JP2019151863A - 銅製錬ダストからスズを回収する方法とスズ回収物。 - Google Patents
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Abstract
【課題】銅製錬ダストに含まれるスズの浸出を抑えつつ、銅、鉛を選択的に浸出して、該ダストからスズを銅および鉛と分離して回収する湿式処理方法を提供する。【解決手段】銅製錬ダストを、液温20℃以上、および濃度4mol/L以上の硝酸溶液に投入して、該ダストに含まれる銅および鉛を選択的に浸出させる一方、該ダストに含まれるスズを残渣に残し、固液分離して銅および鉛の浸出液と、残渣に含まれる固形分のスズを回収することを特徴とする銅製錬ダストからスズを回収する方法。【選択図】図2
Description
本発明は、銅製錬工程で発生するダストからスズを回収する方法であって、ダストを硝酸溶液中で浸出し、Sn酸化物を残渣として回収する方法とスズ回収物に関する。
近年、銅製錬原料中のスズ含有量が上昇しており、製錬所の各工程でのスズの負荷が増大している。銅製錬工程内に入るスズの一部は排ガス系のダストに移行して濃縮しており、排ガスの処理に伴い、このスズが銅製錬の工程内に繰り返されることによってスズの負荷が増大する一因になっている。
銅製錬ダストに含まれるスズの処理について以下の処理方法が知られている。
特許文献1(特開2014−148725号公報)には、銅製錬ダストについて、粒径1μm以上5μm以下の範囲に設定した乾式分級を行い、分級点以下の微細粒物と分級点を超える粗粒物とに分離し、該粗粒物を繰り返し上記製錬炉に投入する一方、上記微細粒物を水洗して水溶性物と洗浄微細粒物とに分離する処理方法が記載されている。この方法では、分級点以下の微細粒側に亜鉛、鉛、ビスマス、スズ等の不純物元素が多く含まれ、分級点を超える粗粒側には銅粒子が多く含まれるので、微細粒側を水洗処理して、水溶性の硫酸銅を溶解し、残渣には鉛、ビスマス、スズ等が残留するので、これを固液分離する方法である。
特許文献1(特開2014−148725号公報)には、銅製錬ダストについて、粒径1μm以上5μm以下の範囲に設定した乾式分級を行い、分級点以下の微細粒物と分級点を超える粗粒物とに分離し、該粗粒物を繰り返し上記製錬炉に投入する一方、上記微細粒物を水洗して水溶性物と洗浄微細粒物とに分離する処理方法が記載されている。この方法では、分級点以下の微細粒側に亜鉛、鉛、ビスマス、スズ等の不純物元素が多く含まれ、分級点を超える粗粒側には銅粒子が多く含まれるので、微細粒側を水洗処理して、水溶性の硫酸銅を溶解し、残渣には鉛、ビスマス、スズ等が残留するので、これを固液分離する方法である。
特許文献2(特許第3792056号公報)には、鉛、錫、ビスマスを含む鉛滓を40℃〜100℃の範囲で炭酸化して、鉛、錫、ビスマスを含む炭酸化滓を得る工程、該炭酸化滓を酸溶解し、その際に前記炭酸化滓を終点pHが1.5〜2.5になるように追加添加し、鉛を含む溶解液と、錫とビスマスとを含む溶解残渣を生成する工程、鉛を含む溶解液から鉛を含む精鉛滓を回収する工程、錫とビスマスとを含む溶解残渣を酸溶解して錫を含む溶解残渣とビスマスを含む溶解液を生成し、錫を含む溶解残渣を錫原料とする工程、ビスマスを含む溶解液からビスマス原料を回収する工程を含む鉛滓からの鉛、錫、ビスマスの分離方法が記載されている。
特許文献1の処理方法では、ダストに含まれる銅と不純物(鉛、ビスマス、スズ)を分離することが目的であり、残渣に含まれるスズを鉛やビスマスと分離し回収することは行われていない。特許文献2の処理方法は工程が多段で煩雑であり、しかも出発原料は銅製錬ダストを硫酸浸出した鉛滓であって、銅製錬ダストからスズを分離回収する方法ではない。
本発明は、銅製錬ダストからスズを分離回収する方法であり、該ダストに含まれるスズの浸出を抑えつつ、銅、鉛を選択的に浸出して、該ダストからスズを銅および鉛と分離して回収する湿式処理方法を提供する。
本発明は以下の構成からなる銅製錬ダストからスズを回収する方法に関する。
〔1〕銅製錬ダストを、液温20℃以上、および濃度4mol/L以上の硝酸溶液に投入して、該ダストに含まれる銅および鉛を選択的に浸出させる一方、該ダストに含まれるスズを残渣に残し、固液分離して銅および鉛の浸出液と、残渣に含まれる固形分のスズを回収することを特徴とする銅製錬ダストからスズを回収する方法。
