JP2019163769A - 緩衝器 - Google Patents
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Abstract
【課題】 発生減衰力のばらつきを抑制することができる緩衝器を提供する。【解決手段】 緩衝器1は、内筒6とピストン11と減衰力発生機構15,16とを有している。ピストン11は、ピストン本体12と、該ピストン本体12に衝合状態で組み付けられるリテーナ13とを有している。ピストン本体12は、環状の第1シート部12Eを有し、リテーナ13は、第1シート部12Eと衝合して結合される環状の第2シート部13Cを有している。第2シート部13Cは、ピストン本体12とリテーナ13とを組み付ける前の状態で第1シート部12E側に向けてテーパ状に突出する外周側テーパ部13C1および内周側テーパ部13C2を有し、内周側テーパ部13C2の傾きは、外周側テーパ部13C1の傾きに比して緩やかに構成されている。【選択図】 図2
Description
本発明は、例えば4輪自動車等の車両に搭載され、車両の振動を緩衝するのに好適に用いられる緩衝器に関する。
一般に、4輪自動車等の車両には、各車輪(車軸側)と車体との間に油圧緩衝器が設けられ、車両の振動を緩衝するようにしている(例えば、特許文献1参照)。この種の従来技術による油圧緩衝器は、作動流体が封入されたシリンダと、シリンダ内に摺動可能に嵌装されたピストンと、シリンダ内のピストンの摺動によって生じる作動流体の流れを抑制して減衰力を発生させる減衰力発生機構とを備えている。
特許文献1による油圧緩衝器は、ピストンを、ピストン本体(第1ピストン体)とピストン本体に取付けられているリテーナ(第2ピストン体)とにより構成している。しかしながら、リテーナをピストン本体に取付ける際に、リテーナが変形することに伴って減衰力発生機構の一部も変形して、発生減衰力にばらつきが生じてしまうという問題がある。
本発明は、上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、発生減衰力のばらつきを抑制することができるようにした緩衝器を提供することにある。
上述した課題を解決するために本発明による緩衝器は、作動流体が封入されるシリンダと、該シリンダの内部を第1室および第2室に区画するピストンと、該ピストンに設けられ減衰力を発生させる減衰力発生機構と、を備えた緩衝器において、前記ピストンは、第1ピストン体と、該第1ピストン体に衝合状態で組み付けられる第2ピストン体とを有し、前記第1ピストン体は、前記第1室と第2室とを連通させる第1通路の開口の外周側に環状の第1シート部を有し、前記第2ピストン体は、前記第1室と第2室とを連通させる第2通路の開口の外周側に、前記第1シート部と衝合して結合される環状の第2シート部を有し、前記減衰力発生機構は、前記第1ピストン体の前記第1室側および前記第2ピストン体の前記第2室側にそれぞれ配され、前記第2シート部は、前記第1ピストン体と前記第2ピストン体とを組み付ける前の状態で前記第1シート部側に向けてテーパ状に突出する外周側テーパ部および内周側テーパ部を有し、前記内周側テーパ部の傾きは、前記外周側テーパ部の傾きに比して、緩やかであることを特徴としている。
また、本発明による緩衝器は、作動流体が封入されるシリンダと、該シリンダの内部を第1室および第2室に区画するピストンと、該ピストンに設けられ減衰力を発生させる減衰力発生機構と、を備えた緩衝器において、前記ピストンは、第1ピストン体と、該第1ピストン体に衝合状態で組み付けられる第2ピストン体とを有し、前記第1ピストン体は、前記第1室と第2室と連通させる第1通路の開口の外周側に環状の第1シート部を有し、前記第2ピストン体は、前記第1室と第2室と連通させる第2通路の開口の外周側に、前記第1シート部と衝合して結合される環状の第2シート部を有し、前記減衰力発生機構は、前記第1ピストン体の前記第1室側および前記第2ピストン体の前記第2室側にそれぞれ配され、前記第2シート部は、前記第1ピストン体と前記第2ピストン体とを組み付ける前の状態で前記第1シート部側に向けて突出し、前記第1シート部に結合された状態で塑性変形する突起部を有することを特徴としている。
本発明によれば、発生減衰力のばらつきを抑制することができる。
以下、本発明の実施の形態に係る緩衝器を、車両用の油圧緩衝器に適用した場合を例に挙げて、添付図面に従って詳細に説明する。
ここで、図1ないし図6は第1の実施の形態を示している。図1において、油圧緩衝器1は、その外殻をなす筒状の外筒2、内筒6、ピストンロッド8、ピストン11、伸び側減衰力発生機構15、縮み側減衰力発生機構16等を有している。
