駆動伝達装置の実施形態について、図面を参照して説明する。以下の説明では、鉛直方向Vは、駆動伝達装置1の使用状態での鉛直方向、すなわち、駆動伝達装置1をその使用状態での向きに配置した場合の鉛直方向を意味する。駆動伝達装置1は車両に搭載されて使用されるため、鉛直方向Vは、駆動伝達装置1が車両に搭載された状態での鉛直方向、より具体的には、駆動伝達装置1が車両に搭載された状態であって、当該車両が平坦路(水平面に沿う道路)に停止している状態での鉛直方向と一致する。そして、上側V1及び下側V2は、この鉛直方向Vにおける上側及び下側を意味し、最上部及び最下部は、この鉛直方向Vにおける最上部及び最下部を意味する。また、以下の説明における各部材についての方向は、それらが駆動伝達装置1に組み付けられた状態での方向を表す。なお、本明細書では、各部材についての寸法、配置方向、配置位置等に関する用語は、誤差(製造上許容され得る程度の誤差)による差異を有する状態を含む概念である。
本明細書において「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力(トルクと同義)を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が1つ又は2つ以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材、例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等が含まれる。なお、伝動部材として、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置、例えば、摩擦係合装置、噛み合い式係合装置等が含まれていても良い。また、本明細書では、「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。また、本明細書では、2つの部材の配置に関して、「特定方向視で重なる」とは、その視線方向に平行な仮想直線を当該仮想直線に直交する各方向に移動させた場合に、当該仮想直線が2つの部材の双方に交わる領域が少なくとも一部に存在することを指す。
駆動伝達装置1は、車両に搭載される車両用の駆動伝達装置である。図1に示すように、駆動伝達装置1は、駆動力源94に駆動連結される入力部材90と第1車輪W1に駆動連結される第1出力部材91との間で駆動力を伝達する駆動伝達機構2と、駆動伝達機構2を収容するケース3と、を備えている。本実施形態では、第1出力部材91は、第1車輪W1と一体的に回転するように連結されている。駆動力源94は、少なくとも第1車輪W1の駆動力源であり、駆動伝達装置1は、駆動力源94の駆動力(出力トルク)を少なくとも第1車輪W1に伝達させて車両(駆動伝達装置1が搭載された車両)を走行させる。本実施形態では、第1車輪W1が「車輪」に相当し、第1出力部材91が「出力部材」に相当する。
本実施形態では、駆動伝達機構2は、入力部材90と第1出力部材91との間に加えて、入力部材90と第2出力部材92との間でも駆動力を伝達するように構成されている。すなわち、駆動伝達機構2は、入力部材90と、第1出力部材91及び第2出力部材92との間で駆動力を伝達するように構成されている。ここで、第2出力部材92は、第1車輪W1とは異なる車輪(第2車輪W2)に駆動連結される出力部材である。第1車輪W1及び第2車輪W2は、左右一対の車輪である。本実施形態では、第2出力部材92は、第2車輪W2と一体的に回転するように連結されている。このように、本実施形態では、駆動力源94は、第1車輪W1及び第2車輪W2の駆動力源であり、駆動伝達装置1は、駆動力源94の駆動力を第1車輪W1及び第2車輪W2に伝達させて車両を走行させる。
ここで、図1に示すように、駆動伝達機構2の少なくとも一部が配置される軸(仮想軸)を第1軸A(主軸)とする。本実施形態では、駆動伝達機構2の全体(具体的には、後述する減速装置96及び差動歯車装置97)が第1軸A上に配置されている。また、本実施形態では、駆動力源94も、第1軸A上に配置されている。すなわち、本実施形態では、駆動力源94と駆動伝達機構2とが、互いに同軸に配置されている。また、本実施形態では、第1出力部材91の少なくとも一部(少なくとも第1車輪W1側とは反対側の端部)、及び、第2出力部材92の少なくとも一部(少なくとも第2車輪W2側とは反対側の端部)も、第1軸A上に配置されている。
後述するように、この駆動伝達装置1は、最低地上高を適切に確保しやすく構成される。そのため、荷室や客室の下側(車両のフロア下)の空間、すなわち、鉛直方向Vの大きさが比較的限られた空間に駆動伝達装置1を配置する場合であっても、荷室の容量や客室の容量を適切に確保することができる。すなわち、この駆動伝達装置1は、車両の後輪を駆動する後輪駆動ユニットとして好適に用いることができ、この場合、第1車輪W1及び第2車輪W2の一方が車両の左後輪となり、第1車輪W1及び第2車輪W2の他方が車両の右後輪となる。
