JP2013234356A - 高不純物含有鉛滓を原料とする鉛の乾式製錬方法 - Google Patents

高不純物含有鉛滓を原料とする鉛の乾式製錬方法 Download PDF

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Abstract

【課題】リサイクル原料由来の錫を不純物として大量に含む鉛から錫を効率よく除去し、高品位の鉛を得る。
【解決手段】本発明は、錫を含有する粗鉛を、錫が溶融する温度で溶解し、ソーダ処理を行い、形成される溶融錫ソーダ塩を除去する第1のソーダ処理(S2)と、前記第1のソーダ処理にて得られる粗鉛を、第1のソーダ処理の温度よりも低い温度でソーダ処理する第2のソーダ処理(S3)とを有し、前記第1のソーダ処理では、溶融錫ソーダ塩層が鉛溶湯上部に形成され、この溶湯上部を不純物として分離することを特徴とする鉛製錬におけるソーダ処理方法である。
【選択図】図1

Description

本発明は、高不純物含有鉛滓を原料とする鉛の乾式製錬方法に関し、詳細には不純物として錫を多く含む原料から鉛を製錬するプロセスにおいて効率よく不純物を除去する方法に関する。
鉛の製錬では原料を酸化し、これを還元融解して粗鉛とした後に乾式または湿式で不純物を除いていくが一般的には乾式法により、銅、亜鉛、錫、銀が除かれる(非特許文献1)。
銅製錬工程やリサイクル工場から排出される鉛滓を原料として鉛を乾式製錬する場合、例えば図2に示したフローに従い、原料を炭酸化した後に溶融還元し(S11)、ハリス炉でのソーダ処理(S12)して不純物を除く。しかる後にアノードに鋳造されて最終的には電解精製(S13)により高純度鉛が得られる。
元々鉛滓は不純物として錫、ビスマス、アンチモンを含有しており、中でも比較的多く含まれる錫はハリス炉でソーダ処理により錫のソーダ塩を形成させる。
ソーダ処理とは、およそ500℃程度に加熱して溶融した粗鉛に、例えば苛性ソーダを添加し、さらに場合により追加の苛性ソーダおよび硝酸ソーダを添加して、錫をソーダ塩(Na2SnO3)化して溶湯表面に凝集塊を形成する処理を指す。そして、錫を回収して、粗鉛中の錫濃度を下げるためには、錫のソーダ塩が固形化した後にこれを掬い取るという一連の作業を繰り返す。
掬い取られた固形化した錫のソーダ塩は一般に錫スカムと呼ばれ、錫の製錬原料として利用される。
すなわち、固形化した錫のソーダ塩を分離−回収することで錫の製錬原料が得られ、この錫製錬原料を浸出処理し(S14)、得られた浸出後液を電解精製(S15)して、錫が回収される。
なお、図示はしていないが、ビスマスとアンチモンは電解精製時にスライムとして回収される。
渡辺元雄 「鉛精錬」朝倉書店 1960
しかしながら粗鉛中の錫含有量が多い場合は、処理に必要な酸化剤が多くなる一方で、ハリス炉の大きさなどから一度に添加できる量に限りがあることから、ハリス炉を用いたソーダ処理を数十回に分けて行う必要があり、効率的ではない。
また、鉛の高純度での回収という観点からは錫のソーダ塩を可能な限り多く取り除くことになるが、鉛溶湯表面から錫のソーダ塩を掬い取る作業は手間がかかり、回数が多くなると人手がかかる上に、鉛なども一緒に掬ってしまうことになり、結果として回収率が上がらない。この混入した鉛などは錫製錬における浸出工程で浸出残渣として回収され、鉛製錬工程に戻すことにより鉛回収に供することは可能であるが、繰り返し量が多いと鉛製錬の歩留まりが悪くなる傾向にあり、望ましくない。
そこで、本発明は、錫が多く含まれる鉛を製錬するに際して錫を簡便に効率よく除いて、鉛の回収率を上げて、かつ、高純度での鉛の回収を実現することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、錫含有量の高い鉛原料から鉛を製錬する場合、従来の低温での酸化処理に先立って、高温で粗鉛を溶解して炭酸ナトリウム(ソーダ灰)と空気により酸化を行うことで大量の錫をソーダ塩として短時間で除去出来ることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)錫を含有する粗鉛を、錫が溶融する温度で溶解し、ソーダ処理を行い、形成される溶融錫ソーダ塩を除去する第1のソーダ処理と、
