JP2019131913A - 複合繊維 - Google Patents
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しかしながら、かかる常圧カチオン可染成分と、アルカリ溶解成分との組合せにより異形断面や極細等の複合繊維を製造する場合、常圧カチオン可染成分は、ホモポリエステル成分と比べアルカリにより減量され易いため、アルカリ減量加工により一部分解、溶出してしまい、得られる繊維の強伸度の低下や糸切れを引き起こす。また、アルカリ処理によるポリエステル繊維の異形断面化や極細化はアルカリ溶液を使用するため作業環境が良くない、またアルカリによる溶解のコントロールが難しい等の問題がある。
また、全酸成分に対してスルホン酸基を有する芳香族ジカルボン酸を6〜12モル%含み、全ジオール成分に対してエチレングリコールを70〜90モル%、ジエチレングリコールを10〜30モル%含む共重合ポリエステル成分と融点が160℃以上のポリエステル成分とからなる複合繊維であり、共重合ポリエステル成分が繊維表面の一部を占めるように配される複合繊維とすることにより、50〜65℃程度の温水で処理することで融点が160℃以上のポリエステル成分のみの繊維を得ることが提案されている(特許文献3参照)。
また、特許文献3に記載されている複合繊維は、短繊維として用い、不織布とした後、温水下で不織布を良好に崩壊させることを主な目的としており、吸水性や軽量性等の機能を与えるものではない。
本発明に用いるスルホイソフタル酸塩としては、具体的には、4−スルホイソフタル酸、5−スルホイソフタル酸、5−〔4−スルホフェノキシ〕イソフタル酸等のアルカリ金属塩又はそのエステル形成性誘導体等が挙げられる。中でも、5−ナトリウムスルホイソフタル酸塩又はそのエステル形成性誘導体を用いることが特に好ましい。
ポリアルキレングリコールの含有量は共重合ポリエステル成分(B)中2〜3質量%が好ましい。ポリアルキレングリコールの含有量が2重量%未満であると常圧カチオン可染性が十分でなく、3重量%を超えるとガラス転移点の低下による融着やポリエステルの耐熱性が低下する等の問題が生じることがある。
また、繊維横断面において、共重合ポリエステル成分(B)が一体で存在し、かつ、繊維横断面の表面の50〜99%に露出していることが必要であり、共重合ポリエステル成分(A)も繊維表面の一部に露出している。
かかる形状の繊維横断面とすることにより、熱水処理後の繊維横断面において繊維内部に空隙を有することとなり、毛細管現象による吸水性が発現し、且つ、外周を元の複合繊維の断面形状と同等とすることができ、見た目の嵩は同じであっても軽量性を持ったものとなる。
繊維横断面の表面に共重合ポリエステル成分(A)が1ヶ所露出する場合としては、例えば、図1に示すような繊維横断面である複合繊維が挙げられる。図1に示すように、共重合ポリエステル成分(A)が繊維内部に楕円状に広がりのある形状のものであれば、熱水処理後の繊維断面形状はC型の断面を形成し、繊維横断面の外周は元の複合繊維の丸断面形状と同等であるため、見た目の嵩は同じであっても軽量性を持ったものとなる。
このような繊維断面形状とする場合、共重合ポリエステル成分(A)は、繊維横断面の表面の1〜20%に露出するようにすることが好ましい。
1%未満の露出では複合繊維を熱水で処理した際に共重合ポリエステル成分(A)が内部に留まる、または溶出時間が長くなる虞がある。20%を超える露出になると熱水で処理した際に溝の入口部が広がり、毛細管現象が生じ難くなるため、吸水性に乏しいものとなる傾向にある。
上記のような複合繊維を熱水処理することにより得られる繊維は、繊維軸方向に連続した溝を有するため、毛細管現象により優れた吸水性を示す。また、得られる繊維は、繊維横断面の外周は元の複合繊維の丸断面形状と同等であるため、見た目の嵩は同じであっても軽量性を持ったものとなる。
本発明の複合繊維から製造される布帛の形態は、編物であれば、編組織は、緯編、経編、またはそれぞれの変化組織でも構わない。織物であれば、織組織は、平織(プレーン)、綾織(ツイル)、朱子織(サテン)等、またはそれぞれの変化組織、さらにはドビーやジャガード等でも構わない。また、レースや不織布、フェルトとして利用することも可能である。
紡糸の工程通過性が良好であれば○、工程通過性が若干悪いものを△、製糸不可であれば×とした。
B.筒編地の作製及び熱水溶解性
複合繊維を2本双糸として、ウェール数が30本/2.54cm、コース数が60本/2.54cmの筒編地を作製した。この筒編地を、イオン交換水、温度75±5℃、浴比1:20の下で10分間処理し、共重合ポリエステル成分(A)を溶解した。熱水処理後の筒編地を脱水、風乾した。熱水処理前後の筒編地の重量を秤量することにより、共重合ポリエステル成分(A)の熱水溶解性を確認した。複合繊維に使用した共重合ポリエステル成分(A)の重量分減少しているものを○、共重合ポリエステル成分(A)の重量分減少していないものを×とした。