本実施形態では、駆動力源94は回転電機95である。なお、駆動力源94を、内燃機関等の他の駆動力源とすることもできる。また、車両に複数の駆動力源が設けられ、駆動伝達機構2が、複数の駆動力源のそれぞれに駆動連結される入力部材90と、第1車輪W1(又は、第1車輪W1及び第2車輪W2)との間で駆動力を伝達する構成とすることもできる。ここで、内燃機関は、機関内部における燃料の燃焼により駆動されて動力を取り出す原動機(ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等)である。
図1に示すように、回転電機95は、ケース3に固定されるステータ95aと、ステータ95aに対して回転可能に支持されるロータ95bと、を備えている。本実施形態では、回転電機95は、インナロータ型の回転電機であり、ロータ95bは、ステータ95aよりも径方向の内側であって径方向視でステータ95aと重なる位置に配置されている。ここでの径方向は、回転電機95(回転電機95の軸心)を基準とする径方向であり、本実施形態では、第1軸Aを基準とする径方向Rと一致する。本実施形態では、入力部材90は、回転電機95(ロータ95b)と一体的に回転するように連結されている。
図1に示すように、本実施形態では、駆動伝達機構2は、回転電機95から入力部材90に伝達される駆動力を、第1出力部材91と第2出力部材92とに分配する(言い換えれば、第1車輪W1と第2車輪W2とに分配する)差動歯車装置97を備えている。差動歯車装置97は、傘歯車式の差動歯車機構を用いて構成され、或いは、遊星歯車式の差動歯車機構を用いて構成される。差動歯車装置97が備える2つの分配出力要素(例えば、2つのサイドギヤ)の一方は、第1出力部材91と一体的に回転するように連結(本実施形態では、伝動部材93を介して連結)され、当該2つの分配出力要素の他方は、第2出力部材92と一体的に回転するように連結されている。なお、本実施形態では、駆動伝達機構2は、入力部材90と差動歯車装置97との間の動力伝達経路に減速装置96を備えており、入力部材90の回転は減速装置96により減速されて差動歯車装置97に伝達される。本実施形態では、減速装置96は、2つの遊星歯車機構を用いて構成されている。
図1に示すように、回転電機95及び差動歯車装置97はケース3に収容されている。減速装置96も、ケース3に収容されている。そして、差動歯車装置97は、回転電機95と同軸に配置されている。減速装置96も、回転電機95と同軸に配置されている。すなわち、回転電機95、差動歯車装置97、及び減速装置96は、互いに同軸に(第1軸A上に)配置されている。
図1に示すように、ケース3は、駆動伝達機構2を囲む筒状の周壁部40を備えている。周壁部40は、軸方向Lに延びる筒状(具体的には、断面形状が軸方向Lの位置によって異なる筒状)に形成されている。そして、周壁部40は、第1ケース部31と第2ケース部32とが複数のボルト70を用いて周壁部40の軸方向Lに接合された接合部41を有している。軸方向Lにおける第2ケース部32に対して第1ケース部31が配置される側を軸方向第1側L1とし、軸方向Lにおける軸方向第1側L1とは反対側を軸方向第2側L2とすると、第1ケース部31は、第2ケース部32に対して軸方向第1側L1から接合されている。
周壁部40には、ボルト70の軸部71が配置される孔部60が、周壁部40の周方向Cにおける複数の位置に形成されている。本実施形態では、ボルト70は、軸方向第2側L2から孔部60に挿入された状態で、第1ケース部31と第2ケース部32とを締結固定している。そのため、本実施形態では、図2に示すように、孔部60の底部60a(ボルト70の頭部72が配置される側とは反対側の端部)は、孔部60における軸方向第1側L1の端部により構成される。このように、本実施形態では、ボルト70が軸方向第2側L2から孔部60に挿入されるため、孔部60における接合部41よりも軸方向第1側L1の部分(すなわち、第1ケース部31に形成される部分)は、ボルト70(軸部71)が締結される雌ねじが形成された締結孔とされ、孔部60における接合部41よりも軸方向第2側L2の部分(すなわち、第2ケース部32に形成される部分)は、ボルト70(軸部71)が貫通する貫通孔とされる。
駆動伝達機構2は、第1軸Aが軸方向Lに沿うようにケース3内に収容されている。言い換えれば、周壁部40は、第1ケース部31と第2ケース部32との接合方向である軸方向Lが、駆動伝達機構2の少なくとも一部(本実施形態では、駆動伝達機構2の全体)が配置される第1軸Aに沿う方向となるように形成されている。よって、本実施形態では、軸方向L(周壁部40の軸方向)は、第1軸Aを基準とする軸方向と同じ方向となり、周方向C(周壁部40の周方向)は、第1軸Aを基準とする周方向と同じ方向となる。