油圧緩衝器1の外筒2は、その一端側としての基端側(図1中の下端)がボトムキャップ3によって閉塞された閉塞端となり、他端側としての先端側(図1中の上端)は開口端となっている。外筒2の開口端(先端)側には、径方向内側に屈曲して形成されたかしめ部2Aが設けられ、該かしめ部2Aは、外筒2の開口端側を閉塞する蓋体4を抜止め状態で保持している。
環状円板からなる蓋体4は、外筒2の開口端(先端)側を閉塞するため後述のロッドガイド9に当接した状態で、その外周側が外筒2のかしめ部2Aにより固定されている。蓋体4の内周側には、弾性材料からなるロッドシール5が設けられ、該ロッドシール5は、後述のピストンロッド8と蓋体4との間をシールしている。
シリンダとしての内筒6は、外筒2内に同軸をなして設けられ、該内筒6の一端(基端)側は、ボトムキャップ3側にボトムバルブ7を介して嵌合、固定されている。内筒6の他端(先端)側である開口端側内周には、後述のロッドガイド9が嵌合して取付けられている。内筒6内には、油液を含んだ作動流体が封入されている。作動流体には、油液(オイル)に限らず、例えば添加剤を混在させた水等を用いることができる。
内筒6と外筒2との間には環状のリザーバ室Aが形成され、このリザーバ室A内には、前記油液と共にガスが封入されている。このガスは、大気圧状態の空気であってもよく、また圧縮された窒素ガス等の気体を用いてもよい。リザーバ室A内のガスは、ピストンロッド8の縮小時(縮み行程)に当該ピストンロッド8の進入体積分を補償すべく圧縮される。
ピストンロッド8は、基端側が内筒6内に挿入され、先端側が後述のロッドガイド9、蓋体4等を介して内筒6外へと伸縮可能に突出している。ピストンロッド8の基端側には、後述のピストン11、伸び側減衰力発生機構15および縮み側減衰力発生機構16が取付けられる小径ロッド部8Aと、該小径ロッド部8Aの端部に形成され後述のナット17が螺着されるおねじ部8Bとが設けられている。
ロッドガイド9は、外筒2の開口端側に嵌合されると共に、内筒6の開口端側にも固定して設けられている。このロッドガイド9は、図1に示すように、上側に位置して外筒2の内周側に挿嵌される大径部9Aと、該大径部9Aの下側に位置して内筒6の内周側に挿嵌される小径部9Bとにより段付円筒状に形成されている。この小径部9Bの内周側には、ピストンロッド8を軸方向に摺動可能に案内するガイド部10が設けられている。
また、ロッドガイド9の大径部9Aには、蓋体4と対向する大径部9Aの上面側に環状の油溜め室9Cが設けられ、該油溜め室9Cは、ロッドシール5及びピストンロッド8を径方向外側から取囲む環状の空間部として形成されている。そして、油溜め室9Cは、ロッド側室C内の油液(または、この油液中に混入したガス)がピストンロッド8とガイド部10との僅かな隙間等を介して漏出したときに、この漏出した油液等を一時的に溜めるための空間を提供するものである。
さらに、ロッドガイド9の大径部9Aには、外筒2側のリザーバ室Aに常時連通した連通路9Dが設けられ、この連通路9Dは、前記油溜め室9Cに溜められた油液(ガスを含む)を外筒2側のリザーバ室Aへと導くものである。
ピストン11は、ピストンロッド8の小径ロッド部8Aに設けられ、内筒6内に摺動可能に嵌装されている。ピストン11は、ロッドガイド9側に位置するピストン本体12と、ボトムバルブ7側に位置するリテーナ13と、シール部材14とにより構成されている。このピストン11は、内筒6内を下側のボトム側室Bと上側のロッド側室Cとの2室に画成している。ここで、ロッド側室Cは第1室を構成し、ボトム側室Bは第2室を構成している。
ピストン本体12は、第1ピストン体を構成し、第2ピストン体としてのリテーナ13と共に、小径ロッド部8Aの外周側に設けられている。ピストン本体12は、例えば、焼結金属により略円筒状に形成されている。ピストン本体12の内周側には、ピストンロッド8の小径ロッド部8Aが挿通されるロッド取付穴12Aが穿設されている。また、ピストン本体12には、該ロッド取付穴12Aの径方向外側に位置して、ピストン本体12の軸方向に穿設された複数の伸び側連通路12Bが設けられている。さらに、ピストン本体12には、各伸び側連通路12Bよりもピストン本体12の外周側に位置して、ピストン本体12の軸方向に穿設された複数の縮み側連通路12Cが設けられている。