〔2〕液温20℃〜70℃および硝酸濃度4〜5mol/Lの浸出条件で、銅製錬ダストに含まれる鉛の70質量%以上および銅の95質量%以上を浸出させた浸出液と、スズ品位が25質量%以上の残渣を回収する上記[1]に記載するスズの回収方法。
〔3〕スズよりも銅と鉛の含有量が多い銅製錬ダストを原料とするスズ回収物であって、スズ含有量が25質量%以上、銅と鉛と亜鉛および鉄の含有量がおのおの15質量%以下であり、スズ製錬原料になるスズ回収物。
〔1〕銅製錬ダストを、液温20℃以上、および濃度4mol/L以上の硝酸溶液に投入して、該ダストに含まれる銅および鉛を選択的に浸出させる一方、該ダストに含まれるスズを残渣に残し、固液分離して銅および鉛の浸出液と、残渣に含まれる固形分のスズを回収することを特徴とする銅製錬ダストからスズを回収する方法。
〔2〕液温20℃〜70℃および硝酸濃度4〜5mol/Lの浸出条件で、銅製錬ダストに含まれる鉛の70質量%以上および銅の95質量%以上を浸出させた浸出液と、スズ品位が25質量%以上の残渣を回収する上記[1]に記載するスズの回収方法。
〔3〕スズよりも銅と鉛の含有量が多い銅製錬ダストを原料とするスズ回収物であって、スズ含有量が25質量%以上、銅と鉛と亜鉛および鉄の含有量がおのおの15質量%以下であり、スズ製錬原料になるスズ回収物。
〔具体的な説明〕
以下、本発明を具体的に説明する。なお、組成等の%は質量%である。
本発明の処理方法は、銅製錬ダストを、液温20℃以上、および濃度4mol/L以上の硝酸溶液に投入して、該ダストに含まれる銅および鉛を選択的に浸出させる一方、該ダストに含まれるスズを残渣に残し、固液分離して銅および鉛の浸出液と、残渣に含まれる固形分のスズを回収することを特徴とする銅製錬ダストからスズを回収する方法である。
以下、本発明を具体的に説明する。なお、組成等の%は質量%である。
本発明の処理方法は、銅製錬ダストを、液温20℃以上、および濃度4mol/L以上の硝酸溶液に投入して、該ダストに含まれる銅および鉛を選択的に浸出させる一方、該ダストに含まれるスズを残渣に残し、固液分離して銅および鉛の浸出液と、残渣に含まれる固形分のスズを回収することを特徴とする銅製錬ダストからスズを回収する方法である。
銅製錬ダストは銅製錬の各工程で発生するダストであり、揮発した亜鉛、鉛、ビスマス、スズなどが冷却されて微粒化して含まれており、また、銅溶体から飛散した銅成分も含まれている。銅製錬ダストに含まれている金属成分の一例を表1に示す。この例では、スズが6.3%、鉛が7.2%、銅が12.0%、ヒ素が3.2%、亜鉛が7.2%、鉄が3.1%、カドミウムが4.1%銅製錬ダストに含まれている。これらの金属成分以外は主に硫黄、酸素がダストに含まれている。銅製錬ダストは集塵機などによって回収される。
回収した銅製錬ダストを、液温20℃以上および濃度4mol/L以上の硝酸溶液に投入し、好ましくは液温20℃〜70℃および濃度4〜5mol/Lの硝酸溶液に投入し、該ダストに含まれるスズを残渣に残して、銅および鉛を選択的に浸出させる。
実施例1に示すように、硝酸溶液の濃度は4mol/L以上が良く、4〜5mol/Lの範囲が好ましい。硝酸濃度が4〜5mol/Lの範囲では、液温20℃で、スズの浸出率を約10%以下に抑制して残渣中のスズ品位を25%以上に維持しつつ、鉛の浸出率を70%以上および銅の浸出率を95%以上に高めることができる。硝酸濃度が1mol/L程度では鉛の浸出率が13%程度であり、硝酸濃度が2〜3mol/Lの範囲では鉛の浸出率が20%〜40%程度である。従って、鉛の浸出率を70%以上および銅の浸出率を95%以上に高めるには、濃度4〜5mol/Lの硝酸溶液が好ましい。また、この硝酸濃度の範囲ではスズの浸出率が約10%以下に抑えられるので、残渣中のスズ品位は約25%〜約33%であり、スズ品位の高い残渣を回収することができる。残渣に含まれるスズは主に酸化スズである。
また、硝酸濃度4〜5mol/Lの範囲において、硝酸溶液の液温を20℃より高くすれば、スズの浸出率を抑制して、銅および鉛の浸出率を95%以上に高めることができる。例えば、実施例2に示すように、硝酸溶液の液温が20℃より高く〜70℃の範囲では、スズの浸出率を15%以下に抑制しつつ、銅および鉛の浸出率を95%〜99%程度に高めることができる。
