JP6317197B2 - 過レニウム酸水溶液の製造方法、過レニウム酸カリウムの製造方法、過レニウム酸アンモニウムの製造方法及びレニウムメタルの製造方法 - Google Patents

過レニウム酸水溶液の製造方法、過レニウム酸カリウムの製造方法、過レニウム酸アンモニウムの製造方法及びレニウムメタルの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、硫化レニウムの製造方法、過レニウム酸水溶液の製造方法、過レニウム酸カリウムの製造方法、過レニウム酸アンモニウムの製造方法及びレニウムメタルの製造方法に関し、特に、本発明は、レニウムを含む酸性溶液(例えば銅等の非鉄金属の製錬工程から発生する廃酸)から硫化レニウムを生成させ、硫化レニウムから過レニウム酸水溶液を経て過レニウム酸アンモニウム及びレニウムメタルを製造する方法に関する。
レニウムは、モリブデン原鉱の輝水鉛鉱や銅鉱石に僅かに随伴する希少金属であるが、触媒の添加元素、熱電対や超耐熱合金用添加元素、高真空電子管材料等に用いられる重要な金属である。
レニウムを工業的に回収するための有望な原料の一つとして廃酸がある。廃酸は、銅等の非鉄金属の製錬工程から発生する亜硫酸ガスを硫酸の製造に利用する場合に水洗浄がなされるが、その際に生成する硫酸を定期的に一部抜き出したものである。原鉱中に含まれていたレニウムがその他の不純物と共に廃酸中に混入している。その他不純物としては、As、Fe、Cu等が代表的である。
廃酸などから生成可能な硫化レニウムを用いてレニウムを回収する方法も種々に検討されてきている。例えば、特開昭62−148327号公報(特許文献1)には、硫化レニウムから過レニウム酸カリウムを製造する方法が記載されている。当該文献では、硫化レニウムを過酸化水素等の酸化剤を使用して酸化浸出し、浸出後液中に硫化水素を添加することにより、後液中に純度の高い過レニウム酸を得た後、水酸化カリウムを添加することで過レニウム酸カリウムを製造している。過レニウム酸カリウムからは、特公平2−20575号公報(特許文献2)に記載のように、陽イオン交換樹脂と接触後にアンモニア水で中和して濾過する方法等によって、過レニウム酸アンモニウムを製造することができる。過レニウム酸アンモニウムは有価物として商取引可能であり、付加価値の高い形態である。
また、特開昭47−21323号公報(特許文献3)には、レニウムを含有するモリブデン原鉱石を焙焼し、水で抽出し、この抽出液に塩化カリウムを加え、この際得られる沈澱を濃硫酸に解かし、硫酸濃度を1〜3モルに調節したのち、高分子量有機第三アミン濃度0.02モル以上で含む有機溶媒を用いて抽出し、次にこの抽出液をカセイカリ水溶液で逆抽出し、この抽出液を濃縮還元処理することを特徴とするレニウムの製造方法が記載されている。
特許文献3には、レニウムは硫化レニウムの形態で含有されており、焙焼によって硫化レニウムは酸化されて酸化レニウム(Re27)に変わり、150℃以上の温度で気化し、煙ジン中に蓄積されることが記載されている。煙ジンを水で抽出すると酸化レニウム(Re27)が水溶液中に吸収されること、及び、当該水溶液は多量の二酸化イオウや三酸化イオウを含むため強い酸性を示すことも記載されている。
特開昭62−148327号公報 特公平2−20575号公報 特開昭47−21323号公報
特許文献1のように湿式プロセスにより硫化レニウムから過レニウム酸を製造する方法は知られているが、乾式プロセスにより硫化レニウムから過レニウム酸を製造する方法が提供されることも望ましい。この点、特許文献3には焙焼により硫化レニウムが酸化されて酸化レニウムに変わることや、酸化レニウムは150℃以上の温度で気化し、煙ジン中に蓄積されることが記載されているものの、不純物の除去や焙焼でのレニウムの回収率の向上の面に関しては未だ改善の余地が残されている。
本発明はレニウムを含む酸性溶液から、焙焼におけるレニウムの揮発率向上に適した形態の不純物の少ない硫化レニウムを製造でき、この硫化レニウムから乾式プロセスを用いて高純度の過レニウム酸を製造可能な方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、レニウムを含む酸性溶液から硫化レニウムを生成する際に、亜鉛及び/又は塩素分を所定濃度以下に低減させた硫化レニウムを製造することによって、これを焙焼して酸化レニウムを得、これを揮発させてレニウムを回収する際に、レニウムが揮発しやすくなり、レニウム回収率が高まることを見いだした。
本発明は上記知見に基づいて完成したものであり、一側面において、レニウムを含む酸性溶液を陰イオン交換樹脂に通液して、レニウムを陰イオン交換樹脂に吸着させる工程と、レニウムが吸着した陰イオン交換樹脂に亜鉛を含む塩酸性溶液を溶離液として通液してレニウムを陰イオン交換樹脂から溶離させる工程と、溶離後液中に含まれるレニウムを硫化処理し、亜鉛濃度が0.5質量%以下の硫化レニウムを得る工程とを含む硫化レニウムの製造方法である。
本発明は別の一側面において、レニウムを含む酸性溶液を陰イオン交換樹脂に通液して、レニウムを陰イオン交換樹脂に吸着させる工程と、レニウムが吸着した陰イオン交換樹脂に溶離液として金属塩化物を含む塩酸性溶液を通液してレニウムを陰イオン交換樹脂から溶離させる工程と、溶離後液中に含まれるレニウムを硫化処理し、塩素濃度が3.0質量%以下の硫化レニウムを得る工程とを含む硫化レニウムの製造方法である。
本発明に係る硫化レニウムの製造方法の一実施形態においては、硫化レニウムを得る工程は、溶離後液中に含まれるレニウムを硫化処理することにより得られた硫化レニウムを更に洗浄処理することを含む。
本発明は更に別の一側面において、上記硫化レニウムに対して酸素含有気体の存在下で焙焼を行い、ガス化した酸化レニウムを回収する工程と、ガス化した酸化レニウムに随伴する硫黄酸化物をガス状態に保ちながら酸化レニウムを冷却して固化し、次いで固気分離することにより酸化レニウムの純度を高める工程と、固化した酸化レニウムを水中に溶解させるか、又は、固化した酸化レニウムを加熱してガス化した後に水中に溶解させることで、過レニウム酸水溶液を得る工程とを含む過レニウム酸水溶液の製造方法である。
本発明に係る過レニウム酸水溶液の製造方法の一実施形態においては、焙焼が200〜600℃の炉内雰囲気温度で行われる。
本発明は更に別の一側面において、硫化レニウムに対して酸素含有気体の存在下で第一の焙焼を行い、酸化レニウム及び硫黄酸化物を生成させ、硫黄酸化物はガス化して排出し、酸化レニウムを焙焼残渣として得る工程と、焙焼残渣に対して酸素含有気体の存在下で第二の焙焼を行い、ガス化した酸化レニウムを回収する工程と、ガス化した酸化レニウムを冷却して固化する工程、又は、ガス化した酸化レニウムを水冷しながら水中に溶解させることで過レニウム酸水溶液を得る工程と、酸化レニウムを固化した場合、固化した酸化レニウムを水中に溶解させるか、又は、固化した酸化レニウムを加熱してガス化した後に水中に溶解させることで、過レニウム酸水溶液を得る工程とを含む過レニウム酸水溶液の製造方法である。