各伸び側連通路12Bは、ボトム側室Bとロッド側室Cとを後述のリテーナ13の伸び側連通路13Bを介して連通させる第1通路を構成している。各伸び側連通路12Bは、各伸び側連通路12B内を油液が流通する際に、後述の伸び側減衰力発生機構15のディスクバルブ15Aにより、伸長側の減衰力が発生するものである。また、各縮み側連通路12Cは、リテーナ13を介さずにボトム側室Bとロッド側室Cとを連通させている。各縮み側連通路12Cは、各縮み側連通路12C内を油液が流通する際に、後述の縮み側減衰力発生機構16のディスクバルブ16Aにより、縮小側の減衰力が発生するものである。
ここで、ピストン本体12の一側(ロッドガイド9側)に位置して、伸び側連通路12Bの外周側には、後述の縮み側減衰力発生機構16のディスクバルブ16Aが離着座する一側環状弁座12Dが設けられている。さらに、ピストン本体12の他側(リテーナ13側)に位置して、伸び側連通路12Bの開口の外周側には、リテーナ13の第2シート部13Cが衝合する環状の第1シート部12Eがピストン本体12の全周に亘って設けられている。
リテーナ13は、第2ピストン体として、ピストン本体12の他側に位置して、ピストン本体12と衝合状態で組み付けられている。リテーナ13の内周側には、ピストンロッド8の小径ロッド部8Aが挿通されるロッド取付穴13Aが穿設されている。また、リテーナ13には、該ロッド取付穴13Aの径方向外側に位置して、リテーナ13の軸方向に穿設された複数の伸び側連通路13Bが設けられている。この伸び側連通路13Bは、ボトム側室Bとロッド側室Cとを伸び側連通路12Bを介して連通させる第2通路を構成している。また、リテーナ13の一側(ピストン本体12側)に位置して、伸び側連通路13Bの開口の外周側には、ピストン本体12の第1シート部12Eが衝合して結合される環状の第2シート部13Cがリテーナ13の全周に亘って設けられている。さらに、リテーナ13のボトム側室B側(第2シート部13Cの反対側)に位置して、伸び側連通路13Bの外周側には、後述の伸び側減衰力発生機構15のディスクバルブ15Aが離着座する他側環状弁座13D,13Eが設けられている。この他側環状弁座13D,13Eは、後述のディスクバルブ15Aが離着座するように配される座面となるものである。
リテーナ13は、焼結金属を用いて、ピストン本体12の径方向寸法よりも若干小さく形成されている。このリテーナ13は、伸び側減衰力発生機構15のディスクバルブ15Aが離着座する環状弁座部の径方向寸法を大きくし、ディスクバルブ15Aの外径寸法を大きくできるようにするものである。これにより、ディスクバルブ15Aは弾性変形が容易となり、ピストン11が軸方向に変位するときの速度変化に応じて、発生減衰力を滑らかに変化させることができる。
ここで、第2シート部13Cは、リテーナ13のピストン本体12側に位置して、各伸び側連通路13Bよりもリテーナ13の外周側に設けられた環状突起である。この第2シート部13Cは、図4に示すように、リテーナ13の径方向外側に位置する外周側テーパ部13C1と、外周側テーパ部13C1よりもリテーナ13の径方向内側に位置する内周側テーパ部13C2とにより構成されている。具体的には、第2シート部13Cは、ピストン本体12とリテーナ13とを組み付ける前の状態で、第2シート部13Cの一側外周縁からピストン本体12の第1シート部12E側に向けてテーパ状に突出している。この場合、内周側テーパ部13C2の傾きは、外周側テーパ部13C1の傾きに比して緩やかに設定されている。ここで、「傾き」とは、リテーナ13の径方向面(水平面)に対する傾斜を意味している。
また、第2シート部13C(内周側テーパ部13C2)の頂部h1と第2シート部13Cの外周端h2との間の軸方向寸法は、ピストン本体12とリテーナ13とを組み付ける際の外周側締代S1となるものである。また、内周側テーパ部13C2の底部h3と第2シート部13Cの外周端h2との間の軸方向寸法は、ピストン本体12とリテーナ13とを組み付ける際の内周側締代S2となるものである。
シール部材14は、ピストン本体12の外周面に嵌着されて設けられている。このシール部材14は、例えばフッ素系樹脂材料を用いて円筒状に形成されている。シール部材14は、ロッド側室Cとボトム側室Bとの間を液密にシールしている。また、シール部材14は、ピストン本体12が内筒6内を摺動するときの摩擦抵抗を抑制するものである。
伸び側減衰力発生機構15は、リテーナ13の他側端面(ボトム側室B側)に位置して設けられている。この伸び側減衰力発生機構15は、複数のディスクバルブ15Aと、該ディスクバルブ15Aよりもボトムバルブ7側に位置する規制板15Bとを有している。複数のディスクバルブ15Aは、リテーナ13の他側環状弁座13D,13Eに離着座して、ピストンロッド8が伸長方向に摺動変位するときに、伸び側連通路12B,13Bを流通する油液に抵抗力を与えて所定の減衰力を発生するものである。規制板15Bは、ディスクバルブ15Aの開弁時に、ディスクバルブ15Aの開度を規制するものである。
