JP2019168530A - トナー及びトナーの製造方法 - Google Patents

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【課題】低温定着した際のテープ剥離耐性に優れ、排紙貼付問題を起こしにくいトナー。【解決手段】結着樹脂及びワックスを含有するトナー粒子を有するトナーであって、トナーを100℃から3.0℃/分で降温した時のDSC曲線において、60℃以上の最大の発熱ピーク温度Tcを基準として、Tc−10℃〜Tc−5℃の領域に発熱ピークが存在せず、Tc±5℃の領域の発熱量をA[3]とし、Tc−10℃〜Tc−5℃の領域の発熱量をB[3]とし、同様に10.0℃/分の温度で降温した時に得られる曲線において、Tc±5℃の領域の発熱量をA[10]とし、Tc−10℃〜Tc−5℃の領域の発熱量をB[10]としたとき、下記式を満たすトナー。C[3]=B[3]/(A[3]+B[3]) …(1)C[10]=B[10]/(A[10]+B[10]) …(2)C[10]−C[3]≧0.21 …(3)【選択図】なし

Description

本発明は、電子写真法などを利用した記録方法に用いられるトナー及びトナーの製造方法に関する。
近年、複写機やプリンターなどの画像形成装置は、使用目的及び使用環境の多様化が進むと共に、更なる高速化、高画質化、省エネ化、高安定化が求められている。
電子写真法としては多数の方法が知られている。一般には光導電性物質を利用し、種々の手段により静電荷像担持体(以下、「感光体」ともいう)上に静電潜像を形成する。次いで前記潜像をトナーにより現像を行って可視像とし、紙などの記録媒体にトナー像を転写する。その後、熱又は圧力等により記録媒体上にトナー画像を定着して複写物を得るものである。このような電子写真法を用いた画像形成装置としては、複写機やプリンター等がある。
これら複写機やプリンターは、潜像の再現性に優れ高解像度であると同時に、省エネルギー対策として低温でも定着性の良いトナーが求められており、定着性改良のために結着樹脂の溶融粘度の改良等が行われている。なかでも、定着画像を粘着テープで剥離させるテープ剥離耐性を向上させるには溶融時のトナーの粘性を下げる必要がある。
一方で溶融時のトナーの粘性を下げることでトナーは熱により軟化しやすくなるため、特に両面印刷された定着直後の画像が積層された場合に画像同士の貼付が生じやすくなる(排紙貼付問題)。
上記課題に対して、従来数多くの技術が開示されている(例えば特許文献1〜3参照)。
特開2017−102396号公報 国際公開第2014/157424号 特開2003−50478号公報
しかしながら、上記文献に記載のトナーであっても、低温定着した際のテープ剥離耐性と排紙貼付問題の高度な成立に関しては不十分であり、更なる改善が必要である。
本発明の課題は、低温定着した際のテープ剥離耐性に優れ、排紙貼付問題を起こしにくいトナー及びその製造方法を提供することである。
結着樹脂及びワックスを含有するトナー粒子を有するトナーであって、
示差走査熱量測定により、トナーを100℃から3.0℃/分の降温速度で降温した時に得られる曲線において、60℃以上で観察される最大の発熱ピーク温度Tcを基準としたとき、該Tc−10℃〜該Tc−5℃の領域に発熱ピークが存在せず、
該Tc±5℃の領域の発熱量をA[3]とし、該Tc−10℃〜該Tc−5℃の領域の発熱量をB[3]とし、
示差走査熱量測定により、トナーを100℃から10.0℃/分の降温速度で降温した時に得られる曲線において、該Tc±5℃の領域の発熱量をA[10]とし、該Tc−10℃〜該Tc−5℃の領域の発熱量をB[10]としたとき、
下記式(1)で求められるC[3]及び下記式(2)で求められるC[10]が、下記式(3)を満たし、
該発熱量A[3]が0.5J/g以上であることを特徴とするトナー。
C[3]=B[3]/(A[3]+B[3]) …(1)
C[10]=B[10]/(A[10]+B[10]) …(2)
C[10]−C[3]≧0.21 …(3)
本発明により、低温定着した際のテープ剥離耐性に優れ、排紙貼付問題を起こしにくいトナーを得ることができる。
画像形成装置の一例を示す模式的断面図 (a)、(b)DSC曲線の例 処理工程の温度推移の一例を示す図
以下、本発明を詳細に説明するが、これら説明に限定されるわけではない。
本発明において、数値範囲を表す「○○以上××以下」や「○○〜××」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。
本発明のトナーは、結着樹脂及びワックスを含有するトナー粒子を有するトナーであって、
示差走査熱量測定により、トナーを100℃から3.0℃/分の降温速度で降温した時に得られる曲線において、60℃以上で観察される最大の発熱ピーク温度Tcを基準としたとき、該Tc−10℃〜該Tc−5℃の領域に発熱ピークが存在せず、
該Tc±5℃の領域の発熱量をA[3]とし、該Tc−10℃〜該Tc−5℃の領域の発熱量をB[3]とし、
示差走査熱量測定により、トナーを100℃から10.0℃/分の降温速度で降温した時に得られる曲線において、該Tc±5℃の領域の発熱量をA[10]とし、該Tc−10℃〜該Tc−5℃の領域の発熱量をB[10]としたとき、
下記式(1)で求められるC[3]及び下記式(2)で求められるC[10]が、下記式(3)を満たし、
該発熱量A[3]が0.5J/g以上であることを特徴とする。
C[3]=B[3]/(A[3]+B[3]) …(1)
C[10]=B[10]/(A[10]+B[10]) …(2)
C[10]−C[3]≧0.21 …(3)
本発明者らは、上記のような構成とすることで定着後のトナー放冷時のワックスの凝固挙動を好ましい状態に制御でき、低温定着した際のテープ剥離耐性に優れ、排紙貼付問題を起こしにくいトナーが得られることを見出した。
本発明の構成要件について、更に説明する。
トナーを低温定着させるためにはトナーが軟化する温度を低下させることが重要である。一方で、単に軟化する温度を低下させるだけでは一般に高温環境下でのトナー保管は難しくなるため、製品として成立しにくくなる。これを回避するために、定着温度に到達すると速やかに軟化が生じる特性が重要となる(シャープメルト性)。
これには、例えばトナーに可塑性のあるワックスを混合することで、ワックスの融解とともにトナー自体を可塑させ、速やかにトナーを軟化させる手法などがある。一方でこの手法をとった場合には、特に両面印刷された直後に画像が積層された場合に可塑したトナー同士が余熱で接着してしまい、印刷用紙を引き剥がした際に一部が剥離されるなどの画像不良が生じる問題がある。
このように、従来技術を用いた場合は低温定着性の向上と排紙貼付の抑制を両立させることは困難である。本発明者らは鋭意検討を行ったところ、特有の熱的挙動を有するトナーとすることにより冷却時のワックスの凝固挙動を好ましい状態に制御でき、この問題を解決できることを見出した。
すなわち、定着時に可塑を起こしたトナーが放冷される際、一定の温度まではワックスとの相溶状態を維持した軟化状態にあり、それ以下の温度では相溶状態が解消され、冷却とともにワックスが一斉に析出する相分離状態に制御するものである。相溶状態を維持することで紙繊維にトナーが濡れ広がり定着性が向上するとともに、一定の温度を下回った際に相分離状態となることで速やかにトナーの固化が進み、排紙貼付が生じにくくなる。以下、冷却時のワックスの凝固挙動について説明する。
トナーを100℃に加熱し、3.0℃/分で緩慢に温度を下げた場合、ワックスは相分離をして単体として凝固する割合が多くなる。この時、ワックスは結晶化に伴い発熱するため、DSC曲線においてワックス単体に由来する発熱(結晶化)ピークが得られる。そのピーク温度を発熱ピーク温度Tcとする。この時、ワックス単体の含有量の目安としてはTc±5℃の領域の発熱量(A[3])を挙げることができる。
一方で、トナーを100℃に加熱し、10.0℃/分で急速に温度を下げた場合、ワックスは単体として凝固する割合が減少し、ある一定の温度まで相溶状態を維持した後、Tcより低い温度で結晶として析出するものが増える。この際、結晶成長する時間がないため、析出する結晶は1μm以下のサイズの微結晶となる。この時、微結晶ワックスの含有量の目安としてはTc−10℃〜Tc−5℃の領域の発熱量(B[10])を挙げることができる。
一方、上記と同様に、3.0℃/分で緩慢に温度を下げた場合のTc−10℃〜Tc−5℃の領域の発熱量B[3]は、微結晶ワックスの含有量の目安となる。また、10.0℃/分で急速に温度を下げた場合のTc±5℃の領域の発熱量A[10]は、ワックス単体の含有量の目安となる。
このように、トナーの降温速度の違いによってトナー中のワックスの相溶状態の振る舞いについて知見を得ることができる。
図2に、3.0℃/分で降温した場合と10.0℃/分で降温した場合のDSC曲線の例を示す。
この考え方を用いると、トナーが3.0℃/分又は10.0℃/分で冷却される際の微結晶ワックスの発生のしやすさとして以下のC[3]、又はC[10]をそれぞれ定義することができる。
C[3]=B[3]/(A[3]+B[3]) …(1)
C[10]=B[10]/(A[10]+B[10]) …(2)
ここで、3.0℃/分で降温した時にTc−10℃〜Tc−5℃の領域に他材料に由来するピークがある場合、C[3]、C[10]はそのピークの変化に影響されて正確に定義できないため注意が必要である。