本実施形態では、駆動伝達装置1は、軸方向Lが水平面に沿う向きで車両に搭載される。また、本実施形態では、駆動伝達装置1は、軸方向Lが車両の左右方向に沿う向きで車両に搭載される。なお、駆動伝達装置1が、軸方向Lが車両の前後方向に沿う向きで車両に搭載される構成とすることもできる。この場合、差動歯車装置97、第1出力部材91、及び第2出力部材92は、駆動力源94や減速装置96が配置される第1軸A上ではなく、車両の左右方向に沿う軸上に配置される。このように、駆動伝達装置1が、軸方向Lが車両の前後方向に沿う向きで車両に搭載される場合、駆動伝達装置1が、軸方向Lが水平面に対して傾斜する向きで車両に搭載されてもよい。
本実施形態では、ケース3は、第1ケース部31及び第2ケース部32に加えて、第1ケース部31に対して軸方向第1側L1から接合される第3ケース部33を備えている。第1ケース部31は、軸方向第1側L1に底部を有する有底筒状に形成されており、当該底部を覆うように第3ケース部33が配置されている。そして、第1ケース部31(上記底部)を軸方向Lに貫通するように形成された貫通孔に、伝動部材93が挿入され、第3ケース部33を軸方向Lに貫通するように形成された貫通孔に、第1出力部材91が挿入された状態で、第1出力部材91と伝動部材93とが連結されている。また、第2ケース部32を軸方向Lに貫通するように形成された貫通孔に、第2出力部材92が挿入されている。
図1に示すように、駆動伝達装置1は、ケース3の内部に形成されて油を貯留する油貯留部80と、ケース3の内部に配置されるストレーナ10と、を備えている。駆動伝達装置1は、更に、油貯留部80の油をストレーナ10を介して吸引するオイルポンプ4を備えている。すなわち、ストレーナ10は、オイルポンプ4が油貯留部80から吸引する油を濾過する。オイルポンプ4が吐出した油は、ケース3又はケース3に収容された部材に形成された油路を介して、油(例えば、冷却又は潤滑のための油)を必要とする部位に供給される。例えば、オイルポンプ4が吐出した油は、駆動伝達機構2を構成する各ギヤに対して潤滑のために供給されると共に、回転電機95(ステータ95a)に対して冷却のために供給される。オイルポンプ4として、例えば、専用の回転電機により駆動される電動オイルポンプを用いることができる。
図1に示すように、油貯留部80は、ケース3の内部における下側V2の部分(ケース3の底部)に形成されている。具体的には、油貯留部80は、周壁部40における下側V2の部分の内面によって下側V2から区画されている。このように、油貯留部80は、オイルパンを用いずに形成されている。
駆動伝達装置1は、ストレーナ10を保持するブラケット20を備えている。ブラケット20は、ケース3又はケース3に固定された部材に取り付けられる。本実施形態では、ブラケット20は、ケース3の内部に固定された支持部材5(図2参照)に取り付けられている。具体的には、ブラケット20は、支持部材5に取り付けられる取付部21と、ストレーナ10(ここでは、後述する上側ハウジング11)と取付部21とを連結する連結部22とを備えている。連結部22は、軸方向Lに延びる平板状に形成された部分を有し、当該部分における軸方向Lの端部(ここでは、軸方向第2側L2の端部)に、取付部21が連結されている。そして、取付部21は、ボルト(図示せず)により支持部材5に取り付けられている。なお、支持部材5は、ケース3の内部に配置される部材(例えば、入力部材90や、減速装置96の回転要素或いは非回転要素(固定要素)等)を支持するために設けられている。支持部材5は、例えば、第1ケース部31の内周面に接合され、又は、第2ケース部32の内周面に接合される。本実施形態では、支持部材5が「ケース3に固定された部材」に相当する。
図1〜図3に示すように、本実施形態では、ストレーナ10は、互いに接合される上側ハウジング11と下側ハウジング12とを備えている。上側ハウジング11は、下側ハウジング12に対して上側V1から接合されている。図示は省略するが、上側ハウジング11と下側ハウジング12とにより形成されるハウジング内に、油を濾過するスクリーン(濾材)が収容されている。そして、上側ハウジング11と下側ハウジング12との接合部の外周(鉛直方向V視での外周)には、水平面に沿って突出するフランジ部13が全周に亘って形成されている。
