JP2019149982A - ベーカリー用油中水型乳化油脂組成物 - Google Patents

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【課題】食感を有するベーカリー食品を、べとつき等の生地物性の悪化を引き起こすことなく、安定して得ることができるベーカリー用油中水型乳化油脂組成物を提供すること。【解決手段】ヘミセルラーゼと、下記条件(1)〜(4)を満たす脂質蛋白質複合体とを含有する、ベーカリー用油中水型乳化油脂組成物。(1)脂質蛋白質複合体を構成する蛋白質として乳蛋白質を含有する。(2)上記乳蛋白質中のカゼイン蛋白質の含有量が40〜95質量%である。(3)上記乳蛋白質中のカゼイン蛋白質がミセル態カゼイン蛋白質を含有する。(4)脂質蛋白質複合体を構成する脂質としてリン脂質を含有する。【選択図】なし

Description

本発明は、ソフトでしっとり感を有するベーカリー食品を得るための、ベーカリー用油中水型乳化油脂組成物に関する。
パンに求められる食感としては、ソフト性はもちろん、最近では、しっとり感と口溶けに対する関心が高く、プルマンブレッド等の食パンであっても、従来のパンに比べて、よりソフトでしっとり感があり、口溶けが良好なパンが求められている。このようなパンを得るには、基本的には水分を多く配合すればよい。しかし、水分を多く配合したパン生地は、べたついた物性になり、丸めや成型時に扱いにくい等、生地物性が悪化してしまうという問題があった。また、得られたパンは、確かにソフトでしっとりとしているが、くちゃついた食感になってしまうという問題もあった。
これらの問題を解決するため、製パン時の生地物性の改良やパンの食感改良について、乳化剤、増粘安定剤、酵素等、様々な製パン改良成分を用いた研究がなされており、それらの成分を単独であるいは組み合わせて使用することで、生地物性及びパンの食感の両方を改善する製パン改良材組成物が、多数紹介されている。
従来より、パンのソフト性を改良することを目的として、α−アミラーゼ等の酵素を、製パン改良剤としてベーカリー生地に添加することが行われている(例えば特許文献1〜5)。
しかし、α−アミラーゼ等の酵素を使用するこれらの方法は、ソフトでしっとり感があり、且つ口溶けが良好であるパンは得られるものの、ベーカリー生地がべとついて扱い難くなるという問題があった。
ソフトでしっとりとした食感を得るための別の手法として、各種複合体によりベーカリー生地、及びベーカリー食品を改良する方法が検討されてきた。
例えば、特許文献6では、油脂分解物やモノグリセリドを脂質とし、分解処理を施した蛋白質との間で脂質蛋白質複合体を得て、これをベーカリー生地に直接添加することで、食感改良効果が得られることが開示されている。
特許文献7では、リン脂質と蛋白質とが結合した蛋白複合体で乳化されたスポンジケーキ用乳化油脂組成物が開示されている。特許文献7には、このスポンジケーキ用乳化油脂組成物を用いることで、油にじみを抑えながら、きめ、口溶け、やわらかさが良好なスポンジケーキが得られることが記載されている。
特許文献8では、有機酸モノグリセリドと非ミセル態のカゼイン蛋白質とからなる複合体の乳酸発酵物を含有するパン練り込み用マーガリンが開示されている。このパン練り込み用マーガリン添加品は、脱脂粉乳液添加品と比較して、より乳のコク味が増していることが示されている。
特許文献9では、パン類生地で用いる穀粉類100質量部に対し、乳固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である食品素材とゲル化剤と水とで構成される複合体を3〜30質量部含有するパン類生地によれば、ソフトで歯切れが良く、風味良好なパン類が得られることが開示されている。
しかし、従来の各種複合体を用いる手法は、選択した複合させる成分によっては、ソフトでしっとりとした食感を有するベーカリー食品を得る観点からは好ましくない場合があった。
例えば、特許文献6の手法は、油脂分解物や分解処理を施した蛋白質から生じるえぐ味が感じられる場合がある上、脂肪酸を含有する油脂分解物を用いる場合には、得られるベーカリー生地がダレやすく、ボリュームのあるベーカリー食品を得ることが難しかった。
特許文献7の手法では、油にじみが十分に抑制されず、しっとりした食感と同時に油性感がベーカリー食品に付与される上、ベーカリー食品の食感がくちゃついたものとなりやすかった。
特許文献8の手法では、乳化剤の1種である有機酸モノグリセリドを用いるため、複合化されずに残存する有機酸モノグリセリドによりベーカリー食品に異味が生じやすい上、複合化させた後に乳酸発酵の工程をとる必要があり、製造が煩雑であるという問題があった。
特許文献9の手法は、ゲル化剤を用いることを必須とするものであり、くちゃついた食感のベーカリー食品が得られる場合があった。
特開平08−089158号公報 特開平09−135656号公報 特開2010−148487号公報 特開2013−046614号公報 特開2011−244777号公報 特開2006−288341号公報 特開平9−284510号公報 特開平9−238612号公報 特開2006−081515号公報
本発明の課題は、ソフトでしっとりとした食感を有するベーカリー食品を、べとつき等の生地物性の悪化を引き起こすことなく、安定して得ることができる手法を提供することにある。
本発明者らは上記課題を解決すべく種々検討した結果、ヘミセルラーゼと、特定条件を満たす脂質蛋白質複合体とを併用することで、上記課題を解決し得ることを知見した。
本発明は上記知見に基づいて完成されたものであり、ヘミセルラーゼと下記条件(1)〜(4)を満たす脂質蛋白質複合体とを含有するベーカリー用油中水型乳化油脂組成物を提供するものである。
(1)脂質蛋白質複合体を構成する蛋白質として乳蛋白質を含有する。
(2)上記乳蛋白質中におけるカゼイン蛋白質の含有量が40〜95質量%である。
(3)上記乳蛋白質中におけるカゼイン蛋白質がミセル態カゼイン蛋白質を含有する。
(4)脂質蛋白質複合体を構成する脂質としてリン脂質を含有する。
本発明によれば、ソフトでしっとりとした食感を有するベーカリー食品を、べとつき等の生地物性の悪化を引き起こすことなく、安定して得ることができる。
以下、本発明のベーカリー用油中水型乳化油脂組成物について、好ましい実施形態に基づき、詳述する。
本発明のベーカリー用油中水型乳化油脂組成物は、必須成分として下記条件(1)〜(4)を満たす脂質蛋白質複合体と、ヘミセルラーゼを含有する。
(1)脂質蛋白質複合体を構成する蛋白質として乳蛋白質を含有する。
(2)上記乳蛋白質中におけるカゼイン蛋白質の含有量が40〜95質量%である。
(3)上記乳蛋白質中におけるカゼイン蛋白質がミセル態カゼイン蛋白質を含有する。
(4)脂質蛋白質複合体を構成する脂質としてリン脂質を含有する。
まず、本発明のベーカリー用油中水型乳化油脂組成物に含有される脂質蛋白質複合体(以下、単に「複合体」ということがある)について、満たすべき条件ごとに述べる。
条件(1)として、本発明のベーカリー用油中水型乳化油脂組成物に含有される脂質蛋白質複合体は、構成する蛋白質として乳蛋白質を含有する。
複合体を構成する蛋白質としては、特に限定されず任意の蛋白質を使用することが可能である。蛋白質としては、例えば、ホエイ蛋白質、カゼイン蛋白質等の乳蛋白質、低密度リポ蛋白質、高密度リポ蛋白質、ホスビチン、リベチン、リン糖蛋白質、オボアルブミン、コンアルブミン、オボムコイド等の卵蛋白質、グリアジン、グルテニン、プロラミン、グルテリン等の小麦蛋白質、大豆蛋白質、エンドウ豆蛋白質、その他動物性、微生物性及び植物性蛋白質等の蛋白質が挙げられる。これらの蛋白質は、目的に応じて1種又は2種以上の蛋白質として、あるいは1種又は2種以上の蛋白質を含有する食品素材の形で使用することもできる。
