本開示は、スクロール圧縮機に関するものである。
従来より、旋回スクロールと固定スクロールを備えたスクロール圧縮機が知られている。スクロール圧縮機が停止する際には、スクロール圧縮機の作動中とは逆方向へ旋回スクロールが旋回する場合がある。旋回スクロールが逆転する際には、旋回側ラップの巻き終わり部に作用する荷重が過大となり、旋回側ラップの破損を招くおそれがある。そこで、特許文献1に開示されたスクロール圧縮機では、旋回側ラップの巻き終わり部に所定形状の切り欠き部を形成することによって、旋回スクロールの逆転中に旋回側ラップの巻き終わり部に作用する荷重を低減している。
特許文献1に開示されたスクロール圧縮機のように旋回側ラップの巻き終わり部に切り欠き部を形成した場合、旋回側ラップのうち切り欠き部の形成された部分は、圧縮室を形成できない。その結果、旋回側ラップのうち圧縮室を形成できる部分の長さが短くなり、閉じきり時点における圧縮室の容積が小さくなり、スクロール圧縮機の容量を確保できないおそれがあった。
本開示の目的は、スクロール圧縮機の容量を確保しつつ、旋回側ラップの損傷を抑えることにある。
本開示の第1の態様は、円板状の旋回側鏡板部(51)と該旋回側鏡板部(51)の前面(52)から突出する渦巻き壁状の旋回側ラップ(60)とを有する旋回スクロール(50)と、上記旋回側ラップ(60)と噛み合う渦巻き壁状の固定側ラップ(42)を有する固定スクロール(40)とを備えたスクロール圧縮機を対象とし、上記旋回側鏡板部(51)には、該旋回側鏡板部(51)の背面(53)に開口して上記旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)に沿って延びる背面凹部(70)が形成されるものである。
第1の態様では、旋回側鏡板部(51)に背面凹部(70)が形成される。旋回側鏡板部(51)において、背面凹部(70)が形成された部分は、他の部分に比べて厚さが薄く、従って他の部分に比べて剛性が低い。背面凹部(70)は、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)に沿って延びている。従って、旋回側鏡板部(51)は、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)に沿った部分の剛性が比較的低くなる。
旋回スクロール(50)の逆転中には、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)に比較的大きな荷重が作用する場合がある。この場合、第1の態様のスクロール圧縮機(10)では、旋回側鏡板部(51)のうち背面凹部(70)が形成された部分(即ち、剛性が比較的低い部分)が弾性変形する。このため、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)の根元付近の部分(即ち、旋回側鏡板部(51)寄りの基端部)において発生する応力が小さくなり、旋回側ラップ(60)の損傷が回避される。
本開示の第2の態様は、上記第1の態様において、上記旋回側ラップ(60)に沿って該旋回側ラップ(60)の巻き始め端(61)から巻き終わり端(62)へ向かう方向が、上記旋回側ラップ(60)の伸長方向であり、上記背面凹部(70)の全体が、上記旋回側ラップ(60)の伸長方向における上記旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)の後側に形成されるものである。
第2の態様の旋回側鏡板部(51)では、背面凹部(70)の全体が、旋回側ラップ(60)の伸長方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)の後側に形成される。この態様では、背面凹部(70)の全体が、旋回側ラップ(60)に沿っている。
本開示の第3の態様は、上記第1の態様において、上記旋回側ラップ(60)に沿って該旋回側ラップ(60)の巻き始め端(61)から巻き終わり端(62)へ向かう方向が、上記旋回側ラップ(60)の伸長方向であり、上記背面凹部(70)は、上記旋回側ラップ(60)の伸長方向における上記旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)の前側と後側の両方に亘って形成されるものである。
第3の態様の背面凹部(70)は、その一部が旋回側ラップ(60)の伸長方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)の前側に位置し、残りの部分が旋回側ラップ(60)の伸長方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)の後側の領域に位置する。
本開示の第4の態様は、上記第3の態様において、上記背面凹部(70)は、上記旋回側ラップ(60)の伸長方向における上記旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)の後側に位置する部分(77)の上記旋回側鏡板部(51)の周方向の長さが、上記旋回側ラップ(60)の伸長方向における上記旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)の前側に位置する部分(76)の上記旋回側鏡板部(51)の周方向の長さ以上であるものである。
第4の態様の背面凹部(70)は、旋回側ラップ(60)の伸長方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)の後側に位置する部分(77)が、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)に沿う一方、旋回側ラップ(60)の伸長方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)の前側に位置する部分(76)が、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)から外れる。従って、この態様の背面凹部(70)は、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)に沿う部分(77)の長さが、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)から外れた部分(76)の長さ以上となる。
本開示の第5の態様は、上記第1〜第4のいずれか一つの態様において、上記背面凹部(70)は、上記旋回側鏡板部(51)の背面(53)と外周面(54)の両方に開口するものである。
第5の態様の旋回側鏡板部(51)では、その背面(53)と外周面(54)の両方に背面凹部(70)が開口する。旋回側鏡板部(51)の外周面(54)は、旋回側鏡板部(51)の径方向における旋回側ラップ(60)の外側に位置する。従って、この態様の背面凹部(70)は、その少なくとも一部分が、旋回側鏡板部(51)の径方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)の外側に位置する。この態様の旋回側鏡板部(51)は、その外周面(54)に背面凹部(70)が開口するため、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)に沿った部分の剛性が低くなる。
本開示の第6の態様は、上記第5の態様において、上記旋回側鏡板部(51)の径方向における上記背面凹部(70)の幅をWとする一方、上記旋回側ラップ(60)の外側面(65)の最外周端(66)と上記旋回側鏡板部(51)の中心Cを通る直線上において、上記旋回側鏡板部(51)の中心Cから上記旋回側鏡板部(51)の外周面(54)までの距離をRとし、上記旋回側鏡板部(51)の中心Cから上記旋回側ラップ(60)の外側面(65)までの距離をReとし、上記旋回側ラップ(60)の厚さをteとしたときに、R−(Re+te)≦W≦R−(Re−2te)の関係を満たすものである。
