JP2019158409A - 磁石構造体、回転角度検出器、及び電動パワーステアリング装置 - Google Patents

磁石構造体、回転角度検出器、及び電動パワーステアリング装置 Download PDF

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森 尚樹
Naoki Mori
尚樹 森
岡田 義明
Yoshiaki Okada
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【課題】対称性の高い磁界を発生させることが可能な磁石構造体、これを用いて得られる回転角度検出器、及び、この回転角度検出器を用いて得られる電動パワーステアリング装置を提供する。【解決手段】磁石構造体30は、MR素子としてのTMR素子用の磁石構造体30であって、TMR素子に対向する第1の主面32a及び第1の主面32aとは反対側の第2の主面32bを有するボンド磁石成型体32と、ボンド磁石成型体32の第2の主面32b側に取り付けられ、第2の主面32bに交差する方向に延びるシャフト34と、を備え、ボンド磁石成型体32は、射出成型によるゲート跡33Cを含むゲート部33を第2の主面32bに有する。【選択図】図4

Description

本発明は、磁石構造体、回転角度検出器、及び電動パワーステアリング装置に関する。
従来、自動車の電動パワーステアリング装置等においては、電動モータの回転位置を検出する等の目的で磁気式の回転角度検出器が用いられている。例えば、特許文献1には、電動モータと、電動モータの一端に組み付けられたセンサ磁石と、センサ磁石が発生させる磁界を検知する回転センサと、を備える電動パワーステアリング装置が記載されている。
国際公開第2015/140961号公報
本発明者らは、上述のような電動パワーステアリング装置に、回転センサとして磁気抵抗効果素子を用いることを検討した。磁気抵抗効果素子を用いる場合、磁石構造体(センサ磁石)が発生させる磁界の向きに応じて磁気抵抗効果素子の抵抗値が連続的に変化することを利用して回転位置の検出がなされる。このような原理に基づいて鋭意研究を行った結果、本発明者らは、磁気抵抗効果素子を用いて高精度な検出を実現するためには、磁石構造体によって形成される磁界の対称性を高める必要があることを見出した。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、対称性の高い磁界を発生させることが可能な磁石構造体、これを用いて得られる回転角度検出器、及び、この回転角度検出器を用いて得られる電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
本発明の一形態に係る磁石構造体は、トンネル磁気抵抗効果素子用の磁石構造体であって、トンネル磁気抵抗効果素子に対向する第1の主面及び第1の主面とは反対側の第2の主面を有する磁石成型体と、磁石成型体の第2の主面側に取り付けられ、第2の主面に交差する方向に延びるシャフトと、を備え、磁石成型体は、射出成型によるゲート跡を含むゲート部を第2の主面に有する。
この磁石構造体の磁石成型体は、射出成型によるゲート跡を含むゲート部を第2の主面側に有している。このように、ゲート部を第2の主面に設けることにより、トンネル磁気抵抗効果素子と対向する第1の主面を平坦に形成することができるので、第1の主面側において対称性の高い磁界を発生させることが可能である。また、磁石成型体が発生させる磁界に影響を与え得るゲート部が第2の主面側に設けられることにより、ゲート部による第1の主面側の磁界の対称性への影響を低減できる。したがって、当該磁石構造体によって対称性の高い磁界を発生させることが可能である。
一形態において、磁石成型体は、第2の主面に沿った方向に延び、S極とN極との境界であるニュートラル部を有し、ゲート部は、第2の主面側から見てニュートラル部に対応する位置に形成されていてもよい。ニュートラル部は極性が切り替わる部分であるので、磁石成型体が発生させる磁界に影響を与え得るゲート部をニュートラル部に対応する位置に形成することにより、ゲート部による磁界の対称性への影響を更に低減できる。したがって、磁石構造体によって対称性の高い磁界を発生させることが可能である。
