JP2019147710A - 酸化セリウム(iv)の製造方法、酸化セリウム(iv)、吸着剤、二酸化炭素の除去方法及び二酸化炭素除去装置 - Google Patents

酸化セリウム(iv)の製造方法、酸化セリウム(iv)、吸着剤、二酸化炭素の除去方法及び二酸化炭素除去装置 Download PDF

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保彦 吉成
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俊勝 嶋崎
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Abstract

【課題】二酸化炭素の吸着量及び脱離量に優れる酸化セリウム(IV)の製造方法を提供すること。【解決手段】焼成工程の前に、3価のセリウムイオン、尿素及び水を含む混合液を反応させて、炭酸水酸化セリウム(III)を得る。さらに300℃以下の温度で得られた炭酸水酸化セリウム(III)を焼成して二酸化炭素の吸着量及び脱離量に優れる酸化セリウム(IV)を得る。【選択図】なし

Description

本発明は、酸化セリウム(IV)の製造方法、酸化セリウム(IV)、吸着剤、二酸化炭素の除去方法及び二酸化炭素除去装置に関する。
地球温暖化の原因の一つとして、温室効果ガスの排出が挙げられる。温室効果ガスとしては、二酸化炭素(CO)、メタン(CH)、フロン類(CFCs等)などが挙げられる。温室効果ガスの中でも、二酸化炭素の影響が最も大きく、二酸化炭素(火力発電所、製鉄所等のプラントから排出される二酸化炭素など)の除去が緊急の課題となっている。
前記課題の解決策としては、例えば、化学吸収法、物理吸収法、膜分離法、吸着分離法、深冷分離法等により二酸化炭素を除去する方法が挙げられる。このような方法としては、例えば、固体の二酸化炭素吸着剤を用いて二酸化炭素を分離及び回収する方法(CO分離回収法)が挙げられる。
吸着剤を用いた二酸化炭素除去装置では、吸着剤を充填した容器に、二酸化炭素を含有する処理対象ガスを導入し、吸着剤と処理対象ガスとを大気圧下又は加圧下で接触させることで二酸化炭素を吸着剤に吸着させる。その後、例えば、吸着剤を加熱すること、又は、容器内を減圧することで吸着剤から二酸化炭素を脱離させる。二酸化炭素を脱離させた吸着剤は、冷却又は加圧することにより再度二酸化炭素の除去に使用することができる。
このような二酸化炭素除去装置においては、吸着剤としてセリウム化合物(酸化セリウム等)が用いられることがある。例えば、特許文献1には、セリウムの炭酸塩及びセリウムの炭酸水素塩からなる群より選ばれる少なくとも一種のセリウム塩の焼成物を含む、吸着剤が開示されている。
国際公開第2017/199917号
吸着剤を用いた二酸化炭素の除去方法に対しては、二酸化炭素の除去効率を向上させる観点から、吸着剤に対する二酸化炭素の吸着量を向上させることが求められている。例えば特許文献1に記載されているようなセリウム化合物を用いた吸着剤においても、二酸化炭素の吸着量を更に向上させることが望ましい。
また、二酸化炭素を繰り返し分離及び回収する観点から、二酸化炭素が吸着した酸化セリウムを加熱することにより、二酸化炭素を酸化セリウムから脱離させることがあるため、吸着剤には吸着した二酸化炭素の脱離量の向上も求められる。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、二酸化炭素の吸着量及び脱離量に優れる酸化セリウム(IV)の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、前記製造方法により得られる酸化セリウム(IV)、当該酸化セリウム(IV)を用いた吸着剤、二酸化炭素の除去方法及び二酸化炭素除去装置を提供することを目的とする。
本発明に係る酸化セリウム(IV)の製造方法は、炭酸水酸化セリウム(III)を焼成する焼成工程を備える。
本発明に係る酸化セリウム(IV)の製造方法によれば、二酸化炭素の吸着量及び脱離量に優れる酸化セリウム(IV)を得ることができる。このような吸着剤は、CO吸着量(二酸化炭素の吸着性、二酸化炭素の捕捉能)及びCO脱離量(二酸化炭素の脱離性、二酸化炭素の脱離能)に優れている。
