[第1実施形態]
以下、本開示に係る位置判定システムの実施形態の一例について、図を用いて説明する。図1は、本開示に係る位置判定システムが適用された車両用電子キーシステムの概略的な構成の一例を示す図である。図1に示すように車両用電子キーシステムは、車両Hvに搭載された車載システム1と、当該車両Hvのユーザによって携帯される通信端末である携帯端末2と、を備えている。
車載システム1及び携帯端末2はそれぞれ、通信範囲が例えば最大でも数十メートル程度となる所定の近距離無線通信規格に準拠した通信(以降、近距離無線通信とする)を実施可能に構成されている。ここでの近距離無線通信規格としては、例えばBluetooth Low Energy(Bluetoothは登録商標)や、Wi-Fi(登録商標)、ZigBee(登録商標)等を採用することができる。
携帯端末2は、車載システム1と対応付けられてあって、車両Hvの電子キーとして機能する装置である。携帯端末2は、上述の近距離通信機能を備えた、ユーザが携帯可能な装置であればよい。例えばスマートフォンを携帯端末2として用いることができる。もちろん、携帯端末2は、タブレット端末、ウェアラブルデバイス、携帯用音楽プレーヤ、携帯用ゲーム機等であってもよい。携帯端末2が近距離通信として送信する信号には、送信元情報が含まれている。送信元情報は、例えば携帯端末2に割り当てられた固有の識別情報(以降、端末IDとする)である。端末IDは他の通信端末と携帯端末2とを識別するための情報として機能する。
また、携帯端末2は、送信元情報を含む通信パケットを所定の送信間隔で無線送信することで、近距離通信機能を備えた周囲の通信端末に対して、自分自身の存在を通知する(つまりアドバタイズする)。以降では便宜上、アドバイズを目的として定期的に送信される通信パケットのことをアドバタイズパケットと称する。
アドバタイズパケットの送信間隔は携帯端末2の動作状況に応じて可変であってもよい。例えば携帯端末2において近距離通信機能を利用する所定のアプリケーションがフォアグラウンドで動作している場合、送信間隔は相対的に短い時間(例えば50ミリ秒)に設定される。一方、当該アプリケーションがフォアグラウンドで動作していない場合、送信間隔は相対的に長い時間(200ミリ秒)に設定される。携帯端末2は、車両用電子キーシステムが規定する所定の時間(例えば200ミリ秒)に少なくとも一回はアドバタイズパケットを送信するように構成されていればよい。
車載システム1は、上述した近距離通信機能によって携帯端末2から送信されてくる信号(例えばアドバタイズパケット)を受信することで、携帯端末2が車載システム1と近距離通信可能な範囲内に存在することを検出する。以降では、車載システム1が近距離通信機能によって携帯端末2と相互にデータ通信が可能な範囲のことを通信エリアとも記載する。
なお、本実施形態では一例として携帯端末2から逐次送信されるアドバタイズパケットを受信することで、車載システム1は通信エリア内に携帯端末2が存在することを検出するように構成されているものとするが、これに限らない。他の態様として、車載システム1がアドバタイズパケットを逐次送信し、携帯端末2との通信接続(いわゆるコネクション)が確立したことに基づいて、通信エリア内に携帯端末2が存在することを検出するように構成されていてもよい。
<車両Hvの構成について>
まずは、車両Hvの構成について説明する。車両Hvは例えば乗用車である。ここでは一例として車両Hvは、前部座席と後部座席とを備えるとともに、右側に運転席(換言すればハンドル)が設けられている。車両Hvの車室内空間の後端部には、荷室(換言すればトランクルーム)として機能する空間が配置されている。換言すれば、車両Hvの後部座席用の空間は、後部座席用の背もたれ部42の上方を介して荷室と連通している。
なお、車両Hvは上述した例以外の構造を有する車両であってもよい。例えば車両Hvは左側に運転席が設けられている車両であってもよい。また、後部座席を備えない車両をであってもよい。加えて、車室内空間とは独立して荷室を備える車両であっても良い。後部座席を複数列備える車両であっても良い。車両Hvは、トラックなどの貨物自動車などであってもよい。また、車両Hvはキャンピングカーであってもよい。
加えて、車両Hvは、車両貸出サービスに供される車両(いわゆるレンタカー)であってもよいし、カーシェアリングサービスに供される車両(いわゆるシェアカー)であってもよい。シェアカーには、個人所有の車両をこの車両の管理者が使用していない時間帯に他者に貸し出すサービスに用いられる車両も含まれる。車両Hvが上記サービスに供される車両(以下、サービス車両)である場合には、それらのサービスの利用契約を行っている人物がユーザとなりうる。つまり、車両Hvを使用する権利を有する人物がユーザとなりうる。
車両Hvが備える種々のボディパネルは金属部材を用いて実現されている。ここでのボディパネルとは、車両Hvの外観形状を提供する部品群である。ボディパネルには、ボディシェルに対して組み付けられるサイドボディパネルや、ルーフパネル、リアエンドパネル、ボンネットパネル、ドアパネル、ピラーなどが含まれる。以降では、種々のボディパネルを組み合わせてなる構成をボディと称する。
金属板は電波を反射する性質を有するため、車両Hvのボディパネルは電波を反射する。すなわち、車両Hvは、電波の直進的な伝搬を遮断するボディを備える。ここでの電波とは、車載システム1と携帯端末2との無線通信に使用される周波数帯(ここではGH帯)の電波のことを指す。なお、ボディシェル自体は、鋼板などの金属部材を用いて実現されていても良いし、カーボン系樹脂を用いて形成されていてもよい。ここではより好ましい態様としてボディシェルも金属製とする。
また、ここでの遮断とは、理想的には反射であるが、これに限らない。電波を所定のレベル(以降、目標減衰レベル)以上減衰できる構成が、電波の伝搬を遮断する構成に相当する。目標減衰レベルは、車室内外で電波の信号強度に有意な差が生じる値とすればよく、例えば10dBとする。なお、目標減衰レベルは5dBから20dBまでの任意の値に設定することができる。
また、車両Hvは、ルーフパネルによって提供される屋根部を有し、このルーフパネルを支持するための部材である複数のピラーを備える。複数のピラーは、前端から後端に向けて、順に、Aピラー、Bピラー、Cピラーと呼ばれる。車両Hvは、ピラーとして、Aピラー、Bピラー、及びCピラーを備える。Aピラーは前部座席の前方に設けられたピラーである。Bピラーは、前部座席と後部座席の間に設けられたピラーである。Cピラーは後部座席斜め後ろに設けられているピラーである。
なお、他の態様として、車両Hvは、前方から4つ目のピラーであるDピラーや、5つめのピラーであるEピラーを備えていてもよい。各ピラーの一部又は全部は、高張力鋼鈑等の金属部材を用いて実現されている。なお、他の態様としてピラーは、カーボンファイバー製であっても良いし、樹脂製であってもよい。さらに、種々の材料を組み合わせて実現されていても良い。
<車載システム1の構成について>
次に、車載システム1の構成及び作動について述べる。車載システム1は、図2に示すように、認証ECU11、データ通信機12、車室内通信機13、車室外通信機14、ドアハンドルボタン15、スタートボタン16、エンジンECU17、及びボディECU18を備える。なお、部材名称中のECUは、Electronic Control Unitの略であり、電子制御装置を意味する。
認証ECU11は、概略的に、データ通信機12等との連携(換言すれば協働)によって、携帯端末2の位置を判定し、その判定結果に応じた車両制御を他のECUとの協働によって実現するECUである。認証ECU11は、コンピュータを用いて実現されている。すなわち、認証ECU11は、CPU111、RAM112、フラッシュメモリ113、I/O114、及びこれらの構成を接続するバスラインなどを備えている。なお、認証ECU11は、CPU111の代わりに、MPUやGPUを用いて実現されていてもよい。また、認証ECU11は、CPU111や、MPU、GPUを組み合せて実現されていてもよい。
CPU111は、種々の演算処理を実行する演算処理装置である。RAM112は揮発性の記憶媒体であり、フラッシュメモリ113は、書き換え可能な不揮発性の記憶媒体である。I/O114は、認証ECU11が、データ通信機12など、車両Hvに搭載されている他の装置と通信するためのインターフェースとして機能する回路モジュールである。I/O114は、アナログ回路素子やICなどを用いて実現されればよい。
フラッシュメモリ113には、ユーザが所有する携帯端末2に割り当てられている端末IDが登録されている。また、フラッシュメモリ113には、通常のコンピュータを認証ECU11として機能させるためのプログラム(以降、位置判定プログラム)等が格納されている。なお、上述の位置判定プログラムは、非遷移的実体的記録媒体(non- transitory tangible storage medium)に格納されていればよい。CPU111が位置判定プログラムを実行することは、位置判定プログラムに対応する方法が実行されることに相当する。
さらに、フラッシュメモリ113には、認証ECU11が携帯端末2からの信号の受信強度に基づいて、携帯端末2が車室内に存在するか否かを判定するための判定用閾値として、室内相当値Pinと、室外相当値Poutの2つのパラメータが保存されている。室内相当値Pinは、携帯端末2は車室内に存在すると判定するための閾値である。室外相当値Poutは、携帯端末2は車室外に存在すると判定するための閾値である。室内相当値Pinや室外相当値Poutの技術的な意義及び設定方法については別途後述する。
認証ECU11の詳細については別途後述する。なお、車両Hvの走行用電源(例えばイグニッション電源)がオフになっている場合も、認証ECU11には、後述する位置判定処理を実施するために必要十分な電力が車載バッテリから供給されるように構成されている。
データ通信機12、車室内通信機13、及び車室外通信機14は何れも、近距離通信を実施するための通信モジュール(以降、近距離通信機)である。データ通信機12は、認証ECU11が携帯端末2とデータを送受信する役割を担う。車室内通信機13及び車室外通信機14は、携帯端末2から送信された信号の受信強度を認証ECU11に提供する役割を担う。
データ通信機12、車室内通信機13、及び車室外通信機14はそれぞれ、担当する役務が異なるだけであり、同一の構成を有する近距離通信機3を用いて実現することができる。以降では、データ通信機12、車室内通信機13、及び車室外通信機14を区別しない場合には、近距離通信機3と記載する。各近距離通信機3は専用の通信線又は車両内ネットワークを介して認証ECU11と相互通信可能に接続されている。
図3は、近距離通信機3の電気的な構成を概略的に示したものである。図3に示すように近距離通信機3は、基板30、アンテナ31、送受信部32、及び通信マイコン33を備える。基板30は、例えばプリント基板である。基板30には、例えばアンテナ31等の近距離通信機3を構成する電子部品が設けられている。
アンテナ31は、近距離通信に用いられる周波数帯(例えばGHz帯)の電波を送受信するためのアンテナである。本実施形態では一例としてアンテナ31は無指向性アンテナとする。他の態様としてアンテナ31は指向性を備えるものであってもよい。アンテナ31は、近距離通信機3の厚みを抑制するために、基板30上にパターン形成されたもの(つまりパターンアンテナ)であることが好ましい。アンテナ31は送受信部32と電気的に接続されている。