一形態において、ゲート部は、第2の主面に設けられた第1凹部と、第1凹部内に設けられ、第1の主面側へ凹む第2凹部と、を有し、ゲート跡は第2凹部内に形成されていてもよい。この構成によれば、第1凹部を利用して磁石成型体を着磁する際の位置決めを行うことができる。また、射出成型によって形成されるゲート跡が第2凹部内に形成されるので、ゲート跡と位置決め用の治具とが接触することによるコンタミの発生を抑制できる。
本発明の一形態に係る回転角度検出器は、磁石構造体と、磁石構造体の第1の主面に対向して配置される磁気抵抗効果素子と、を備える。この回転角度検出器は、対称性の高い磁界を発生させることが可能な上記の磁石構造体を備えているので、回転角度の検出精度を高めることが可能である。
一形態において、磁気抵抗効果素子の磁気抵抗比は90%以上であってもよい。このように、磁気抵抗比が90%以上である場合、磁気抵抗効果素子から大きな出力を得ることができる。したがって、回転角度の検出精度を更に高めることが可能である。
一形態において、磁気抵抗効果素子は、トンネル磁気抵抗効果素子であってもよい。トンネル磁気抵抗効果素子の磁気抵抗比は90%以上であるので、トンネル磁気抵抗効果素子を用いることで回転角度の検出精度を高めることが可能である。
本発明の一形態に係る電動パワーステアリング装置は、回転角度検出器を備える。この電動パワーステアリング装置は、回転角度の検出精度を高めることが可能な上記の回転角度検出器を備えているので、高精度なトルクアシストを行うことができる。
本発明によれば、対称性の高い磁界を発生させることが可能な磁石構造体、これを用いて得られる回転角度検出器、及び、この回転角度検出器を用いて得られる電動パワーステアリング装置が提供される。
図1は、実施形態に係る回転角度検出器を備えたモータ組立体を示す概略断面図である。 図2は、図1のモータ組立体が用いられる電動パワーステアリング装置を示すブロック構成図である。 図3は、図1の回転角度検出器を示す概略斜視図である。 図4は、図3の磁石構造体のニュートラル部に沿った断面を概略的に示す断面図である。 図5は、ボンド磁石成型体の第2の主面を概略的に示す図である。 図6は、ゲート部及び位置決めピンを概略的に示す断面図である。
以下、図面を参照して種々の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1を参照して、本実施形態に係る回転角度検出器を備えたモータ組立体10について説明する。図1に示されるように、モータ組立体10は、回転角度検出器15及び電動モータ20が筐体12内に収容された構成を有する。
電動モータ20は、トルク側端部22aとセンサ側端部22bとを有する回転シャフト22を備えている。回転シャフト22のトルク側端部22aは、筐体12に設けられたボールベアリング14Aによって回動自在に保持されている。センサ側端部22bは、筐体12に設けられたボールベアリング14Bによって回動自在に保持されている。
センサ側端部22bには、回転角度検出器15が配置されている。回転角度検出器15は、磁石構造体30と、磁気抵抗効果素子(MR素子:Magnetoresistance Effect素子)とを備えている。MR素子としては、異方性磁気抵抗効果素子(AMR素子:Anisotropic Magnetoresistance Effect素子)、巨大抵抗効果素子(GMR素子:Giant Magnetoresistance Effect素子)、トンネル磁気抵抗効果素子(TMR素子:Tunnel Magnetoresistance Effect素子)等を用いることができる。MR素子の抵抗の変化の割合は、磁気抵抗比(MR比:Magnetoresistance Ratio)で表される。MR比とは、2つの磁化状態での抵抗値の差を、平衡状態での抵抗値で割ったものである。すなわち、MR比は、MR素子の磁化方向が反対向きのときの抵抗値が、磁化方向が同じ向きの時の抵抗値に対してどれほど大きいかを示すものであり、MR比が高いほど高感度なMR素子であると言える。AMR素子、GMR素子のMR比は、それぞれ3%、12%程度であるのに対して、TMR素子のMR比は90%以上である。高感度なMR素子を回転角度検出器15の回転センサとして用いることで、回転角度検出器15から大きな出力を得ることができる。回転センサとしてTMR素子を用いた場合の出力は、AMR素子を用いた場合の出力の約20倍程度、GMR素子を用いた場合の出力の約6倍程度である。このため、回転角度検出器15の出力を得るためには、TMR素子を用いることが好ましく、これにより回転角度の検出精度を高めることができる。以下では、回転角度検出器15の回転センサとしてTMR素子40を用いる場合について説明する。また、回転センサとしてTMR素子40を用いることで、回転角度検出器15を小型化することができる。回転センサは、2つのMR素子を有する二軸型であることができ、磁石構造体30の中心軸に対して直交する面内の磁場の方向を検出する。