本発明では、示差走査熱量測定DSCにより、トナーを100℃から3.0℃/分の温度で降温した時に得られる曲線において、60℃以上で観察される最大の発熱ピーク温度Tcを基準としたとき、Tc−10℃〜Tc−5℃の領域に発熱ピークが存在しないことが必要である。該発熱ピークを有さないことにより、B[3]及びB[10]は主にワックスの凝固による発熱量と考えることができるためである。
また、該発熱ピークを有さないためには、Tc−10℃〜Tc−5℃の範囲に凝固点を持つワックスを使用しないように材料選定を行えばよい。複数のワックスを用いる場合は、お互いに相溶することで単体とは異なる温度に凝固点を持つ場合があるため、そのことを考慮して材料選定を行うことが好ましい。
なお、両面印刷された定着直後の画像が積層された場合の温度低下速度はおおよそ10℃/分である。すなわち、両面印刷された定着直後のトナーにおける微結晶ワックスの発生のしやすさはC[10]−C[3]で表すことができる。
本発明では、C[10]−C[3]が以下の式(3)を満たすことが必要である。
C[10]−C[3]≧0.21 …(3)
C[10]−C[3]は、好ましくは0.24以上であり、より好ましくは0.30以上である。一方、上限は特に制限されないが、好ましくは0.50以下であり、より好ましくは0.40以下である。
C[10]−C[3]が式(3)の範囲を満たし、Tc−10℃〜Tc−5℃の範囲で微結晶ワックスが発生する場合、定着後のトナーは一定の温度まではワックスとの相溶状態を維持した軟化状態にあり、それ以下の温度では相溶状態が解消され、冷却とともにワックスが一斉に析出する相分離状態となる。このため、低温定着した際のテープ剥離耐性と排紙貼付問題の両立が可能となる。特に従来技術では成立しなかった、可塑性ワックスの多量添加トナーにおいても良好な排紙貼付性を確保することができる。
C[10]−C[3]は、ワックス種及びワックス量、ワックス分散状態などにより制御できる。また、複数種のワックスを混在させることでも制御が可能である。
また、トナーを100℃から3.0℃/分の温度で降温した時のDSC曲線において、60℃以上で観察される最大の発熱ピークTcに対し、Tc±5℃の領域の発熱量(A[3])が、0.5J/g以上であることが必要である。
3.0℃/分で降温した際のワックスの結晶化ピークの大きさは微結晶ワックスに転じることのできるワックス量を示す。これが小さすぎる場合には冷却速度を変えても微結晶ワックスの発生量は変化しにくい。A[3]が上記範囲であると微結晶ワックスの量が好適になる。A[3]が、0.5J/g未満であると、十分に結着樹脂を可塑化できないため、テープ剥離耐性に影響する。
A[3]は、好ましくは2J/g以上であり、より好ましくは3J/g以上である。一方、上限は特に制限されないが、好ましくは30J/g以下であり、より好ましくは25J/g以下である。
A[3]は、ワックス種及びワックス量により制御できる。
トナー粒子は、ワックスを含有する。冷却速度によってトナーを可塑できる量が大きく変化するワックスを用いることが好ましい。そのため、ワックスが、モノエステル化合物を含むことが好ましい。
ワックスの可塑性を低くすることで排紙貼付問題が改善しやすく、一方でワックスの可塑性が高いと低温定着性が良化しやすい。モノエステル化合物の1分子あたりの平均炭素数が36以上44以下であると、より良好な可塑性が得られるため好ましい。より好ましくは平均炭素数38以上42以下である。
同様にワックスが少ない場合は排紙貼付問題を良化することができ、多い場合は低温定着性を良好に保つことができる。結着樹脂100質量部に対するワックスの含有量は、好ましくは15質量部以上40質量部以下であり、より好ましくは18質量部以上35質量部以下である。
さらに、ワックスに由来する結晶化ピークTcが低すぎる場合には、例えば5℃冷却するのに必要な時間が増加することから、トナー粒子中に微結晶が発生するまでの時間も増加する。このことから、可塑状態の時間が長くなり、排紙貼付問題が発生しやすくなってしまう。そのため、本発明ではTcが60℃以上であることが必要である。当該範囲であると好適に排紙貼付を抑制することができる。Tcは、好ましくは61℃以上75℃以下である。
また、トナー粒子は炭化水素系ワックスを含むことが好ましい。トナー粒子中で炭化水
素系ワックスが微結晶ワックス発生の核となることにより、効果的に微結晶ワックスを発生させることができる。
炭化水素系ワックスの含有量は、結着樹脂100質量部に対し、好ましくは2質量部以上30質量部以下であり、より好ましくは5質量部以上15質量部以下である。
また、透過型電子顕微鏡で観察されるトナー粒子の断面において、ワックスを含む微小ドメインが存在することが好ましい。定着前のトナー粒子中に予め微小ドメインを形成させておくことで、定着後の放冷中に微結晶ワックスの発生を促進できる。
トナー粒子断面にワックスなどの結晶性材料を観察しやすいように染色処理を行い、その断面の透過型電子顕微鏡観察により確認したラメラ構造を有した領域を結晶性材料のドメインとする。さらにドメインの長径が10nm以上1000nm以下であるドメインを、本発明において微小ドメインと呼ぶ。また、ドメインの長径が1000nmを超えるドメインを、大ドメインと呼ぶ。なお、微小ドメインの詳細な測定方法は後述する。
微小ドメインの大きさ(長径)は結着樹脂中に相溶しているワックス量の目安になり、微小ドメインのサイズが大きいほど結着樹脂中に相溶しているワックスの量は少なく、逆に微小ドメインのサイズが小さいほど相溶しているワックスは多くなる。相溶しているワックス量が少ない場合にも多い場合にも定着前後の可塑状態の変化は小さくなる傾向にある。
微結晶ワックスの形成に伴う可塑状態の変化を良好にする観点から、微小ドメインの長径の個数平均値が、50nm以上350nm以下が好ましく、100nm以上250nm以下がより好ましい。個数平均値が50nm以上であると、定着後の微小ドメインは定着中もその構造が消失することはなく、定着後の放冷中に微結晶ワックスの発生を効果的に促進できる。個数平均値が350nm以下であると、結着樹脂がまだ十分な可塑状態にあるため、定着による可塑の進行が速やかに進む。
また、微小ドメインがトナー粒子表層近傍に局在している場合、微結晶ワックスの発生がより定着に寄与しやすくなる。
微小ドメインの大きさや個数は、ワックスの含有量及び種類、並びに後述するトナーの製造方法により調整することが可能である。
まず、トナーの結着樹脂中にワックスを相溶させた後に結晶化させることで、結着樹脂全体にワックスの結晶核を形成する。その後、該結晶核を起点としてワックスを結晶化させることで、トナー粒子全体にワックスを含む微小ドメインが分散した状態を得ることができる。
次に、ワックスについて述べる。
ワックスとしては以下のものが挙げられる。
低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプッシュワックス、パラフィンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物、またはそれらのブロック共重合物;カルナバワックス、モンタン酸エステルワックスなどの脂肪酸エステルを主成分とするワックス類、及び脱酸カルナバワックスなどの脂肪酸エステル類を一部または全部を脱酸化したもの;パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸などの飽和直鎖脂肪酸類;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、パリナリン酸などの不飽和脂肪酸類;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールなどの飽和アルコール類;ソルビトールなどの多価アルコール類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドなどの脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドなどの飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、
N,N’ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’ジオレイルセバシン酸アミドなどの不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’ジステアリルイソフタル酸アミドなどの芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪族金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸などのビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリドなどの脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加などによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物が挙げられる。
上記ワックスは、1種を又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明においては、脂肪酸エステルを主成分とするワックス(以下、エステルワックス)を使用すると、冷却速度によってトナーに可塑できる量が大きく変化するため好ましい。さらに、特定の製造方法において微小ドメインを形成しやすくなる。なお、ワックスがモノエステル化合物を含有する場合、これら特性がより顕著に表れることから、より好ましい。モノエステル化合物は、1分子中に含まれるエステル基の数が一つであるエステルワックスを意味する。
