JP2019137960A - スパンボンド不織布 - Google Patents

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Abstract

【課題】紡糸性が良好で生産性の高いポリオレフィン系繊維からなり、表面が滑らかで風合いや肌触りに優れ、さらに高い柔軟性を有するスパンボンド不織布の提供。【解決手段】ポリオレフィン系繊維から構成されるスパンボンド不織布であって、前記の繊維の平均単繊維径が6.5〜20μmであり、広角X線回析による見かけの結晶化度が66%以下であり、広角X線回析による結晶配向度が0.91以上であり、広角X線回析による(110)面の結晶子サイズが12nm以上であるスパンボンド不織布。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリオレフィン系繊維からなり、特に衛生材料用途としての使用に適したスパンボンド不織布に関するものである。
一般に、紙おむつや生理用ナプキン等の衛生材料用の不織布には、風合い、肌触り、柔軟性および高い生産性が求められている。特に、紙おむつのトップシートは肌に直接触れる素材であることから、肌触りや柔軟に対する要求が高い用途の一つである。
このように、風合い、肌触りおよび柔軟性を向上させる手段としては、従来から不織布を構成する繊維の繊維径をコントロールする手法が効果的であることが知られている。例えば、繊維の繊度と吸着力を特定の範囲とすることにより、繊維自体の曲げ柔らかさを向上させたスパンボンド不織布が提案されている(特許文献1参照。)。
また、比較的メルトフローレートの大きいポリプロピレン系樹脂を原料として用い、ドラフト比を1500以上とすることにより、単繊維繊度を1.5デニール以下まで細径化し、柔軟性と機械的強度を両立させる方法が提案されている(特許文献2参照。)。
特開2013−159884号公報 特許第4943349号公報
しかしながら、特許文献1に開示された方法では、比較的メルトフローレートの小さい、すなわち高粘度のポリプロピレン系樹脂を原料として用い、紡糸速度を5,000m/分のように高速化することにより繊維を細径化しているため、糸切れが発生しやすく、安定的に生産をすることが困難であった。
さらに特許文献1においては、70℃以上の融点を有するエステル化合物を含有させることにより、不織布にすべすべ感を付与して肌触りを向上させることも示されている。しかしながら、この提案では確かに摩擦係数は低下するものの、要求されるレベルに照らすと不織布の滑らかさは十分満足できるものではなく、さらなる肌触りの向上が求められていた。
一方、特許文献2に開示された方法では、比較的メルトフローレートの大きいポリプロピレン系樹脂を原料として用い、ドラフト比を1500以上とすることにより細径化しているため、低粘度の原料を大きい孔径の口金で紡糸する必要がある。このことにより、口金背圧が掛かりにくく、均一な紡出ができずに糸切れや繊維径ムラが発生しやすいという課題があった。
そこで本発明の目的は、上記の課題に鑑み、紡糸性が良好で生産性の高いポリオレフィン系繊維からなり、表面が滑らかで風合いや肌触りに優れ、さらに高い柔軟性を有するスパンボンド不織布を提供することにある。
本発明者は、スパンボンド不織布を構成する繊維に用いられるポリオレフィン系樹脂の結晶性、特に、見かけの結晶化度、結晶配向度、結晶子サイズに着目し、これらを特定の範囲とすることによって、機械的特性と品位に優れたスパンボンド不織布を得ることについて鋭意研究を進め、本発明を完成させた。
本発明のスパンボンド不織布は、ポリオレフィン系樹脂(A)からなる繊維により構成されるスパンボンド不織布であって、前記繊維の平均単繊維径が6.5〜20μmであり、広角X線回析による見かけの結晶化度が66%以下であり、広角X線回析による結晶配向度が0.91以上であり、かつ広角X線回析による(110)面の結晶子サイズが12nm以上であることを特徴とするスパンボンド不織布である。
本発明のスパンボンド不織布の好ましい態様によれば、前記のスパンボンド不織布のメルトフローレートは、155〜850g/10分である。
本発明のスパンボンド不織布の好ましい態様によれば、前記のポリオレフィン系樹脂(A)が、低結晶性のポリオレフィン系樹脂(B)を混練されてなることである。
本発明のスパンボンド不織布の好ましい態様によれば、前記の低結晶性のポリオレフィン系樹脂(B)の混練比率が、20質量%以下である。
本発明のスパンボンド不織布の好ましい態様によれば、前記の低結晶性のポリオレフィン系樹脂が、エチレン−プロピレン共重合体である。
本発明のスパンボンド不織布の好ましい態様によれば、前記のポリオレフィン系樹脂(A)からなる繊維が、ポリプロピレン系樹脂からなる繊維により構成されてなることである。
本発明によれば、紡糸性が良好で生産性の高いポリオレフィン系繊維からなり、表面が滑らかで風合いや肌触りに優れ、さらに高い柔軟性を有するスパンボンド不織布が得られる。これらの特性から、本発明のスパンボンド不織布は、特に衛生材料用途として好適に用いることができる。
本発明のスパンボンド不織布は、ポリオレフィン系樹脂からなる繊維により構成されたスパンボンド不織布であって、前記繊維の平均単繊維径が6.5〜20.0μmであり、広角X線回析による見かけの結晶化度が66%以下であり、広角X線回析による結晶配向度が0.91以上であり、広角X線回析による(110)面の結晶子サイズが12nm以上であることを特徴とするスパンボンド不織布である。
このようにすることにより、熱接着性が良く低圧着条件でも接着が可能になり、風合いや肌触りに優れ、かつ柔軟性に優れたスパンボンド不織布とすることができる。以下、これらの詳細について説明する。
[ポリオレフィン系樹脂]