C.熱水溶解またはアルカリ減量後の繊維断面形状の確認
日本電子(株)製の走査型電子顕微鏡JSM−5300(以下、SEMと略す)にて観察し、繊維断面形状を確認した。
D.軽量性
JIS L1018に従って厚さ測定器を用い熱水溶解前後の筒編地の厚みを測定した。また、熱水溶解後の筒編地を10cm2に切り取り秤量し、かさ密度を算出した。
熱水溶解前後の筒編地の厚みの差が±0.3mmの範囲内であり、かつかさ密度が0.30g/cm3以下のものを軽量性○、それ以外のものを×とした。
E.カチオン染色性
熱水溶解又はアルカリ減量した筒編地を、Kayacryl Blue GSL−ED(日本化薬株式会社製)3.0%owf、酢酸0.2g/l、浴比1:20にて常圧沸騰温度(98℃)で60分間、ミニカラー染色試験機にて染色した。染色後の筒編地について目視にて評価し、鮮明に染色されているものを○、くすんでいるまたは染色が不十分であるものを×とした。
F.耐久性
耐久性はJIS L1013に準じて繊維の強度および伸度を測定することにより判断した。島津製作所製オートグラフAGSを用いた引張試験を行い、測定長:200mm、引張り速度:200mm/分の条件下にて、繊維が破断したときの破断強度、および破断伸度をそれぞれ5回測定し、その平均値を求めた。熱水溶解後の繊維の強度が2.8cN/dtex以上、かつ伸度が35%以上のものを○、強度が2.8cN/dtex未満、かつ伸度が35%未満のものを×とした。
G.吸水性
JIS L1907(2010年、バイレック法)に準じて評価した。吸水高さが40mm以上のものを○、40mm未満のものを×とした。
酸成分が5−ナトリウムスルホイソフタル酸(SIP)10モル%、イソフタル酸(IPA)30モル%、それ以外の成分がテレフタル酸(TPA)であり、ジオール成分がジエチレングリコール(DEG)15モル%、それ以外の成分がエチレングリコール(EG)である共重合ポリエステル成分(A)のチップを270℃で溶融し、酸成分がSIP2.5モル%、それ以外の成分がTPAであり、ジオール成分が分子量200のポリエチレングリコール(PEG)3.0重量%含み、それ以外の成分がEGであるポリエステル成分(B)のチップを290℃で溶融し、(A)/(B)の体積比=30/70で複合紡糸口金より押し出し、冷却後油剤を付与し、第1ゴデッドローラー(GR1)の周速800m/分(85℃)で引取り、次いで第2ゴデッドローラー(GR2)の周速度3100m/分(150℃)に導きGR1とGR2の間で延伸する通常のSPD法にて84デシテックス/24フィラメントの図1記載の複合繊維を得た。紡糸操業性は良好であった。
得られた複合繊維を用い、筒編み試料を作製後、熱水溶解性を確認したところ、良好であった。また、熱水溶解前の筒編地の厚さは0.29mm、熱水溶解後の筒編地の厚さ0.28mmとなり、かつかさ密度が0.24g/cm3であったため、軽量性ありと判断した。また、筒編地のカチオン染色性も良好であった。染色後の筒編地から抜き糸をし、強度および伸度を測定したところ、強度が3.1cN/dtex、伸度が40%となり、耐久性ありと判断した。
また、得られた複合繊維を緯糸に、経糸に50デシテックス、24フィラメントのセミダルのレギュラーポリエステルを用いた平織のタフタを作製し、熱水処理して得られた布帛の緯糸方向の吸水性を評価したところ、良好であった。
結果を表1及び表2に示す。
共重合ポリエステル成分(A)のIPA、SIP、DEGの含有量、共重合ポリエステル成分(B)のSIP、PEGの含有量および複合繊維の複合比率を表1に記載した通りに変更する以外は実施例1と同様に複合繊維を作製し、筒編試料を作製後、熱水溶解性、軽量性、カチオン染色性および耐久性を評価した。また、平織のタフタを作製後、吸水性を評価した。
結果を表1及び表2に併せて示す。
共重合ポリエステル成分(A)のIPA、SIP、DEGの含有量を表1に記載した通りに変更する以外は実施例1と同様に複合繊維を作製し、筒編試料を作製後、熱水溶解性、軽量性、カチオン染色性及び耐久性を評価した。また、平織のタフタを作製後、吸水性を評価した。
結果を表1及び表2に併せて示す。
比較例1はIPAの含有量が少なかったため、熱水溶解性が不十分であり、軽量性も不十分であった。
比較例2はSIPの含有量が少なかったため、熱水溶解性が不十分であり、軽量性も不十分であった。
比較例3はDEGの含有量が少なかったため、熱水溶解性が不十分であり、軽量性も不十分であった。
共重合ポリエステル成分(A)のSIPの量を16モル%、DEGの量を20モル%とした以外は実施例1と同様複合繊維の紡糸をしたところ、糸切れが発生し、紡糸時に巻付けができないものであった。
