JP6496197B2 - 緩衝器 - Google Patents

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Description

本発明は、緩衝器に関する。
従来、鞍乗車両に用いられる緩衝器にあっては、緩衝器の軽量化のため、懸架ばねを金属製のコイルばねに代えてエアばねを利用するものが開発されている。このエアばねを利用する緩衝器としては、たとえば、シリンダと、シリンダ内に移動自在に挿入されるロッドと、ロッドの端部に取り付けられてシリンダとの間にチャンバを形成する管状部材とを備えて構成される(たとえば、特許文献1参照)。
この緩衝器では、チャンバ内に高圧の気体を封入してエアばねを構成しており、伸縮の際にエア室の容積が拡縮されて、緩衝器の伸縮度合いに応じたばね反力を得られるようになっている。ここで、エアばねは、内部の圧力で常に緩衝器を伸長方向に附勢していて、緩衝器のストローク量に対して非線形なばね特性を示し、このエアばねだけで懸架ばねを構成すると、ストローク量に対してばね力が過剰となり車両における乗り心地が悪化する。そのため、従来の緩衝器では、管状部材の下端をシリンダ外周に摺接させてコンプレッサーピストンとの間に気密チャンバを設けている。
この気密チャンバは、内部に高圧の気体が封入されてエアばねとして機能しており、前述のチャンバとは異なって、緩衝器を圧縮方向に附勢するばね力を発揮するようになっている。
このように緩衝器は、チャンバの他にチャンバで形成されるエアばねとは反対方向のばね力を発揮する気密チャンバで形成されるエアばねを設けることで、コイルばねに近似したばね特性を実現して、車両における乗り心地を向上させている。
特表2001−501155号公報
この緩衝器では、管状部材がコンプレッサーピストンとシリンダの双方に摺接する構造を採用しているため、以下の問題が生じる。
緩衝器に曲げモーメントが作用すると、管状部材が撓んでコンプレッサーピストンおよびシリンダに対して強く押し付けられ、管状部材とコンプレッサーピストンおよびシリンダとの間に生じる摩擦力が大きくなり、緩衝器の円滑な伸縮が妨げられてしまう。
また、管状部材をシリンダとコンプレッサーピストンの両者に対して同心に配置しなくては、管状部材とコンプレッサーピストンおよびシリンダとの間に生じる摩擦力が大きくなるので、緩衝器の円滑な伸縮のためには、各部品について高精度の寸法管理が求められる。
そこで、本発明の目的は、エアばねを備えつつも円滑な伸縮を実現可能な緩衝器の提供である。
上記した目的を達成するため、本発明の課題解決手段における緩衝器では、第一チャンバ部材がチャンバホルダおよびばね室形成部材に対して遊嵌されており、径方向移動可能となっている。よって、第一チャンバ部材は、エアピストンに対しても径方向移動可能となっている。そのため、緩衝器に曲げモーメント作用させる横力が入力されても、第一チャンバ部材が径方向の遊びによってエアピストンに過剰に強く押し付けられずに済む。よって、緩衝器の伸縮によって第一チャンバ部材がエアピストンに対して上下方向に移動する際に、第一チャンバ部材とエアピストンとの間に生じる摩擦力は、緩衝器に入力される横力によっても過大とならずに済む。また、第一チャンバ部材がエアピストンに対し径方向移動が許容されて第一チャンバ部材がエアピストンによって調心されるので、第一チャンバ部材とエアピストンとの間で発生する摩擦力が過剰とならない。また、第一チャンバ部材、第二チャンバ部材、シリンダおよびエアピストンといった各部品について高精度の寸法管理が求められずに済む。
また、請求項2の緩衝器では、閉鎖部材がシリンダの外周に摺接して、エアピストンとの間に反力ばね室を形成するようになっている。したがって、この緩衝器では、伸縮の際に減衰力を発揮するとともに、エア室によるエアばねに対して反対方向の附勢力を発揮するための反力ばね室を備えているので、緩衝器のストローク量に比例するばね特性を実現できる。