本発明に係る過レニウム酸水溶液の製造方法の一実施形態においては、焙焼残渣中のS品位が0.5〜20質量%の範囲にあるときに第一の焙焼を終了する。
本発明に係る過レニウム酸水溶液の製造方法の別の一実施形態においては、第一の焙焼が100〜350℃の炉内雰囲気温度で行われる。
本発明は更に別の一側面において、上記過レニウム酸水溶液の製造方法によって得られた過レニウム酸水溶液を原料として、過レニウム酸カリウムを製造する方法である。
本発明は更に別の一側面において、上記過レニウム酸水溶液の製造方法によって得られた過レニウム酸水溶液を原料として、過レニウム酸アンモニウムを製造する方法である。
本発明は更に別の一側面において、上記過レニウム酸水溶液の製造方法によって得られた過レニウム酸水溶液を原料として、レニウムメタルを製造する方法である。
本発明によれば、レニウムを含む酸性溶液から、レニウムの回収率向上に適した形態の不純物の少ない硫化レニウムを製造できる。
実施例における焙焼に使用した焙焼設備の模式図である。
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態に係る過レニウム酸水溶液の製造方法の一実施形態においては、
1)レニウムを含む酸性溶液を陰イオン交換樹脂に通液して、レニウムを陰イオン交換樹脂に吸着させる工程と、
2)レニウムが吸着した陰イオン交換樹脂に溶離液を通液してレニウムを陰イオン交換樹脂から溶離させる工程と、
3)溶離後液中に含まれるレニウムを硫化処理して硫化レニウムを得る工程と、
4)硫化レニウムに対して酸素含有気体の存在下で焙焼を行い、ガス化した酸化レニウムを回収する工程と、
5)ガス化した酸化レニウムに随伴する硫黄酸化物をガス状態に保ちながら酸化レニウムを冷却して固化し、次いで固気分離することにより酸化レニウムの純度を高める工程と、
6)固化した酸化レニウムを水中に溶解させるか、又は、固化した酸化レニウムを加熱してガス化した後に水中に溶解させることで、過レニウム酸水溶液を得る工程と、
を含む。
(レニウムを含む酸性溶液)
本発明が処理対象とする溶液はレニウムを含む酸性溶液である。レニウムを含む酸性溶液としては、レニウムの他に、ビスマス、ヒ素、鉄、銅を少なくとも更に含んでいる。
例えば、本発明に利用されるレニウムを含む酸性溶液中にはレニウム0.01〜0.50g/L、ビスマス0.01〜0.05g/L、ヒ素1〜5g/L、鉄0.01〜0.05g/L、銅0.1〜0.5g/Lが含まれている。レニウムを含む酸性溶液中のレニウムはレニウム酸(HReO4)の形態で存在している。
このようなレニウムを含む酸性溶液としては、例えば銅等の非鉄金属の製錬工程から発生する亜硫酸ガスを水洗浄することにより得られる廃酸やモリブデン精鉱の酸化焙焼ガスを洗浄した後の洗浄水等が好適に利用可能である。この廃酸には、原鉱石中に含まれるレニウムが不純物と共に混入しており、レニウムの他に、ビスマス、亜鉛、砒素、鉄、銅等が含まれている。
(脱水銀工程)
レニウムを含む酸性溶液中に、後述する陰イオン吸着工程の吸着溶離に影響を及ぼすほどの水銀が含有されると考えられる場合には、キレート樹脂のような水銀に対する吸着力の強い樹脂にレニウムを含む酸性溶液を通すことでレニウムを含む酸性溶液を脱水銀処理してもよい。これにより不純物の少ない硫化レニウムが生成できる。脱水銀工程に好適なキレート樹脂としては、チオアミド基、チオ尿素基、ポリアミン酸基、及びイミノジ酢酸基などの金属捕捉基を一種以上もつキレート樹脂が挙げられる。
(工程1)
工程1では、レニウムを含む酸性溶液を陰イオン交換樹脂に通液して、レニウムを含む酸性溶液中のレニウム及びビスマスを該樹脂に選択的に吸着させることで、樹脂に吸着しない砒素、鉄及び銅を除去する。陰イオン交換樹脂としては、強塩基性イオン交換樹脂を用いることが好ましく、例えば三菱化学社製PA408、PA316、SA20Aなどのトリメチルアンモニウム基及び/又はジメチルエタノールアンモニウム基をもつ強塩基性陰イオン交換樹脂が利用できる。陰イオン樹脂吸着工程においては、空間速度(Space Velocity:SV)を3〜30 Hr-1に制御して、レニウムを含む酸性溶液中のレニウム及びビスマスを該樹脂に選択的に吸着させることが好ましい。
(工程2)
次に、工程2では、レニウム及びビスマスが吸着した陰イオン交換樹脂に溶離液を通液してレニウム及びビスマスを陰イオン交換樹脂から溶離させる。溶離液としては、塩酸酸性の溶離液が好ましく、金属塩化物、特に、亜鉛、カドミウム、銅、鉄のいずれかを含む金属イオンを添加することがより好ましい。特に亜鉛は、塩酸濃度が高いと硫化物を生成し難いことから、溶離効率向上及び硫化反応でのレニウムとの分離性の観点から、金属塩化物の中でも特にZnCl2を用いることが好ましい。金属塩化物を添加することにより、塩酸のみの溶離液に比べて1/4の液量で100%近い溶離が可能となる。金属塩化物を添加することにより、塩酸濃度9N以上の高塩酸酸性としなくても十分な溶離が可能となる。
金属塩化物の添加量は、添加しすぎると、薬剤費用増加、設備腐食、添加金属の処理費用増加などの問題が発生する場合がある。よって、金属塩化物の添加量は10〜200g/Lとすることが好ましく、より好ましくは20〜100g/Lである。
溶離液の塩酸濃度は2N以上とすることが好ましく、工業上の取り扱い性及び安全性を考慮すれば、溶離液の塩酸濃度は2〜9N程度、より好ましくは3〜7N程度とするのが好ましい。空間速度(SV)は、1〜20 Hr-1程度とすることが、回収効率向上の点で好ましい。
(工程3)
工程3では、溶離後液中に含まれるレニウムを硫化処理して硫化レニウムを得る。溶離後液である塩酸酸性溶液中にはレニウムの他にビスマスが吸着するが、この溶離後液を3N以上の塩酸濃度において攪拌しながら硫化水素ガスを吹き込んで硫化処理を施すことにより、ビスマスを硫化後液中に残したままレニウムを硫化レニウムとして回収することができる。
硫化工程は、反応式:HReO4+7/2H2S→Re27+4H2Oに従って進行する。そのため、硫化水素添加量は、上記反応式に従う必要量に対して80%以上反応する量として0.8〜2.0当量を添加、好ましくは0.9〜1.2当量とするのが好ましい。反応(保持)時間は、必要硫化水素を添加後10〜120分、好ましくは10〜60分とすることが好ましい。硫化水素を供給する手法としては(a)液化硫化水素充填ポンプから硫化ガスを直接供給する方法(b)水硫化ソーダ溶液を溶離液へ添加させ、液中で硫化水素ガスを発生させる方法(c)別工程で水硫化ソーダと酸性液を接触させ、硫化水素ガスを発生させ、発生させた硫化水素ガスを供給する方法などが考えられる。これらの中でも不純物が混入しない(a)又は(c)の手法を用いることが好ましい。