下側ハウジング12には、油を吸入するための吸入口14が下側V2に向かって開口するように形成されている。ここで、「下側V2に向かって開口する」とは、吸入口14からストレーナ10の外側へ向かう開口方向が、下側V2へ向かう成分(下向き成分)を有することを意味する。図2に示すように、本実施形態では、吸入口14は、ストレーナ10の外側へ向かう開口方向が、下側V2へ向かう成分と軸方向第2側L2へ向かう成分とを有するように形成されている。また、上側ハウジング11には、油を流出させるための流出口15が形成されており、流出口15には、流出口15とオイルポンプ4の吸入口とを接続する油路の一部を構成する管状部材6が取り付けられている。
以下、本実施形態に係る駆動伝達装置1における、最低地上高を適切に確保しつつオイルポンプ4によるエア吸いの発生を抑制するための構成について説明する。
図1〜図3に示すように、周壁部40の内側(径方向Rの内側)には、周壁部40の内周面40aから突出すると共に軸方向Lに延びる突部50(突条部)が複数形成されている。複数の突部50のそれぞれは、周壁部40における対応するボルト70の軸部71が配置される孔部60を囲む部分に形成されている。なお、突部50は、複数のボルト70の全てに対応して形成されても、複数のボルト70の一部に対応して形成されてもよい。図2に示すように、突部50における接合部41よりも軸方向第1側L1の部分は、第1ケース部31に形成され、突部50における接合部41よりも軸方向第2側L2の部分は、第2ケース部32に形成される。
ここで、図3に示すように、複数の突部50のうちの油貯留部80の最下部82において周壁部40の周方向Cに隣接して配置される一対の突部50を、第1突部51及び第2突部52とする。すなわち、第1突部51及び第2突部52は、周方向Cに隣接して配置される一対の突部50のうちの、最も下側V2に配置される一対の突部50である。なお、油貯留部80の最下部82は、軸方向Lに直交する断面での油貯留部80の最下部82である。図3に示すように、第1突部51及び第2突部52は、油貯留部80の最下部82に対して周方向Cの両側に分かれて配置されている。すなわち、第1突部51は、複数の突部50のうちの最下部82に対して周方向Cの一方側に隣接する突部50であり、第2突部52は、複数の突部50のうちの最下部82に対して周方向Cの他方側に隣接する突部50である。なお、本実施形態では、油貯留部80の最下部82は、鉛直方向V視で第1軸Aと重なる位置或いはその近傍に形成されており、第1突部51及び第2突部52は、鉛直方向V視で第1軸Aと重ならないように、第1軸Aに対して水平方向(軸方向Lに直交する水平方向、図3における左右方向)の両側に分かれて形成されている。以下では、軸方向Lに直交する水平方向を水平方向Dとし、水平方向Dにおける第2突部52に対して第1突部51が配置される側を水平方向第1側D1とし、水平方向Dにおける水平方向第1側D1とは反対側を水平方向第2側D2とする。
図3に示すように、ストレーナ10の吸入口14は、鉛直方向V視で第1突部51と第2突部52との間に配置されている。すなわち、吸入口14は、水平方向Dにおいて、第1突部51と第2突部52との間に配置される。そして、図1及び図2に示すように、吸入口14は、軸方向Lにおいて、第1突部51における軸方向Lの両端部の間に配置されると共に、第2突部52における軸方向Lの両端部の間に配置される。すなわち、吸入口14は、第1突部51及び第2突部52のそれぞれと軸方向Lの同じ位置(領域)に配置される。なお、図2は、ストレーナ10を、第1突部51よりも水平方向第1側D1から見た図であるが、理解を容易にするために、第1突部51よりも水平方向第1側D1に配置される周壁部40等の図示を省略している。本実施形態では、第1突部51及び第2突部52の双方が、鉛直方向V視でストレーナ10と重なる位置に形成されている。具体的には、図3に示すように、第1突部51は、鉛直方向V視でストレーナ10のフランジ部13(水平方向第1側D1のフランジ部13)と重なる位置に形成され、第2突部52は、鉛直方向V視でフランジ部13(水平方向第2側D2のフランジ部13)、上側ハウジング11、及び下側ハウジング12と重なる位置に形成されている。
そして、図2及び図3に示すように、吸入口14の最下部14aは、第1突部51及び第2突部52の少なくとも一方の最上部よりも下側V2に配置されている。すなわち、第1突部51の最上部を第1最上部51aとし、第2突部52の最上部を第2最上部52aとすると、吸入口14の最下部14aは、第1最上部51a及び第2最上部52aの少なくとも一方よりも下側V2に配置される。なお、本実施形態では、第1最上部51a及び第2最上部52aは、接合部41に対して軸方向Lの両側で、接合部41から軸方向Lに離れるに従って上側V1に向かうように形成されている。すなわち、第1最上部51aの高さや第2最上部52aの高さは、軸方向Lの位置に応じて変化する。そのため、吸入口14の最下部14aは、少なくとも当該最下部14aが配置される軸方向Lの位置において、第1突部51及び第2突部52の少なくとも一方の最上部よりも下側V2に配置される。
