JP2019157305A - ポリエステル仮撚加工糸 - Google Patents
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Abstract
【課題】 吸放湿性、高発色性および高鮮明性に加えて、ソフト性やストレッチ性に優れ、毛羽品位や捲縮品位が良好な布帛を達成できるポリエステル仮撚加工糸を提供する。【解決手段】 主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートからなり、全ジカルボン酸成分に対するスルホン酸塩基を有するイソフタル酸成分を0.5mol%以上2.0mol%以下含有する共重合ポリエステルに対してポリ(N−ビニルラクタム)を3.0重量%以上15.0重量%以下含有する共重合ポリエステル組成物からなるポリエステル仮撚加工糸において、伸縮復元率(CR)バラツキを示す変動係数CV%が5%以下、糸タフネスバラツキを示す変動係数CV%が5%以下であることによって解決できる。【選択図】なし
Description
本発明は、吸放湿性が良好であって、高発色・高鮮明性を有し、更には織編物とした時の布帛品位に優れた吸放湿性ポリエステル仮撚加工糸に関するものである。
ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートに代表されるポリエステル繊維は機械的強度、耐熱性などに優れるため、衣料用途を主体に広く使用されている。しかしながら、これらのポリエステル繊維は極めて吸放湿性が低いため、インナーやスポーツ衣料などの直接肌に触れて、あるいは肌側に近い状態で着用される分野に使用する場合には、肌表面近傍の汗を効率的に吸収することができず、汗の多くが肌面に残存してしまい、吸放湿性の高い天然繊維に比較して快適性の点で劣るため、これらの分野への進出は限定されている。加えて、ポリエステルは分散染料による染色であるため、染色物の発色性・鮮明性に劣る他、他素材との混合使用の際に色移りによって布帛が汚染されるなどの欠点を有している。更には、インナー等は直接肌に触れるため、布帛のソフト性やストレッチ性、毛羽等のない優れた品位が求められる。
このため、例えば特許文献1,2に記載されているように、吸湿成分を共重合せずにポリエステル中に分散させて吸放湿性向上を図る技術が提案されている。また、例えば特許文献3,4,5に記載されているように、高発色・高鮮明性に優れ、布帛のソフト性やストレッチ性に優れた仮撚加工糸を提供する技術も提案されている。
しかしながら、特許文献1ではスルホン酸塩基を有するイソフタル酸成分(以下、S成分と略す)を共重合していないため分散染料にしか染まらず、染色性が低いため、鮮明性に劣っていた。特許文献2では、実施例にてS成分をポリマーに共重合しているが、共重合量が多いため耐熱性や仮撚加工糸の機械的強度に劣り、インナー用途に耐えうる毛羽レベルを達成できていなかった。
また、特許文献3,4,5ではS成分をポリマーに共重合したカチオン可染性ポリエステル仮撚加工糸に関する技術であるが、吸湿成分を共重合しておらず、著しく吸放湿性に劣る。加えて、S成分および吸湿成分を共重合した吸放湿カチオン可染性ポリエステルを、特許文献3,4,5の公知の仮撚加工条件にて仮撚加工すると、単糸切れによる毛羽発生や捲縮抜けによる捲縮バラツキが発生して布帛品位が低下し、実用に耐えないレベルとなる。
以上のとおり、吸放湿性繊維に関する研究は、上記の特許文献で示した如く検討が進められており、技術的進歩もなされてきている。しかしながら、発色性・鮮明性に優れ、かつ吸放湿性能が良好であり、布帛品位に優れる吸放湿性ポリエステル仮撚加工糸の製造法に関する研究は、高度なポリマー重合技術、溶融紡糸技術および仮撚加工技術が必要である。
加えて、ポリマー特性である耐熱性や溶融粘度、伸長粘度等を踏まえた溶融紡糸条件、仮撚加工条件の構築が必要であるが、一般的な紡糸・仮撚条件を採用すると、機械的強度や品位の面で実用に耐えない布帛となってしまう。更に、機械的強度や品位を改善すべく、容易に想定される条件変更(紡糸温度や熱固定温度ダウン等)を実施したとしても、特に仮撚加工糸品位の面でバラツキを生じさせてしまい、逆に品位を低下させてしまう。
ゆえに、各々技術のバランス調整が困難であるため、吸放湿ポリエステル仮撚加工糸の開発ほとんど進んでおらず、高発色性・高鮮明性であって吸放湿性良好であり、製糸性を満足し、インナー向けとして十分な布帛品位を与える吸放湿性ポリエステル仮撚加工糸が待ち望まれていた。
本発明は、高発色性・高鮮明性であって吸放湿性が良好であり、かつ優れた布帛品位を達成できるポリエステル仮撚加工糸を提供することを課題とする。
上記課題は、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートであり、全ジカルボン酸成分に対してスルホン酸塩基を有するイソフタル酸成分を0.5mol%以上2.0mol%以下含有する共重合ポリエステルであって、該共重合ポリエステルに対してポリ(N−ビニルラクタム)を3.0重量%以上15.0重量%以下含有する共重合ポリエステル組成物からなる仮撚加工糸において、仮撚加工糸の伸縮復元率(以下CRと略す)バラツキを示す変動係数CV%が5%以下、仮撚加工糸の糸タフネスバラツキを示す変動係数CV%が5%以下であるポリエステル仮撚加工糸により解決できる。
本願発明のポリエステル仮撚加工糸により、従来技術では到底成し得なかった高発色・高鮮明性が得られ、着用快適性を得るのに十分な吸放湿性および布帛品位を達成できる。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明における共重合ポリエステル組成物は、主たる繰り返し単位としてエチレンテレフタレートが70mol%以上からなり、さらに好ましくは80mol%以上からなる。
本発明における共重合ポリエステル組成物は、主たる繰り返し単位としてエチレンテレフタレートが70mol%以上からなり、さらに好ましくは80mol%以上からなる。
該共重合ポリエステル組成物は、全ジカルボン酸成分に対してスルホン酸塩基を有するイソフタル酸成分(以下、S成分と略す)を0.5mol%以上2.0mol%以下含有し、共重合ポリエステルに対してポリ(N−ビニルラクタム)を3.0重量%以上15.0重量%以下含有することで、本発明は吸放湿性を確保して高発色・高鮮明性を発現するものである。
S成分の含有量が0.5mol%未満になるとカチオン染料に充分に染まらず発色性に劣り、逆に2.0mol%を超えるとS成分を起点としたポリマーの熱変性が進みやすく、その熱変性物に起因した製糸性不調や仮撚加工糸の毛羽が多発し、布帛品位を大きく低下させる。S成分の含有量は0.7mol%以上1.8mol%以下が好ましく、0.9mol%以上1.6mol%以下がより好ましい。