送受信部32は、アンテナ31で受信した信号を復調し、通信マイコン33に提供する。また、通信マイコン33を介して認証ECU11から入力された信号を変調して、アンテナ31に出力し、電波として放射させる。送受信部32は通信マイコン33と相互通信可能に接続されている。
また、送受信部32は、アンテナ31で受信した信号の強度を逐次検出する受信強度検出部321を備える。受信強度検出部321は多様な回路構成によって実現可能である。受信強度検出部321が検出した受信強度は、受信データに含まれる端末IDと対応付けられて通信マイコン33に逐次提供される。なお、受信強度は、例えば電力の単位[dBm]で表現されればよい。便宜上、受信強度と端末IDとを対応づけたデータを受信強度データと称する。
通信マイコン33は、認証ECU11とのデータの受け渡しを制御するマイクロコンピュータである。通信マイコン33は、MPUやRAM、ROM等を用いて実現されている。通信マイコン33は、送受信部32から入力された受信データを順次又は認証ECU11からの要求に基づいて認証ECU11に提供する。つまり、送受信部32が受信したデータは、通信マイコン33を介して認証ECU11に提供される。
また、通信マイコン33は、携帯端末2の端末IDを認証するとともに、認証ECU11からの要求に基づき、携帯端末2と暗号通信を実施する機能を備える。暗号化の方式としては、Bluetoothで規定されている方式など、多様な方式を援用することができる。IDの認証方式についても、Bluetoothで規定されている方式など、多様な方式を援用することができる。
その他、通信マイコン33は、受信強度検出部321から受信強度データを取得すると、図示しないRAMに蓄積していく。逐次取得される受信強度データは、例えば、最新の受信データの受信強度が先頭となるように時系列順にソートされてRAMに保存されれば良い。保存されてから一定時間経過したデータは順次破棄されていけば良い。つまり、受信強度データはRAMに一定時間保持される。通信マイコン33は、認証ECU11からの要求に基づいてRAMに蓄積されている受信強度データを提供する。認証ECU11に提供した受信強度データについてはRAMから削除されれば良い。
なお、本実施形態では送受信部32が出力する受信強度データはRAMにいったん保持され、通信マイコン33が認証ECU11からの要求に基づいてRAMに蓄積されている受信強度データを認証ECU11に提供するものとするが、これに限らない。受信強度データは、認証ECU11に逐次提供される構成を採用しても良い。
データ通信機12は、ユーザ等の操作に基づいて、携帯端末2と鍵交換プロトコルの実行(いわゆるペアリング)を実施済みの近距離通信機3である。ペアリングによって取得した携帯端末2についての情報(以降、端末情報)は、通信マイコン33が備える不揮発性のメモリに保存されている。端末情報とは、例えば、ペアリングによって交換した鍵や、端末IDなどである。交換した鍵の保存はボンディングとも称される。なお、車両Hvが複数のユーザによって使用される場合には、各ユーザが保有する携帯端末2の端末情報が保存される。
データ通信機12は、携帯端末2からのアドバタイズパケットを受信すると、保存済みの端末情報を用いて自動的に携帯端末2との通信接続を確立する。そして、認証ECU11が携帯端末2とデータの送受信を実施する。なお、データ通信機12は、携帯端末2との通信接続を確立すると、通信接続している携帯端末2の端末IDを認証ECU11に提供する。
なお、Bluetooth規格によれば、暗号化されたデータ通信は、周波数ホッピング方式で実施される。周波数ホッピング方式は、通信につかうチャンネルを時間で次々に切り替えていく通信方式である。具体的にはBluetooth規格では、周波数ホッピング・スペクトル拡散方式(FHSS:Frequency Hopping Spread Spectrum)によってデータ通信が行われる。
Bluetooth Low Energy(以降、Bluetooth LE)では、0番から39番までの40のチャンネルが用意されており、そのうちの0番から36番までの37チャンネルがデータ通信に使用可能である。なお、37番から39番までの3チャンネルは、アドバタイズパケットの送信に供されるチャンネルである。
データ通信機12は、携帯端末2との通信接続が確立している状態では、37個のチャンネルを逐次変更しながら携帯端末2とデータの送受信を実施する。その際、データ通信機12は、認証ECU11に対して、携帯端末2との通信に使用するチャンネルを示す情報(以降、チャンネル情報)を逐次提供する。チャンネル情報は、具体的なチャンネル番号であっても良いし、使用チャンネルの遷移規則を示すパラメータ(いわゆるhopIncrement)であってもよい。HopIncrementは、通信接続時にランダムに決定される5から16までの数字である。チャンネル情報は、現在のチャンネル番号と、HopIncrementを含むことが好ましい。
当該データ通信機12は、車室内及び車室外のドア付近が見通せる位置に配置されていることが好ましい。車室内及び車室外のドア付近が見通せる位置とは、例えば車室内の天井部分である。また、仮に車両Hvが樹脂製のピラーを備える場合には、当該ピラー部分もまた、車室内及び車室外のドア付近が見通せる位置に相当する。本実施形態のデータ通信機12は一例として、車室内の天井部分の中央付近に配置されている。
或る近距離通信機3にとっての見通し内とは、当該近距離通信機3から送信された信号が直接到達可能な領域である。なお、無線信号の伝搬経路には可逆性があるため、或る近距離通信機3にとっての見通し内とは、換言すれば、携帯端末2から送信された信号を当該近距離通信機3が直接的に受信可能な領域に相当する。
また、或る近距離通信機3にとっての見通し外とは、当該近距離通信機3から送信された信号が直接到達しない領域である。無線信号の伝搬経路には可逆性があるため、或る近距離通信機3にとっての見通し外とは、換言すれば、携帯端末2から送信された信号を当該近距離通信機3が直接的には受信できない領域に相当する。なお、携帯端末2が近距離通信機3の見通し外に存在する場合であっても、携帯端末2から送信された信号は種々の構造物で反射されることによって見通し外にも到達しうる。つまり、携帯端末2がデータ通信機12の見通し外に存在する場合であっても、構造物での反射等によって携帯端末2とデータ通信機12とは無線通信を実施し得る。
なお、本実施形態では車両Hvに設けられているデータ通信機12の数は1つであるが、これに限らない。データ通信機12としての近距離通信機3は車両Hvに複数設けられていても良い。また、後述する車室内通信機13や車室外通信機14の一部が、データ通信機12として機能するように設定されていても良い。
車室内通信機13は、車室内に少なくとも1つ設けられている。図2では便宜上、車室内通信機13を1つしか図示していないが、車載システム1は車室内通信機13を複数備えうる。本実施形態の車載システム1は図4に示すように、車室内通信機13として、フロントエリア通信機13A、トランクエリア通信機13B、リアエリア第1通信機13C、及びリアエリア第2通信機13Dを備える。なお、図4は車両Hvの概念的な上面図であって、種々の車室内通信機13、及び種々の車室外通信機14の設置位置を説明するために屋根部を透過させて示している。
本明細書では便宜上、前部座席の背もたれ部41よりも車両前方となる車室内空間のことをフロントエリアと称する。フロントエリアには、インストゥルメントパネル44の上方となる車室内空間も含まれる。また、前部座席の背もたれ部41よりも車両後方であり、且つ、後部座席の背もたれ部42よりも車両前方となる車室内空間をリアエリアと称する。さらに、後部座席の背もたれ部42よりも車両後方に位置する車室内空間をトランクエリアと称する。トランクエリアは荷室に相当するエリアである。
フロントエリア通信機13Aは、フロントエリアを強電界エリアとするための車室内通信機13である。ここでの強電界エリアとは、近距離通信機3から送信した信号が所定の閾値(以降、強電界閾値)以上の強度を保って伝搬するエリアである。強電界閾値は、近距離通信の信号としては十分に強いレベルに設定されている。例えば強電界閾値は−35dBm(−0.316μW)である。無線信号の伝搬経路には可逆性があるため、強電界エリアは別の観点によれば、近距離通信機3での携帯端末2から送信された信号の受信強度が強電界閾値以上となるエリアでもある。近距離通信機3から0.8m以内となる領域は、強電界エリアとなる傾向がある。携帯端末2がフロントエリア通信機13Aの強電界エリアに存在する場合、携帯端末2からの信号の受信強度は十分に強いレベルとなる。
フロントエリア通信機13Aは、車室内通信機13は、車室外が見通し外となる位置に設けられていることが好ましい。フロントエリア通信機13Aは、例えばセンターコンソール43とインストゥルメントパネル44との境界付近に配置されている。なお、フロントエリア通信機13Aの設置位置は、これに限らない。例えば運転席の足元や、運転席用のドアの車室内側の側面に配置されていても良い。フロントエリア通信機13Aは、フロントエリアが強電界エリアとなるように、前部座席周辺の適宜設計される位置に配置されていればよい。
トランクエリア通信機13Bは、トランクエリアを強電界エリアとするための車室内通信機13である。トランクエリア通信機13Bもまた、車室外が見通し外となりやすい位置に配置されていることが好ましい。例えばトランクエリア通信機13Bは、荷室の床部の中央部に配置されている。
リアエリア第1通信機13C及びリアエリア第2通信機13Dは、何れも主としてリアエリアを強電界エリアとするための車室内通信機13である。リアエリア第1通信機13C及びリアエリア第2通信機13Dもまた、車室外が見通し外となりやすい位置に配置されていることが好ましい。便宜上、リアエリアに配置されている車室内通信機13をリアエリア通信機とも記載する。
リアエリア第1通信機13Cは、例えば後部座席用のドアとして車両Hvの右側に設けられているドア(以降、後部右側ドア)の車室内側の面に設置されている。後部右側ドアの車室内側の面におけるリアエリア第1通信機13Cの具体的な設置位置は適宜設計されれば良い。本実施形態ではリアエリア第1通信機13Cは、後部右側ドアの車室外側に配置されているドアハンドルの裏側に相当する部分よりも、5センチ以上低い位置(例えば足元付近)に配置されている。なお、リアエリア第1通信機13Cは、後部座席の床面の右側部分に配置されていても良いし、後部座席の着座面の右側部分に埋没されていても良い。さらに、リアエリア第1通信機13Cは、背もたれ部41の後部座席側の面の下端付近に配置されていても良い。
リアエリア第2通信機13Dは、例えば後部座席用のドアとして車両Hvの左側に設けられているドア(以降、後部左側ドア)の車室内側の面に設置されている。後部左側ドアの車室内側の面におけるリアエリア第2通信機13Dの設置位置は適宜設計されれば良い。本実施形態ではリアエリア第2通信機13Dは、後部左側ドアの車室外側に配置されているドアハンドル(以降、リア用外側左ドアハンドル)の裏側に相当する部分よりも、5センチ以上低い位置(例えば足元付近)に配置されている。なお、リアエリア第2通信機13Dは、後部座席の床面の左側部分に配置されていても良いし、後部座席の着座面の左側部分に埋没されていても良い。さらに、リアエリア第2通信機13Dは、背もたれ部41の後部座席側の面の下端付近に配置されていても良い。リアエリア第1通信機13C及びリアエリア第2通信機13Dは、Bピラーの室内側の面部に配置されていても良い。