磁石構造体30は、電動モータ20の回転シャフト22のセンサ側端部22bに取り付けられている。これにより、磁石構造体30は回転シャフト22と共に回転するので、磁石構造体30が発生させる磁界の向きは電動モータ20の回転に応じて変化する。また、TMR素子(MR素子)40は、磁石構造体30に対向する位置において、筐体12の内部に配置されている。回転角度検出器15は、磁石構造体30が発生させる磁界の向きに応じてTMR素子40の抵抗値が連続的に変化することを利用して、電動モータ20の回転角度を検出する。TMR素子40の抵抗値の変化は、例えばホイートストンブリッジ回路等で構成される検出回路によって計測される。
ここで、図2を参照してモータ組立体10が用いられる電動パワーステアリング装置50について説明する。
電動パワーステアリング装置50は、上述のモータ組立体10に加えて、一般的にECU(Electronic Control Unit)と呼ばれる制御部52と、ステアリングホイール54とを備えている。制御部52は、車両からの車速信号、モータ組立体10の回転角度検出器15が検出する回転シャフト22の回転角に関する情報、及び、ステアリングホイール54の操舵力に関するトルクセンサ56のトルク信号を受け付けることができるように構成されている。また、制御部52は、電動モータ20を駆動する電流を調整できるように構成されている。制御部52は、上記の車速信号及びトルク信号を受け付けると、それらに応じた電流をパワーアシスト用の電動モータ20に送って電動モータ20を駆動し、回転シャフト22のトルクにより操蛇力のアシストを行う。このとき、制御部52は、回転角度検出器15から受け付ける回転シャフト22の回転角に応じて、電動モータ20の電流をフィードバック制御し、パワーアシストの量を調整する。
次に、図3〜図5を参照して回転角度検出器15の磁石構造体30及びTMR素子40の構成について説明する。図3は、図1の回転角度検出器を示す概略斜視図である。図4は、図3の磁石構造体のニュートラル部に沿った断面を概略的に示す断面図である。図5は、磁石構造体30に含まれるボンド磁石成型体32の第2の主面を概略的に示す図である。
図3〜図4に示されるように、磁石構造体30は、ボンド磁石成型体(磁石成型体)32と、シャフト34とを備えている。ボンド磁石成型体32は射出成型によって形成されており、円板状又は円柱状の外形を呈している。また、図3〜図5に示されるように、ボンド磁石成型体32は、TMR素子40に対向する第1の主面32a及び第1の主面32aとは反対側の第2の主面32bを有している。
ボンド磁石成型体32は、第1の主面32a及び第2の主面32bに直交する方向に、例えば片面2極着磁により着磁されている。ボンド磁石成型体32には、第1の主面32a側又は第2の主面32b側から見て、N極とS極の両方が形成されている。N極とS極との境界部分をニュートラル部NTとする。ニュートラル部NTは、磁極がN極からS極に変化する領域であり、ボンド磁石成型体32の表面の磁力が弱い領域である。ここでは、ボンド磁石成型体32の磁束密度の最大値に対して、磁束密度が10%以下の領域をニュートラル部NTとすることができる。また、ボンド磁石成型体32の径方向の寸法に対して、10%程度の幅の領域をニュートラル部NTとしてもよい。ニュートラル部NTは、第2の主面32bに沿った方向(第2の主面32bに平行な方向)に延びている。また、ニュートラル部NTは、ボンド磁石成型体32の厚さ方向にも延びている(図3参照)。
ボンド磁石成型体32の厚さ(第1の主面32a側から第2の主面32b側へ向かう方向の長さ)は、例えば1mm以上25mm以下とすることができ、3mm以上10mm以下とすることもできる。ボンド磁石成型体32の外径(直径)は、例えば5mm以上25mm以下とすることができ、10mm以上20mm以下とすることもできる。
