JP2019167309A - ポリリン酸塩含有組成物、ポリリン酸塩含有溶液及びその製造方法 - Google Patents

ポリリン酸塩含有組成物、ポリリン酸塩含有溶液及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】水に溶解可能であり、水に溶解したときの平均鎖長が700以上のポリリン酸又はその塩を含有する組成物であって、水溶液として保管中の分子量(平均鎖長)の低下が抑制された組成物を容易に提供する。【解決手段】下記(1)及び(2)〜(4)のいずれか1つを含有する、ポリリン酸塩含有組成物であって、(1)メタリン酸カリウム、(2)リン酸ナトリウム類、(3)リチウム塩、(4)リン酸ナトリウム類及びリチウム塩、カリウム原子数に対するナトリウム原子数比、リチウム原子数比、又はナトリウム及びリチウムの合計の原子数比が、それぞれ2以上である、ポリリン酸塩含有水溶液調製用の組成物。前記ポリリン酸塩含有組成物及び水を含有するポリリン酸塩含有溶液。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリリン酸塩含有組成物、ポリリン酸塩含有溶液及びその製造方法に関する。
生体内にはリン酸がいくつも結合したポリマーであるポリリン酸が存在する。近年、このポリリン酸による生理的役割の解明が進み、抗菌性、凝血促進作用、腸管バリア強化、細胞増殖促進効果、コラーゲン増殖促進効果、創傷治癒促進効果、骨再生効果、血管新生効果等が報告されている。これらの効果は、リン酸単位が連なった数によって異なり、この数は鎖長として表現されることが多い。リン酸単位が700個程度結合したものでは、血液凝固作用や腸管バリア強化の効果が高く、医薬や健康促進への展開が期待されている。なお、投与形態が塩であっても同様の効果が得られると考えられるため、「ポリリン酸」の用語にはその塩も含まれる。
このようなポリリン酸の研究用試薬として、非特許文献1には、酵素合成ポリリン酸(平均鎖長700-1000の酵素合成品)や超長鎖ポリリン酸(化学合成)が記載されている。酵素合成品はポリリン酸キナーゼを使って作製され、化学合成品の生理活性は酵素合成品と同等であるとも記載されている。そして、これらの平均鎖長は15%ポリアクリルアミドゲル電気泳動後、0.05%トルイジンブルー0で染色して評価されている。しかし、これらは研究用途に限定され、極めて高価である。さらに、本発明者らの検討によれば、-20℃以下で凍結しないと保管中に鎖長が短くなるといった不都合があることが判明した。
一方、極めて長い鎖状構造のリン酸塩としては、慣用名で「メタリン酸カリウム」と言われるカリウムクロール塩が知られている。しかし、このカリウムクロール塩は難溶性であり、生体内で作用しづらい。非特許文献2の「2.1.2 Dp>500のNaPPの調製(Preparation of NaPP with Dp>500)」には、このカリウムクロール塩をナトリウム型イオン交換樹脂で処理することで、水溶性ポリリン酸ナトリウムが得られることが記載されている。しかし、本発明者らの検討によれば、このような方法で得たポリリン酸ナトリウムは水溶液中では、保管中に分子量が極めて速く低下し、生体に投与したときに目的とする鎖長のポリリン酸量が確保できないといった問題があることが判明した。
"ポリリン酸"、[online]、バイオエネックス(株)、[平成29年12月21日検索]、インターネット〈URL:http://bioenex.co.jp/pg57.html〉 アラシュ・モメニ(Arash Momeni)他著、「異なる鎖長のポリリン酸ナトリウムの合成と特徴(Synthesis and Characterization of Different Chain Length Sodium Polyphosphates)」、ジャーナル オブ ノン−クリスタリン ソリッズ(Journal of Non-Crystalline Solids)、オランダ、エルゼビア(Elsevier)、2013年382巻p.11-17
このように、水に溶解可能であり、水に溶解したときの平均鎖長が700以上であるポリリン酸又はその塩であり、水溶液として保管中の分子量(平均鎖長)の低下が抑制された長鎖のポリリン酸又はその塩は、知られておらず、その提供及びこれを容易に製造できる方法の提供が求められている。