さらに、請求項3の緩衝器では、反力ばね室が内部に封入された気体によってエアばねとは反対方向の附勢力を発揮するようになっている。したがって、この緩衝器では、伸縮の際に減衰力を発揮するとともに、エア室と反力ばね室によるエアばねが緩衝器のストローク量に見合って弾発力を発揮する懸架ばねとして機能し、ストローク量に比例するばね特性を実現できる。よって、コイルばねを用いずに懸架ばねを実現でき、緩衝器の全体重量を軽減できる。
よって、本発明の緩衝器によれば、エアばねを備えつつも円滑な伸縮を実現できる。
本発明の第一の実施の形態における緩衝器の断面図である。
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。第一の実施の形態における緩衝器Dは、図1に示すように、シリンダCyと、シリンダCy内に移動自在に挿入されるロッド2と、ロッド2に取り付けられるチャンバホルダ13と、一端がチャンバホルダ13に径方向に遊びを持って嵌合される筒状の第一チャンバ部材22と、一端がチャンバホルダ13に固定して取り付けられ第一チャンバ部材22の外周に配置されるとともに内部が第一チャンバ部材22内に連通される筒状の第二チャンバ部材23と、シリンダCyに取り付けられて第一チャンバ部材22の内周に摺接するエアピストン14と、第一チャンバ部材22と前記第二チャンバ部材23の間の隙間を閉鎖する閉鎖部材としてのばね室形成部材24とを備えて構成されている。
以下、各部について説明する。シリンダCyは、筒状であって図1中下端を閉塞するキャップ5を備えたインナーチューブ1と、インナーチューブ1の外周に装着されるアウターチューブ6とを備えており、図1中上端には、環状のロッドガイド3が取り付けられている。また、インナーチューブ1の外周には、段部1aが設けられており、この段部1aよりもロッド2側となる図1中上方の外径が段部1aの下方の外径よりも小径とされて小径部1bが形成されている。そして、インナーチューブ1の小径部1bには、アウターチューブ6が装着されており、アウターチューブ6は、その下端が段部1aに当接していてインナーチューブ1に対して下方への移動が規制されている。
アウターチューブ6は、外周がメッキ処理或いは研磨処理されるなどして外表面が滑らかな面に仕上げられている。また、インナーチューブ1内には、ロッド2の図1中下端に連結されるピストン7によって、ともに液体が充填される伸側室R1と圧側室R2とに区画されている。インナーチューブ1内に充填される液体は、たとえば、作動油が使用されるが、水、水溶液、電気粘性流体や磁気粘性流体等の他の液体の使用も可能である。
ピストン7には、伸側室R1と圧側室R2とを連通する伸側流路7aと圧側流路7bが設けられている。また、ピストン7の図1中下端には、伸側流路7aの出口端を開閉する伸側リーフバルブ8が積層され、ピストン7の図1中上端には、圧側流路7bの出口端を開閉する圧側リーフバルブ9が積層されている。伸側リーフバルブ8および圧側リーフバルブ9は、環状であってピストン7とともにロッド2の先端にピストンナット10によって固定されており、外周側の撓みが許容されている。よって、伸側リーフバルブ8は、伸側室R1の圧力を受けて撓むと伸側流路7aを開放でき、圧側リーフバルブ9は、圧側室R2の圧力を受けて撓むと圧側流路7bを開放できる。
また、インナーチューブ1の下端を閉塞するキャップ5は、緩衝器Dを車両に連結するための取付部5eと、インナーチューブ1の側方に沿う筒状のタンクTとを備えており、タンクT内には、フリーピストン11が摺動自在に挿入されている。フリーピストン11は、タンクT内を気体が充填されるガス室Gと液体が充填される液室Lとに区画しており、液室Lは、キャップ5内に設けた圧側室R2に排出流路5aと吸込流路5bを介して連通されている。排出流路5aには、圧側室R2から液室Lへ向かう液体の流れのみを許容してこの流れに抵抗を与える減衰バルブ5cが設けられ、他方の吸込流路5bには、液室Lから圧側室R2へ向かう液体の流れのみを許容するチェックバルブ5dが設けられている。なお、タンクTを廃止してシリンダCy内に排出流路5a、吸込流路5b、減衰バルブ5c、チェックバルブ5dおよびリザーバを設けてもよい。