エステルワックスを形成する脂肪族アルコールの例としては、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、1−ノナノール、1−デカノール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、1−ヘキサデカノール、ステアリルアルコール、アラキジルアルコール、ベヘニルアルコール、リグノセリルアルコールが挙げられる。
また、脂肪族カルボン酸の例としては、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸が挙げられる。
モノエステル化合物の1分子あたりの平均炭素数が、36以上44以下であることが好ましい。炭素数のが36以上のモノエステル化合物は、比較的長鎖のアルキル鎖のために、排紙貼付問題を良化できる。また、炭素数が44以下のモノエステル化合物を用いると、トナーが熱を受けた際に、モノエステル化合物が結着樹脂を十分に可塑しやすく、低温定着性を良化できる。
モノエステル化合物は、例えば炭素数6〜24の脂肪族アルコールと長鎖カルボン酸の縮合物や、炭素数4〜24の脂肪族カルボン酸と長鎖アルコールの縮合物が使用できる。ここで、長鎖カルボン酸や長鎖アルコールは、任意のものが使用出来るが、上記炭素数や下記融点を満たし得るようなモノマーを組み合わせることが好ましい。
モノエステル化合物の融点は、60℃以上90℃以下であることが好ましく、61℃以上80℃以下であることがより好ましい。
また、透過型電子顕微鏡により観察されるトナー粒子断面において、微小ドメインがトナー粒子表面近傍に局所的に存在している場合が好ましい。これは、可塑効果がより定着性に寄与しやすいためである。このために、ワックスは炭化水素系ワックスを含有することが好ましい。
炭化水素系ワックスは、直鎖状の炭化水素鎖部分が積み重なる形で結晶化することが知られており、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスなどが挙げられる。
例えば、懸濁重合法によりトナーの製造した場合、炭化水素系ワックスはトナー粒子の中心付近に大ドメインを形成しやすくなる。このため、微小ドメインをトナー粒子の表面近傍に局所的に偏在させやすくなり、上述の範囲に制御しやすくなる。
モノエステル化合物の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは15質量部以上30質量部以下であり、より好ましくは18質量部以上25質量部以下である。15質量部以上にすることにより、低温定着性を良化できる。また、30質量部以下にする
ことで排紙貼付を抑制しやすくなる。
次に、結着樹脂について述べる。
結着樹脂としては、ポリスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−アクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸ブチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルブチラール、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリル酸樹脂を用いることができる。
これらは単独で又は複数種を組み合わせて用いることができる。この中でも特にスチレン−アクリル酸ブチルに代表されるスチレン系共重合体が現像特性、定着性等の点で好ましい。また、結着樹脂はその他公知の樹脂を組み合わせて使用することもできる。
スチレン系共重合体を形成する重合性単量体としては、以下のものが例示できる。
スチレン系重合性単量体としては、スチレン;α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレンのようなスチレン系重合性単量体が挙げられる。
アクリル系重合性単量体としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、iso−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレートのようなアクリル系重合性単量体が挙げられる。
メタクリル系重合性単量体としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、iso−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、iso−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレートのようなメタクリル系重合性単量体が挙げられる。
なお、スチレン系共重合体の製造方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
トナー粒子は、必要に応じて結晶性ポリエステルを含んでいてもよい。
結晶性ポリエステルは、特に限定されず、公知のものを使用できるが、飽和ポリエステルであることが好ましい。結晶性樹脂とは、示差走査熱量分析において明確な融点を示す樹脂をいう。
さらに、脂肪族ジカルボン酸、脂肪族ジオール、及び脂肪族モノカルボン酸の縮合物であることが好ましい。結晶性ポリエステルの構成成分として脂肪族モノカルボン酸を含有させることは、結晶性ポリエステルの分子量や水酸基価の調整がし易くなることに加えて、ワックスとの親和性を制御できるため好ましい。結晶性ポリエステルを用いることで、結晶性ポリエステルの微小ドメインの存在がワックスを含む微小ドメインの生成を促進すると考えられる。
結晶性ポリエステルの含有量は、結着樹脂100質量部に対し、0.1〜10質量部が好ましく、0.2〜5質量部がより好ましい。
結晶性ポリエステルには、例えば以下のモノマーが使用できる。
脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ヘキサデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸などが挙げられる。
脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,16−ヘキサデカンジオール、1,18−オクタデカンジオールなどが挙げられる。
脂肪族モノカルボン酸としては、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸などが挙げられる。
ここで、モノカルボン酸はカルボン酸が一つであるため、モノカルボン酸由来の構造は結晶性ポリエステルの分子鎖の末端に位置する。
結晶性ポリエステルを使用すると、ワックスとの親和性が高まる。その結果、結晶性ポリエステルがワックスの核として作用することで、より効果的に微結晶ワックスを発生させることができる。
詳細は後述するが、トナー製造工程中の冷却工程において、冷却速度が速いほど、この傾向が高まりやすく好ましい。
上記結晶性ポリエステルは、通常のポリエステル合成法で製造することができる。例えば、ジカルボン酸成分とジオ−ル成分をエステル化反応、又はエステル交換反応した後、減圧下又は窒素ガスを導入して常法に従って重縮合反応させることによって得ることができる。
エステル化又はエステル交換反応の時には、必要に応じて硫酸、ターシャリーブチルチタンブトキサイド、ジブチルスズオキサイド、酢酸マンガン、酢酸マグネシウムなどの通常のエステル化触媒又はエステル交換触媒を用いることができる。また、重合に関しては、通常の重合触媒、例えば、ターシャリーブチルチタンブトキサイド、ジブチルスズオキサイド、酢酸スズ、酢酸亜鉛、二硫化スズ、三酸化アンチモン、二酸化ゲルマニウムなどの公知のものを使用することができる。重合温度、触媒量は特に限定されるものではなく、必要に応じて任意に選択すればよい。
触媒としてはチタン触媒を用いることが好ましく、キレート型チタン触媒であるとより好ましい。これはチタン触媒の反応性が適当であり、良好な分子量分布のポリエステルが得られるためである。
トナー粒子には、必要に応じて着色剤を用いることもできる。
着色剤としては、以下の有機顔料、有機染料、及び、無機顔料が挙げられる。
シアン系着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、及び、塩基染料レーキ化合物が挙げられる。
マゼンタ系着色剤としては、以下のものが挙げられる。縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、及び、ペリレン化合物。
イエロー系着色剤としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、及び、アリルアミド化合物が挙げられる。
黒色着色剤としては、カーボンブラックや、上記イエロー系着色剤、マゼンタ系着色剤、シアン系着色剤、及び磁性体を用いて黒色に調色されたものなどが挙げられる。
これらの着色剤は、単独又は混合し更には固溶体の状態で用いることができる。本発明に用いられる着色剤は、色相角、彩度、明度、耐光性、OHP透明性、及び、トナー粒子中の分散性の点から選択される。着色剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上60.0質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量部以上50.0質量部以下である。