本発明は、水に溶解可能であり、水に溶解したときの平均鎖長が700以上のポリリン酸又はその塩を含有する組成物であって、水溶液として保管中の分子量(平均鎖長)の低下が抑制された組成物を容易に提供することを目的とする。
本発明は、以下の通りである。
[1]
下記(1)及び(2)〜(4)のいずれか1つを含有する、ポリリン酸塩含有組成物であって、
(1)メタリン酸カリウム、
(2)リン酸ナトリウム類、
(3)リチウム塩、
(4)リン酸ナトリウム類及びリチウム塩、
カリウム原子数に対するナトリウム原子数比、リチウム原子数比、又はナトリウム及びリチウムの合計の原子数比が、それぞれ2以上である、
ポリリン酸塩含有水溶液調製用の組成物。
[2]
リン酸ナトリウム類が、リン酸水素二ナトリウム 、ピロリン酸四ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、テトラポリリン酸ナトリウム、ペンタポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、及びトリメタリン酸ナトリウムから成る群から選ばれる少なくとも1種である、[1]に記載の組成物。
[3]
リチウム塩が、塩化リチウム、臭化リチウム、及び酢酸リチウムから成る群から選ばれる少なくとも1種である、[1]に記載の組成物。
[4]
前記カリウム原子数に対するナトリウム原子数比、リチウム原子数比、又はナトリウム及びリチウムの合計の原子数比が、2〜10の範囲である、[1]〜[3]のいずれかに記載の組成物。
[5]
pH調整剤をさらに含む[1]〜[4]のいずれかに記載の組成物。
[6]
任意の濃度の水溶液を調製し、調製後5時間以内に、15%ポリアクリルアミドゲルでの電気泳動において、70kDa以上の分子量を有する電気泳動物を確認できる、[1]〜[5]のいずれかに記載の組成物。
[7]
[1]〜[6]のいずれかに記載のポリリン酸塩含有組成物及び水を含有するポリリン酸塩含有溶液。
[8]
pHが5以上である、[7]に記載のポリリン酸塩含有溶液。
[9]
40℃で4週間保管した後の、15%ポリアクリルアミドゲルでの電気泳動において、70kDa以上の分子量を有する電気泳動物を確認できる、[7]または[8]記載のポリリン酸塩含有溶液。
[10]
40℃で8週間保管した後の、15%ポリアクリルアミドゲルでの電気泳動において、70kDa以上の分子量を有する電気泳動物を確認できる、[7]または[8]記載のポリリン酸塩含有溶液。
[11]
[1]〜[6]のいずれかに記載のポリリン酸塩含有組成物または[7]〜[10]のいずれかに記載のポリリン酸塩含有溶液を含有する調剤。
[12]
[1]〜[6]のいずれかに記載のポリリン酸塩含有組成物及び水を混合することを含む、ポリリン酸塩含有溶液の製造方法 。
[13]
前記混合後に、溶液のpHを5以上に調整することをさらに含む、[12]に記載の製造方法。
本発明によれば、水に溶解可能であり、水に溶解したときの平均鎖長が700以上のポリリン酸又はその塩を含有する組成物であって、水溶液として保管中の分子量(平均鎖長)の低下が抑制された組成物、及び平均鎖長が700以上のポリリン酸又はその塩を含有し、保管中の分子量(平均鎖長)の低下が抑制された水溶液を提供することができる。
<ポリリン酸塩含有組成物>。
本発明は、ポリリン酸塩含有組成物に関し、この組成物は、ポリリン酸塩含有水溶液調製用の組成物である。この組成物は、
下記(1)及び(2)〜(4)のいずれか1つを含有する、ポリリン酸塩含有組成物であって、
(1)メタリン酸カリウム、
(2)リン酸ナトリウム類、
(3)リチウム塩、
(4)リン酸ナトリウム類及びリチウム塩、
カリウム原子数に対するナトリウム原子数比、リチウム原子数比、又はナトリウム及びリチウムの合計の原子数比が、それぞれ2以上である。
(1)メタリン酸カリウム