なお、本実施形態の車載システム1は、リアエリアを強電界エリアとするための車室内通信機13を左右に1つずつ合計2つ備えるが、車室内通信機13の配置態様はこれに限らない。車載システム1は、1つの車室内通信機13によってリアエリアが強電界エリアとなるように構成されていても良い。リアエリア用の車室内通信機13は、例えば後部座席の車幅方向中央部において着座面に埋設されていてもよい。
以上の車室内通信機13の配置態様によれば、図5に示すように車室内全域が強電界エリアとなる。つまり、車室内全域が強電界閾値以上の電波で充填される。図5は図4に示す構成において、各近距離通信機3が提供する強電界エリアを概念的に示したものである。図5における実線の円は、車室内通信機13が提供する強電界エリアを表している。また、破線の円弧は、次に説明する車室外通信機14が提供する強電界エリアを表している。図5では図面の視認性確保のために種々の車室内通信機13及び車室外通信機14についての符号及び引出線の記載は省略している。
図5に於いてドットパターンのハッチングを施している領域は、車室内通信機13が形成する漏れ領域を概念的に表している。車室内通信機13が形成する漏れ領域とは、車室内通信機13が提供する強電界エリアが車室外にはみ出ている領域である。換言すれば、車室内通信機13が送信した信号が所定の強電界閾値以上の強度を保って車室外に到達する領域である。
なお、各車室内通信機13の設置位置は、適宜変更可能である。また、車載システム1が備える車室内通信機13の数は、1個や2個、3個など、4個以下であっても良い。車室内通信機13の数は5個以上であってもよい。
ところで、上述した構成は、近距離通信に供される周波数の電波の伝搬を阻害しうる車室内構造物で区切られてなるエリア毎に、当該エリアを強電界エリアとするべく車室内通信機13を配置した構成に相当する。近距離通信に供される周波数の電波の伝搬を阻害しうる車室内構造物とは、前部座席の背もたれ部41や後部座席の背もたれ部42である。車室内構造物で区切られてなるエリアとは、フロントエリアや、リアエリア、トランクエリアである。
車室外通信機14は、車室外の所定範囲が強電界エリアとなるように、例えば、運転席用ドアの外側面や、車両Hvの屋根部、ボンネット、ピラー等に少なくとも1つ配置されている。図2では便宜上、車室外通信機14を1つしか図示していないが、車載システム1は車室外通信機14を複数備えうる。本実施形態の車載システム1は図4に示すように、車室外通信機14として、右側面第1通信機14A、右側面第2通信機14B、左側面第1通信機14C、左側面第2通信機14D、背面第1通信機14E、及び背面第2通信機14Fを備える。
右側面第1通信機14Aは、車両Hvの右側に設けられている前部座席用のドア(以降、前部右側ドア)の周辺を強電界エリアとするための車室外通信機14である。ここでは運転席が車両Hvの右側に配置されているため、前部右側ドアは運転席用のドアに相当する。前部右側ドアの周辺とは、前部右側ドアの外側面に配置されているドアハンドルから所定距離(例えば1m)以内となる領域である。右側面第1通信機14Aは、前部座席用ドアのドアパネルの、例えばドアハンドル付近に配置されている。ドアハンドル付近には、ドアハンドルの内部も含まれる。なお、他の態様として、右側面第1通信機14Aは、右側前輪付近に配置されていてもよい。また、右側面第1通信機14Aは前部右側ドア下のロッカー部分や、車両Hvの屋根部において前部右側ドアの上端部が接する部分などに配置されていてもよい。
右側面第2通信機14Bは、後部右側ドアの周辺を強電界エリアとするための車室外通信機14である。後部右側ドアの周辺とは、後部右側ドアの外側面に配置されているドアハンドルから所定距離(例えば1m)以内となる領域である。右側面第2通信機14Bは、後部座席用ドアのドアパネルの、例えばドアハンドル付近に配置されている。ドアハンドル付近には、ドアハンドルの内部も含まれる。なお、他の態様として、右側面第2通信機14Bは、右側後輪付近に配置されていてもよい。また、右側面第2通信機14Bは後部右側ドア下のロッカー部分や、車両Hvの屋根部において後部右側ドアの上端部が接する部分などに配置されていてもよい。
左側面第1通信機14C、及び左側面第2通信機14Dは、既に説明した右側面第1通信機14A、及び右側面第2通信機14Bのそれぞれと対をなす車室外通信機14である。左側面第1通信機14Cは、車両Hvの左側の側面部において、右側面第1通信機14Aと反対側となる位置に配置されている。左側面第2通信機14Dも同様に、車両Hvの左側の側面部において、右側面第2通信機14Bと反対側となる位置に配置されている。
背面第1通信機14Eは、車両後端部の右コーナー付近に配置されている車室外通信機14である。背面第2通信機14Fは、車両後端部の左コーナー付近に配置されている車室外通信機14である。背面第1通信機14E及び背面第2通信機14Fは車両後方に強電界エリアを形成するための(つまり車両後方用の)車室外通信機14である。なお、ここでは車両後方用の車室外通信機14を2つ備える構成を開示しているが、これに限らない。車両後方用の車室外通信機14は1つであってもよい。その場合、車両後方用の車室外通信機14は、トランクドアやリアバンパなどにおける車幅方向の中央部に配置されていることが好ましい。車両後方用の車室外通信機14は、トランクドアのドアハンドルや、ナンバープレート付近に設けられていても良い。
各車室外通信機14の設置位置は、上述した態様に限らない。車室外通信機14は、車室内通信機13が形成する漏れ領域を強電界エリアで覆うように車両Hvの外面部に配置されていればよい。ここでの外面部とは、車両Hvにおいて車室外空間に接するボディ部分であって、車両Hvの側面部、背面部、及び前面部が含まれる。本実施形態の車室外通信機14は、例えばドアなどのボディを挟んで車室内通信機13と対をなす位置には設けられていない。
車室外通信機14は、金属製のボディパネルの表面に配置されることが好ましい。換言すれば、車室外通信機14の背面には金属板が存在するように配置されることが好ましい。車室外通信機14の背面とは車室外通信機14から見て車室内側となる方向である。金属製のボディパネルの表面に車室外通信機14を配置した態様によれば、当該ボディパネルが反射板として作用し、車室外通信機14の指向性の中心を車室外へと向けることができる。また、ボディパネルが反射板として作用するため、車室外通信機14にとって車室内が見通し外となり、車室外通信機14の電波が車室内に入り込んだり、車室内に存在する携帯端末2からの電波を車室外通信機14が受信したりする恐れを低減することができる。
本実施形態では種々のボディパネルは金属製である。そのため、上述したように車室外通信機14をドアパネル等に設置する態様によれば、種々の車室外通信機14にとって車室内は見通し外となるとともに、指向性の中心が車室外方向に向く。ここでの車室外方向とは、車両水平面に平行であって、車両の中心から車室外に向かう方向である。車両水平面は車両Hvの高さ方向に直交する平面である。
なお、車室外通信機14を金属ボディ上に配置する場合、金属ボディとアンテナ31との距離に応じて車室外方向の利得が変わりうる。金属ボディとアンテナ31との距離に応じて金属ボディでの反射波と直接波の位相差が変化し、電波を強め合ったり弱め合ったりするためである。電波を弱め合うポイントは、半波長毎に発生しうる。
2.4GHzの電波の波長は約12cmであるため、図6に示すように、金属ボディとアンテナ31との距離が6cmとなる場合には、車室外方向への反射波と直接波が弱め合い、車室外方向への放射利得が低下してしまう。一方、金属ボディとアンテナ31との距離が1.5cm〜4.5cmである場合には、車室外方向と車室内方向との感度比が20dB以上となり、本実施形態において好適である。故に、種々の車室外通信機14は、内蔵しているアンテナ31と、車室外通信機14の背面に存在する金属体との離隔が1.5cm程度となるように配置されていることが好ましい。
また、車載システム1が備える車室外通信機14の数は、2個や3個、4個など、6個以下であっても良いし、8個以上であってもよい。各車室外通信機14は何れも、専用の通信線又は車両内ネットワークを介して認証ECU11と相互通信可能に接続されている。
車室内通信機13、及び、車室外通信機14は何れも主として携帯端末2からの信号の受信強度を認証ECU11に報告するための構成である。故に、以降では種々の車室内通信機13及び車室外通信機14のことを、強度観測機とも記載する。各強度観測機は、携帯端末2から送信された信号の受信強度を認証ECU11に提供する。なお、前述の通り、強度観測機の一部又は全部はデータ通信機12としての役割を担っていても良い。
ドアハンドルボタン15は、ユーザが車両Hvのドアを開錠及び施錠するためのボタンである。車両Hvの各ドアハンドルに設けられればよい。ドアハンドルボタン15は、ユーザによって押下されると、その旨を示す電気信号を、認証ECU11に出力する。ドアハンドルボタン15は、認証ECU11がユーザの開錠指示及び施錠指示を受け付けるための構成に相当する。なお、ユーザの開錠指示及び施錠指示の少なくとも何れか一方を受け付けるための構成としては、タッチセンサを採用することもできる。タッチセンサは、ユーザがそのドアハンドルを触れていることを検出する装置である。ユーザの開錠指示又は施錠指示を受け付けるための構成としてのタッチセンサは、車両Hvの各ドアハンドルに装備されていればよい。
スタートボタン16は、ユーザが駆動源(例えばエンジン)を始動させるためのプッシュスイッチである。スタートボタン16は、ユーザによってプッシュ操作がされると、その旨を示す電気信号を認証ECU11に出力する。なお、ここでは一例として車両Hvは、エンジンを動力源として備える車両とするがこれに限らない。車両Hvは、電気自動車やハイブリッド車であってもよい。車両Hvがモータを駆動源として備える車両である場合には、スタートボタン16は駆動用のモータを始動させるためのスイッチである。
エンジンECU17は、車両Hvに搭載されたエンジンの動作を制御するECUである。例えばエンジンECU17は、認証ECU11からエンジンの始動を指示する始動指示信号を取得すると、エンジンを始動させる。
ボディECU18は、認証ECU11からの要求に基づいて車載アクチュエータ19を制御するECUである。ボディECU18は、種々の車載アクチュエータ19や、種々の車載センサと通信可能に接続されている。ここでの車載アクチュエータ19とは、例えば、各ドアのロック機構を構成するドアロックモータや、座席位置を調整するためのアクチュエータ(以降、シートアクチュエータ)などである。また、ここでの車載センサとは、ドア毎に配置されているカーテシスイッチなどである。カーテシスイッチは、ドアの開閉を検出するセンサである。ボディECU18は、例えば認証ECU11からの要求に基づいて、車両Hvの各ドアに設けられたドアロックモータに所定の制御信号を出力することで各ドアを施錠したり開錠したりする。