本発明のベーカリー用油中水型乳化油脂組成物に含有される脂質蛋白質複合体は、好ましい食感を得る観点から、乳蛋白質を含有することが必須とする。蛋白質中の乳蛋白質の含有量は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは100質量%である。
上記蛋白質における乳蛋白質の含有量が40質量%以上であると、好ましい食感のベーカリー食品が得られる上、本発明のベーカリー用油中水型乳化油脂組成物を使用したベーカリー食品の乳風味が強く感じられやすくなるため好ましい。
一般的なベーカリー食品の好ましい風味の一つとして乳風味が挙げられる。複合体に含有される蛋白質が乳蛋白質を含有することにより、本発明を使用して得られるベーカリー食品に乳風味が付与される。また、乳蛋白質は他の蛋白質素材と比較して、得られるベーカリー食品に異味を付与し難いことからも、乳蛋白質を含有する。
条件(2)として、本発明のベーカリー用油中水型乳化油脂組成物に含有される脂質蛋白質複合体は、含有される乳蛋白質中におけるカゼイン蛋白質の含有量が40〜95質量%である。含有される乳蛋白質中におけるカゼイン蛋白質の含有量は、好ましくは50〜95質量%、より好ましくは55〜90質量%、最も好ましくは55〜85質量%である。上記乳蛋白質中のカゼイン蛋白質の含有量が上記範囲内であると、本発明のベーカリー食品の良好な食感が得られる他、歯切れについても良好なものが得られる。
上記乳蛋白質は、カゼイン蛋白質以外のその他の乳蛋白質を含有する。その他の乳蛋白質の種類については特に制限はなく、公知のものを用いることができる。本発明においては、その他の乳蛋白質がホエイ蛋白質であることが好ましい。得られるベーカリー生地のべとつきの抑制やベーカリー食品のしっとりとした食感、及びベーカリー用油中水型乳化油脂組成物の経時安定性が高まる観点からである。この観点から、乳蛋白質中のホエイ蛋白質の含有量は、カゼイン蛋白質1質量部に対するホエイ蛋白質の含有量が0.05〜1.5質量部であることが好ましく、より好ましくは0.2〜0.8質量部であることがより好ましい。
条件(3)として、本発明のベーカリー用油中水型乳化油脂組成物に含有される脂質蛋白質複合体は、上記カゼイン蛋白質としてミセル態カゼイン蛋白質を含有する。
本発明においてミセル態カゼイン蛋白質とは、カルシウム−カゼイン−リン酸の架橋により構成されるカゼインミセル構造を有するカゼイン蛋白質である。すなわち、ミセル態カゼイン蛋白質とは、カルシウム−カゼイン−リン酸の架橋により構成されるカゼインミセル構造が破壊されることなく得られたカゼイン蛋白質である。
本発明ではミセル態カゼイン蛋白質そのものを使用することもできるが、通常はこのミセル態カゼイン蛋白質を含有する乳蛋白質、あるいはミセル態カゼイン蛋白質を含有する乳製品を使用する。
上記ミセル態カゼイン蛋白質を含有する乳蛋白質としては、ミセルカゼインアイソレート(MCI、濃縮ミセラカゼイン(MCC)ともいう)、ミルクプロテインコンセントレート(MPC)及びトータルミルクプロテイン(TMP)などが挙げられる。上記ミセル態カゼイン蛋白質を含有する乳製品としては、脱脂粉乳、全粉乳及びバターミルクパウダーなどが挙げられる。
本発明では、上述したミセル態カゼイン蛋白質を含有する乳蛋白質・乳製品の中でも、とりわけミセル態カゼイン蛋白質を多く含有している点でミセルカゼインアイソレート、及び/又は、ミルクプロテインコンセントレートを使用することが好ましい。
本発明を使用したベーカリー食品にしっとりとした食感を付与する観点から、脂質蛋白質複合体に含有されるカゼイン蛋白質中の上記ミセル態カゼイン蛋白質の含有量は60〜100質量%であることが好ましく、80〜100質量%であることがより好ましい。
ミセル態カゼイン蛋白質は、上述の通り、カルシウム−カゼイン−リン酸の架橋により構成されるカゼインミセル構造を有するカゼイン蛋白質である。
カゼイン蛋白質がミセル構造をとる場合、ミセル態カゼイン蛋白質は平均粒径が0.1μm程度の直径を有することが知られており、0.03〜0.3μmの範囲の粒径をとることが知られている(例えば、日暖畜報53(1):9−16,2010 、 MilkScience Vol.54,No.1 2005参照)。
このことから、ミセル態カゼイン蛋白質を簡易的に定量化する手法として、レーザー回折式平均粒度分布測定装置(例えばSALD−2300((株)島津製作所))により平均粒度分布を測定することが挙げられる。
条件(4)として、本発明のベーカリー用油中水型乳化油脂組成物に含有される脂質蛋白質複合体は、構成する脂質としてリン脂質を含有する。
上記複合体を構成する脂質としては、特に限定されず任意の脂質を使用することが可能である。例えばトリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド、リン脂質、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルなどが挙げられる。
本発明においては、脂質蛋白質複合体を構成する脂質がリン脂質を含有することが必須であり、上記脂質におけるリン脂質の含有量は、リン脂質とリン脂質以外の脂質との質量比率が、前者:後者で、30:70〜100:0の範囲が好ましく、60:40〜100:0の範囲がより好ましく、80:20〜100:0の範囲が最も好ましい。
なお、本発明の効果を一層顕著にするために、脂質として、モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステルから選択される1種又は2種以上を含有している場合がある。
本発明においては、リン脂質をレシチンの形で使用することができる。リン脂質をレシチンの形で使用する場合は、リン脂質と、レシチンに含有されるその他の脂質との質量比率が、前者:後者で、30:70〜100:0の範囲にある任意のレシチンを使用することができ、好ましくは60:40〜100:0のレシチンを、より好ましくは80:20〜100:0のレシチンを使用するとが好ましい。
本発明においては、上記リン脂質の由来は特に限定されるものではなく、大豆由来、ヒマワリ由来、紅花由来、菜種由来、卵黄由来、魚卵由来、乳由来等の動物性、植物性あるいは微生物性のリン脂質を使用することができる。またその場合、抽出物、精製物あるいは酵素処理品等として使用することも可能である。なお、具体的なリン脂質としてはホスファチジン酸、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、スフィンゴミエリン等が挙げられ、これらの内の1種又は2種以上を使用することができる。
本発明における複合体とは、蛋白質と脂質とを含有し、且つ蛋白質と脂質との間に働く強い親和力により形成される高次構造を持つものである。単に蛋白質と脂質とを含有するものは、本発明の複合体には包含されない。
このような複合体は、例えば、水に、乳蛋白質を含有する蛋白質とリン脂質を含有する脂質との質量比が上述の範囲となるように、蛋白質や蛋白質を含有する食品素材及び脂質や脂質を含有する食品素材を添加して、蛋白質と脂質とを含有する水溶液を調製し、調製した水溶液を均質化することで得ることができる。
この際、蛋白質や蛋白質を含有する食品素材、及び脂質や脂質を含有する食品素材等の組成や配合割合については、得られる脂質蛋白質複合体が上記の要件(1)〜(4)を満たすように適切に設定される。