焼成工程における焼成温度は、300℃以下であってもよい。この場合、二酸化炭素の吸着量及び脱離量に優れた酸化セリウム(IV)が得られやすくなる。
酸化セリウム(IV)の製造方法は、焼成工程の前に、3価のセリウムイオン、尿素及び水を含む混合液を反応させて、炭酸水酸化セリウム(III)を得る反応工程を更に備えていてよい。この場合、二酸化炭素の吸着量及び脱離量に優れた酸化セリウム(IV)が得られやすくなる。
本発明に係る酸化セリウム(IV)は、上述した酸化セリウム(IV)の製造方法により得られる。この酸化セリウム(IV)は、吸着剤として好適に用いることができる。
本発明に係る二酸化炭素の除去方法は、二酸化炭素を含有する処理対象ガスを上述した吸着剤に接触させて二酸化炭素を吸着剤に吸着させる吸着工程を備える。本発明に係る二酸化炭素の除去方法によれば、二酸化炭素を効率よく除去することができる。
本発明に係る二酸化炭素除去装置は、上述した吸着剤と、この吸着剤を内部に設置した容器と、を備える。この二酸化炭素除去装置は、二酸化炭素を含有する処理対象ガスから二酸化炭素を除去するために用いられる。本発明に係る二酸化炭素除去装置によれば、二酸化炭素を効率よく除去することができる。
本発明によれば、二酸化炭素の吸着量及び脱離量に優れる酸化セリウム(IV)の製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、前記製造方法により得られる酸化セリウム(IV)、当該酸化セリウム(IV)を用いた吸着剤、二酸化炭素の除去方法及び二酸化炭素除去装置を提供することができる。
図1は、本発明の一実施形態に係る二酸化炭素除去装置を示す模式図である。 図2は、実施例の酸化セリウムのX線回折(XRD)の測定結果を示す図である。 図3は、実施例及び比較例の酸化セリウムの吸着率の測定結果を示す図である。 図4は、実施例及び比較例の酸化セリウムの脱離率の測定結果を示す図である。
本明細書において、「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において、「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。本明細書に例示する材料は、特に断らない限り、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本明細書において、組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
<酸化セリウム(IV)の製造方法>
本実施形態に係る酸化セリウム(IV)(CeO;以下、単に「酸化セリウム」ともいう。)の製造方法は、炭酸水酸化セリウム(III)(CeCOOH;以下、単に「炭酸水酸化セリウム」ともいう。)を含む原料を焼成する焼成工程を備える。この酸化セリウムの製造方法では、炭酸水酸化セリウムを焼成することにより、炭酸水酸化セリウムが分解し、且つ、セリウムが酸化する。これにより、酸化セリウムが得られる。
焼成工程における焼成温度は、炭酸水酸化セリウムを分解できる温度であれば特に限定されない。焼成温度は、炭酸水酸化セリウムの分解が進行しやすいことから酸化セリウムの製造時間を短縮できる観点から、150℃以上であってもよく、200℃以上であってもよく、225℃以上であってもよく、250℃以上であってもよく、275℃以上であってもよい。焼成温度は、酸化セリウムの焼結が起こりにくいことから吸着剤の比表面積が大きくなりやすい観点から、400℃以下であってもよく、350℃以下であってもよく、300℃以下であってもよく、275℃以下であってもよい。これらの観点から、焼成温度は、150〜400℃であってもよく、200〜350℃であってもよく、225〜300℃であってもよく、225〜275℃であってもよい。
焼成工程における焼成時間は、焼成量若しくは焼成装置、焼成時の混合の有無、又は焼成温度にもよるが、例えば、1分間以上であってもよい。焼成時間は、例えば、10時間以下であってもよく、3時間以下であってもよく、30分間以下であってもよい。
焼成工程は、一段階で行ってもよく、二段階以上の多段階で行ってもよい。なお、多段階の焼成を行う場合、少なくとも一つの段階が前記焼成温度及び/又は焼成時間であることが好ましい。焼成工程は、例えば、空気雰囲気下又は酸素雰囲気下で行うことができる。