前記第1のソーダ処理にて得られる粗鉛を、第1のソーダ処理の温度よりも低い温度でソーダ処理する第2のソーダ処理とを有し、
前記第1のソーダ処理では、溶融錫ソーダ塩層が鉛溶湯上部に形成され、この溶湯上部を不純物として分離することを特徴とする鉛製錬におけるソーダ処理方法。
(2)前記第1のソーダ処理は、800〜1200℃にて行われ、第2のソーダ処理は、400〜600℃で行われる、(1)記載の方法。
(3)前記第1のソーダ処理にて処理される粗鉛は炭酸鉛、硫酸鉛、酸化鉛のうち一つ以上からなる鉛滓を溶融還元して製造され、錫を不純物として5〜40wt%含有する、(1)または(2)に記載の方法。
(4)前記第1のソーダ処理では、酸化剤としてソーダ灰と、空気、酸素または錫より酸素親和性の低い元素の酸化物とが用いられる、(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(5)前記第1のソーダ処理は傾転炉を用いて行われ、前記溶融錫ソーダ塩が傾倒炉の傾転により分離される、(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
本発明によれば、効率よく粗鉛から大量に含まれる錫成分を溶融錫ソーダ塩として簡便に効率よく分離することができる
本発明による鉛の製錬工程図である。 従来法による鉛の製錬工程図である。
本発明は、図1に示すように、高温で粗鉛のソーダ処理である第1のソーダ処理(S2)を行い、続いて従来の鉛製錬におけるソーダ処理に相当する第2のソーダ処理(S3)を行うことを特徴としている。このように2段階のソーダ処理を行うことにより、第1のソーダ処理で大部分の錫を除いて下工程である第2のソーダ処理、すなわちハリス炉によるソーダ処理の負荷を減らすと共に、溶融錫ソーダ塩を溶湯のまま分離することで鉛含有量の低い錫原料を提供することができるようになる。
本発明の方法は乾式鉛製錬全般に対して適用することができるが、不純物として錫を多く含む原料由来の鉛、例えば銅製錬工程から排出される鉛滓やリサイクル工場から排出される鉛滓を製錬する時に特に効果が高い。
特に本発明に好適に用いられる粗鉛は、前述のように排出される、炭酸鉛、硫酸鉛、酸化鉛のうち一つ以上からなる鉛滓を電気炉にて溶融還元(S1)して製造されるものであり、錫を不純物として5〜40wt%含有するものが挙げられる。なお、この電気炉からは、粗鉛の他にスラグ、ダストも排出される。
続いて、ステップ(S1)で得られる粗鉛(Pb)メタルは、高温ソーダ炉に送られ、第1のソーダ処理がなされる(S2)。
このステップ(S2)の高温ソーダ炉における第1のソーダ処理として、錫が溶融し、溶湯となる温度、例えば800℃以上、好ましくは1000℃以上、および上限は特に制限されないが、加熱効率の観点から、好ましくは1200℃以下といった、従来のソーダ処理と比較して高温で処理することで、大部分の錫を除去するようにしている。この温度で処理することによって、従来において錫スカムとして取り出していた錫のソーダ塩も溶融した状態となっている。
また、高温でのソーダ処理は、酸化剤として、これまでのような低温でのソーダ処理では使用するのが困難であった、ソーダ灰(炭酸ナトリウム)と空気とを用いることを可能としている。空気の代わりに酸素を用いても高い効果が得られる。さらに酸化鉛(II)や酸化アンチモン(III)のように錫より酸素親和性が低い酸化物でも同様の効果が得られる。特に、ソーダ灰および空気の組合せは、従来の苛性ソーダ、硝酸ソーダに比べて安価に入手が可能な材料であり、コストの面からも有利である。
ここで、従来の鉛の製錬では錫成分を分離するため、通常400〜600℃でソーダ処理が行われていた(図2の(S12))。このソーダ処理では、溶融状態の粗鉛中の錫は苛性ソーダにより溶融錫ソーダ塩として鉛表面に凝集し、場合によっては硝酸ソーダも添加し、これが固化して塊状になる。したがって、錫の除去は、この塊状になったものを掬い取る作業を繰り返すことにより行ってきた。しかしながら、錫含有量が高い粗鉛を処理する場合は、この作業を何度も繰り返す必要がある。これは、使用可能な苛性ソーダ量は炉の容積や混合−攪拌能力に応じて制限があるため、一度に大量に苛性ソーダや硝酸ソーダを投入できないためである。