上記の蛋白質と脂質とを含有する水溶液中における蛋白質の含有量は、好ましくは5〜25質量%、より好ましくは5〜20質量%であり、脂質の含有量は、好ましくは2〜10質量%、より好ましくは3〜7質量%である。上記の蛋白質と脂質とを含有する水溶液中の蛋白質及び脂質の含有量を上記の範囲とすることで、混合・撹拌によりダマを解消・分散させることができ、且つ十分に均質化を行うことができるため製造上好ましい。
なお、蛋白質と脂質との質量比については、蛋白質と脂質との割合の和を100とした場合に、蛋白質:脂質=60〜85:15〜40となることが好ましく、65〜80:20〜35となることがより好ましい。
なお、脂質蛋白質複合体の製造時に、水溶液中に上記蛋白質及び上記脂質以外の、その他成分を含有させることができるが、蛋白質及び脂質を高効率で複合化させる観点から含有させないことが好ましい。
また、脂質蛋白質複合体の製造する際、蛋白質と脂質とを含有する水溶液を均質化する前又は均質化した後に加熱殺菌することが好ましい。均質化の後に加熱殺菌する場合は、加熱殺菌の後に再度均質化することができる。
上記均質化に用いる装置としては、ケトル型チーズ乳化釜、ステファンミキサーのような高速せん断乳化釜、スタティックミキサー、インラインミキサー、ホモゲナイザー、コロイドミル、ディスパーミル等が挙げられる。この均質化処理は、2段式ホモゲナイザーを用いて、例えば、1段目3〜100MPa、2段目0〜5MPaの均質化圧力にて行われる。
また、上記加熱殺菌の方法としては、インジェクション式、インフュージョン式、マイクロ波等の直接加熱方式、又は、バッチ式、プレート式、チューブラー式、掻き取り式等の間接加熱方式があり、UHT、HTST、LTLT等の60〜160℃の加熱処理を行なえば良い。
均質化・加熱殺菌を行った後、蛋白質と脂質との複合化の度合いを高める観点から、複合体を含有する水溶液を冷却することが好ましく、冷凍することがより好ましい。冷却方法としては、例えば、チューブラー式、掻取式等の熱交換機によって冷却する方法が挙げられる。また、別の方法として、適当な容器に充填した後に、水浴、氷浴、冷蔵庫、冷凍庫等で冷却する方法も挙げられる。なお、冷却に要する時間としては30分以上であることが好ましく、より好ましくは3時間以上とする。
冷凍する際の冷却速度については緩慢な冷却とすることができ、急速な冷却とすることができるが、緩慢に冷却することが好ましい。
本発明における緩慢な冷却とは、2.0℃/h未満、好ましくは0.1〜1.5℃/hを指し、急速な冷却とは2.0℃/h以上を指す。
複合体を含有する水溶液を冷凍する場合、最大氷結晶生成温度帯(−1〜−5℃)を2時間以上かけて通過することが好ましい。
また、上記操作の後、必要に応じて濃縮操作を行うことができる。
また、本発明においては、良好な食味を得る観点から、複合化工程又は濃縮の工程は、加熱を伴う乾燥工程等を含まないことが好ましい。
条件(1)〜(4)を満たす脂質蛋白質複合体の、本発明のベーカリー用油中水型乳化油脂組成物中における含有量は、好ましくは0.1〜3.5質量%、より好ましくは0.2〜2質量%である。ベーカリー用油中水型乳化油脂組成物中の複合体の含有量を上記の範囲とすることによって、本発明の効果が一層顕著になり、ベーカリー生地がべとつきにくくなるため好ましい。
次に、本発明のベーカリー用油中水型乳化油脂組成物に含有されるヘミセルラーゼについて述べる。
ヘミセルラーゼとはヘミセルロースを基質として加水分解する酵素の総称である。
本発明のベーカリー用油中水型乳化油脂組成物は、上記脂質蛋白質複合体とヘミセルラーゼとを併用することで、ソフトでしっとり感があり、口溶けが良好であるベーカリー食品を生地物性を悪化させることなく、安定して得ることができる。
へミセルロースとは、陸上植物細胞の細胞壁を構成する多糖類のうち、セルロースとペクチン以外のものであり、水溶性のものと不溶性のものがあり、例えば、キシラン、アラビノキシラン、アラビナン、マンナン、ガラクタン、キシログルカン、グルコマンナン等が挙げられる。
そのため、ヘミセルラーゼは、具体的には、キシランを分解するキシラナーゼ、アラビノキシランを分解するアラビノキシラナーゼ等に分類することができるが、実態としてはこれらの活性を混合して有するものであることが多く、実際に市販されている酵素製品もこれらの活性を混合して有するものである場合が多い。
本発明では、上記ヘミセルラーゼの中でも、べとつきの少ない、扱いやすいベーカリー生地を得る観点から、アラビノキシランを主基質とし、且つ、不溶性アラビノキシランへの基質親和性と水溶性アラビノキシランへの基質親和性との比(分解活性比:不溶性アラビノキシラン/水溶性アラビノキシラン)が10以上であるヘミセルラーゼを使用することが好ましい。
本発明において「アラビノキシランを主基質とする」とは、アラビノキシランを分解する活性が、好ましくは1000単位/g以上、より好ましくは2000単位/g以上、更に好ましくは3000単位/g以上であることを指す。
また、1単位とは1分間につき1μmolのキシロース当量の還元糖を生じる酵素の量として定義されるものとする。
また、不溶性アラビノキシランへの基質親和性と水溶性アラビノキシランへの基質親和性との比(分解活性比:不溶性アラビノキシラン/水溶性アラビノキシラン)は10以上であることが好ましいが、より好ましくは15以上、更に好ましくは20以上である。また、上記分解活性比の上限は、好ましくは40以下、より好ましくは35以下、更に好ましくは30以下である。
上記分解活性比を10以上とすることで、例えば、食パン生地や菓子パン生地等の水分含量の高いベーカリー生地に本発明のベーカリー用油中水型乳化油脂組成物を添加した場合にも、生地のべとつきが抑制されるため好ましい。
不溶性アラビノキシランへの基質親和性と水溶性アラビノキシランへの基質親和性との比を算出する方法は、例えば下記(1)〜(3)による方法が挙げられる。
(1)不溶性アラビノキシランに対する酵素活性の測定
不溶性アラビノキシラン製剤(XylazymeAX:メガザイム社製)の懸濁液(40mgの試料を8mlの脱イオン水に懸濁)300μlをマイクロプレートに分注し凍結乾燥したものを測定に用いる。このマイクロプレートの各ウェルに酵素液(ウシ血清アルブミン(0.5mg/ml)を含むpH4.6、0.1Mの酢酸ナトリウム緩衝液に、酵素を0〜40単位懸濁したもの)25μlと該緩衝液25μlを分注して酵素反応を開始し、37℃で1時間酵素反応させた後、1%(w/v)トリス緩衝液200μlを添加して酵素反応を停止する。10分間室温でおいた後、遠心分離(3000g、15分)して得た上清について、分光光度計を用いて吸光度を600nmで読み取る。なお、酵素液の代わりに緩衝液を添加したものをブランクとして使用する。
(2)水溶性アラビノキシランに対する酵素活性の測定
水溶性アラビノキシラン溶液(AZOWAX:メガザイム社製)33μlと酵素液(ウシ血清アルブミン(0.5mg/ml)を含むpH4.6、0.1Mの酢酸ナトリウム緩衝液に、酵素を0〜40単位懸濁したもの)33μlをマイクロプレートの各ウェルに分注して酵素反応を開始する。37℃で1時間酵素反応させた後、エタノール140μlを添加して酵素反応を停止する。10分間室温でおいた後、遠心分離(3000g、15分)して得た上清について、分光光度計を用いて吸光度を600nmで読み取る。なお、酵素液の代わりに緩衝液を添加したものをブランクとして使用する。
(3)不溶性アラビノキシランへの基質親和性と水溶性アラビノキシランへの基質親和性の比の算出