本発明の処理方法によれば、銅製錬ダストに含まれる銅および鉛を選択的に浸出することができ、一方、該ダスト中のスズの大部分は浸出されずに固形分として残渣に含まれるので、スズが銅および鉛から効率よく分離され、スズ品位が高い残渣を回収することができる。従って、スズよりも銅と鉛の含有量が多い銅製錬ダストを原料として、スズ含有量の多いスズ回収物を得ることができる。例えば、スズの含有量が6%程度であって、鉛含有量7%程度および銅含有量12%程度の銅製錬ダストを原料として、スズ含有量が25質量%以上、銅と鉛と亜鉛および鉄の含有量がおのおの15質量%以下であって、スズ製錬原料として利用可能なスズ回収物を得ることができる。
本発明の処理方法によれば、銅製錬ダストに含まれるスズを分離回収するので、銅製錬工程でのスズの負荷が減少し、スズ負荷による銅製錬工程内のトラブルを解消することができる。さらに銅熔錬工程で繰返すダスト量が減少するので原料処理量を増やすことができるようになる。
本発明の処理方法によれば、銅製錬ダストの塩酸浸出において、銅および鉛と共に、ダストに含まれているヒ素、亜鉛、鉄、カドミウムなども同時に浸出されるので、これらの成分を同時に銅製錬工程内から除去することができる。
以下、本発明の実施例を示す。なお、銅製錬ダストおよび残渣の組成は化学法にて定量した。残渣中の成分をX線回折法にて同定した。
〔実施例1〕
濃度1〜5mol/Lおよび温度20℃の硝酸300mlの容器内に、銅熔錬工程にて発生したダスト10gを加え、攪拌して3時間保持した。その後、浸出液と残渣をそれぞれ回収して分析した。銅製錬ダストの主な成分の組成を表1に示す。各濃度における浸出残渣の組成を表2に示し、浸出率を表3に示す。硝酸の濃度に対する残渣中のスズ品位の変化を図1に示す。硝酸濃度に対するスズ、鉛、銅の浸出率の変化を図2に示す。また、残渣に含まれている成分を銅製錬ダストに含まれる成分に対比して図3のX線回折チャートに示す。
図1に示すように、硝酸濃度が高くなるほど残渣中のスズ濃度が高くなる傾向を示すが、図2に示すように、硝酸濃度が高くなってもスズの浸出率は10%以下である。一方、鉛の浸出率は、硝酸濃度が3mol/L以下では40%以下であるが、硝酸濃度が4mol/Lでは70%であり、5mol/Lで95%以上に達している。従って、硝酸濃度は4〜5mol/Lが適当であり、硝酸濃度が5mol/Lを超える硝酸溶液を使用することは経済的ではない。
このように、濃度4〜5mol/Lの硝酸溶液を用い、液温20℃で浸出すれば、銅製錬ダストに含まれる鉛の70%以上および銅の95%以上を浸出し、一方、ダスト中のスズは浸出率を10%以下に抑制して、スズ品位25%以上の残渣を回収することができる。なお、図3に示すように、残渣に含まれているスズは主に酸化スズである。
濃度1〜5mol/Lおよび温度20℃の硝酸300mlの容器内に、銅熔錬工程にて発生したダスト10gを加え、攪拌して3時間保持した。その後、浸出液と残渣をそれぞれ回収して分析した。銅製錬ダストの主な成分の組成を表1に示す。各濃度における浸出残渣の組成を表2に示し、浸出率を表3に示す。硝酸の濃度に対する残渣中のスズ品位の変化を図1に示す。硝酸濃度に対するスズ、鉛、銅の浸出率の変化を図2に示す。また、残渣に含まれている成分を銅製錬ダストに含まれる成分に対比して図3のX線回折チャートに示す。
図1に示すように、硝酸濃度が高くなるほど残渣中のスズ濃度が高くなる傾向を示すが、図2に示すように、硝酸濃度が高くなってもスズの浸出率は10%以下である。一方、鉛の浸出率は、硝酸濃度が3mol/L以下では40%以下であるが、硝酸濃度が4mol/Lでは70%であり、5mol/Lで95%以上に達している。従って、硝酸濃度は4〜5mol/Lが適当であり、硝酸濃度が5mol/Lを超える硝酸溶液を使用することは経済的ではない。
このように、濃度4〜5mol/Lの硝酸溶液を用い、液温20℃で浸出すれば、銅製錬ダストに含まれる鉛の70%以上および銅の95%以上を浸出し、一方、ダスト中のスズは浸出率を10%以下に抑制して、スズ品位25%以上の残渣を回収することができる。なお、図3に示すように、残渣に含まれているスズは主に酸化スズである。