縮み側減衰力発生機構16は、ピストン本体12の一側端面(ロッド側室C側)に位置して設けられている。この縮み側減衰力発生機構16は、ディスクバルブ16Aと、該ディスクバルブ16Aを下側(ピストン本体12側)に付勢する板ばね16Bと、該板ばね16Bよりも上側(ロッドガイド9側)に位置する規制板16Cとを有している。ディスクバルブ16Aは、ピストンロッド8が縮小方向に摺動変位するときに、ピストン本体12の一側環状弁座12Dに離着座して、縮み側連通路12Cを流通する油液に抵抗力を与えて所定の減衰力を発生するものである。規制板16Cは、ディスクバルブ16Aの開弁時に、ディスクバルブ16Aの開度を規制するものである。この場合、ディスクバルブ16Aと板ばね16Bと規制板16Cとには、ピストンロッド8の伸長時に各伸び側連通路12B,13B内へと油液の流通を許す油路16A1,16B1,16C1がそれぞれ設けられている。
ナット17は、ピストンロッド8のおねじ部8Bに螺着して設けられている。このナット17は、ピストンロッド8の小径ロッド部8Aにピストン本体12とリテーナ13とを組み付けるとともに、ピストン11の上,下両面側に伸び側減衰力発生機構15および縮み側減衰力発生機構16を着脱可能に固定するものである。
次に、ピストン11、伸び側減衰力発生機構15、縮み側減衰力発生機構16をピストンロッド8の小径ロッド部8Aに組み付ける方法について、説明する。
まず、縮み側減衰力発生機構16、ピストン本体12、リテーナ13、伸び側減衰力発生機構15を、この順序でピストンロッド8の小径ロッド部8Aに挿嵌する。続いて、ナット17をピストンロッド8のおねじ部8Bに螺着させて、ピストン11、伸び側減衰力発生機構15、縮み側減衰力発生機構16をピストンロッド8の小径ロッド部8Aに組み付ける。
この場合、ピストン本体12とリテーナ13との組み付け時に、リテーナ13の第2シート部13Cは、ピストン本体12の第1シート部12Eに対して強く衝合され、リテーナ13の伸び側連通路13Bとピストン本体12の伸び側連通路12Bとの間を封止状態にする。具体的には、第2シート部13Cの内周側テーパ部13C2が、第1シート部12Eに強く密着するように当接して、伸び側連通路13Bと伸び側連通路12Bとの間をシールし、油液の漏れを防止する。
このとき、外周側テーパ部13C1は、外周側締代S1をもって第1シート部12Eと当接し、内周側テーパ部13C2は、内周側締代S2をもって第1シート部12Eと当接する。具体的には、内周側テーパ部13C2が第1シート部12Eにより圧縮されて塑性変形することにより、第2シート部13Cに径方向外向きの押圧力Fが発生する(図6参照)。これにより、第2シート部13Cは、押圧力Fにより内周側テーパ部13C2が外周側テーパ部13C1側へと径方向外向きにずれて、外周側に倒れるように塑性変形する。この場合、第2シート部13Cが塑性変形することにより、ピストン本体12とリテーナ13とを上,下方向で結合するときの外力を部分的に吸収することができ、リテーナ13の他側環状弁座13D,13Eに変形力が及ぶのを抑制することができる。
本実施の形態による油圧緩衝器1は、上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
油圧緩衝器1は、ピストンロッド8の先端側を自動車の車体側に取付け、外筒2の基端側を車軸(いずれも図示せず)側に取付ける。これにより、自動車の走行時に振動が発生した場合には、ピストンロッド8が外筒2、内筒6から軸方向に伸長,縮小するときに、伸び側減衰力発生機構15および縮み側減衰力発生機構16によって伸長側,縮小側の減衰力が発生され、車両の上,下方向の振動を減衰するように緩衝することができる。
即ち、ピストンロッド8が伸長行程にある場合には、ロッド側室C内が高圧状態となるから、ロッド側室C内の油液が、油路16A1,16B1,16C1、ピストン本体12の伸び側連通路12B、リテーナ13の伸び側連通路13B、伸び側減衰力発生機構15を介してボトム側室B内へと流通し、伸長側の減衰力が発生する。これにより、ピストンロッド8の伸長動作を抑えるように緩衝することができる。また、ピストンロッド8の伸長行程では、内筒6から進出したピストンロッド8の進出体積分に相当する分量の油液が、リザーバ室A内からボトムバルブ7を介してボトム側室B内に流入する。