本実施形態では、第1最上部51aと第2最上部52aとは同じ高さとなる(軸方向Lの同じ位置において同じ高さとなる)ため、吸入口14の最下部14aは、第1最上部51a及び第2最上部52aの双方よりも下側V2に配置される。なお、第1最上部51aと第2最上部52aとが互いに異なる高さとなる場合であっても、吸入口14の最下部14aが、第1最上部51a及び第2最上部52aの双方よりも下側V2に配置される構成とすると好適である。
このように吸入口14の最下部14aを第1突部51及び第2突部52の少なくとも一方の最上部よりも下側V2に配置することで、油貯留部80(油貯留部80の底部81)をストレーナ10の吸入口14の最下部14aに近づけて配置することができる。これにより、油貯留部80を比較的上方に配置することが可能となり、最低地上高を適切に確保しやすくなる。また、これにより、吸入口14を、油貯留部80の最下部82の近傍の位置、すなわち、吸入口14が油面から露出し難い位置に配置することができる。
更には、油貯留部80の最下部82には、周方向Cに隣接する一対の突部50が配置されるため、油を周方向Cの一方側に偏らせるような挙動(本実施形態では、加速又は減速)が車両において生じた場合であっても、油貯留部80の最下部82の近傍に、吸入口14を油面から露出させない程度の量の油を確保して、オイルポンプ4によるエア吸いの発生を抑制することが可能となっている。図3を参照して補足説明すると、油貯留部80の油面が第1油面H1のようになる状況では、第2突部52に対して周方向Cで最下部82側とは反対側(水平方向第2側D2)に存在する油を、第2突部52の上側V1の空間を通して油貯留部80の最下部82に向かって流入させつつ、第1突部51によって、油貯留部80の最下部82から周方向Cで第1突部51の側(水平方向第1側D1)に流出しようとする油の流れを妨げることができる。また、油貯留部80の油面が第2油面H2のようになる状況では、第1突部51に対して周方向Cで最下部82側とは反対側(水平方向第1側D1)に存在する油を、第1突部51の上側V1の空間を通して油貯留部80の最下部82に向かって流入させつつ、第2突部52によって、油貯留部80の最下部82から周方向Cで第2突部52の側(水平方向第2側D2)に流出しようとする油の流れを妨げることができる。この結果、油を周方向Cの一方側に偏らせるような挙動が車両において生じた場合であっても、油貯留部80の最下部82の近傍に、吸入口14を油面から露出させない程度の量の油を確保することが可能となっている。
図3に示すように、本実施形態では、ストレーナ10の鉛直方向V視での外周部に、下側V2を向く段差面16aを有する段差部16が形成されている。なお、面について「下側V2を向く」とは、当該面の外方へ向かう法線方向(法線ベクトル)が、下側V2へ向かう成分(下向き成分)を有することを意味する。ここでは、段差面16aは、水平面に沿うように形成されている。上述したように、ストレーナ10はフランジ部13を備えており、本実施形態では、このフランジ部13によって段差部16が形成されている。すなわち、フランジ部13における下側V2を向く面によって段差面16aが形成されている。
このようにストレーナ10の鉛直方向V視での外周部に段差部16を形成することで、油貯留部80の最下部82から流出しようとする油の流れを、第1突部51や第2突部52だけでなく段差面16aによっても妨げることができる。これにより、オイルポンプ4によるエア吸いの発生を一層抑制することが可能となっている。なお、段差部16は、ストレーナ10の鉛直方向V視での外周部における、少なくとも水平方向Dの両側に形成されると好適である。本実施形態では、ストレーナ10の鉛直方向V視での外周部の全周に亘って、段差部16が形成されている。また、図3に示すように、本実施形態では、水平方向第1側D1の段差面16aは、鉛直方向V視で第1突部51と重なるように形成され、水平方向第2側D2の段差面16aは、鉛直方向V視で第2突部52と重なるように形成されている。
図1及び図2に示すように、本実施形態では、周壁部40の内周面40aにおける油貯留部80の底部81を形成する部分は、接合部41に対して軸方向Lの両側で、接合部41から軸方向Lに離れるに従って上側V1に向かうように形成されている。よって、油貯留部80の最下部82(底部81の中で最も下側V2の部分)も、接合部41に対して軸方向Lの両側で、接合部41から軸方向Lに離れるに従って上側V1に向かうように形成されている。