ボンド磁石成型体32は、樹脂と磁石粉末とを含む。樹脂の種類は特に限定されないが、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂であることができる。熱硬化性樹脂としては、例えばエポキシ樹脂及びフェノール樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、エラストマー、アイオイノマー、エチレンプロピレン共重合体(EPM)、及びエチレン−エチルアクリレート共重合体等が挙げられる。また、エラストマーとしては、具体的には、スチレン系、オレフィン系、ウレタン系、ポリエステル系、及びポリアミド系等が挙げられる。上記樹脂は、整形方法、成型性、耐熱性、及び機械的特性等に応じて選択される。
ボンド磁石成型体32は射出成型により形成されるので、上記樹脂として熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。ボンド磁石成型体32の製造には、これらの樹脂の他に、カップリング剤及びその他の添加剤等を用いる場合がある。熱可塑性樹脂を用いる場合、その融点は、成型性及び耐久性等の観点から、例えば100℃以上350℃以下とすることができ、120℃以上330℃以下とすることもできる。ボンド磁石成型体32は、1種類の樹脂を単独で含んでいてもよく、2種類以上の樹脂を含んでいてもよい。
磁石粉末体としては、例えば、希土類磁石粉末及びフェライト磁石粉末等が挙げられる。高い磁気特性を得るという観点から、磁石粉末は希土類磁石粉末であることが好ましい。希土類磁石としては、R−Fe−B系、R−Co系、及びR−Fe−N系等が挙げられる。Rは希土類元素を指す。なお、本明細書において、希土類元素は、長周期型周期表の第3族に属するスカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、及びセンタノイド元素を意味する。ランタノイド元素には、例えば、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビニウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、及びルテチウム(Lu)等が含まれる。また、希土類元素は、軽希土類元素及び重希土類元素に分類することができる。本明細書における「重希土類元素」はGd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びLuを示し、「軽希土類元素」はSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、及びEuを示す。
磁石粉末は、R−Fe−B系磁石粉末であることがより好ましい。R−Fe−B系磁石粉末は、R(希土類元素)としてNd及びPrの少なくとも一方を含んだR(Nd、Pr)−Fe−B系磁石粉末であることが好ましい。R−Fe−B系磁石粉末は、R、Fe、及びB以外に、必要に応じてCo、Ni、Mn、Al、Cu、Nb、Zr、Ti、W、Mo、V、Ga、Zn及びSi等の他の元素、又は不可避的不純物を含んでいてもよい。
ボンド磁石成型体32が等方性ボンド磁石成型体である場合、磁石粉末の形状は特に制限されず、球状、破砕状、針状、及び板状等のいずれであってもよい。一方、ボンド磁石成型体32が異方性ボンド磁石成型体である場合、磁石粉末の形状は、針状又は板状等であることが好ましい。磁石粉末の平均粒径は、30μm以上250μm以下であることが好ましく、50μm以上200μm以下であることがより好ましい。ボンド磁石成型体32は、1種類の磁石粉末を単独で含んでいてもよく、2種類以上の磁石粉末を含んでいてもよい。なお、平均粒径の定義はレーザ回折式粒度測定法における体積基準の粒度分布のd50である。
また、樹脂の含有量は、所望の磁気特性及び成型性を得る観点から、ボンド磁石成型体32の全体積に対して、40〜90体積%とすることができ、50〜80体積%とすることもできる。また、磁石粉末の含有量は、同様の観点から、ボンド磁石成型体32の全体積に対して、10〜60体積%とすることができ、20〜50体積%とすることもできる。
ボンド磁石成型体32は、射出成型によるゲート跡33Cを含むゲート部33を有している(図4参照)。ゲート部33は、第2の主面32bに形成されている。ゲート部33は、第2の主面32bに設けられた第1凹部33Aと、第1凹部33Aから第1の主面32a側へ更に凹む第2凹部33Bと、を有している。ゲート跡33Cは、第2凹部33B内において、第2凹部33Bの底面上に形成されている。