焼成工程では、炭酸水酸化セリウム単独(実質的に炭酸水酸化セリウムのみからなる原料)を焼成してもよく、炭酸水酸化セリウムと、炭酸水酸化セリウム以外の化合物(他の化合物)とを含む原料を焼成してもよい。焼成工程では、乾燥した原料を焼成してもよい。また、焼成工程では、原料を含む溶液(例えば、原料が溶解した溶液)を加熱することにより、溶媒を除去すると共に原料を焼成してもよい。炭酸水酸化セリウムは、例えば、公知の方法により作製することができる。
炭酸水酸化セリウムと他の化合物とを含む原料を焼成する場合、炭酸水酸化セリウムの含有量は、原料の全質量基準で、90質量%以上であってもよく、99質量%以上であってもよい。炭酸水酸化セリウムの前記含有量が多いほど、二酸化炭素の吸着量を更に向上させることができる。
炭酸水酸化セリウムは、例えば、3価のセリウムイオン、尿素及び水を含む混合液を反応させて得ることができる。すなわち、本実施形態に係る酸化セリウムの製造方法は、焼成工程の前に、3価のセリウムイオン、尿素及び水を含む混合液を反応させて、炭酸水酸化セリウム(III)を得る反応工程を更に備えていてよい。この場合、CO吸着量及びCO脱離量により優れた酸化セリウムが得られる。
3価のセリウムイオンは、例えばセリウム塩(III)を用いることにより供給することができる。セリウム塩(III)としては、硝酸セリウム(III)、酢酸セリウム(III)、塩化セリウム(III)、硫酸セリウム(III)、五硝酸二アンモニウムセリウム(III)、炭酸セリウム(III)、シュウ酸セリウム(III)、これらの水和物等が挙げられる。セリウム塩(III)としては、硝酸セリウム(III)又はその水和物(例えば、硝酸セリウム(III)六水和物)が好ましい。
前記混合液は、3価のセリウムイオン、尿素、及び水以外の化合物を含んでいてもよい。このような化合物としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノールなどの1価のアルコール、エチレングリコールなどの2価のアルコール、グリセリンなどの3価のアルコール、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドなどのアルデヒド類、アセトンなどのケトン類、ショ糖、ブドウ糖などの糖類、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどの水溶性高分子、その他1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリルなどの水との混和性のある有機溶媒が挙げられる。
混合液中のセリウム塩(III)の濃度は、例えば1×10−6mol/L以上、又は1×10−2 mol/L以上であってよく、各セリウム(III)原料の飽和濃度以下、又は1mol/L以下であってよい。
セリウム(Ce)に対する尿素の物質量比(尿素/Ce)は、1以上であってよい。尿素/Ceは、例えば、1〜10000であってよく、10〜1000であってよい。
反応工程では、前記混合液を下記反応温度に保持してもよい。反応温度は、炭酸水酸化セリウムがより得られやすくなる観点から、80℃以上、90℃以上、又は93℃以上であってもよく、120℃以下であってもよい。
前記反応温度の保持時間は、例えば、5分間以上であってもよく、100時間以下、24時間以下、又は10分以下であってもよい。
反応工程後は、例えば、炭酸水酸化セリウムを、ろ過等の方法で分離した後、洗浄することで、上述の焼成工程で用いられる炭酸水酸化セリウムを得ることができる。
本実施形態に係る酸化セリウムの製造方法は、焼成前の原料を所定の形状(例えば、後述する吸着剤の形状)に成形する工程を備えていてもよく、焼成後に得られた酸化セリウムを所定の形状に成形する工程を備えていてもよい。
<酸化セリウム(IV)>
本実施形態に係る酸化セリウムは、前記酸化セリウム(IV)の製造方法により得られる。つまり、本実施形態に係る酸化セリウムは、炭酸水酸化セリウムの焼成物ということもできる。酸化セリウムは、二酸化炭素を含有する処理対象ガス(処理の対象となるガス)から二酸化炭素を除去(例えば回収)するために用いられる吸着剤(二酸化炭素捕捉剤)として好適に用いられる。
本発明者らは、鋭意検討の結果、炭酸水酸化セリウムを焼成して得られる酸化セリウムが、CO吸着量に優れる共に、CO脱離量の点でも優れていることを見出した。特に、本実施形態に係る製造方法により得られる酸化セリウムは、二酸化炭素が吸着した状態で、比較的低温(例えば25〜100℃)で加熱された場合であっても、優れた二酸化炭素の脱離量を示す。