第6の態様において、背面凹部(70)の幅をWは、R−(Re+te)≦W≦R−(Re−2te)の関係を満たす。この態様では、旋回側鏡板部(51)のうち背面凹部(70)が形成された部分(即ち、剛性が比較的低い部分)の大きさが確保される。その結果、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)の根元付近の部分において発生する応力が小さくなり、旋回側ラップ(60)の損傷が回避される。
本開示の第7の態様は、上記第1〜第6のいずれか一つの態様において、上記背面凹部(70)の内周側壁面(71)は、上記旋回側鏡板部(51)の径方向における上記旋回側ラップ(60)の外側面(65)の外側に位置するものである。
第7の態様の旋回側鏡板部(51)では、旋回側鏡板部(51)の径方向における旋回側ラップ(60)の旋回側ラップ(60)の外側面(65)の外側の部分に、背面凹部(70)が配置される。
本開示の第8の態様は、上記第1〜第6のいずれか一つの態様において、上記背面凹部(70)は、上記旋回側鏡板部(51)の径方向における上記旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)の外側面(65)の内側と外側の両方に亘って形成されるものである。
第8の態様の旋回側鏡板部(51)では、旋回側鏡板部(51)の径方向における旋回側ラップ(60)の外側の部分と、旋回側鏡板部(51)の径方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)の外周面(54)よりも内側の部分とに亘って、背面凹部(70)が形成される。
本開示の第9の態様は、上記第1〜第8のいずれか一つの態様において、上記背面凹部(70)の深さをDとし、上記旋回側鏡板部(51)の厚さをTとしたときに、0.5≦D/T≦0.8の関係を満たすものである。
第9の態様の旋回側鏡板部(51)において、背面凹部(70)は、0.5≦D/T≦0.8の関係を満たす。このため、旋回側鏡板部(51)のうち背面凹部(70)が形成された部分の剛性が比較的低くなり、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)の根元付近の部分において発生する応力が小さくなる。
図1は、実施形態のスクロール圧縮機の縦断面図である。
図2は、図1のII−II断面における圧縮機構の断面図である。
図3は、旋回側ラップ側から見た実施形態の旋回スクロールの斜視図である。
図4は、ボス部側から見た実施形態の旋回スクロールの斜視図である。
図5は、実施形態の旋回スクロールの平面図である。
図6は、実施形態の旋回スクロールの背面図である。
図7は、図5のVII−VII断面の要部を示す旋回スクロールの断面図である。
図8は、第1変形例の旋回スクロールの平面図である。
図9は、図8のIX−IX断面の要部を示す旋回スクロールの断面図である。
図10は、第1変形例の旋回スクロールの平面図である。
図11は、図10のXI−XI断面の要部を示す旋回スクロールの断面図である。
図12は、第1変形例の旋回スクロールの平面図である。
図13は、第2変形例の旋回スクロールの平面図である。
図14は、第2変形例の旋回スクロールの平面図である。
図15は、第3変形例の旋回スクロールの平面図である。
図16は、第4変形例の旋回スクロールの図7に相当する断面を示す断面図である。
実施形態のスクロール圧縮機(10)について説明する。このスクロール圧縮機(10)は、冷媒が循環して冷凍サイクルを行う冷媒回路(図示省略)に接続され、流体である冷媒を圧縮する。
−スクロール圧縮機の全体構成−
図1に示すように、スクロール圧縮機(10)は、密閉容器であるケーシング(11)に圧縮機構(30)と電動機(20)とが収容された全密閉型圧縮機である。
ケーシング(11)は、両端が閉塞された円筒状の圧力容器である。ケーシング(11)は、その軸方向が上下方向となる姿勢で設置される。ケーシング(11)の上端部には、冷媒回路の冷媒を圧縮機構(30)へ導入するための吸入管(12)が設けられる。また、ケーシング(11)には、ケーシング(11)内の冷媒をケーシング(11)外に導出するための吐出管(13)が設けられる。ケーシング(11)の底部には、圧縮機構(30)等を潤滑するための潤滑油が貯留される。
ケーシング(11)の内部において、電動機(20)は、圧縮機構(30)の下方に配置される。電動機(20)と圧縮機構(30)は、駆動軸(25)によって連結される。電動機(20)は、固定子(21)と回転子(22)とを備えている。電動機(20)の固定子(21)は、ケーシング(11)に固定される。電動機(20)の回転子(22)は、駆動軸(25)に取り付けられる。
駆動軸(25)は、主軸部(26)と、偏心軸部(27)とを備える。主軸部(26)は、その軸心が駆動軸(25)の軸心と一致する。主軸部(26)には、電動機(20)の回転子(22)が取り付けられる。主軸部(26)は、回転子(22)の上側の部分が、後述する圧縮機構(30)の軸受部(36)に支持され、回転子(22)の下側の部分が、後述する下部軸受部材(15)に支持される。偏心軸部(27)は、比較的短い軸状に形成され、主軸部(26)の上端に突設される。偏心軸部(27)の軸心は、主軸部(26)の軸心と実質的に平行であり、主軸部(26)の軸心に対して偏心している。
ケーシング(11)内の下部には、下部軸受部材(15)が設けられる。下部軸受部材(15)は、ケーシング(11)に固定される。下部軸受部材(15)は、駆動軸(25)の主軸部(26)を回転自在に支持するジャーナル軸受を構成する。
−圧縮機構の構成−
圧縮機構(30)は、ハウジング(35)と、固定スクロール(40)と、旋回スクロール(50)と、オルダム継手(32)とを備える。ハウジング(35)は、ケーシング(11)に固定される。固定スクロール(40)は、ハウジング(35)の上面に配置される。旋回スクロール(50)は、固定スクロール(40)とハウジング(35)との間に配置される。
ハウジング(35)は、中央が凹陥した皿状の部材である。また、ハウジング(35)には、軸受部(36)が形成される。軸受部(36)は、下方へ突出した肉厚の筒状の部分である。軸受部(36)は、駆動軸(25)の主軸部(26)を回転自在に支持するジャーナル軸受を構成する。
図2にも示すように、固定スクロール(40)は、固定側鏡板部(41)と、固定側ラップ(42)と、外周壁部(43)とを備える。固定側ラップ(42)は、インボリュート曲線を描く渦巻き壁状に形成され、固定側鏡板部(41)の前面(図1における下面)から突出する。外周壁部(43)は、固定側ラップ(42)の外周側を囲むように形成され、固定側鏡板部(41)の前面から突出する。固定側ラップ(42)の先端面と外周壁部(43)の先端面とは略面一である。
本実施形態の圧縮機構(30)は、固定側ラップ(42)が、後述する旋回スクロール(50)の旋回側ラップ(60)よりも長い非対称ラップ構造となっている。図2に二点鎖線で示すように、固定側ラップ(42)のうち最外周に位置する部分は、外周壁部(43)と一体化されている。
図3及び図4にも示すように、旋回スクロール(50)は、旋回側鏡板部(51)と、旋回側ラップ(60)と、ボス部(55)とを備える。旋回側鏡板部(51)は、概ね円形の平板状に形成される。旋回側ラップ(60)は、インボリュート曲線を描く渦巻き壁状に形成され、旋回側鏡板部(51)の前面(52)(図1における上面)から突出する。旋回側ラップ(60)は、旋回側鏡板部(51)の中央寄りの先端が巻き始め端(61)であり、旋回側鏡板部(51)の外周面(54)寄りの先端が巻き終わり端(62)である。ボス部(55)は、円筒状に形成され、旋回側鏡板部(51)の背面(53)の中央部に配置される。ボス部(55)には、駆動軸(25)の偏心部(27)が差し込まれる。
旋回スクロール(50)の旋回側鏡板部(51)には、キー溝(56)と背面凹部(70)とが形成される。キー溝(56)は、旋回側鏡板の背面(53)に開口する凹溝である。図5及び図6に示すように、キー溝(56)は、旋回側鏡板部(51)の中心を挟んで対向する位置に一つずつ配置される。このキー溝(56)には、オルダム継手(32)のキーが嵌まり込む。背面凹部(70)については、後述する。