ここで、ピストンロッド8が伸長行程にある場合では、ロッド側室C内が高圧状態となるから、ロッド側室C内の油液は、例えばピストンロッド8とガイド部10との僅かな隙間等を介して油溜め室9C内に漏出することがある。また、油溜め室9C内に漏出油が増えると、溢れた油液は、蓋体4とロッドガイド9との間に設けた逆止弁(図示せず)を介してロッドガイド9の連通路9D側に導かれ、徐々にリザーバ室A内に還流される。
一方、ピストンロッド8の縮小行程では、ピストン11の下側に位置するボトム側室B内がロッド側室Cよりも高圧になるから、ボトム側室B内の油液がピストン本体12の縮み側連通路12C、縮み側減衰力発生機構16を介してロッド側室C内へと流通し、縮小側の減衰力を発生する。そして、内筒6内へのピストンロッド8の進入体積分に相当する分量の油液が、ボトム側室Bから前記ボトムバルブ7を介してリザーバ室A内に流入し、リザーバ室Aは内部のガスが圧縮されることにより、ピストンロッド8の進入体積分を吸収する。
かくして、第1の実施の形態によれば、リテーナ13は、ロッド側室Cとボトム側室Bとを連通させる伸び側連通路13Bの開口の外周側に、ピストン本体12の第1シート部12Eと衝合して結合される環状の第2シート部13Cを有している。この場合、第2シート部13Cは、ピストン本体12とリテーナ13とを組み付ける前の状態で第1シート部12E側に向けてテーパ状に突出する外周側テーパ部13C1および内周側テーパ部13C2を有し、内周側テーパ部13C2の傾きは、外周側テーパ部13C1の傾きに比して、緩やかである構成としている。
これにより、ピストン本体12とリテーナ13との組み付け時に、内周側テーパ部13C2が第1シート部12Eにより圧縮されて変形することにより、第2シート部13Cが径方向外向きにずれて外周側に倒れるように変形することができる。即ち、第2シート部13Cが変形して、ピストン本体12とリテーナ13との上,下方向の結合力(外力)を吸収することにより、リテーナ13の他側環状弁座13D,13Eに外力による変形の影響が及ぶのを抑制することができる。この結果、他側環状弁座13D,13Eに離着座する伸び側減衰力発生機構15のディスクバルブ15Aが変形するのを防止でき、発生減衰力のばらつきを抑制することができる。
また、リテーナ13は、第2シート部13Cとは反対側のボトム側室B側に、伸び側減衰力発生機構15のディスクバルブ15Aを配するための他側環状弁座13D,13Eを有している。第2シート部13Cは、ピストン本体12とリテーナ13との組み付け時(結合時)に内周側テーパ部13C2が変形することにより、他側環状弁座13D,13Eの変形を抑制する構成としている。これにより、ピストン本体12とリテーナ13との間の油密性を確保しつつ、他側環状弁座13D,13Eの変形量を小さくすることができる。この結果、伸び側減衰力発生機構15のディスクバルブ15Aが変形するのを防止して、発生減衰力のばらつきを抑制することができる。
さらに、従来と同等の製造工程により、油圧緩衝器1を製造できるので、製造コストが上昇するのを抑制することができる。
次に、図7は本発明の第2の実施の形態を示している。第2の実施の形態の特徴は、リテーナの第2シート部に平坦部を設けたことにある。なお、第2の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成については同一の符号を付し、その説明は省略する。
リテーナ21は、第1の実施の形態で述べたリテーナ13と同様に、ロッド取付穴(図示せず)と、複数の伸び側連通路21Aと、第2シート部21Bと、他側環状弁座(図示せず)とを有している。
ここで、第2シート部21Bは、図7に示すように、外周側テーパ部21B1と内周側テーパ部21B2と平坦部21B3とにより構成されている。具体的には、第2シート部21Bは、ピストン本体12とリテーナ21とを組み付ける前の状態で、第2シート部21Bの一側外周縁からピストン本体12の第1シート部12E側に向けてテーパ状に突出している。この場合、内周側テーパ部21B2の傾きは、外周側テーパ部21B1の傾きに比して緩やかに設定されている。
また、外周側テーパ部21B1と内周側テーパ部21B2との間には、リテーナ21の径方向面(水平面)に対して平坦な平坦部21B3が設けられている。この平坦部21B3は、ピストン本体12とリテーナ21とが結合状態で組み付けられる際に、ピストン本体12の第1シート部12Eと衝合するものである。