図5に示されるように、第2の主面32b側から見て、第1凹部33A及び第2凹部33Bは、共に円形状を呈している。第2凹部33Bは、第1凹部33Aの内側に設けられており、第2凹部33Bの直径R2は第1凹部33Aの直径R1より小さくなっている。第1凹部33Aの直径R1は、ゲート部33の直径に相当する。第1凹部33Aの中心と第2凹部33Bの中心とは互いに略一致している。なお、第1凹部33Aの中心と第2凹部33Bの中心とは互いに一致していなくてもよい。ここで、第1凹部33Aの直径R1とは、第2の主面32b側における第1凹部33Aの直径である。同様に、第2凹部33Bの直径R2とは、第2の主面32b側における第2凹部33Bの直径である。一例として、第1凹部33Aの直径R1は1mm以上5mm以下であり、第2凹部33Bの直径R2は0.4mm以上4.8mm以下である。なお、第1凹部33A及び第2凹部33Bの側壁は共に傾斜しており、第1凹部33A及び第2凹部33Bの第1の主面32a側の直径は、第2の主面32b側の直径より小さくなっている。
第2の主面32b側から見て、ゲート部33はニュートラル部NTに対応する位置に設けられている。本実施形態においては、ゲート部33の一部がニュートラル部NTと重なった状態となっている。ニュートラル部NTに幅がある場合は、ゲート部33の中心は、ニュートラル部NTの幅方向の中心と略一致している。なお、ゲート部33の直径は、ニュートラル部NTの幅Lより小さくてもよい。すなわち、第2の主面32b側から見て、ゲート部33の全部がニュートラル部NTと重なった状態(ゲート部33がニュートラル部NTの内側に位置する状態)となっていてもよい。また、ゲート部33の一部がニュートラル部NTと重なっていればよく、ゲート部33の中心はニュートラル部NTの幅方向の中心と一致していなくてもよい。なお、第2の主面32b側には、シャフト34が取り付けられる凹部32Hが形成されており、凹部32H内における一点鎖線は、凹部34H内(すなわち、第1の主面32a側)のニュートラル部NTを示している。
また、ボンド磁石成型体32は、製造番号等を識別するための識別部Iを第2の主面32bに有している。識別部Iには、例えば数字又はアルファベット等が刻印されており、第2の主面32bに対して凹凸を有している。識別部Iは、ゲート部33と同様に、第2の主面32b側から見てニュートラル部NTに対応する位置に設けられている。
シャフト34は、ボンド磁石成型体32の中心軸に沿って延在する長尺状の部材であり、略円柱状の外径を有している。シャフト34は、ボンド磁石成型体32の第2の主面32b側に取り付けられ、第2の主面32bに交差する方向に延びている。本実施形態では、シャフト34は第2の主面32bに直交している。第2の主面32b側から見て、シャフト34の軸34aはボンド磁石成型体32の中心と略一致している。これにより、シャフト34の一部が、ニュートラル部NTと重なった状態となっている。
シャフト34は、ボンド磁石成型体32が取り付けられる第1端部35と、電動モータ20の回転シャフト22に取り付けられる第2端部36と、シャフト34の外周面において周方向に沿って形成された環状溝37とを有する。シャフト34の第1端部35側の部分は、ボンド磁石成型体32の内部に入り込んだ状態となっている。第2端部36には、シャフト34の軸34aに沿って延びる穴36aが設けられている。シャフト34に対して同軸配置された回転シャフト22をシャフト34に取り付ける際、第2端部36の穴36aに電動モータ20の回転シャフト22のセンサ側端部22bが圧入される。環状溝37は、シャフト34のボンド磁石成型体32の内部に入り込んだ部分に設けられている。
シャフト34の長さは、例えば3mm以上20mm以下とすることができ、5mm以上15mm以下とすることもできる。また、シャフト34の直径は、例えば1mm以上5mm以下とすることができる。
シャフト34を構成する材料は、例えば非磁性材料から選択することができる。シャフト34を構成する非磁性材料としては、例えばアルミニウム、銅、真鍮、及びステンレス等が挙げられる。本実施形態では、シャフト34は真鍮で構成されている。なお、ボンド磁石成型体32が発生させる磁界への影響を低減する観点から、シャフト34は非磁性材料によって構成されていることが好ましいが、シャフト34は磁性材料によって構成されていてもよい。