ポリ(N−ビニルラクタム)の含有量が3.0重量%未満になると充分な吸放湿性を発揮できず、逆に15.0重量%を超えるとポリ(N−ビニルラクタム)の熱分解物が糸中に多数生成し、仮撚加工した際に毛羽を発生させるばかりか、仮撚加工時の加工張力変動が増大し、仮撚加工糸の捲縮バラツキや糸タフネスバラツキを助長して布帛品位を低下させる。ポリ(N−ビニルラクタム)の含有量は4.0重量%以上12.0重量%以下が好ましく、4.5重量%以上10.0重量%以下がより好ましい。
本発明におけるポリ(N−ビニルラクタム)としては、N−ビニル−2−ピロリドン,N−ビニル−2−ピペリドン,N−ビニルカプロラクタムなどのN−ビニルラクタム類の重合体があげられる。立体障害が小さく水分子を吸着・放出しやすいことから、N−ビニル−2−ピロリドンの重合体であるポリビニルピロリドンが好ましい。ポリビニルピロリドンは重量平均分子量0.5万以上250万以下のものが一般的であるが、このうち重量平均分子量1万以上100万以下のものが好ましく、重量平均分子量3万以上50万以下のものがより好ましい。重量平均分子量1万以上であることで、熱安定性が高くなり、また、溶融紡糸時のブリードアウトを抑制でき、さらに、高次加工時や製品として使用する際のポリビニルピロリドンの溶出を抑制でき吸放湿性を向上することができる。また、重量平均分子量100万以下であることで、粘度が高くなりすぎず、ポリエステル中での凝集・分散性低下を抑制、紡糸時の装置にかかるポリマー圧力が高くなることを抑制できる。
本発明は、共重合ポリエステルを海、ポリ(N−ビニルラクタム)を微細な島とした海島構造を持つポリマーアロイ型仮撚加工糸とすることが好ましい。共重合ポリエステルを海成分とすることで、高い機械特性を持つポリエステルが繊維の機械物性を担うことができ、仮撚加工や編経時の毛羽発生を抑制できる。また、ポリ(N−ビニルラクタム)を島成分とすることで、耐水溶性の低いポリ(N−ビニルラクタム)の繊維表面への露出を抑制し、高次加工時および製品として使用する際のポリ(N−ビニルラクタム)の溶出を抑制でき、吸放湿性を向上することができる。
この観点から、S成分とポリ(N−ビニルラクタム)は相性が良く、これらが共存することによりポリ(N−ビニルラクタム)がポリエステルとなじみやすくなる結果、実質的にポリ(N−ビニルラクタム)の耐水溶性が向上し、より一層の吸放湿性向上効果が得られる。
本発明におけるS成分は、公知のものを使用しても良い。具体的には5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチルエステル、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジエチルエステル、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジグリコールエステル、5−リチウムスルホイソフタル酸、5−リチウムスルホイソフタル酸ジメチルエステル、5−リチウムスルホイソフタル酸ジエチルエステル、5−リチウムスルホイソフタル酸ジグリコールエステル等が挙げられ、これらの混合物であっても差し支えない。染色性の改善効果と入手の容易さから5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジグリコールエステルが好ましい。
なお、通常ポリエステルの重縮合時に用いられる触媒としては、三酸化アンチモンに代表されるアンチモン触媒が広く用いられているが、本発明に用いられる共重合ポリエステル組成物は、共重合ポリエステル組成物中にアンチモン原子を含まないことが好ましい。これは、アンチモン原子とポリ(N−ビニルラクタム)とが共存すると、アンチモン原子とポリ(N−ビニルラクタム)との反応によりポリマーが黒く着色するためである。そのためには、アンチモン系以外の重合触媒(チタン系,スズ系,ゲルマニウム系など)を用いる選択肢があるが、中でもチタン系触媒を用いることが、高発色・高鮮明性を得、製糸性および布帛品位を確保するために必須である。
チタン系触媒としては、ポリエステルに可溶なチタン化合物である、多価アルコールおよび/または多価カルボン酸および/またはヒドロキシカルボン酸および/または含窒素カルボン酸をキレート剤とするチタン錯体であることが、得られるポリエステルの色調や耐熱性の観点から好ましい。
ポリエステルに可溶なチタン化合物の含有量は、チタン原子として1ppm以上20ppm以下(共重合ポリエステルに対して)であることが望ましい。1ppm以上であるとポリマー色調悪化を防ぎ、高発色・高鮮明性な布帛を得ることができる。また、20ppm以下であると、ポリマーの分解を抑制し、未延伸糸のタフネスバラツキを少なくすることができるため、優れた布帛毛羽品位を達成できる。
ポリエステルに可溶なチタン化合物のキレート剤である、多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等が挙げられ、多価カルボン酸としては、フタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ヘミリット酸、ピロメリット酸等が挙げられ、ヒドロキシカルボン酸としては、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等が挙げられ、含窒素カルボン酸としては、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三プロピオン酸、カルボキシイミノ二酢酸、カルボキシメチルイミノ二プロピオン酸、ジエチレントリアミノ酸、トリエチレンテトラミノ六酢酸、イミノ二酢酸、イミノ二プロピオン酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二プロピオン酸、メトキシエチルイミノ二酢酸等が挙げられる。
これらのポリエステルに可溶なチタン化合物は単独で用いても、併用して用いても良い。なお本発明でいうチタン化合物には、繊維の艶消し剤として一般的に使用される酸化チタンはポリエステルに可溶ではないため除外される。
本発明のポリエステル仮撚加工糸は、ジエチレングリコール(以下、DEGと略す)を含有していることが好ましく、その含有量は、共重合ポリエステル組成物に対して2.0重量%以上4.0重量%以下であることが好ましい。2.0重量%以上であると、本願のポリエステル仮撚加工糸を布帛にしたときの染色性がより一層良好となり、発色性・鮮明性に優れる。4.0重量%以下であると、溶融紡糸する際にDEGを起点とした熱変性が進みにくいため、その熱変性物に起因する仮撚加工時の加工張力変動を抑制でき、捲縮および糸タフネスのバラツキを小さくし、かつ仮撚加工糸の毛羽も抑制できるため、優れた布帛品位を得ることができる。更に好ましいDEG含有量は2.6重量%以上3.7重量%以下である。