トナーには磁性体を用いることもできる。磁性体は、四三酸化鉄やγ−酸化鉄などの磁性酸化鉄を主成分とするものであり、リン、コバルト、ニッケル、銅、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、珪素などの元素を含んでもよい。これら磁性体は、窒素吸着法によるBET比表面積が2〜30m/gであることが好ましく、3〜28m/gであることがより好ましい。また、モース硬度が5から7のものが好ましい。磁性体の形状としては、多面体、8面体、6面体、球形、針状、鱗片状などがあるが、多面体、8面体、6面体、球形等の異方性の少ないものが、画像濃度を高める上で好ましい。
磁性体は、個数平均粒径が0.10〜0.40μmであることが好ましい。一般に磁性体の粒径は小さい方が着色力は上がるものの磁性体が凝集しやすくなるため、上記範囲が着色力と凝集性のバランスの観点で好ましい。
磁性体は、例えば下記の方法で製造することができる。第一鉄塩水溶液に、鉄成分に対して当量又は当量以上の水酸化ナトリウム等のアルカリを加え、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製する。調製した水溶液のpHをpH7以上に維持しながら空気を吹き込み、水溶液を70℃以上に加温しながら水酸化第一鉄の酸化反応を行い、磁性酸化鉄粉体の芯となる種晶をまず生成する。
次に、種晶を含むスラリー状の液に前に加えたアルカリの添加量を基準として約1当量の硫酸第一鉄を含む水溶液を加える。液のpHを5〜10に維持しながら空気を吹き込みながら水酸化第一鉄の反応を進め、種晶を芯にして磁性酸化鉄粉体を成長させる。この時、任意のpH及び反応温度、撹拌条件を選択することにより、磁性体の形状及び磁気特性をコントロールすることが可能である。酸化反応が進むにつれて液のpHは酸性側に移行していくが、液のpHは5未満にしない方が好ましい。このようにして得られた磁性体を定法によりろ過、洗浄、乾燥することにより磁性体を得ることができる。
また、水系媒体中でトナーを製造する場合、磁性体表面を疎水化処理することが非常に好ましい。乾式にて表面処理をする場合、洗浄・ろ過・乾燥した磁性体にカップリング剤処理を行う。湿式にて表面処理を行う場合、酸化反応終了後、乾燥させたものを再分散させる、又は酸化反応終了後、洗浄、濾過して得られた磁性体を乾燥せずに別の水系媒体中に再分散させ、カップリング処理を行う。乾式法及び湿式法どちらも適宜選択できる。
磁性体の表面処理において使用できるカップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等が挙げられる。より好ましく用いられるのはシランカップリング剤であり、一般式(I)で示されるものである。
SiY (I)
[式中、Rは(好ましくは炭素数1〜6の)アルコキシ基を示し、mは1〜3の整数を示し、Yはアルキル基、ビニル基、エポキシ基、(メタ)アクリル基などの官能基を示し、nは1〜3の整数を示す。但し、m+n=4である。]
Yがアルキル基であるものが好ましく、より好ましいのは、炭素数3以上6以下のアルキル基であり、特に好ましくは炭素数3又は4のアルキル基である。
シランカップリング剤を用いる場合、単独で処理する、又は複数の種類を併用して処理することが可能である。複数の種類を併用する場合、それぞれのカップリング剤で個別に処理してもよいし、同時に処理してもよい。
用いるカップリング剤の総処理量は磁性体100質量部に対して0.9質量部以上3.0質量部以下であることが好ましく、磁性体の表面積、カップリング剤の反応性等に応じ
て処理剤の量を調整することが重要である。
磁性体以外に他の着色剤を併用してもよい。併用し得る着色剤としては、上記した公知の染料及び顔料の他、磁性又は非磁性の無機化合物が挙げられる。具体的には、コバルト、ニッケルなどの強磁性金属粒子、又はこれらにクロム、マンガン、銅、亜鉛、アルミニウム、希土類元素などを加えた合金。ヘマタイトなどの粒子、チタンブラック、ニグロシン染料/顔料、カーボンブラック、フタロシアニン等が挙げられる。これらもまた、表面を処理して用いることが好ましい。
磁性体の含有量は、結着樹脂100.0質量部に対して40質量部以上200質量部以下が好ましい。より好ましくは、90質量部以上160質量部以下である。
トナーには、必要に応じて荷電制御剤を用いることもできる。荷電制御剤としては公知のものが利用できるが、摩擦帯電速度が速く、かつ一定の摩擦帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が好ましい。さらに、トナー粒子を懸濁重合法により製造する場合には、重合阻害性が低く、水系媒体への可溶化物が実質的にない荷電制御剤が好ましい。
荷電制御剤としてはトナーを負荷電性に制御するものと正荷電性に制御するものがある。トナーを負荷電性に制御するものとしては、例えば以下のものが挙げられる。モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸、オキシカルボン酸又はダイカルボン酸系の金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族モノ若しくはポリカルボン酸又はその金属塩、無水物、若しくはエステル類、ビスフェノールのようなフェノール誘導体類、尿素誘導体、含金属サリチル酸系化合物、含金属ナフトエ酸系化合物、ホウ素化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーン、及び荷電制御樹脂が挙げられる。
上記の荷電制御剤は、単独又は2種類以上組み合わせて使用することができる。
これら荷電制御剤の中でも、含金属サリチル酸系化合物が好ましく、特にその金属がアルミニウムもしくはジルコニウムであるものが好ましい。
荷電制御剤の添加量は、結着樹脂100.0質量部に対して0.01質量部以上20.0質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量部以上10.0質量部以下である。
また、荷電制御樹脂としては、スルホン酸基、スルホン酸塩基若しくはスルホン酸エステル基を有する重合体又は共重合体を用いることが好ましい。スルホン酸基、スルホン酸塩基又はスルホン酸エステル基を有する重合体としては、特にスルホン酸基含有アクリルアミド系モノマー又はスルホン酸基含有メタクリルアミド系モノマーを共重合比で2質量%以上含有することが好ましい。より好ましくは共重合比で5質量%以上含有することである。
荷電制御樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が35℃以上90℃以下、ピーク分子量(Mp)が10,000以上30,000以下、重量平均分子量(Mn)が25,000以上50,000以下であるものが好ましい。この荷電制御樹脂を用いた場合、トナー粒子に求められる熱特性に影響を及ぼすことなく、好ましい摩擦帯電特性を付与することができる。さらに、荷電制御樹脂がスルホン酸基を含有しているため、着色剤の分散液中の荷電制御樹脂自身の分散性、及び着色剤の分散性が向上し、着色力、透明性、及び摩擦帯電特性をより向上させることができる。
トナー粒子の製造方法は、公知のいずれの方法を用いてもよい。
例えば、粉砕法により製造する場合は、結着樹脂、ワックス、並びに、必要に応じて着色剤、結晶性ポリエステル、及び荷電制御剤などその他の添加剤をヘンシェルミキサ、ボールミルなどの混合機により十分混合する。その後、加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーのような熱混練機を用いて溶融混練して各種材料を分散又は溶解し、冷却固化工程
、粉砕工程、分級工程、必要に応じて表面処理工程を経てトナー粒子を得る。
粉砕工程では、機械衝撃式、ジェット式などの公知の粉砕装置を用いるとよい。また、分級工程及び表面処理工程の順序はどちらが先でもよい。分級工程においては生産効率上、多分割分級機を用いることが好ましい。
粉砕法のように乾式でトナー粒子を製造した場合、トナー粒子を得た後に、該トナー粒子を水系媒体中に分散し、分散液を得、その後、後述する冷却工程を含む特定の工程を行うとよい。
その際、トナー粒子が水系媒体中で熱を受けた際、合一しにくいように、後述するように、分散剤として公知の界面活性剤、有機分散剤及び無機分散剤を使用するとよい。該分散液が、難水溶性の無機分散剤を含有することが好ましい。
難水溶性の無機分散剤は、有害な超微粉を生じにくく、その立体障害性により分散安定性を得ているので反応温度を変化させても安定性が崩れにくい。また、洗浄も容易でトナーに悪影響を与えにくいため好ましい。さらに、難水溶性の無機分散剤は、極性が高く、疎水性であるワックスをトナー粒子表面に析出させにくい。
また、トナー粒子の製造方法として、懸濁重合法及び乳化凝集法を好適に例示することができる。懸濁重合法及び乳化凝集法を用いてトナー粒子を製造した場合、水系媒体中でトナー粒子を製造するため、製造工程に組み込みやすい。これらの製造方法は、トナー粒子の粒度分布をシャープにすること、トナー粒子の平均円形度を高めることが容易である。また、コアシェル構造を有するトナー粒子とすることも可能である。
以下に、懸濁重合法を用いたトナー粒子の製造例について詳細するが、本発明はこれらに限定されるわけではない。
懸濁重合法を用いたトナー粒子の製造方法は、以下の通りである。