そして、ストレーナ10の吸入口14は、軸方向Lにおいて接合部41の近傍に配置される。これにより、周壁部40の内周面40aにおける油貯留部80の底部81を形成する部分(以下、「底部形成部分」という。)は、吸入口14に対して軸方向Lの両側で、吸入口14から軸方向Lに離れるに従って上側V1に向かうように形成される。なお、底部形成部分が、吸入口14に対して軸方向Lの両側で吸入口14から軸方向Lに離れるに従って上側V1に向かうように形成されるとは、底部形成部分が、吸入口14に対して軸方向Lの両側のそれぞれに、吸入口14から軸方向Lに離れるに従って上側V1に向かうように形成された部分を少なくとも有することを意味する。具体的には、図1に示すように、本実施形態では、底部形成部分は、吸入口14に対して軸方向第2側L2では、接合部41に対して軸方向第2側L2において、吸入口14から軸方向Lに離れるに従って上側V1に向かうように形成されている。
図2に示すように、本実施形態では、吸入口14の少なくとも一部(ここでは、一部のみ)が、軸方向Lにおける接合部41と孔部60の底部60aとの間に配置されている。具体的には、吸入口14における軸方向第2側L2の部分が、軸方向Lにおける接合部41と孔部60の底部60aとの間に配置されている。なお、第1突部51に形成される孔部60の底部60aと、第2突部52に形成される孔部60の底部60aとは、軸方向Lの互いに同じ位置に配置されている。
〔その他の実施形態〕
次に、駆動伝達装置のその他の実施形態について説明する。
(1)上記の実施形態でのブラケット20に代えて、図4に示すようなブラケット20を備えた構成とすることもできる。図4に示す例においても、上記の実施形態と同様に、ブラケット20は取付部21及び連結部22を備えているが、図4に示す例では、ブラケット20を、油貯留部80の最下部82から流出しようとする油の流れを妨げるために積極的に利用している。具体的には、図4に示すように、ブラケット20は、鉛直方向V視でストレーナ10の外側の位置に延在面22aを有している。この例では、延在面22aは、鉛直方向V視でストレーナ10に対して水平方向第1側D1に配置されている。この延在面22aは、連結部22における軸方向Lに延びる平板状に形成された部分に形成されており、下側V2を向くように形成されている。具体的には、延在面22aは、当該面の外方へ向かう法線方向が、下側V2へ向かう成分と、水平方向第2側D2へ向かう成分(すなわち、水平方向Dで油貯留部80の最下部82側に向かう成分)とを有するように形成されている。これにより、油貯留部80の油面が第1油面H1のようになる状況において、第1突部51だけでなくブラケット20の延在面22aによっても、油貯留部80の最下部82から流出しようとする油の流れを妨げることが可能となっている。この図4に示す例では、延在面22aが「下側を向く面」に相当する。
(2)上記の実施形態では、ストレーナ10のフランジ部13によって段差部16が形成される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、上側ハウジング11の鉛直方向V視での外周部を、下側ハウジング12の鉛直方向V視での外周部よりも大きく形成することによって、ストレーナ10の鉛直方向V視での外周部に、下側V2を向く段差面16aを有する段差部16が形成される構成とすることができる。なお、ストレーナ10の鉛直方向V視での外周部に段差部16が形成されない構成とすることもできる。
(3)上記の実施形態では、第1突部51及び第2突部52の双方が、鉛直方向V視でストレーナ10と重なる位置に形成される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第1突部51及び第2突部52の少なくとも一方が、鉛直方向V視でストレーナ10と重ならない位置に形成される構成とすることもできる。
(4)上記の実施形態では、吸入口14の一部のみが、軸方向Lにおける接合部41と孔部60の底部60aとの間に配置される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、吸入口14の全体が、軸方向Lにおける接合部41と孔部60の底部60aとの間に配置される構成や、吸入口14の全体が、孔部60の底部60aよりも軸方向第1側に配置される構成とすることもできる。なお、吸入口14の少なくとも一部が、接合部41よりも軸方向第2側L2に配置される構成としてもよい。
(5)上記の実施形態では、ボルト70が、軸方向第2側L2から孔部60に挿入された状態で、第1ケース部31と第2ケース部32とを締結固定する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、ボルト70が、軸方向第1側L1から孔部60に挿入された状態で、第1ケース部31と第2ケース部32とを締結固定する構成とすることもできる。この場合、孔部60の底部60aは、孔部60における軸方向第2側L2の端部により構成され、孔部60における接合部41よりも軸方向第1側L1の部分は貫通孔とされ、孔部60における接合部41よりも軸方向第2側L2の部分は締結孔とされる。