本発明で使用する「メタリン酸カリウム」は、ポリリン酸塩の一種であって、極めて長い鎖状構造のポリリン酸のカリウム塩である。本発明の組成物はメタリン酸カリウムを含有することからポリリン酸塩含有組成物と呼称する。「メタリン酸カリウム」は、「メタリン酸カリウム」以外に、「メタりん酸カリウム」、「カリウムクロール塩」、「potassium metaphosphate」、「potassium polyphosphate」と慣用的に表現されている物質、CAS登録番号7790−53−6が付与された製品、X線回折のPDFカード番号00−035−819で定性的に同定される物質、およびそれに相当する物質であって、規格によっては「ポリリン酸カリウム」、「Potassium Polymetaphosphate」、「Potassium Polyphospate」と表現されるものも含む。試薬や食品添加物として容易に入手できる。そして、単独では水に難溶解性である。
本発明の組成物は、(1)及び(2)〜(4)のいずれか1つを含有する、ポリリン酸塩含有組成物であって、カリウム原子数に対するナトリウム原子数比、リチウム原子数比、又はナトリウム及びリチウムの合計の原子数比が、それぞれ2以上である。単独では水に難溶解性であるメタリン酸カリウムを(2)〜(4)のいずれか1つと共に、かつ上記原子数比で、水と混合すると、水に溶解可能となり、水に溶解したときの平均鎖長が700以上であるポリリン酸又はその塩を含有する水溶液が得られる。各成分を水に添加する順序や手段は特に限定しない。さらにこの水溶液では、保管中のポリリン酸の分子量(平均鎖長)の低下が比較的緩やかである。
(2)リン酸ナトリウム類
リン酸ナトリウム類は、分子中にリン原子が一つのオルソリン酸塩だけでなく、分子中に複数のリン原子を含むナトリウム塩であってもよく、リン酸部分の結合状態も限定するものでなく、環状や鎖状であってもよく、各種のリン酸ナトリウム塩を適宜選択することができる。好ましくは、リン酸水素二ナトリウム 、ピロリン酸四ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、テトラポリリン酸ナトリウム、ペンタポリリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、及びトリメタリン酸ナトリウムから成る群から選ばれる少なくとも1種であり、ポリリン酸ナトリウムには、市場で「ヘキサメタリン酸ナトリウム」や「ヘキサメタりん酸ナトリウム」と称されるもの、学術文献で「グラハム塩」と称されるものもあり、食品添加物や医薬部外品では「メタリン酸ナトリウム」として表現されており、名称が異なってもこれら製品に相当するものを含む。なお、「ヘキサメタリン酸ナトリウム」とは、分子式(NaPO3nで表され、P25換算での含量が66〜69%程度のポリリン酸ナトリウムであり、過去の研究者が六量体であると推測したことから慣用的に「ヘキサメタリン酸塩」と呼ばれている。
メタリン酸カリウムおよびこれに添加するリン酸ナトリウム類はいずれも食品添加物規格品があり、大量に化学合成され、酵素合成に比べるとはるかに安価に合成でき、長年使用され生体安全性の点でも好ましい。
(3)リチウム塩、
リチウム塩は特に限定されるものでないが、好ましくは塩化リチウム、臭化リチウム、及び酢酸リチウムから成る群から選ばれる少なくとも1種である。
(4)リン酸ナトリウム類及びリチウム塩
リン酸ナトリウム類及びリチウム塩は、上記で例示したものであることができる。
本発明の組成物が、(1)メタリン酸カリウムと(2)リン酸ナトリウム類を含有する場合、カリウム原子数に対するナトリウム原子数比は2以上となるように、メタリン酸カリウムとリン酸ナトリウム類の含有量を調整する。好ましくはカリウム原子数に対するナトリウム原子数比は、2〜10の範囲であり、より好ましくは2〜4の範囲である。カリウム原子数に対するナトリウム原子数比が、2未満では、メタリン酸カリウムの水に対する溶解は十分ではない。一方、カリウム原子数に対するナトリウム原子数比が2以上であればメタリン酸カリウムが水に対して、常温(例えば、25℃)でほぼ溶解し、多少の未溶解部分があっても40℃程度まで加温すれば溶解する。この原子数比が4以上であればメタリン酸カリウムは常温(例えば、25℃)でも水に対して溶解する。但し、10を超える範囲としても、その効果が増大することはない。