本発明で用いられるポリオレフィン系樹脂は、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン樹脂等が挙げられる。ポリエチレン系樹脂としては、エチレンの単独重合体もしくはエチレンと各種α−オレフィンとの共重合体などが挙げられる。また、ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンの単独重合体もしくはプロピレンと各種α−オレフィンとの共重合体などが挙げられる。好ましくは、紡糸性や機械的強度の特性の観点から、特にポリプロピレン系樹脂が用いられる。
また、本発明で用いられるポリオレフィン系樹脂は、2種以上の混合物であってもよく、さらに、主成分となる樹脂の他に、その他のオレフィン系樹脂や熱可塑性エラストマー等が混練された樹脂組成物を用いることもできる。中でも、柔軟性付与の観点から低結晶性のオレフィン系樹脂が好ましい。このような低結晶性のオレフィン系樹脂としては、例えばエチレン−プロピレン共重合体や、低立体規則性ポリプロピレンなどが好適に用いられる。他成分樹脂の混練比率は、ポリオレフィン系樹脂の特性を十分に発現させるため、20質量%以下が好ましく、より好ましくは15質量%以下である。また、前記の柔軟性付与の効果を十分に発揮するためには、8質量%以上とすることが、より好ましい。
本発明で用いられるポリオレフィン系樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲で、通常用いられる酸化防止剤、耐候安定剤、耐光安定剤、帯電防止剤、紡曇剤、ブロッキング防止剤、滑剤、核剤、および顔料等の添加物、あるいは他の重合体を必要に応じて添加することができる。
本発明で用いられるポリオレフィン系樹脂の融点は、80〜200℃であることが好ましく、より好ましくは100〜180℃であり、さらに好ましくは120〜180℃である。融点を好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上、さらに好ましくは120℃以上とすることにより、実用に耐え得る耐熱性が得られやすくなる。また、融点を好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下とすることにより、口金から吐出された糸条を冷却しやすくなり、繊維同士の融着を抑制し安定した紡糸が行いやすくなる。
本発明のポリオレフィン系樹脂のアイソタクチックペンタッド分率は0.94以上であることが好ましい。アイソタクチックペンタッド分率が0.94を下回ると得られる不織布の機械的強度が低下し、実用に供しうる機械的強度が得られなくなる恐れがある。
本発明のアイソタクチックペンタッド分率は、13C核磁気共鳴(13C−NMR)を用いて測定される、ポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック分率であり、周知の方法(例えば、A.Zambelli、「マクロモリキュールス(Macromolecules)」、1973年、第6巻、p.625、あるいは、同、「マクロモリキュールス(Macromolecules)」、1975年、第8巻、p.687に記載された方法)で測定されるものであって、13C−NMRスペクトルのメチル炭素領域の全吸収ピーク中mmmmピークの強度分率により測定される。
本発明のスパンボンド不織布の原料であるポリオレフィン系樹脂のメルトフローレート(以下、MFRと記載する場合がある。)は、155g/10分以上850g/10分以下であることが好ましい。MFRは、より好ましくは170g/分以上、さらに好ましくは200g/10分以上であり、かつ、より好ましくは600g/10分以下、さらに好ましくは400g/10分以下とすることにより、生産性を高くするために速い紡糸速度で延伸したとしても、変形に対し容易に追従することができ、安定した紡糸が可能となる。また、安定して速い紡糸速度で延伸することが可能となるため、繊維の配向結晶化を進め、高い機械的強度を有する繊維とすることができる。当然、MFRの異なる2種類以上の樹脂を任意の割合でブレンドして、ポリオレフィン系樹脂のMFRを調整することもできる。この場合、主となるポリオレフィン系樹脂に対してブレンドする樹脂のMFRは、10〜1000g/10分であることが好ましく、より好ましくは20〜800g/10分、さらに好ましくは30〜600g/10分である。このようにすることにより、ブレンドしたポリオレフィン系樹脂に部分的に粘度斑が生じ、繊度が不均一化したり、紡糸性が悪化したりすることを防ぐことができる。
なお、本発明のスパンボンド不織布に用いられる、ポリオレフィン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、ASTM D−1238(A法)に基づき、荷重が2160gで、温度が230℃の条件で測定される。
また、後述する繊維を紡出する際、部分的な粘度斑の発生を防ぎ、繊維の繊度を均一化し、さらに繊維径を後述するように細くするため、用いる樹脂に対して、この樹脂を分解してMFRを調整することも考えられる。しかしながら、例えば、過酸化物、特に、ジアルキル過酸化物等の遊離ラジカル剤などを添加しないことが好ましい。この手法を用いた場合、部分的に粘度斑が発生して繊度が均一化し、十分に繊維径を細くすることが困難となる他、粘度斑や分解ガスによる気泡で紡糸性が悪化する場合もある。
[ポリオレフィン系樹脂からなる繊維]
本発明のスパンボンド不織布を構成する、ポリオレフィン系樹脂からなる繊維は、平均単繊維径が6.5〜20.0μmであることが重要である。平均単繊維径を6.5μm以上とし、好ましくは7.5μm以上とし、より好ましくは8.5μm以上とすることにより、紡糸性の低下を防ぎ、安定して品質の良いスパンボンド不織布を生産することができる。一方、平均単繊維径を20.0μm以下とし、好ましくは16.0μm以下とし、より好ましくは12.0μm以下とすることにより、柔軟性を向上させ、かつ均一性の高いスパンボンド不織布とすることができる。