(6)上記の実施形態では、差動歯車装置97が回転電機95と同軸に配置される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、差動歯車装置97が、回転電機95とは別軸に配置される構成とすることもできる。また、駆動伝達機構2が差動歯車装置97を備えず、駆動伝達機構2が、回転電機95等の駆動力源94の駆動力を、左右一対の車輪(第1車輪W1及び第2車輪W2)ではなく、1つの車輪のみ(第1車輪W1のみ)に伝達する構成とすることもできる。この場合、駆動伝達機構2と同様の構成の駆動伝達機構を、第2車輪W2に駆動力を伝達するために設けるとよい。
(7)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用すること(その他の実施形態として説明した実施形態同士の組み合わせを含む)も可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
〔上記実施形態の概要〕
以下、上記において説明した駆動伝達装置の概要について説明する。
駆動伝達装置(1)は、駆動力源(94)に駆動連結される入力部材(90)と車輪(W1)に駆動連結される出力部材(91)との間で駆動力を伝達する駆動伝達機構(2)と、前記駆動伝達機構(2)を収容するケース(3)と、前記ケース(3)の内部に形成されて油を貯留する油貯留部(80)と、前記ケース(3)の内部に配置され、オイルポンプ(4)が前記油貯留部(80)から吸引する油を濾過するストレーナ(10)と、を備え、前記ケース(3)は、前記駆動伝達機構(2)を囲む筒状の周壁部(40)を備え、前記周壁部(40)は、第1ケース部(31)と第2ケース部(32)とが複数のボルト(70)を用いて前記周壁部(40)の軸方向(L)に接合された接合部(41)を有し、前記周壁部(40)の内周面(40a)から突出すると共に前記軸方向(L)に延びる突部(50)が複数形成され、複数の前記突部(50)のそれぞれは、前記周壁部(40)における対応する前記ボルト(70)の軸部(71)が配置される孔部(60)を囲む部分に形成され、複数の前記突部(50)のうちの前記油貯留部(80)の最下部(82)において前記周壁部(40)の周方向(C)に隣接して配置される一対の前記突部(50)を第1突部(51)及び第2突部(52)として、前記ストレーナ(10)の吸入口(14)は、鉛直方向(V)視で前記第1突部(51)と前記第2突部(52)との間に配置され、前記吸入口(14)の最下部(14a)が、前記第1突部(51)及び前記第2突部(52)の少なくとも一方の最上部(51a,52a)よりも下側(V2)に配置されている。
この構成によれば、吸入口(14)の最下部(14a)が第1突部(51)及び第2突部(52)の少なくとも一方の最上部(51a,52a)よりも下側(V2)に配置されるため、吸入口(14)の最下部(14a)が第1突部(51)及び第2突部(52)のいずれの最上部(51a,52a)よりも上側(V1)に配置される場合に比べて、油貯留部(80)の底部(81)とストレーナ(10)の吸入口(14)とを近づけて配置することができる。この結果、油貯留部(80)を比較的上方に配置することが可能となり、最低地上高を適切に確保しやすくなる。また、これにより、吸入口(14)を、油貯留部(80)の最下部(82)の近傍の位置、すなわち、吸入口(14)が油面から露出し難い位置に配置することができる。
その上で、上記の構成によれば、油貯留部(80)の最下部(82)には、周方向(C)に隣接する一対の突部(50)が配置される。よって、周方向(C)の一方側を「周方向第1側」とし、周方向(C)の他方側を「周方向第2側」として、油を周方向第1側に偏らせるような挙動が、駆動伝達装置(1)が搭載された車両において生じた場合に、一対の突部(50)に対して周方向第2側に存在する油を、一対の突部(50)のうちの周方向第2側に配置された突部(50)の上側(V1)の空間を通して油貯留部(80)の最下部(82)に向かって流入させつつ、一対の突部(50)のうちの周方向第1側に配置された突部(50)によって、油貯留部(80)の最下部(82)から周方向第1側に流出しようとする油の流れを妨げることができる。よって、上記のような挙動が車両において生じた場合であっても、油貯留部(80)の最下部(82)の近傍に、吸入口(14)を油面から露出させない程度の量の油を確保することが可能となり、この結果、オイルポンプ(4)によるエア吸いの発生を抑制することが可能となる。なお、このようにオイルポンプ(4)によるエア吸いの発生を抑制できる結果、ケース(3)の内部の油量を低減させて、装置全体の軽量化を図ることもできる。