本発明の組成物が、(1)メタリン酸カリウムと(3)リチウム塩を含有する場合、カリウム原子数に対するリチウム原子数比は2以上となるように、メタリン酸カリウムとリチウム塩の含有量を調整する。好ましくはカリウム原子数に対するリチウム原子数比は、2〜10の範囲であり、より好ましくは2〜4の範囲である。カリウム原子数に対するリチウム原子数比が、2未満では、メタリン酸カリウムの水に対する溶解は十分ではない。一方、カリウム原子数に対するリチウム原子数比が2以上であればメタリン酸カリウムが水に対して、常温(例えば、25℃)でほぼ溶解し、多少の未溶解部分があっても40℃程度まで加温すれば溶解する。この原子数比が4以上であればメタリン酸カリウムは常温(例えば、25℃)でも水に対して溶解する。但し、10を超える範囲としても、その効果が増大することはない。
本発明の組成物が、(1)メタリン酸カリウムと(4)リン酸ナトリウム類及びリチウム塩を含有する場合、カリウム原子数に対するナトリウム及びリチウムの合計の原子数比が、2以上となるように、メタリン酸カリウムとリン酸ナトリウム類及びリチウム塩の含有量を調整する。好ましくはカリウム原子数に対するリチウム原子数比は、2〜10の範囲であり、より好ましくは2〜4の範囲である。カリウム原子数に対するナトリウム及びリチウム原子数比が、2未満では、メタリン酸カリウムの水に対する溶解は十分ではない。一方、カリウム原子数に対するリチウム原子数比が2以上であればメタリン酸カリウムが水に対して、常温(例えば、25℃)でほぼ溶解し、多少の未溶解部分があっても40℃程度まで加温すれば溶解する。この原子数比が4以上であればメタリン酸カリウムは常温(例えば、25℃)でも水に対して溶解する。但し、10を超える範囲としても、その効果が増大することはない。リン酸ナトリウム類及びリチウム塩の含有比率には、特に制限はなく、モル比で0超:1未満〜1未満:0超の範囲で適宜、決定できる。
本発明の組成物は、pH調整剤をさらに含むことができる。
pH調整剤としては、適宜選択可能であるが、例えば、リン酸、水酸化ナトリウム、各種リン酸ナトリウム類を挙げることができる。各種リン酸ナトリウム類は、分子中にリン原子が一つのオルソリン酸塩だけでなく、分子中に複数のリン原子を含むナトリウム塩であってもよく、リン酸部分の結合状態も限定するものでなく、環状や鎖状であってもよく、リン酸ナトリウム類を1種又は複数適宜選択するとpH緩衝能があるので特に好ましい。pH調整剤の含有量は、水溶液としたときに所望のpHを示すように、pH調整剤以外の本発明の組成物の組成及びpH調整剤の種類を考慮して適宜決定することができる。
本発明の組成物は、任意の濃度の水溶液を調製し、調製後5時間以内に、15%ポリアクリルアミドゲルでの電気泳動において、70kDa以上の分子量を有する電気泳動物を確認できるものであることが好ましい。電気泳動用のポリアクリルアミドゲルとしては、ゲルサイズが幅90mm、高さ83mm、厚さ1mm、ウェル幅4.2mmのゲルを使用することが適当である。水溶液にしたときの組成物の濃度は任意であるが、ゲルにアプライする水溶液の量は、1レーン当たり24μL以下とし、組成物量がP原子換算で0.01〜6.0μモルの範囲となるように調整する。分子量マーカーは市販のタンパク質マーカーを用いることができ、具体例は実施例に記載する。本発明の組成物は、任意の濃度の水溶液を調製し、調製後5時間以内に、15%ポリアクリルアミドゲルでの電気泳動において、好ましくは100kDa以上の分子量を有する電気泳動物を確認できるものである。
組成物に含まれる各成分中のP原子のモル数を求め、求めたモル数の合計が上記0.01〜6.0μモルの範囲になるように、ゲルにアプライする水溶液の量を調整することで、各組成物の分子量分布を容易に比較することができる。組成物に含まれる成分中のP原子のモル数への換算は、組成物の組成がわかっている場合は、組成物に含まれる各成分の組成式、水溶液中の各成分の濃度、及び組成物の水溶液のゲルへのアプライ量から算出できる。組成物に含まれるP原子のモル数がわからない組成未知の試料については、組成物のP含有量を分析し、分析したP含有量からP原子のモル数を求めて、アプライ量を算出することができる。P含有量の分析は、各種分析法を用いることができ、例えば硝酸と過塩素酸の混酸あるいはその他の酸と加熱し酸化することによりオルトリン酸塩にまで分解した後、モリブデン試薬を用いて吸光光度法により測定できる。