本発明のポリエステル仮撚加工糸は、アルカリ金属原子を含有していることが好ましく、その含有量は、ポリエステル組成物に対して1000ppm以上2500ppm以下であることが好ましい。1000ppm以上であると、色調が良好となり、より高発色・高鮮明となる。2500ppm以下であると、製糸時の品質変化が少なく捲縮および糸タフネスのバラツキを抑制でき、優れた布帛品位を達成できる。特に好ましくは、1300ppm以上2300ppm以下である。
アルカリ金属原子の種類は特に限定しないが、ナトリウムおよびリチウムが好ましい。アルカリ金属原子は1種類に限定されず、複数種類用いても何ら差し支えない。好ましくは、ナトリウムとリチウムを併用することが望ましい。
アルカリ金属原子を添加する際の化合物の種類は特に限定されず、酢酸塩、塩酸塩、硫酸塩などの各種塩類や、酸化物、水酸化物など、公知の化合物を用いることができる。加えて、S成分の対カチオン金属原子であってもよい。好ましくは、ナトリウムはS成分の対カチオン金属原子であり、リチウムは酢酸リチウム・2水和物である。
また、ポリマーを構成するジカルボン酸、ジオールやS成分などの任意の成分、および任意の添加物は廃糖蜜やサトウキビ等の石油由来以外の原料(以下、バイオ由来原料と略す)から製造したものでもよい。ここで、バイオ由来原料の使用率に制約はなく、一部であっても全部であってもよい。
本発明のポリエステル仮撚加工糸は、伸縮復元率(CR)バラツキを示す変動係数CV%が5%以下、糸タフネスバラツキを示す変動係数CV%が5%以下を満たす。
本発明の仮撚加工糸は、後述する測定方法に基づく伸縮復元率(CR)パラメータによって捲縮形態が示され、伸縮復元率CRバラツキを示す変動係数CV%が5%以下である。伸縮復元率CRバラツキを示す変動係数CV%が5%より大きいと、布帛とした際に捲縮抜けや過捲縮箇所が散見され、均質な布帛表面形態とならないため、見た目や触感的にも粗悪な布帛品位となる。伸縮復元率CRバラツキを示す変動係数CV%は4%以下であるとより好ましい。
本発明における伸縮復元率CR(%)は、以下の方法で測定した値をいう。下式から初荷重を計算し、加工糸を10mカセ取りし、90℃水中で20分間フリーにし、24時間風乾する。
初荷重(g)=表示繊度(dtex)/11.1
次に、水中(25℃)で初荷重0.0018cN/dtex(2mgf/d)をかけ、2分間後のカセ長さL1を測定する。次に、水中(25℃)で上記初荷重0.0018cN/dtexを除き、0.09cN/dtex(0.1g/d)相当の荷重に交換し、2分後のカセ長L0を測定する。そして下式によりCR(%)を計算する。
CR(%)=[(L0−L1)/L0]×100(%)
伸縮復元率CR(%)バラツキの変動係数CV%は、加工錘の異なる仮撚加工糸をN=10サンプリングしてCRを測定し、得られたデータから平均値と標準偏差を算出の後、変動係数CV%を求める。
初荷重(g)=表示繊度(dtex)/11.1
次に、水中(25℃)で初荷重0.0018cN/dtex(2mgf/d)をかけ、2分間後のカセ長さL1を測定する。次に、水中(25℃)で上記初荷重0.0018cN/dtexを除き、0.09cN/dtex(0.1g/d)相当の荷重に交換し、2分後のカセ長L0を測定する。そして下式によりCR(%)を計算する。
CR(%)=[(L0−L1)/L0]×100(%)
伸縮復元率CR(%)バラツキの変動係数CV%は、加工錘の異なる仮撚加工糸をN=10サンプリングしてCRを測定し、得られたデータから平均値と標準偏差を算出の後、変動係数CV%を求める。
本発明の仮撚加工糸は、後述する測定方法に基づいて糸タフネスパラメータを算出し、糸タフネスバラツキを示す変動係数CV%が5%以下である。糸タフネスバラツキを示す変動係数CV%が5%より大きいと、製織・製編工程において低タフネス部分が断糸して毛羽が発生し、布帛品位の低下を招くばかりか、破裂強度等の布帛物性もインナー用途に耐えうるレベル未達となる。糸タフネスバラツキを示す変動係数CV%は4%以下であるとより好ましい。
本発明における糸タフネスとは、以下の方法で測定した値をいう。仮撚加工糸を引張試験機(オリエンテック製“テンシロン”(TENSILON)UCT−100)でJIS L1013(1999)8.5.1標準時試験に示される定速伸長条件で、掴み間隔は20cm、引張り速度は20cm/分、試験回数3回で測定し、得られた破断伸度および破断強度から、下式により糸タフネスを計算する。
糸タフネス=破断強度(cN/dtex)×(破断伸度(%)0.5)
糸タフネスバラツキの変動係数CV%は、加工錘の異なる仮撚加工糸をN=10サンプリングして破断強度および破断伸度を測定し、得られたデータから平均値と標準偏差を算出の後、変動係数CV%を求める。
糸タフネス=破断強度(cN/dtex)×(破断伸度(%)0.5)
糸タフネスバラツキの変動係数CV%は、加工錘の異なる仮撚加工糸をN=10サンプリングして破断強度および破断伸度を測定し、得られたデータから平均値と標準偏差を算出の後、変動係数CV%を求める。
本発明のポリエステル仮撚加工糸は、具体的には次のように製造することができる。
本発明のポリエステル仮撚加工糸の共重合ポリエステルは、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とエチレングリコールを、エステル化反応もしくはエステル交換反応を行い、全ジカルボン酸成分に対するS成分を0.5〜2.0mol%となるよう添加し、重縮合触媒の存在下で重縮合することで製造することができる。
本発明のポリエステル仮撚加工糸の共重合ポリエステルは、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とエチレングリコールを、エステル化反応もしくはエステル交換反応を行い、全ジカルボン酸成分に対するS成分を0.5〜2.0mol%となるよう添加し、重縮合触媒の存在下で重縮合することで製造することができる。
本発明において用いられるエステル交換触媒は、発明の効果を損なわない範囲で公知のものを用いることができる。例えば、コバルト、マグネシウム、リチウム、マンガン、チタンの酸化物や酢酸塩などが好ましく使用される。これらは2種以上を併用してもよく、単一で用いても何ら差し支えない。
本発明のポリエステル仮撚加工糸の共重合ポリエステルの製造方法としてのエステル化反応は、予めエステル反応槽に低重合体を存在させた状態で、エチレングリコールやテレフタル酸のmol比率が1.05〜1.50のスラリーをエステル反応槽に連続的に供給しながらエステル反応を行うことができる。または、予めエステル反応槽に低重合体を存在させた状態で、エステル化反応開始前にエチレングリコールとテレフタル酸をエステル反応槽に全量添加した後、エステル化反応を行っても良い。
本発明のポリエステル仮撚加工糸の共重合ポリエステルの製造方法としてのエステル交換反応は、そのエチレングリコールとテレフタル酸ジメチルのmol比は1.5〜2.5程度であることがエステル交換反応速度やDEGなどの副生成量を適度にコントロールすることができるため好ましい。
