JP2019167561A - 溶鋼の昇温方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】RH真空脱ガス装置の真空槽内において、減圧下で酸素を溶鋼表面に吹き付けて溶鋼を昇温する際、溶鋼スプラッシュや低級酸化物の生成を抑制しつつ高い昇温効率を得る。【解決手段】RH真空脱ガス装置の真空槽内において、減圧下で酸素を溶鋼表面に吹き付けて溶鋼を昇温する方法であって、前記酸素を吹き付けるランスの先端形状が、直径Dt(m)のスロート部と、出口直径De(m)の円錐形の拡大部とからなり、下記式(1)から求められる適正ノズル前圧P0*(Pa)と下記式(2)から求められる操業ノズル前圧P0(Pa)との比P0/P0*を0.4以上0.75以下とする。(Dt/De)4=14.92×(Pe/P0*)1.43×{1−(Pe/P0*)0.286} …(1)P0=Pe+12.89×QT/Dt2…(2)(Pe:真空槽内圧力(Pa)、QT:上吹き酸素流量(Nm3/min))【選択図】図1

Description

本願は、RH真空脱ガス装置の真空槽内において、減圧下で酸素を溶鋼表面に吹き付けて溶鋼を昇温する方法を開示する。
転炉出鋼後の二次精錬工程において、溶鋼の成分調整、脱ガス処理等が行われるが、処理中に溶鋼温度が大きく低下するため、次工程である鋳造に適正な溶鋼温度に調整するという目的で昇温処理が行われる。一般的な溶鋼の昇温方法として、RHに代表される真空槽を具備した環流型真空脱ガス装置において、真空槽内上吹きランスから溶鋼表面に酸素を吹付け、溶鋼中Alと反応させてその酸化熱を利用する方法が挙げられる。
上記昇温プロセスにおいて着酸速度を向上させようとした場合、一般的に上吹き酸素ジェットをハードブローに制御することが有効である。例えば特許文献1では、酸素供給圧力を一定とし、該圧力と真空度の比がノズルスロート部面積とノズル吐出口面積の比から算出されるマッハ数より大きくすると脱炭速度が向上し、逆に小さくすると溶融金属の昇熱を効率よく実施できるとしている。これは、前者においては酸素ジェットをノズル出口で適正に膨張させ、ハードブローとすることで着酸速度を向上させることができ、後者においてはジェットをソフトブローとしてCOとの二次燃焼反応を生じさせることで、溶融金属を効率的に昇温できるという考え方である。
しかしながら、脱炭期に酸素ジェットをハードブローとしてしまうと激しい溶鋼飛散(溶鋼スプラッシュ)により炉壁が著しく損耗してしまうことに加え、溶鋼が過酸化な状態となりFeOが過剰に生成してしまう。さらに、Alを多量に含む溶鋼を前提とした場合、COガスは殆ど発生しないため二次燃焼反応は活用できず、特許文献1に記載の考え方では溶鋼の昇熱は困難である。
送酸時の溶鋼スプラッシュの問題に対し、特許文献2では、ラバールノズルのスロート径を30〜80mm、出口径を80〜140mmとすることで、ジェットの動圧を高すぎず、かつ低すぎない範囲に制御でき、送酸時の溶鋼スプラッシュを大きく低減できるとしている。
しかしながら、ラバールランスによるジェットの噴流挙動はノズル径以外にも酸素流量、真空度といった因子にも大きく左右されるため、ノズル形状を特許文献2の範囲に制御したからといって必ずしも溶鋼スプラッシュを抑制できるわけではない。
一方で、溶鋼への酸素供給条件によってはAl以外にSi、MnおよびFeが燃焼してSiO、MnOおよびFeOといった低級酸化物が生じ得る。このような低級酸化物は耐火物の溶損を著しく促進させることに加え、これらが取鍋スラグに吸収されることでスラグの酸化度が増加して溶鋼の再酸化や復硫といった弊害をも生じさせる。例えば特許文献3には、吹き付ける酸素ガスの流量と、溶鋼の環流量との比を適正範囲に調整し、かつ、加熱処理前の真空槽内の雰囲気圧力を段階的に変動させ、真空槽内の攪拌を制御することを特徴とする溶鋼の加熱方法が開示されている。この技術は、反応領域へのAl供給促進により局所的なAl欠乏を抑制して低級酸化物の生成を抑制する技術であるが、昇温処理初期は耐火物損耗抑制のため槽内圧力を高めとし、溶鋼Al濃度低下によりAl欠乏抑制が困難となる処理末期にかけて圧力を低下させて攪拌を強化、低級酸化物の還元を指向している。