上記のポリオレフィン系樹脂からなる繊維は、単繊維径のCV値が7%以下であることが好ましい。単繊維径のCV値を好ましくは7%以下とし、より好ましくは6%以下とし、さらに好ましくは5%以下とすることにより、表面にざらつき感が生じることを防ぎ、均一性の高いスパンボンド不織布とすることができる。単繊維径のCV値には、紡糸口金の背圧や糸冷却条件、延伸条件の均一性が支配的であり、これらを適切に調整することにより制御することができる。
また、上記のポリオレフィン系樹脂からなる繊維は、複数のポリオレフィン系樹脂を組み合わせた複合型繊維を用いることができる。複合型繊維の複合形態としては、例えば、同心芯鞘型、偏心芯鞘型および海島型などの複合形態が挙げられる。中でも、紡糸性に優れ、熱接着により繊維同士を均一に接着させることができることから、同心芯鞘型の複合形態とすることが好ましい態様である。
さらに、本発明のスパンボンド不織布を構成する、ポリオレフィン系樹脂からなる繊維は、広角X線回析による見かけの結晶化度が66%以下であることが重要である。好ましくは63%以下、より好ましくは60%以下とすることにより、熱により軟化しやすい非晶部が増加するため、スパンボンド不織布の熱接着性が向上する。その結果、低圧着条件での接着が可能になるため、風合いや肌触りに優れ、かつ柔軟性に優れたスパンボンド不織布とすることができる。一方、広角X線回析による見かけの結晶化度を40%以上とし、好ましくは43%以上、より好ましくは46%以上とすることにより、熱接着時における繊維の収縮を防ぎ、シワや幅入りを抑制することが出来る。
本発明のスパンボンド不織布を構成する、ポリオレフィン系樹脂からなる繊維の広角X線回折による見かけの結晶化度(%)は、以下に記載の方法により測定された値を指す。
(1)スパンボンド不織布より繊維20本を切出し、繊維軸が同一方向になるようにまとめる。
(2)X線回折装置を用いて(1)の試料の広角X線回折測定を実施し、赤道線方向のX線回折プロファイルを得る。なお、X線回折装置としては、Rigaku社製SmartLab(封入管式)等が用いられる。
・X線源: CuKα線(Niフィルター使用)
・出力: 40kV、50mA
・検出器: D/teX 一次元検出器
・入射スリット: 2mmH×2.2mmW
・受光スリット: 15mm−20mm
(3)赤道線の回析パターンを用いて回析を行い、結晶配向の影響は無視しているため、実際の結晶化度より高く算出する傾向にある。そこで、以下の式によって結晶化度を算出し、「見かけの結晶化度」とした。
・見かけの結晶化度(%)=(結晶のピークの面積の総和)/(結晶と非晶のピーク面積の総和)×100
本発明のスパンボンド不織布を構成するポリオレフィン系樹脂からなる繊維の広角X線回折による結晶配向度は、0.91以上であることが重要である。好ましくは0.92以上であり、より好ましくは0.93以上である。結晶配向度を0.91以上とすることにより、繊維軸に沿って結晶C軸が配列するため、優れた機械的強度を有する繊維となる。なお、本発明で達しえる結晶配向度の上限は1.00である。本発明におけるポリオレフィン繊維の広角X線回折による結晶配向度は、以下に記載の方法により測定された値を指す。
(1)スパンボンド不織布より繊維20本を切出し、繊維軸が同一方向になるようにまとめる。
(2)X線回折装置を用いて(1)の試料の広角X線回折測定を実施し、(110)面に対応するピークの円周方向のX線回折プロファイルを得る。なお、X線回折装置としては、Rigaku社製SmartLab(封入管式)等が用いられる。
・X線源: CuKα線(Niフィルター使用)
・出力: 40kV、50mA
・検出器: D/teX 一次元検出器
・入射スリット: 2mmH×2.2mmW
・受光スリット: 5mm−5mm
(3)当該ピークの半値幅H(°)より結晶配向度を下式によって算出する。
・結晶配向度π=(180−H)/180
本発明のスパンボンド不織布を構成するポリオレフィン系繊維の広角X線回折による(110)面の結晶子サイズは、12nm以上であることが重要であり、好ましくは13nm以上であり、より好ましくは14nm以上である。(110)面の結晶子サイズを12nm以上とすることにより、優れた機械的強度を有した繊維となる。本発明におけるポリオレフィン繊維の広角X線回折による(110)面の結晶子サイズは、以下に記載の方法により測定された値を指す。
(1)スパンボンド不織布より繊維20本を切出し、繊維軸が同一方向になるようにまとめる。
(2)X線回折装置を用いて(1)の試料の広角X線回折測定を実施し、(110)面に対応するピークの赤道線方向のX線回折プロファイルを得る。なお、X線回折装置としては、Rigaku社製SmartLab(封入管式)等が用いられる。
・X線源: CuKα線(Niフィルター使用)
・出力: 40kV、50mA
・検出器: D/teX 一次元検出器
・入射スリット: 2mmH×2.2mmW
・受光スリット: 15mm−20mm
(3)結晶子サイズを、ピークの半値幅β(°)より下式(Scherrerの式)を用いて算出する。
・結晶子サイズL(nm)=0.9λ/((β −β 0.5×cosθ)
なお、式中、λは入射X線波長、βは半値幅の補正値、θはピークトップのブラッグ角(°)を表す。
本発明のスパンボンド不織布を構成する、ポリオレフィン系樹脂からなる繊維には、滑り性や柔軟性を向上させるために、炭素数23以上50以下の脂肪酸アミド化合物(C)が含有されていることが好ましい態様である。