まず、結着樹脂を生成しうる重合性単量体、ワックス、並びに、必要に応じて着色剤、結晶性ポリエステル、荷電制御剤、重合開始剤、及び架橋剤などその他の添加剤を均一に溶解又は分散して重合性単量体組成物を得る。
次いで、該重合性単量体組成物を、分散剤を含有する連続層(例えば水系媒体)中に適当な撹拌器を用いて分散し、該水系媒体中で該重合性単量体組成物の粒子を形成する。
次いで、該重合性単量体組成物の粒子に含まれる該重合性単量体を重合し、所望の粒径を有するトナー粒子を得る。
上記撹拌器の撹拌強度は、材料分散性、及び生産性などを考慮した強度を選択するとよい。
重合開始剤の添加時期は、重合性単量体と他の添加剤を添加する時に同時に加えてもよいし、水系媒体中に重合性単量体組成物を分散する直前に混合してもよい。また、重合性単量体組成物の粒子を形成した直後、重合反応を開始する前に重合性単量体又は溶媒に溶解した重合開始剤を加えることもできる。
重合性単量体を重合する場合、重合温度は通常40℃以上、好ましくは50℃以上90℃以下である。
重合性単量体としては、上述のスチレン系共重合体を形成する重合性単量体として例示したものが好ましい。
重合開始剤としては、重合反応時における半減期が0.5時間以上30時間以下であるものが好ましい。また、重合性単量体100質量部に対して、0.5質量部以上20質量部以下の添加量で用いて重合反応を行うと、分子量5000〜50000に極大を有する重合体を得やすくなる。
具体的な重合開始剤としては、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−
1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系又はジアゾ系重合開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレートなどの過酸化物系重合開始剤が挙げられる。
架橋剤としては、主として2個以上の重合可能な二重結合を有する化合物が用いられる。例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンなどのような芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレートなどのような二重結合を2個有するカルボン酸エステル;ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホンなどのジビニル化合物;及び3個以上のビニル基を有する化合物;が挙げられる。これらは、単独で、又は2種以上の混合物として用いられる。
架橋剤の添加量は、重合性単量体100質量部に対して、0.1質量部以上10.0質量部であることが好ましい。
分散剤としては、公知の界面活性剤、有機分散剤及び難水溶性の無機分散剤が使用できる。
無機分散剤の例としては、りん酸三カルシウム、りん酸マグネシウム、りん酸アルミニウム、りん酸亜鉛、ヒドロキシアパタイトなどのりん酸多価金属塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの炭酸塩、メタ硅酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの無機塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの無機化合物が挙げられる。
界面活性剤としては、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウムなどが挙げられる。
無機分散剤の添加量は、重合性単量体100質量部に対して、0.2質量部以上20.0質量部以下であることが好ましい。また、上記分散剤は単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。さらに、0.1質量部以上10.0質量部以下の界面活性剤を併用してもよい。
無機分散剤を用いる場合には、そのまま使用してもよいが、より細かい粒子を得るため、水系媒体中にて無機分散剤粒子を生成させて用いることができる。例えば、りん酸三カルシウムの場合、高速撹拌下、りん酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液とを混合して、水不溶性のりん酸カルシウムを生成させることができ、より均一で細かな分散が可能となる。
懸濁重合法又は乳化凝集法を用いてトナー粒子を製造した場合、トナー粒子が水系媒体中に分散された状態で得られるので、引き続き、下記冷却工程を含む特定の工程を行うとよい。これによりワックスの微小ドメインを好適に形成することができる。
以下に、工程(1)、(2)及び(3)について、具体例を挙げながら説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
図3は、工程(1)〜(3)において、トナー粒子が水系媒体に分散された分散液の温度の推移を模式的に示す。
図3において、601は工程(1)を、602は工程(2)を、603は工程(3)を示す。
609はトナー粒子のガラス転移温度Tg(℃)を、607はワックスの結晶化温度Tc(℃)を示す。
工程(1)では、分散液の温度を、ワックスの結晶化温度Tc(℃)及びトナー粒子のガラス転移温度Tg(℃)のうち高い方の温度より高い温度とする。なお、ワックスを複数用いる場合、Tcは、最も結晶化温度が高いワックスの値を用いる。
604は分散液を冷却する直前の温度を示し、開始温度T1とする。
605は分散液の冷却を完了した直後の温度を示し、停止温度T2とする。
続いて、工程(3)において、ワックスの結晶核の形成及び成長を促すために、分散液の温度を保持する。608及び610は、それぞれTg+10℃、Tg−10℃を示す線である。605は保持の開始温度T3であり、606は、工程(3)を開始した時間から30分経過した時間における分散液の温度T4を示す。611及び612はT1からT2に係る冷却速度1及びT3からT4に係る冷却速度2を示す。冷却速度1及び冷却速度2は以下の式により算出される。なお、図の例ではT2とT3は共に605であり同じ温度であるが、必ずしも両者は同一温度でなくてもよい。
冷却速度1=(T1(℃)−T2(℃))/冷却に要した時間(分)
冷却速度2=(T3(℃)−T4(℃))/30(分)
工程(1)は、結着樹脂及びワックスを含有するトナー粒子が水系媒体中に分散された分散液を、ワックスの結晶化温度Tc(℃)及びトナー粒子のガラス転移温度Tg(℃)のうち高い方の温度より高い温度とする工程である。この操作により、ワックス及び結着樹脂が分子レベルで混ざり合うことができる。
ここで、例えば、トナー粒子を水系媒体中で重合法により製造した場合、その重合温度が、ワックスの結晶化温度Tc(℃)及びトナー粒子のガラス転移温度Tg(℃)のうち高い方の温度を超えていれば、この操作は必要ない。
また、トナー粒子に含まれる、ワックス及び結着樹脂を、さらに均一に溶融する目的で、工程(1)において、分散液をワックスの結晶化温度Tc(℃)及びトナー粒子のガラス転移温度Tg(℃)のうち高い方の温度より高い温度で一定時間保持することが好ましい。該保持時間は30分以上が好ましく、90分以上がより好ましく、120分以上がさらに好ましい。一方、該保持時間の上限値は、その効果が飽和する1440分以下程度と考えられる。
工程(2)は、トナー粒子が分散された分散液を、ワックスの結晶化温度Tc(℃)及びトナー粒子のガラス転移温度Tg(℃)のうち高い方の温度より高い温度から、該Tg(℃)以下の温度まで、5.00℃/分以上の冷却速度で冷却する工程である。
また、工程(2)は、トナー粒子が分散された分散液を、ワックスの結晶化温度Tc(℃)及びトナー粒子のガラス転移温度Tg(℃)のうち高い方の温度より5℃以上22℃以下(より好ましくは10℃以上22℃以下)高い温度から、該Tg(℃)以下(より好ましくはTg−3℃以下)の温度まで、5.00℃/分以上の冷却速度で冷却する工程であることが好ましい。
また、結晶化温度Tc(℃)がガラス転移温度Tg(℃)より10℃以上(より好ましくは15℃以上40℃以下、さらに好ましくは15℃以上30℃以下)高い温度であることが好ましい。
結晶化温度Tc(℃)がガラス転移温度Tg(℃)より10℃以上高い温度である場合であって、分散液の温度を、結晶化温度Tc(℃)より5℃以上22℃以下高い温度から該Tg(℃)以下の温度まで、5.00℃/分以上の冷却速度で冷却した場合は、トナー粒子におけるワックスの分散状態や結晶化度をより制御しやすくなる。
工程(1)及び(2)において、トナー粒子のガラス転移温度Tg(℃)は、トナーのガラス転移温度Tg(℃)を用いてもよい。
分散液の温度を急速に冷却する手段としては、例えば、冷水や氷を混合する操作や、冷風により分散液をバブリングする操作、熱交換器を用いて分散液の熱を除去する操作など
を用いることが可能である。
該冷却速度は、50.00℃/分以上が好ましく、10.00℃/分以上がより好ましく、130.00℃/分以上がさらに好ましい。一方、該冷却速度の上限値は、その効果が飽和する3000℃/分以下程度である。
工程(3)は、工程(2)を経た分散液を、Tg±10℃の温度領域に(好ましくは、Tg±5℃の温度領域に)、30分以上保持する工程である。
この工程では、トナー粒子内部において、ワックスの結晶核の生成及び結晶成長による結晶化度の向上を行う。結晶核の生成及び結晶成長は、上述の温度領域において行うことができる。この温度領域に分散液の温度を保持することで、ワックスの分子が少しずつ移動しながら、結晶核を形成しはじめる。さらに温度を保つことで、ワックスの分子がさらに移動し、先ほど形成した結晶核を基点として、結晶成長が行われる。