本実施形態に係る酸化セリウムの製造方法によりCO吸着量及びCO脱離量を有する酸化セリウムが得られる原因は明らかではなく、また、得られる酸化セリウムの構造又は特性上の特徴も不明であるが、本発明者らは以下のように推察している。本実施形態に係る酸化セリウムの製造方法では、炭酸水酸化セリウムの分解を経て酸化セリウムが得られるが、炭酸水酸化セリウムの分解によって、二酸化炭素の吸着及び脱離に有利な何らかの構造を有する吸着剤が得られやすいと推察される。
<吸着剤>
本実施形態に係る吸着剤(二酸化炭素捕捉剤)は、前記酸化セリウム(IV)の製造方法により得られる酸化セリウム(IV)を含む。吸着剤は、炭酸水酸化セリウムの焼成物を含む。吸着剤は、二酸化炭素を含有する処理対象ガスから二酸化炭素を除去するために用いられる。
吸着剤は、酸化セリウム(III)(Ce)を更に含有していてもよい。また、吸着剤は、希土類元素を更に含有していてもよい。希土類元素は、例えば、酸化物、水酸化物等として吸着剤に含有されていてもよい。
吸着剤における酸化セリウム(IV)の含有量は、吸着剤の全質量基準で、30質量%以上であってもよく、70質量%以上であってもよく、90質量%以上であってもよい。吸着剤は、酸化セリウム(IV)からなる態様(酸化セリウム(IV)の含有量が吸着剤の全質量基準で実質的に100質量%である態様)であってもよい。酸化セリウム(IV)の前記含有量が多いほど、二酸化炭素の吸着量を更に向上させることができる。酸化セリウム(IV)の含有量は、例えば、吸着剤を得るための原料における炭酸水酸化セリウムの含有量によって調整することができる。
吸着剤は、化学処理されていてもよく、例えば、フィラー(アルミナ、シリカ等)をバインダーとして混合することなどによって高比表面積化されていてもよい。
吸着剤の形状としては、粉状、ペレット状、粒状、ハニカム状等が挙げられる。吸着剤の形状は、必要となる反応速度、圧力損失、吸着剤の吸着量、吸着剤に吸着されるガス(吸着ガス)の純度(CO純度)等を勘案して決定すればよい。吸着剤の形状は、原料の形状と同じであってもよい。
<二酸化炭素除去方法>
本実施形態に係る二酸化炭素の除去方法は、本実施形態に係る吸着剤を、二酸化炭素を含有する処理対象ガスに接触させて二酸化炭素を当該吸着剤に吸着させる吸着工程を備える。
処理対象ガスは、二酸化炭素を含有するガスであれば特に限定されず、二酸化炭素以外のガス成分を含有していてもよい。二酸化炭素以外のガス成分としては、水(水蒸気、HO)、酸素(O)、窒素(N)、一酸化炭素(CO)、SOx、NOx、揮発性有機物(VOC)等が挙げられる。吸着工程において、処理対象ガスが水、一酸化炭素、SOx、NOx、揮発性有機物等を含有する場合、これらのガス成分は吸着剤に吸着される場合がある。処理対象ガスの具体例としては、プラント(特に大規模プラント)等から排出されるガス(例えば石炭火力発電所のボイラ排ガス)、自動車等の燃焼排ガスなどが挙げられる。ボイラ排ガス及び燃焼排ガスは、二酸化炭素(CO)、水(水蒸気、HO)、窒素(N)、酸素(O)、窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)、一酸化炭素(CO)、メタン(CH)、硫化水素(HS)等のハイドロカーボン類、灰塵などを含む。
ところで、ゼオライト等の吸着剤では、処理対象ガスが水を含有する場合にCO吸着量が大幅に低下する傾向がある。そのため、ゼオライト等の吸着剤を用いる方法において吸着剤のCO吸着量を向上させるためには、処理対象ガスを吸着剤に接触させる前に処理対象ガスから水分を取り除く除湿工程を行う必要がある。除湿工程は、例えば、除湿装置を用いて行われるため、設備の増加及びエネルギー消費量の増加につながる。一方、本実施形態に係る吸着剤は、処理対象ガスが水を含有する場合であっても、CO吸着量に優れている。そのため、本実施形態に係る二酸化炭素の除去方法では、除湿工程が不要であり、処理対象ガスが水を含有する場合であっても効率的に二酸化炭素を除去することができる。
処理対象ガスの露点は、0℃以上であってもよい。処理対象ガスの露点は、COとの反応性を高める観点から、−40℃以上50℃以下であってもよく、0℃以上40℃以下であってもよく、10℃以上30℃以下であってもよい。