ロッド2は、図1中上端が、シリンダCyの図1中上端に取り付けた環状のロッドガイド3内を通じてシリンダCy外へ伸びている。ロッドガイド3は、環状であって、図1中上端外周にシリンダCyの外径よりも大径な外径を持つフランジ状のエアピストン14を備え、エアピストン14よりも下方側がエアピストン14よりも外径が小径な小径部15とされている。また、ロッドガイド3の小径部15の外周の一部に螺子部16を備えている。エアピストン14は、外周に形成される環状溝14aと、この環状溝14a内に装着されるピストンシール20とを備えている。このように、エアピストン14を備えるロッドガイド3をシリンダCyに取り付けて、エアピストン14をシリンダCyに間接的に取り付けるようにしてもよいし、シリンダCyの外周にエアピストン14を直接一体に設けて取り付けてもよい。
そして、シリンダCyを構成するアウターチューブ6およびインナーチューブ1内に小径部15を挿入し、螺子部16をインナーチューブ1の内周に螺合すると、ロッドガイド3がインナーチューブ1に固定される。また、このインナーチューブ1へのロッドガイド3の螺子締結によって、アウターチューブ6が段部1aとエアピストン14の下端で挟持されてインナーチューブ1に固定され一体化される。このようにロッドガイド3をシリンダCyに取り付けると、ロッドガイド3は、ロッド2の外周に設けたエア室Cに面するようになっている。
また、ロッドガイド3の小径部15の外周には、螺子部16を挟んでアウターチューブ6の内周に当接する環状シール18とインナーチューブ1の内周に当接する環状シール17が装着されている。さらに、ロッドガイド3の内周には、ロッド2の外周に摺接してロッド2の軸方向となる図1中上下方向の移動を案内する筒状のブッシュ19と、ブッシュ19よりも図1中上方のエア室C側に配置されてロッド2の外周に摺接しシリンダCy内への気体の侵入を防止するエアシールASと、ゴムや樹脂等で形成されブッシュ19よりも図1中下方のシリンダCy側に配置されてロッド2の外周に摺接しシリンダCy内からの液体の漏洩を防止する液体シールLSとを備えている。
このように、ロッドガイド3に液体シールLSを設けているので、シリンダCy内が密閉されて、シリンダCy内が液密に維持される。また、ロッドガイド3にエアシールASを設けているので、エア室Cが気密に維持され、シリンダCy内への気体の侵入が防止される。
ロッドガイド3には、ブッシュ19と液体シールLSとの間から開口して小径部15の螺子部16に通じる通孔21が設けられている。つまり、通孔21は、ロッドガイド3とロッド2との間であって、エアシールASと液体シールLSとの間の空間Sに一端が通じている。空間Sは、ロッドガイド3とロッド2との間の環状隙間であってエアシールASと液体シールLSとの間で仕切られる空間である。また、通孔21の他端は、ロッドガイド3とインナーチューブ1との間を通じてアウターチューブ6とインナーチューブ1との間の隙間に連通されている。アウターチューブ6とインナーチューブ1との間の隙間と通孔21との連通を確保するため、環状シール18がインナーチューブ1の上端よりも上方に配置されるとともに、通孔21の他端が環状シール17と環状シール18との間から開口するように配慮されている。
空間Sは、通孔21、ロッドガイド3とインナーチューブ1との間の隙間およびアウターチューブ6とインナーチューブ1との間の隙間を介してシリンダCy外に連通されており、大気開放されている。よって、本実施の形態では、通孔21、ロッドガイド3とインナーチューブ1との間の隙間およびアウターチューブ6とインナーチューブ1との間の隙間によって構成される圧抜通路4により、空間SがシリンダCy外へ連通されている。