1つの酵素につき上記(1)と(2)の両方の酵素活性の測定を行い、それらの結果から以下のようにして、「不溶性アラビノキシランへの基質親和性と水溶性アラビノキシランへの基質親和性の比」を算出する。
それぞれの吸光度と酵素含量について非線形回帰曲線Y=Ymax×(1−e−K*X)
(Yは吸光度、Xは酵素量)をプロットし、その直線性のある部分、好ましくはYの最大値の1/10以下の範囲で、その傾き(S)を下記の式により算出する。
傾き(S)=(Ymax×K)/1.0536
ここで、この傾きの比、すなわちS(不溶性アラビノキシラン)/S(水溶性アラビノキシラン)の値を「不溶性アラビノキシランへの基質親和性と水溶性アラビノキシランへの基質親和性の比」とする。
本発明のベーカリー用油中水型乳化油脂組成物中のヘミセルラーゼの含有量は、アラビノキシランを基質とした場合の活性が、好ましくは25〜10000単位/油脂組成物100g、より好ましくは50〜5000単位/油脂組成物100g、更に好ましくは250〜2500単位/油脂組成物100gとなる量である。ヘミセルラーゼの含有量を上述の範囲とすることで、本発明の効果が一層顕著となり、ベーカリー生地のべとつきが抑制され、得られるベーカリー食品の食感がねちゃつきのない良好なものとなるため好ましい。
なお、ベーカリー用油中水型乳化油脂組成物中のヘミセルラーゼの含有量は、ベーカリー生地のべとつきを抑え、ソフトでしっとりとした食感を有する、一層好ましいベーカリー食品を得る観点から、ベーカリー用油中水型乳化油脂組成物中の脂質蛋白質複合体1質量%に対して好ましくは1000〜3500単位、より好ましくは1300〜3000単位とする。
上記脂質蛋白質複合体と、上記ヘミセルラーゼとを併用することにより、それぞれを単独で使用したときには得られない効果、即ちベーカリー生地のべとつきが抑制され、得られるベーカリー食品の食感がソフトでしっとりとなる効果が得られる理由については、現段階では不明だが、ヘミセルラーゼの作用によりグルテンネットワーク形成が促進され、通常であれば同時に生地がべとつきやすくなるところ、脂質蛋白質複合体が乳化剤のような働きで生地に作用し、ヘミセルラーゼの分解により生じた水和成分とグルテン構造の保護の両方に寄与することにより、べとつきが抑えられたベーカリー生地となり、ソフトでしっとりとした食感を有するベーカリー食品が得られるものと推測される。
本発明のベーカリー用油中水型乳化油脂組成物は、上記脂質蛋白質複合体と上記ヘミセルラーゼとに加えて、マルトジェニックα−アミラーゼを含有することが好ましい。マルトジェニックα−アミラーゼを含有することで、本発明のベーカリー用油中水型乳化油脂組成物を使用したベーカリー食品が、一層ソフトでしっとりとした食感になる。
本発明で好ましく用いられるマルトジェニックα−アミラーゼについて述べる。
アミラーゼは、デンプンやグリコーゲン等が有するグリコシド結合を加水分解する酵素の総称であり、一般にアミラーゼはその作用部位の違いによって、α−1,4グルコシド結合をランダムに切断するα−アミラーゼ、非還元性末端からマルトース単位で逐次分解するβ−アミラーゼ、同じくα−1,4グルコシド結合をグルコース単位で分解し、また、分岐点のα−1,6結合をも分解するグルコアミラーゼ等が挙げられる。
本発明のベーカリー用油中水型乳化油脂組成物においては、アミラーゼの1種である、マルトジェニックα−アミラーゼを用いることが好ましい。
市販のマルトジェニックα−アミラーゼ製剤としては、例えばコクラーゼ(登録商標)(三菱化学フーズ社製)、Novamyl(登録商標)10000BG、Novamyl(登録商標)L、マルトゲナーゼ(登録商標)(以上、ノボザイムズジャパン社製)、グリンドアミル(登録商標)MAX−LIFE100(ダニスコジャパン社製)等が挙げられる。
本発明においては、上記マルトジェニックα−アミラーゼの中でも、酵素の至適温度が60℃以上である高温耐熱性マルトジェニックα−アミラーゼが好ましい。高温耐熱性マルトジェニックα−アミラーゼの至適温度は、好ましくは65〜95℃、より好ましくは70〜90℃である。
上記マルトジェニックα−アミラーゼの酵素活性は、例えば至適条件(至適温度、至適pH)下において、マルトトリオースを基質に酵素を作用させ、1分間に1マイクロモルのマルトースを生成する酵素量を指標とすることができる。本発明においてマルトジェニックα−アミラーゼの酵素活性は、該酵素量を1単位とする。マルトースの測定は、「還元糖の定量法第2版」(福井作蔵著、学会出版センター)を参照して行うことができる。
本発明のベーカリー用油中水型乳化油脂組成物中のマルトジェニックα−アミラーゼの含有量は、好ましくは100〜5000単位/油脂組成物100g、より好ましくは500〜2000単位/油脂組成物100gとなる量である。上記マルトジェニックα−アミラーゼの含有量が上記範囲であると、上述した効果が一層顕著になり、最終的に得られるベーカリー食品が、くちゃつきがない食感となり、且つ歯切れが良好となり、得られるベーカリー生地がべとつきがないものとなるため好ましい。
また、本発明のベーカリー用油中水型乳化油脂組成物におけるマルトジェニックα−アミラーゼの含有量は、ソフトでしっとりとした食感と歯切れを両立させる観点から、アラビノキシランを基質とした場合のヘミセルラーゼの活性1単位に対して、マルトジェニックα−アミラーゼの活性が、0.5〜4単位であることが好ましく、1.0〜4.0単位であることがより好ましく、1.0〜3.0単位であることが更に好ましく、1.2〜2.5単位であることが最も好ましい。
次に、本発明のベーカリー用油中水型乳化油脂組成物に含有される油脂について述べる。
本発明のベーカリー用油中水型乳化油脂組成物に使用する油脂は、特に制限されず、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、オリーブ油、綿実油、大豆油、ナタネ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、カカオバター、シア脂、マンゴー核油、サル脂及びイリッペ脂等の植物油脂、牛脂、乳脂、豚脂、魚油及び鯨油等の動物油脂、これらの各種動植物油脂に必要に応じてエステル交換、水素添加、異性化水添、分別等の処理をして得られる加工油脂、脂肪酸及び/又は脂肪酸低級アルコールエステルを用いて製造したエステル交換油が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を使用することができる。
本発明のベーカリー用油中水型乳化油脂組成物中の油分含量は、好ましくは10〜99質量%、より好ましくは50〜95質量%、更に好ましくは60〜90質量%である。
なお、本発明のベーカリー用油中水型乳化油脂組成物に含有させる下記のその他の原料が油脂を含有する場合、その他の成分に由来する油脂も、本発明のベーカリー用油中水型乳化油脂組成物中の油分含量に含めるものとする。
本発明のベーカリー用油中水型乳化油脂組成物における水分含有量は、油中水型乳化油脂組成物基準で、好ましくは1〜35質量%、より好ましくは1〜30質量%、最も好ましくは10〜25質量%である。
水分含有量が上述の範囲であると、油中水型乳化油脂組成物の乳化が安定するため好ましい。
なお、本発明に含まれる下記のその他の原料が水分を含有する場合には、それらの副原料に含まれる水分も上記水分含有量に含めるものとする。
本発明のベーカリー用油中水型乳化油脂組成物は、油脂、水、上記の脂質蛋白質複合体、ヘミセルラーゼ、更に好ましくはマルトジェニックα−アミラーゼ、食用油脂以外にその他の原材料を含むことができる。