本発明において、ポリリン酸化合物の分子量測定は、試料を15%ポリアクリルアミドゲル内で電気泳動させた後0.05%トルイジンブルー0で染色し、試料の染色部分がタンパク質マーカーのどのDa値にあたるかを読み取り、その値を分子量とする。長鎖ポリリン酸又はその塩の詳細な構造は解明されていないが、一般式としては、以下の一般式(1)のように表される。
リン酸一単位は、M=Hなら80、M=Naなら102、M=Kなら118と分子量は異なるものの、分子量を100で割った値を概ね鎖長と考えることができる。したがって、平均鎖長700のポリリン酸は、分子量が概ね70,000Da(70kDa)に相当する。
<ポリリン酸塩含有溶液>
本発明は、上記本発明のポリリン酸塩含有組成物及び水を含有するポリリン酸塩含有溶液を包含する。ポリリン酸塩含有組成物と水の比率は、その用途に応じて適宜決定できる。本発明のポリリン酸塩含有組成物の組成及びカリウム原子数に対するナトリウム原子数比、リチウム原子数比、又はナトリウム及びリチウムの合計の原子数比により、メタリン酸カリウムの溶解性が変化するので、これらも考慮して、ポリリン酸塩含有組成物と水の比率は、決定される。
本発明のポリリン酸塩含有溶液は、pH調整剤を含有しなくてもpHが5以上である場合もあるが、pH調整剤を含有させてpH5以上に調整することもできる。pHは、例えば、5〜12の範囲であることができ、好ましくは5〜11の範囲である。
本発明のポリリン酸塩含有溶液は、40℃で4週間保管した後の、15%ポリアクリルアミドゲルでの電気泳動において、70kDa以上の分子量を有する電気泳動物を確認できる、ポリリン酸の保管安定性に優れたものであることが好ましい。ポリリン酸の保管安定性の確認のための電気泳動は、本発明の組成物の分子量測定のための電気泳動と同様に実施できる。但し、水溶液の濃度が希薄すぎて、ゲルにアプライする水溶液の量を、1レーン当たり24μL以下とし、組成物量がP原子換算で0.01〜6.0μモルの範囲となるように調整できない場合には、試験対象の水溶液を、例えば、減圧蒸留、凍結乾燥等、過度に温度をかけずに濃縮した液を電気泳動に供して、分子量を測定することもできる。
さらに、本発明のポリリン酸塩含有溶液は、40℃で8週間保管した後の、15%ポリアクリルアミドゲルでの電気泳動において、70kDa以上の分子量を有する電気泳動物を確認できる、ポリリン酸塩の保管安定性に優れたものであることがより好ましい。
本発明のポリリン酸塩含有組成物は、(1)メタリン酸カリウムと(2)リン酸ナトリウム類、(3)リチウム塩、又は(4)リン酸ナトリウム類及びリチウム塩とを、カリウム原子数に対するナトリウム原子数比、リチウム原子数比、又はナトリウム及びリチウムの合計の原子数比が、2以上となるように混合することで調製できる。いずれの原料も市販品を入手可能である。
本発明のポリリン酸塩含有溶液は、本発明のポリリン酸塩含有組成物及び水を混合することで調製できる。あるいは、本発明のポリリン酸塩含有組成物の原料を本発明所定の比率で水と混合することでも調製できる。水との混合は、水を攪拌しつつ行い、本発明のポリリン酸塩含有組成物、又はその原料を、一度にあるいは逐次水に添加して行うことができる。ポリリン酸塩含有溶液が調製された後に、pH調整剤を添加して、溶液のpHを5以上に調整することができる。あるいは、本発明のポリリン酸塩含有組成物、又はその原料とpH調整剤とを同時又は逐次に水に添加することもできる。
<調剤>
本発明は、前記本発明のポリリン酸塩含有組成物または前記本発明のポリリン酸塩含有溶液を含有する調剤を包含する。
本発明における調剤とは、例えば、サプリメントや医薬品を挙げることができる。
<用途>
本発明の組成物及び溶液は、ポリリン酸及びその塩が有する特性を試験するための試薬として利用することができる他、ポリリン酸及びその塩が有する特性、例えば、生理活性を生かした用途に利用することができる。生理活性を生かした用途として、医薬やサプリメントを挙げることができ、その場合、例えば、経口投与、あるいは目的とする部位に塗布することにより使用される。実施態様としては、粉末そのままでの経口投与、水溶液での経口投与、あるいは別の飲料や食品に粉末あるいは水溶液で混入することができる。分子量は水溶液では分解によるためか保管中に低下する傾向があるので、鎖長維持には粉末での保管が最もよい。水に溶かして水溶液での保管も可能であり、その都度溶解する煩雑さを回避できる。また、抗菌性、凝血促進作用、創傷治癒促進効果等を目的とした場合には、対象部位に溶液で塗布することが考えられる。水溶液の組成を適宜選択することにより、0〜40℃といった生活環境で1週間以上、場合によっては4週間や8週間といった比較的長い期間で平均鎖長700以上を含有させることができ、冷蔵あるいは冷凍保存すると保存安定性は更に長くなる。このような生体への適用には、メタリン酸カリウムに添加する塩は、リチウム塩の過剰摂取による悪影響を回避するためナトリウム塩が好ましい。なお、本発明の組成物は、生体への適用に限定されるものではない。