処理対象ガスの相対湿度は、0%以上であってもよく、30%以上であってもよく、50%以上であってもよく、80%以上であってもよい。前記相対湿度は、例えば30℃における相対湿度である。
吸着工程において処理対象ガスを吸着剤に接触させる際の吸着剤の温度Tを調整することにより、二酸化炭素の吸着量を調整することができる。温度Tが高いほど吸着剤のCO吸着量が少なくなる傾向がある。温度Tは、−20〜100℃であってもよく、10〜40℃であってもよい。
吸着剤の温度Tは、吸着剤を加熱又は冷却することにより調整されてもよく、加熱及び冷却を併用してもよい。また、処理対象ガスを加熱又は冷却することにより間接的に吸着剤の温度Tを調整してもよい。吸着剤を加熱する方法としては、熱媒(例えば、加熱されたガス又は液体)を直接吸着剤に接触させる方法;伝熱管等に熱媒(例えば、加熱されたガス又は液体)を流通させ、伝熱面からの熱伝導により吸着剤を加熱する方法;電気的に発熱させた電気炉等により吸着剤を加熱する方法などが挙げられる。吸着剤を冷却する方法としては、冷媒(例えば、冷却されたガス又は液体)を直接吸着剤に接触させる方法;伝熱管等に冷媒(例えば、冷却されたガス又は液体)を流通させ、伝熱面からの熱伝導により冷却する方法などが挙げられる。
吸着工程において、吸着剤が存在する雰囲気の全圧(例えば、吸着剤を含む容器内の全圧)を調整することにより、二酸化炭素の吸着量を調整することができる。全圧が高いほど吸着剤のCO吸着量が多くなる傾向がある。全圧は、二酸化炭素の除去効率が更に向上する観点から、0.1気圧以上が好ましく、1気圧以上がより好ましい。全圧は、省エネルギーの観点から、10気圧以下であってもよく、2気圧以下であってもよく、1.3気圧以下であってもよい。全圧は、5気圧以上であってもよい。
吸着剤が存在する雰囲気の全圧は、加圧又は減圧することにより調整されてもよく、加圧及び減圧を併用してもよい。全圧を調整する方法としては、ポンプ、コンプレッサー等により機械的に圧力を調整する方法;吸着剤の周辺雰囲気の圧力とは異なる圧力を有するガスを導入する方法などが挙げられる。
本実施形態に係る二酸化炭素の除去方法は、前記吸着工程後に、二酸化炭素を吸着剤から脱着(脱離)させる脱着工程(脱離工程)を更に備えていてもよい。
二酸化炭素を吸着剤から脱着させる方法としては、吸着量の温度依存性を利用する方法(温度スイング法。温度変化に伴う吸着剤の吸着量差を利用する方法);吸着量の圧力依存性を利用する方法(圧力スイング法。圧力変化に伴う吸着材の吸着量差を利用する方法)等が挙げられ、これらの方法を併用してもよい(温度・圧力スイング法)。
吸着量の温度依存性を利用する方法では、例えば、脱着工程における吸着剤の温度を吸着工程よりも高くする。吸着剤を加熱する方法としては、上述した吸着工程において吸着剤を加熱する方法と同様の方法;周辺の排熱を利用する方法等が挙げられる。加熱に要するエネルギーを抑える観点からは、周辺の排熱を利用することが好ましい。
吸着工程における吸着剤の温度Tと、脱着工程における吸着剤の温度Tとの温度差(T−T)は、省エネルギーの観点から、200℃以下であってもよく、100℃以下であってもよく、50℃以下であってもよい。温度差(T−T1)は、吸着剤に吸着した二酸化炭素を脱着させやすい観点から、10℃以上であってもよく、20℃以上であってもよく、30℃以上であってもよい。脱着工程における吸着剤の温度Tは、例えば、40〜300℃であってもよく、50〜200℃であってもよく、80〜120℃であってもよい。
吸着量の圧力依存性を利用する方法では、吸着剤の存在する雰囲気の全圧(例えば、吸着剤を含む容器内の全圧)が高いほどCO吸着量が多くなることから、吸着工程の全圧よりも脱着工程の全圧が低圧となるように変化させることが好ましい。全圧は、加圧又は減圧することにより調整されてもよく、加圧及び減圧を併用してもよい。全圧を調整する方法としては、例えば、上述した吸着工程と同様の方法が挙げられる。脱着工程における全圧は、CO脱離量が多くなる観点から、周辺大気の圧力(例えば1気圧)であってもよく、1気圧未満であってもよい。
脱着工程により脱着して回収された二酸化炭素は、そのまま外気に排出してもよいが、二酸化炭素を利用する分野において再利用してもよい。例えば、温室栽培向けハウス等では、CO濃度を高めることで植物の成長が促進されることから、CO濃度を1000ppmレベルに高める場合があるため、回収された二酸化炭素を、CO濃度を高めることに再利用してもよい。