オルダム継手(32)は、旋回スクロール(50)とハウジング(35)の間に配置される。オルダム継手(32)は、旋回スクロール(50)とハウジング(35)のそれぞれに係合し、旋回スクロール(50)の自転を規制する。
図2にも示すように、旋回スクロール(50)の旋回側ラップ(60)は、固定スクロール(40)の固定側ラップ(42)と噛み合う。旋回側ラップ(60)の内側面(64)は、固定側ラップ(42)の外側面(48)と摺動し、旋回側ラップ(60)の外側面(65)は、固定側ラップ(42)の内側面(47)と摺動する。旋回側ラップ(60)の内側面(64)は、旋回側ラップ(60)の側壁面のうち固定側ラップ(42)の外側面(48)と摺動する部分である。旋回側ラップ(60)の外側面(65)は、旋回側ラップ(60)の側壁面のうち固定側ラップ(42)の内側面(47)と摺動する部分である。圧縮機構(30)では、固定スクロール(40)の固定側鏡板部(41)及び固定側ラップ(42)と、旋回スクロール(50)の旋回側鏡板部(51)及び旋回側ラップ(60)とに囲まれた圧縮室(31)が形成される。
固定スクロール(40)の外周壁部(43)には、吸入ポート(44)が形成される。吸入ポート(44)には、吸入管(12)の下流端が接続される。固定スクロール(40)の固定側鏡板部(41)の中央には、固定側鏡板部(41)を貫通する吐出口(45)が形成される。
固定側鏡板部(41)の背面(図1における上面)の中央には、高圧チャンバ(46)が形成される。高圧チャンバ(46)は、吐出口(45)に連通する空間である。高圧チャンバ(46)は、図外の通路を介して、ケーシング(11)内におけるハウジング(35)の下方の空間に連通する。
−スクロール圧縮機の運転動作−
スクロール圧縮機(10)では、圧縮機構(30)の旋回スクロール(50)が、電動機(20)によって駆動されて公転運動を行う。本実施形態の旋回スクロール(50)は、図2における時計方向に公転する。旋回スクロール(50)が移動すると、吸入管(12)から吸入ポート(44)へ流入した冷媒が、圧縮室(31)へ流入する。旋回スクロール(50)が移動するにつれて、圧縮室(31)は、旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)から巻き始め端(61)へ向かって移動し、それに伴って圧縮室(31)の容積が縮小し、圧縮室(31)内の冷媒が圧縮される。圧縮された冷媒は、圧縮室(31)から吐出口(45)を通って高圧チャンバ(46)へ吐出される。高圧チャンバ(46)へ流入した冷媒は、ケーシング(11)内におけるハウジング(35)の下方の空間へ流入し、その後に吐出管(13)を通ってケーシング(11)の外部へ流出する。
−旋回側鏡板部の背面凹部−
上述したように、旋回スクロール(50)の旋回側鏡板部(51)には、背面凹部(70)が形成される。ここでは、背面凹部(70)について、図3〜7を参照しながら詳しく説明する。
背面凹部(70)は、旋回側鏡板部(51)の背面(53)と外周面(54)の両方に開口する凹部である。背面凹部(70)は、旋回側鏡板部(51)の外周縁に沿うように湾曲している。つまり、背面凹部(70)は、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)に沿って延びている(図5,6を参照)。なお、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)については後述する。
背面凹部(70)の内周側壁面(71)は、背面凹部(70)に面する側壁面のうち旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)に沿って延びる部分である。この内周側壁面(71)は、旋回側鏡板部(51)の径方向において、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)の外側面(65)よりも僅かに外側に位置する(図5〜7を参照)。つまり、背面凹部(70)は、その全体が、旋回側鏡板部(51)の径方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)の外側に位置する。
背面凹部(70)は、旋回側鏡板部(51)の周方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)の前側と後側の両方に亘って形成される。つまり、旋回側鏡板部(51)の中心C周りの角度を中心角としたときに、本実施形態の旋回側鏡板部(51)では、中心角が所定の数値範囲となり且つ旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)を含む領域に、背面凹部(70)が形成される。なお、旋回側鏡板部(51)の中心Cは、ボス部(55)の中心軸上の点である。また、言い換えると、背面凹部(70)は、旋回側ラップ(60)の伸長方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)の前側と後側の両方に亘って形成される。旋回側ラップ(60)の伸長方向は、旋回側ラップ(60)に沿って旋回側ラップ(60)の巻き始め端(61)から巻き終わり端(62)へ向かう方向である。
背面凹部(70)の前側壁面(73)は、図6に示す半直線HFの一部を含む平面である。この半直線HFは、旋回側鏡板部(51)の中心Cから旋回側鏡板部(51)の径方向の外側に延びる半直線である。背面凹部(70)の前側壁面(73)は、旋回側鏡板部(51)の周方向において、旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)よりも前側(図5における時計方向に進んだ側、図6における反時計方向に進んだ側)に位置する。つまり、背面凹部(70)の前側壁面(73)は、旋回側ラップ(60)の巻き方向において、旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)よりも先に進んだ位置に配置される。旋回側ラップ(60)の巻き方向は、上述した旋回側ラップ(60)の伸長方向と同じである。
背面凹部(70)の後側壁面(74)は、図6に示す半直線HBの一部を含む平面である。この半直線HBは、旋回側鏡板部(51)の中心Cから旋回側鏡板部(51)の径方向の外側に延びる半直線である。背面凹部(70)の後側壁面(74)は、旋回側鏡板部(51)の周方向において、旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)よりも後側(図5における反時計方向に進んだ側、図6における時計方向に進んだ側)に位置する。つまり、背面凹部(70)の後側壁面(74)は、旋回側ラップ(60)の巻き方向において、旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)よりも巻き始め端(61)寄りに配置される。旋回側ラップ(60)の巻き方向は、上述した旋回側ラップ(60)の伸長方向と同じである。
本実施形態の旋回側鏡板部(51)において、半直線H1と半直線HBのなす角度αは、半直線H1と半直線HFのなす角度β以上である(α≧β)。本実施形態において、角度αは35°であり、角度βは15°である。角度αは、角度βの2倍以上(α≧2β)であるのが望ましい。なお、半直線H1は、旋回側鏡板部(51)の中心Cから旋回側鏡板部(51)の径方向の外側に延び且つ旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)を通る半直線である。