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明する。但し、実施例は本発明の例示であって、本発明は実施例に限定される意図ではない。
表1の配合で塩をそれぞれ混合した。その後、表1に記載の水の量に各配合塩を添加、撹拌し、水溶液を調製した。実施例1と同様の方法で水溶液を作製した。
溶液中の沈殿の有無で添加塩の可溶化効果を評価し、溶解直後の溶液で電気泳動により分子量分布を測定した。その後、各溶液をガラス瓶に入れ40℃で保管し、1週間後、4週間後、8週間後の分子量を電気泳動法で測定し、安定性を評価した。なお、実施例4、5、9、11、12、比較例4では、表1に記載の量で水溶液を調製した後、10%リン酸または10%水酸化ナトリウム溶液でpHを調整した。
<系内の元素比の求め方>
実施例1〜12、比較例1、比較例4〜8については、分子式および配合比より算出した。比較例2〜3については、日立ハイテク製 走査型電子顕微鏡 Miniscope TM3000およびTM3000専用エネルギー分散型X線分析装置 SwiftED3000を用いて元素分析して算出した。
<電気泳動による分子量測定方法>
ゲル濃度15%のポリアクリルアミドゲルであって、ゲルサイズが幅90mm、高さ83mm、厚さ1mm、ウェル幅4.2mmのゲルを用い、タンパク質マーカーと表2の水溶液を添加し、電気泳動させた。アプライした水溶液量は5μLとし、アプライした水溶液中の全P原子のモル数は表3の通りとした。アプライした水溶液中の全P原子は、0.01〜6.0μモルの範囲となるように調整した。実施例1〜12および比較例4においてアプライした水溶液中の全P原子のモル数は、添加した組成物の各成分の組成式と水溶液の濃度からP原子のモル数を計算により算出し、算出したP原子のモル数を合計して求めた。例えば、実施例1については、前記一般式(1)に従って、メタリン酸カリウムの組成式をHO-(KPO3)n-Hとし、リン酸一単位KPO3の分子量を118とし、ヘキサメタリン酸ナトリウムの組成式をHO-(NaPO3)n-Hとし、リン酸一単位NaPO3の分子量を102として求めた。比較例2および3においては、製品の「取扱い説明書」の記載に基づき、比較例2がポリリン酸として1mg/mL、比較例3がリン酸として1Mを10倍希釈したことから0.1Mとし、P原子のモル数を計算により算出した。電気泳動後、0.05%トルイジンブルー0で染色し、染色部分をタンパク質マーカーの染色部分と比較して分子量を測定した。使用装置および使用試薬は以下の通りである。
電気泳動装置:アトー(株)製,ラピダス・ミニスラブ(電源 AE-8135 マイパワーII300)
緩衝液:TBE(トリス-ホウ酸-EDTA)
タンパク質マーカー:アトー(株)製,WSE-7020 EzProtain Ladder
<実施例1〜12および比較例1〜8>
比較例1からわかるように、メタリン酸カリウムは難溶性であり、単独で水に分散してもほとんど溶解しないが、ナトリウム塩またはリチウム塩を添加することにより溶解できた。先行技術である比較例2および3も水に溶解できるが、製造方法が開示されておらず、また、40℃保管での分子量低下が速かった。
実施例1より、メタリン酸カリウムのカリウム原子数に対してナトリウム原子数4となるようにヘキサメタリン酸ナトリウムを添加することにより、難溶性であるメタリン酸カリウムを可溶化でき、溶解直後の電気泳動物のトップピークは180kDaで120kDa以上に分布していた。実施例1〜8より、メタリン酸カリウムのカリウム原子数に対してナトリウム原子数2以上添加することにより、難溶性であるメタリン酸カリウムを可溶化でき、40℃保管4週間後でも電気泳動物のトップピークが70kDa以上、実施例1、3〜8では40℃保管8週間後でもトップピークが70kDa以上と高分子量を維持していることが確認できた。