<認証ECU11の機能について>
認証ECU11は、上述した位置判定プログラムを実行することで、図7に示す種々の機能ブロックに対応する機能を提供する。すなわち、認証ECU11は機能ブロックとして、車両情報取得部F1、通信処理部F2、認証処理部F3、位置判定部F4、及び車両制御部F5を備えている。
なお、認証ECU11が実行する機能の一部又は全部は、論理回路等を用いたハードウェアとして実現されていてもよい。ハードウェアとして実現される態様には1つ又は複数のICを用いて実現される態様も含まれる。また、認証ECU11が備える機能ブロックの一部又は全部は、CPU111によるソフトウェアの実行と電子回路の組み合わせによって実現されていてもよい。
車両情報取得部F1は、車両Hvに搭載されたセンサやECU(例えばボディECU18)、スイッチなどから、車両Hvの状態を示す種々の情報(以降、車両情報)を取得する。車両情報としては、例えば、ドアの開閉状態や、各ドアの施錠/開錠状態、ドアハンドルボタン15の押下の有無、スタートボタン16の押下の有無等が該当する。
なお、各ドアの施錠/開錠状態を示す情報を取得することは、各ドアの施錠/開錠状態を判定すること、及び、ユーザによるドアの施錠操作/開錠操作を検出することに相当する。また、ドアハンドルボタン15やスタートボタン16からの電気信号を取得することは、これらのボタンに対するユーザ操作を検出することに相当する。つまり、車両情報取得部F1はドアの開閉や、ドアハンドルボタン15の押下、スタートボタン16の押下などといった、車両Hvに対するユーザの操作を検出する構成に相当する。以降における車両情報には、車両Hvに対するユーザ操作も含まれる。
なお、車両情報に含まれる情報は、上述したものに限らない。図示しないシフトポジションセンサが検出するシフトポジションや、ブレーキペダルが踏み込まれているか否かを検出するブレーキセンサの検出結果なども車両情報に含まれる。パーキングブレーキの作動状態もまた車両情報に含めることができる。
また、車両情報取得部F1は、上述した種々の情報に基づいて、車両Hvの現在の状態を特定する。例えば車両情報取得部F1は、エンジンがオフであり、全てのドアが施錠されている場合に、車両Hvは駐車されていると判定する。もちろん、車両Hvが駐車されていると判定する条件は適宜設計されればよく、多様な判定条件等を適用することができる。
通信処理部F2は、データ通信機12と協働して携帯端末2とのデータの送受信を実施する構成である。例えば通信処理部F2は、携帯端末2宛のデータを生成し、データ通信機12に出力する。これにより、所望のデータに対応する信号を電波として送信させる。また、通信処理部F2は、データ通信機12が受信した携帯端末2からのデータを受信する。
本実施形態ではより好ましい態様として認証ECU11と携帯端末2との無線通信は、暗号化して実施されるように構成されている。通信処理部F2としての認証ECU11は、データ通信機12からチャンネル情報を取得する。これにより、認証ECU11は、データ通信機12が携帯端末2との通信に使用されるチャンネルを特定する。
また、認証ECU11は、データ通信機12から、データ通信機12が通信接続している携帯端末2の端末IDを取得する。このような構成によれば、車両Hvが複数のユーザによって共有される車両であっても、認証ECU11は、データ通信機12が通信接続している携帯端末2の端末IDに基づいて車両Hv周辺に存在するユーザを特定する事ができる。
その他、通信処理部F2は、データ通信機12から取得したチャンネル情報及び端末IDを、各強度観測機に参照情報として配信する。参照情報に示されるチャンネル情報によって、各強度観測機は、Bluetooth規格が備える多数のチャンネルのうち、何れのチャンネルを受信すれば、携帯端末2からの信号を受信できるのかを認識可能となる。また、強度観測機は、参照情報に示される端末IDによって、複数のデバイスからの信号を受信している場合であっても、何れのデバイスからの信号の受信強度を認証ECU11に報告すべきかを特定可能となる。
認証処理部F3は、データ通信機12と連携して、携帯端末2を認証する処理(以降、認証処理)を実施する。認証のための近距離通信は、データ通信機12によって、暗号化されて実施される。つまり、認証処理は暗号通信によって実施される。認証処理自体は、チャレンジ−レスポンス方式など多様な方式を用いて実施されればよい。ここではその詳細な説明は省略する。認証処理に必要なデータ(例えば暗号鍵)などは携帯端末2と認証ECU11のそれぞれに保存されているものとする。
認証処理部F3が認証処理を実施するタイミングは、例えばデータ通信機12と携帯端末2との通信接続が確立したタイミングとすればよい。認証処理部F3は、データ通信機12と携帯端末2とが通信接続している間、所定の周期で認証処理を実施するように構成されていても良い。また、ユーザによってスタートボタン16が押下された場合など、車両Hvに対する所定のユーザ操作をトリガとして認証処理のための暗号通信を実施するように構成されていても良い。
なお、本実施形態ではセキュリティ向上のために認証ECU11及び携帯端末2は、認証等のためのデータ通信を暗号化して実施するように構成されているものとするが、これに限らない。他の態様として、認証ECU11及び携帯端末2は、認証等のためのデータ通信を暗号化せずに実施するように構成されていても良い。
また、データ通信機12と携帯端末2との通信接続が確立したということは、データ通信機12の通信相手が予め登録されている携帯端末2であることを意味する。故に、認証ECU11は、データ通信機12と携帯端末2との通信接続が確立したことに基づいて、携帯端末2の認証が成功したと判定するように構成されていても良い。
位置判定部F4は、複数の強度観測機のそれぞれから提供される、携帯端末2からの信号の受信強度に基づいて、携帯端末2が車室内に存在するのか否かを判定する構成である。携帯端末2は基本的にはユーザに携帯されるものであるため、携帯端末2の位置を判定することはユーザの位置を判定することに相当する。この位置判定部F4は、携帯端末2の位置を判定するための準備処理として、車載システム1が備える複数の強度観測機から、携帯端末2からの信号の受信強度を逐次取得するとともに、取得した受信強度を取得元毎に区別してRAM112に保存していく。
そして、位置判定部F4は、RAM112に保存されている強度観測機毎の受信強度と、フラッシュメモリ113に登録されている種々の判定用閾値に基づいて携帯端末2が車室内に存在するのか否かを判定する。位置判定部F4の具体的な作動、すなわち位置判定部F4が強度観測機毎の受信強度に基づいて携帯端末2の位置を判定する方法の詳細については別途後述する。なお、位置判定部F4の判定結果は、車両制御部F5によって参照される。
車両制御部F5は、認証処理部F3による携帯端末2の認証が成功している場合に、携帯端末2(換言すればユーザ)の位置及び車両Hvの状態に応じた車両制御を、ボディECU18等と協働して実行する構成である。車両Hvの状態は車両情報取得部F1によって判定される。携帯端末2の位置は位置判定部F4によって判定される。
例えば車両制御部F5は、車両Hvが駐車されている状況下で、携帯端末2が車室外に存在し、ユーザによってドアハンドルボタン15が押下された場合には、ボディECU18と連携してドアのロック機構を開錠する。また、例えば位置判定部F4によって携帯端末2は車室内に存在すると判定されており、かつ、スタートボタン16がユーザによって押下されたことを検出した場合には、エンジンECU17と連携してエンジンを始動させる。
車両制御部F5は、基本的には、車両Hvへのユーザ操作をトリガとして、ユーザの位置及び車両Hvの状態に応じた車両制御を実行するように構成されている。ただし、車両制御部F5が実施可能な車両制御の中には、車両Hvへのユーザ操作を必要とせずに、ユーザの位置に応じて自動的に実行するものがあってもよい。
<接続関連処理>
次に図8に示すフローチャートを用いて車載システム1が実施する接続関連処理について説明する。接続関連処理は、車載システム1が携帯端末2との通信接続の確立に係る処理である。図8に示す接続関連処理は、例えばデータ通信機12が携帯端末2からのアドバタイズパケットを受信した場合に開始されれば良い。
なお、データ通信機12と携帯端末2との通信接続が確立されていない場合には、強度観測機に関しては暗電流抑制のために動作を停止させていてもよい。データ通信機12に関しては、ユーザの接近に対する応答性を高めるために、常に待受状態で動作させておくことが好ましい。待受状態は携帯端末2からの信号(例えばアドバタイズパケット)を受信可能な状態である。
まずステップS101ではデータ通信機12が携帯端末2との通信接続(換言すればコネクション)を確立してステップS102に移る。なお、データ通信機12は携帯端末2との通信接続が確立すると、データ通信機12と通信接続している携帯端末2の端末IDを認証ECU11に提供する。また、認証ECU11は、データ通信機12は携帯端末2との通信接続が確立した時点において、強度観測機が休止モードとなっている場合には、強度観測機に対して所定の制御信号を出力し、待受状態に移行させる。休止モードは、例えば信号の受信機能を停止している状態である。休止モードは電源がオフになっている状態も含まれる。
ステップS102ではデータ通信機12が認証ECU11からの指示に基づいて定期的に暗号通信を実施する。この際にやり取りされるデータの内容は、携帯端末2に対して応答信号の返送を要求するものであれば何でもよい。チャレンジコードなど、携帯端末2を認証するためのデータであってもよい。定期的に携帯端末2と無線通信を実施することで、認証ECU11は、通信エリア内に携帯端末2が存在することを確認することができる。
ステップS103ではデータ通信機12及び認証ECU11が協働して、参照情報の共有を開始する。具体的には、データ通信機12が、通信接続している携帯端末2の端末ID、及び、チャンネル情報を認証ECU11に逐次提供する。また、認証ECU11はデータ通信機12から提供されたチャンネル情報及び端末IDを参照情報として各強度観測機に逐次配信する。
ステップS104では各強度観測機が、認証ECU11から提供される参照情報を用いて、携帯端末2からの信号の受信強度を観測し始める。すなわち、強度観測機は、Bluetooth規格が備える多数のチャンネルのうち、チャンネル情報に示されている番号のチャンネルを受信対象に設定する。また、強度観測機は、受信対象とするチャンネルを、認証ECU11から提供されるチャンネル情報に応じて順次変更する。
このような構成によれば、携帯端末2とデータ通信機12とが周波数ホッピング方式の無線通信を実施する場合であっても、携帯端末2からの信号の受信強度を取得して、認証ECU11に逐次報告される。つまり、車載システム1と携帯端末2との通信の秘匿性(換言すればセキュリティ)を確保している状態で、車載システム1が備える種々の近距離通信機3が携帯端末2からの信号の受信強度を検出可能となる。