背面凹部(70)のうち、旋回側鏡板部(51)の周方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)よりも前側に位置する部分を前側部分(76)とし、旋回側鏡板部(51)の周方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)よりも後側に位置する部分を後側部分(77)とする。前側部分(76)は、背面凹部(70)のうち、旋回側ラップ(60)の伸長方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)よりも前側に位置する部分である。後側部分(77)は、背面凹部(70)のうち、旋回側ラップ(60)の伸長方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)よりも後側に位置する部分である。
背面凹部(70)は、旋回側鏡板部(51)の周方向における前側部分(76)の長さLFが角度βに比例し、旋回側鏡板部(51)の周方向における後側部分(77)の長さLBが角度αに比例する。上述したように、本実施形態の背面凹部(70)は、角度αが角度β以上である。従って、本実施形態の背面凹部(70)は、旋回側鏡板部(51)の周方向における後側部分(77)の長さLBが、旋回側鏡板部(51)の周方向における前側部分(76)の長さLF以上となる(LB≧LF)。
背面凹部(70)は、旋回側鏡板部(51)の径方向の幅Wが、旋回側鏡板部(51)の周方向の全長に亘って実質的に一定である。本実施形態において、背面凹部(70)の幅Wは、背面凹部(70)の内周側面から旋回側鏡板部(51)の外周面(54)までの距離である。ここで、旋回側ラップ(60)の外側面(65)から旋回側鏡板部(51)の外周面(54)までの距離をLとする(図7を参照)。本実施形態において、背面凹部(70)の幅Wは、この距離Lの最小値Lminの半分よりも長い(W>Lmin/2)。
本実施形態において、背面凹部(70)の深さDは、旋回側鏡板部(51)の厚さTの約62%である。本実施形態の背面凹部(70)は、その深さDが背面凹部(70)の全体に亘って実質的に一定である。従って、背面凹部(70)の底壁面(75)は、旋回側鏡板部(51)の前面(52)と実質的に平行な平坦面である。なお、背面凹部(70)の深さDは、旋回側鏡板部(51)の厚さTの半分以上であるのが望ましい(D≧T/2)。更に、背面凹部(70)の深さDは、0.5T以上で0.8T以下であるのが望ましい。つまり、本実施形態において、背面凹部(70)の深さDと、旋回側鏡板部(51)の厚さTは、0.5≦D/T≦0.8の関係を満たすのが望ましい。
ここで、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)は、旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)付近の部分である。本実施形態において、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)は、旋回側ラップ(60)のうち図5における半直線H1と半直線H2の間の部分を指す。半直線H2は、旋回側鏡板部(51)の中心Cから旋回側鏡板部(51)の径方向の外側へ延び、直線L1となす角度が20°の半直線である。このように、本実施形態の旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)は、旋回側ラップ(60)のうち、旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)から、旋回側鏡板の中心C回りの角度(中心角)が20°の範囲に位置する部分である。なお、ここに示す中心角の値(20°)は、単なる一例である。
−旋回側ラップに作用する荷重−
スクロール圧縮機(10)の作動中において、旋回スクロール(50)の旋回側ラップ(60)には、旋回側ラップ(60)の内側面(64)と外側面(65)のそれぞれに、圧縮室(31)内の冷媒の圧力が作用する。そして、旋回側ラップ(60)の内側面(64)に作用する力と外側面(65)に作用する力の差が大きいほど、旋回側ラップ(60)に作用する荷重が大きくなる。
図2に示すように、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)は、圧縮機構(30)の吸入ポート(44)の近傍に位置している。このため、スクロール圧縮機(10)の作動中において、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)の内側面(64)と外側面(65)のそれぞれに作用する冷媒の圧力は、吸入ポート(44)から圧縮室(31)へ吸入される冷媒の圧力と概ね等しい。従って、スクロール圧縮機(10)の作動中には、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)に、それ程大きな荷重は作用しない。
ところで、スクロール圧縮機(10)が停止した直後(即ち、電動機(20)への通電を遮断した直後)は、冷媒が吐出口(45)から圧縮室(31)へ逆流し、圧縮室(31)内で冷媒が膨張することによって、旋回スクロール(50)が逆方向(本実施形態では図2における反時計方向)へ旋回することがある。また、旋回スクロール(50)の逆転中には、圧縮室(31)が旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)に到達した時点でも、圧縮室(31)内の冷媒圧力が吸入ポート(44)の冷媒圧力にまで下がりきっていない場合がある。この場合は、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)の内側面(64)と外側面(65)に作用する流体圧の差が、スクロール圧縮機(10)の作動中に比べて大きくなる。
このように、旋回スクロール(50)の逆転中は、旋回スクロール(50)の正転中に比べて、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)に作用する荷重が大きくなるおそれがある。そして、旋回側鏡板部(51)のうち旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)の近傍の部分の厚さが他の部分と同程度である場合に、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)に比較的大きな荷重が作用すると、旋回側鏡板部(51)は殆ど弾性変形しないため、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)の根元(旋回側鏡板部(51)寄りの基端部)付近に応力が集中し、旋回側ラップ(60)の破損を招くおそれがある。
一方、本実施形態のスクロール圧縮機(10)では、旋回スクロール(50)の旋回側鏡板部(51)に背面凹部(70)が形成される。上述したように、背面凹部(70)は、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)に沿って延びている。そのため、旋回側鏡板部(51)では、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)の近傍に、肉厚が比較的薄くて剛性が比較的低い部分が形成される。従って、本実施形態の旋回側鏡板部(51)は、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)に沿った部分の剛性が比較的低くなる。
旋回スクロール(50)の逆転中に旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)に比較的大きな荷重が作用すると、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)が弾性変形するだけでなく、旋回側鏡板部(51)のうち旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)の近傍の部分も弾性変形する。そのため、旋回スクロール(50)の逆転中に旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)に作用する応力が分散し、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)の根元付近において発生する応力が小さくなる。本実施形態において、旋回スクロール(50)の逆転中に旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)の根元付近において発生する応力は、旋回側鏡板部(51)に背面凹部(70)を形成しない場合の約84%程度にまで低下する。