しかしながら、環流量という指標はRH真空脱ガス装置全体の溶鋼の循環を記述するための指標であり、酸素ガス流量と環流量との比では真空槽内での局所的な混合を詳細に記述することができない。さらに、真空度は低圧力側でばらつきが非常に大きく、かつ排気開始から所定の圧力に到達するまで時間がかかるため、精錬時期に応じて真空度を精緻に制御することは極めて困難である。
特開平4−59913号公報 特開2017−75399号公報 特許第4277819号公報
上記したような従来の手法では、送酸時に生じる溶鋼スプラッシュおよび低級酸化物の生成といった弊害を抑制しつつ高い昇温効率を得ることは困難であるという課題がある。
本願は、上記課題を解決するための手段の一つとして、RH真空脱ガス装置の真空槽内において、減圧下で酸素を溶鋼表面に吹き付けて溶鋼を昇温する方法であって、前記酸素を吹き付けるランスの先端形状が、直径D(m)のスロート部と、出口直径D(m)の円錐形の拡大部とからなり、下記式(1)から求められる適正ノズル前圧P (Pa)と下記式(2)から求められる操業ノズル前圧P(Pa)との比P/P を0.4以上0.75以下とする、溶鋼の昇温方法を開示する。
(D/D=14.92×(P/P 1.43×{1−(P/P 0.286} …(1)
=P+12.89×Q/D …(2)
(ここで、P:真空槽内圧力(Pa)、Q:上吹き酸素流量(Nm/min)である。)
本開示の溶鋼の昇温方法において、下記式(3)及び(4)により求められるランスから上吹きされた酸素ジェットによる真空槽内溶鋼の攪拌動力ε(W)と、下記式(5)から求められるRH真空脱ガス装置の溶鋼環流を目的として吹き込まれたガスによる真空槽内溶鋼の攪拌動力ε(W)との比ε/εを0.3以上0.6以下とすることが好ましい。
ε=5.24×10×Q/H …(3)
M=[5×{(P/P0.285−1}]0.5 …(4)
ε=6.18×QT{2.3log(1+ρH/P)+(1−T/T)} …(5)
(ここで、M:上吹き酸素ジェットのマッハ数、H:ランス―湯面間距離(m)、Q:環流ガス流量(Nm/min)、T:溶鋼温度(K)、ρ:溶鋼密度(kg/m)、H:環流ガス吹込み羽口―真空槽内溶鋼湯面間距離(m)、T:環流ガス温度(K)である。)
本開示の溶鋼の昇温方法によれば、適正ノズル前圧と操業ノズル前圧との比を所定範囲内に制御して、ノズル近傍での酸素ジェットの膨張状態を制御することで、送酸時に生じる溶鋼スプラッシュおよび低級酸化物の生成といった弊害を抑制しつつ、高い昇温効率を得ることができる。
Al燃焼率とP/P との関係を示す図である。 耐火物損耗速度とP/P との関係を示す図である。図中、○、△、×はそれぞれ図1における○、△、×と対応している。 昇温速度とε/εとの関係を示す図である。図中、○、△、×はそれぞれ図1及び2における○、△、×と対応している。
1.用語の定義
本願において「環流」とは、RH真空脱ガス装置にて浸漬管から環流ガスを導入して溶鋼を環流させることを指し、「OB(Oxygen Blowing)処理」とは、真空槽内のランスから酸素を溶鋼表面に吹き付け、溶鋼中Alと反応させてその反応熱により溶鋼の昇温を行う処理を指す。また、「反応領域」とは、溶鋼表面に上吹きした酸素と溶鋼成分が直接反応している領域を指し、「低級酸化物」とは、AlよりもOとの親和力が弱いSi、MnおよびFeがOと反応して生成した酸化物を指す。
2.溶鋼の昇温方法の詳細
ラバールノズルにおいて、スロート部から出口部にかけて連続の式、等エントロピー流の式を考慮すると、スロート径と出口径との比D/D、および、雰囲気圧力(真空槽内圧力)と適正ノズル前圧との比P/P の間には下記式(1)に示す関係が成り立つ(例えばE.ラサクリシュナンら:「圧縮性流れの理論(丸善出版)」(H20/6/15発行))。下記式(1)をみると、D、DおよびPが決まれば、適正ノズル前圧P は一義に決まることがわかる。