分散液の温度が、上述の温度範囲内にある時間を保持時間とする。結晶化度を十分に向上させるためには、保持時間は、好ましくは30分以上であり、より好ましくは90分以上であり、さらに好ましくは120分以上である。一方、該保持時間の上限は、その効果が飽和する1440分以下程度である。
冷却の停止温度T2が上述の温度領域の範囲より低い場合、再度、分散液を加熱し、上述の温度領域の範囲とした上で、温度を保持してもよい。
工程(3)の最中に上述の温度領域をはずれた場合、再度、分散液の温度を調整して上述の温度領域に制御してもよい。その場合、上述の温度領域を満足した累積時間を保持時間とし、保持時間が30分以上であれば、本発明で好適なトナーを得やすくなる。
Tg−10℃未満の温度領域で保持した場合、結着樹脂が十分に固化されてしまっているため、相溶したワックスが結晶核を形成しにくくなる。
また、Tg+10℃より高い温度領域で保持した場合、結着樹脂が固化されていないため、工程(2)での急速な冷却を行っていないトナーと同様に、保存性が低下する場合がある。
ワックスの結晶核の生成及び結晶成長は、ある一定の温度領域に制御することで促される現象である。工程(3)では、分散液をTg±10℃の温度領域において、0.70℃/分以下(より好ましくは、0.40℃/分以下、さらに好ましくは0.20℃/分以下)の冷却速度で、冷却してもよい。
上記冷却速度1に対する冷却速度2の比が0.00以上0.05以下であることが好ましく、0.00以上0.02以下であることがより好ましい。この範囲の場合、工程(2)の冷却時に結着樹脂に相溶したワックスが工程(3)において、非常に多くの結晶核を形成するため、ワックスの分散量が増えるとともに、結晶化度がより向上する。
冷却速度2及び冷却速度1に対する冷却速度2の比を所定の範囲に制御するためには、工程(2)を経た水系媒体の温度を、所定の温度領域を満たすように、制御することが重要である。
上述のように、5.00℃/分以上の冷却速度で急速に冷却した場合、トナー内部において、ワックスの微小ドメインを多数分散させた状態にすることができる。また、ワックスの微小ドメインの長径の個数平均値を特定の範囲に制御しやすくなる。微小ドメインの長径の個数平均径は保持時間を長く保つことにより制御することが可能である。
上述の冷却工程により、トナー粒子内部にワックスの微小ドメインを形成することが可能なため、トナー粒子の表面のワックスの存在量が大幅に低下しやすくなる。ワックスがエステル化合物及び炭化水素ワックスを含有する場合に上記製造方法で製造した場合、エステル化合物が微小ドメインを形成し、炭化水素ワックスが大ドメインを形成しやすくなる。この場合は、炭化水素ワックスがトナー粒子の中心付近に大ドメインを形成するために、微小ドメインがトナー粒子の表面近傍に局所的に存在しやすくなる。
工程(2)及び工程(3)の処理を行う際、水系媒体中で処理を実施することで、疎水性であるワックスなどの結晶性材料は、トナー粒子内部に閉じ込められる。このため、得られるトナー粒子表面に、結晶性材料が存在することを抑制できる。
トナー粒子を粉砕法などの乾式で製造した場合は、得られたトナー粒子を水系媒体中に分散して分散液を得るとよい。懸濁重合法や乳化凝集法など、湿式でトナー粒子を製造した場合は、既に水系媒体中にトナー粒子が分散されているため、改めてトナー粒子を水系媒体中に分散する必要はない。
上記工程(1)〜(3)を経たトナー粒子を公知の方法によって濾過、洗浄、乾燥することができる。
得られたトナー粒子はそのままトナーとして用いてもよい。必要により外添剤などを添加混合し表面に付着させることで、トナーとしてもよい。外添剤の混合は、ヘンシェルミキサなど公知の手法を用いることができる。
また、製造工程(外添剤の混合前)に分級工程を入れ、粗粉や微粉を除去することも可能である。
外添剤として、一次粒子の個数平均粒径が4nm以上80nm以下(より好ましくは6nm以上40nm以下)の無機微粒子が好ましい。
無機微粒子の一次粒子の個数平均粒径は、走査型電子顕微鏡により拡大撮影したトナーの写真を用いて行うとよい。
無機微粒子は、トナーの流動性改良及びトナーの帯電性の均一化のために添加されるが、無機微粒子を疎水化処理することでトナーの帯電量の調整、環境安定性の向上などの機能を付与することも可能である。疎水化処理に用いられる処理剤としては、シリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シラン化合物、シランカップリング剤、その他有機硅素化合物、有機チタン化合物などの処理剤が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
無機微粒子としては、シリカ微粒子、酸化チタン微粒子、アルミナ微粒子などが挙げられる。シリカ微粒子としては、例えば、ケイ素ハロゲン化物の蒸気相酸化により生成された、いわゆる乾式法又はヒュームドシリカと称される乾式シリカ微粒子、及び、水ガラスなどから製造された、いわゆる湿式シリカ微粒子の両者が使用可能である。
また、乾式シリカ微粒子においては、製造工程において、塩化アルミニウム、塩化チタンなど他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによって、シリカと他の金属酸化物の複合微粒子を得ることも可能であり、それらも包含する。
無機微粒子の添加量は、トナー粒子100質量部に対して、0.1質量部以上3.0質量部以下であることが好ましい。
トナーの重量平均粒径(D4)は、4.0μm以上11.0μm以下であることが好ましく、より好ましくは5.0μm以上10.0μm以下である。
トナーの重量平均粒径(D4)を上記範囲に調整した場合、流動性がより向上し、潜像に忠実に現像することができる。
次に、トナーを好適に用いることのできる画像形成装置の一例を図1に沿って具体的に説明する。図1において、100は静電潜像担持体(以下、感光体とも呼ぶ)であり、その周囲に帯電部材(帯電ローラー)117、トナー担持体102、現像ブレード103及び撹拌部材141を有する現像器140、転写部材(転写帯電ローラー)114、クリーナー容器116、定着器126、ピックアップローラー124、搬送ベルト125などが設けられている。
感光体100は帯電ローラー117によって、例えば−600Vに帯電される(印加電圧は例えば交流電圧1.85kVpp、直流電圧−620Vdc)。そして、レーザー発
生装置121によりレーザー123を感光体100に照射することによって露光が行われ、目的の画像に対応した静電潜像が形成される。感光体100上の静電潜像は現像器140によって一成分トナーで現像されてトナー画像が得られる。トナー画像は転写材を介して感光体に当接された転写帯電ローラー114により転写材上へ転写される。トナー画像を載せた転写材は搬送ベルト125などにより定着器126へ運ばれ転写材上に定着される。また、一部感光体上に残されたトナーはクリーナー容器116によりクリーニングされる。
なお、ここでは磁性一成分ジャンピング現像の画像形成装置を示したが、ジャンピング現像又は接触現像のいずれの方法に用いられるものであってもよい。
以下、本発明のトナーに係る各物性の測定方法に関して記載する。
<トナー(粒子)の重量平均粒径(D4)及び個数平均粒径(D1)の測定>
トナー(粒子)の重量平均粒径(D4)及び個数平均粒径(D1)は、以下のようにして算出する。
測定装置としては、100μmのアパーチャチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いる。なお、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行う。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
なお、測定、解析を行う前に、以下のように専用ソフトの設定を行う。
専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μm以上60μm以下に設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250mL丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mLを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャチューブのフラッシュ」機能により、アパーチャチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100mL平底ビーカーに前記電解水溶液約30mLを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3mL加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に約3.3Lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを約2mL添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー(粒子)約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナー(粒子)を分散した前記(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)及び個数平均粒径(D1)を算出する。なお、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)であり、専用ソフトでグラフ/個数%と設定したときの、「分析/個数統計値(算術平均)」画面の「平均径」が個数平均粒径(D1)である。