具体的な硫化処理としては、例えば、硫化反応槽において硫化水素ガスを吹き込んでORPを50mVまで下げて硫化レニウムを生成させ、脱却塔槽において液中に残存している硫化ガスを除去する。硫化ガス除去後の硫化レニウムスラリーをスラリー槽に貯液した後、このスラリーをフィルタープレスにより硫化レニウムを固液分離することで、硫化レニウムが得られる。
上記硫化処理によって得られる硫化レニウムは、典型的な実施形態においては、化学分析によると(ICP−OESにより分析)、レニウム:25〜62質量%、硫黄:10〜38質量%、亜鉛:0.01〜5.0質量%、ビスマス:0.01〜5.0質量%が含まれ、より典型的な実施形態においては、硫化レニウム中には、レニウム:35〜50質量%、硫黄:15〜32質量%、亜鉛:0.01〜1.0質量%、ビスマス:0.01〜1.0質量%が含まれる。レニウムは、一部が酸化レニウムとして存在する場合もある。なお、ここでの分析値は、硫化レニウムと硫化レニウムに付着した水分を合わせて100質量%とした場合の分析値とする。
硫化処理後の硫化レニウムをそのまま後述する焙焼工程へ送ることも可能である。しかしながら、処理後の硫化レニウムをそのまま焙焼工程に送って焙焼すると、硫化レニウムの一部が揮発せずに回収率が低くなる場合がある。これは、硫化処理後の硫化レニウム中に溶離工程及び硫化工程で利用される塩素分が残留して付着することにより、後述する焙焼工程において硫化レニウムが揮発しにくくなり、回収率が低下したものと考えられる。
そこで、本実施形態においては、硫化処理後の硫化レニウムに対して洗浄処理して、残留塩素分を一定濃度以下に除去することが好ましい。硫化レニウム中の残留塩素分を洗浄により除去することで、後述する焙焼工程(工程4)で硫化レニウムが揮発しやすい形態の硫化レニウムが得られる。
洗浄方法としては、例えば、硫化レニウムに純水を加えてリパルプ洗浄する方法及び/又はフィルタープレスの水洗条件の変更などが好適に用いられる。より具体的には、例えば、硫化処理後の硫化レニウムをリパルプ槽へ仕込み、純水を加えて攪拌を一定時間以上(例えば1時間以上)実施した後に、攪拌機を停止して沈降処理し、上澄み液を除去する。リパルプ槽へ再度純水を加えて攪拌して上澄み液の除去する作業を複数回(例えば2回)行った後、フィルタープレスによって固液分離することで、硫化レニウム中の残留塩素分を有効に除去できる。或いは、フィルタープレスのケーキ厚を薄くし、水で濾過する方法などを採用してもよい。
洗浄処理によって得られる硫化レニウムの亜鉛濃度は、その後の焙焼工程での硫化レニウムの揮発性向上の点を考慮すると、0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、更に好ましくは0.05質量%以下とするのが好ましい。
洗浄が十分でない場合、硫化レニウム中には、溶離工程で使用された溶離液の金属塩化物も残存する場合がある。例えば、溶離液として亜鉛を含む塩酸性溶液(例えばZnCl2を含む塩酸溶液)を使用した場合、硫化レニウム中にはZnが残存する。本発明者の検討によれば、硫化レニウム中のZn濃度が一定濃度以下になることによって、硫化レニウム中の塩酸分も同時に一定濃度以下に低減され、後述する焙焼工程において揮発しやすい硫化レニウムの形態が得られることがわかった。なお、亜鉛は金属成分であり、ICP発光分光分析(ICP−OES)などにより濃度測定しやすい上、後述する塩素濃度を測定する場合に比べて測定のための別処理を特に必要としないため、硫化レニウム中のZn濃度を測定することで、後述する焙焼工程において揮発しやすい硫化レニウムの形態を比較的容易に判断することができるものである。
硫化処理後の硫化レニウムには塩素も含まれるが、この硫化レニウムに対して洗浄工程を施し、硫化レニウム中の塩素濃度を3.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下、更に好ましくは0.8質量%以下に低減することにより、焙焼工程での硫化レニウムの揮発率を90%以上とすることができる。洗浄処理により硫化レニウムは1%程度ロスする場合もあるが、その後の焙焼工程での揮発率は洗浄処理をしない場合に比べて30〜50%向上する。
なお、工程2で得られる溶離後液中には、Znの他にHg、Biなどの不純物も含まれている場合があり、これら不純物が液中で塩化物を形成している場合もある。そのため、硫化レニウム中のHg、Biの濃度を測定することによって硫化処理後の硫化レニウムに残存する塩素濃度を推定することも一応可能であるが、一般にはこれら不純物の濃度はZnに比べて低いため、推定が難しい。更に、Hg、Biは、処理対象とする廃酸等のレニウムを含む酸性溶液中の濃度によって変動するため、その影響が出る場合もある。一方、Znは溶離液中に一定濃度で添加しており定量であるため、そのZn濃度を測定することで硫化レニウム中の塩素濃度が容易に推定でき、レニウムが揮発しやすい形態の硫化レニウムを製造することができる。
(工程4)
工程4では、工程3で得られた洗浄処理後の硫化レニウムに対して酸素含有気体の存在下で焙焼を行う。焙焼により、硫化レニウムが以下の反応式に従って酸化レニウムに転換すると考えられる。
Re27(s)+21/2O2→Re27(s)+7SO2(g)・・・(式1)
SO2(g)+1/2O2(g)→SO3(g)
式1から分かるように、副産物として硫黄酸化物が生成する。酸化レニウム及び硫黄酸化物はガス化して焙焼炉から排出する。焙焼残渣中に亜鉛及びビスマスの少なくとも一方が含まれる場合、これらは焙焼残渣中に回収することが好ましい。
焙焼を実施するための炉の種類としては、特に制限はなく、キルン炉、流動床炉、管状炉等が挙げられるが、残渣の飛散による回収時のコンタミ低減、費用の理由により管状炉が好ましい。
また、雰囲気温度が急激に上昇した場合に反応を抑制するため、窒素、アルゴン等の不活性ガスを炉内に供給できるようにしておくことが望ましい。
酸素含有気体としては、酸素、空気、酸素と不活性ガスの混合物等が挙げられるが、コストが高くなることから空気とするのが好ましい。ここでいう酸素含有気体には、当初から気体で存在する酸素含有気体の他、加熱時に酸素を発生するような固体や液体(例えば、塩素酸カリウム、過塩素酸アンモニウム)を使用することによって生じた酸素含有気体も含まれる。酸素含有気体は、反応効率の観点から、上記(式1)で必要とされる理論当量以上の酸素を供給することが好ましく、例えば1.2以上とすることができ、1.8以上とすることがより好ましい。
酸化レニウムのガス化を促進するため、焙焼炉の炉内雰囲気温度を比較的高く設定して焙焼することが望まれる。ただし、過度に高い温度を設定すると亜鉛分やビスマス分もガス化するおそれがあるので、焙焼炉の雰囲気温度を200〜600℃として焙焼を行うことが好ましく、300〜550℃として焙焼を行うことがより好ましく、焙焼炉の雰囲気温度を350〜500℃として焙焼を行うことが更により好ましい。また、焙焼時間としては、焙焼炉の規模や構造にもよるが、長すぎるとエネルギーロスが大きくなる一方で短すぎると未揮発が多くなるので、例えば30〜240分とすることが好ましく、120〜180分とすることがより好ましい。