また、酸化剤として空気を用いることに関しては、従来においても500〜600℃でのソーダ処理にて、空気による酸化処理(エアレーション)は行われることがあるが、酸化効率の改善は、本発明に比べて大幅に低いことが本発明者等により知見されている。
また、ステップ(S2)の第1のソーダ処理では、高温で処理することで、溶融錫ソーダ塩は固化することなく炉内で溶融状態のまま鉛溶湯上部に形成されるが、傾転炉を用いることで溶湯としてこれを排出することが可能となる。これにより、錫のソーダ塩の掬い取り作業のような錫の除去に伴って鉛も一緒に除く作業が必要なくなり、さらに溶融−酸化(ソーダ処理)−錫成分分離の一連の操作は迅速に進行し作業性も向上する。さらに、後段における従来のハリス炉でのソーダ処理に相当する、第2のソーダ処理での操業負荷を低減させることも可能になる。
なお、除去される錫のソーダ塩には鉛が混入しにくくなり、錫純度の高い溶融錫ソーダ塩を得ることが出来る。
続いて、ステップ(S2)で大部分の錫分を除いた粗鉛に対して、第2のソーダ処理を行う(S3)。
ステップ(S3)では、ステップ(S2)の第1のソーダ処理の温度よりも低い温度、例えば400〜600℃で行うソーダ処理を行う。このステップ(S3)の第2のソーダ処理としては、例えば前述の従来のハリス炉におけるソーダ処理と同様の処理が挙げられる。添加する酸化剤としては、苛性ソーダ、硝酸ソーダなどが用いられる。なお、ステップ(S3)では、残存する錫の他に、Cu等の不純物も除去される。
こうして、ハリス炉において、さらに錫が除かれた鉛は、アノードに鋳造され、通常の鉛の電解条件における電解精製(S4)がなされる。ステップ(S4)では、わずかに残存する不純物が除去され、純度の高い鉛が得られる。
なお、ステップ(S2)の高温ソーダ炉から分離除去された錫のソーダ塩は固化した後に錫原料として利用される。なお、ステップ(S3)のハリス炉から分離除去された錫のソーダ塩も固化した状態で得られ、錫原料として利用される。
図1において、錫のソーダ塩は、浸出処理(S5)にて錫を含む浸出後液を得た後、この浸出後液を通常の錫電解の条件で電解精製(S6)することにより、錫を回収することができる。なお、錫のソーダ塩からなる錫原料では、上述したように、錫以外の不純物、例えば鉛の混入が抑えられていて、錫純度が高くなっている。この錫のソーダ塩は不純物が少ないため錫製錬における浸出工程(S5)で残渣の発生量が少ない。
このように、本発明によれば、鉛を高純度で高い回収率にて回収することができる上に、錫製錬に際して、浸出時に発生する残渣が少なく、操業負荷をより小さくできる原料を提供することも可能にする。
さらに、従来法で得られる錫のソーダ塩(錫スカム)のように、浸出処理前に破砕する必要がないため、非常に取り扱い容易な錫原料を得ることができる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特に明記しない限り、「%」は「質量%」を表す。
(実施例)
粗鉛556g(組成は表1)を磁性るつぼに量りとり、1100℃まで昇温した。ソーダ灰2251gを添加し空気を毎分1.0L供給した。1時間酸化反応を継続させ、表層に生成した錫のソーダ塩を分離した。十分冷却した後、鉛分と錫のソーダ塩分とを分析した。鉛は硝酸に溶解してICP−AESで、錫のソーダ塩は過酸化ナトリウムと炭酸ナトリウムで溶融処理した後ICP−AESで成分分析した。結果を表2に示す。
Figure 2013234356
Figure 2013234356
(参考例)
粗鉛2750T(組成は表3)をハリス炉によるソーダ処理のみにより処理していた実操業の一事例(従来の鉛製錬方法、図2)における原料の粗鉛、ソーダ処理後の鉛分と錫のソーダ塩分とを実施例と同様に分析し、その結果を表3と表4に示す。
Figure 2013234356