(D/D=14.92×(P/P 1.43×{1−(P/P 0.286} …(1)
また、実操業におけるノズル前圧Pは、上吹き酸素流量QおよびDの関数として下記式(2)に示す経験式から求めることが出来る(小谷ら:鉄と鋼, 62(1976), 1795.)。
=P+12.89×Q/D …(2)
一般的にP とPとが等しい条件でジェットが適正膨張となり、ジェットの動圧が最も高くなる、すなわちハードブローとなることが知られている。しかしながら、本発明者らの知見では、ジェットがハードブローとなることで溶鋼スプラッシュが著しく増加することに加え、酸素が吹き込まれる反応領域近傍のAl欠乏が促進されてしまい、結果として低級酸化物の生成を著しく増加させてしまう。このことから、本発明者らは、ノズル前圧を適正膨張条件からあえて外し、かつP/P を適切な範囲に制御することで、溶鋼スプラッシュを増加させることなく昇熱速度を大きく向上できることを見出した。
一方で、低級酸化物の生成を更に抑制するためには、溶鋼に吸収された酸素を溶鋼流動により真空槽外に排出させ、装置全体に均一に分散させることが重要である。本発明者らは、上吹き酸素ジェットおよび環流ガスによる真空槽内溶鋼の攪拌動力密度、εおよびεのバランスε/εを制御することで、吸収された酸素の分散状態を制御できることを見出した。これは、反応領域近傍における酸素濃度が、酸素が吸収される速度と、吸収された酸素が反応領域から移動する速度のバランスで決定されるためであり、これらは概ね攪拌動力密度と一定の相関があるためである。
以上の通り、本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、以下に説明する溶鋼の昇温方法を完成させた。
すなわち、本開示の溶鋼の昇温方法は、RH真空脱ガス装置の真空槽内において、減圧下で酸素を溶鋼表面に吹き付けて溶鋼を昇温する方法であって、前記酸素を吹き付けるランスの先端形状が、直径D(m)のスロート部と、出口直径D(m)の円錐形の拡大部とからなり、下記式(1)から求められる適正ノズル前圧P (Pa)と下記式(2)から求められる操業ノズル前圧P(Pa)との比P/P を0.4以上0.75以下とすることを特徴とする。
(D/D=14.92×(P/P 1.43×{1−(P/P 0.286} …(1)
=P+12.89×Q/D …(2)
(ここで、P:真空槽内圧力(Pa)、Q:上吹き酸素流量(Nm/min)である。)
適正ノズル前圧P (Pa)と操業ノズル前圧P(Pa)との比P/P が1に近いほど酸素ジェットは適正膨張となり、ハードブローとなる。しかしながら、上述したように、P/P を過度に増加させると溶鋼のスプラッシュが著しく増加することに加え、酸素が吹き込まれる反応領域近傍のAl欠乏が促進されてしまい、低級酸化物の生成を著しく増加させてしまう。一方で、P/P を過度に低下させてしまうと、酸素ジェットがソフトブローとなり酸素の溶鋼への吸収速度が著しく低下してしまう。本発明者らは、後述する効果の確認方法に則り、250tonの溶鋼をRH真空脱ガス装置にてOB処理を行い、Al燃焼率および耐火物損耗速度とP/P の関係を調査した。その結果を図1及び2に示す。P/P が0.4以上0.75以下の範囲において、Al燃焼率が高く、かつ耐火物損耗速度が低位であることがわかる。したがって、上記課題を解決するためには、P/P を0.4以上0.75以下の範囲に制御する必要がある。P/P は下限が好ましくは0.45以上、より好ましくは0.50以上であり、上限が好ましくは0.70以下、より好ましくは0.60以下である。
本開示の溶鋼の昇温方法においては、下記式(3)及び(4)により求められるランスから上吹きされた酸素ジェットによる真空槽内溶鋼の攪拌動力ε(W)と、下記式(5)から求められるRH真空脱ガス装置の溶鋼環流を目的として吹き込まれたガスによる真空槽内溶鋼の攪拌動力ε(W)との比ε/εを0.3以上0.6以下とすることが好ましい。