−実施形態の特徴(1)−
本実施形態のスクロール圧縮機(10)は、円板状の旋回側鏡板部(51)と旋回側鏡板部(51)の前面(52)から突出する渦巻き壁状の旋回側ラップ(60)とを有する旋回スクロール(50)と、旋回側ラップ(60)と噛み合う渦巻き壁状の固定側ラップ(42)を有する固定スクロール(40)とを備える。このスクロール圧縮機(10)において、旋回側鏡板部(51)には、旋回側鏡板部(51)の背面(53)に開口して旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)に沿って延びる背面凹部(70)が形成される。
本実施形態の旋回側鏡板部(51)において、背面凹部(70)が形成された部分は、他の部分に比べて厚さが薄く、従って他の部分に比べて剛性が低い。背面凹部(70)は、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)に沿って延びている。従って、旋回側鏡板部(51)は、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)に沿った部分の剛性が比較的低くなる。
旋回スクロール(50)の逆転中には、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)に比較的大きな応力が発生する場合がある。この場合、本実施形態のスクロール圧縮機(10)では、旋回側鏡板部(51)のうち背面凹部(70)が形成された部分(即ち、剛性が比較的低い部分)が弾性変形する。このため、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)の根元付近の部分(即ち、旋回側鏡板部(51)寄りの基端部)において発生する応力が小さくなり、旋回側ラップ(60)の損傷が回避される。
−実施形態の特徴(2)−
本実施形態のスクロール圧縮機(10)において、背面凹部(70)は、旋回側ラップ(60)の伸長方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)の前側と後側の両方に亘って形成される。旋回側ラップ(60)の伸長方向は、旋回側ラップ(60)に沿って旋回側ラップ(60)の巻き始め端(61)から巻き終わり端(62)へ向かう方向である。
本実施形態の背面凹部(70)は、その一部が旋回側ラップ(60)の伸長方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)の前側に位置し、残りの部分が旋回側ラップ(60)の伸長方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)の後側の領域に位置する。
また、本実施形態のスクロール圧縮機(10)において、背面凹部(70)は、旋回側鏡板部(51)の周方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)の前側と後側の両方に亘って形成される。
本実施形態の背面凹部(70)は、その一部が旋回側鏡板部(51)の周方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)の前側に位置し、残りの部分が旋回側鏡板部(51)の周方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)の後側の領域に位置する。
−実施形態の特徴(3)−
本実施形態のスクロール圧縮機(10)において、背面凹部(70)は、“旋回側ラップ(60)の伸長方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)の後側に位置する後側部分(77)”の旋回側鏡板部(51)の周方向の長さが、“旋回側ラップ(60)の伸長方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)の前側に位置する前側部分(76)”の旋回側鏡板部(51)の周方向の長さ以上である。
本実施形態の背面凹部(70)は、旋回側ラップ(60)の伸長方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)の後側に位置する部分(77)が、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)に沿う一方、旋回側ラップ(60)の伸長方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)の前側に位置する部分(76)が、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)から外れる。従って、この態様の背面凹部(70)は、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)に沿う部分(77)の長さが、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)から外れた部分(76)の長さ以上となる。
また、本実施形態のスクロール圧縮機(10)において、背面凹部(70)は、“旋回側鏡板部(51)の周方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)の後側に位置する後側部分(77)”の旋回側鏡板部(51)の周方向の長さが、“背面凹部(70)のうち旋回側鏡板部(51)の周方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)の前側に位置する前側部分(76)”の旋回側鏡板部(51)の周方向の長さ以上である。
本実施形態の背面凹部(70)は、旋回側鏡板部(51)の周方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)の後側に位置する部分(77)が、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)に沿う一方、旋回側鏡板部(51)の周方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)の前側に位置する部分(76)が、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)から外れる。従って、本実施形態の背面凹部(70)は、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)に沿う部分(77)の長さが、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)から外れた部分(76)の長さ以上となる。
−実施形態の特徴(4)−
本実施形態のスクロール圧縮機(10)において、背面凹部(70)は、旋回側鏡板部(51)の背面(53)と外周面(54)の両方に開口する。
本実施形態の旋回側鏡板部(51)では、その背面(53)と外周面(54)の両方に背面凹部(70)が開口する。旋回側鏡板部(51)の外周面(54)は、旋回側鏡板部(51)の径方向における旋回側ラップ(60)の外側に位置する。従って、本実施形態の背面凹部(70)は、その少なくとも一部分が、旋回側鏡板部(51)の径方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)の外側に位置する。本実施形態の旋回側鏡板部(51)は、その外周面(54)に背面凹部(70)が開口するため、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)に沿った部分の剛性が低くなる。