S成分の添加タイミングは、エステル反応率が95%以上であることが好ましい。反応率がこれよりも高いとPET主鎖に均一に取り込まれにくく、S成分同士が凝集や自己重合したりして、PET鎖に偏在することにより発色性や鮮明性が低下しやすくなる。逆に反応率がこれよりも低い場合、DEG副生量が増加し紡糸性にやや劣る。
ポリエステルに可溶なチタン化合物の添加タイミングは、チタン化合物が受ける熱履歴を減らし、着色を防止するため、重合反応開始に近いタイミングが好ましい。
本発明のポリエステル仮撚加工糸に含まれるDEGは、反応中に副生するもののみでもよいし、不足する場合は別途添加しても構わない。別途添加する場合の添加量、添加方法および添加タイミングに制約はなく、例えば添加回数は1回であっても複数回に分けても問題ない。
本発明のポリエステル仮撚加工糸に含まれるアルカリ金属の添加タイミングは特に限定されない。例えばポリエステルに可溶なチタン化合物と同時に添加する、S成分と同時に添加するなど、発明の効果を損なわない範囲で任意のタイミングで添加してよい。
本発明のポリエステル仮撚加工糸の共重合ポリエステルを製造するためのエステル化および重縮合反応の装置は通常用いられる反応装置であればどのような装置であっても構わない。それぞれの反応装置は1つずつでも良いし、いずれかもしくはいずれもが複数あっても構わない。
本発明のポリエステル仮撚加工糸の共重合ポリエステルとポリ(N−ビニルラクタム)の組み合わせにおいては、共重合ポリエステルとポリ(N−ビニルラクタム)の合計量を100重量部として、共重合ポリエステル50〜97重量部、ポリ(N−ビニルラクタム)50〜3重量部としてそれぞれ計量し、直接ブレンドすることが望ましい。この際、一旦目標とするポリ(N−ビニルラクタム)含有量を超えてポリ(N−ビニルラクタム)を共重合ポリエステルにブレンドしてもよく(このように目標量を超えてブレンドしたポリマーをマスターポリマーと呼ぶ)、その場合はポリ(N−ビニルラクタム)をブレンドしていない前記共重合ポリエステル(マスターポリマーに対して、ベースポリマーと呼ぶ)と一定の割合で紡糸前に混合することでポリ(N−ビニルラクタム)を希釈し、目標とする含有量に調整すればよい。
混練の際、吸湿しやすいポリ(N−ビニルラクタム)は予め80〜150℃、減圧下、もしくは窒素雰囲気下で乾燥しておき、乾燥後は吸湿防止容器等にストックしておくことが発色性を向上させる観点から望ましい。なお、液相重合段階で添加すると熱に弱いポリ(N−ビニルラクタム)が液相重合段階で受ける熱履歴により熱劣化や黄色に着色し、あるいは発煙することもあり好ましくない。
混練工程で用いられる装置として好ましいのは、二軸または一軸の押出機である。また、混練後は、一旦チップ化してもよいし、そのまま連続して紡糸装置に送り込んでもよい。
溶融押出における混練時のジャケット温度は、共重合ポリエステルの融点(以下Tm1と記載)を基準に、(Tm1+5)℃以上(Tm1+40)℃以下が好ましい。ジャケット温度は樹脂の着色を抑制するためにも低い方が好ましく、特に本発明で用いるポリ(N−ビニルラクタム)は高温下で熱劣化し、黄色に着色したり発煙することもあるので、(Tm1+5)℃以上(Tm1+25)℃以下であることがより好ましい。同様に、紡糸温度はできるだけ低温で行うことが好ましく、(Tm1+10)℃以上(Tm1+50)℃以下の範囲で行うことが好ましく、(Tm1+15)℃以上(Tm1+40)℃以下の範囲で行うことがより好ましい。
紡糸工程においては、紡糸パック内でのポリ(N−ビニルラクタム)の再凝集を抑制するために、ハイメッシュの濾層(#100〜#200)や濾過径の小さい不織布フィルター(濾過径5〜30μm)を口金上に配置してもよい。中でも、複数の線径の金属不織布からなる多層フィルターが島成分の分散径の制御に最も効果的である。
口金吐出孔の形状は、通常の丸断面、Y断面、三角断面、四角断面、扁平断面あるいはこれらの中空断面等、公知のものを用いることができ、用途に応じたものを選択することができる。このうち、丸断面以外の異形断面であると、繊維の比表面積が大きくなるため吸放湿速度が速くなり好ましい。
口金下の冷却方法は、糸条の内側から外側へ、もしくは糸条の外側から内側へ冷却風を当てる環状チムニーが好ましく、冷却風はマルチフィラメントに直交する方向から、マルチフィラメントに冷却気体を当てて冷却することが望ましい。
口金から吐出されたポリマーの冷却固化点において、急速にポリマーを冷却すると原糸タフネスバラツキが助長され、仮撚加工糸タフネスバラツキを拡大させるばかりか、毛羽も発生して布帛品位を大きく低下させるため、冷却風温度は共重合ポリエステルのTm1を基準に、(Tm1−80)℃以上(Tm1−40)℃以下であることが好ましい。冷却風温度が(Tm1−80)℃以上であると過剰冷却による原糸タフネスバラツキを抑制できる。冷却風温度が(Tm1−40)℃以下であると冷却不足による原糸長手での分子配向バラツキや、単糸切れ・タルミ発生を防ぐことができ、仮撚加工糸としたときの伸縮復元率(CR)バラツキや糸タフネスバラツキ低減が図れるとともに、毛羽抑制でき、良好な布帛品位を得ることができる。冷却風温度は(Tm1−70)℃以上(Tm1−50)℃以下であるとより好ましい。
紡出したマルチフィラメントは公知の紡糸油剤を給油して表面被覆するが、このときの油剤の付着量は、糸に対し、純油分として0.3重量%以上3重量%以下が好ましい。0.3重量%以上とすると、仮撚加工時のポリエステル部分配向未延伸糸とヒーターとの摩擦による「ヒータージャンピング」を抑えることができる。また3重量%以下とすることで、仮撚加工工程での接触ヒーターおよびガイドの汚れを低減することができる。油剤付着量は、糸に対し純油分として0.5重量%以上1.5重量%以下がより好ましい。加えて紡糸油剤成分は、高速仮撚加工に特化した成分を含有することが好ましく、例えば平滑性向上のためのポリエーテル系紡糸油剤等が挙げられる。
引取工程では、紡糸速度は1800m/分以上3000m/分以下が好ましい。1800m/分以上で巻き取ることで、後に続く仮撚加工時に単繊維弛みが発生し織編物とした際に織編物の表面品位が低下することを防ぐことができる。3000m/分以下で紡糸することで、紡糸時の糸切れを抑制することができる。紡糸速度は2000m/分以上2800m/分以下であるとより好ましい。
前記の溶融紡糸により得られた未延伸糸の総繊度および総フィラメント数は、後述する仮撚加工方法にて加工されたポリエステル仮撚加工糸が、衣料用インナーに好適な値であれば特に限定されるものでないが、未延伸糸の単糸繊度(総繊度/総フィラメント数)が0.5dtex以上2.0dtex以下である場合には、特に本発明の効果を発揮することができる。