酸素含有気体は焙焼炉に供給する前に予熱しておくことが望ましい。酸素含有気体を予熱しておくことで、炉内反応の均一化のメリットが得られる。具体的には、酸素含有気体は炉内雰囲気温度と同温度に予熱しておくことが好ましい。ただし、必要以上に予熱するとエネルギーのロスとなる。
ガス化した酸化レニウムの輸送は、ガス配管を使用すればよい。ガス配管は保温し、輸送途中で酸化レニウムが配管内壁に固着するのを防止することが好ましい。保温時の配管内温度は低すぎると酸化レニウムが固化するおそれがあるので300℃以上とするのが好ましく、エネルギー消費の観点から必要以上に温度を高くする必要もないので、典型的には500℃以下、より典型的には400℃以下である。
(工程5)
その後、ガス化した酸化レニウムに随伴する硫黄酸化物をガス状態に保ちながら酸化レニウムを冷却して固化し、次いで固気分離することにより酸化レニウムの純度を高める。所定の冷却場所(配管内でも出入口のある容器内でもよい。)で冷却して固化させることが作業効率の向上の点で望ましい。このとき、随伴してくる硫黄酸化物は沸点の違いによりそのまま気体として冷却場所を通り抜けていくので、固気分離によって、酸化レニウムの純度が向上する。コンタミ防止の観点から、固化した酸化レニウムはレニウム酸に不溶性の材料、例えば、石英又はガラス上に回収するのが好ましく、内壁の材質にこれらの材料を用いた配管内や容器内に回収することができる。固気分離の際、レニウムの回収率を上げるためにフィルターを設置しても良い。冷却は、自然放冷、熱交換による方法等が挙げられるが、装置の簡略化の理由により自然放冷の方法を実施することが好ましい。
100℃以下、好ましくは80℃以下に冷却することで酸化レニウムを完全に固化することができる。必要以上に低温にすると焙焼炉から酸化レニウムに一緒に流れてくる硫黄酸化物まで液化又は固化して回収されてしまうので、硫黄酸化物を完全に除外するためにはSO3の沸点以上である50℃以上の温度に冷却することが好ましいが、通常、発生する硫黄酸化物の形態はSO2となるのでSO2の沸点以上である常温(例:5〜30℃)まで冷却してもよい。
なお、ガス化した酸化レニウムを、湿式スクラバー等を用いて水冷しながら水中に溶解させることで過レニウム酸水溶液を直接得る方法も考えられるが、当該方法では酸化レニウムと一緒に硫黄酸化物までが水中に溶解するので、純度の観点では酸化レニウムを固化する方法よりも劣る。例示的には、酸化レニウムを水中へ溶解する方法だと、酸化レニウムを固化する方法に比べて、過レニウム酸水溶液中のS品位が5〜10倍程度増加する。
(工程6)
工程6において、固化した酸化レニウムを水中に溶解させるか、又は、固化した酸化レニウムを加熱してガス化した後に水中に溶解させることで、過レニウム酸水溶液を得る。酸化レニウムは以下の反応式に従って過レニウム酸に転換すると考えられる。
Re27(s又はg)+H2O(l)→2HReO4(l)・・・(式2)
酸化レニウムは容易に水に解けるが、あまり水溶液中の濃度が高いと反応効率が落ちると考えられる。一方、濃度が低すぎると水使用量が増え、操業時のハンドリング性が悪化し、その後に濃縮工程が必要となる。そこで、酸化レニウムの水への投入量は50〜500g/Lが好ましく、150〜250g/Lがより好ましい。
固化した酸化レニウムを固液接触させることで水中に溶解させる方法が簡便な方法であるが、固化した酸化レニウムを加熱して再度ガス化した後にスクラバー等で気液接触させて水中に溶解させる方法も可能である。但し、この方法だと未回収ロスが発生するので、前者の方法がより好ましい。
過レニウム酸水溶液からは、公知の任意の方法により、過レニウム酸カリウムを製造することができ、更には過レニウム酸アンモニウムを製造することができる。例えば、過レニウム酸水溶液に水酸化カリウムを添加してpHを11〜13程度に調整することで、過レニウム酸カリウムを析出させ、固液分離によってこれを回収することができる。また、過レニウム酸カリウムは重く沈降しやすいので、浮上しやすい不純物を分離してから固液分離することが好ましい。また、水簸等によって純度を高めることもできる。過レニウム酸カリウムを水素等で還元することにより、レニウムメタルを製造することができる(例えば、特開昭62−124240号公報参照)。
また、過レニウム酸水溶液にアンモニア水を添加してpHを7〜12程度に調整することで過レニウム酸アンモニウムを析出させ、固液分離することにより過レニウム酸アンモニウムを製造することができる。精製を繰り返すことにより、純度は更に高めることが可能である。精製方法としては例えば、純水への再溶解及び晶析を行う方法が挙げられる。中和後、固液分離する前に90〜105℃に加熱して濃縮することが好ましい。過レニウム酸アンモニウムを水素等で還元することにより、レニウムメタルを製造することができる(例えば、特開昭62−146227号公報参照)。
(変形例)
工程1及び工程2で記載される吸着及び溶離工程は、通常の固定式陰イオン交換装置を用いて行ってもよいが、擬似移動床式陰イオン交換装置を用いるのが好ましい。擬似移動床式陰イオン交換装置は、例えば、米国Calgon Carbon社のISEP(登録商標)などの周知のものを使用することができる。
更に、上記の工程3では、レニウム及びビスマスを含む溶離後液を3N以上の塩酸濃度において硫化処理を施すことにより、ビスマスを硫化後液中に残したままレニウムを硫化レニウムとして回収する方法を説明したが、工程3においては、工程2で得られた溶離後液を、移動床溶液を用いた擬似移動床式クロマトグラフィーによって、レニウム区分回収液とビスマス区分回収液とに分け、レニウム区分回収液に対して硫化処理を実施することでより高純度の硫化レニウムを製造することもできる。擬似移動床式クロマトグラフィーとしては、米国Cargon Carbon社のCSEP(登録商標)などの周知のものを使用することができる。この場合においても、硫化処理後に上記洗浄工程を実施して硫化レニウム中の塩素濃度、亜鉛濃度を一定濃度以下に制御することにより、その後の焙焼工程でのレニウムの揮発率が向上する。
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態に係る方法では、工程4〜5により硫化レニウムに対して一段階焙焼を行っていたのに対し、第2の実施の形態に係る方法では、工程4A〜6Aとして二段階焙焼を行う点が第1の実施の形態と異なる。
即ち、第2の実施の形態に係る方法は、一実施態様において
1)レニウムを含む酸性溶液を陰イオン交換樹脂に通液して、レニウムを陰イオン交換樹脂に吸着させる工程と、
2)レニウムが吸着した陰イオン交換樹脂に溶離液を通液してレニウムを陰イオン交換樹脂から溶離させる工程と、
3)溶離後液中に含まれるレニウムを硫化処理して硫化レニウムを得る工程と、
4A)硫化レニウムに対して酸素含有気体の存在下で第一の焙焼を行い、酸化レニウム及び硫黄酸化物を生成させ、硫黄酸化物はガス化して排出し、酸化レニウムを焙焼残渣として得る工程と、