吸着剤にSOx、NOx、煤塵等が吸着した場合、吸着工程における吸着剤のCO吸着量が低下する可能性があるため、処理対象ガスはSOx、NOx、煤塵等を含有しないことが好ましい。処理対象ガスがSOx、NOx、煤塵等を含有する場合(例えば、処理対象ガスが、石炭火力発電所等から排出される排ガスである場合)、本実施形態に係る二酸化炭素の除去方法は、吸着剤のCO吸着量を保持しやすい観点から、吸着工程の前に、処理対象ガスからSOx、NOx、煤塵等の不純物を除去する不純物除去工程を更に備えることが好ましい。不純物除去工程は、脱硝装置、脱硫装置、脱塵装置等の除去装置を用いて行うことが可能であり、これらの装置の下流側において、処理対象ガスを吸着剤に接触させることができる。また、吸着剤にSOx、NOx、煤塵等の不純物が吸着した場合には、吸着剤を交換することの他、吸着剤を加熱することによって、吸着剤に吸着した不純物を除去することもできる。
脱着工程後の吸着剤は、再度、吸着工程に用いることができる。本実施形態に係る二酸化炭素の除去方法では、脱着工程後、吸着工程及び脱着工程を繰り返し行ってもよい。脱着工程において吸着剤を加熱した場合、上述の方法により吸着剤を冷却して吸着工程に用いてもよい。二酸化炭素を含有するガス(例えば、二酸化炭素を含有する処理対象ガス)を吸着剤に接触させることにより吸着剤を冷却してもよい。
本実施形態に係る二酸化炭素の除去方法は、高濃度CO環境において好適に実施することができる。したがって、二酸化炭素の除去方法は、例えば、火力発電所(例えば、石炭火力発電所)から排出される排気ガスの二酸化炭素を除去する方法として好適に実施することができる。
<二酸化炭素除去器及び二酸化炭素除去装置>
本実施形態に係る二酸化炭素除去器は、本実施形態に係る吸着剤を備える。本実施形態に係る二酸化炭素除去装置は、当該二酸化炭素除去器を備える。すなわち、二酸化炭素除去装置は、吸着剤と、当該吸着剤を内部に設置した容器と、を備える。二酸化炭素除去装置は、二酸化炭素を含有する処理対象ガスを吸着剤に接触させて、処理対象ガスから二酸化炭素を除去するために用いられる。
図1は、本実施形態の二酸化炭素除去装置を示す模式図である。図1に示すように、二酸化炭素除去装置100は、吸着剤1と、容器10と、ガス供給流路20と、第1ガス排出流路21と、第2ガス排出流路22と、ガス供給量調整部23と、第1ガス排出量調整部24と、第2ガス排出量調整部25と、第1ガス濃度検出部26と、第2ガス濃度検出部27と、温度検出部30と、温度調整部31と、圧力調整部32と、二酸化炭素回収部50と、制御部60と、を備えている。
吸着剤1は、容器10の内部に配置(例えば充填)されている。吸着剤1の充填量及び配置位置は、特に限定されない。吸着剤1は、例えば、容器10の中央部に充填されていてもよく、内壁面の一部に配置されていてもよい。吸着剤間の空隙が少ない(空隙率が低い)ほど、空隙内に残留する二酸化炭素以外のガス量が少なくなるため、吸着ガス中の二酸化炭素の純度を高めることができる。一方、吸着剤間の空隙が多い(空隙率が高い)ほど、圧力損失を小さくすることができる。吸着剤1の詳細は、上述のとおりである。
容器10には、ガス供給流路20と、第1ガス排出流路21と、第2ガス排出流路22と、温度検出部30と、圧力調整部32と、がそれぞれ接続されている。容器10の外部には、容器10内の温度を調整可能なように温度調整部31が設けられている。
容器10は、固定床式であってもよく、ローター式であってもよく、流動床式であってもよい。ローター式及び流動床式は、容器に流通させるガス(流通ガス)等の切り替えを行わず、吸着剤そのものを移動させる方式である。
固定床式の容器は、例えば、吸着剤1(例えば粒状の吸着剤)を容器内に充填し、吸着剤1自体は移動させずに処理対象ガス又は容器内の温度及び圧力を変化させることで二酸化炭素の吸着及び脱着を行うように構成されている。