ステップS105では強度観測機が、参照情報に示される端末IDを含む信号を受信したか否かを判定する。参照情報に示される端末IDを含む信号を受信した場合には、ステップS106に移る。ステップS106では当該受信信号の受信強度を認証ECU11に報告する。つまり、ステップS105〜S106では種々の強度観測機が、チャンネル情報に示されるチャンネルで受信した信号のうち、参照情報に示される端末IDを含む信号の受信強度を認証ECU11に報告する。なお、ステップS105において一定時間、携帯端末2からの信号を受信しなかった場合にはステップS108が実行されればよい。
ステップS107では認証ECU11が、各強度観測機から提供される受信強度を、提供元としての位置特定用通信毎に区別してRAM112に保存する処理を実行し、ステップS108に移る。ステップS108では認証ECU11及びデータ通信機12が協働して、携帯端末2との通信接続が終了したか否かを判定する。携帯端末2との通信接続が終了した場合とは、例えばデータ通信機12が携帯端末2からの信号を受信できなくなった場合である。携帯端末2との通信接続が終了した場合にはステップS108が肯定判定されてステップS109を実行する。一方、携帯端末2との通信接続がまだ維持されている場合には、ステップS105に戻る。
ステップS109では認証ECU11が、強度観測機に対して所定の制御信号を出力し、携帯端末2からの信号の受信強度を観測する処理を終了させる。例えば認証ECU11は、例えば強度観測機を休止モードに移行させる。ステップS109での処理が完了すると本フローを終了する。
<位置判定処理>
次に、図9に示すフローチャートを用いて認証ECU11が実施する位置判定処理について説明する。位置判定処理は、携帯端末2の位置を判定するための処理である。この位置判定処理は、データ通信機12と携帯端末2との通信接続が確立されている状態において、例えば所定の位置判定周期で実施される。位置判定周期は、例えば200ミリ秒である。もちろん、位置判定周期は100ミリ秒や300ミリ秒であってもよい。
まずステップS201では認証処理部F3が、データ通信機12と協働して、携帯端末2を認証する処理を実行してステップS202に移る。なお、ステップS201は省略可能である。また、携帯端末2の認証を実施するタイミングで適宜変更可能である。
ステップS202では位置判定部F4が、RAM112に保存されている強度観測機毎の受信強度に基づいて、各強度観測機についての個別強度代表値を算出する。1つの強度観測機についての個別強度代表値とは、当該強度観測機での直近所定時間以内における受信強度を代表的に示す値である。ここでは一例として、個別強度代表値は、直近N個分の受信強度の平均値とする。このような個別強度代表値は、受信強度の移動平均値に相当する。
本実施形態ではNは2以上の自然数であればよく、本実施形態では5とする。この場合、位置判定部F4は直近5つの時点で取得(換言すればサンプリング)された携帯端末2の受信強度を用いて移動平均値を算出することとなる。もちろん、Nは10や20などであってもよい。なお、他の態様としてNは1であってもよい。N=1とする構成は、最新の受信強度をそのまま個別強度代表値として採用する構成に相当する。
具体的には、ステップS202において位置判定部F4は、フロントエリア通信機13Aでの個別強度代表値として、フロントエリア通信機13Aから提供された直近5つの受信強度を母集団とする平均値を算出する。トランクエリア通信機13B、リアエリア第1通信機13C、及びリアエリア第2通信機13Dなど、他の車室内通信機13についても同様に、各車室内通信機13から提供された直近5つの受信強度を母集団とする平均をそれぞれ算出する。
また、位置判定部F4は、右側面第1通信機14Aでの個別強度代表値として、右側面第1通信機14Aから提供された直近5つの受信強度を母集団とする平均値を算出する。右側面第2通信機14B、左側面第1通信機14C、左側面第2通信機14D、背面第1通信機14E、及び背面第2通信機14Fなど、他の車室外通信機14についても同様に、各車室外通信機14から提供された直近5つの受信強度を母集団とする平均を算出する。
なお、RAM112に保存されている受信強度の数がN個未満である強度観測機の個別強度代表値については、データ欠落分の受信強度として、近距離通信機3が検出可能な受信強度の下限値に相当する値を代用して算出されれば良い。近距離通信機3が検出可能な受信強度の下限値は、近距離通信機3の構成によって決定されればよく、例えば−60dBmなどである。
このような態様によれば、例えば、携帯端末2に位置に起因して車載システム1が備える複数の強度観測機の一部しか携帯端末2からの信号を受信できていない場合であっても、後続する処理を実施することができる。例えば、携帯端末2が車両Hvの右側方に存在することによって、左側面第1通信機14Cや左側面第2通信機14Dが携帯端末2からの信号を受信できていない場合であっても、それぞれの強度観測機についての個別強度代表値を算出することができる。
なお、本実施形態では直近N個の受信強度の平均値を個別強度代表値として用いるが、これに限らない。個別強度代表値は、直近N個の受信強度の中央値や最大値であってもよい。また、個別強度代表値は、直近N個の受信強度から、最大値と最小値を除去した受信強度の平均値であってもよい。個別強度代表値は、瞬間的な受信強度の変動成分が除去された値であることが好ましい。ステップS202での処理が完了するとステップS203に移る。
ステップS203では位置判定部F4が、各車室内通信機13についての個別強度代表値に基づいて、室内機強度代表値Paを決定する。ここでは一例として室内機強度代表値Paは、各車室内通信機13についての個別強度代表値の最大値とする。例えば図10に示すように種々の車室内通信機13の個別強度代表値として−31dBm、−37dBm、−38dBm、−40dBmという結果が得られている場合には、室内機強度代表値Paは−31dBmに決定する。ステップS203での処理が完了するとステップS204に移る。なお、他の態様として室内機強度代表値Paは、各車室内通信機13についての個別強度代表値の平均値や中央値であってもよい。
ステップS204では位置判定部F4が、各車室外通信機14についての個別強度代表値に基づいて、室外機強度代表値Pbを決定する。例えば図10に示すように種々の車室外通信機14の個別強度代表値として−45dBm、−50dBm、−47dBm、−52dBm、−55dBm、−60dBmという結果が得られている場合には、室外機強度代表値Pbは−45dBmに決定する。室外機強度代表値Pbは、室内機強度代表値と同様の規則で決定されればよい。つまり、本実施形態の位置判定部F4は、各車室外通信機14についての個別強度代表値の最大値を室外機強度代表値Pbとして採用する。ステップS204での処理が完了するとステップS205に移る。
ステップS205では位置判定部F4が、室内機強度代表値Paが所定の室内相当値Pin以上であるか否かを判定する。室内相当値Pinは、前述の通り、携帯端末2が車室内に存在すると判定するための閾値である。室内相当値Pinは、車室内に携帯端末2が存在する場合に観測されうる室内機強度代表値の最小値を基準として設計されればよい。車室内に携帯端末2が存在する場合に観測されうる室内機強度代表値の最小値は、車室内の各観測地点での室内機強度代表値を測定する試験の結果に基づいて決定されればよい。
図11は、車室内及び車室外右側領域における室内機強度代表値Paと携帯端末2の位置との関係を試験した結果を表した図である。図11に示す試験結果は、車両Hvのドアを閉めた状態において、携帯端末2を車両Hvの窓部と同じ程度の高さ、具体的には路面からの高さが1.1mとなる位置に配置した時の室内機強度代表値の値を表している。
仮に、車室内に携帯端末2が存在する場合に観測されうる室内機強度代表値の最小値が−35dBmであるという試験結果が得られている場合、室内相当値Pinは最小値‐35dBmに所定の裕度を与えた−38dBmに設定されれば良い。室内相当値Pinは車室内に携帯端末2が存在する場合に観測されうる室内機強度代表値の最小値以下に設定されているため、室内機強度代表値Paが室内相当値Pin未満であるということは、携帯端末2が車室外に存在することを意味する。
なお、各車室内通信機13は、車室内全域が強電界エリアとなるように配置されているため、車室外の一部にも室内機強度代表値Paが室内相当値Pin以上となる領域が形成されうる。つまり、室内機強度代表値Paが室内相当値Pin以上となるケースには、携帯端末2が車室外の漏れ領域に存在するケースも含まれる。図11に示す破線は、試験結果として室内機強度代表値Paが室内相当値Pin以上となった車室外領域(つまり漏れ領域)を示している。
ステップS205の判定処理において、室内機強度代表値Paが室内相当値Pin以上である場合にはステップS205を肯定判定してステップS206に移る。一方、室内機強度代表値Paが室内相当値Pin未満である場合にはステップS205を否定判定してステップS208を実行する。
ステップS206では位置判定部F4が、室外機強度代表値Pbが室外相当値Pout以上であるか否かを判定する。室外相当値Poutは、前述の通り、携帯端末2が車室外に存在すると判定するための閾値である。室外相当値Poutは、車室内に携帯端末2が存在する場合に観測されうる室外機強度代表値の最大値を基準として設計されればよい。車室内に携帯端末2が存在する場合に観測されうる室外機強度代表値の最大値は、車室内の各地点に携帯端末2を配置したときの室外機強度代表値を測定する試験の結果に基づいて決定されればよい。
図12は、車室内及び車室外右側領域における室外機強度代表値Pbと携帯端末2の位置との関係を試験した結果を表した図である。図12に示す試験結果は、車両Hvのドアを閉めた状態において、携帯端末2を車両Hvの窓部と同じ程度の高さ、具体的には路面からの高さが1.1mとなる位置に配置した時の室外機強度代表値Pbの値を表している。
仮に、車室内に携帯端末2が存在する場合に観測されうる室外機強度代表値Pbの最大値が−40dBmであるという試験結果が得られている場合、室外相当値Poutは最大値‐40dBmに所定の裕度(3dBm)を与えた−37dBmなどに設定されれば良い。室外相当値Poutは車室内に携帯端末2が存在する場合に観測されうる室外機強度代表値の最大値以上に設定されているため、室外機強度代表値Pbが室外相当値Pout以上であるということは、携帯端末2が車室外に存在することを意味する。
また、各車室外通信機14は、主として車室外領域が強電界エリアとなるように配置されているとともに、車室内通信機13の漏れ領域は、車室外通信機14にとっての強電界エリアに含まれる。携帯端末2が車室外通信機14の強電界エリア内に存在する場合には、室外機強度代表値Pbは十分に高い値(具体的には室外相当値Pout以上)となる。故に、携帯端末2が漏れ領域に存在する場合には、室外機強度代表値Pbが室外相当値Pout以上となることが期待できる。
図12に示す一点鎖線は、車室外において室外機強度代表値Pbが室外相当値Pout以上となる領域(以降、車室外優勢領域)を示している。また、図12に示す破線は、図11に示す破線と同様に、室内機強度代表値Paが室内相当値Pin以上となった車室外領域(つまり漏れ領域)を表している。