<Tc、A[3]、B[3]、A[10]、B[10]の測定>
Tc、A[3]、B[3]、A[10]、B[10]は、示差走査熱量分析装置「Q2000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418−82に準じて測定する。装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、試料約2mgを精秤し、これをアルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用い、測定温度範囲30〜100℃の間で、昇温速度3.0℃/minで測定を行う。なお、測定においては、一度100℃まで昇温させ、続いて30℃まで降温速度3.0℃/minで降温させる。この降温過程で得られるDSC曲線において、60℃以上で観察される最大の発熱ピークをTcとする。Tcに対し、Tc±5℃の領域の発熱量をA[3]、Tc−5℃〜Tc−10℃の領域の発熱量をB[3]とする。
一方、A[10]及びB[10]については、上記方法において、昇温速度及び降温速度を10.0℃/minとして測定を行う。
3.0℃/minでの測定で得られたTcを基準として、10.0℃/minで測定したときのTc±5℃の領域の発熱量をA[10]とし、Tc−5℃〜Tc−10℃の領域の発熱量をB[10]とする。
<トナーからの結晶性ポリエステル及びワックスの含有量の測定>
結晶性ポリエステル及びワックスの含有量は下記のような分析方法があるため、例として述べる。
まず、トナーをクロロホルムに溶解し、例えばマイショリディスクH−25−2(東ソー社製)などを使用して不溶分を除去する。次に、分取HPLC(例えば、日本分析工業社製 LC−9130 NEXT 分取カラム[60cm])に可溶分を導入し、分子量5000以下未満とそれ5000以上に分取する。上記操作は、一般に離型剤は分子量が高く、結晶性ポリエステルはそれよりも高いことを利用して両者を分けることが目的である。その後、上記分取成分に対して、H−NMR測定することで、結着樹脂に対するワックスや結晶性ポリエステルの量を算出することができる。
<トナーからのモノエステル化合物及び炭化水素系ワックスの含有量の測定>
モノエステル化合物及び炭化水素系ワックスの含有量は下記のような分析方法があるため、例として述べる。
まず、トナーをクロロホルムに溶解し、例えばマイショリディスクH−25−2(東ソー社製)などを使用して不溶分を除去する。得られた溶液から溶媒を乾燥除去し、得られた析出物をIR及びH−NMRを測定することでエステル化合物と炭化水素系ワックスの含有量を求める。これにより、結着樹脂に対するモノエステル化合物や炭化水素系ワックスの量を算出することができる。
<微小ドメインの長径の個数平均値の測定方法>
ワックスを含む微小ドメインの長径の個数平均値とは、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察されるトナー粒子の断面画像をもとに、ワックスを含む結晶性材料の微小ドメインの長径から求められる個数平均径を意味する。
透過型電子顕微鏡(TEM)で観察されるトナー粒子断面は以下のようにして作製する。
オスミウム・プラズマコーター(filgen社、OPC80T)を用いて、保護膜としてトナーにOs膜(5nm)及びナフタレン膜(20nm)を施し、光硬化性樹脂D800(日本電子社)で包埋したのち、超音波ウルトラミクロトーム(Leica社、UC7)により、切削速度1mm/sで膜厚60nm(又は70nm)のトナー粒子断面を作製する。
得られた断面を、真空電子染色装置(filgen社、VSC4R1H)を用いて、RuOガス5
00Pa雰囲気で15分間染色し、TEM(JEOL社、JEM2800)のSTEM機能を用いて
STEM観察を行った。STEMのプローブサイズは1nm、画像サイズ1024×1024pixelで取得する。
得られた画像に対し、画像処理ソフト「Image-Pro Plus (Media Cybernetics社製)」を用いてドメインの長径を求める。
トナー粒子断面をルテニウム染色すると、ワックスなどの結晶性材料は染色されないため、TEM観察をしたときに、DF撮影において結晶性材料のドメインは黒く見え、ドメインを識別できる。
ドメイン径の算出においては、100個のトナー粒子の断面を観察する。長径が10nm以上1000nm以下の全てのドメインを計測し、個数平均値を算出する。ワックスを含む結晶性材料の微小ドメインの形成の有無を判別するとともに、得られた個数平均値を、ワックスを含む微小ドメインの長径の個数平均値とする。
以下、本発明を製造例及び実施例によりさらに具体的に説明するが、これらは本発明をなんら限定するものではない。なお、実施例中及び比較例中で記載されている「部」及び「%」は特に断りがない場合、全て質量基準である。
<ワックス1の合成>
温度計、窒素同入管、攪拌機、ディーンスタークトラップ及びジムロート冷却管を備えた反応容器に、アルコールモノマーとしてベヘニルアルコール100部、カルボン酸モノマーとしてステアリン酸80部を加え、200℃で15時間のエステル化反応を行った。得られたエステル化合物にトルエン20部及びイソプロパノール25部を添加し、エステル化合物の酸価1.5倍に相当する量の10%水酸化カリウム水溶液190部を加え、70℃で4時間撹拌した。その後、水槽部を除去した。
さらに20部のイオン交換水を入れて70℃で1時間撹拌した後、水槽部を除去して洗浄を行った。除去した水槽のpHが中世になるまで上記洗浄工程を繰り返した。その後、200℃、1kPaの条件で減圧して溶媒を除去して最終目的物であるベヘニルアルコールとステアリン酸のエステル化合物であるステアリン酸ベヘニル(ワックス1)を得た。ワックス1を分析したところ、融点は68℃であった。物性を表1に示す。
<ワックス2〜8の製造>
ワックス1の製造において、アルコールモノマーとカルボン酸モノマーを表1のように変更し、反応時間及び温度を所望の物性になるように調整したこと以外は同様にして、ワックス2〜8を得た。物性を表1に示す。なお、ワックス7はジステアリン酸エチレングリコールであるため、1分子に含有する炭素数は38である。さらにワックス8はセバシン酸ジステアレートであるため、1分子に含有する炭素数は46である。
Figure 2019168530

表中、酸価及び水酸基価の単位はmgKOH/gである。
<結晶性ポリエステル樹脂(CPES)の製造>
窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した反応槽中に、カルボン酸モノマーとしてセバシン酸及びラウリン酸、アルコールモノマーとして1,10−デカンジオールをそれぞれ1モルずつ投入した。
窒素雰囲気下で、撹拌しながら140℃に加熱して常圧下で水を留去しながら8時間反応させた。次いで、ジオクチル酸スズを添加した後、200℃まで10℃/時間で昇温しつつ反応させた。さらに、200℃に到達してから2時間反応させた後、反応槽内を5kPa以下に減圧して200℃で分子量を見ながら反応させて結晶性ポリエステル樹脂(重量平均分子量18000)を得た。
<磁性酸化鉄の製造>
Fe2+を2.0mol/L含有する硫酸鉄第一水溶液50リットルに、4.0mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液55リットルを混合撹拌し、水酸化第一鉄コロイドを含む第一鉄塩水溶液を得た。この水溶液を85℃に保ち、20L/minで空気を吹き込みながら酸化反応を行い、コア粒子を含むスラリーを得た。
得られたスラリーをフィルタープレスにてろ過・洗浄した後、コア粒子を水中に再度分散させ、リスラリーした。このリスラリー液に、コア粒子100部あたり珪素換算で0.20質量%となる珪酸ソーダを添加し、スラリー液のpHを6.0に調整し、撹拌することで珪素リッチな表面を有する磁性酸化鉄粒子を得た。得られたスラリーをフィルタープレスにてろ過、洗浄、更にイオン交換水にてリスラリーを行った。
このリスラリー液(固形分50g/L)に500部(磁性酸化鉄に対して10質量%)のイオン交換樹脂SK110(三菱化学製)を投入し、2時間撹拌してイオン交換を行った。その後、イオン交換樹脂をメッシュでろ過して除去し、フィルタープレスにてろ過・洗浄し、乾燥・解砕して個個数平均径が0.23μmの磁性酸化鉄を得た。
<シラン化合物の製造>
iso−ブチルトリメトキシシラン30部をイオン交換水70部に撹拌しながら滴下した。その後、この水溶液をpH5.5、温度55℃に保持し、ディスパー翼を用いて、周速0.46m/sで120分間分散させて加水分解を行った。その後、水溶液のpHを7.0とし、10℃に冷却して加水分解反応を停止させた。こうしてシラン化合物を含有する水溶液を得た。
<磁性体の製造>
磁性酸化鉄100部をハイスピードミキサー(深江パウテック社製 LFS−2型)に入れ、回転数2000rpmで撹拌しながら、シラン化合物を含有する水溶液8.0部を
2分間かけて滴下した。その後5分間混合・撹拌した。次いで、シラン化合物の固着性を高めるために、40℃で1時間乾燥し、水分を減少させた後に、混合物を110℃で3時間乾燥し、シラン化合物の縮合反応を進行させた。その後、解砕し、目開き100μmの篩を通して磁性体を得た。