ローター式の容器としては、例えば、容器と、容器内部に設けられた吸着剤充填部と、容器内に流通するガスを仕切るための仕切り板と、を備える容器が挙げられる。吸着剤充填部には吸着剤1が充填されている。この容器は、内部が仕切り板によって複数の領域に仕切られており、流通するガスの種類によって、二酸化炭素吸着領域、吸着剤加熱領域(CO脱離領域)、吸着剤冷却領域等に分けられている。そのため、この方式では、吸着剤充填部を回転させることで、吸着剤1を二酸化炭素吸着領域、吸着剤加熱領域(CO脱離領域)、吸着剤冷却領域等に移動させることができ、COの吸着(吸着工程)、吸着剤1の加熱(脱着工程)、吸着剤1の冷却(冷却工程)等の吸脱着サイクルを実施できる。
流動床式の容器は、例えば、吸着剤1の充填量を少なくすることで、動力(コンベヤ、ブロア等)によって吸着剤1が流動可能なように構成されている。流動床式の容器を用いる場合、例えば、処理対象ガスが流通する容器と、加熱用のガスが流通する加熱用容器を設置し、動力(コンベヤ、ブロア等)を用いて、吸着剤1(例えば、粒状又は粉状の吸着剤)を容器と加熱用容器の間で移動させることで、二酸化炭素の吸着と脱着を繰り返してもよい。この方式では、容器に流通させるガスの切り替えが不要であるため、配管、弁等の構成が簡単になる。
ガス供給流路20は、吸着工程において、処理対象ガスを容器に供給するための流路である。ガス供給流路20には、処理対象ガスの供給量を調整するためのバルブ(ガス供給量調整部)23と、処理対象ガス中のガス成分の濃度(例えば二酸化炭素の濃度)を検出するための第1ガス濃度検出部26とが設けられている。
第1ガス排出流路21は、吸着工程において、処理後のガス(二酸化炭素が除去された処理対象ガス)を容器から排出するための流路である。第1ガス排出流路21には、処理後のガスの排出量を調整するためのバルブ(第1ガス排出量調整部)24と、処理後のガス中のガス成分の濃度(例えば二酸化炭素の濃度)を検出するための第2ガス濃度検出部27とが設けられている。
第2ガス排出流路22は、脱着工程において、吸着剤から脱着した二酸化炭素を含むガスを排出するための流路である。第2ガス排出流路22には、二酸化炭素を含むガスの排出量を調整するためのバルブ(第2ガス排出量調整部)25が設けられている。第2ガス排出流路22の下流側の端部は、二酸化炭素回収部50に接続されている。
温度検出部30は、容器10内の温度(例えば、吸着剤1の温度)を検出するための機器で構成されている。容器10内の温度と容器10の内部に配置された吸着剤1の温度とは略同じであることから、温度検出部30は、容器10内の温度を検出することで、容器10の内部に配置された吸着剤1の温度を検出する。
圧力調整部32は、容器10内の圧力を調整するための機器で構成されている。圧力調整部32を構成する機器としては、全圧を調整する方法を実施可能な機器(ポンプ、コンプレッサー等)などが挙げられる。
温度調整部31は、容器10内の温度(例えば、吸着剤1の温度)を調整するための機器である。温度調整部31を構成する機器としては、上述の吸着剤を加熱する方法及び吸着剤を冷却する方法を実施可能な機器(電気炉、伝熱管等)などが挙げられる。
ガス供給量調整部23、第1ガス排出量調整部24、第2ガス排出量調整部25、第1ガス濃度検出部26、第2ガス濃度検出部27、温度検出部30、温度調整部31、及び圧力調整部32は、それぞれ制御部60と電気的に接続されている。制御部60は、第1ガス濃度検出部26、第2ガス濃度検出部27、及び温度検出部30からの電気的信号に基づき、ガス供給量調整部23、第1ガス排出量調整部24、第2ガス排出量調整部25、温度調整部31、及び圧力調整部32の動作を制御する。
以上、本実施形態の二酸化炭素除去装置について説明したが、二酸化炭素除去装置は上記実施形態に限定されない。
例えば、図1に示す温度調整部31は容器10の外部に設けられているが、温度調整部は容器内に設けられていてもよい。図1に示すガス供給量調整部23、第1ガス排出量調整部24及び第2ガス排出量調整部25はバルブであるが、他の機器で構成されていてもよい。
図1に示す二酸化炭素除去装置100は、ガス供給量調整部23、第1ガス排出量調整部24、第2ガス排出量調整部25、第1ガス濃度検出部26、第2ガス濃度検出部27、温度調整部31、圧力調整部32、二酸化炭素回収部50、及び制御部60を備えているが、二酸化炭素除去装置は、これらの構成の一部を備えていなくてもよい。
以下、実施例及び比較例を用いて本発明の内容を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<炭酸水酸化セリウム(III)の調製>