かくして、第2の実施の形態でも、第1の実施の形態とほぼ同様な作用効果を得ることができる。第2の実施の形態によれば、第2シート部21Bは、外周側テーパ部21B1と内周側テーパ部21B2との間に、平坦部21B3を設ける構成とした。この場合、ピストン本体12とリテーナ21とが組み付けられる際に、平坦部21B3が第1シート部12Eと当接した後に、内周側テーパ部21B2が第1シート部12Eにより圧縮されて変形する。これにより、第2シート部21Bが変形して、リテーナ21の他側環状弁座に外力による変形の影響が及ぶのを抑制することができる。この結果、伸び側減衰力発生機構15のディスクバルブ15Aが変形するのを防止でき、発生減衰力のばらつきを抑制することができる。
次に、図8は本発明の第3の実施の形態を示している。第3の実施の形態の特徴は、リテーナの第2シート部の内周側テーパ部を円弧状に形成したことにある。なお、第3の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成については同一の符号を付し、その説明は省略する。
リテーナ31は、第1の実施の形態で述べたリテーナ13と同様に、ロッド取付穴(図示せず)と、複数の伸び側連通路31Aと、第2シート部31Bと、他側環状弁座(図示せず)とを有している。
ここで、第2シート部31Bは、図8に示すように、外周側テーパ部31B1と内周側テーパ部31B2とにより構成されている。具体的には、第2シート部31Bは、ピストン本体12とリテーナ31とを組み付ける前の状態で、第2シート部31Bの一側外周縁からピストン本体12の第1シート部12E側に向けてテーパ状に突出している。この場合、内周側テーパ部31B2は円弧状に湾曲し、内周側テーパ部31B2の傾きは、外周側テーパ部31B1の傾きに比して緩やかに設定されている。
かくして、第3の実施の形態でも、第1の実施の形態とほぼ同様な作用効果を得ることができる。第3の実施の形態によれば、第2シート部31Bは、円弧状に湾曲した内周側テーパ部31B2を有する構成とした。これにより、ピストン本体12とリテーナ31とが結合状態で組み付けられる際に、円弧状の内周側テーパ部31B2が第1シート部12Eにより圧縮されて変形する。この結果、ピストン本体12とリテーナ31との衝合を滑らかにすることができる。
次に、図9は本発明の第4の実施の形態を示している。第4の実施の形態の特徴は、リテーナの第2シート部に突起部を形成したことにある。なお、第4の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成については同一の符号を付し、その説明は省略する。
リテーナ41は、第1の実施の形態で述べたリテーナ13と同様に、ロッド取付穴(図示せず)と、複数の伸び側連通路41Aと、第2シート部41Bと、他側環状弁座(図示せず)とを有している。
ここで、第2シート部41Bは、図9に示すように、外周側平坦部41B1と内周側平坦部41B2と突起部41B3とにより、段付状に形成されている。具体的には、第2シート部41Bは、ピストン本体12とリテーナ41とを組み付ける前の状態で、第2シート部41Bの一側外周縁からピストン本体12の第1シート部12E側に向けて突出している。
この場合、突起部41B3は、外周側平坦部41B1と内周側平坦部41B2との間に位置して設けられている。突起部41B3は、断面山形状に形成され、外周側平坦部41B1および内周側平坦部41B2から僅かにピストン本体12側に向けて突出している。突起部41B3は、ピストン本体12とリテーナ41とを組み付ける際に塑性変形して、ピストン本体12の第1シート部12Eと結合するものである。即ち、突起部41B3は、組み付け時に第1シート部12Eに押圧され、第1シート部12Eと塑性変形状態で結合するものである。
かくして、第4の実施の形態でも、第1の実施の形態とほぼ同様な作用効果を得ることができる。第4の実施の形態によれば、第2シート部41Bは、第1シート部12Eに結合された状態で塑性変形する突起部41B3を有している。これにより、ピストン本体12とリテーナ41とが結合状態で組み付けられる際に、突起部41B3が塑性変形して、第1シート部12Eと結合する。この場合、第2シート部41Bが塑性変形して、ピストン本体12とリテーナ41との上,下方向の結合力を吸収することにより、リテーナ41の他側環状弁座に外力による変形の影響が及ぶのを抑制することができる。この結果、伸び側減衰力発生機構15のディスクバルブ15Aが変形するのを防止でき、発生減衰力のばらつきを抑制することができる。
次に、図10は本発明の第5の実施の形態を示している。第5の実施の形態の特徴は、リテーナの第2シート部に突起部を形成したことにある。なお、第5の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成については同一の符号を付し、その説明は省略する。