戻って、ロッド2の図1中上端には、緩衝器Dを車両へ連結するための取付部材12と環状のチャンバホルダ13とが取り付けられている。チャンバホルダ13は、環状であって、ロッド2の図1中上端外周に装着される取付部13aと、取付部13aの外周から図1中下方へ向けて伸びる筒状部13bとを備えている。また、チャンバホルダ13の取付部13aの下方には環状溝13cが設けられている。この環状溝13cには、ロッド2の外周に配置される蛇腹状のバンプクッションラバーBRの上端が圧縮嵌合されており、バンプクッションラバーBRがチャンバホルダ13によって保持されている。
さらに、チャンバホルダ13には、筒状であってロッド2の外周側に配置されてロッドガイド3に設けたエアピストン14が摺動自在に挿入される第一チャンバ部材22の図1中上端が嵌合されるとともに、筒状であって第一チャンバ部材22の外周側に配置される第二チャンバ部材23の図1中上端が取り付けられている。
第一チャンバ部材22は、筒状であって図1中上端がチャンバホルダ13の筒状部13bの内周に嵌合隙間を設けて径方向へ若干の移動が可能に嵌合、つまり、径方向へ遊びをもって嵌合(遊嵌)されている。さらに、第一チャンバ部材22の内周には、エアピストン14に装着されたピストンシール20が摺接しており、第一チャンバ部材22の開口端が気密に閉塞されている。
第二チャンバ部材23は、筒状であって図1中上端がチャンバホルダ13の筒状部13bの外周に螺子結合されて、装着されている。また、チャンバホルダ13の筒状部13bの内周から取付部13aにかけて切欠13dが設けられていて、この切欠13dを介して第一チャンバ部材22内と第二チャンバ部材23との間の環状隙間が連通されている。
第一チャンバ部材22と第二チャンバ部材23の図1中下端であるシリンダ側端には、アウターチューブ6に摺接して、エアピストン14との間に反力ばね室BSを形成する閉鎖部材としてのばね室形成部材24が取り付けられている。
具体的には、ばね室形成部材24は、第一チャンバ部材22の下端に嵌合されるとともに第二チャンバ部材23の内周に螺着される筒状本体24aと、筒状本体24aの図1中下端から内周側へ突出してアウターチューブ6の外周に摺接する環状の内側フランジ部24bと、内側フランジ部24bの内周に装着されてアウターチューブ6の外周に摺接する環状のシール部材25,26と、下端から開口して筒状本体24aを貫通するエア注入孔24cと、下端から開口して筒状本体24aの内周に貫通するエア注入孔24dと、エア注入孔24cに設けたエアバルブ27と、エア注入孔24dに設けたエアバルブ28とを備えて構成されている。
また、第一チャンバ部材22は、ばね室形成部材24に対して嵌合隙間を設けて嵌合、つまり、径方向へ遊びを持って嵌合(遊嵌)されていて、ばね室形成部材24に対して径方向へ若干の移動が可能となっている。ばね室形成部材24は、筒状本体24aの内外周に各々第一チャンバ部材22の外周に密着する環状シール24eと第二チャンバ部材23の内周に密着する環状シール24fを備え、第一チャンバ部材22と第二チャンバ部材23との間の環状隙間を密閉している。よって、エア室Cは、エアピストン14、チャンバホルダ13、第一チャンバ部材22、第二チャンバ部材23およびばね室形成部材24とで形成され、第一チャンバ部材22内および前述した環状隙間がエア室Cとなる。また、第一チャンバ部材22と第二チャンバ部材23との間の環状隙間もエア室Cの一部としているので、緩衝器Dが最大限に収縮してエア室Cが最収縮されてもエア室Cの最小容積を確保でき、エア室C内の圧力が過大とならない。なお、チャンバホルダ13は、第一チャンバ部材22或いは第二チャンバ部材23の一方または両方に一体化して統合できる。
また、ばね室形成部材24は、内側フランジ部24bの内周に設けたシール部材25,26をアウターチューブ6に摺接させており、ばね室形成部材24、アウターチューブ6およびエアピストン14によって反力ばね室BSが形成されている。アウターチューブ6の外周が滑らかな面であるので、シール部材25,26は反力ばね室BS内を閉空間とできるとともに、摺動抵抗も低減できるようになっている。