ポリオレフィン系樹脂からなる繊維に混合される脂肪酸アミド化合物の炭素数により、脂肪酸アミド化合物の繊維表面への移動速度が変わることが知られている。脂肪酸アミド化合物の炭素数を好ましくは23以上とし、より好ましくは30以上とすることにより、脂肪酸アミド化合物が過度に繊維表面に露出することを抑制し、紡糸性と加工安定性に優れたものとし、高い生産性を保持することができる。一方、脂肪酸アミド化合物の炭素数を好ましくは50以下とし、より好ましくは42以下とすることにより、脂肪酸アミド化合物が繊維表面に移動しやすくなり、スパンボンド不織布に滑り性と柔軟性を付与することができる。
本発明で使用される炭素数23以上50以下の脂肪酸アミド化合物としては、飽和脂肪酸モノアミド化合物、飽和脂肪酸ジアミド化合物、不飽和脂肪酸モノアミド化合物、および不飽和脂肪酸ジアミド化合物などが挙げられる。
具体的には、炭素数23以上50以下の脂肪酸アミド化合物として、テトラドコサン酸アミド、ヘキサドコサン酸アミド、オクタドコサン酸アミド、ネルボン酸アミド、テトラコサエンタペン酸アミド、ニシン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、メチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド、ジステアリルアジピン酸アミド、ジステアリルセバシン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、およびヘキサメチレンビスオレイン酸アミドなどが挙げられ、これらは複数組み合わせて用いることもできる。
本発明では、これらの脂肪酸アミド化合物の中でも、特に飽和脂肪酸ジアミド化合物であるエチレンビスステアリン酸アミドが好ましく用いられる。エチレンビスステアリン酸アミドは、熱安定性に優れているため溶融紡糸が可能であり、このエチレンビスステアリン酸アミドが配合されたポリオレフィン繊維により、高い生産性を保持しながら、滑り性や柔軟性に優れたスパンボンド不織布を得ることができる。
本発明では、このポリオレフィン系樹脂からなる繊維に対する脂肪酸アミド化合物の添加量は、0.01〜5.0質量%であることが好ましい態様である。脂肪酸アミド化合物の添加量を好ましくは0.01〜5.0質量%とし、より好ましくは0.1〜3.0質量%とし、さらに好ましくは0.1〜1.0質量%とすることにより、紡糸性を維持しながら適度な滑り性と柔軟性を付与することができる。
ここでいう添加量とは、本発明のスパンボンド不織布を構成するポリオレフィン系樹脂からなる繊維、具体的には、ポリオレフィン系繊維を構成する樹脂全体に対して添加した脂肪酸アミド化合物の質量パーセントを言う。例えば、芯鞘型複合繊維を構成する鞘部成分のみに脂肪酸アミド化合物を添加する場合でも、芯鞘成分全体量に対する添加割合を算出している。
[スパンボンド不織布]
本発明のスパンボンド不織布のメルトフローレート(以下、MFRと記載する場合がある。)は、上記の理由と同じく、155g/10分以上850g/10分以下であることが好ましい。MFRは、より好ましくは170g/分以上、さらに好ましくは200g/10分以上であり、かつ、より好ましくは600g/10分以下、さらに好ましくは400g/10分以下である。
スパンボンド不織布のメルトフローレート(MFR)は、ASTM D−1238(A法)に基づき、荷重が2160gで、温度が230℃の条件で測定される。
本発明のスパンボンド不織布の見かけ密度は、0.05〜0.3g/cmであることが好ましい。見かけ密度を好ましくは0.3g/cm以下とし、より好ましくは0.25g/cm以下とし、さらに好ましくは0.20g/cm以下とすることにより、繊維が密にパッキングしてスパンボンド不織布の柔軟性が損なわれることを防ぐことができる。一方、見かけ密度を好ましくは0.05g/cm以上とし、より好ましくは0.08g/cm以上とし、さらに好ましくは0.10g/cm以上とすることにより、毛羽立ちや層間剥離の発生を抑え、実用に耐え得る機械的強度や取り扱い性を備えたスパンボンド不織布とすることができる。
本発明のスパンボンド不織布の目付は、10〜100g/mであることが好ましい。目付を好ましくは10g/m以上とし、より好ましくは13g/m以上とし、さらに好ましくは15g/m以上とすることにより、実用に供し得る機械的強度のスパンボンド不織布を得ることができる。一方、目付を好ましくは100g/m以下、より好ましくは50g/m以下、さらに好ましくは30g/m以下とすることにより、衛生材料用の不織布としての使用に適した適度な柔軟性を有するスパンボンド不織布とすることができる。
本発明のスパンボンド不織布の厚みは、0.05〜1.5mmであることが好ましい。厚みを好ましくは0.05〜1.5mm、より好ましくは0.08〜1.0mm、さらに好ましくは0.10〜0.8mmとすることにより、柔軟性と適度なクッション性を備え、衛生材料用のスパンボンド不織布として、特に紙おむつ用途での使用に適したスパンボンド不織布とすることができる。
本発明のスパンボンド不織布の目付あたりの5%伸長時応力(以下、目付あたりの5%モジュラスと記載することがある。)は、0.06〜0.33(N/25mm)/(g/m)であることが好ましく、より好ましくは0.13〜0.30(N/25mm)/(g/m)であり、さらに好ましくは0.20〜0.27(N/25mm)/(g/m)である。このようにすることにより、実用に供しうる強度を保持しつつ、柔軟で触感に優れたスパンボンド不織布とすることができる。
なお、本発明において、スパンボンド不織布の目付あたりの5%伸長時応力は、JIS L1913(2010年)の「6.3 引張強さ及び伸び率(ISO法)」に準じ、以下の手順によって測定される値を採用するものとする。
(1)25mm×300mmの試験片を、不織布の縦方向(不織布の長手方向)と横方向(不織布の幅方向)それぞれについて幅1m当たり3枚採取する。