4B)前記焙焼残渣に対して酸素含有気体の存在下で第二の焙焼を行い、ガス化した酸化レニウムを回収する工程と、
5A)ガス化した酸化レニウムを冷却して固化する工程、又は、ガス化した酸化レニウムを水冷しながら水中に溶解させることで過レニウム酸水溶液を得る工程と、
6A)酸化レニウムを固化した場合、固化した酸化レニウムを水中に溶解させるか、又は、固化した酸化レニウムを加熱してガス化した後に水中に溶解させることで、過レニウム酸水溶液を得る工程と、
を含む。
上記工程1〜3は第1の実施の形態に示す方法と実質的に同様であるので、以下においては工程4A〜6Aについて説明する。
(工程4A)
工程4Aでは、硫化レニウムに対して酸素含有気体の存在下で第一の焙焼を行い、酸化レニウム及び硫黄酸化物を生成させ、硫黄酸化物はガス化して排出し、酸化レニウムを焙焼残渣として得る。また、硫化レニウム中に亜鉛及びビスマスの少なくとも一方が含まれる場合、これらは酸化レニウムと共に焙焼残渣中に回収することが好ましい。
第一の焙焼を実施するための炉の種類としては、特に制限はなく、キルン炉、流動床炉、管状炉等が挙げられるが、回転による攪拌作用があり酸素との反応効率が高いのでキルン炉がより好ましい。
第一の焙焼では、生成した硫黄酸化物をガス化させ、酸化レニウムから分離することを目的としているので、硫黄酸化物をガス化させてガス配管等で炉外に排出しながら、酸化レニウムをガス化せずに炉内に留める条件で焙焼を実施することが、不純物の除去効率及びレニウム回収効率の観点から好ましい。すなわち、加熱温度が高くなりすぎるとガス化によって失われる酸化レニウムの比率が高くなる一方で、加熱温度が低すぎると副生成した硫黄酸化物の除去率が低下する。なお、硫化レニウム中に不純物として水銀や砒素が含まれる場合、これらも同様に第一の焙焼で除去処理が可能である。
本発明者らの検討結果によれば、焙焼残渣中のS品位が好ましくは0.5〜20質量%の範囲にあるときに、より好ましくは0.5〜10質量%の範囲にあるときに、更により好ましくは0.5〜5質量%にあるときに第一の焙焼を終了することで、不純物を効果的に除去しながら高いレニウムの回収率が得られる。
そのような焙焼残渣中のS品位を上記範囲に収めるためには、焙焼炉の雰囲気温度を100〜350℃として第一の焙焼を行うことが好ましく、焙焼炉の雰囲気温度を200〜350℃として第一の焙焼を行うことが更により好ましい。また、焙焼時間としては、焙焼炉の規模や構造にもよるが、長すぎるとレニウムのガス化が進展してしまう一方で短すぎると酸化反応が十分に起きないので、例えば30〜240分とすることができ、120〜180分とすることが好ましい。
また、雰囲気温度が急激に上昇した場合に反応を抑制するため、窒素、アルゴン等の不活性ガスを炉内に供給できるようにしておくことが望ましい。
酸素含有気体としては、酸素、空気、酸素と不活性ガスの混合物等が挙げられるが、コストが高くなることから空気とするのが好ましい。ここでいう酸素含有気体には、当初から気体で存在する酸素含有気体の他、加熱時に酸素を発生するような固体や液体(例えば、塩素酸カリウム、過塩素酸アンモニウム)を使用することによって生じた酸素含有気体も含まれる。酸素含有気体は、反応効率の観点から、上記(式1)で必要とされる理論当量以上の酸素を供給することが好ましく、例えば1.2以上とすることができ、1.8以上とすることがより好ましい。
酸素含有気体は焙焼炉に供給する前に予熱しておくことが望ましい。酸素含有気体を予熱しておくことで、焙焼炉の内壁温度を低く設定することが可能となり、酸化レニウムのガス化率を下げられる。すなわち、酸素含有気体を予熱しない場合は、熱伝達の問題から、酸素含有気体と硫化レニウムの界面で酸化反応が十分進行する温度に到達するために必要な焙焼炉の内壁温度の設定値を高くしておかなければならない。これは、焙焼炉の内壁温度が酸化反応に本来必要とされる以上の温度になるということであり、内壁近傍の酸化レニウムのガス化が進行してしまう。一方、酸素含有気体を予熱しておくことで、必要以上に焙焼炉の内壁温度を高くする必要がなくなるため、酸化レニウムのガス化を抑制することができる。
上記の観点からみて、酸素含有気体は炉内雰囲気温度と同温度に予熱しておくことが好ましい。ただし、必要以上に予熱するとエネルギーのロスとなる。
(工程4B)
工程4Bでは、工程4Aで得られた焙焼残渣に対して酸素含有気体の存在下で第二の焙焼を行い、ガス化した酸化レニウムを回収する。焙焼残渣中に亜鉛及びビスマスの少なくとも一方が含まれる場合、これらは焙焼残渣として酸化レニウムから分離することが好ましい。
第二の焙焼を実施するための炉の種類は、第一の焙焼と同様に特に制限はなく、キルン炉、流動床炉、管状炉等が挙げられるが、残渣の飛散による回収時のコンタミ低減、費用の理由により管状炉が好ましい。
焙焼残渣は第一の焙焼で使用した炉からいったん取り出して、別の焙焼炉で第二の焙焼を実施することもでき、第一の焙焼と同一の焙焼炉を使用することもできる。コンタミを抑制する観点では別の焙焼炉を使用することが望ましい。同一の焙焼炉を使用する場合、反応管等の反応容器を炉に装入して第一の焙焼終了後、室温まで冷却して残渣を取り出し別の反応容器に移し替えた上で炉に戻して第二の焙焼を実施することにより、コンタミを防止することが高純度の酸化レニウムを得る上で望ましい。
第二の焙焼では、酸化レニウムを積極的にガス化するという目的があるため、通常は第一の焙焼よりも高い温度に焙焼炉の炉内雰囲気温度を設定して実施する。ただし、過度に高い温度を設定すると亜鉛分やビスマス分もガス化するおそれがあるので、焙焼炉の雰囲気温度を200〜600℃として第二の焙焼を行うことが好ましく、300〜550℃として第二の焙焼を行うことがより好ましく、焙焼炉の雰囲気温度を350〜500℃として第二の焙焼を行うことが更により好ましい。また、焙焼時間としては、焙焼炉の規模や構造にもよるが、長すぎるとエネルギーロスが大きくなる一方で短すぎると未揮発が多くなるので、例えば30〜240分とすることが好ましく、120〜180分とすることがより好ましい。
第一の焙焼で硫化レニウムの酸化反応及び硫黄酸化物の除去が十分に完了していれば、第二の焙焼で必要とされる雰囲気ガスはガス化した酸化レニウムを輸送するためのキャリアガスとしての役割を果たせば十分である。しかしながら、第一の焙焼での硫化レニウムの酸化反応及び硫黄酸化物の除去が完全ではない可能性もあるので、本発明では第二の焙焼においても、酸素含有気体を使用することとしている。
第二の焙焼においても、酸素含有気体は焙焼炉に供給する前に予熱しておくことが望ましい。酸素含有気体を予熱しておくことで、炉内反応の均一化のメリットが得られる。
ガス化した酸化レニウムの輸送は、ガス配管を使用すればよい。また、同一の焙焼炉を使用する場合、第一の焙焼時のガス配管と異なるガス配管でガス化した酸化レニウムを回収することが、不純物の混入を防止する観点から好ましい。