シャフト34の第1端部35へのボンド磁石成型体32の取付けは、射出成型によるボンド磁石成型体32の形成と共に行われる。射出成型を行う際には、まず、第2端部36が上方を向くように、下部金型内にシャフト34を固定する。下部金型は、シャフト34を収容する凹部及びボンド磁石成型体32の下部を形成する空間を有する。次に、下部金型に上部金型を取り付けて金型を閉じて、金型内にボンド磁石成型体32を製造可能なキャビティを形成する。続いて、樹脂及び磁石粉末を含む原料組成物を加熱等により流動化し、ゲートを介して上記金型内のキャビティに射出する。その後、冷却等により原料組成物を固化することにより、シャフト34の第1端部35にボンド磁石成型体32が形成される。ボンド磁石成型体32をゲート及び金型から取り外す際に、ゲートとボンド磁石成型体32との接続部分がゲート跡33Cとなる。この結果、ゲート跡33Cを含むゲート部33が形成される。ボンド磁石成型体32が等方性ボンド磁石成型体である場合、射出成型は無磁場で行われる。一方、ボンド磁石成型体32が異方性ボンド磁石成型体である場合、射出成型は磁場中で行われる。最後に、ボンド磁石成型体32に対して、第1の主面32a及び第2の主面32bに直交する方向から片面2極着磁を行い、N極及びS極を形成する。このとき、第1の主面32a側に着磁装置の磁極が配置された状態で着磁を行う。また、図6に示されるように、ゲート部33の第1凹部33Aに位置決めピンPを挿入してボンド磁石成型体32を位置決めし、ゲート部33とシャフト34が並ぶ方向に対して、着磁装置の2つの磁極同士が並ぶ方向が直交した状態となるようにボンド磁石成型体32を配置して着磁を行う。位置決めピンPの直径が第2凹部33Bの直径R2より大きく、且つ第1凹部33Aの直径R1より小さくなっている場合、位置決めピンPは第1凹部33Aの底面に当接した状態となる。これにより、ゲート部33及びシャフト34に対応した位置にニュートラル部NTを形成することができる。
図3に戻り、磁石構造体30において、ボンド磁石成型体32のN極及びS極は、シャフト34の軸34aに垂直な方向に離間して配置されている。これにより、磁石構造体30のまわりには、図示のMのような静磁界が発生し、シャフト34の軸34a上に、軸34aに対して垂直な方向の磁界が生ずる。軸34a上の磁界の方向は、磁石構造体30の回転方向Rにおける回転位置に応じて変化するため、第1端部35側において磁石構造体30と対向配置されたTMR素子40が磁界の方向を検出することで、磁石構造体30の回転角度を検出することができる。
回転角度検出器15では、電動モータ20の回転シャフト22がシャフト34の第2端部36が取り付けられている。すると、磁石構造体30は回転シャフト22の回動に連動してシャフト34の軸34aを中心として回転方向Rに回転する。したがって、磁石構造体30の回転角度を検出することにより、電動モータ20の回転シャフト22の回転角度を検出することができる。
以上説明したように、磁石構造体30のボンド磁石成型体32は射出成型により形成されており、射出成型によるゲート跡33Cを含むゲート部を第2の主面32b側に有している。このように、ゲート部33を第2の主面32b側に設けることにより、TMR素子40と対向する第1の主面32aを平坦に形成することができるので、第1の主面32a側において対称性の高い磁界を発生させることが可能である。また、ボンド磁石成型体32が発生させる磁界に影響を与え得るゲート部33を第2の主面32b側に設けられることにより、ゲート部33による第1の主面32a側の磁界の対称性への影響を低減できる。したがって、当該ボンド磁石成型体32によって対称性の高い磁界を発生させることが可能である。
ゲート部33は、第2の主面32bに設けられた第1凹部33Aと、第1凹部33A内に設けられ、第1の主面32a側へ更に凹む第2凹部33Bと、を有し、ゲート跡33Cは第2凹部33B内に形成されている。これにより、図6に示されるように、第1凹部33Aを利用してボンド磁石成型体32を着磁する際の位置決めを行うことができる。本実施形態では、第1凹部33Aに位置決めピンPを挿入してボンド磁石成型体32を固定した状態で、ゲート部33とシャフト34が並ぶ方向に対して直交する径方向から着磁を行うことができるので、容易にゲート部33及びシャフト34に対応した位置にニュートラル部NTを形成することができる。