(2)試験片をつかみ間隔200mmで引張試験機にセットする。
(3)引張速度100mm/分で引張試験を実施し、5%伸長時の応力(5%モジュラス)を測定する。
(4)各試験片で測定した縦方向と横方向の5%モジュラスの平均値を求め、次の式に基づいて目付あたりの5%モジュラスを算出し、小数点以下第三位を四捨五入する。
・目付あたりの5%モジュラス((N/25mm)/(g/m))=[5%モジュラスの平均値(N/25mm)]/目付(g/m)。
[スパンボンド不織布の製造方法]
次に、本発明のスパンボンド不織布を製造する方法の好ましい態様について、具体的に説明する。
本発明のスパンボンド不織布は、スパンボンド(S)法により製造される長繊維不織布である。不織布の製造方法として、一般にはスパンボンド法、フラッシュ紡糸法、湿式法、カード法およびエアレイド法等を挙げることができるが、スパンボンド法は、生産性や機械的強度に優れている他、短繊維不織布で起こりやすい毛羽立ちや繊維の脱落を抑制することができる。また、スパンボンド(S)不織布層を、SS、SSSおよびSSSSと複数層積層することにより、生産性や地合均一性が向上するため好ましい態様である。
スパンボンド法では、まず溶融した熱可塑性樹脂を紡糸口金から長繊維として紡出し、これをエジェクターにより圧縮エアで吸引延伸した後、移動するネット上に繊維を捕集して不織繊維ウェブ化する。さらに得られた不織繊維ウェブに熱接着処理を施し、スパンボンド不織布が得られる。
紡糸口金やエジェクターの形状としては、丸形や矩形等、種々の形状のものを採用することができる。なかでも、圧縮エアの使用量が比較的少なくエネルギーコストに優れること、糸条同士の融着や擦過が起こりにくく、糸条の開繊も容易であることから、矩形口金と矩形エジェクターの組み合わせが好ましく用いられる。
本発明では、ポリオレフィン系樹脂を押出機において溶融し、計量して紡糸口金へと供給し、長繊維として紡出する。ポリオレフィン系樹脂を溶融し紡糸する際の紡糸温度は、200〜270℃であることが好ましく、より好ましくは210〜260℃であり、さらに好ましくは220〜250℃である。紡糸温度を上記範囲内とすることにより、安定した溶融状態とし、優れた紡糸安定性を得ることができる。
紡出された長繊維の糸条は、次に冷却される。紡出された糸条を冷却する方法としては、例えば、冷風を強制的に糸条に吹き付ける方法、糸条周りの雰囲気温度で自然冷却する方法、および紡糸口金とエジェクター間の距離を調整する方法等が挙げられ、またはこれらの方法を組み合わせる方法を採用することができる。また、冷却条件は、紡糸口金の単孔あたりの吐出量、紡糸温度および雰囲気温度等を考慮して適宜調整して採用することができる。
次に、冷却固化された糸条は、エジェクターから噴射される圧縮エアによって牽引され、延伸される。
紡糸速度は、3,500〜6,500m/分であることが好ましく、より好ましくは4,000〜6,500m/分であり、さらに好ましくは4,500〜6,500m/分である。紡糸速度を3,500〜6,500m/分とすることにより、高い生産性を有することになり、また繊維の配向結晶化が進み、高い機械的強度の長繊維を得ることができる。通常では紡糸速度を上げていくと、紡糸性は悪化して糸状を安定して生産することができないが、前述したとおり特定の範囲のMFRを有するポリオレフィン系樹脂を用いることにより、意図するポリオレフィン系繊維を安定して紡糸することができる。
続いて、得られた長繊維を、移動するネット上に捕集して不織繊維ウェブ化する。
本発明では、不織繊維ウェブに対して、ネット上でその片面から熱フラットロールを当接して仮接着させることも好ましい態様である。このようにすることにより、ネット上を搬送中に不織繊維ウェブの表層がめくれたり吹き流れたりして地合が悪化することを防いだり、糸条を捕集してから熱圧着するまでの搬送性を改善することができる。
続いて、得られた不織繊維ウェブを、熱接着により一体化することにより、意図するスパンボンド不織布を得ることができる。
不織繊維ウェブを熱接着により一体化する方法としては、上下一対のロール表面にそれぞれ彫刻(凹凸部)が施された熱エンボスロール、片方のロール表面がフラット(平滑)なロールと他方のロール表面に彫刻(凹凸部)が施されたロールとの組み合わせからなる熱エンボスロール、および上下一対のフラット(平滑)ロールの組み合わせからなる熱カレンダーロールなど、各種ロールにより熱接着する方法や、ホーンの超音波振動により熱溶着させる超音波接着などの方法が挙げられる。なかでも、生産性に優れ、部分的な熱接着部で機械的強度を付与し、かつ非接着部で不織布ならではの風合いや肌触りを保持することができることから、上下一対のロール表面にそれぞれ彫刻(凹凸部)が施された熱エンボスロール、または片方のロール表面がフラット(平滑)なロールと他方のロール表面に彫刻(凹凸部)が施されたロールとの組み合わせからなる熱エンボスロールを用いることが好ましい態様である。
熱エンボスロールの表面材質としては、十分な熱圧着効果を得て、かつ片方のエンボスロールの彫刻(凹凸部)が他方のロール表面に転写することを防ぐため、金属製ロールと金属製ロールを対にすることが好ましい態様である。
このような熱エンボスロールによるエンボス接着面積率は、5〜30%であることが好ましい。接着面積を好ましくは5%以上とし、より好ましくは8%以上とし、さらに好ましくは10%以上することにより、スパンボンド不織布として実用に供し得る機械的強度を得ることができる。一方、接着面積を好ましくは30%以下とし、より好ましくは25%以下とし、さらに好ましくは20%以下とすることにより、衛生材料用のスパンボンド不織布として、特に紙おむつ用途での使用に適した適度な柔軟性を得ることができる。超音波接着を用いる場合でも、接着面積率は同様の範囲であることが好ましい。