ガス配管は保温し、輸送途中で酸化レニウムが配管内壁に固着するのを防止することが好ましい。保温時の配管内温度は低すぎると酸化レニウムが固化するおそれがあるので300℃以上とするのが好ましく、エネルギー消費の観点から必要以上に温度を高くする必要もないので、典型的には500℃以下、より典型的には400℃以下である。
(工程5A)
その後、ガス化した酸化レニウムを冷却して固化することができる。この際、ガス化した酸化レニウムに随伴する硫黄酸化物をガス状態に保ちながら酸化レニウムを冷却して固化することで、硫黄酸化物を固気分離することが、酸化レニウムの純度を高める上では好ましい。所定の冷却場所(配管内でも出入口のある容器内でもよい。)で冷却して固化させることが作業効率の向上の点で望ましい。このとき、随伴してくる硫黄酸化物は沸点の違いによりそのまま気体として冷却場所を通り抜けていくので、固気分離によって、酸化レニウムの純度が向上する。コンタミ防止の観点から、固化した酸化レニウムはレニウム酸に不溶性の材料、石英又はガラス上に回収するのが好ましく、内壁の材質が石英である配管内や容器内に回収することができる。固気分離の際、レニウムの回収率を上げるためにフィルターを設置しても良い。冷却は、自然放冷、熱交換による方法等が挙げられるが、装置の簡略化の理由により自然放冷の方法を実施することが好ましい。
100℃以下、好ましくは80℃以下に冷却することで酸化レニウムを完全に固化することができる。必要以上に低温にすると焙焼炉から酸化レニウムに一緒に流れてくる可能性のある硫黄酸化物まで液化又は固化して回収されてしまうので、硫黄酸化物を完全に除外するためにはSO3の沸点以上である50℃以上の温度に冷却することが好ましいが、通常、発生する硫黄酸化物の形態はSO2となるのでSO2の沸点以上である常温(例:5〜30℃)まで冷却してもよい。
別法として、ガス化した酸化レニウムを水冷しながら水中に溶解させることで過レニウム酸水溶液を直接得ることもできる。このときの反応式は工程4において説明するのと同じである。水冷しながら水中に溶解させる方法としては、焙焼炉から排出されたガス化した酸化レニウムを湿式スクラバーで捕集する方法や、湿式ろ過、湿式電気集塵機による方法が挙げられる。湿式スクラバーを使用する場合は、気液接触面積を多くするためにペレット状、筒状又はハニカム状などの充填物を装入することが好ましい。当該方法は、酸化レニウムを固化する工程を経ないので簡便性の高い方法であるが、酸化レニウムと一緒に硫黄酸化物までが水中に溶解するので、純度の観点では酸化レニウムを固化する方法よりも劣る。例示的には、酸化レニウムを水中へ溶解する方法だと、酸化レニウムを固化する方法に比べて、過レニウム酸水溶液中のS品位が5〜10倍程度増加する。
(工程6A)
酸化レニウムを固化した場合、工程6Aにおいて、固化した酸化レニウムを水中に溶解させるか、又は、固化した酸化レニウムを加熱してガス化した後に水中に溶解させることで、過レニウム酸水溶液を得る。酸化レニウムは、上述の(式2)に従って過レニウム酸に転換すると考えられる。その他及びその後の工程は第1の実施の形態に示した条件と同様である。
以下、本発明の実施例を説明するが、実施例は例示目的であって発明が限定されることを意図しない。
<一段階焙焼>
(硫化レニウムの生成)
レニウムを含む酸性溶液として、脱水銀処理後のレニウムが0.40g/L、ビスマスが0.03g/L、銅が0.02g/L、ヒ素が3.0g/L、鉄が0.01g/Lの組成の酸性溶液を使用した。この酸性溶液を、陰イオン交換樹脂(ダイヤイオンPA408)を150L収容した樹脂塔に空塔速度6Hr-1で通液し、酸性溶液中のレニウム及びビスマスを陰イオン交換樹脂に吸着させた。次いで、レニウム及びビスマスが吸着した陰イオン交換樹脂に、HCl(6N)とZnCl2(100g/L)の混合液からなる溶離液を空塔速度3Hr-1で通液してレニウムを陰イオン交換樹脂から溶離させた。その後、溶離後液中に含まれるレニウムを3N以上の塩酸濃度において、1.2当量の硫化水素ガスを吹き込んで60分間保持して硫化処理した。その結果、表1に記載の硫化レニウム(水分23質量%)が得られた。各成分の含有率は化学分析(ICP−OESにより分析した。)により測定した。水分は真空乾燥法により求めた。
Figure 0006317197
(焙焼条件が各成分のガス化率に与える影響の検討)
表1の硫化レニウム500gに対して、種々のキルン炉雰囲気温度条件で120〜140分間焙焼を行い、その後、室温まで炉冷した。焙焼炉としてはキルン炉を使用し、酸素含有気体としては空気を使用した。何れの例も酸素当量は1.9〜2.2の範囲とした。また、所定温度(ここでは140℃とした。)まで空気を予熱してからキルン炉に供給する方が炉内雰囲気温度が安定し硫黄の揮発率が上昇する傾向にあることが分かった。試験後の残渣の重量を測定し、また、該残渣の化学分析を実施した。残渣の重量と各元素分析結果から各元素の含有量(g)を求め、試験前後の含有量(g)の差からガス化率を求めた。
焙焼時間はキルン炉内の雰囲気温度が所定の温度に到達してから冷却を開始するまでの時間である。酸素当量は、硫化レニウムに含まれるレニウム及び硫黄がRe27であるか、又は酸化物以外の形態で存在すると仮定し、全てのレニウムがRe27まで、及び全ての硫黄がSO3まで反応するまでの理論酸素当量を1として算出した。
その結果、キルン炉雰囲気温度が100℃以上200℃未満のときはReのガス化率は10%以上20%未満程度であり、キルン炉雰囲気温度が200℃以上のときは20%以上となり、キルン炉雰囲気温度が350℃以上のときは40%以上となった。Sのガス化率は、キルン炉雰囲気温度が100℃以上で10%以上であり、300℃以上で80%以上であった。そのため、Sの後工程における分離が重要であることが確認された。なお、Zn及びBiのガス化率については、キルン炉雰囲気温度が600℃未満においては実質的に0%であった。
(固気分離による効果の検証)
表2に記載の分析値を有する硫化レニウム(水分27質量%)を用意した。各成分の含有率は化学分析(ICP−OESにより分析した。)により測定した。水分は真空乾燥法により求めた。
Figure 0006317197
当該硫化レニウム531gに対して、表3−1に記載の条件で図1に記載の焙焼設備を用いて焙焼を行った。その後、室温まで炉冷した。焙焼炉としては管状炉10を使用し、酸素含有気体としては空気16を1.5L/minの流量で供給した。上記の例と同様に、Sガス化率、Reガス化率、Znガス化率、Biガス化率を求めた。結果を表3−2に示す。
Figure 0006317197
Figure 0006317197