−実施形態の特徴(5)−
本実施形態のスクロール圧縮機(10)において、背面凹部(70)は、その全体が旋回側鏡板部(51)の径方向における旋回側ラップ(60)の外側に形成される。
本実施形態の旋回側鏡板部(51)では、旋回側鏡板部(51)の径方向における旋回側ラップ(60)の外側の部分に、背面凹部(70)の全体が配置される。
−実施形態の特徴(6)−
本実施形態のスクロール圧縮機(10)は、背面凹部(70)の深さをDとし、旋回側鏡板部(51)の厚さをTとしたときに、0.5≦D/T≦0.8の関係を満たす。
このため、旋回側鏡板部(51)のうち背面凹部(70)が形成された部分の剛性が比較的低くなり、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)の根元付近の部分において発生する応力が小さくなる。
−実施形態の変形例−
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
〈第1変形例〉
本実施形態の旋回スクロール(50)において、旋回側鏡板部(51)の背面凹部(70)は、旋回側鏡板部(51)の径方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)の外側面(65)の内側と外側の両方に亘って形成されていてもよい。つまり、本実施形態の旋回スクロール(50)において、旋回側鏡板部(51)の背面凹部(70)は、その少なくとも一部分が、旋回側鏡板部(51)の径方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)の外側に位置していればよい。
図8及び図9に示す本変形例の旋回スクロール(50)において、背面凹部(70)の内周側壁面(71)は、旋回側鏡板部(51)の径方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)の内側面(64)と外側面(65)の間に位置する。また、図10及び図11に示す本変形例の旋回スクロール(50)において、背面凹部(70)の内周側壁面(71)は、旋回側鏡板部(51)の径方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)の内側面(64)よりも内側に位置する。
本変形例のスクロール圧縮機(10)において、背面凹部(70)は、旋回側鏡板部(51)の径方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)の外側面(65)の内側と外側の両方に亘って形成される。
本変形例の旋回側鏡板部(51)では、旋回側鏡板部(51)の径方向における旋回側ラップ(60)の外側の部分と、旋回側鏡板部(51)の径方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)の外周面(54)よりも内側の部分とに亘って、背面凹部(70)が形成される。このため、旋回側鏡板部(51)では、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)の近傍の部分の剛性が確実に低くなり、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)の基端部付近における応力の集中が緩和される。
図12に示すように、本実施形態および本変形例のスクロール圧縮機(10)において、背面凹部(70)の幅Wは、WL以上でWH以下の範囲(WL≦W≦WH)であるのが望ましい。WL及びWHは、下記の数式で表される値である。
WL=R−(Re+te)
WH=R−(Re−2te)
上記の数式の「R」、「Re」、及び「te」について、図12を参照しながら説明する。旋回側ラップ(60)の外側面(65)の最外周端(66)と旋回側鏡板部(51)の中心Cを通る直線を、直線ILとする。「R」は、直線IL上における旋回側鏡板部(51)の中心Cから旋回側鏡板部(51)の外周面(54)までの距離である。「Re」は、直線IL上における旋回側鏡板部(51)の中心Cから旋回側ラップ(60)の外側面(65)までの距離である。「te」は、直線IL上における旋回側ラップ(60)の厚さである。
WL≦W≦WHの関係が満たされる場合は、背面凹部(70)の内周側壁面(71)が、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)に近接した位置に形成される。このため、旋回側鏡板部(51)のうち旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)に近接した領域の剛性を、背面凹部(70)を形成することによって確実に低下させることができる。従って、この場合は、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)の根元付近の部分において発生する応力を小さくでき、旋回側ラップ(60)の損傷を回避できる。
〈第2変形例〉
図13に示すように、本実施形態の旋回スクロール(50)において、旋回側鏡板部(51)の背面凹部(70)は、その全体が旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)に沿っていてもよい。
本変形例の背面凹部(70)の前側壁面(73)は、旋回側鏡板部(51)の周方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)の後側に位置する。言い換えると、本変形例の背面凹部(70)の前側壁面(73)は、旋回側ラップ(60)の伸長方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)の後側に位置する。従って、本変形例では、背面凹部(70)の全体が、旋回側鏡板部(51)の周方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)の後側に位置する。言い換えると、本変形例では、背面凹部(70)の全体が、旋回側ラップ(60)の伸長方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)の後側に位置する。
また、図14に示すように、本変形例の背面凹部(70)は、旋回側鏡板部(51)の周方向における長さが、図13に示す背面凹部(70)よりも長くてもよい。図14に示す背面凹部(70)は、旋回側鏡板部(51)の周方向における長さが、図5に示す背面凹部(70)と同程度である。
本変形例の旋回スクロール(50)において、背面凹部(70)の内周側壁面(71)は、旋回側鏡板部(51)の径方向における旋回側ラップ(60)の外側面(65)の外側に位置する。本変形例の旋回スクロール(50)旋回側鏡板部(51)において、背面凹部(70)は、旋回側鏡板部(51)の径方向における旋回側ラップ(60)の旋回側ラップ(60)の外側面(65)の外側の部分に配置される。
〈第3変形例〉
図15に示すように、本実施形態の旋回スクロール(50)において、旋回側鏡板部(51)の背面凹部(70)は、旋回側鏡板部(51)の背面(53)だけに開口していてもよい。つまり、本変形例の背面凹部(70)は、旋回側鏡板部(51)の外周面(54)に開口しておらず、その外周側壁面(72)が旋回側鏡板部(51)の外周面(54)よりも旋回側鏡板部(51)の径方向の内側に位置する。
〈第4変形例〉
図16に示すように、本実施形態の旋回スクロール(50)において、旋回側鏡板部(51)の背面凹部(70)は、その深さが旋回側鏡板部(51)の径方向の内側へ向かって次第に浅くなる形状であってもよい。この場合、背面凹部(70)の底壁面(75)は、傾斜面となる。
〈第5変形例〉
本実施形態の圧縮機構(30)は、固定側ラップ(42)が旋回側ラップ(60)よりも長い非対称ラップ構造に限定されない。本実施形態の圧縮機構(30)は、固定側ラップ(42)と旋回側ラップ(60)の長さが等しい対称ラップ構造であってもよい。