共重合ポリエステル成分(A)のSIPの量を8モル%、DEGの量を28モル%とした以外は実施例1と同様複合繊維の紡糸をしたところ、糸切れが発生し、紡糸時に巻付けができないものであった。
〔比較例6〕
複合繊維の複合比率を(A)/(B)の体積比=5/95と変更した以外は実施例1と同様複合繊維の紡糸をしたところ、紡糸操業性、熱水溶解性、カチオン染色性及び耐久性は良好であったが、軽量性、吸水性に乏しいものであった。
〔比較例7〕
複合繊維の複合比率を(A)/(B)の体積比=40/60と変更した以外は実施例1と同様複合繊維の紡糸をしたところ、紡糸時に糸切れがあった。また、熱水溶解性、カチオン染色性、軽量性及び吸水性は良好であったが、耐久性に乏しいものであった。
共重合ポリエステル成分(A)の代わりとして、SIPを2.0モル%、分子量6000のPEGを10.0重量%含み、それ以外の成分がTPAからなるアルカリ水溶液に可溶なチップを290℃で溶融した以外は実施例1と同様の条件で複合繊維を得た。紡糸操業性は良好であった。
得られた複合繊維の筒編み試料を作製後、90±5℃の2wt%NaOH水溶液中で15分処理し、アルカリ水溶液に可溶な成分を溶解した。アルカリ水溶液処理後の筒編の重量を秤量したところ、用いた常圧環境下で染色可能なポリエステル成分(B)よりも重量が減少していた。カチオン染色性は良好であったが、染色後の筒編から抜き糸をし、繊維断面および側面を観察したところ、実施例1では確認されなかった割れが確認された。
実施例1と同様の樹脂チップ、複合比率、溶融温度および巻取り条件にて110デシテックス/50フィラメントの図2記載の複合繊維を得た。得られた複合繊維を用い、筒編み試料を作製後、熱水溶解性を確認したところ、全て良好であり、得られた繊維の断面形状は歯車型であった。また、筒編地は軽量性のあるものであり、カチオン染色性及び耐久性は良好であった。また、平織のタフタの吸水性も良好であった。
結果を表3及び表4に示す。
共重合ポリエステル成分(A)のIPA、SIP、DEGの含有量、共重合ポリエステル成分(B)のSIPの含有量、複合繊維の複合比率を表3に記載した通りに変更する以外は実施例9と同様に複合繊維を作製し、筒編試料を作製後、熱水溶解性、軽量性、カチオン染色性及び耐久性を評価した。また、平織のタフタを作製後、吸水性を評価した。
結果を表3及び表4に併せて示す。
共重合ポリエステル成分(A)のIPA、SIP、DEGの含有量を表3に記載した通りに変更する以外は実施例8と同様に複合繊維を作製し、筒編試料を作製後、熱水溶解性、軽量性、カチオン染色性及び耐久性を評価した。また、平織のタフタを作製後、吸水性を評価した。
結果を表3及び表4に併せて示す。
比較例9はIPAの含有量が少なかったため、熱水溶解性が不十分であり、軽量性も不十分であった。
比較例10はSIPの含有量が少なかったため、熱水溶解性が不十分であり、軽量性も不十分であった。
比較例11はDEGの含有量が少なかったため、熱水溶解性が不十分であり、軽量性も不十分であった。
実施例1に用いた共重合ポリエステル成分(A)を海部に、ポリエステル成分(B)を島部になるような島数が36島の口金を用い、(A)/(B)=30/70、110デシテックス/50フィラメントの複合繊維を得た。得られた複合繊維を用い、筒編み試料を作製後、熱水溶解性を確認したところ、良好であった。しかしながら、熱水溶解前の筒編地の厚さは0.36mm、熱水溶解後の筒編地の厚さ0.25mmとなり、かつかさ密度が0.33g/cm3であったため、軽量性なしと判断した。また、筒編地のカチオン染色性は良好であったが、抜き糸の強度が2.6[cN/dtex]と低く、筒編地は毛羽が目立つものであり、耐久性なしと判断した。
また、得られた複合繊維を緯糸に、経糸に50デシテックス、24フィラメントのセミダルのレギュラーポリエステルを用いた平織のタフタを作製し、緯糸方向の吸水性を評価したところ、十分な吸水性を示さないものであった。
(B):共重合ポリエステル成分(B)
Claims (1)
- 主たる酸成分がテレフタル酸であって、全酸成分中に20〜40モル%のイソフタル酸と8〜15モル%のスルホイソフタル酸を含み、かつ主たるジオール成分がエチレングリコールであって、全ジオール成分中にジエチレングリコールを13〜25モル%含む、70℃以上の熱水に溶解する共重合ポリエステル成分(A)と、100℃以下の常圧環境下でカチオン染色可能な共重合ポリエステル成分(B)とからなる複合繊維であって、繊維横断面において共重合ポリエステル成分(A)が表面から内部に向かって凸状に配され、かつ、共重合ポリエステル成分(B)が一体で存在し、繊維横断面の表面の50〜99%に露出してなり、共重合ポリエステル成分(A)と共重合ポリエステル成分(B)の複合体積比率(A)/(B)が10/90〜35/65であることを特徴とする複合繊維。
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