Figure 2013234356
参考例(従来法)と本発明のそれぞれのソーダ処理とにより得られる鉛と錫のソーダ塩における鉛の濃縮率と錫原料としての鉛の含有比を表5に示す。
本発明の態様である実施例での結果の方が錫原料となる錫のソーダ塩に分配する鉛品位は低く、一方でソーダ処理後の粗鉛には鉛が濃縮されていることが明らかである。
このように、実施例では、従来法と比べて、原料の粗鉛における錫の含有量が相当多いにもかかわらず、高温のソーダ処理を行うことにより、従来法のハリス炉でのソーダ処理での結果以上に、ソーダ塩中の鉛の含有量を低くすることができた。
以上のことから、実施例の高温ソーダ処理は、錫の含有量が多い粗鉛から、簡便に効率よく錫を除去することができる。この高温ソーダ処理後の粗鉛を、さらにハリス炉でのソーダ処理に供すれば、さらに鉛の品位を上げることが期待される。これにより、ハリス炉での操業負荷を有意に低減させることができる。
仮に、ハリス炉にて表1の組成ように多量の錫を含む粗鉛をソーダ処理する場合、錫を酸化するための酸化剤を一度に入れることができないため、何度も添加し、その都度錫ソーダ塩を掬い取る作業が必要となる。また、その回数も錫の量が多くなるにつれ、多くする必要があり、処理に要する時間が長くなる。
これは、一日の粗鉛の処理量に影響を与えるものであり、例えば実施例の高温ソーダ処理、ハリス炉での通常のソーダ処理にて粗鉛から錫を除去し、鉛純度を上げようとすると20トン/日の処理量が期待されるのに対して、ハリス炉におけるソーダ処理のみで処理しようとすると、5.5トン/日の処理量となる。
Figure 2013234356
なお、本発明は、以下の態様も包含する。
(1)粗鉛を1000℃〜1200℃で溶解したのち酸化剤で錫を酸化し、溶湯上部に第二層(溶融錫ソーダ塩層)を形成させ、上層を不純物として分離−回収する鉛製錬におけるソーダ処理方法。
(2)前記粗鉛は炭酸鉛、硫酸鉛、酸化鉛のうち一つ以上からなる鉛滓を溶融還元して製造され、錫を不純物として5〜40wt%含有する、(1)に記載の方法。
(3)前記酸化剤はソーダ灰と空気、酸素もしくは酸化鉛や酸化アンチモン等の錫より酸素親和性の低い元素の酸化物である、(1)に記載の方法。
(4)前記ソーダ処理は鉛溶湯上部に錫酸化物からなる第2層(溶融塩層)を形成させる、(1)に記載の方法。
(5)前記ソーダ処理は傾転炉を用いて行われ、前記第2層は炉の傾転により分離され、鉛等の不純物の混入が少なく、浸出時に発生する残渣が少ない錫製錬原料を提供する、(1)〜(4)に記載のいずれかの方法。

Claims (5)

  1. 錫を含有する粗鉛を、錫が溶融する温度で溶解し、ソーダ処理を行い、形成される溶融錫ソーダ塩を除去する第1のソーダ処理と、
    前記第1のソーダ処理にて得られる粗鉛を、第1のソーダ処理の温度よりも低い温度でソーダ処理する第2のソーダ処理とを有し、
    前記第1のソーダ処理では、溶融錫ソーダ塩層が鉛溶湯上部に形成され、この溶湯上部を不純物として分離することを特徴とする鉛製錬におけるソーダ処理方法。
  2. 前記第1のソーダ処理は、800〜1200℃にて行われ、第2のソーダ処理は、400〜600℃で行われる、請求項1記載の方法。
  3. 前記第1のソーダ処理にて処理される粗鉛は炭酸鉛、硫酸鉛、酸化鉛のうち一つ以上からなる鉛滓を溶融還元して製造され、錫を不純物として5〜40wt%含有する、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記第1のソーダ処理では、酸化剤としてソーダ灰と、空気、酸素または錫より酸素親和性の低い元素の酸化物とが用いられる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記第1のソーダ処理は傾転炉を用いて行われ、前記溶融錫ソーダ塩が傾倒炉の傾転により分離される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
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