リテーナ51は、第1の実施の形態で述べたリテーナ13と同様に、ロッド取付穴(図示せず)と、複数の伸び側連通路51Aと、第2シート部51Bと、他側環状弁座(図示せず)とを有している。
ここで、第2シート部51Bは、図10に示すように、ピストン本体12とリテーナ51とを組み付ける前の状態で、第2シート部51Bの一側外周縁からピストン本体12の第1シート部12E側に向けて断面山形状に突出している。第2シート部51Bの頂部は、ピストン本体12とリテーナ41とを組み付ける際に塑性変形して、ピストン本体12の第1シート部12Eと結合する突起部51B1を形成している。即ち、突起部51B1の尖端側は、組み付け時に第1シート部12Eに押圧され、第1シート部12Eと塑性変形状態で結合するものである。
かくして、第5の実施の形態でも、第1の実施の形態とほぼ同様な作用効果を得ることができる。第5の実施の形態によれば、第2シート部51Bは、第1シート部12Eに結合された状態で塑性変形する突起部51B1を有している。これにより、ピストン本体12とリテーナ51とが結合状態で組み付けられる際に、突起部51B1が塑性変形して、第1シート部12Eと結合する。この場合、第2シート部51Bが塑性変形して、ピストン本体12とリテーナ51との上,下方向の結合力を吸収することにより、リテーナ51の他側環状弁座に外力による変形の影響が及ぶのを抑制することができる。この結果、伸び側減衰力発生機構15のディスクバルブ15Aが変形するのを防止でき、発生減衰力のばらつきを抑制することができる。
なお、前記第1の実施の形態では、4輪自動車の各車輪側に取付ける油圧緩衝器1を緩衝器の代表例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば2輪車に用いる油圧緩衝器であってもよく、車両以外の種々の機械、建築物等に用いる油圧緩衝器に用いてもよいものである。このことは、第2,3,4,5の実施の形態についても同様である。
さらに、前記各実施の形態は例示であり、異なる実施の形態で示した構成の部分的な置換または組合わせが可能であることは言うまでもない。
以上説明した実施形態に基づく緩衝器として、例えば、以下に述べる態様のものが考えられる。
緩衝器の第1の態様としては、作動流体が封入されるシリンダと、該シリンダの内部を第1室および第2室に区画するピストンと、該ピストンに設けられ減衰力を発生させる減衰力発生機構と、を備えた緩衝器において、前記ピストンは、第1ピストン体と、該第1ピストン体に衝合状態で組み付けられる第2ピストン体とを有し、前記第1ピストン体は、前記第1室と第2室とを連通させる第1通路の開口の外周側に環状の第1シート部を有し、前記第2ピストン体は、前記第1室と第2室とを連通させる第2通路の開口の外周側に、前記第1シート部と衝合して結合される環状の第2シート部を有し、前記減衰力発生機構は、前記第1ピストン体の前記第1室側および前記第2ピストン体の前記第2室側にそれぞれ配され、前記第2シート部は、前記第1ピストン体と前記第2ピストン体とを組み付ける前の状態で前記第1シート部側に向けてテーパ状に突出する外周側テーパ部および内周側テーパ部を有し、前記内周側テーパ部の傾きは、前記外周側テーパ部の傾きに比して、緩やかである構成としている。これにより、発生減衰力のばらつきを抑制することができる。
第2の態様としては、第1の態様において、前記第2ピストン体は、前記第2シート部とは反対側で前記第2室側に前記減衰力発生機構を配するための座面を有し、前記第2シート部は、前記第1ピストン体と前記第2ピストン体との組み付け時に前記内周側テーパ部が変形することにより、前記座面の変形を抑制する構成としている。これにより、座面の変形を抑制して発生減衰力のばらつきを抑制することができる。
また、第3の態様としては、作動流体が封入されるシリンダと、該シリンダの内部を第1室および第2室に区画するピストンと、該ピストンに設けられ減衰力を発生させる減衰力発生機構と、を備えた緩衝器において、前記ピストンは、第1ピストン体と、該第1ピストン体に衝合状態で組み付けられる第2ピストン体とを有し、前記第1ピストン体は、前記第1室と第2室と連通させる第1通路の開口の外周側に環状の第1シート部を有し、前記第2ピストン体は、前記第1室と第2室と連通させる第2通路の開口の外周側に、前記第1シート部と衝合して結合される環状の第2シート部を有し、前記減衰力発生機構は、前記第1ピストン体の前記第1室側および前記第2ピストン体の前記第2室側にそれぞれ配され、前記第2シート部は、前記第1ピストン体と前記第2ピストン体とを組み付ける前の状態で前記第1シート部側に向けて突出し、前記第1シート部に結合された状態で塑性変形する突起部を有する構成としている。これにより、発生減衰力のばらつきを抑制することができる。
