルーチンに処理を戻す。この通常下降刈取制御の実行時において、掻込スイッチ71が押し操作されている状態(ON状態)の強制掻込制御では、リール4の前後進位置は最後方位置になる一方で、倒伏スイッチ72が押し操作されている状態(ON状態)の倒伏刈り制御では、リール4の前後進位置は最前方位置になる。
ステップS202では、上述した特殊下降刈取制御を実行し、この下降刈取制御の処理を終了させ、図10に示すメインルーチンに処理を戻す。
図12(A)は特殊下降刈取制御を実行する前のリールの昇降高さを示す側面図であり、(B)は特殊下降刈取制御の実行中のリールの昇降高さを示す側面図であり、(C)は特殊下降刈取制御の実行した後のリールの昇降高さを示す側面図である。制御部77は、特殊下降制御の実行時には、まず、対地高さ検出手段(車高検出手段83、刈高さ検出手段84及び刈取部昇降高さ検出手段86)によって、刈取部3の対地高さを検知する(図12(A)参照)。
続いて、制御部77は、上述のようにして検知された刈取部3の対地高さより、リール4の対地高さを算出し、タイン18が圃場面Gに接触(接地)する昇降高さ以下への下降を規制した状態(移動軌跡Dが圃場面Gよりも上方に位置した状態)で、リール4を刈取部3に対して下降駆動させ、この特殊下降刈取制御の実行中は、この規制状態を保持する(図12(B)参照)。この際のリール4の下降位置が強制掻込位置又は倒伏刈り位置になる。ちなみに、この特殊下降刈取制御の実行時において、掻込スイッチ71の押し操作する強制掻込制御では、リール4の前後進位置は最後方位置になる一方で、倒伏スイッチ72の押し操作する倒伏刈り制御では、リール4の前後進位置は最前方位置になる。
最後に、この特殊下降刈取制御の実行が停止されると、上記ステップS108の処理によって、前記記憶部77aに記憶した昇降位置及び前後進位置にリール4を復帰させる(図12(C)参照)。
この特殊下降刈取制御の実行時において、掻込スイッチ71が押し操作されている状態(ON状態)の強制掻込制御では、リール4の前後進位置は最後方位置になる一方で、倒伏スイッチ72が押し操作されている状態(ON状態)の倒伏刈り制御では、リール4の前後進位置は最前方位置になる。
以上のような構成の本汎用コンバインによれば、掻込スイッチ71及び倒伏スイッチ72の操作によって、リール回転自動制御と、強制掻込制御と、倒伏刈り制御との切替を迅速に行い、また、刈取り対象となる作物によって、最適な処理が行われるため、作物の刈取作業を、効率的且つ迅速に行うことが可能になる。
なお、図10に示すステップS102の処理は省略可能であり、ステップS101からステップS103に直接処理を進めてもよい。この場合には、脱穀・刈取クラッチスイッチ76の操作状態によらず、フラグのON・OFFによって、脱穀・刈取クラッチアクチュエータ78を制御する。
具体的には、下降刈取制御が実行される状態であるフラグのON状態では、脱穀・刈取クラッチアクチュエータ78によって、脱穀・刈取クラッチスイッチ76の操作状態によらず、上述した「接続状態」への切換を実行するように制御部77を構成する。
言換えると、下降刈取制御の実行時には「接続状態」になっている必要があるが、この条件を満たす場合のみ、下降刈取制御を実行するようにしてもよいが、この条件を満たすように、脱穀・刈取クラッチアクチュエータ78によって、「接続状態」に強制的に切換を行ってもよい。
また、図11に示すステップS201において、作物切替ダイヤル73の操作状態に基づき、刈取り対象となっている作物が豆類であるか、或いは稲等であるかを判断し、作物が豆類である場合にはステップS202に処理を進め、稲等である場合にはステップS203に処理を進める例につき説明したが、刈取り対象となる作物が豆類であるか、或いは稲等であるかを、作物切替検出センサ89のON・OFFによって判断してもよい。
具体的には、作物切替検出センサ89がON状態の場合に刈取り対象となる作物が稲等と判断する一方で(図9(B)参照)、OFF状態の場合に刈取り対象となる作物が豆類であると判断する。
これに加えて、刈取る対象の作物が豆類の場合、稲等の場合と比較して、リール4の回転数及び唐箕ファン27の回転数を低く設定操作することが望ましく、これらの状態をステップS201において判断してもよい。
具体的には、制御部77の入力側にリール4又は唐箕ファン27の回転数を調整する回転数切換操作手段97を接続し(図7及び図8参照)、出力側に上述のリール4用の変速アクチュエータ62の他、唐箕ファン27の回転数を変更する唐箕ファン変速アクチュエータ98を接続して設ける。
そして、ステップS201において、リール4や唐箕ファン26の回転数が低く設定されていることが回転数切換操作手段97によって検出された場合には刈取る対象が豆類等であると判断してステップS202に処理を進める一方で、それ以外の場合には刈取る対象が稲等であると判断してステップS203に処理を進める。
さらに、刈取る対象物が稲等の場合には検知プレート93を係止状態とし、豆類の場合には検知プレート93を作動状態とすることに着目し、ステップS201において、刈高さ検出手段84によって係止状態が検出された場合には刈取る対象が稲等であると判断してステップS203に処理を進める一方で、作動状態が検出された場合には刈取る対象が豆類であると判断してステップS202に処理を進めてもよい。
次に、図13に基づき、特殊下降刈取制御の変形例について、上述の例と異なる部分を説明する。
図13は、特殊下降刈取制御の変形例に関するものであり、(A)は特殊下降刈取制御を実行する前のリールの昇降高さを示す側面図であり、(B)は特殊下降刈取制御の実行中のリールの昇降高さを示す側面図であり、(C)は特殊下降刈取制御の実行した後のリールの昇降高さを示す側面図である。
制御部77は、特殊下降制御の実行時には、まず、対地高さ検出手段(車高検出手段83、刈高さ検出手段84及び刈取部昇降高さ検出手段86)によって、刈取部3の対地高さを検知する(図13(A)参照)。
続いて、制御部77は、前記検出された対地高さにおいて、リール4を、リール下降高さ設定ダイヤル74で設定される最下降位置又は固定的に設定された物理的な最下降位置に下降させたと仮定した場合に、該リール4のタイン18が接地(移動軌跡Dが圃場面Gよりも下方に位置)するか否かを算出し、接地すると算出された場合には該最下降と仮定したタイン18が非接地となる昇降高さまで刈取部3を上昇駆動させる一方で(図13(B)参照)、それ以外の場合には刈取部3をその場で昇降停止させる。
最後に、この特殊下降刈取制御の実行が停止されると、上記ステップS108の処理によって、前記記憶部77aに記憶した昇降位置に刈取部3が復帰するとともに、該記憶した昇降位置及び前後進位置にリール4が復帰する(図13(C)参照)。