次いで、ガス化した酸化レニウムを含む成分は300℃に保温した管状炉外部反応管保温部14においてガス化した状態で一定距離輸送した後、内壁が石英製の反応管13の保温されていない部分において冷却され固体状の酸化レニウム18として析出させた。なお、ガス温度は保温部からスクラバーに至る途中で室温(約30℃)まで冷却された状態であった。反応管を出たガスはスクラバー15にて硫黄酸化物を吸収しガスを無害化して排出した。酸化レニウム18が析出した反応管13を取り外し、常温の水を反応管13内に通液して酸化レニウムを溶解し、過レニウム酸水溶液を得た。得られた過レニウム酸水溶液中の各成分濃度を化学分析により(ICP−OESにより分析した。)測定し、硫化レニウム中の濃度を基準(100%)としたときの各成分の回収率を求めた。結果を表4−1及び表4−2に示す。
Figure 0006317197
Figure 0006317197
得られた過レニウム酸水溶液に対して、アンモニウム水をpHが9になるまで添加して中和し、その後、固液分離することにより過レニウム酸アンモニウム(APR)の粉末を得た。過レニウム酸アンモニウムの分析結果を表5に示す。分析はGDMSにより行った。
Figure 0006317197
<二段階焙焼>
(硫化レニウムの生成)
レニウムを含む酸性溶液として、レニウムが0.40g/L、ビスマスが0.03g/L、銅が0.02g/L、ヒ素が3.0g/L、鉄が0.01g/Lの組成の酸性溶液を使用した。この酸性溶液を、陰イオン交換樹脂(ダイヤイオンPA408)を150L収容した樹脂塔に空塔速度6Hr-1で通液し、酸性溶液中のレニウム及びビスマスを陰イオン交換樹脂に吸着させた。次いで、レニウム及びビスマスが吸着した陰イオン交換樹脂に、HCl(6N)とZnCl2(100g/L)の混合液からなる溶離液を空塔速度3Hr-1で通液してレニウムを陰イオン交換樹脂から溶離させた。その後、溶離後液中に含まれるレニウムを3N以上の塩酸濃度において、1.2当量の硫化水素ガスを吹き込んで60分間保持して硫化処理した。その結果、表6に記載の硫化レニウム(水分23質量%)が得られた。各成分の含有率は化学分析(ICP−OESにより分析した。)により測定した。水分は真空乾燥法により求めた。
Figure 0006317197
(第一焙焼による効果の検証)
当該硫化レニウム500gに対して、種々のキルン炉雰囲気温度条件で120〜140分間第一の焙焼を行い、その後、室温まで炉冷した。焙焼炉としてはキルン炉を使用し、酸素含有気体としては空気を使用した。何れの例も酸素当量は1.9〜2.2の範囲とした。また、所定温度(ここでは140℃とした。)まで空気を予熱してからキルン炉に供給する方が炉内雰囲気温度が安定し硫黄の揮発率が上昇する傾向にあることが分かった。試験後の残渣の重量を測定し、また、該残渣の化学分析を実施した。残渣の重量と各元素分析結果から各元素の含有量(g)を求め、試験前後の含有量(g)の差からガス化率を求めた。
焙焼時間はキルン炉内の雰囲気温度が所定の温度に到達してから冷却を開始するまでの時間である。酸素当量は、硫化レニウムに含まれるレニウム及び硫黄がRe27であるか、又は酸化物以外の形態で存在すると仮定し、全てのレニウムがRe27まで、及び全ての硫黄がSO3まで反応するまでの理論酸素当量を1として算出した。
その結果、キルン炉雰囲気温度が100℃以上200℃未満のときはReのガス化率は10%以上20%未満程度であり、キルン炉雰囲気温度が200℃以上のときは20%以上となり、キルン炉雰囲気温度が350℃を超えると40%を超えた。Sのガス化率は、キルン炉雰囲気温度が100℃以上で10%以上であり、300℃以上で80%以上であった。なお、Zn及びBiのガス化率については、キルン炉雰囲気温度が600℃未満においては実質的に0%であった。
(二段階焙焼による効果の検証:ガス化した酸化レニウムを固化してから過レニウム酸水溶液を製造する場合)
表7に記載の分析値を有する硫化レニウムを用意した。各成分の含有率は化学分析(ICP−OESにより分析した。)により測定した。
Figure 0006317197
当該硫化レニウム150gに対して、表8−1に記載の条件で第一の焙焼を行い、その後、室温まで炉冷した。焙焼炉としては管状炉を使用し、酸素含有気体としては空気を使用した。上記の例と同様に、Sガス化率、Reガス化率、Znガス化率、Biガス化率を求めた。結果を表8−2に示す。なお、第一の焙焼で得られた残渣のS品位は約5質量%であった。
Figure 0006317197
Figure 0006317197
次に、第一の焙焼で得られた残渣133gに対して、表9−1に記載の条件で図1に記載の焙焼設備を用いて第二の焙焼を行った。焙焼炉としては第一の焙焼と別の管状炉10を使用し、空気16を1.5L/minの流量で供給した。ガス化した酸化レニウムを含む成分は300℃に保温した管状炉外部反応管保温部14においてガス化した状態で一定距離輸送した後、内壁が石英製の反応管13の保温されていない部分において冷却され固体状の酸化レニウム18として析出させた。なお、ガス温度は保温部からスクラバーに至る途中で室温(約30℃)まで冷却された状態であった。反応管を出たガスはスクラバー15にて硫黄酸化物を吸収しガスを無害化して排出した。酸化レニウム18が析出した反応管13を取り外し、常温の水を反応管13内に通液して酸化レニウムを溶解し、過レニウム酸水溶液を得た。得られた過レニウム酸水溶液中の各成分濃度を化学分析により(ICP−OESにより分析した。)測定し、第二の焙焼前の残渣を基準(100%)としたときの各成分の回収率を求めた。結果を表9−2及び表9−3に示す。
Figure 0006317197
Figure 0006317197
Figure 0006317197
得られた過レニウム酸水溶液に対して、アンモニウム水をpHが9になるまで添加して中和し、その後、固液分離することにより過レニウム酸アンモニウム(APR)の粉末を得た。過レニウム酸アンモニウムの分析結果を表10に示す。分析はGDMSにより行った。高純度の過レニウム酸アンモニウムが得られたことが分かる。
Figure 0006317197
(硫化レニウム洗浄による不純物濃度への影響とレニウム揮発率への影響)
レニウムを含む酸性溶液として、レニウムが0.40g/L、ビスマスが0.03g/L、銅が0.02g/L、ヒ素が3.0g/L、鉄が0.01g/Lの組成の酸性溶液を使用した。この酸性溶液を、陰イオン交換樹脂(ダイヤイオンPA408)を150L収容した樹脂塔に空塔速度6Hr-1で通液し、酸性溶液中のレニウム及びビスマスを陰イオン交換樹脂に吸着させた。次いで、レニウム及びビスマスが吸着した陰イオン交換樹脂に、HCl(6N)とZnCl2(100g/L)の混合液からなる溶離液を空塔速度3Hr-1で通液してレニウムを陰イオン交換樹脂から溶離させた。
溶離後液中に含まれるレニウムを、硫化反応槽に入れ、塩酸濃度3N以上で300rpmで攪拌しながら硫化水素を30分吹き込んで硫化処理を行った。脱却、濾過後、乾燥させて硫化レニウムを得た。
この硫化レニウムをリパルプ槽へ入れ、純水を加えて1時間以上攪拌した後、攪拌機を停止して沈降処理した(4時間以上)。その後、リパルプ槽の上澄みを除去した。リパルプ槽への純水の添加、攪拌、沈降処理、上澄みの除去を更に2回繰り返して、フィルタープレスで固液分離することによって、洗浄処理後の硫化レニウムを得た。