前記の溶融紡糸により得られた未延伸糸を、次に延伸仮撚加工することにより、ポリエステル仮撚加工糸とすることができる。
延伸仮撚加工に使用する延伸仮撚装置の仮撚具としては、原料となるポリウレタンの硬度が88°以上93°以下のフリクションディスクであることが好ましい。88°以上とするとフリクションディスク摩耗に伴う加工張力バラツキを抑制することができるため、伸縮復元率(CR)バラツキおよび糸タフネスバラツキを低減できる。93°以下とするとフリクションディスク上での走行糸条スリップを抑制することができ、延伸仮撚加工時、安定的に実撚を付与することが可能となるため、伸縮復元率(CR)バラツキを低減することができる。ポリウレタン硬度は89°以上92°以下であるとより好ましい。
仮撚温度すなわち加撚部ヒーター温度は、ポリ(N−ビニルラクタム)融点(以下Tm2と記載)を基準に、(Tm2−30)℃以上(Tm2−10)℃以下であることが好ましい。(Tm2−30)℃以上であるとヒーター温度制御が安定するため捲縮が十分に付与されるため、伸縮復元率(CR)バラツキを低減することができる。(Tm2−10)℃以下であると原糸中に含有されるポリ(N−ビニルラクタム)の延伸仮撚時の溶出等を防ぐことができ、加工張力や捲縮付与が安定的となるばかりか、溶出箇所の単糸切れによる毛羽発生も抑制されるため、優れた品位の布帛を得ることができる。加撚部ヒーター温度は(Tm2−25)℃以上(Tm2−15)℃以下であることがより好ましい。
また、加撚部ヒーターは接触式ヒーターであることが好ましく、ポリエステル未延伸糸とヒーターとの摩擦による「ヒータージャンピング」発生による品質ムラを防止するために、深い溝ヒーターを採用することが好ましい。具体的にはヒーター溝深さは5mm以上であることが好ましい。
フリクションディスク回転速度と加工速度の比であるK値(フリクションディスク回転速度(rpm)/加工速度(m/min))は、2.2以上2.7以下であることが好ましい。2.2以上であると解撚張力を安定域に設定することができ、毛羽抑制を図ることができる。2.7以下であるとフリクションディスク上の糸条スリップを抑えることができ、安定的に捲縮を付与することができる。K値は2.3以上2.6以下であることがより好ましい。
延伸仮撚加工の加撚部における第1ヒーター長と延伸ゾーン長の比(第1ヒーター長(cm)/延伸ゾーン長(cm))は0.5以上0.8以下であることが好ましい。0.5以上とすると、延伸点が不安定なポリエステル未延伸糸において、延伸点をヒーター内に収めることができ、安定的な延伸仮撚加工が達成されるため、伸縮復元率(CR)バラツキや糸タフネスバラツキを低減することができる。0.8以下であると走行糸条とヒーター面との過度な接触を防ぐことができ、ヒータージャンピングによる品質ムラを抑制することができる。第1ヒーター長と延伸ゾーン長の比は0.6以上0.7以下であることがより好ましい。
仮撚加工糸をパッケージに巻き取る前に交絡を付与することが好ましい。交絡数は50個/100m以上200個/100m以下が好ましく、これにより解舒性が向上し、製編織時の工程通過性が良好となるとともに、織編物の品位もより優れたものとなる。
また仮撚加工糸をパッケージに巻き取る前に、加工油剤を追油することが好ましい。
以下実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例中の物性値は以下の方法で測定した。
(1)共重合ポリエステル組成物または繊維中のS成分およびアンチモン原子含有量の定量
(株)リガク製蛍光X線分析装置(ZSX−100e)で各元素を分析した。S成分については、S原子量にS成分の分子量を乗ずることで算出した。
(株)リガク製蛍光X線分析装置(ZSX−100e)で各元素を分析した。S成分については、S原子量にS成分の分子量を乗ずることで算出した。
(2)ポリ(N−ビニルラクタム)の含有量
共重合ポリエステル組成物または繊維をクロロホルム−D3およびヘキサフルオロイソプロピルアルコール−D2の4:1混合溶媒に溶解後、(株)日本電子製NMR分析装置(ECA−400)で分析し、スペクトル中のテトラメチルシランを標準物質とし、この化学シフトを0ppmとした上で化学シフト2.4〜2.8ppmにある最大ピークの面積値から質量比を算出した。
共重合ポリエステル組成物または繊維をクロロホルム−D3およびヘキサフルオロイソプロピルアルコール−D2の4:1混合溶媒に溶解後、(株)日本電子製NMR分析装置(ECA−400)で分析し、スペクトル中のテトラメチルシランを標準物質とし、この化学シフトを0ppmとした上で化学シフト2.4〜2.8ppmにある最大ピークの面積値から質量比を算出した。
(3)ポリエステルに可溶なチタン化合物の含有量
ポリエステルに不溶なチタン化合物を次の前処理をした上で、蛍光X線分析(堀場製作所社製、MESA−500W型)にて分析した。
[前処理方法]共重合ポリエステル組成物または繊維をオルソクロロフェノールに溶解(溶媒100gに対して共重合ポリエステル組成物または繊維5g)し、該ポリエステル溶液と同量のジクロロメタンを加えて溶液の粘性を調整した後、遠心分離器(回転数18000rpm、1時間)で粒子を沈降させる。その後、傾斜法で上澄み液のみを回収し、上澄み液と同量のアセトンを添加することにより共重合ポリエステル組成物を再析出させ、そのあと3G3のガラスフィルター(IWAKI社製)で濾過し、濾上物をさらにアセトンで洗浄した後、室温で12時間真空乾燥してアセトンを除去した。以上の前処理を実施して得られた共重合ポリエステル組成物についてチタン元素の分析を行い、ポリエステルに可溶なチタン化合物の含有量とした。
ポリエステルに不溶なチタン化合物を次の前処理をした上で、蛍光X線分析(堀場製作所社製、MESA−500W型)にて分析した。
[前処理方法]共重合ポリエステル組成物または繊維をオルソクロロフェノールに溶解(溶媒100gに対して共重合ポリエステル組成物または繊維5g)し、該ポリエステル溶液と同量のジクロロメタンを加えて溶液の粘性を調整した後、遠心分離器(回転数18000rpm、1時間)で粒子を沈降させる。その後、傾斜法で上澄み液のみを回収し、上澄み液と同量のアセトンを添加することにより共重合ポリエステル組成物を再析出させ、そのあと3G3のガラスフィルター(IWAKI社製)で濾過し、濾上物をさらにアセトンで洗浄した後、室温で12時間真空乾燥してアセトンを除去した。以上の前処理を実施して得られた共重合ポリエステル組成物についてチタン元素の分析を行い、ポリエステルに可溶なチタン化合物の含有量とした。
(4)共重合ポリエステル組成物または繊維中のジエチレングリコール(DEG)の含有量
共重合ポリエステル組成物または繊維をモノメタノールアミンで加水分解後、1,6−ヘキサンジオール/メタノールで希釈し、テレフタル酸で中和した後、ガスクロマトグラフィーのピーク面積比から求めた。