第4の態様としては、第3の態様において、前記第2ピストン体は、前記第2シート部とは反対側で前記第2室側に前記減衰力発生機構を配するための座面を有し、前記第2シート部は、前記第1ピストン体と前記第2ピストン体との組み付け時に前記突起部が塑性変形することにより、前記座面の変形を抑制する構成としている。これにより、座面の変形を抑制して発生減衰力のばらつきを抑制することができる。
1 油圧緩衝器(緩衝器)
6 内筒(シリンダ)
11 ピストン
12 ピストン本体(第1ピストン体)
12B 伸び側連通路(第1通路)
12E 第1シート部
13,21,31,41,51 リテーナ(第2ピストン体)
13B,21A,31A,41A,51A 伸び側連通路(第2通路)
13C,21B,31B,41B,51B 第2シート部
13C1,21B1,31B1 外周側テーパ部
13C2,21B2,31B2 内周側テーパ部
15 伸び側減衰力発生機構(減衰力発生機構)
16 縮み側減衰力発生機構(減衰力発生機構)
41B3,51B1 突起部
B ボトム側室(第2室)
C ロッド側室(第1室)
6 内筒(シリンダ)
11 ピストン
12 ピストン本体(第1ピストン体)
12B 伸び側連通路(第1通路)
12E 第1シート部
13,21,31,41,51 リテーナ(第2ピストン体)
13B,21A,31A,41A,51A 伸び側連通路(第2通路)
13C,21B,31B,41B,51B 第2シート部
13C1,21B1,31B1 外周側テーパ部
13C2,21B2,31B2 内周側テーパ部
15 伸び側減衰力発生機構(減衰力発生機構)
16 縮み側減衰力発生機構(減衰力発生機構)
41B3,51B1 突起部
B ボトム側室(第2室)
C ロッド側室(第1室)
Claims (4)
- 作動流体が封入されるシリンダと、
該シリンダの内部を第1室および第2室に区画するピストンと、
該ピストンに設けられ減衰力を発生させる減衰力発生機構と、
を備えた緩衝器において、
前記ピストンは、第1ピストン体と、該第1ピストン体に衝合状態で組み付けられる第2ピストン体とを有し、
前記第1ピストン体は、前記第1室と第2室とを連通させる第1通路の開口の外周側に環状の第1シート部を有し、
前記第2ピストン体は、前記第1室と第2室とを連通させる第2通路の開口の外周側に、前記第1シート部と衝合して結合される環状の第2シート部を有し、
前記減衰力発生機構は、前記第1ピストン体の前記第1室側および前記第2ピストン体の前記第2室側にそれぞれ配され、
前記第2シート部は、前記第1ピストン体と前記第2ピストン体とを組み付ける前の状態で前記第1シート部側に向けてテーパ状に突出する外周側テーパ部および内周側テーパ部を有し、
前記内周側テーパ部の傾きは、前記外周側テーパ部の傾きに比して、緩やかであることを特徴とする緩衝器。 - 前記第2ピストン体は、前記第2シート部とは反対側で前記第2室側に前記減衰力発生機構を配するための座面を有し、
前記第2シート部は、前記第1ピストン体と前記第2ピストン体との組み付け時に前記内周側テーパ部が変形することにより、前記座面の変形が抑制されることを特徴とする請求項1に記載の緩衝器。 - 作動流体が封入されるシリンダと、
該シリンダの内部を第1室および第2室に区画するピストンと、
該ピストンに設けられ減衰力を発生させる減衰力発生機構と、
を備えた緩衝器において、
前記ピストンは、第1ピストン体と、該第1ピストン体に衝合状態で組み付けられる第2ピストン体とを有し、
前記第1ピストン体は、前記第1室と第2室と連通させる第1通路の開口の外周側に環状の第1シート部を有し、
前記第2ピストン体は、前記第1室と第2室と連通させる第2通路の開口の外周側に、前記第1シート部と衝合して結合される環状の第2シート部を有し、
前記減衰力発生機構は、前記第1ピストン体の前記第1室側および前記第2ピストン体の前記第2室側にそれぞれ配され、
前記第2シート部は、前記第1ピストン体と前記第2ピストン体とを組み付ける前の状態で前記第1シート部側に向けて突出し、前記第1シート部に結合された状態で塑性変形する突起部を有することを特徴とする緩衝器。 - 前記第2ピストン体は、前記第2シート部とは反対側で前記第2室側に前記減衰力発生機構を配するための座面を有し、
前記第2シート部は、前記第1ピストン体と前記第2ピストン体との組み付け時に前記突起部が塑性変形することにより、前記座面の変形が抑制されることを特徴とする請求項3に記載の緩衝器。
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