実施例6〜10より、リン酸ナトリウム類を用いれば、メタリン酸カリウムを溶解し、かつ分子量維持の効果があることを確認した。リン酸塩の種類によっては、pH調整することにより分子量低下を抑制できることが分かった。
実施例11〜12より、リチウム塩添加によりメタリン酸カリウムを溶解でき、pHを中性またはアルカリ性に調整することにより、分子量低下も抑制できた。一方、pHを酸性に調整した比較例4では分子量低下が速かった。
比較例5〜8より、マグネシウム、鉄、アルミニウム、カリウムの金属塩では、メタリン酸カリウムを溶解する効果は低かった。
表3に示す結果から、本発明の組成物は、水に溶解可能であり、水に溶解したときの平均鎖長が700以上のポリリン酸又はその塩を含有する組成物であって(溶解直後)、水溶液として保管中の分子量(平均鎖長)の低下が抑制され、保管後1〜8週間においても平均鎖長が700以上のポリリン酸又はその塩を含有することが分かる。
本発明はポリリン酸に関連する分野に有用である。

Claims (13)

  1. 下記(1)及び(2)〜(4)のいずれか1つを含有する、ポリリン酸塩含有組成物であって、
    (1)メタリン酸カリウム、
    (2)リン酸ナトリウム類、
    (3)リチウム塩、
    (4)リン酸ナトリウム類及びリチウム塩、
    カリウム原子数に対するナトリウム原子数比、リチウム原子数比、又はナトリウム及びリチウムの合計の原子数比が、それぞれ2以上である、
    ポリリン酸塩含有水溶液調製用の組成物。
  2. リン酸ナトリウム類が、リン酸水素二ナトリウム 、ピロリン酸四ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、テトラポリリン酸ナトリウム、ペンタポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、及びトリメタリン酸ナトリウムから成る群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の組成物。
  3. リチウム塩が、塩化リチウム、臭化リチウム、及び酢酸リチウムから成る群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の組成物。
  4. 前記カリウム原子数に対するナトリウム原子数比、リチウム原子数比、又はナトリウム及びリチウムの合計の原子数比が、2〜10の範囲である、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
  5. pH調整剤をさらに含む請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
  6. 任意の濃度の水溶液を調製し、調製後5時間以内に、15%ポリアクリルアミドゲルでの電気泳動において、70kDa以上の分子量を有する電気泳動物を確認できる、請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載のポリリン酸塩含有組成物及び水を含有するポリリン酸塩含有溶液。
  8. pHが5以上である、請求項7に記載のポリリン酸塩含有溶液。
  9. 40℃で4週間保管した後の、15%ポリアクリルアミドゲルでの電気泳動において、70kDa以上の分子量を有する電気泳動物を確認できる、請求項7または8記載のポリリン酸塩含有溶液。
  10. 40℃で8週間保管した後の、15%ポリアクリルアミドゲルでの電気泳動において、70kDa以上の分子量を有する電気泳動物を確認できる、請求項7または8記載のポリリン酸塩含有溶液。
  11. 請求項1〜6のいずれかに記載のポリリン酸塩含有組成物または請求項7〜10のいずれかに記載のポリリン酸塩含有溶液を含有する調剤。
  12. 請求項1〜6のいずれかに記載のポリリン酸塩含有組成物及び水を混合することを含む、ポリリン酸塩含有溶液の製造方法 。
  13. 前記混合後に、溶液のpHを5以上に調整することをさらに含む、請求項12に記載の製造方法。
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