共重合ポリエステル組成物または繊維をモノメタノールアミンで加水分解後、1,6−ヘキサンジオール/メタノールで希釈し、テレフタル酸で中和した後、ガスクロマトグラフィーのピーク面積比から求めた。
(5)共重合ポリエステル組成物または繊維中のアルカリ金属原子の含有量
原子吸光法により分析した。分析方法は湿式分解法を用いた。硫酸を加え(共重合ポリエステル組成物または繊維0.7〜1.5gに対し硫酸5ml)サンドバス上で共重合ポリエステル組成物を200℃から250℃で溶解して分解させる。さらに過塩素酸1.5mlを加え250℃から300℃で分解させる。試料が透明になるまで300℃から350℃で分解を進め、硫酸が十分リフラックスするまで分解を継続させ、該液を純水で定容し分析した。
原子吸光法により分析した。分析方法は湿式分解法を用いた。硫酸を加え(共重合ポリエステル組成物または繊維0.7〜1.5gに対し硫酸5ml)サンドバス上で共重合ポリエステル組成物を200℃から250℃で溶解して分解させる。さらに過塩素酸1.5mlを加え250℃から300℃で分解させる。試料が透明になるまで300℃から350℃で分解を進め、硫酸が十分リフラックスするまで分解を継続させ、該液を純水で定容し分析した。
(6)共重合ポリエステル組成物または繊維の固有粘度(IV)
試料をオルソクロロフェノールに溶解し、オストワルト粘度計を用いて25℃で測定した。
試料をオルソクロロフェノールに溶解し、オストワルト粘度計を用いて25℃で測定した。
(7)伸縮復元率(CR)
下式から初荷重を計算し、加工糸を10mカセ取りし、90℃水中で20分間フリーにし、24時間風乾する。
初荷重(g)=表示繊度(dtex)/11.1
次に、水中(25℃)で初荷重0.0018cN/dtex(2mgf/d)をかけ、2分間後のカセ長さL1を測定する。次に、水中(25℃)で上記初荷重0.0018cN/dtexを除き、0.09cN/dtex(0.1g/d)相当の荷重に交換し、2分後のカセ長L0を測定する。そして下式によりCR(%)を計算する。
CR(%)=[(L0−L1)/L0]×100(%)
(8)繊維の強度,破断伸度
試料を引張試験機(オリエンテック製“テンシロン”(TENSILON)UCT−100)でJIS L1013(1999) 8.5.1標準時試験に示される定速伸長条件で測定した。この時の掴み間隔は20cm、引張り速度は20cm/分、試験回数10回であった。なお、破断伸度および破断強度はS−S曲線における最大強力を示した点の伸びから求めた。下式により糸タフネスを計算する。
糸タフネス=破断強度(cN/dtex)×(破断伸度(%)0.5)
(9)発色性
染料アイゼンカチロンブルーGLH0.7%owf、助剤に酢酸0.5cc/L、酢酸ソーダ0.15g/Lの染液の中に、試験糸から目付145g/m2で作製した丸編物を投入し、50℃の温度で15分間染色後に、98℃/30分の条件で昇温し、更に20分間撹拌染色を行った。これを乾燥後、ディライト下で基準サンプルと比較して官能評価した。基準試料はカチオン可染性ポリエステル仮撚加工糸84dtex−72フィラメントとした。官能評価は、判定員5名による目視判定にて発色性が「優れている」もしくは「劣っている」と評価するものであり、5名中5名が優れている場合:◎、5名中3名以上4名以下が優れている場合:○、5名中1名以上2名以下が優れている場合:△、5名中0名が優れている場合:×とした。
下式から初荷重を計算し、加工糸を10mカセ取りし、90℃水中で20分間フリーにし、24時間風乾する。
初荷重(g)=表示繊度(dtex)/11.1
次に、水中(25℃)で初荷重0.0018cN/dtex(2mgf/d)をかけ、2分間後のカセ長さL1を測定する。次に、水中(25℃)で上記初荷重0.0018cN/dtexを除き、0.09cN/dtex(0.1g/d)相当の荷重に交換し、2分後のカセ長L0を測定する。そして下式によりCR(%)を計算する。
CR(%)=[(L0−L1)/L0]×100(%)
(8)繊維の強度,破断伸度
試料を引張試験機(オリエンテック製“テンシロン”(TENSILON)UCT−100)でJIS L1013(1999) 8.5.1標準時試験に示される定速伸長条件で測定した。この時の掴み間隔は20cm、引張り速度は20cm/分、試験回数10回であった。なお、破断伸度および破断強度はS−S曲線における最大強力を示した点の伸びから求めた。下式により糸タフネスを計算する。
糸タフネス=破断強度(cN/dtex)×(破断伸度(%)0.5)
(9)発色性
染料アイゼンカチロンブルーGLH0.7%owf、助剤に酢酸0.5cc/L、酢酸ソーダ0.15g/Lの染液の中に、試験糸から目付145g/m2で作製した丸編物を投入し、50℃の温度で15分間染色後に、98℃/30分の条件で昇温し、更に20分間撹拌染色を行った。これを乾燥後、ディライト下で基準サンプルと比較して官能評価した。基準試料はカチオン可染性ポリエステル仮撚加工糸84dtex−72フィラメントとした。官能評価は、判定員5名による目視判定にて発色性が「優れている」もしくは「劣っている」と評価するものであり、5名中5名が優れている場合:◎、5名中3名以上4名以下が優れている場合:○、5名中1名以上2名以下が優れている場合:△、5名中0名が優れている場合:×とした。
(10)吸放湿性
仮撚加工糸または織編物1〜3gを用い、絶乾時の重量と、恒温恒湿器(タバイ製PR−2G)にて30℃×90%RHの雰囲気下中に24時間放置後の重量との重量変化から、次式で求めた。
吸湿率(%)=(吸湿後の重量−絶乾時の重量)/絶乾時の重量×100
吸放湿性評価は、吸湿率が2.0%を超える場合:◎、吸湿率が1.3%を超え2.0%以下である場合:○、吸湿率が0.7%を超え1.3%以下である場合:△、吸湿率が0.7%以下である場合:×とした。
仮撚加工糸または織編物1〜3gを用い、絶乾時の重量と、恒温恒湿器(タバイ製PR−2G)にて30℃×90%RHの雰囲気下中に24時間放置後の重量との重量変化から、次式で求めた。
吸湿率(%)=(吸湿後の重量−絶乾時の重量)/絶乾時の重量×100
吸放湿性評価は、吸湿率が2.0%を超える場合:◎、吸湿率が1.3%を超え2.0%以下である場合:○、吸湿率が0.7%を超え1.3%以下である場合:△、吸湿率が0.7%以下である場合:×とした。
(11)布帛毛羽品位
得られた織編物の仮撚加工糸を解舒し、東レエンジニアリング製フライカウンターに1000m分の糸を通して長手での仮撚加工糸の毛羽を測定した。1サンプルにつきN=5で測定し、平均値を布帛品位毛羽数として、毛羽数が1個以下の場合:◎、毛羽数が1個より多く3個以下の場合:○、毛羽数が3個より多く5個以下の場合:△、毛羽数が5個より多い場合:×とした。
(12)布帛捲縮品位