該その他の原料としては、例えば、糖類、乳化剤、例えばマルトジェニックαアミラーゼ以外のアミラーゼやリパーゼ等の上記以外の酵素、澱粉類、デキストリン、食物繊維、食塩や塩化カリウム等の塩味剤、酢酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料、脱脂粉乳・カゼイン・ホエーパウダー・脱脂濃縮乳等の乳や乳製品、ステビア、アスパルテーム等の甘味料、β−カロチン、カラメル、紅麹色素等の着色料、トコフェロール、茶抽出物等の酸化防止剤、小麦蛋白や大豆蛋白等の植物蛋白、全卵・卵黄・酵素処理卵黄・卵白・卵蛋白質等の卵及び各種卵加工品、着香料、調味料、pH調整剤、食品保存料、日持ち向上剤、果実、果汁、コーヒー、ナッツペースト、香辛料、カカオマス、ココアパウダー、穀類、豆類、野菜類、肉類、魚介類等の食品素材や食品添加物が挙げられる。
上記その他の原料は、本発明の目的を損なわない限り、任意に使用することができるが、上記ベーカリー用油中水型乳化油脂組成物中、合計で好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下となる範囲で使用することが好ましい。
本発明のベーカリー用油中水型乳化油脂組成物は、ロールイン用として用いることができ、また練込用として用いることができ。本発明のベーカリー用油中水型乳化油脂組成物は、マーガリン・ファットスプレッド・バター等の可塑性油脂組成物である場合があり、流動状マーガリン等の流動状油脂組成物である場合がある。本発明のベーカリー用油中水型乳化油脂組成物は、生地調製時の作業性を高める点から、可塑性を有することが好ましい。また、ミキシング等の操作により、生地中に均一に存在させることで本発明の効果がより得られやすくなることから、練込用であることが好ましい。
本発明のベーカリー用油中水型乳化油脂組成物の製造方法は、特に限定されるものではなく、最終的に、上記脂質蛋白質複合体及びヘミセルラーゼ、好ましくは更にマルトジェニックα−アミラーゼが、ベーカリー用油中水型乳化油脂組成物中に分散した状態で存在すれば、公知の方法で製造することができる。
具体的には、例えば本発明のベーカリー用油中水型乳化油脂組成物が可塑性を有する場合には、油相と水相とをそれぞれ調製した後、混合・撹拌し、予備乳化液を得て、この予備乳化液を急冷可塑化させることにより、可塑性を有するベーカリー用油中水型乳化油脂組成物が得られる。
このとき、脂質蛋白質複合体は分散相である水相に含有させることが好ましい。
ヘミセルラーゼ、及び本発明のベーカリー用油中水型乳化油脂組成物に好適に使用されるマルトジェニックα−アミラーゼは、製造時に油相中に直接分散させることができる。脂質蛋白質複合体を含有する水相と、上記酵素を含有する油相とを混合、撹拌して予備乳化液を得、得られた予備乳化液を急冷可塑化することにより、本発明のベーカリー用油中水型乳化油脂組成物を製造することができる。また、脂質蛋白質複合体を含有する水相と、上記酵素を含有しない油相とを混合、撹拌して予備乳化液を得、得られた予備乳化液を急冷可塑化することによって乳化液を調製し、調製した乳化液に上述の酵素又は酵素含有水溶液を添加、混合する方法により、本発明のベーカリー用油中水型乳化油脂組成物を製造ることもできる。高い酵素活性を有し、且つ、保存時の酵素活性の低下が防止される点で後者の方法で本発明のベーカリー用油中水型乳化油脂組成物を製造することが好ましい。
また、製造工程において、窒素、空気等を含気させても、含気させなくても構わない。
次に、本発明のベーカリー生地について述べる。
本発明のベーカリー生地は、本発明のベーカリー用油中水型乳化油脂組成物を含有する。本発明のベーカリー生地は、本発明のベーカリー用油中水型乳化油脂組成物が練り込まれたベーカリー生地であることが好ましい。本発明のベーカリー生地におけるベーカリー用油中水型乳化油脂組成物の含有量は、従来知られたベーカリー生地中の油脂組成物の含有量と同様であり、ベーカリー生地の種類によっても異なるが、ベーカリー生地に含まれる穀粉類100質量部に対し、好ましくは2〜30質量部、より好ましくは4〜20質量部である。
上記穀粉類としては、小麦粉(薄力粉、中力粉、準強力粉、強力粉など)をはじめ、小麦胚芽、全粒粉、小麦ふすま、デュラム粉、大麦粉、米粉、ライ麦粉、ライ麦全粒粉、大豆粉、ハトムギ粉等を挙げることができ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。本発明では、これらの中でも、小麦粉を、穀粉類中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは100質量%使用する。
小麦粉以外の穀粉類を使用する場合、グルテンを別途添加することが好ましい。その添加量は、穀粉類とグルテンを合わせた合計量に対し、タンパク質含量が好ましくは5〜20質量%、より好ましくは10〜18質量%となる量である。
上記ベーカリー生地の製造方法としては、中種法、直捏法、液種法、中麺法、湯種法等、従来ベーカリー生地を調製する手法として選択されるあらゆる製法を採ることができる。
本発明のベーカリー生地を中種法で製造する場合は、本発明のベーカリー用油中水型乳化油脂組成物を中種生地及び/又は本捏生地に練り込むことにより製造することができるが、本捏生地に練り込むことが好ましい。
本発明のベーカリー生地の種類としては、特に制限はないが、例えば食パン生地、菓子パン生地、バラエティーブレッド生地、バターロール生地、ソフトロール生地、ハードロール生地、スイートロール生地、デニッシュ生地、ペストリー生地、フランスパン生地等が挙げられる。
本発明のベーカリー生地においては、必要に応じ、従来知られたベーカリー生地に使用することのできるその他の原料を配合することができる。該その他の原料としては、例えば、水、油脂、イースト、糖類や甘味料、増粘安定剤、着色料、酸化防止剤、デキストリン、乳や乳製品、澱粉類、チーズ類、蒸留酒、醸造酒、各種リキュール、乳化剤、膨張剤、無機塩類、食塩、ベーキングパウダー、イーストフード、カカオ及びカカオ製品、コーヒー及びコーヒー製品、ハーブ、豆類、蛋白質、保存料、苦味料、酸味料、pH調整剤、日持ち向上剤、果実、果汁、ジャム、フルーツソース、調味料、香辛料、香料、各種食品素材や食品添加物等を挙げることができる。
上記その他の原料は、本発明の効果を損なわない限り、任意に使用することができるが、水については、上記穀粉類100質量部に対して、好ましくは30〜100質量部、より好ましくは30〜70質量部となる範囲で使用する。また、水以外のその他の原料については、上記穀粉類100質量部に対して、合計で好ましくは100質量部以下、より好ましくは50質量部以下となる範囲で使用する。なお、その他の原料として、水分を含有する原料を使用した場合は、上記の水には、その他の原料に含まれる水分も含めるものとする。
なお、得られたベーカリー生地は、冷蔵、冷凍保存することが可能である。
次に、本発明のベーカリー食品の製造方法について説明する。
本発明のベーカリー食品は、上述の、本発明のベーカリー生地を加熱処理することにより得られる。
上記加熱処理としては、上記ベーカリー生地を焼成したり、フライしたり、蒸したり、電子レンジ処理したりすることが挙げられる。また、得られた本発明のベーカリー食品を、冷蔵、冷凍保存したり、該保存後に電子レンジ加熱することも可能である。加熱温度及び加熱時間等の加熱条件は公知の条件と同様とすることができる。
以下、実施例を基に、更に詳細な説明を行う。しかしながら、本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるものではない。