硫化レニウムをリパルプ槽へ入れて上述の洗浄処理(純水添加、攪拌、沈降、上澄み除去)を全部で3回実施した硫化レニウムと、洗浄処理を行わなかった硫化レニウム中にそれぞれ含まれるZn、Cl濃度を測定した。結果を表11に示す。
Figure 0006317197
表12に上述の二段階焙焼と同様の条件で、洗浄処理を行った硫化レニウム(表12中右欄)と行わなかった硫化レニウム(表12中左欄)に対する第2焙焼時の揮発率の影響を調べた結果を示す。硫化処理により得られた硫化レニウムを洗浄することにより、硫化レニウムの焙焼時の揮発率が向上していることがわかる。
Figure 0006317197
10 管状炉
11 試料
12 試料置場
13 反応管
14 反応管保温部
15 スクラバー
16 空気
17 排気
18 酸化レニウム

Claims (11)

  1. レニウムを含む酸性溶液を陰イオン交換樹脂に通液して、レニウムを前記陰イオン交換樹脂に吸着させる工程と、
    レニウムが吸着した前記陰イオン交換樹脂に亜鉛を含む塩酸性溶液を溶離液として通液してレニウムを前記陰イオン交換樹脂から溶離させる工程と、
    溶離後液中に含まれるレニウムを硫化処理し、亜鉛濃度が0.5質量%以下の硫化レニウムを得る工程と
    前記硫化レニウムに対して酸素含有気体の存在下で焙焼を行い、ガス化した酸化レニウムを回収する工程と、
    ガス化した酸化レニウムに随伴する硫黄酸化物をガス状態に保ちながら酸化レニウムを
    冷却して固化し、次いで固気分離することにより酸化レニウムの純度を高める工程と、
    固化した酸化レニウムを水中に溶解させるか、又は、固化した酸化レニウムを加熱して
    ガス化した後に水中に溶解させることで、過レニウム酸水溶液を得る工程と、
    を含む過レニウム酸水溶液の製造方法。
  2. レニウムを含む酸性溶液を陰イオン交換樹脂に通液して、レニウムを前記陰イオン交換
    樹脂に吸着させる工程と、
    レニウムが吸着した前記陰イオン交換樹脂に溶離液として金属塩化物を含む塩酸性溶液
    を通液してレニウムを前記陰イオン交換樹脂から溶離させる工程と、
    溶離後液中に含まれるレニウムを硫化処理し、塩素濃度が3.0質量%以下の硫化レニ
    ウムを得る工程と
    前記硫化レニウムに対して酸素含有気体の存在下で焙焼を行い、ガス化した酸化レニウムを回収する工程と、
    ガス化した酸化レニウムに随伴する硫黄酸化物をガス状態に保ちながら酸化レニウムを
    冷却して固化し、次いで固気分離することにより酸化レニウムの純度を高める工程と、
    固化した酸化レニウムを水中に溶解させるか、又は、固化した酸化レニウムを加熱して
    ガス化した後に水中に溶解させることで、過レニウム酸水溶液を得る工程と、
    を含む過レニウム酸水溶液の製造方法。
  3. 前記硫化レニウムを得る工程は、前記溶離後液中に含まれるレニウムを硫化処理することにより得られた硫化レニウムを更に洗浄処理することを含む請求項1又は2に記載の過レニウム酸水溶液の製造方法。
  4. 前記焙焼が200〜600℃の炉内雰囲気温度で行われる請求項1〜3のいずれか1項に記載の過レニウム酸水溶液の製造方法。
  5. レニウムを含む酸性溶液を陰イオン交換樹脂に通液して、レニウムを前記陰イオン交換樹脂に吸着させる工程と、
    レニウムが吸着した前記陰イオン交換樹脂に亜鉛を含む塩酸性溶液を溶離液として通液してレニウムを前記陰イオン交換樹脂から溶離させる工程と、
    溶離後液中に含まれるレニウムを硫化処理し、亜鉛濃度が0.5質量%以下の硫化レニウムを得る工程と、
    前記硫化レニウムに対して酸素含有気体の存在下で第一の焙焼を行い、酸化レニウム及び硫黄酸化物を生成させ、硫黄酸化物はガス化して排出し、酸化レニウムを焙焼残渣として得る工程と、
    前記焙焼残渣に対して酸素含有気体の存在下で第二の焙焼を行い、ガス化した酸化レニウムを回収する工程と、
    ガス化した酸化レニウムを冷却して固化する工程、又は、ガス化した酸化レニウムを水冷しながら水中に溶解させることで過レニウム酸水溶液を得る工程と、
    酸化レニウムを固化した場合、固化した酸化レニウムを水中に溶解させるか、又は、固化した酸化レニウムを加熱してガス化した後に水中に溶解させることで、過レニウム酸水溶液を得る工程と、
    を含む過レニウム酸水溶液の製造方法。
  6. レニウムを含む酸性溶液を陰イオン交換樹脂に通液して、レニウムを前記陰イオン交換
    樹脂に吸着させる工程と、
    レニウムが吸着した前記陰イオン交換樹脂に溶離液として金属塩化物を含む塩酸性溶液
    を通液してレニウムを前記陰イオン交換樹脂から溶離させる工程と、
    溶離後液中に含まれるレニウムを硫化処理し、塩素濃度が3.0質量%以下の硫化レニ
    ウムを得る工程と、
    前記硫化レニウムに対して酸素含有気体の存在下で第一の焙焼を行い、酸化レニウム及び硫黄酸化物を生成させ、硫黄酸化物はガス化して排出し、酸化レニウムを焙焼残渣として得る工程と、
    前記焙焼残渣に対して酸素含有気体の存在下で第二の焙焼を行い、ガス化した酸化レニウムを回収する工程と、
    ガス化した酸化レニウムを冷却して固化する工程、又は、ガス化した酸化レニウムを水冷しながら水中に溶解させることで過レニウム酸水溶液を得る工程と、
    酸化レニウムを固化した場合、固化した酸化レニウムを水中に溶解させるか、又は、固化した酸化レニウムを加熱してガス化した後に水中に溶解させることで、過レニウム酸水溶液を得る工程と、
    を含む過レニウム酸水溶液の製造方法。
  7. 焙焼残渣中のS品位が0.5〜20質量%の範囲にあるときに第一の焙焼を終了する請
    求項5又は6に記載の過レニウム酸水溶液の製造方法。
  8. 第一の焙焼が100〜350℃の炉内雰囲気温度で行われる請求項5〜7のいずれか1項に記載の過レニウム酸水溶液の製造方法。
  9. 請求項〜8のいずれか1項に記載の過レニウム酸水溶液の製造方法によって過レニウム酸水溶液を製造する工程と、
    前記過レニウム酸水溶液を原料として、過レニウム酸カリウムを製造する工程と
    を含む過レニウム酸カリウムの製造方法。
  10. 請求項〜8のいずれか1項に記載の過レニウム酸水溶液の製造方法によって過レニウム酸水溶液を製造する工程と、
    前記過レニウム酸水溶液を原料として、過レニウム酸アンモニウムを製造する工程と
    を含む過レニウム酸アンモニウムの製造方法。
  11. 請求項〜8のいずれか1項に記載の過レニウム酸水溶液の製造方法によって過レニウム酸水溶液を製造する工程と、
    前記過レニウム酸水溶液を原料として、レニウムメタルを製造する工程と
    を含むレニウムメタルの製造方法。
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