〔実施例2〕
硝酸濃度を5mol/Lにし、液温を20℃〜70℃に変化した以外は実施例1と同様の条件で銅製錬ダストを硝酸浸出した。液温に対する浸出残渣の組成を表4に示し、浸出率を表5に示した。また、液温に対する残渣中のスズ品位の変化を図4に示し、浸出率の変化を図5に示した。図4に示すように、残渣中のスズ品位は液温に比例して高くなる傾向を有するが、その程度は大きくない。また、図5に示すように、液温が20℃でも銅および鉛の浸出率は約95%以上と十分高く、一方、スズの浸出率は約15%以下である。
これらの結果に示すように、硝酸濃度5mol/Lにおいて、液温20℃〜70℃の範囲でスズの浸出率は15%以下に抑えられ、残渣中のスズ品位は30%以上である。一方、ダスト中の銅および鉛は96%〜99%以上が浸出される。
硝酸濃度を5mol/Lにし、液温を20℃〜70℃に変化した以外は実施例1と同様の条件で銅製錬ダストを硝酸浸出した。液温に対する浸出残渣の組成を表4に示し、浸出率を表5に示した。また、液温に対する残渣中のスズ品位の変化を図4に示し、浸出率の変化を図5に示した。図4に示すように、残渣中のスズ品位は液温に比例して高くなる傾向を有するが、その程度は大きくない。また、図5に示すように、液温が20℃でも銅および鉛の浸出率は約95%以上と十分高く、一方、スズの浸出率は約15%以下である。
これらの結果に示すように、硝酸濃度5mol/Lにおいて、液温20℃〜70℃の範囲でスズの浸出率は15%以下に抑えられ、残渣中のスズ品位は30%以上である。一方、ダスト中の銅および鉛は96%〜99%以上が浸出される。
実施例1および実施例2に示すように、本発明の処理方法によれば、スズよりも銅と鉛の含有量が多い銅製錬ダスト、具体的には、例えば、スズの含有量が6%程度であって、鉛含有量7%程度および銅含有量12%程度の銅製錬ダストを原料として、スズ含有量が25質量%以上、銅と鉛と亜鉛および鉄の含有量がおのおの15質量%以下、ヒ素含有量3%以下、カドミウム含有量が0.5%以下のスズ含有残渣を回収することができる。このスズ含有残渣はスズ品位が高く、銅および鉛の含有量は少なく、また有害物質のヒ素およびカドミウムの含有量が大幅に低いので、銅製錬ダストからスズを回収するのに有利であり、回収したスズ含有残渣をスズ製錬原料として用いることができる利点がある。
Claims (3)
- 銅製錬ダストを、液温20℃以上、および濃度4mol/L以上の硝酸溶液に投入して、該ダストに含まれる銅および鉛を選択的に浸出させる一方、該ダストに含まれるスズを残渣に残し、固液分離して銅および鉛の浸出液と、残渣に含まれる固形分のスズを回収することを特徴とする銅製錬ダストからスズを回収する方法。
- 液温20℃〜70℃および硝酸濃度4〜5mol/Lの浸出条件で、銅製錬ダストに含まれる鉛の70質量%以上および銅の95質量%以上を浸出させた浸出液と、スズ品位が25質量%以上の残渣を回収する請求項1に記載するスズの回収方法。
- スズよりも銅と鉛の含有量が多い銅製錬ダストを原料とするスズ回収物であって、スズ含有量が25質量%以上、銅と鉛と亜鉛および鉄の含有量がおのおの15質量%以下であり、スズ製錬原料になるスズ回収物。
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JP2018035408A JP2019151863A (ja) | 2018-02-28 | 2018-02-28 | 銅製錬ダストからスズを回収する方法とスズ回収物。 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN114381608A (zh) * | 2022-01-17 | 2022-04-22 | 株洲冶炼集团股份有限公司 | 一种粗铜除锡渣的综合回收方法 |
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2018
- 2018-02-28 JP JP2018035408A patent/JP2019151863A/ja active Pending
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