〔製造例1〕
ミルクプロテインコンセントレート(イングレディア社「Promilk85」、蛋白質含量81質量部、その内ミセル態のカゼイン蛋白質含量が80質量%、ホエイ蛋白質含量が20質量%)16質量部、を、60℃に加温した水78.4質量部に加え、スリーワンモーターを使用して撹拌して十分に分散させた。ここに大豆由来のレシチン製剤(理研ビタミン社「レシオンLP−1」、脂質含量70質量部、脂質中のリン脂質含量80質量部超)を5.6質量部添加し、よく撹拌して十分に分散させ、混合液を得た。
この混合液をバルブ式ホモジナイザーを用いて30MPaの圧力で均質化した後、プレート式UHT殺菌機で加熱殺菌した後、25℃まで冷却した。これを−0.5℃/hで徐冷し、冷凍させ、上記条件(1)〜(4)を全て満たす脂質蛋白質複合体を含有する水溶液(以下、単に複合体水溶液Aと記載する場合がある。下述の製造例においても同様である。)を得た。
なお、複合体水溶液A100質量部中、脂質蛋白質複合体が16.9質量部含有されていた。
なお、下述のベーカリー用油中水型乳化油脂組成物を製造する際は、得られた複合体水溶液Aを解凍した後に使用した。なお、下述の複合体水溶液B〜Fにおいても同様である。
〔製造例2〕
ミルクプロテインコンセントレートを20質量部に、レシチン製剤の量を7.2質量部に、水の量を72.8質量部に変更した他は製造例1と同様に製造し、上記条件(1)〜(4)を全て満たす脂質蛋白質複合体を含有する複合体水溶液Bを得た。
なお、複合体水溶液B100質量部中、脂質蛋白質複合体が21.2質量部含有されていた。
〔製造例3〕
ミセルカゼインアイソレート(イングレディア社「Prodiet87B」、蛋白質含量84質量部、蛋白質組成中ミセル態のカゼイン蛋白質含量が92質量%、ホエイ蛋白質含量が8質量%)19質量部、ホエイプロテインコンセントレート(アーラフーズ社「ラクプロダン80」、蛋白質含量76質量部、蛋白質組成におけるホエイ蛋白質含量が100質量%)4.8質量部を60℃に加温した水72.5質量部に加え、スリーワンモーターを使用して撹拌して十分に分散させた。ここに大豆由来のレシチン製剤(理研ビタミン社「レシオンLP−1」、脂質含量70質量部、脂質中のリン脂質含量80質量部超)を8.5質量部添加し、よく撹拌して十分に分散させ、混合液を得た。
この混合液をバルブ式ホモジナイザーを用いて30MPaの圧力で均質化した後、プレート式UHT殺菌機で加熱殺菌した後、25℃まで冷却した。これを−0.5℃/hで徐冷し、冷凍させ、上記条件(1)〜(4)を全て満たす脂質蛋白質複合体を含有する複合体水溶液Cを得た。
なお、複合体水溶液C100質量部中、脂質蛋白質複合体が25.6質量部含有されていた。
〔製造例4〕
ミセルカゼインアイソレートの量を16質量部に、ホエイプロテインコンセントレートの量を4.0質量部に、レシチン製剤の量を7.2質量部に、水の量を76.8質量部に変更した他は製造例3と同様に製造し、上記条件(1)〜(4)を全て満たす脂質蛋白質複合体を含有する複合体水溶液Dを得た。
なお、複合体水溶液D100質量部中、脂質蛋白質複合体が21.5質量部含有されていた。
〔製造例5〕
ミセルカゼインアイソレートの量を12.5質量部に、ホエイプロテインコンセントレートの量を7.5質量部に、レシチン製剤の量を7.2質量部に、水の量を80.3質量部に変更した他は製造例3と同様に製造し、上記条件(1)〜(4)を全て満たす脂質蛋白質複合体を含有する複合体水溶液Eを得た。
なお、複合体水溶液E100質量部中、脂質蛋白質複合体が21.2質量部含有されていた。
〔製造例6〕
カゼインカルシウム(フォンテラ社「CALCIUM CASEINATE 385」、蛋白質含量91質量部、蛋白質組成中非ミセル態のカゼイン蛋白質含量が100質量%)13.5質量部、ホエイプロテインコンセントレート(アーラフーズ社「ラクプロダン80」、蛋白質含量76質量部、蛋白質組成中ホエイ蛋白質が100質量部)5.2質量部を60℃に加温した水79.3質量部に加え、スリーワンモーターを使用して撹拌して十分に分散させた。ここに大豆由来のレシチン製剤(理研ビタミン社「レシオンLP−1」、脂質含量70質量部、脂質中のリン脂質含量80質量部超)を7.2質量部添加し、よく撹拌して十分に分散させ、混合液を得た。
この混合液をバルブ式ホモジナイザーを用いて30MPaの圧力で均質化した後、プレート式UHT殺菌機で加熱殺菌した後、25℃まで冷却した。これを−0.5℃/hで徐冷し、冷凍させ、ミセル態カゼインを含まない脂質蛋白質複合体を含有する複合体水溶液Fを得た。
なお、複合体水溶液F100質量部中、ミセル態カゼインを含まない脂質蛋白質複合体が21.2質量部含有されていた。
〔製造例7〕
ホエイプロテインコンセントレート(アーラフーズ社「ラクプロダン80」、蛋白質含量76質量部、蛋白質組成中のホエイ蛋白質含量が100質量%)21.5質量部を60℃に加温した水71.3質量部に加え、スリーワンモーターを使用して撹拌して十分に分散させた。大豆由来のレシチン製剤(理研ビタミン社「レシオンLP−1」、脂質含量70質量部、脂質中のリン脂質含量80質量部超)を7.2質量部添加し、よく撹拌して十分に分散させ、混合液を得た。
この混合液をバルブ式ホモジナイザーを用いて30MPaの圧力で均質化した後、プレート式UHT殺菌機で加熱殺菌した後、25℃まで冷却した。これを−0.5℃/hで徐冷し、冷凍させ、ホエイ蛋白質のみからなる脂質蛋白質複合体を含有する複合体水溶液Gを得た。
なお、複合体水溶液G100質量部中、ホエイ蛋白質のみからなる脂質蛋白質複合体が21.3質量部含有されていた。
<検討1>
上記の製造例1〜7で得られた複合体水溶液A〜Gを用いて、ベーカリー用油中水型乳化油脂組成物A〜Gを製造した。なお、以下では、ヨウ素価60のパームスーパーオレインのランダムエステル交換油脂95質量部と、パーム油5質量部を、それぞれ60℃に加熱し、溶解・混合したものを、単に「油脂配合物」と記載する場合がある。
なお、ベーカリー用油中水型乳化油脂組成物A〜Gにおける複合体水溶液A〜Gの配合量については、ベーカリー用油中水型乳化油脂組成物A〜G中の脂質蛋白質複合体含量が同一となるように調整した。具体的には、複合体水溶液Aの配合量を2質量部、複合体水溶液Cの配合量を1.3質量部、複合体水溶液B及びD〜Gの配合量を1.6質量部とし、残部を水として水相を構成した。
なお、複合体水溶液Aを含有するものをベーカリー用油中水型乳化油脂組成物Aと表記するものとし、他も同様である。
<実施例1>
まず油脂配合物83.8質量部に対して大豆レシチン0.20質量部を溶解させ、これを油相とした。次に、水と複合体水溶液Aを合わせて16質量部となるように混合して、これを水相とした。
得られた油相と水相とを混合し、常法に従って加熱殺菌及び冷却・可塑化を行った。更にヘミセルラーゼ(ベイクザイムBXP5001BG、DSM社製)をアラビノキシランを基質とした場合の活性が500単位/油脂組成物100gとなる量だけ添加・混合し、ベーカリー用油中水型乳化油脂組成物Aを得た。このヘミセルラーゼは、アラビノキシランを主基質とし、且つ、不溶性アラビノキシランへの基質親和性と水溶性アラビノキシランへの基質親和性との比(分解活性比:不溶性アラビノキシラン/水溶性アラビノキシラン)が23であるものであった。
なお、脂質蛋白質複合体はベーカリー用油中水型乳化油脂組成物A100質量部中、0.34質量部含有されており、ヘミセルラーゼの含有量はベーカリー用油中水型乳化油脂組成物A中の脂質蛋白質複合体1質量%に対して、1480単位となる量を含有されていた。
<実施例2>