0.83gの尿素を溶解したイオン交換水30mL中に、硝酸セリウム(III)六水和物2.0gを加え、溶解した。尿素の量は、セリウムに対し3倍の物質量とした。この溶液を、テフロン(登録商標)製の耐圧容器に入れ、100℃で24時間保持すると白色の沈殿物を得た。得られた沈殿物をろ過、洗浄により回収した。これにより、炭酸水酸化セリウム(III)を調製した。
<酸化セリウム(IV)の調製>
(実施例1)
次の手順により、上述の方法で調製した炭酸水酸化セリウム(III)0.7gを空気中で焼成した。まず、電気炉にて、焼成温度285℃まで10℃/分で昇温した後、当該温度(285℃)で10分温度を保持した。これにより、実施例1の酸化セリウム(IV)を得た。
実施例1のXRD測定結果を図2に示す。図2には、比較のため、市販の酸化セリウム(IV)(関東化学株式会社製)のXRD測定結果も併せて示す。
(比較例1)
国際公開第2017/199917号に記載の実施例1と同様の方法で炭酸セリウム(Ce(CO)15gを空気中で焼成した。まず、電気炉にて120℃まで5℃/分で昇温した後、120℃で1時間温度を保持した。その後、焼成温度300℃まで5℃/分で昇温した後、当該温度(300℃)で1時間温度を保持した。これにより、比較例1の酸化セリウム(IV)を得た。比較例1の酸化セリウム(IV)は黄白色の粉末であった。
<二酸化炭素の吸着量及び脱離量の評価>
二酸化炭素の吸着量及び脱離量の評価には、熱重量分析装置を用いた。二酸化炭素を流通させた熱重量分析装置に、評価のための試料(実施例1又は比較例1の酸化セリウム)をセットし、前処理として250℃で10分間保持した。この操作は、試料に吸着している空気中の二酸化炭素及び水を脱離することを目的としており、この10分間保持後の試料の質量を、二酸化炭素の吸着量がゼロである酸化セリウム(IV)の質量(250℃質量)として扱った。250℃での処理の後、熱重量分析装置内を25℃まで降温し、その温度で1時間保持して二酸化炭素を吸着させた。この1時間後の試料の質量を、二酸化炭素が飽和吸着した酸化セリウム(IV)の質量(25℃質量)として扱った。250℃質量は、吸着剤の質量(吸着剤CeO)を示し、25℃質量と250℃質量との差は、吸着した二酸化炭素の質量(吸着CO)を示す。
続いて、25℃で二酸化炭素を飽和吸着させた後、2℃/分の速度で温度を上げ、酸化セリウム(IV)から脱離する二酸化炭素の量を重量減少から算出した。この昇温過程T℃における質量をT℃質量とした。そして、吸着率(満吸着率)及び脱離率(低温脱離率)を、それぞれ下記式に従って算出した。結果を図3(吸着率)及び図4(脱離率)に示す。
吸着率(%)=吸着CO(g)/吸着剤CeO(g)×100
={(25℃質量)−(250℃質量)}/(250℃質量)×100
脱離率(%)={(25℃質量)−(T℃質量)}/(250℃質量)×100
1…吸着剤、10…容器、30…温度検出部、31…温度調整部、60…制御部。

Claims (7)

  1. 炭酸水酸化セリウム(III)を焼成する焼成工程を備える、酸化セリウム(IV)の製造方法。
  2. 前記焼成工程における焼成温度が300℃以下である、請求項1に記載の酸化セリウム(IV)の製造方法。
  3. 前記焼成工程の前に、3価のセリウムイオン、尿素及び水を含む混合液を反応させて、前記炭酸水酸化セリウム(III)を得る反応工程を更に備える、請求項1又は2に記載の酸化セリウム(IV)の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の酸化セリウム(IV)の製造方法により得られる、酸化セリウム(IV)。
  5. 二酸化炭素を含有する処理対象ガスから二酸化炭素を除去するために用いられる吸着剤であって、請求項4に記載の酸化セリウム(IV)を含む、吸着剤。
  6. 二酸化炭素を含有する処理対象ガスを請求項5に記載の吸着剤に接触させて、前記二酸化炭素を前記吸着剤に吸着させる吸着工程を備える、二酸化炭素の除去方法。
  7. 二酸化炭素を含有する処理対象ガスから二酸化炭素を除去するために用いられる二酸化炭素除去装置であって、
    請求項5に記載の吸着剤と、前記吸着剤を内部に設置した容器と、を備える、二酸化炭素除去装置。
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