ε=5.24×10×Q/H …(3)
M=[5×{(P/P0.285−1}]0.5 …(4)
ε=6.18×QT{2.3log(1+ρH/P)+(1−T/T)} …(5)
(ここで、M:上吹き酸素ジェットのマッハ数、H:ランス―湯面間距離(m)、Q:環流ガス流量(Nm/min)、T:溶鋼温度(K)、ρ:溶鋼密度(kg/m)、H:環流ガス吹込み羽口―真空槽内溶鋼湯面間距離(m)、T:環流ガス温度(K)である。)
酸素が吹き込まれている反応領域近傍における酸素濃度は、酸素が吸収される速度と、吸収された酸素が反応領域から移動する速度とのバランスで決定される。したがって、上吹き酸素ジェットおよび環流ガスによる真空槽内溶鋼へ与える攪拌動力の比、ε/εと昇温速度との間には一定の相間があると考えた。そこで本発明者らは、上記したP/P が0.4以上0.75以下の範囲内でε/εを変更した条件にてOB処理を行い、昇温速度を測定した。その結果を図3に示す。昇温速度はε/εが0.3以上0.6以下の範囲において高い値を示すことを見出した。これは、ε/εが0.3を下回るとジェットの動圧が低位となって着酸速度が大きく低下してしまい、0.6を上回るとジェットのエネルギーが過剰となり、環流ガスによる溶鋼の流動を妨げてしまい吸収した酸素の分散が効率的に行われなかったためと考えられる。したがって、ε/εは0.3以上0.6以下の範囲であることが好ましい。下限はより好ましくは0.4以上、さらに好ましくは0.45以上である。
3.補足:OB処理条件
真空槽内の真空度Pが高すぎると、噴射したジェットが雰囲気を巻き込んで大きく減衰してしまい、昇温効率が著しく低下してしまう。この考えから、通常、酸素上吹き時のPは13.3kPa(100Torr)未満とすることが多く、本開示の溶鋼の昇温方法においてもこの程度の値に制御することが望ましい。上記の式(1)、(2)から明らかなように、本開示の溶鋼の昇温方法においては、このようにPを特定の値としたうえで、ランスの先端形状(D、D)に応じて上吹き酸素流量Qを調整することで、P/P を0.4以上0.75以下の範囲に制御することができる。
一般的に酸素上吹き時のランス高さHは、低すぎると超ハードブローとなり溶鋼スプラッシュおよびランスへの地金付着が生じ易く、逆に高すぎるとソフトブローとなり酸素吸収速度の低下、さらにはジェットが真空槽内壁面と衝突し、耐火物損耗を促進させ易い。従って、通常操業においてHは2.0m以上5.0m以下の範囲であることが望ましい。
また、ノズル前圧Pの絶対値が高いほどジェットがハードブローとなり、酸素の吸収速度が高位となる。したがって、P/P を0.4以上0.75以下とすることに加えて、Pの絶対値を0.1MPa以上とすることが望ましい。
さらに、真空槽内溶鋼の攪拌動力密度は、環流ガス吹込み羽口―真空槽内溶鋼湯面間距離Hに大きく影響する。この値は、真空槽浸漬管の取鍋溶鋼への浸漬深さ、槽内真空度、すなわち溶鋼の吸上げ高さを調整することで制御できる。操業条件にも依存するが、通常Hの値は1.5m以上3.0m以下程度であり、本開示の溶鋼の昇温方法においてもこの程度に制御することが望ましい。
尚、本開示の溶鋼の昇温方法に用いられるRH真空脱ガス装置そのものについては、公知の装置をいずれも採用可能である。上吹きランスについても、先端形状が上記したスロート部と拡大部とを有するものであればよく、一般的なランスをいずれも採用可能である。これらの構成は自明であることから、ここでは詳細な説明を省略する。
また、本開示の溶鋼の昇温方法に適用される溶鋼についても、転炉出鋼後にRH真空脱ガス工程を経由し、ステンレス等の高合金を除く一般的な炭素鋼をいずれも採用可能である。転炉出鋼後の溶鋼は概ねAl等を含んでいることから、本開示の方法によってAlと酸素とを反応させて溶鋼を適切に昇温させることができる。
以下、実施例及び比較例を示しつつ本開示の溶鋼の昇温方法についてさらに詳細に説明する。
1.評価基準