種々の車室外通信機14は、図12に示す通り、車室外優勢領域が漏れ領域をカバーするように設けられている。これにより、携帯端末2が漏れ領域に存在することに起因して室内機強度代表値Paが室内相当値Pin以上となる場合であっても、室外機強度代表値Pbは室外相当値Pout以上となる。つまり、室内機強度代表値Paが室内相当値Pin以上となる場合に、携帯端末2が車室内に存在するのか、車室外の漏れ領域に存在するのかは、室外機強度代表値Pbと室外相当値Poutとの大小比較によって切り分けることができる。
ステップS206の判定処理において、室外機強度代表値Pbが室外相当値Pout以上である場合にはステップS206を肯定判定してステップS208に移る。一方、室外機強度代表値Pbが室外相当値Pout未満である場合にはステップS206を否定判定してステップS207を実行する。
ステップS207では位置判定部F4が、携帯端末2は車室内に存在すると判定して本フローを終了する。ステップS208では位置判定部F4が、携帯端末2は車室外に存在すると判定して本フローを終了する。ステップS207及びステップS208での判定結果は、携帯端末2の位置情報としてRAM112に保存され、車両制御部F5などによって参照される。
<実施形態の作動及び効果>
上述した実施形態では、車室内の全域が強電界エリアとなるように、換言すれば近距離通信の電波で車室内が充填されるように、車室内通信機13が配置されている。このような車室内通信機13の配置態様によれば、携帯端末2が車室内に存在する場合には、室内機強度代表値Paは十分に高い値となる。また、種々の車室外通信機14は、車室外通信機14の強電界エリアが車室内通信機13の漏れ領域を内包するように(換言すればカバーするように)車両Hvの外面部に配置されている。
なお、車室外通信機14が車室内通信機13の漏れ領域をカバーする設置態様とは、携帯端末2が漏れ領域に存在している場合の室外機強度代表値Pbが、携帯端末2が車室内に存在している場合に観測されうる室外機強度代表値Pbよりも十分に高くなるように設置されている態様を指す。すなわち、車室外通信機14は、携帯端末2が漏れ領域に存在している場合における車室外通信機14での受信強度が、携帯端末2が車室内に存在している場合の車室外通信機14での受信強度よりも優勢となるように設置されている。
種々の強度観測機が上述した態様で配置された構成によれば、携帯端末2が車室内に存在する場合には、複数の車室内通信機13の少なくとも何れか1つの個別強度代表値は室内相当値Pin以上となる。故に、携帯端末2が車室内に存在する場合には、室内機強度代表値Paもまた室内相当値Pin以上となる。一方、室外相当値Poutは十分に高い値に設定されているため、携帯端末2が車室内に存在する場合には、室外機強度代表値Pbが室外相当値Pout未満となる。故に、認証ECU11は、室内機強度代表値Paが室内相当値Pin以上であり、且つ、室外機強度代表値Pbが室外相当値Pout未満であることに基づいて、携帯端末2は車室内に存在すると判定できる。
また、携帯端末2が車室外の漏れ領域に存在する場合には、室外機強度代表値Pbが室外相当値Pout以上となる。車室外通信機14は車室内通信機13の漏れ領域を強電界エリアでカバーするように配置されているためである。故に、認証ECU11は、室内機強度代表値Paが室内相当値Pin以上であり、且つ、室外機強度代表値Pbが室外相当値Pout以上であることに基づいて、携帯端末2は車室外(具体的には漏れ領域)に存在すると判定できる。
加えて、携帯端末2が漏れ領域の外側に相当する車室外に存在する場合には、室内機強度代表値Paが室内相当値Pin未満となる。故に、認証ECU11は、室内機強度代表値Paが室内相当値Pin未満であることに基づいて、携帯端末2は車室外(具体的には漏れ領域の外側)に存在すると判定できる。
つまり、上記の構成では、車室内全域が強電界エリアとなるように構成されているため、携帯端末2が車室内の隅部に存在する場合であっても、携帯端末2は車室内に存在すると判定できる。加えて、以上の構成によれば、車室内通信機13の漏れ領域を、車室外通信機14での受信強度を用いて、車室内判定エリアから除外する。車室内判定エリアとは、車室内通信機13での受信強度に基づいて携帯端末2は車室内に存在すると認証ECU11が判定するエリアのことである。
このような構成によれば、図13に示すように車室内外の判定を高精度に実施することができる。なお、図13は、図11や図12に示した試験環境において、位置判定部F4の判定結果を試験した結果を示す図である。図13に示すように本実施形態の構成によれば、窓部付近の高さにおいて窓部±0.1mを超える領域では、正確に車室内/車室外を判定できる。これは、現状のLFを用いた車両用電子キーシステムと同等以上の判定精度であって、車両用電子キーシステムの技術分野において一般的に要求される判定精度を十分に達成できている。
また、上記の構成は、車室内通信機13の信号が車室外に漏れないように車室内通信機13を配置するといった従来の設計思想とは異なるものである。上記の構成は、車室内通信機13の信号が車室外に漏れることを前提として、漏れ領域での誤判定の恐れを車室外通信機14での受信強度を用いて補正するといった技術的思想に基づくものである。このような技術的思想に基づけば、車室内通信機13の強電界エリアを大きめに設定することができる。その結果、車室内に配置する車室内通信機13の数を抑制できる。
ところで、携帯端末2の載置場所に起因して携帯端末2の誤判定を低減するための他の構成(以降、比較構成)としては、特許文献1に開示の構成をベースに、出力レベルを絞った複数の車室内通信機を分散して配置する構成(以降、想定構成)も考えられる。想定構成では、車室外通信機14の受信強度を併用したエリアの切り分けを実施しない。想定構成では、出力レベルを絞った車室内通信機を車室内に密に配置する事により、車室内全域の強電界エリア化と、車室外への電波漏れ抑制の両立を目指すものである。
しかしながら、上記の想定構成を採用したとしても、電波は距離の二乗で連続的に減衰するものであるため、窓部付近に適正なエリアを形成することが難しい。携帯端末が車室外において窓部から10cm以上離れた場所に存在する場合であっても、携帯端末は車室内に存在すると誤判定しうる。加えて、想定構成では、車室内全域を車室内判定エリアとするためには多数の通信機が必要となるといった問題もある。対して、上述した実施形態によれば、車室内に配置する近距離通信機3の数を抑制しつつ、携帯端末2が車室内に存在するのか否かを高精度に判定することができる。
さらに、上述した実施形態では、フロントエリアや、リアエリア、トランクエリアといった、電波の伝搬を阻害しうる車室内構造物で区切られてなるエリア毎に、車室内通信機13が配置されている。このような設置態様によれば、図11に示す通り、車室内全域が強電界エリアとなるため、携帯端末2の載置場所に起因して携帯端末2は車室外に存在すると誤判定する恐れを低減することができる。
また、車室外通信機14は、変形例6として後述する、車室外において施開錠エリアLxを形成するための近距離通信機3を用いて(換言すれば流用して)実現可能である。施開錠エリアLxは、当該エリア内に携帯端末2が存在する場合にのみ、ドアハンドルボタン15へのユーザの押下操作に基づいたドアの施開錠制御を実行するエリアである。施開錠エリアLxは、トランクドアを含む車両Hvに設けられた種々のドアから1〜2メートル以内となるエリアに設定される。このような構成によれば、携帯端末2が、車室外領域の中でも施開錠エリアLxに存在する場合にのみ、施開錠制御を実施するようになるため、車両Hvの防犯性を高めることができる。
近年は、このような施開錠エリアLxを用いた車両制御機能を標準装備として備える車両が多い。なお、現状は、LF帯の電波を用いて施開錠エリアLxを形成する構成が採用されている場合が多いが、今後は近距離通信機3を車室外に設けることによって施開錠エリアLxが形成されるようになることが見込まれる。
つまり、今後は施開錠エリアLxを形成するための近距離通信機3が標準装備として車両の外面部に配置されることが期待できる。施開錠エリアLxを形成するための近距離通信機3は、上記の車室外通信機14として流用できる。つまり、上記の構成は、標準装備として設けられる設備の流用によって実現できるため、導入コストを抑制することができる。
以上、本開示の実施形態を説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、以降で述べる種々の変形例も本開示の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。例えば下記の種々の変形例は、技術的な矛盾が生じない範囲において適宜組み合わせて実施することができる。
なお、前述の実施形態で述べた部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。また、構成の一部のみに言及している場合、他の部分については先に説明した実施形態の構成を適用することができる。
[第2実施形態]
以上の構成では、フロントエリアや、リアエリア、トランクエリアといった、電波の伝搬を阻害しうる車室内構造物で区切られてなるエリア毎に、車室内通信機13が配置されている。他の実施の形態としては、車室内通信機13をフロントエリア通信機13Aのみとする構成も採用可能である。つまり車室内通信機13は、車室内に1つだけであっても良い。
フロントエリア通信機13Aのみを車室内通信機13として備える構成では、図14及び図15に示すように、フロントエリアは強電界エリアとなる。しかしながら、フロントエリア通信機13Aのみを車室内通信機13として備える構成では、リアエリアやトランクエリアでは、携帯端末2からの信号の受信強度が室内相当値として設定した−38dBmを下回る部分が発生しうる。図15に示すように、リアエリアよりもトランクエリアの方が、距離が遠く、且つ、後部座席の背もたれ部42の影響も受けるため、弱電界エリアとなりやすい。また、マルチパスによって電波強度が急峻に落ち込む点であるディップ点も複数観測されうる。故に、車室内通信機13をフロントエリア通信機13Aのみとする構成よりも第1実施形態の構成のほうが、携帯端末2が車室内に存在する状況において携帯端末2は車室外に存在すると誤判定する恐れを低減できる。
[第3実施形態]
他の実施の形態として、車載システム1は、車室内通信機13としてフロントエリア通信機13Aとトランクエリア通信機13Bのみを備える構成も採用可能である。車室内通信機13としてフロントエリア通信機13Aとトランクエリア通信機13Bを備える構成によれば、図16及び図17に示すように、第2実施形態として開示の構成に比べて、携帯端末2がリアエリアやトランクエリアに存在する場合での室内機強度代表値Paを高めることができる。ただし、リアエリアでは、前部座席の背もたれ部41や後部座席の背もたれ部42によって電波の伝搬が阻害されやすいため、弱電界エリアとなりやすい。つまり、携帯端末2が車室内に存在するにも関わらず、携帯端末2は車室外に存在すると誤判定する恐れを低減するといった観点では、リアエリアにも車室内通信機13を設けた第1実施形態のほうか好適であると言える。