ボンド磁石成型体32は、第2の主面32bに沿った方向に延び、S極とN極との境界であるニュートラル部NTを有し、ゲート部33は、第2の主面32b側から見てニュートラル部NTに対応する位置に形成されている。ニュートラル部NTは磁界が弱いので、ボンド磁石成型体32が発生させる磁界に影響を与え得るゲート部33をニュートラル部NTに対応する位置に形成することにより、ゲート部33による磁界の対称性への影響を更に低減できる。したがって、磁石構造体30によって対称性の高い磁界を発生させることが可能である。
また、射出成型によって形成されるゲート跡33Cは第2凹部33B内に形成されている。図6に示されるように、位置決めピンPは第1凹部33Aのみに挿入されているので、ゲート跡33Cと位置決めピンPとの接触を防止できる。したがって、ゲート跡33Cと位置決めピンPとが接触することによるコンタミの発生を抑制できる。
また、第1凹部33A及び第2凹部33Bを有するゲート部33がニュートラル部NTに対応する位置に形成されていることにより、ニュートラル部NTを挟んだ2つの領域の体積(ボンド磁石成型体32の2つの磁極の体積)を略同一にすることができる。これにより、2つの領域における磁束のバランス向上が図られると共に、磁束線のベクトルの乱れが抑制されているので、磁石構造体30によって対称性の高い磁界を発生させることが可能である。
また、ボンド磁石成型体32は射出成形によって形成されているため、ボンド磁石成型体32を構成する原料組成物が合流して融着することによるウェルドラインが形成される。ボンド磁石成型体32では、シャフト34に対してゲート部33の反対側の位置において原料組成物が合流してウェルドラインが形成される。ウェルドラインは、他の部分に比べて密度の均一性が低下している部分であり、磁束線のベクトルに乱れを引き起こすことが懸念される。これに対して、磁石構造体30では、ゲート部33とシャフト34が並ぶ方向に対して直交する径方向に着磁装置の磁極が配置された状態でボンド磁石成型体32の着磁が行われるので、ウェルドラインもニュートラル部NTと一致した状態となる。したがって、ウェルドラインによる磁界への影響を抑制することができる。
また、識別部Iは、ゲート部33と同様に、第2の主面32b側から見てニュートラル部NTに対応する位置に設けられている。識別部Iは第2の主面32bに対して凹凸を有しているので、ゲート部33と同様にボンド磁石成型体32が発生させる磁界に影響を与え得る。これに対して、識別部Iもニュートラル部NTに対応する位置に形成することにより、識別部Iによる磁界の対称性への影響を低減できる。
回転角度検出器15は、磁石構造体30と、磁石構造体30の第1の主面32aに対向して配置されるMR素子としてのTMR素子40と、を備える。この回転角度検出器15は、対称性の高い磁界を発生させることが可能な上記の磁石構造体30を備えているので、回転角度の検出精度を高めることが可能である。
また、MR素子はTMR素子40であり、そのMR比(磁気抵抗比)は90%以上である。このように、磁気抵抗比が90%以上である場合、磁気抵抗効果素子から大きな出力を得ることができる。したがって、回転角度の検出精度を更に高めることが可能である。
電動パワーステアリング装置50は、回転角度検出器15を備える。この電動パワーステアリング装置50は、回転角度の検出精度を高めることが可能な上記の回転角度検出器15を備えているので、高精度なトルクアシストを行うことができる。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は上記の実施形態に限定されず、種々の変更を行うことができる。例えば、上記の実施形態では、ボンド磁石成型体32が円板状である例について説明したが、ボンド磁石成型体32の形状は特に限定されない。例えば、ボンド磁石成型体32の外形は、円板状に限らず、その他の板状(例えば、四角形板状や六角形板状等の多角形板状)の外形であっても、円柱のような柱状であってもよい。上記実施形態では、シャフト34とボンド磁石成型体32とを同軸配置する態様を示したが、シャフト34の軸34aとボンド磁石成型体32の中心とをずらして、ボンド磁石成型体32の中心軸から外れた位置にシャフト34が取り付けられた態様とすることもできる。