以下に示す実施例及び比較例に係る溶鋼の昇温方法について、Al燃焼率(上吹きした酸素がAlと反応した割合)、耐火物損耗速度、および昇温速度の3つの指標をもって評価した。
1.1.Al燃焼率
Al燃焼率は、OB処理直前および直後にて溶鋼サンプルを採取し、化学分析で得たAl濃度[Al](質量%)から下記式(6)、(7)を用いて算出した。
Al燃焼率=([Al]OB前―[Al]OB後)/OB量・・・(6)
OB量=32×100×Q×OB時間/22.4/溶鋼質量・・・(7)
ここでOB量とは、上吹きした全酸素量を溶鋼中濃度に換算した値であり、Al燃焼率とは上吹きした全酸素量のうちAlの燃焼に使われたものの割合を示す。この値が低いということは、多くの酸素が排気ロスあるいは低級酸化物の生成に使用されたことを意味し、昇温速度の低下や低級酸化物による耐火物の損耗に繋がる。したがって、Al燃焼率は70%以上であることが望ましい。
1.2.耐火物損耗速度
耐火物損耗速度は、同一の条件でOB処理を100ch実施し、このときのランス下端−湯面間における真空槽内側壁の耐火物の肉厚の減少量をch数で割った値とした。炉壁耐火物の損耗は主に送酸時のスプラッシュによる地金付着、低級酸化物と耐火物の化学反応による浸食が主要因とされており、本指標はスプラッシュおよび低級酸化物の生成の度合いの評価に適していると考えた。また、使用する真空槽のサイズにもよるが、炉壁耐火物の厚みは数100mmである場合が多く、槽を数100ch連続して使用することを考えた場合、耐火物損耗速度は3.0mm/ch以下であることが望ましい。
1.3.昇温速度
昇温速度は、OB処理直前および直後にて酸素プローブによる溶鋼の測温を実施し、このときの温度から下記式(8)にて求まる値とした。この昇温速度が遅いと処理時間の大幅な延長、酸素原単位の増大を招くことから、昇温速度は3.0℃/min以上であることが望ましい。
昇温速度=(TOB後―TOB前)/OB時間・・・(8)
以上の通り、以下に示す実施例及び比較例において、Al燃焼率が70%以上、耐火物損耗速度が3.0mm/ch以下、および昇温速度が3.0℃/min以上であったものを所望の効果が得られたと判断し、これらに加え昇温速度が4.0℃/min以上であったものを所望の効果が特に顕著に得られたと判断した。
2.実施例及び比較例に係る溶鋼の昇温方法
転炉吹錬を終えた溶鋼を取鍋に出鋼した後に、上吹きランスを具備した真空槽を取鍋内溶鋼に挿入、溶鋼を吸引して環流処理を開始し、任意のタイミングにてOB処理を開始した。実施例、比較例ともすべて、溶鋼量は250ton規模、溶鋼温度は1600〜1640℃であった。OB処理に際し、真空槽内圧力P、ノズルスロート径D、出口径D、上吹き酸素流量Q、環流ガス流量Q、ランス―湯面間距離H、環流ガス吹込み羽口―真空槽内溶鋼湯面間距離Hを操作因子として下記表1及び2のように変化させた。また、計算簡略化のため、εを算出する際の溶鋼密度ρは7000kg/m、溶鋼温度Tは1873K、および環流ガス温度Tgは300Kで一定とし、他の精錬条件は以下の通りとした。
OB処理前溶鋼組成:
[C] :0.05〜0.20質量%
[Si]:0.05〜0.50質量%
[Mn]:0.30〜1.00質量%
[Al]:0.10〜0.20質量%
OB処理時間:10min
OB処理前後にて溶鋼サンプル採取し、サンプルの一部を化学分析に供することでOB処理前後のAl濃度を求め、上記式(6)、(7)からAl燃焼率を算出した。また、同一の条件にてOB処理を100ch実施したタイミングにて真空槽内耐火物の肉厚の減少量を測定し、耐火物損耗速度を算出した。さらに、溶鋼サンプルに加えてOB処理前後にて酸素プローブによる測温を実施し、上記式(8)から昇温速度を算出した。実施例及び比較例におけるAl燃焼率、耐火物損耗速度を下記表1に、昇温速度の値を下記表2に記載する。