そして、このエア室C内には、ばね室形成部材24に設けたエアバルブ27から気体の充填が可能となっており、所定量の気体が封入される。なお、気体は、空気の利用の他、不活性ガス等の利用も可能である。また、反力ばね室BSには、ばね室形成部材24に設けたエアバルブ28から気体の充填が可能となっており、所定量の気体が封入される。気体が封入されたエア室Cは、内部の気体圧力でエアピストン14を図1中押し下げるため、ロッド2をシリンダCyから離間させる方向へ附勢するばね力、つまり、緩衝器Dを伸長方向に附勢するばね力を発揮するエアばねとして機能する。対して、気体が封入された反力ばね室BSは、内部の気体圧力でエアピストン14を図1中押し上げるため、ロッド2をシリンダCy内に侵入させる方向へ附勢するばね力、つまり、緩衝器Dを圧縮方向へ附勢するばね力を発揮するエアばねとして機能する。
エア室Cによって形成されるエアばねは、内部の圧力によって常に緩衝器Dを伸長方向へ附勢しており、緩衝器Dがわずかに縮む方向へストロークしても大きな弾発力を発揮するとともに、緩衝器Dのストローク量に対して非線形な弾発力を発生するばね特性を示す。対して、反力ばね室BSは、エア室Cによって形成されるエアばねとは逆方向に緩衝器Dを附勢するエアばねとして機能してするようになっている。よって、エア室Cによって形成されるエアばねと反力ばね室BSにより形成されるエアばねのトータルのばね特性を、緩衝器Dのストローク量に対して比例するコイルばねのようなばね特性に近似する特性とできる。
緩衝器Dは、以上のように構成されており、以下、その作動について説明する。まず、緩衝器Dが伸長する場合、ロッド2がシリンダCyに対して図1中上方へ移動して、シリンダCy内でピストン7が上方へ変位し伸側室R1が圧縮され、圧側室R2が拡大される。
すると、圧縮される伸側室R1内の圧力が上昇し、伸側室R1内の液体は、伸側リーフバルブ8を押し開いて、ピストン7に設けた伸側流路7aを通過して圧側室R2へ移動する。シリンダCy内からロッド2が退出し、シリンダCy内ではロッド2がシリンダCyから退出する体積分の液体が不足するが、チェックバルブ5dが開いて、不足分に見合った液体が吸込流路5bを介して液室Lから圧側室R2へ供給される。圧力が上昇する伸側室R1に対して圧側室R2は液室Lから液体の供給を受けるのでタンクT内の圧力とほぼ等しくなり、伸側室R1と圧側室R2の圧力に差が生じ、この差圧がピストン7に作用して、緩衝器Dは伸長作動を妨げる減衰力を発揮する。また、ロッド2の図1中上昇によって、第一チャンバ部材22がエアピストン14から離間して、エア室C内の容積が拡大されるとともに、ばね室形成部材24がシリンダCyに対して上方へ移動して反力ばね室BSの容積が減少する。このように、緩衝器Dの伸長作動によってエア室Cの容積は拡大し反力ばね室BSは圧縮されるので、エア室Cによって形成されるエアばねの弾発力は減少し、反力ばね室BSによって形成されるエアばねの弾発力は増大する。これにより、エア室Cによって形成されるエアばねと反力ばね室BSにより形成されるエアばねのトータルの弾発力は減少して小さくなる。
次に、緩衝器Dが圧縮される場合、ロッド2がシリンダCyに対して図1中下方へ移動して、シリンダCy内でピストン7が下方へ変位し圧側室R2が圧縮され、伸側室R1が拡大される。
すると、圧縮される圧側室R2内の圧力が上昇し、圧側室R2内の液体は、圧側リーフバルブ9を押し開いてピストン7に設けた圧側流路7bを通過して伸側室R1へ移動する。また、シリンダCy内へロッド2が侵入して、シリンダCy内ではロッド2がシリンダCyへ侵入する体積分の液体が過剰となるが、過剰分の液体は、減衰バルブ5cを押し開いて、排出通路5aを介して圧側室R2から液室Lへ排出される。このように、圧側室R2から伸側室R1および液室Lへ向かう液体の流れに対して圧側リーフバルブ9および減衰バルブ5cによって抵抗が与えられるため、圧側室R2内の圧力は上昇し、対して拡大される伸側室R1内の圧力は減少する。よって、圧側室R2と伸側室R1の圧力に差が生じ、この差圧がピストン7に作用して、緩衝器Dは収縮作動を妨げる減衰力を発揮する。また、ロッド2の図1中下降によって、第一チャンバ部材22がエアピストン14へ接近して、エア室C内の容積が減少するとともに、ばね室形成部材24がシリンダCyに対して下方へ移動して反力ばね室BSの容積が拡大される。このように、緩衝器Dの収縮作動によってエア室Cが圧縮され反力ばね室BSの容積は拡大されるので、エア室Cによって形成されるエアばねの弾発力は増大し、反力ばね室BSによって形成されるエアばねの弾発力は減少する。これにより、エア室Cによって形成されるエアばねと反力ばね室BSにより形成されるエアばねのトータルの弾発力は増大して大きくなる。