以上のように、上記の構成によれば、比較的簡素な構成で、最低地上高を適切に確保しつつオイルポンプ(4)によるエア吸いの発生を抑制することが可能な駆動伝達装置(1)を実現することができる。
ここで、前記ストレーナ(10)の鉛直方向(V)視での外周部に、下側(V2)を向く段差面(16a)を有する段差部(16)が形成されていると好適である。
この構成によれば、ストレーナ(10)に形成される段差面(16a)によっても、油貯留部(80)の最下部(82)から流出しようとする油の流れを妨げることが可能となる。よって、オイルポンプ(4)によるエア吸いの発生を一層抑制することができる。
また、前記吸入口(14)の少なくとも一部が、前記軸方向(L)における前記接合部(41)と前記孔部(60)の底部(60a)との間に配置されていると好適である。
周壁部(40)におけるボルト(70)の頭部(72)が配置される部分やその近傍では、周壁部(40)の内面形状が、周壁部(40)の外側に確保される頭部(72)の配置スペースやボルト(70)の締結作業スペースによる制約を受けることで、吸入口(14)の最下部(14a)が第1突部(51)及び第2突部(52)の少なくとも一方の最上部(51a,52a)よりも下側(V2)に配置されるようにストレーナ(10)を設けることが困難となる場合がある。
これに対して、上記の構成によれば、吸入口(14)の全体が接合部(41)に対して軸方向(L)における底部(60a)とは反対側(すなわち、ボルト(70)の頭部(72)が配置される側)に配置される場合に比べて、ボルト(70)の頭部(72)から遠ざけてストレーナ(10)を配置することができる。そのため、吸入口(14)の最下部(14a)が第1突部(51)及び第2突部(52)の少なくとも一方の最上部(51a,52a)よりも下側(V2)に配置されるようにストレーナ(10)を設けやすくなる。
また、前記第1突部(51)及び前記第2突部(52)の双方が、鉛直方向(V)視で前記ストレーナ(10)と重なる位置に形成されていると好適である。
この構成によれば、吸入口(14)と第1突部(51)との離間距離と、吸入口(14)と第2突部(52)との離間距離との双方を、短く抑えることが可能となる。よって、油が油貯留部(80)の最下部(82)から周方向(C)のいずれの側に流出しようとする場合であっても、第1突部(51)及び第2突部(52)のうちの油の流れを妨げる方の突部(50)の比較的近くに吸入口(14)を位置させて、油貯留部(80)の最下部(82)の近傍に、吸入口(14)を油面から露出させない程度の量の油を確保することが可能となる。
また、前記ストレーナ(10)を保持するブラケット(20)を更に備え、前記ブラケット(20)は、前記ケース(3)又は前記ケース(3)に固定された部材(5)に取り付けられ、前記ブラケット(20)は、鉛直方向(V)視で前記ストレーナ(10)の外側の位置に、下側(V2)を向く面(22a)を有していると好適である。
この構成によれば、ブラケット(20)の下側(V2)を向く面(22a)によっても、油貯留部(80)の最下部(82)から流出しようとする油の流れを妨げることが可能となる。よって、オイルポンプ(4)によるエア吸いの発生を一層抑制することができる。
また、前記周壁部(40)の内周面(40a)における前記油貯留部(80)の底部(81)を形成する部分が、前記吸入口(14)に対して前記軸方向(L)の両側で、前記吸入口(14)から前記軸方向(L)に離れるに従って上側(V1)に向かうように形成されていると好適である。
この構成によれば、軸方向(L)の両側から油が集まる位置に、吸入口(14)を配置することができるため、オイルポンプ(4)によるエア吸いの発生を一層抑制することができる。
また、前記駆動力源(94)は、回転電機(95)であり、前記車輪(W1)を第1車輪(W1)とすると共に前記出力部材(91)を第1出力部材(91)として、前記駆動伝達機構(2)は、前記回転電機(95)から前記入力部材(90)に伝達される駆動力を、前記第1出力部材(91)と、第2車輪(W2)に駆動連結される第2出力部材(92)とに分配する差動歯車装置(97)を備え、前記回転電機(95)及び前記差動歯車装置(97)が前記ケース(3)に収容され、前記差動歯車装置(97)が、前記回転電機(95)と同軸に配置されていると好適である。
このように回転電機(95)と差動歯車装置(97)とが同軸に配置される構成では、駆動伝達装置(1)が車両のフロア下に配置される場合がある。この点に関し、上述したように、本開示に係る駆動伝達装置(1)は、最低地上高を適切に確保しやすく構成されるため、車両のフロアを構成する部材の形状に大きな影響を与えることなく、最低地上高が適切に確保される形態で駆動伝達装置(1)を車両に搭載することができる。
本開示に係る駆動伝達装置は、上述した各効果のうち、少なくとも1つを奏することができれば良い。