表1、2に示す結果から明らかなように、P/P を0.4以上0.75以下とした場合、Al燃焼率、耐火物損耗速度、および昇温速度のすべてにおいて良好な結果となった(実施例1〜7)。特に、P/P を0.4以上0.75以下とすると同時に、ε/εを0.3以上0.6以下とした場合、昇温速度がより顕著に高まった(実施例1〜5)。実施例6は、ε/εが小さく上吹き酸素ジェットの動圧が低位であり、酸素の溶鋼への吸収速度がやや低位であったと考えられる。一方、実施例7は、ε/εが大きく上吹き酸素ジェットが真空槽内溶鋼の流動を阻害してしまい吸収された酸素の分散が効率的になされなかったため、Al燃焼率がやや低位であったと考えられる。このように所望の効果を最大限発揮しようとした場合、P/P だけでなくε/εも併せて制御することが望ましい。
一方で、表1、2に示す結果から明らかなように、P/P を0.4未満とした場合や0.75超とした場合、所望の効果が得られなかった(比較例1〜4)。比較例1は、真空槽内の圧力が高く、ノズルから噴射された酸素ジェットが著しく減衰してしまい、動圧の低下にて酸素の吸収が効率的になされなかったと考えられる。逆に比較例2は、P/P が非常に高く酸素ジェットがハードブローであり、Al以外の溶鋼成分の燃焼が顕著に生じてしまったことに加え、溶鋼のスプラッシュが多量に発生して耐火物損耗速度が著しく増加してしまった。比較例3は、P/P が著しく低いためジェットの減衰が顕著であり、比較例1と同様動圧の低下にて酸素の吸収が効率的になされなかったと考えられる。さらに比較例4は、P/P が低いことに加え、ε/εが高過ぎることから、酸素の溶鋼への吸収や、吸収した酸素の分散がともに不十分であったため、所望の効果が得られなかった。
以上の通り、RH真空脱ガス装置の真空槽内において、減圧下で酸素を溶鋼表面に吹き付けて溶鋼を昇温する方法において、送酸時に生じる溶鋼スプラッシュおよび低級酸化物の生成といった弊害を抑制しつつ高い昇温効率を得るためには、P/P を0.4以上0.75以下とすることが重要である。また、P/P を0.4以上0.75以下とすることに加えて、ε/εを0.3以上0.6以下とすることで、より高い昇温効率を確保できる。
本開示の溶鋼の昇温方法は、転炉出鋼後の二次精錬工程において、次工程である鋳造に適正な溶鋼温度に調整する場合に利用可能である。

Claims (2)

  1. RH真空脱ガス装置の真空槽内において、減圧下で酸素を溶鋼表面に吹き付けて溶鋼を昇温する方法であって、
    前記酸素を吹き付けるランスの先端形状が、直径D(m)のスロート部と、出口直径D(m)の円錐形の拡大部とからなり、
    下記式(1)から求められる適正ノズル前圧P (Pa)と下記式(2)から求められる操業ノズル前圧P(Pa)との比P/P を0.4以上0.75以下とする、
    溶鋼の昇温方法。
    (D/D=14.92×(P/P 1.43×{1−(P/P 0.286} …(1)
    =P+12.89×Q/D …(2)
    (ここで、P:真空槽内圧力(Pa)、Q:上吹き酸素流量(Nm/min)である。)
  2. 下記式(3)及び(4)により求められるランスから上吹きされた酸素ジェットによる真空槽内溶鋼の攪拌動力ε(W)と、下記式(5)から求められるRH真空脱ガス装置の溶鋼環流を目的として吹き込まれたガスによる真空槽内溶鋼の攪拌動力ε(W)との比ε/εを0.3以上0.6以下とする、
    請求項1に記載の溶鋼の昇温方法。
    ε=5.24×10×Q/H …(3)
    M=[5×{(P/P0.285−1}]0.5 …(4)
    ε=6.18×QT{2.3log(1+ρH/P)+(1−T/T)} …(5)
    (ここで、M:上吹き酸素ジェットのマッハ数、H:ランス―湯面間距離(m)、Q:環流ガス流量(Nm/min)、T:溶鋼温度(K)、ρ:溶鋼密度(kg/m)、H:環流ガス吹込み羽口―真空槽内溶鋼湯面間距離(m)、T:環流ガス温度(K)である。)
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Citations (7)

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