ここでいう接着面積とは、接着部がスパンボンド不織布全体に占める割合のことを言う。具体的には、一対の凹凸を有するロールにより熱接着する場合は、上側ロールの凸部と下側ロールの凸部とが重なって不織繊維ウェブに当接する部分(接着部)のスパンボンド不織布全体に占める割合のことを言う。また、凹凸を有するロールとフラットロールにより熱接着する場合は、凹凸を有するロールの凸部が不織繊維ウェブに当接する部分(接着部)のスパンボンド不織布全体に占める割合のことを言う。また、超音波接着する場合は、超音波加工により熱溶着させる部分(接着部)のスパンボンド不織布全体に占める割合のことを言う。
熱エンボスロールや超音波接着による接着部の形状としては、円形、楕円形、正方形、長方形、平行四辺形、ひし形、正六角形および正八角形などを用いることができる。また接着部は、スパンボンド不織布の長手方向(搬送方向)と幅方向にそれぞれ一定の間隔で均一に存在していることが好ましい。このようにすることにより、スパンボンド不織布の機械的強度のばらつきを低減することができる。
熱接着時の熱エンボスロールの表面温度は、使用しているポリオレフィン系樹脂の融点(T)に対し15〜50℃低くすることが好ましい態様である。熱ロールの表面温度を、好ましくは(T−50)℃以上とし、より好ましくは(T−45)℃以上とすることにより、適度に熱接着させ実用に供しうる機械的強度のスパンボンド不織布を得ることができる。また、熱エンボスロールの表面温度を好ましくは(T−15)℃以下とし、より好ましくは(T−20)℃以下とすることにより、過度な熱接着を抑制し、衛生材料用のスパンボンド不織布として、特に紙おむつ用途での使用に適した適度な柔軟性を得ることができる。
熱接着時の熱エンボスロールの線圧は、50〜500N/cmとすることが好ましい。ロールの線圧を好ましくは50N/cm以上とし、より好ましくは100N/cm以上とし、さらに好ましくは150N/cm以上とすることにより、適度に熱接着させ実用に供しうる機械的強度のスパンボンド不織布を得ることができる。一方、熱エンボスロールの線圧を好ましくは500N/cm以下とし、より好ましくは400N/cm以下とし、さらに好ましくは300N/cm以下とすることにより、衛生材料用のスパンボンド不織布として、特に紙おむつ用途での使用に適した適度な柔軟性を得ることができる。
また本発明では、スパンボンド不織布の厚みを調整することを目的に、上記の熱エンボスロールによる熱接着の前および/あるいは後に、上下一対のフラットロールからなる熱カレンダーロールにより熱圧着を施すことができる。上下一対のフラットロールとは、ロールの表面に凹凸のない金属製ロールや弾性ロールのことであり、金属製ロールと金属製ロールを対にしたり、金属製ロールと弾性ロールを対にしたりして用いることができる。また、ここで弾性ロールとは、金属製ロールと比較して弾性を有する材質からなるロールのことである。弾性ロールとしては、ペーパー、コットンおよびアラミドペーパー等のいわゆるペーパーロールや、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコン系樹脂、ポリエステル系樹脂および硬質ゴム、およびこれらの混合物からなる樹脂製のロールなどが挙げられる。
本発明のスパンボンド不織布は、生産性が高く、地合が均一であり、表面が滑らかで風合いや肌触りに優れ、さらに高い柔軟性を有することから、使い捨て紙おむつやナプキンなどの衛生材料用途に好適に利用することができる。衛生材料のなかでも、特に紙おむつのバックシートに好適に利用することができる。
次に、実施例に基づき、本発明のスパンボンド不織布について具体的に説明する。
(1)ポリオレフィン系樹脂のメルトフローレート(MFR):
ポリオレフィン系樹脂のメルトフローレートは、ASTM D−1238(A法)に基づき、荷重が2160gで、温度が230℃の条件で測定した。
(2)平均単繊維径(μm):
エジェクターで牽引し、延伸した後、ネット上に捕集した不織繊維ウェブから、ランダムに小片サンプル10個を採取し、マイクロスコープで500〜1000倍の表面写真を撮影し、各サンプルから10本ずつ、計100本の繊維の幅を測定し、平均値から平均単繊維径(μm)を算出した。
(3)紡糸速度(m/分):
上記の平均単繊維径と使用するポリオレフィン系樹脂の固体密度から、長さ10,000m当たりの質量を平均単繊維繊度(dtex)として、小数点以下第二位を四捨五入して算出した。平均単繊維繊度と、各条件で設定した紡糸口金単孔から吐出される樹脂の吐出量(以下、単孔吐出量と略記する。)(g/分)から、次の式に基づき、紡糸速度を算出した。
・紡糸速度(m/分)=(10000×[単孔吐出量(g/分)])/[平均単繊維繊度(dtex)]。
(4)スパンボンド不織布の目付(g/m):
スパンボンド不織布の目付は、JIS L1913(2010年)6.2「単位面積当たりの質量」に基づき、20cm×25cmの試験片を、試料の幅1m当たり3枚採取し、標準状態におけるそれぞれの質量(g)を量り、その平均値を1m当たりの質量(g/m)で表した。
(5)スパンボンド不織布の見かけ密度(g/cm):
スパンボンド不織布の厚さ(mm)は、JIS L1906(2000年版)の5.1に基づいて、直径10mmの加圧子を使用し、荷重10kPaで不織布の幅方向等間隔に1mあたり10点の厚さを0.01mm単位で測定し、その平均値の小数点以下第三位を四捨五入した。
続いて、上記の四捨五入前の目付と厚みから、次の式に基づき、スパンボンド不織布の見かけ密度(g/cm)を算出し、小数点以下第三位を四捨五入した。
・見かけ密度(g/cm)=[目付(g/m)]/[厚さ(mm)]×10−3
(6)見かけの結晶化度(%)、結晶配向度、(110)面の結晶子サイズ(nm):