また、上記の実施形態では、第1又は第2の主面と直交する方向からボンド磁石成型体32の着磁を行う例について説明したが、ゲート部33とシャフト34が並ぶ方向に対して直交する径方向からボンド磁石成型体32の着磁を行ってもよい。また、ボンド磁石成型体32の着磁方法は、いわゆる両面4極着磁であってもよい。この場合、ボンド磁石成型体32の径方向においてN極とS極が形成されると共に、ボンド磁石成型体32の厚さ方向においてもN極とS極が形成される。第1の主面32a側におけるN極とS極との位置関係は、第2の主面32b側におけるN極とS極との位置関係とは逆になっている。このような着磁方法を用いた場合にも、第2の主面32bに沿った方向に延びるニュートラル部NTが形成されるので、径方向からボンド磁石成型体32の着磁を行った場合と同様の効果を得ることができる。
また、上記の実施形態では、ゲート部33が円形状である場合について説明したが、ゲート部33の形状は特に限定されず、射出成型に用いられるゲートの形状に応じて適宜変更可能である。また、第1凹部33A及び第2凹部33Bの形状も、ゲート部33の形状と同様に適宜変更可能である。更に、第1凹部33Aの形状と第2凹部33Bの形状とは互いに異なっていてもよく、例えば第1凹部33Aを円形状とし、第2凹部33Bを矩形状としてもよい。
また、上記の実施形態では、ゲート部33が第1凹部33A及び第2凹部33Bを有する例について説明したが、ゲート部33は第2凹部33Bを有していなくてもよい。すなわち、ゲート部33は複数段階の凹部を有していなくてもよい。この場合、ゲート跡33Cは、第1凹部33Aの底面に形成される。更に、ゲート部33は、第1凹部33A及び第2凹部33Bの両方を有していなくてもよい。この場合、ゲート跡33Cは第2の主面32bに形成される。
また、上記の実施形態では、ボンド磁石成型体32が識別部Iを有する場合について説明したが、ボンド磁石成型体32は識別部Iを有していなくてもよい。
また、上記実施形態では、シャフト34の外形が円柱形状である例について説明したが、シャフト34の外径は角柱状の外形や楕円柱状であってもよい。また、シャフト34には、ボンド磁石成型体32との接合強度を高めるためのローレット等が形成されていてもよい。
また、上記の実施形態では、MR素子としてTMR素子40を用いる例について説明したが、MR素子の種類は特に限定されず、適宜変更可能である。なお、MR比が90%以上である高感度なMR素子を用いることが好適であり、その場合、本発明による効果がより顕著となる。
15…回転角度検出器、30…磁石構造体、32…ボンド磁石成型体(磁石成型体)、32a…第1の主面、32b…第2の主面、33…ゲート部、33A…第1凹部、33B…第2凹部、33C…ゲート跡、34…シャフト、40…TMR素子(磁気抵抗効果素子)、50…電動パワーステアリング装置、NT…ニュートラル部。

Claims (7)

  1. 磁気抵抗効果素子用の磁石構造体であって、
    前記磁気抵抗効果素子に対向する第1の主面及び前記第1の主面とは反対側の第2の主面を有する磁石成型体と、
    前記磁石成型体の前記第2の主面側に取り付けられ、前記第2の主面に交差する方向に延びるシャフトと、を備え、
    前記磁石成型体は、射出成型によるゲート跡を含むゲート部を前記第2の主面に有する、磁石構造体。
  2. 前記磁石成型体は、前記第2の主面に沿った方向に延び、S極とN極との境界であるニュートラル部を有し、
    前記ゲート部は、前記第2の主面側から見て前記ニュートラル部に対応する位置に形成されている、請求項1に記載の磁石構造体。
  3. 前記ゲート部は、
    前記第2の主面に設けられた第1凹部と、
    前記第1凹部内に設けられ、前記第1の主面側へ凹む第2凹部と、を有し、
    前記ゲート跡は前記第2凹部内に形成されている、請求項1又は2に記載の磁石構造体。
  4. 請求項1〜3の何れか一項に記載の磁石構造体と、
    前記磁石構造体の前記第1の主面に対向して配置される磁気抵抗効果素子と、を備える、回転角度検出器。
  5. 前記磁気抵抗効果素子の磁気抵抗比は90%以上である、請求項4に記載の回転角度検出器。
  6. 前記磁気抵抗効果素子は、トンネル磁気抵抗効果素子である、請求項4又は5に記載の回転角度検出器。
  7. 請求項4〜6の何れか一項に記載の回転角度検出器を備える、電動パワーステアリング装置。
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