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態および変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
以上説明したように、本開示は、スクロール圧縮機について有用である。
10 スクロール圧縮機
40 固定スクロール
42 固定側ラップ
50 旋回スクロール
51 旋回側鏡板部
52 (旋回側鏡板部の)前面
53 (旋回側鏡板部の)背面
54 (旋回側鏡板部の)外周面
60 旋回側ラップ
62 (旋回側ラップの)巻き終わり端
63 (旋回側ラップの)巻き終わり部
65 (旋回側ラップの)外側面
70 背面凹部
本開示は、スクロール圧縮機に関するものである。
従来より、旋回スクロールと固定スクロールを備えたスクロール圧縮機が知られている。スクロール圧縮機が停止する際には、スクロール圧縮機の作動中とは逆方向へ旋回スクロールが旋回する場合がある。旋回スクロールが逆転する際には、旋回側ラップの巻き終わり部に作用する荷重が過大となり、旋回側ラップの破損を招くおそれがある。そこで、特許文献1に開示されたスクロール圧縮機では、旋回側ラップの巻き終わり部に所定形状の切り欠き部を形成することによって、旋回スクロールの逆転中に旋回側ラップの巻き終わり部に作用する荷重を低減している。
特許文献1に開示されたスクロール圧縮機のように旋回側ラップの巻き終わり部に切り欠き部を形成した場合、旋回側ラップのうち切り欠き部の形成された部分は、圧縮室を形成できない。その結果、旋回側ラップのうち圧縮室を形成できる部分の長さが短くなり、閉じきり時点における圧縮室の容積が小さくなり、スクロール圧縮機の容量を確保できないおそれがあった。
本開示の目的は、スクロール圧縮機の容量を確保しつつ、旋回側ラップの損傷を抑えることにある。
本開示の第1の態様は、円板状の旋回側鏡板部(51)と該旋回側鏡板部(51)の前面(52)から突出する渦巻き壁状の旋回側ラップ(60)とを有する旋回スクロール(50)と、上記旋回側ラップ(60)と噛み合う渦巻き壁状の固定側ラップ(42)を有する固定スクロール(40)とを備えたスクロール圧縮機を対象とし、上記旋回側鏡板部(51)には、該旋回側鏡板部(51)の背面(53)に開口して上記旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)に沿って延びる背面凹部(70)が形成され、上記旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)は、上記旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)から、上記旋回側鏡板部(51)の中心C回りの角度が20°の範囲に位置する部分であり、上記背面凹部(70)の全体が、上記旋回側鏡板部(51)の背面(53)と外周面(54)の両方に開口し、上記背面凹部(70)は、上記旋回側鏡板部(51)の前面(52)に沿った底壁面(75)と、該底壁面(75)から上記旋回側鏡板部(51)の背面(53)に向かって該旋回側鏡板部(51)の厚さ方向に延びる内周側壁面(71)とを有しているものである。
第1の態様では、旋回側鏡板部(51)に背面凹部(70)が形成される。旋回側鏡板部(51)において、背面凹部(70)が形成された部分は、他の部分に比べて厚さが薄く、従って他の部分に比べて剛性が低い。背面凹部(70)は、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)に沿って延びている。従って、旋回側鏡板部(51)は、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)に沿った部分の剛性が比較的低くなる。
旋回スクロール(50)の逆転中には、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)に比較的大きな荷重が作用する場合がある。この場合、第1の態様のスクロール圧縮機(10)では、旋回側鏡板部(51)のうち背面凹部(70)が形成された部分(即ち、剛性が比較的低い部分)が弾性変形する。このため、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)の根元付近の部分(即ち、旋回側鏡板部(51)寄りの基端部)において発生する応力が小さくなり、旋回側ラップ(60)の損傷が回避される。
また、第1の態様の旋回側鏡板部(51)では、その背面(53)と外周面(54)の両方に背面凹部(70)の全体が開口する。旋回側鏡板部(51)の外周面(54)は、旋回側鏡板部(51)の径方向における旋回側ラップ(60)の外側に位置する。従って、この態様の背面凹部(70)は、その少なくとも一部分が、旋回側鏡板部(51)の径方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)の外側に位置する。この態様の旋回側鏡板部(51)は、その外周面(54)に背面凹部(70)が開口するため、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)に沿った部分の剛性が低くなる。
また、第1の態様において、背面凹部(70)は、底壁面(75)と内周側壁面(71)とを有する。底壁面(75)は、旋回側鏡板部(51)の前面(52)に沿った面である。内周側壁面(71)は、底壁面(75)から旋回側鏡板部(51)の背面(53)に向かって旋回側鏡板部(51)の厚さ方向に延びる面である。
本開示の第2の態様は、上記第1の態様において、上記旋回側ラップ(60)に沿って該旋回側ラップ(60)の巻き始め端(61)から巻き終わり端(62)へ向かう方向が、上記旋回側ラップ(60)の伸長方向であり、上記背面凹部(70)の全体が、上記旋回側ラップ(60)の伸長方向における上記旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)の後側に形成されるものである。
第2の態様の旋回側鏡板部(51)では、背面凹部(70)の全体が、旋回側ラップ(60)の伸長方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)の後側に形成される。この態様では、背面凹部(70)の全体が、旋回側ラップ(60)に沿っている。
本開示の第3の態様は、上記第1の態様において、上記旋回側ラップ(60)に沿って該旋回側ラップ(60)の巻き始め端(61)から巻き終わり端(62)へ向かう方向が、上記旋回側ラップ(60)の伸長方向であり、上記背面凹部(70)は、上記旋回側ラップ(60)の伸長方向における上記旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)の前側と後側の両方に亘って形成されるものである。
第3の態様の背面凹部(70)は、その一部が旋回側ラップ(60)の伸長方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)の前側に位置し、残りの部分が旋回側ラップ(60)の伸長方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)の後側の領域に位置する。
本開示の第4の態様は、上記第3の態様において、上記背面凹部(70)は、上記旋回側ラップ(60)の伸長方向における上記旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)の後側に位置する部分(77)の上記旋回側鏡板部(51)の周方向の長さが、上記旋回側ラップ(60)の伸長方向における上記旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)の前側に位置する部分(76)の上記旋回側鏡板部(51)の周方向の長さ以上であるものである。