このように緩衝器Dでは、伸縮の際に減衰力を発揮するとともに、エア室Cと反力ばね室BSによるエアばねが緩衝器Dのストローク量に見合って車体を支持する弾発力を発揮する懸架ばねとして機能し、ストローク量にほぼ比例したばね特性を実現する。よって、コイルばねを用いずに懸架ばねを実現でき、緩衝器Dの全体重量を軽減できる。
なお、反力ばね室BS内に気体を封入して反力ばね室BSでエアばねを形成する代わりに、エアピストン14とばね室形成部材24の内側フランジ部24bとの間にコイルばねを設けて、緩衝器Dのストローク量に比例するばね特性を得てもよい。その場合、反力ばね室BSへの気体の封入は不要であるため、反力ばね室BS内の密閉の必要がないので、シール部材25,26を省略するか緊迫力を小さくでき、第二チャンバ部材23とシリンダCyとの相対移動の際の摺動摩擦を軽減できる。このようにすると、シリンダCyとシール部材25,26の摺動部が減るので、緩衝器Dはより円滑に伸縮可能となる。また、シール部材25,26を不要となるので、シリンダCyの外周面の滑らかな面とする必要もない。さらに、圧側通路4を反力ばね室BSへ接続する場合、アウターチューブ6についても廃止できる。
そして、本発明の緩衝器Dにあっては、第一チャンバ部材22がチャンバホルダ13およびばね室形成部材24に対して遊嵌されており、径方向移動可能となっている。よって、第一チャンバ部材22は、エアピストン14に対しても径方向移動可能となっている。そのため、緩衝器Dに曲げモーメントを作用させる横力が入力されても、第一チャンバ部材22が径方向の遊びによってエアピストン14の外周に装着されるピストンシール20に過剰に強く押し付けられずに済む。よって、緩衝器Dの伸縮によって第一チャンバ部材22がエアピストン14に対して図1中上下方向に移動する際に、第一チャンバ部材22とピストンシール20との間に生じる摩擦力は、緩衝器Dに入力される横力によっても過大とならずに済む。また、第一チャンバ部材22がエアピストン14に対し径方向移動が許容されて第一チャンバ部材22がエアピストン14によって調心されるので、第一チャンバ部材22とピストンシール20との間で発生する摩擦力が過剰とならない。よって、緩衝器Dの円滑な伸縮のために、第一チャンバ部材22、第二チャンバ部材23、シリンダCyおよびエアピストン14といった各部品について高精度の寸法管理が求められずに済む。以上より、この緩衝器Dによれば、第一チャンバ部材22とエアピストン14との間に生じる摩擦力が過大とならない。よって、緩衝器Dは滑らかに伸縮でき、前記摩擦力による制御できない減衰力も発揮されず、車両における乗り心地を良好にでき、エア室Cを形成する各部品に対し高精度の寸法管理も要求されずに済む。
さらに、本実施の形態の緩衝器Dでは、第一チャンバ部材22の外周に配置されるとともに内部が第一チャンバ部材22内に連通される筒状の第二チャンバ部材23を備え、ばね室形成部材24でチャンバ部材22と第二チャンバ部材23の間の環状隙間を閉鎖し、環状隙間をもエア室Cとしている。環状隙間は、緩衝器Dが伸縮しても容積が変化しないので、緩衝器Dの最収縮時にエア室Cの容積をより大きく確保でき、緩衝器Dの最収縮時のエア室C内の圧力が過大となるのを抑制できる。