測定装置として、Rigaku社製SmartLab(封入管式)を用いた。なお、(110)面の結晶子サイズ(nm)において、入射X線波長(λ)は、0.15418nm、半値幅の補正値(β)は0.46°であった。
(7)スパンボンド不織布の柔軟性(点):
スパンボンド不織布の触感の官能評価を行い、柔軟性に優れるものを5点、劣るものを1点として絶対評価で点数をつけた。これを10名で行い平均点を柔軟性(点)とした。
それぞれの実施例においては、以下の樹脂等を用いた。
・ ポリオレフィン系樹脂(A1):
メルトフローレート(MFR)が200g/10分、融点が163℃のホモポリマーからなるポリプロピレン樹脂。
・ ポリオレフィン系樹脂(A2):
メルトフローレート(MFR)が800g/10分、融点が163℃のホモポリマーからなるポリプロピレン樹脂。
・ ポリオレフィン系樹脂(A3):
メルトフローレート(MFR)が170g/10分、融点が163℃のホモポリマーからなるポリプロピレン樹脂。
・ ポリオレフィン系樹脂(A4):
メルトフローレート(MFR)が35g/10分、融点が163℃のホモポリマーからなるポリプロピレン樹脂。
・ ポリオレフィン系樹脂(A5):
メルトフローレート(MFR)が60g/10分、融点が163℃のホモポリマーからなるポリプロピレン樹脂。
・ ポリオレフィン系樹脂(A6):
メルトフローレート(MFR)が140g/10分、融点が163℃のホモポリマーからなるポリプロピレン樹脂。
・ ポリオレフィン系樹脂(A11):
ポリオレフィン系樹脂(A1)と、メルトフローレート(MFR)が20g/10分のエチレン−プロピレン共重合体である低結晶性のオレフィン系樹脂(B)の混練比率が90質量%、低結晶性のポリオレフィン系樹脂(B)の混練比率が10質量%となるように溶融混練したもの。
・ ポリオレフィン系樹脂(A12):
ポリオレフィン系樹脂(A11)に、脂肪酸アミド化合物(C)としてエチレンビスステアリン酸アミドを1.0質量%添加したもの。
(実施例1)
ポリオレフィン系樹脂(A1)を押出機で溶融し、紡糸温度が235℃で、孔径φが0.30mmで、単孔吐出量が0.32g/分で紡出した糸条を、冷却固化した後、矩形エジェクターでエジェクターの圧力を0.35MPaとした圧縮エアによって牽引、延伸し、移動するネット上に捕集してポリプロピレン長繊維からなる不織繊維ウェブを得た。得られたポリプロピレン長繊維の特性は、平均単繊維径は10.1μmであり、これから換算した紡糸速度は4,411m/分であった。紡糸性については、1時間の紡糸において糸切れは見られず良好であった。
引き続き、得られた不織繊維ウェブを、上ロールに金属製で水玉柄の彫刻がなされた接着面積率16%のエンボスロールを用い、下ロールに金属製フラットロールで構成される上下一対の熱エンボスロールを用いて、線圧が300N/cmで、熱接着温度が130℃の温度で熱接着し、目付が18g/mのスパンボンド不織布を得た。得られたスパンボンド不織布について、厚み、見かけ密度、見かけの結晶化度、結晶配向度、(110)面の結晶子サイズ、不織布の柔軟性を測定して評価した。結果を表1に示す。
(実施例2)
エジェクター圧力を0.15MPaとしたこと以外は、実施例1と同じ方法により、ポリプロピレン長繊維からなるスパンボンド不織布を得た。得られたポリプロピレン長繊維の特性は、平均単繊維径は12.3μmであり、これから換算した紡糸速度は2,957m/分であった。紡糸性については、1時間の紡糸において糸切れは見られず良好であった。得られたスパンボンド不織布について、厚み、見かけ密度、見かけの結晶化度、結晶配向度、(110)面の結晶子サイズ、不織布の柔軟性を測定して評価した。結果を表1に示す。
(実施例3)
ポリオレフィン系樹脂をポリオレフィン系樹脂(A2)としたこと以外は、実施例1と同じ方法により、ポリプロピレン長繊維からなるスパンボンド不織布を得た。得られたポリプロピレン長繊維の特性は、平均単繊維径は8.4μmであり、これから換算した紡糸速度は6,422m/分であった。紡糸性については、1時間の紡糸において糸切れは見られず良好であった。得られたスパンボンド不織布について、厚み、見かけ密度、見かけの結晶化度、結晶配向度、(110)面の結晶子サイズ、不織布の柔軟性を測定して評価した。結果を表1に示す。
(実施例4)
ポリオレフィン系樹脂をポリオレフィン系樹脂(A3)とし、単孔吐出量を0.43g/分とし、エジェクターの圧力を0.39MPaとしたこと以外は、実施例1と同じ方法により、ポリプロピレン長繊維からなるスパンボンド不織布を得た。得られたポリプロピレン長繊維の特性は、平均単繊維径は12.0μmであり、これから換算した紡糸速度は4,192m/分であった。紡糸性については、1時間の紡糸において糸切れは見られず良好であった。得られたスパンボンド不織布について、厚み、見かけ密度、見かけの結晶化度、結晶配向度、(110)面の結晶子サイズ、不織布の柔軟性を測定して評価した。結果を表1に示す。
(実施例5)
ポリオレフィン系樹脂をポリオレフィン系樹脂(A11)としたこと以外は、実施例1と同じ方法により、ポリプロピレン長繊維からなるスパンボンド不織布を得た。得られたポリプロピレン長繊維の特性は、平均単繊維径は10.1μmであり、これから換算した紡糸速度は4,393m/分であった。紡糸性については、1時間の紡糸において糸切れは見られず良好であった。得られたスパンボンド不織布について、厚み、見かけ密度、見かけの結晶化度、結晶配向度、(110)面の結晶子サイズ、不織布の柔軟性を測定して評価した。結果を表1に示す。
(実施例6)