得られた織編物の検反工程において、判定員5名が限度見本布帛をブランクとして相対的に目視評価し、捲縮過多によるほつれや、捲縮不足もしくは未解撚による虫食い等の欠点の有無を判定した。捲縮品位の判定基準は、限度見本同様に欠点がなきものを合格と判定し、判定員5名中5名が合格判定の場合:◎、判定員5名中3名以上4名以下が合格判定の場合:○、判定員5名中1名以上2名以下が合格判定:△、判定員5名中0名が合格判定の場合:×とした。
得られた織編物の仮撚加工糸を解舒し、東レエンジニアリング製フライカウンターに1000m分の糸を通して長手での仮撚加工糸の毛羽を測定した。1サンプルにつきN=5で測定し、平均値を布帛品位毛羽数として、毛羽数が1個以下の場合:◎、毛羽数が1個より多く3個以下の場合:○、毛羽数が3個より多く5個以下の場合:△、毛羽数が5個より多い場合:×とした。
(12)布帛捲縮品位
得られた織編物の検反工程において、判定員5名が限度見本布帛をブランクとして相対的に目視評価し、捲縮過多によるほつれや、捲縮不足もしくは未解撚による虫食い等の欠点の有無を判定した。捲縮品位の判定基準は、限度見本同様に欠点がなきものを合格と判定し、判定員5名中5名が合格判定の場合:◎、判定員5名中3名以上4名以下が合格判定の場合:○、判定員5名中1名以上2名以下が合格判定:△、判定員5名中0名が合格判定の場合:×とした。
[参考例]
(エステル交換反応)
精留塔を備えた反応槽に、エチレングリコール/テレフタル酸ジメチルのmol比率が2.0となるように、エチレングリコールとテレフタル酸ジメチルを添加し、エステル交換触媒として酢酸コバルト・4水和物を得られる低重合体中に300ppm含有するよう添加した。その後、反応槽の温度を140℃から235℃まで昇温させながら、メタノールを留去させてエステル交換反応を行いビスヒドロキシエチルテレフタレートの低重合体を得た。この時のエステル交換反応率は98%だった。
(エステル交換反応)
精留塔を備えた反応槽に、エチレングリコール/テレフタル酸ジメチルのmol比率が2.0となるように、エチレングリコールとテレフタル酸ジメチルを添加し、エステル交換触媒として酢酸コバルト・4水和物を得られる低重合体中に300ppm含有するよう添加した。その後、反応槽の温度を140℃から235℃まで昇温させながら、メタノールを留去させてエステル交換反応を行いビスヒドロキシエチルテレフタレートの低重合体を得た。この時のエステル交換反応率は98%だった。
[実施例1]
(重合方法)
ビスヒドロキシエチルテレフタレートの低重合体が1750kg存在しているエステル反応槽に、エチレングリコール/テレフタル酸のmol比が1.15のスラリーを3時間かけて連続して供給し、精留塔上段からエステル反応時に生じる水のみを留去させ、反応槽温度を235〜245℃に保ちながら、エステル化反応率が98%となるまで反応を行った。次に、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジエチレングリコールエステルを全ジカルボン酸成分に対して1.3mol%と、酢酸リチウム・2水和物を得られる共重合ポリエステルに対して0.20mol%をエステル反応槽に添加し、約30分間加熱混合した。このうち、1000kgを10μmのフィルターで濾過しながら重合反応槽へ移液した。
(重合方法)
ビスヒドロキシエチルテレフタレートの低重合体が1750kg存在しているエステル反応槽に、エチレングリコール/テレフタル酸のmol比が1.15のスラリーを3時間かけて連続して供給し、精留塔上段からエステル反応時に生じる水のみを留去させ、反応槽温度を235〜245℃に保ちながら、エステル化反応率が98%となるまで反応を行った。次に、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジエチレングリコールエステルを全ジカルボン酸成分に対して1.3mol%と、酢酸リチウム・2水和物を得られる共重合ポリエステルに対して0.20mol%をエステル反応槽に添加し、約30分間加熱混合した。このうち、1000kgを10μmのフィルターで濾過しながら重合反応槽へ移液した。
重合反応槽へ移液された低重合体に、リン酸(85%水溶液)を得られる共重合ポリエステルに対し100ppmになるように添加した。リン酸添加から7分後に、酢酸コバルトを得られる共重合ポリエステルに対して200ppm、ノルマル−テトラブトキシチタンを得られる共重合ポリエステルに対しチタン元素換算で10ppmとなるように添加した。添加終了から3分後に二酸化チタン(二酸化チタンのエチレングリコールスラリー、エチレングリコール中の酸化チタン濃度13.0重量%)を得られる共重合ポリエステルに対し0.20重量%となるように添加した。添加終了後、2分経過した後に、常圧から0.1kPaになるまで45分かけて減圧を行い、235℃から290℃まで昇温後、0.1kPa以下の高真空を維持して、固有粘度(IV)が0.66dl/gになるまで重縮合反応を行った。得られた共重合ポリエステル(ベースポリマー)の融点(Tm1)は242℃、DEG量は3.1重量%であり、品質に優れていた。
(混練方法)
前記共重合ポリエステル(ベースポリマー)と市販のポリビニルピロリドンK−30(PVP、BASF社、重量平均分子量5万、融点(Tm2)150℃)をそれぞれ22:78の割合でブレンドし、二軸押出混練機にて混練した。なお、前記共重合ポリエステルは150℃、真空下で約5時間乾燥し、水分率を80ppmに調湿した。二軸押出混練機のジャケット温度を240℃、混練時の軸回転数を150rpmとして混練し、ダイから吐出後、水冷、ペレタイズ化し、マスターポリマーを作製した。
前記共重合ポリエステル(ベースポリマー)と市販のポリビニルピロリドンK−30(PVP、BASF社、重量平均分子量5万、融点(Tm2)150℃)をそれぞれ22:78の割合でブレンドし、二軸押出混練機にて混練した。なお、前記共重合ポリエステルは150℃、真空下で約5時間乾燥し、水分率を80ppmに調湿した。二軸押出混練機のジャケット温度を240℃、混練時の軸回転数を150rpmとして混練し、ダイから吐出後、水冷、ペレタイズ化し、マスターポリマーを作製した。
(紡糸方法)
このマスターポリマーと前記ベースポリマーとを、それぞれ別のホッパーからマスターポリマーを1に対してベースポリマーを3の割合で仕込み、ジャケット温度を各ブロックにつき255℃、260℃、265℃に設定した一軸押出機、さらにギアポンプ(温度265℃)にて計量、排出し、内蔵された紡糸パック(温度265℃)に溶融ポリマーを導き、#100のホワイトモランダムサンドおよび直径95mmの15μm不織布フィルターで濾過した後、144ホールの円形吐出口金から紡出し、糸条の外側から内側へ180℃の冷却風を当てて糸条を冷却固化し、給油装置により油剤を付与したのち(純油分として1.3%owf)引取速度2000m/分で巻き取り135dtex、72フィラメントの未延伸糸を得た。