また、本実施の形態の緩衝器Dでは、エア室Cに臨むロッドガイド3の内周であってエアシールASと液体シールLSとの間の空間Sが圧抜通路4によってシリンダCy外へ通じている。このようになっているため、緩衝器Dの伸縮によって空間S内に液体シールLSを乗り越えてシリンダCy内の液体が侵入しても、圧抜通路4により空間S内が蓄圧されずに済む。よって、空間S内が高圧とならずエアシールASの背面である空間S側から高圧が作用しないので、エアシールASのシール性を阻害せずに済み、シリンダCy内へエア室C内の気体の侵入を防止できる。さらに、液体シールLSにも空間S側から高圧が作用しないので、液体シールLSも良好にシール性能を発揮でき、空間Sへの液体の漏洩抑止効果も向上する。
よって、本実施の形態の緩衝器Dによれば、エアシールASのシール性を損なわないので、エアばねを備えつつもシリンダCy内へエア室C内の気体の侵入を防止でき、緩衝器Dの減衰特性に悪影響を与えずに済む。
なお、圧抜通路4は、空間Sを大気開放するようになっているので、空間S内に侵入した液体を緩衝器D外へ排出でき、空間S内の圧力上昇を確実に防げるが、圧抜通路4が空間SをシリンダCy外に設けた密閉室へ連通するようにしてもよい。密閉室の容積を、当該密閉室内にシリンダCy内から漏洩すると見込まれる液体量ではエアシールASに悪影響を与えるほどの圧力にならない程度に設定しておけばよく、このようにすれば、空間S内へのダストや水の侵入を防止できる。
また、本実施の形態の緩衝器Dでは、シリンダCyがインナーチューブ1とインナーチューブ1の外周にエア室Cの端部を閉塞するエア室形成部材24が摺接するアウターチューブ6を設け、圧抜通路4の一部がインナーチューブ1とアウターチューブ6との間の隙間で形成されるので、空間Sへの緩衝器D外からのダストや雨水等の侵入を防止できる。また、アウターチューブ6とインナーチューブ1との間の隙間を圧抜通路4の一部として利用するようにしたので、反力ばね室BSがシリンダCyの外周に配置される構造であっても、エア室Cを回避しながら空間Sを簡単な構造で大気開放できる。なお、圧抜通路4を設けない場合、アウターチューブ6とインナーチューブ1との間の隙間を利用して空間Sを大気開放する必要がないので、インナーチューブ1の外周を滑らかな面とする処理を施してアウターチューブ6を廃止してもよい。
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されない。
2・・・ロッド、13・・・チャンバホルダ、13a・・・取付部、14・・・エアピストン、22・・・第一チャンバ部材、23・・・第二チャンバ部材、24・・・ばね室形成部材(閉鎖部材)、BS・・・反力ばね室、C・・・エア室、Cy・・・シリンダ、D・・・緩衝器、R1・・・伸側室、R2・・・圧側室、S・・・空間

Claims (3)

  1. シリンダと、
    前記シリンダ内に移動自在に挿入されるロッドと、
    前記ロッドに取り付けられるチャンバホルダと、
    一端が前記チャンバホルダに径方向に遊びを持って嵌合される筒状の第一チャンバ部材と、
    一端が前記チャンバホルダに固定して取り付けられ第一チャンバ部材の外周に配置されるとともに内部が第一チャンバ部材内に連通される筒状の第二チャンバ部材と、
    前記シリンダに取り付けられて前記第一チャンバ部材の内周に摺接するエアピストンと、
    前記第二チャンバ部材の他端に固定して取り付けられて前記第一チャンバ部材の他端が径方向に遊びを持って嵌合されるとともに、前記第一チャンバ部材と前記第二チャンバ部材の間の環状隙間を閉鎖する閉鎖部材とを備え、
    前記チャンバホルダ、前記第一チャンバ部材、前記第二チャンバ部材、前記エアピストンおよび前記閉鎖部材によりエアばねとして機能するエア室が形成される
    ことを特徴とする緩衝器。
  2. 前記閉鎖部材は、前記シリンダの外周に摺接して、前記エアピストンとの間に反力ばね室を形成する
    ことを特徴とする請求項1に記載の緩衝器。
  3. 前記反力ばね室は、内部に封入された気体により前記エアばねとは反対方向の附勢力を発揮する
    ことを特徴とする請求項2に記載の緩衝器。
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