<トナー粒子1の製造>
(水系媒体の調製)
イオン交換水720部にNaPO水溶液(0.1モル/L)450部を投入して60℃に加温した。その後、CaCl水溶液(1.0モル/L)67.7部を添加して、クレアミックス(エムテクニック製)を用いて、1,200r/minにて撹拌し水系媒体を調製した。
(磁性体分散工程)
下記原料を混合し、アトライタ(三井三池化工機株式会社製)を用いて均一に分散混合して磁性体含有重合性単量体を得た。
・スチレン 79.0部
・n−ブチルアクリレート 21.0部
・ジビニルベンゼン 0.6部
・モノアゾ染料の鉄錯体(T−77:保土ヶ谷化学社製) 1.5部
・磁性体 95.0部
・非晶性飽和ポリエステル樹脂 5.0部
ここで非晶性飽和ポリエステル樹脂(APES)はビスフェノールAのエチレンオキサイド(2モル)付加物及びビスフェノールAのプロピレンオキサイド(2モル)付加物とテレフタル酸との縮合反応により得られるものであり、Mw=9500、酸価=2.2mgKOH/g、ガラス転移温度=68℃の特性を持つものを用いた。
(重合性単量体組成物調製工程)
磁性体分散工程で得られた磁性体含有重合性単量体を63℃に加温し、下記原料を添加し、アトライタ(三井三池化工機株式会社製)を用いて1時間処理を行い、均一に分散混合して重合性単量体組成物を得た。
・ワックス1 22.0部
・脂肪族炭化水素系ワックス 8.0部
ここで、脂肪族炭化水素系ワックスは融点=75℃、Tc=72℃のパラフィンワックスを用いた。
(造粒工程及び重合工程)
上記水系媒体中に上記重合性単量体組成物を投入し、60℃、窒素雰囲気下においてクレアミックス(エムテクニック製)を用いて1,200r/minにて7分間撹拌し、重合開始剤としてtert−ブチルパーオキシピバレート5.0部を添加した。その後、13分間撹拌して造粒した。次に、パドル撹拌翼で撹拌しつつ70℃で4時間重合反応を実施した。
(冷却工程)
その後、冷却工程として、該分散体に常温の水を投入し、200℃/分の速度で分散体を100℃から50℃まで冷却した後、50℃で6時間保持し、常温(以下、30℃以下を常温とする)まで放冷した。
その後、分散体に塩酸を加えて十分洗浄することで分散剤を溶解し、濾過及び乾燥してトナー粒子1を得た。トナー粒子1の処方及び製法を表2に示す。
Figure 2019168530

表中の略称は以下の通り。
DVB:ジビニルベンゼン、APES:非晶性飽和ポリエステル樹脂、PW:パラフィンワックス、t−BP:tert−ブチルパーオキシピバレート、CPES:結晶性ポリエステル樹脂、RT:室温(25℃)
<トナー1の製造>
100部のトナー粒子1と、BET値が300m/gであり、一次粒子の個数平均粒径が8nmの疎水性シリカ微粒子0.8部とをヘンシェルミキサ(三井三池化工機株式会社製)で混合してトナー1を得た。トナー1の物性について、表3に示す。
<トナー2〜21及び、比較トナー1〜6の製造>
トナー粒子の処方及び製法を表2に示すように変更した以外は、トナー粒子1の製造と同様にして、トナー粒子2〜21、比較トナー粒子1〜6を得た。
そして、トナー1と同様に外添を行い、トナー2〜21及び比較トナー1〜6を得た。なお、比較トナー2,3(0℃/min.)は急冷工程を行っていない。物性を表3に示す。
<実施例1>
(評価1:低温低湿環境(温度15℃湿度10%)での定着性評価)
定着メディアにはFOX RIVER BOND紙(110g/m)を用い、画像形成
装置としては、LBP3410(キヤノン社製モノクロレーザービームプリンター)を、現像バイアスを調整できるよう改造したものを使用した。定着温度は、180℃とし、評価画像はライン画像とした。現像バイアスを振って画像部の反射濃度を高く設定することで画像上のトナー量を多くし、さらに比較的表面凹凸が大きい厚紙を用いることで、定着工程において紙の凹部やトナー層の下層部のトナーが溶融しにくくなるため、剥がれに対して厳しく評価できる。評価環境としても、低温であると定着器が暖まりにくく、厳しい評価となる。
評価手順を以下に示す。まず、画像形成装置を低温低湿環境(温度15℃湿度10%)下に一晩放置した。その後、FOX RIVER BOND紙を用いてライン幅が180μmになるよう、現像バイアスを調整した横線画像を印字する。さらに低温低湿環境において1時間放置した後に、横線画像に対してポリプロピレン製テープ(tesa社製、Klebeband 19mm×10mm)を張り付け、ゆっくり剥がした。剥がした後の画像を目視及び顕微鏡観察し、下記評価基準にて評価した。評価結果を表3に示す。
5:欠損無し
4:欠損がわずかに見られるが、目視では分からない
3:目視でも認識できる欠損がわずかに見られる
2:目視で認識できる欠損があり、ラインが途切れている部分がある
1:ラインの途切れが数多くある
(評価2:排紙貼付性)
画像形成装置として、評価1で使用した機種を用いベタ黒画像を連続で200枚両面出力した。排紙部から排紙された紙束は、積層部で30分以上放置し、室温まで冷却させた。その後、紙1枚1枚に分け、その際のベタ黒画像の中で白く抜けた箇所の個数により、画像の貼付性の評価をした。画像の貼りつきが起こりにくい場合、ベタ黒画像の白く抜けた箇所の個数が少ない。一方、貼りつきが多い場合、ベタ黒画像が上層の紙に貼りついてしまう。紙束を引きはがすことによって、ベタ黒画像が白く抜け、その箇所の個数が増大する。
5:欠損無し
4:ルーペを用いれば欠損がわずかに見られるが、目視では分からない
3:目視で認識できる欠損が用紙内に見られるが、平均個数は3個以下である
2:目視で認識できる欠損が用紙内に見られるが、平均個数は4個以上10個以下である1:目視で認識できる欠損が数多くある
<実施例2〜21>
実施例1にて、トナー1をトナー2〜21に変更したこと以外は実施例1と同様に画出し試験を行った。評価結果を表3に示す。
<比較例1〜6>
実施例1にて、トナー1を比較用トナー1〜6に変更したこと以外は実施例1と同様に画出し試験を行った。評価結果を表3に示す。
Figure 2019168530

表中、Xは、Tc−10℃〜Tc−5℃の領域における発熱ピークの有無を示す。微小ドメイン径は、長径の個数平均値を示す。
100:静電潜像担持体(感光体)、102:トナー担持体、103:現像ブレード、114:転写部材(転写帯電ローラー)、116:クリーナー容器、117:帯電部材(帯電ローラー)、121:レーザー発生装置(潜像形成手段、露光装置)、123:レーザー、124:ピックアップローラー、125:搬送ベルト、126:定着器、140:現像器、141:撹拌部材

Claims (8)

  1. 結着樹脂及びワックスを含有するトナー粒子を有するトナーであって、
    示差走査熱量測定により、トナーを100℃から3.0℃/分の降温速度で降温した時に得られる曲線において、60℃以上で観察される最大の発熱ピーク温度Tcを基準としたとき、該Tc−10℃〜該Tc−5℃の領域に発熱ピークが存在せず、
    該Tc±5℃の領域の発熱量をA[3]とし、該Tc−10℃〜該Tc−5℃の領域の発熱量をB[3]とし、
    示差走査熱量測定により、トナーを100℃から10.0℃/分の降温速度で降温した時に得られる曲線において、該Tc±5℃の領域の発熱量をA[10]とし、該Tc−10℃〜該Tc−5℃の領域の発熱量をB[10]としたとき、
    下記式(1)で求められるC[3]及び下記式(2)で求められるC[10]が、下記式(3)を満たし、
    該発熱量A[3]が0.5J/g以上であることを特徴とするトナー。
    C[3]=B[3]/(A[3]+B[3]) …(1)
    C[10]=B[10]/(A[10]+B[10]) …(2)
    C[10]−C[3]≧0.21 …(3)
  2. 前記ワックスが、モノエステル化合物を含む請求項1に記載のトナー。
  3. 前記モノエステル化合物の1分子あたりの平均炭素数が、36以上44以下である請求項2に記載のトナー。
  4. 前記モノエステル化合物の含有量が、結着樹脂100質量部に対し、15質量部以上30質量部以下である請求項2又は3に記載のトナー。
  5. 前記ワックスが、炭化水素系ワックスを含む請求項1〜4のいずれか一項に記載のトナー。
  6. 透過型電子顕微鏡により観察される前記トナー粒子の断面において、
    前記ワックスの微小ドメインが存在し、
    該微小ドメインの長径の個数平均値が、50nm以上350nm以下である請求項1〜5のいずれか一項に記載のトナー。
  7. 前記トナー粒子が、結晶性ポリエステルを含む請求項1〜6のいずれか一項に記載のトナー。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載のトナーの製造方法であって、
    以下の工程(1)〜(3)をこの順に有することを特徴とするトナーの製造方法。
    工程(1):前記トナー粒子が水系媒体中に分散された分散液を、前記ワックスの結晶化温度Tc(℃)及び前記トナー粒子のガラス転移温度Tg(℃)のうち高い方の温度より高い温度とする工程
    工程(2):前記分散液を、前記ワックスの結晶化温度Tc(℃)及び前記トナー粒子のガラス転移温度Tg(℃)のうち高い方の温度より高い温度から、該Tg(℃)以下の温度まで、5.00℃/分以上の冷却速度で冷却する工程
    工程(3):工程(2)を経た分散液を、該Tg±10℃の温度領域に、30分以上保持する工程
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