複合体水溶液Aの代わりに複合体水溶液Bを用いた他は実施例1と同様に製造し、ベーカリー用油中水型乳化油脂組成物Bを得た。
<実施例3>
複合体水溶液Aの代わりに複合体水溶液Cを用いた他は実施例1と同様に製造し、ベーカリー用油中水型乳化油脂組成物Cを得た。
<実施例4>
複合体水溶液Aの代わりに複合体水溶液Dを用いた他は実施例1と同様に製造し、ベーカリー用油中水型乳化油脂組成物Dを得た。
<実施例5>
複合体水溶液Aの代わりに複合体水溶液Eを用いた他は実施例1と同様に製造し、ベーカリー用油中水型乳化油脂組成物Eを得た。
<比較例1>
複合体水溶液Aの代わりに複合体水溶液Fを用いた他は実施例1と同様に製造し、ベーカリー用油中水型乳化油脂組成物Fを得た。
<比較例2>
複合体水溶液Aの代わりに複合体水溶液Gを用いた他は実施例1と同様に製造し、ベーカリー用油中水型乳化油脂組成物Gを得た。
なお、複合体水溶液Aを含有しない他はベーカリー用油中水型乳化油脂組成物Aと同様に製造された油中水型乳化油脂組成物を、コントロールAとした。また、ヘミセルラーゼを含有しない他はベーカリー用油中水型乳化油脂組成物Aと同様に製造された油中水型乳化油脂組成物を、コントロールBとした。
なお、油脂配合物83.8質量部に対して大豆レシチン0.20質量部を溶解させ、これを油相とした。次に、水16質量部を混合して、これを水相として、得られた油相と水相とを混合し、常法に従って加熱殺菌及び冷却・可塑化を行い得られた油中水型乳化油脂組成物をblankとした。
<ロールパン(バターロール成型)の製法>
まず、表1の中種生地配合の全原料を、縦型ミキサーにて低速で3分、中速で2分ミキシングし、中種生地(捏ね上げ温度26℃)を得た。得られた中種生地は、28℃、相対湿度80%にて120分の中種発酵を取った。
次に、この中種生地、並びに本捏生地配合の強力粉、砂糖、食塩、脱脂粉乳、全卵及び水を、縦型ミキサーにて低速で3分、中速で3分ミキシングした後、上記ベーカリー用油中水型乳化油脂組成物A〜Gを加えて、更に低速で3分、中速で4分ミキシングし、本捏生地(捏ね上げ温度28℃)を得た。
得られた本捏生地は、30分フロアタイムをとり、分割(45g)、丸めし、30分ベンチタイムを取った後、バターロール成型した。これを天板に乗せ、38℃、相対湿度80%、50分のホイロを取った後、190℃のオーブンで13分焼成して、ロールパン(Cont.A,Cont.B,blank)、及びロールパンA〜Gを得た。
Figure 2019149982
焼成1日後のロールパン(Cont.A,Cont.B,blank)、及びロールパンA〜Gを下記官能評価基準に則って、同一の品を喫食した際に同一の評価が得られるように訓練されたパネラー10名で、「ソフト性」「しっとり感」「歯切れ」の3点について官能評価を行った。その結果を◎+:45点以上、◎:41〜44点、○:31〜40点、△:21〜30点、×:20点未満として、表2に示した。
また、生地物性については、下記の評価基準に則り、評価を行った。その結果を表2に示す。
<官能評価基準>
・食感(ソフト性)
5点:極めて良好。
3点:良好。
1点:やや悪い。
0点:悪い。
・食感(しっとり感)
5点:極めて良好。
3点:良好。
1点:ややぱさついた感じである
0点:乾いた食感である。
・食感(歯切れ)
5点:歯切れが極めて良好
3点:歯切れが良好
1点:くちゃつく、又はヒキが感じられる。
0点:くちゃつきが激しい、又は、ヒキが強い。
・生地作業性
◎:コントロールAと比較して、べとつきもなく、極めて良好な作業性であった。
○:コントロールAと比較して、良好な作業性であった。
△:べとつきが感じられ、作業性が悪いが、コントロールAよりも作業性はやや良かった。
×:べとつきが強く、コントロールAと同様に作業性が劣るものであった。
Figure 2019149982
ヘミセルラーゼのみを含有する油中水型乳化油脂組成物が配合されたロールパン(Cont.A)については、ヘミセルラーゼの作用により、得られるロールパンのソフト性やしっとり感についてはblank品よりと比較して改善傾向にあり良好であったが、べとつきが感じられ、作業性が劣っていた。また歯切れも悪く、くちゃつく傾向にあった。
脂質蛋白質複合体を含有する油中水型乳化油脂組成物が配合されたロールパン(Cont.B)については、blank品と比較して生地作業性は良くなるものの、食感に改善傾向がみられなかった。
ロールパンAについては、好ましいしっとり感と、べとつきのない、作業性良好な生地物性が得られた。作用機序は不明だが、コントロールA品と比較すると、ヘミセルラーゼと、条件(1)〜(4)を満たす脂質蛋白質複合体の双方の作用が同時に得られることにより、べとつきが抑えられ、しっとり感が向上する効果が得られるものと推察された。また、単にしっとり感が向上するだけでなく、同時に歯切れについても良好なものとなっていた。
蛋白濃度、リン脂質濃度が異なるが、複合体中における蛋白質含量、脂質含量、及び蛋白質と脂質の比率が複合体水溶液Aと略同一の複合体水溶液Bを含有する、ベーカリー用油中水型乳化油脂組成物Bを用いた、ロールパンBについても同様の効果が得られることが分かった。
複合体水溶液A及び複合体水溶液Bとは異なり、ミセルカゼインアイソレートをミセル態カゼイン蛋白質源とした複合体水溶液C又はDを含有するベーカリー用油中水型乳化油脂組成物C又はDを用いたロールパンC及びDについて述べる。試験の結果、ロールパンA及びBと比較して、同様の効果が得られていた。このことから、脂質蛋白質複合体を得る際に、ミセル態カゼイン蛋白質源として、様々な種類の乳蛋白質を用いることが可能である旨が示唆された。
複合体水溶液Eを含有するベーカリー用油中水型乳化油脂組成物Eについては、ベーカリー用油中水型乳化油脂組成物A〜Dと比較して、食感や生地物性の改良効果が十分得られなかった。
これは脂質蛋白質複合体に含有される乳蛋白質中のミセル態カゼイン蛋白質の含量が少ないことが影響したものと推察される。
ロールパンFは、ミセル態カゼイン蛋白質を含有しない他は、複合体水溶液Bと同等である、複合体水溶液Fを含有するベーカリー用油中水型乳化油脂組成物Fを用いて製造されたものである。コントロールA品と比較して、生地物性についてはやや改善されているが、ソフト性の評価が低下した。また、カゼイン蛋白質を含まない複合体水溶液Gを用いたベーカリー用油中水型乳化油脂組成物Gを用いると、ソフト性が低下する等、改善効果が得られないことが分かった。
この試験結果から、ミセル態カゼイン蛋白質がを含有する脂質蛋白質複合体が、得られるベーカリー食品のソフト性に寄与している示唆が得られた。ロールパンFとロールパンGの比較を含めて考察すると、カゼイン蛋白質が生地物性の改善に寄与しており、特にミセル態カゼイン蛋白質が寄与するものと窺われた。
また、ベーカリー用油中水型乳化油脂組成物A〜Fを用いたロールパンA〜FではCont.A,及びBの品と比較して、比容積も5%以上向上しており、本発明によりボリュームのあるベーカリー食品が得られることについても確認された。
<検討2>
検討1で用いたヘミセルラーゼ及び複合体水溶液Aを用いて、ベーカリー用油中水型乳化油脂組成物中の脂質蛋白質複合体含量について、実施例1の配合をベースに複合体水溶液Aを用いて、検討1と同様にロールパンを製造して、検討した。なお、含有する酵素(ヘミセルラーゼ)の量については、実施例1のものと同量である。
検討・評価した結果について、表3に示した。なお、参考として、検討1におけるロールパンAの評価結果についても記載している。
<実施例1−2>
複合体水溶液Aの添加量を1.0質量部とした他は実施例1と同様にして、ベーカリー用油中水型乳化油脂組成物A−2を得た。