ポリオレフィン系樹脂をポリオレフィン系樹脂(A12)としたこと以外は、実施例1と同じ方法により、ポリプロピレン長繊維からなるスパンボンド不織布を得た。得られたポリプロピレン長繊維の特性は、平均単繊維径は10.1μmであり、これから換算した紡糸速度は4,352m/分であった。紡糸性については、1時間の紡糸において糸切れは見られず良好であった。得られたスパンボンド不織布について、厚み、見かけ密度、見かけの結晶化度、結晶配向度、(110)面の結晶子サイズ、不織布の柔軟性を測定して評価した。結果を表1に示す。
(比較例1)
ポリオレフィン系樹脂をポリオレフィン系樹脂(A4)とし、エジェクターの圧力を0.25MPaとし、エンボスロールの熱接着温度を140℃としたこと以外は、実施例1と同じ方法により、ポリプロピレン長繊維からなるスパンボンド不織布を得た。得られたポリプロピレン長繊維の特性は、平均単繊維径は11.7μmであり、これから換算した紡糸速度は3,299m/分であった。紡糸性については、1時間の紡糸において糸切れが1回と不良であった。得られたスパンボンド不織布について、厚み、見かけ密度、見かけの結晶化度、結晶配向度、(110)面の結晶子サイズ、不織布の柔軟性を測定して評価した。結果を表1に示す。
(比較例2)
エジェクター圧力を0.1MPaとしたこと以外は、比較例1と同じ方法により、ポリプロピレン長繊維からなるスパンボンド不織布を得た。得られたポリプロピレン長繊維の特性は、平均単繊維径は14.5μmであり、これから換算した紡糸速度は2,145m/分であった。紡糸性については、1時間の紡糸において糸切れは見られず良好であった。得られたスパンボンド不織布について、厚み、見かけ密度、見かけの結晶化度、結晶配向度、(110)面の結晶子サイズ、不織布の柔軟性を測定して評価した。結果を表1に示す。
(比較例3)
ポリオレフィン系樹脂をポリオレフィン系樹脂(A5)とし、単孔吐出量を0.43g/分とし、エジェクターの圧力を0.35MPaとしたこと以外は、比較例1と同じ方法により、ポリプロピレン長繊維からなるスパンボンド不織布を得た。得られたポリプロピレン長繊維の特性は、平均単繊維径は11.9μmであり、これから換算した紡糸速度は4,260m/分であった。紡糸性については、1時間の紡糸において糸切れが10回と不良であった。得られたスパンボンド不織布について、厚み、見かけ密度、見かけの結晶化度、結晶配向度、(110)面の結晶子サイズ、不織布の柔軟性を測定して評価した。結果を表1に示す。
(比較例4)
エジェクターの圧力を0.10MPaとしたこと以外は、比較例3と同じ方法により、ポリプロピレン長繊維からなるスパンボンド不織布を製造した。得られたポリプロピレン長繊維の特性は、平均単繊維径は14.0μmであり、これから換算した紡糸速度は3,071m/分であった。紡糸性については、1時間の紡糸において糸切れは見られず良好であった。得られたスパンボンド不織布について、厚み、見かけ密度、見かけの結晶化度、結晶配向度、(110)面の結晶子サイズ、不織布の柔軟性を測定して評価した。結果を表1に示す。
(比較例5)
ポリオレフィン系樹脂をポリオレフィン系樹脂(A6)とし、エンボスロールの熱接着温度を135℃としたこと以外は、比較例3と同じ方法により、ポリプロピレン長繊維からなるスパンボンド不織布を製造した。得られたポリプロピレン長繊維の特性は、平均単繊維径は12.1μmであり、これから換算した紡糸速度は4,109m/分であった。紡糸性については、1時間の紡糸において糸切れが2回と不良であった。得られたスパンボンド不織布について、厚み、見かけ密度、見かけの結晶化度、結晶配向度、(110)面の結晶子サイズ、不織布の柔軟性を測定して評価した。結果を表1に示す。
Figure 2019137960
実施例1〜6の平均単繊維径が6.5〜20μmであり、広角X線回析による見かけの結晶化度が66%以下であり、広角X線回析による結晶配向度が0.91以上であり、広角X線回析による(110)面の結晶子サイズが12nm以上であるスパンボンド不織布は、低温で熱接着が可能であり、高い柔軟性を有していた。また、エチレン−プロピレン共重合体を混練した実施例5、6のスパンボンド不織布は、見かけの結晶化度が60%以下まで低下し、より高い柔軟性を有しており、衛生材料用途として特に好適なものであった。
一方、比較例1〜5に示す見かけの結晶化度が高いスパンボンド不織布は、比較例1〜4においては熱接着温度を140℃、比較例5においては、135℃まで上げなければ十分な接着性が得られず、本発明の不織布と比較して柔軟性に劣るものであった。

Claims (6)

  1. ポリオレフィン系樹脂(A)からなる繊維により構成されるスパンボンド不織布であって、前記繊維の平均単繊維径が6.5〜20μmであり、広角X線回析による見かけの結晶化度が66%以下であり、広角X線回析による結晶配向度が0.91以上であり、広角X線回析による(110)面の結晶子サイズが12nm以上であることを特徴とする、スパンボンド不織布。
  2. メルトフローレートが155〜850g/10分である、請求項1に記載のスパンボンド不織布。
  3. 前記ポリオレフィン樹脂(A)が、低結晶性のポリオレフィン系樹脂(B)を混練されてなる、請求項1または2に記載のスパンボンド不織布。
  4. 前記低結晶性のポリオレフィン系樹脂(B)の混練比率が、20質量%以下である、請求項3に記載のスパンボンド不織布。
  5. 前記低結晶性のポリオレフィン系樹脂(B)が、エチレン−プロピレン共重合体である、請求項3または4に記載のスパンボンド不織布。
  6. 前記ポリオレフィン系樹脂(A)からなる繊維が、ポリプロピレン系樹脂からなる繊維により構成されてなることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のスパンボンド不織布。
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