なお、第1実施形態や第3実施形態では、複数の車室内通信機13での受信強度の最大値(つまり室内機強度代表値)を、携帯端末2からの信号の受信強度とみなすため、マルチパスによって急峻な電波強度の落ち込みの影響は受けにくくなる。これは次の理由による。マルチパスによって急峻な電波強度の落ち込みであるディップ点の位置は、アンテナ31の位置が1波長以上ずらすことによって大きく変化する傾向がある。フロントエリア通信機13Aとトランクエリア通信機13Bとは2m以上離れているため、各車室内通信機13が形成するディップ点がそれぞれ異なる位置に発生する。そのため、或る車室内通信機13にとってはディップ点となる部分も、他方の車室内通信機13にとってはディップ点にはなりにくい。
故に、それぞれ0.1m以上離れた位置に配置されている2つの車室内通信機13での受信強度の最大値を、車載システム1にとっての携帯端末2からの信号の受信強度と見なして取り扱う構成によれば、車載システム1全体としてのディップ点が削減される。つまり、第1実施形態や本実施形態によれば、車載システム1全体としてのディップ点を削減することができる。
なお、本実施形態では、車載システム1が車室内通信機13としてフロントエリア通信機13Aとトランクエリア通信機13Bを備える構成を開示したが、これに限らない。その他、車載システム1が車室内通信機13としてフロントエリア通信機13Aと、1つのリアエリア通信機を備える構成も採用可能である。もちろん、車載システム1が車室内通信機13としてフロントエリア通信機13Aと、リアエリア第1通信機13C、リアエリア第2通信機13Dを備える構成も採用可能である。車載システム1が複数の車室内通信機13を備える場合であって、各車室内通信機13が備えるアンテナ31が無指向性アンテナである場合には、それらは1波長以上離して配置されていることが好ましい。
[変形例1]
車室外通信機14毎に、設置場所や設置姿勢、内部構成等に起因して、携帯端末2からの信号の受信しやすさ(以降、受信感度)が異なるケースが想定される。なお、受信感度が高いほど、前述の強電界エリアが広いことを意味する。車室外通信機14毎に受信感度が異なる場合、各車室外通信機14についての個別強度代表値をそのまま用いて室外機強度代表値Pbを決定する構成では、室外相当値Poutを適正に決定できない恐れがある。
例えば、車両Hvの外面部の中には、車室内に存在する携帯端末2からの信号を受信しやすい場所がある。また、そのような場所に車室外通信機14が搭載されている場合、車室内への漏れ度合いを他の車室外通信機14と揃えるためには、マイナスの補正値を加える必要がある。各車室外通信機14の車室内への漏れ度合い(換言すれば車室内に対する受信感度)が異なっていると、1つの室外相当値Poutでは、携帯端末2の位置を適正に判別できなくなるためである。
そのような懸念に対応する構成として、位置判定部F4は、各車室外通信機14での個別強度代表値に対して、車室外通信機14での受信感度に応じた補正を施した上で室外機強度代表値Pbを決定するように構成されていても良い。
例えば、背面第1通信機14Eの受信感度が、他の車室外通信機14の受信感度よりも5dBmほど高い構成となっている場合には、背面第1通信機14Eでの実際の受信強度から算出される個別強度代表値から5dBmほど減算した値を、室外機強度代表値を決定するための背面第1通信機14Eについての個別強度代表値として使用するように構成されていても良い。つまり、車室外通信機14毎の個別強度代表値としては、実際の受信強度から算出される代表値に対して、車室外通信機14の受信感度特性に応じた補正をかけた値を用いて、室外機強度代表値が決定されるように構成されていても良い。上記を実施することで、車室内への漏れ度合いを車室外通信機14毎に一律に決める(換言すれば見かけ上揃える)ことができ、その結果、室外機強度代表値Pbに対する閾値(つまり室外相当値Pout)を適正な値に設定できる。
上記の思想は、室内機強度代表値Paについても同様に適用可能である。車室内通信機13毎に、設置場所や設置姿勢、内部構成等に起因して、携帯端末2からの信号の受信しやすさ(以降、受信感度)が異なるケースが想定される。車室内通信機13毎に受信感度が異なる場合、各車室内通信機13についての個別強度代表値をそのまま用いて室内機強度代表値Paを決定する構成では、室内相当値Pinを適正に決定できない恐れがある。
例えば車室内の中には車室外に存在する携帯端末2からの信号を受信しやすい場所があり、そのような場所に車室内通信機13が搭載されている場合には、車室外への漏れ度合いを他の車室内通信機13と揃えるためには、マイナスの補正値を加える必要がある。各車室内通信機13の車室外への漏れ度合い(換言すれば車室外に対する受信感度)が異なっていると、1つの室内相当値Pinでは、携帯端末2の位置を適正に判別できなくなるためである。
故に、位置判定部F4は各車室内通信機13での個別強度代表値に対して、車室内通信機13での受信感度に応じた補正を施した上で、室内機強度代表値Paを決定するように構成されていても良い。例えば、トランクエリア通信機13Bが他の車室内通信機13よりも受信感度が5dBmほど低い構成となっている場合には、トランクエリア通信機13Bでの実際の受信強度から算出される個別強度代表値から5dBmほど加算した値を、室内機強度代表値を決定するための個別強度代表値として使用するように構成されていても良い。つまり、車室内通信機13毎の個別強度代表値としては、実際の受信強度から算出される代表値に対して、車室内通信機13の受信感度特性に応じた補正をかけた値を用いて、室内機強度代表値Paが決定されるように構成されていても良い。近距離通信機3毎の補正量はフラッシュメモリ113に登録されていれば良い。
[変形例2]
上述した実施形態では強度観測機は、端末IDを用いて通信相手を識別する構成を開示したがこれに限らない。例えば、携帯端末2は、通信フレームにおいて暗号化が施される領域に、携帯端末2であることを示す特定のコード(以降、暗号コード)を配置した信号を送信するように構成されていてもよい。その場合には、強度観測機は、受信したデータに当該暗号コードが含まれていることに基づいて、通信相手は携帯端末2であることを特定する。また、強度観測機は、端末IDと暗号コードの両方を含む信号についての受信強度を認証ECU11に提供する。このように暗号コードを用いて通信相手を特定する構成によれば、他の通信装置が携帯端末2になりすますことを抑制することができ、車両用電子キーシステムのセキュリティを高めることができる。
[変形例3]
フロントエリア通信機13Aは、指向性を有するアンテナ31を備えるとともに、指向性の中心方向(いわゆるメインビーム方向)を動的に変更可能に構成されていても良い。その場合、認証ECU11は、データ通信機12と携帯端末2との通信接続が確立している間、フロントエリア通信機13Aのメインビーム方向を逐次変化させる。図18は、メインビームの可動範囲を概念的に示したものである。
フロントエリア通信機13Aのメインビーム方向が変更されれば、マルチパス由来のディップ点の発生箇所は変化するため、メインビーム方向を動的に変更することによってマルチパスの影響を受けにくくなる。その結果、個別強度代表値は、マルチパスの影響が抑制された値となることが期待できる。なお、上記の技術的思想は、他の車室内通信機13に対しても適用可能である。
[変形例4]
上述した変形例3では、フロントエリア通信機13Aの指向性を逐次変化させることで、マルチパスの影響が抑制された個別強度代表値を生成する構成を開示したが、マルチパスの影響が抑制された個別強度代表値を生成するための構成はこれに限らない。
例えば、図19に示すようにフロントエリア通信機13Aとして、それぞれ異なる方向にメインビームを形成するアンテナ31α、アンテナ31βを備える近距離通信機3を配置してもよい。図中の一点鎖線はアンテナ31αの指向性を示しており、二点鎖線はアンテナ31βの指向性を示している。このような構成によっても、アンテナ31α、31βとでマルチパス由来のディップ点の発生箇所は異なるため、マルチパスの影響が抑制された個別強度代表値を生成可能となる。また、当該変形例の構成によればアンテナ31αとアンテナ31βの間隔は、1波長以上に設定する必要はない。
なお、アンテナ31αとアンテナ31βは、別々の筐体に収容されていても良い。つまり、それぞれ異なる方向に指向性の中心が向けられている車室内通信機は、一体的に構成されていても良いし、別体として構成されていても良い。
[変形例5]
変形例4に関連し、フロントエリア通信機13Aとして、図20に示すようにそれぞれ送受信の対象とする偏波面が異なるアンテナ31α、アンテナ31γを備える近距離通信機3を配置してもよい。例えばアンテナ31αは水平偏波を送受信するアンテナ31であり、アンテナ31γは垂直偏波を送受信するアンテナ31である。このような構成によっても、変形例4と同様の効果が得られる。
なお、図20に示す受信強度検出部321αは、アンテナ31αで受信した信号の受信強度を検出するための構成である。また、図20に示す受信強度検出部321γは、アンテナ31αで受信した信号の受信強度を検出するための構成である。
アンテナ31α及び受信強度検出部321αを備える構成が、垂直偏波を送受信の対象とする車室内通信機に相当する。また、アンテナ31γ及び受信強度検出部321γを備える構成が、水平偏波を送受信の対象とする車室内通信機に相当する。アンテナ31αとアンテナ31γは、別々の筐体に収容されていても良い。つまり、垂直偏波を送受信の対象とする車室内通信機と、垂直偏波を送受信の対象とする車室内通信機は、一体的に構成されていても良いし、別体として構成されていても良い。
なお、以上ではアンテナ31αは垂直偏波を送受信の対象とするアンテナ31とするとともに、アンテナ31γは水平偏波を送受信の対象とするアンテナ31とする構成としたが、これに限らない。アンテナ31αは、車両水平面に対して45度傾斜した偏波面を有する電波を送受信の対象とするとともに、アンテナ31γは車両水平面に対して135度傾斜した偏波面を有する電波を送受信の対象とするように構成されていてもよい。ここでの偏波面とは、電波の進行方向に対して電界が振動する方向に平行な面であって、電界の振動面に相当する。
アンテナ31αとアンテナ31γとは、電界の振動方向が45度以上(理想的には90度)異なる直線偏波を送受信の対象とするように構成されていればよい。仮にアンテナ31αが送受信の対象とする電波を水平偏波とした場合、アンテナ31γは、車両水平面となす角度が45度以上となる偏波面を有する直線偏波を送受信の対象とするように構成されていれば良い。アンテナ31αが送受信の対象とする電波における電界の振動方向が第1方向に相当する。アンテナ31γが送受信の対象とする電波における電界の振動方向が第2方向に相当する。第1方向と第2方向とは、90度異なるように設定されていることが好ましい。
[変形例6]
位置判定部F4は、携帯端末2は車室外に存在していると判定している場合、各車室外通信機14についての個別強度代表値に基づいて、携帯端末2が車両Hvの施開錠エリアLx内に存在するか否かを判定しても良い。
例えば位置判定部F4は、室外機強度代表値Pbが所定の閾値(以降、施開錠閾値)以上である場合には携帯端末2が施開錠エリアLx内に存在すると判定する。一方、位置判定部F4は、室外機強度代表値Pbが施開錠閾値未満である場合には、携帯端末2は施開錠エリアLx内には存在しないと判定する。施開錠エリアLxは、前述の通り、車両制御部F5が車両Hvに設けられているドアの施開錠状態を制御する処理を実行するための条件として設定されているエリアである。