なお、ヘミセルラーゼの添加量は脂質蛋白質複合体1質量%に対して、2959単位となる量であった。
<実施例1−3>
複合体水溶液Aの添加量を3.5質量部とした他は実施例1と同様にして、ベーカリー用油中水型乳化油脂組成物A−3を得た。
なお、ヘミセルラーゼの添加量は脂質蛋白質複合体1質量%に対して、845単位となる量であった。
<実施例1−4>
複合体水溶液Aの添加量を5.0質量部とした他は実施例1と同様にして、ベーカリー用油中水型乳化油脂組成物A−4を得た。
なお、ヘミセルラーゼの添加量は脂質蛋白質複合体1質量%に対して、592単位となる量であった。
<実施例1−5>
複合体水溶液Aの添加量を10.0質量部とした他は実施例1と同様にして、ベーカリー用油中水型乳化油脂組成物A−5を得た。
なお、ヘミセルラーゼの添加量は脂質蛋白質複合体1質量%に対して、296単位となる量であった。
Figure 2019149982
検討2から、脂質蛋白質複合体の含量によって、得られるベーカリー生地の生地物性や、ベーカリー食品の食感に差異があり、好ましい添加範囲があることが分かった。これは、脂質蛋白質複合体1質量%に対するヘミセルラーゼの量(単位)も影響するものと推察される。
<検討3>
検討1で用いたヘミセルラーゼ及び複合体水溶液Aを用いて、ベーカリー用油中水型乳化油脂組成物中のヘミセルラーゼ含量について、実施例1の配合をベースに、検討1と同様にロールパンを製造して、検討した。なお、含有する複合体水溶液Aの量については、実施例1のものと同量である。
検討・評価した結果について、表4に示した。なお、参考として、検討1におけるロールパンA、及びコントロールA品の評価結果についても記載している。
<実施例1−6>
ヘミセルラーゼの添加量を、アラビノキシランを基質とした場合の活性が200単位/油脂組成物100gとした他は実施例1と同様にして、ベーカリー用油中水型乳化油脂組成物A−6を得た。
なお、ヘミセルラーゼの添加量は脂質蛋白質複合体1質量%に対して、592単位となる量であった。
<実施例1−7>
ヘミセルラーゼの添加量を、アラビノキシランを基質とした場合の活性が700単位/油脂組成物100gとした他は実施例1と同様に製造し、ベーカリー用油中水型乳化油脂組成物A−7を得た。
なお、ヘミセルラーゼの添加量は脂質蛋白質複合体1質量%に対して、2071単位となる量であった。
<実施例1−8>
ヘミセルラーゼの添加量を、アラビノキシランを基質とした場合の活性が1500単位/油脂組成物100gとした他は実施例1と同様に製造し、ベーカリー用油中水型乳化油脂組成物A−8を得た。
なお、ヘミセルラーゼの添加量は脂質蛋白質複合体1質量%に対して、4438単位となる量であった。
<実施例1−9>
ヘミセルラーゼの添加量を、アラビノキシランを基質とした場合の活性が2000単位/油脂組成物100gとした他は実施例1と同様に製造し、ベーカリー用油中水型乳化油脂組成物A−9を得た。
なお、ヘミセルラーゼの添加量は脂質蛋白質複合体1質量%に対して、5917単位となる量であった。
Figure 2019149982
ヘミセルラーゼ含量を増加することによりソフト性やしっとり感が強化されるが、脂質蛋白質複合体と併用しても、一定範囲を超えると食感の悪化や生地作業性の低下がみられた。特にA−9では、僅かに、くちゃつきがみられた。
<検討4>
本発明のベーカリー用油中水型乳化油脂組成物中へのマルトジェニックα−アミラ−ゼの添加について、実施例1の配合をベースに、検討1と同様にロールパンを製造して、検討した。なお、マルトジェニックα−アミラーゼについては、ノバミル10000BG(Novozymes社製)を用いて検討した。
検討・評価した結果について、表5に示した。なお、参考として、検討1におけるロールパンA、及びコントロールA品の評価結果についても記載している。
<実施例1−10>
実施例1の配合に、更にマルトジェニックα−アミラーゼを400単位/油脂組成物100gとなる量だけ添加した他は実施例1と同様にして、ベーカリー用油中水型乳化油脂組成物A−10を得た。
なお、アラビノキシランを基質とした場合のヘミセルラーゼの活性1単位に対する、マルトジェニックα−アミラーゼの活性は0.8単位であった。
<実施例1−11>
実施例1の配合に、更にマルトジェニックα−アミラーゼを800単位/油脂組成物100gとなる量だけ添加した他は実施例1と同様にして、ベーカリー用油中水型乳化油脂組成物A−11を得た。
なお、アラビノキシランを基質とした場合のヘミセルラーゼの活性1単位に対する、マルトジェニックα−アミラーゼの活性は1.6単位であった。
<実施例1−12>
実施例1の配合に、更にマルトジェニックα−アミラーゼを1200単位/油脂組成物100gとなる量だけ添加した他は実施例1と同様にして、ベーカリー用油中水型乳化油脂組成物A−12を得た。
なお、アラビノキシランを基質とした場合のヘミセルラーゼの活性1単位に対する、マルトジェニックα−アミラーゼの活性は2.4単位であった。
<実施例1−13>
実施例1の配合に、更にマルトジェニックα−アミラーゼを1600単位/油脂組成物100gとなる量だけ添加した他は実施例1と同様にして、ベーカリー用油中水型乳化油脂組成物A−13を得た。
なお、アラビノキシランを基質とした場合のヘミセルラーゼの活性1単位に対する、マルトジェニックα−アミラーゼの活性は3.2単位であった。
Figure 2019149982
マルトジェニックα−アミラーゼを添加することにより、更にソフトでしっとり感のあるベーカリー食品がくちゃつく食感なく、一層好ましく得られる傾向にあった。一方、A−13の評価結果から、マルトジェニックα−アミラーゼの添加量を増やすほど、過度にソフトでしっとりとした食感となるためか、僅かにくちゃつき、歯切れがやや低下する他、得られるベーカリー生地自体も若干のべとつきがみられた。

Claims (7)

  1. ヘミセルラーゼと、下記条件(1)〜(4)を満たす脂質蛋白質複合体とを含有する、ベーカリー用油中水型乳化油脂組成物。
    (1)脂質蛋白質複合体を構成する蛋白質として乳蛋白質を含有する。
    (2)上記乳蛋白質中のカゼイン蛋白質の含有量が40〜95質量%である。
    (3)上記乳蛋白質中のカゼイン蛋白質がミセル態カゼイン蛋白質を含有する。
    (4)脂質蛋白質複合体を構成する脂質としてリン脂質を含有する。
  2. 上記カゼイン蛋白質中のミセル態カゼイン蛋白質の含有量が、60〜100質量%である、請求項1記載のベーカリー用油中水型乳化油脂組成物。
  3. 更に、マルトジェニックα−アミラーゼを含有する、請求項1又は2記載のベーカリー用油中水型乳化油脂組成物。
  4. ヘミセルラーゼ1単位に対して、マルトジェニックα−アミラーゼを、0.5〜4単位含有する、請求項3記載のベーカリー用油中水型乳化油脂組成物。
  5. 上記ヘミセルラーゼが、アラビノキシランを主基質とし、且つ、不溶性アラビノキシランへの基質親和性と水溶性アラビノキシランへの基質親和性との比(分解活性比:不溶性アラビノキシラン/水溶性アラビノキシラン)が10以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のベーカリー用油中水型乳化油脂組成物。
  6. 請求項1〜5いずれか一項記載のベーカリー用油中水型乳化油脂組成物を含有するベーカリー生地。
  7. 請求項6記載のベーカリー生地の加熱処理品であるベーカリー食品。
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