このマスターポリマーと前記ベースポリマーとを、それぞれ別のホッパーからマスターポリマーを1に対してベースポリマーを3の割合で仕込み、ジャケット温度を各ブロックにつき255℃、260℃、265℃に設定した一軸押出機、さらにギアポンプ(温度265℃)にて計量、排出し、内蔵された紡糸パック(温度265℃)に溶融ポリマーを導き、#100のホワイトモランダムサンドおよび直径95mmの15μm不織布フィルターで濾過した後、144ホールの円形吐出口金から紡出し、糸条の外側から内側へ180℃の冷却風を当てて糸条を冷却固化し、給油装置により油剤を付与したのち(純油分として1.3%owf)引取速度2000m/分で巻き取り135dtex、72フィラメントの未延伸糸を得た。
(仮撚加工方法)
得られた未延伸糸を用いて、硬度90°ポリウレタン製フリクションディスクを使用した3軸仮撚ディスクツイスターを仮撚具とし、仮撚第1ヒーター温度135℃、K値(フリクションディスク回転数/加工速度)2.4、第1ヒーター長/延伸ゾーン長比0.63として延伸仮撚を行い、総繊度85dtex、72フィラメントのポリエステル仮撚加工糸を得た。
得られた未延伸糸を用いて、硬度90°ポリウレタン製フリクションディスクを使用した3軸仮撚ディスクツイスターを仮撚具とし、仮撚第1ヒーター温度135℃、K値(フリクションディスク回転数/加工速度)2.4、第1ヒーター長/延伸ゾーン長比0.63として延伸仮撚を行い、総繊度85dtex、72フィラメントのポリエステル仮撚加工糸を得た。
このようにして得られたポリエステル仮撚加工糸は、S成分含有量1.3mol%、PVP含有量5.5重量%、DEG含有量2.9重量%、アルカリ金属原子(リチウムLi)含有量1700ppm、伸縮復元率(CR)バラツキを示す変動係数CV%が3.2%、糸タフネスバラツキを示す変動係数CV%が2.4%であり、得られたポリエステル仮撚加工糸を用いて作製した織編物は発色性に優れ、吸放湿性も良好であり、かつ布帛を解舒した仮撚加工糸の毛羽品位は1個/1000mと良好、布帛捲縮品位も優れたものであり、インナーとして優れた品位を有する布帛を得ることができた。
[実施例2〜9および比較例1〜4]
S成分含有量およびPVP含有量を変えた以外は、実施例1と同様の方法でポリエステル仮撚加工糸を製造し、実施例2〜9および比較例1〜4の通り布帛評価を行った。表1に示すとおり、実施例2〜9の評価結果は良好であったものの、比較例1〜4では吸放湿性、発色性、布帛毛羽品位および布帛捲縮品位の少なくとも1つが劣位な評価結果であった。
S成分含有量およびPVP含有量を変えた以外は、実施例1と同様の方法でポリエステル仮撚加工糸を製造し、実施例2〜9および比較例1〜4の通り布帛評価を行った。表1に示すとおり、実施例2〜9の評価結果は良好であったものの、比較例1〜4では吸放湿性、発色性、布帛毛羽品位および布帛捲縮品位の少なくとも1つが劣位な評価結果であった。
[実施例10〜11および比較例5〜8]
紡糸方法を変更した以外は、実施例1と同様の方法でポリエステル仮撚加工糸を製造し、実施例10〜11および比較例5〜8の通り布帛評価を行った。なお、比較例5の糸条冷却プロセスであるUFチムニーとは、口金から吐出された糸条に対して、特定の一方向から冷却風を吹き付ける方式の冷却プロセスである。表2に示すとおり、実施例10、11の評価結果は良好であったものの、比較例5〜8では吸放湿性、発色性、布帛毛羽品位および布帛捲縮品位の少なくとも1つが劣位な評価結果であった。
紡糸方法を変更した以外は、実施例1と同様の方法でポリエステル仮撚加工糸を製造し、実施例10〜11および比較例5〜8の通り布帛評価を行った。なお、比較例5の糸条冷却プロセスであるUFチムニーとは、口金から吐出された糸条に対して、特定の一方向から冷却風を吹き付ける方式の冷却プロセスである。表2に示すとおり、実施例10、11の評価結果は良好であったものの、比較例5〜8では吸放湿性、発色性、布帛毛羽品位および布帛捲縮品位の少なくとも1つが劣位な評価結果であった。
[実施例12〜19]
仮撚方法を変えた以外は、実施例1と同様の方法でポリエステル仮撚加工糸を製造し、実施例12〜19の通り布帛評価を行った。表3に示すとおり、実施例12〜19の評価結果は良好であった。
仮撚方法を変えた以外は、実施例1と同様の方法でポリエステル仮撚加工糸を製造し、実施例12〜19の通り布帛評価を行った。表3に示すとおり、実施例12〜19の評価結果は良好であった。
[比較例9〜17]
仮撚方法を変更した以外は、実施例1と同様の方法でポリエステル仮撚加工糸を製造し、比較例9〜17の通り布帛評価を行った。表4に示すとおり、比較例9〜17の評価結果では吸放湿性、発色性、布帛毛羽品位および布帛捲縮品位の少なくとも1つが劣位な評価結果であった。
仮撚方法を変更した以外は、実施例1と同様の方法でポリエステル仮撚加工糸を製造し、比較例9〜17の通り布帛評価を行った。表4に示すとおり、比較例9〜17の評価結果では吸放湿性、発色性、布帛毛羽品位および布帛捲縮品位の少なくとも1つが劣位な評価結果であった。
Claims (4)
- 主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートからなり、全ジカルボン酸成分に対してスルホン酸塩基を有するイソフタル酸成分を0.5mol%以上2.0mol%以下含有する共重合ポリエステルであって、該共重合ポリエステルに対してポリ(N−ビニルラクタム)を3.0重量%以上15.0重量%以下含有する共重合ポリエステル組成物からなる仮撚加工糸において、伸縮復元率(CR)バラツキを示す変動係数CV%が5%以下、糸タフネスバラツキを示す変動係数CV%が5%以下であるポリエステル仮撚加工糸。
- 共重合ポリエステル組成物がジエチレングリコールを2.0重量%以上4.0重量%以下含有する請求項1記載のポリエステル仮撚加工糸。
- 共重合ポリエステル組成物がアルカリ金属原子を1000ppm以上2500ppm以下含有する請求項1または2記載のポリエステル仮撚加工糸。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリエステル仮撚加工糸からなる織編物。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2018046447A JP2019157305A (ja) | 2018-03-14 | 2018-03-14 | ポリエステル仮撚加工糸 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2018046447A JP2019157305A (ja) | 2018-03-14 | 2018-03-14 | ポリエステル仮撚加工糸 |
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2018
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