車両制御部F5は、携帯端末2が施開錠エリアLxに存在すること、及び、携帯端末2の認証が成功していることに基づいて、ドアの施開錠状態を制御する処理を実行する。施開錠エリアLxは、車室外のうち、車両Hvに設けられた種々のドアから数メートル以内となるエリアに設定される。ここでのドアとは、運転席用のドアや、助手席用のドアに限らず、トランクドアなども含まれうる。
また、車両Hvには、図21に示すように施開錠エリアLxとして、それぞれ異なるドアを対象とする右側施開錠エリアL1、左側施開錠エリアL2、及びトランク施開錠エリアL3が設定されている好ましい。図21中のドットパターンのハッチングを施している部分が、施開錠エリアLxを概念的に表している。
右側施開錠エリアL1は、車両右側のドアの施開錠状態を制御するための施開錠エリアLxである。右側施開錠エリアL1は前部右側ドア付近と後部右側ドア付近とを含むように設定されている。右側施開錠エリアL1は、右側面第1通信機14A及び右側面第2通信機14Bによって形成される。なお、右側施開錠エリアL1は、前部右側ドアについての施開錠エリアLxと、後部右側ドアについての施開錠エリアLxとに分割されていても良い。
左側施開錠エリアL2は車両左側のドアの施開錠状態を制御するための施開錠エリアLxである。左側施開錠エリアL2は前部左側ドア付近と後部左側ドア付近とを含むように設定されている。左側施開錠エリアL2は、左側面第1通信機14C及び左側面第2通信機14Dによって形成される。なお、左側施開錠エリアL2は、前部左側ドアについての施開錠エリアLxと、後部左側ドアについての施開錠エリアLxとに分割されていても良い。
トランク施開錠エリアL3はトランクドアの施開錠状態を制御するための施開錠エリアLxである。トランク施開錠エリアL3はトランクドア付近を含むように設定されている。トランク施開錠エリアL3は、背面第1通信機14E及び背面第2通信機14Fによって形成される。なお、ドア付近とはドアハンドルから所定距離(例えば0.7mや1m、1.5m)以内となる領域である。
このようにそれぞれ異なるドアを対象とする複数の施開錠エリアLxが車両Hvに設定されている場合、位置判定部F4は、例えば右側面第1通信機14Aの個別強度代表値、及び、右側面第2通信機14Bの個別強度代表値の少なくとも何れか一方が施開錠閾値以上である場合に、携帯端末2は右側施開錠エリアL1に存在すると判定する。
また、位置判定部F4は、左側面第1通信機14Cの個別強度代表値、及び、左側面第2通信機14Dの個別強度代表値の少なくとも何れか一方が施開錠閾値以上である場合に、携帯端末2は左側施開錠エリアL2に存在すると判定する。さらに、位置判定部F4は、背面第1通信機14Eの個別強度代表値、及び、背面第2通信機14Fの個別強度代表値の少なくとも何れか一方が施開錠閾値以上である場合に、携帯端末2はトランク施開錠エリアL3に存在すると判定する。
上記の構成によれば位置判定部F4は、携帯端末2が、右側施開錠エリアL1、左側施開錠エリアL2、トランク施開錠エリアL3、及びその他のエリアのいずれに存在するのかを特定することができる。その他のエリアとは、右側施開錠エリアL1、左側施開錠エリアL2、及びトランク施開錠エリアL3の何れにも該当しない領域である。
車両制御部F5は、位置判定部F4が携帯端末2は右側施開錠エリアL1内に存在すると判定していることを条件として、車両右側に設けられているドアを施錠又は開錠する車両制御を実施する。なお、上記の車両制御は、ドアハンドルボタン15に対するユーザ操作をトリガとして実行しても良いし、ユーザの右側施開錠エリアL1への進入をトリガとして自動的に実行しても良い。
なお、複数の携帯端末2が車載システム1に登録されている場合であって、かつ、車載システム1が複数の携帯端末2からの信号を取得できている場合には、位置判定部F4は各携帯端末2の受信強度に基づいて、携帯端末2毎の位置を特定すればよい。そのような態様によれば1つの車両Hvを複数のユーザで共用する場合における利便性を向上することができる。また、各座席に着座するユーザを携帯端末2の端末IDから特定することができるため、ユーザに応じたサービスの提供を実施することができる。ユーザに応じたサービスとは、例えば、シートポジションの自動調整や、空調の温度及び風量の調整などである。
[変形例7]
位置判定部F4は、携帯端末2は車室外に存在していると判定している場合、室外機強度代表値Pbに基づいて、図22に示すウェルカムエリアWx内に携帯端末2が存在するか否かを判定するように構成されていても良い。
ウェルカムエリアWxは、位置判定部F4が当該エリア内への携帯端末2の進入を検出したことに基づいて、車両制御部F5が所定のウェルカム処理を実行するエリアである。ウェルカム処理は、例えば車室内/外の照明を点灯させたり、空調装置を作動させたりする処理である。ウェルカム処理として実行される車両制御の内容はユーザによって適宜変更可に構成されていることが好ましい。
本変形例7の位置判定部F4は、例えば室外機強度代表値Pbが所定の接近検出閾値以上となった場合には携帯端末2はウェルカムエリアWx内に存在すると判定する。接近検出閾値は、ウェルカムエリアWxとする領域を定義するパラメータに相当する。接近検出閾値は、車室外において例えば車両Hvから5m以内となる領域がウェルカムエリアWxとなるように設定されている。
なお、本変形例ではウェルカムエリアWxは、車載システム1が備える全ての車室外通信機14を用いて形成されるものとするが、これに限らない。ウェルカムエリアWxは、車載システム1が備える複数の車室外通信機14のうちの一部を用いて形成されていても良い。例えば、ウェルカムエリアWxは、右側面第1通信機14A、左側面第1通信機14C、背面第1通信機14E、及び背面第2通信機14Fを用いて形成されていても良い。その場合には、右側面第1通信機14A、左側面第1通信機14C、背面第1通信機14E、及び背面第2通信機14Fの個別強度代表値の少なくとも何れか1つが接近検出閾値以上である場合に、携帯端末2がウェルカムエリアWxに存在すると判定すればよい。
[変形例8]
携帯端末2は、車載システム1を遠隔制御する機能(以降、遠隔制御機能)を備えていても良い。例えば、携帯端末2は、当該携帯端末2へのユーザ操作に基づいて、車両Hvの空調装置を作動させたり、自動駐車させたりする機能を備えていても良い。これらの機能は、携帯端末2が備えるコンピュータが所定のアプリケーションソフトウェア(以降、遠隔操作アプリ)を実行することによって提供されればよい。
その場合、携帯端末2は、データ通信機12との暗号通信によって、ユーザの指示内容に対応する制御信号(以降、コマンド信号)を車載システム1に送信する。車載システム1の車両制御部F5は、携帯端末2から送信されてきたコマンド信号に応じた車両制御を実行する。携帯端末2と車載システム1とがやり取りする信号には、このようなコマンド信号も含まれる。
また、携帯端末2は、近距離通信によって車載システム1から車両Hvの状態を示す情報を取得し、ユーザに通知するように構成されていても良い。車両Hvの状態を示す情報とは、ドアの施錠状態や、車室内温度、燃料残量、バッテリ残量などである。携帯端末2と車載システム1とがやり取りする信号には、車両Hvの状態を示す信号も含まれる。このような機能も、携帯端末2に内蔵されているコンピュータが所定のアプリケーションソフトウェア(以降、状態監視アプリ)を実行することで提供されれば良い。
[変形例9]
上述した種々の実施形態では、車両Hvの右側面部及び左側面部に2つずつの車室外通信機14が配置されている構成を開示したがこれに限らない。車両Hvの右側面部及び左側面部には車室外通信機14が1つずつ配置されていてもよい。
また、車室外通信機14は図23に示すように、車両HvのBピラー45Bに配置されていても良い。もちろん、Aピラー45Aや、Cピラー45Cに配置されていても良い。さらに、車室外通信機14は、図24に示すように車両Hvの側面部と屋根部との境界付近(以降、側面上端部)46に配置されていても良い。このような構成は、車室外通信機14を窓部の上側に位置する部分に設けた構成に相当する。側面上端部46は、車両Hvの屋根部において車両Hvのドアの上端部が接する部分に相当する。
なお、種々のピラーや、側面上端部46が、車両Hvの外面部における窓部近傍領域に相当する。また、窓部の下端部から1波長以内となる部分も、窓部近傍領域に含めることができる。つまり、ここでの窓部近傍領域とは、窓枠部分から1波長以内となる外面部を指す。種々の車室外通信機14は、窓の外側部分を強電界エリアとする設置態様で配置されていることが好ましい。車室外通信機14の設置態様を構成するパラメータとしては、搭載位置や、搭載姿勢(換言すれば指向性)などを採用することができる。
[変形例10]
上述した実施形態では、金属製のボディを備える車両Hvに本開示に係る位置判定システムを適用した態様を開示したが、位置判定システムの適用先として好適な車両は、金属製のボディを備える車両に限らない。
例えば車両Hvのボディを構成する種々のボディパネルは、電波の伝搬を5dB以上減衰させるほど十分な量のカーボンが充填されているカーボン系樹脂を用いて形成されていてもよい。このようなボディを備える車両もまた、位置判定システムの適用対象として好適である。
また、車両Hvのボディパネルは、車両Hvのボディパネルがカーボンを含まない汎用樹脂を用いて形成されていてもよい。車両Hvのボディパネルがカーボンを含まない汎用樹脂を用いて形成されている場合には、ボディパネルの表面に電波の伝搬を遮断する機能を奏する特定の金属パターンが設けられることが好ましい。電波の伝搬を遮断する機能を奏する金属パターン(以降、シールドパターン)とは、例えば銀ナノワイヤなどの細線導体を電波の12波長以下の間隔で格子状に配置したパターンなどである。ここでの細線とは、線幅が50μm以下のものを指すこととする。
なお、上記のシールドパターンは、周知のメタ・サーフェス構造を援用して実現することができる。メタ・サーフェス構造は、ユニットセル(Unit Cell)と呼ばれる人工構造を繰り返し配列した構造である。メタ・サーフェス構造によれば特定の周波数帯の電波(ここでは電波)のみを選択的に反射したり減衰させたり(すなわち遮断)することができる。また、車両Hvのボディは、汎用樹脂製のボディの上に、金属粉やカーボン粉末を含む塗料が塗られることによって電波の伝搬を遮断するように構成されていてもよい。さらに、電波の伝搬を遮断するフィルム(以降、シールドフィルム)がボディに貼り付けられていてもよい。このようなボディを備える車両もまた、位置判定システムの適用対象として好適である。車両Hvのボディの一部又は全部は、汎用樹脂を用いて形成されていてもよい。
<付言>
認証ECU11が提供する手段および/または機能は、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェアおよびそれを実行するコンピュータ、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。例えば、認証ECU11がハードウェアである電子回路によって提供される場合、それは多数の論理回路を含むデジタル回路、またはアナログ回路によって提供することができる。また、認証ECU11は、ひとつのコンピュータ、またはデータ通信装置によってリンクされた一組のコンピュータ資源によって提供されうる。