第4の態様の背面凹部(70)は、旋回側ラップ(60)の伸長方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)の後側に位置する部分(77)が、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)に沿う一方、旋回側ラップ(60)の伸長方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)の前側に位置する部分(76)が、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)から外れる。従って、この態様の背面凹部(70)は、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)に沿う部分(77)の長さが、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)から外れた部分(76)の長さ以上となる。
本開示の第5の態様は、上記第1〜第4のいずれか一つの態様において、上記旋回側鏡板部(51)の径方向における上記背面凹部(70)の幅をWとする一方、上記旋回側ラップ(60)の外側面(65)の最外周端(66)と上記旋回側鏡板部(51)の中心Cを通る直線上において、上記旋回側鏡板部(51)の中心Cから上記旋回側鏡板部(51)の外周面(54)までの距離をRとし、上記旋回側鏡板部(51)の中心Cから上記旋回側ラップ(60)の外側面(65)までの距離をReとし、上記旋回側ラップ(60)の厚さをteとしたときに、R−(Re+te)≦W≦R−(Re−2te)の関係を満たすものである。
第5の態様において、背面凹部(70)の幅をWは、R−(Re+te)≦W≦R−(Re−2te)の関係を満たす。この態様では、旋回側鏡板部(51)のうち背面凹部(70)が形成された部分(即ち、剛性が比較的低い部分)の大きさが確保される。その結果、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)の根元付近の部分において発生する応力が小さくなり、旋回側ラップ(60)の損傷が回避される。
本開示の第6の態様は、上記第1〜第5のいずれか一つの態様において、上記背面凹部(70)の内周側壁面(71)は、上記旋回側鏡板部(51)の径方向における上記旋回側ラップ(60)の外側面(65)の外側に位置するものである。
第6の態様の旋回側鏡板部(51)では、旋回側鏡板部(51)の径方向における旋回側ラップ(60)の旋回側ラップ(60)の外側面(65)の外側の部分に、背面凹部(70)が配置される。
本開示の第7の態様は、上記第1〜第5のいずれか一つの態様において、上記背面凹部(70)は、上記旋回側鏡板部(51)の径方向における上記旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)の外側面(65)の内側と外側の両方に亘って形成されるものである。
第7の態様の旋回側鏡板部(51)では、旋回側鏡板部(51)の径方向における旋回側ラップ(60)の外側の部分と、旋回側鏡板部(51)の径方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)の外周面(54)よりも内側の部分とに亘って、背面凹部(70)が形成される。
本開示の第8の態様は、上記第1〜第7のいずれか一つの態様において、上記背面凹部(70)の深さをDとし、上記旋回側鏡板部(51)の厚さをTとしたときに、0.5≦D/T≦0.8の関係を満たすものである。
第8の態様の旋回側鏡板部(51)において、背面凹部(70)は、0.5≦D/T≦0.8の関係を満たす。このため、旋回側鏡板部(51)のうち背面凹部(70)が形成された部分の剛性が比較的低くなり、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)の根元付近の部分において発生する応力が小さくなる。
図1は、実施形態のスクロール圧縮機の縦断面図である。
図2は、図1のII−II断面における圧縮機構の断面図である。
図3は、旋回側ラップ側から見た実施形態の旋回スクロールの斜視図である。
図4は、ボス部側から見た実施形態の旋回スクロールの斜視図である。
図5は、実施形態の旋回スクロールの平面図である。
図6は、実施形態の旋回スクロールの背面図である。
図7は、図5のVII−VII断面の要部を示す旋回スクロールの断面図である。
図8は、第1変形例の旋回スクロールの平面図である。
図9は、図8のIX−IX断面の要部を示す旋回スクロールの断面図である。
図10は、第1変形例の旋回スクロールの平面図である。
図11は、図10のXI−XI断面の要部を示す旋回スクロールの断面図である。
図12は、第1変形例の旋回スクロールの平面図である。
図13は、第2変形例の旋回スクロールの平面図である。
図14は、第2変形例の旋回スクロールの平面図である。
図15は、参考技術1の旋回スクロールの平面図である。
図16は、参考技術2の旋回スクロールの図7に相当する断面を示す断面図である。
実施形態のスクロール圧縮機(10)について説明する。このスクロール圧縮機(10)は、冷媒が循環して冷凍サイクルを行う冷媒回路(図示省略)に接続され、流体である冷媒を圧縮する。
−スクロール圧縮機の全体構成−
図1に示すように、スクロール圧縮機(10)は、密閉容器であるケーシング(11)に圧縮機構(30)と電動機(20)とが収容された全密閉型圧縮機である。
ケーシング(11)は、両端が閉塞された円筒状の圧力容器である。ケーシング(11)は、その軸方向が上下方向となる姿勢で設置される。ケーシング(11)の上端部には、冷媒回路の冷媒を圧縮機構(30)へ導入するための吸入管(12)が設けられる。また、ケーシング(11)には、ケーシング(11)内の冷媒をケーシング(11)外に導出するための吐出管(13)が設けられる。ケーシング(11)の底部には、圧縮機構(30)等を潤滑するための潤滑油が貯留される。
ケーシング(11)の内部において、電動機(20)は、圧縮機構(30)の下方に配置される。電動機(20)と圧縮機構(30)は、駆動軸(25)によって連結される。電動機(20)は、固定子(21)と回転子(22)とを備えている。電動機(20)の固定子(21)は、ケーシング(11)に固定される。電動機(20)の回転子(22)は、駆動軸(25)に取り付けられる。
駆動軸(25)は、主軸部(26)と、偏心軸部(27)とを備える。主軸部(26)は、その軸心が駆動軸(25)の軸心と一致する。主軸部(26)には、電動機(20)の回転子(22)が取り付けられる。主軸部(26)は、回転子(22)の上側の部分が、後述する圧縮機構(30)の軸受部(36)に支持され、回転子(22)の下側の部分が、後述する下部軸受部材(15)に支持される。偏心軸部(27)は、比較的短い軸状に形成され、主軸部(26)の上端に突設される。偏心軸部(27)の軸心は、主軸部(26)の軸心と実質的に平行であり、主軸部(26)の軸心に対して偏心している。
ケーシング(11)内の下部には、下部軸受部材(15)が設けられる。下部軸受部材(15)は、ケーシング(11)に固定される。下部軸受部材(15)は、駆動軸(25)の主軸部(26)を回転自在に支持するジャーナル軸受を構成する。
−圧縮機構の構成−
圧縮機構(30)は、ハウジング(35)と、固定スクロール(40)と、旋回スクロール(50)と、オルダム継手(32)とを備える。ハウジング(35)は、ケーシング(11)に固定される。固定スクロール(40)は、ハウジング(35)の上面に配置される。旋回スクロール(50)は、固定スクロール(40)とハウジング(35)との間に配置される。
ハウジング(35)は、中央が凹陥した皿状の部材である。また、ハウジング(35)には、軸受部(36)が形成される。軸受部(36)は、下方へ突出した肉厚の筒状の部分である。軸受部(36)は、駆動軸(25)の主軸部(26)を回転自在に支持するジャーナル軸受を構成する。
図2にも示すように、固定スクロール(40)は、固定側鏡板部(41)と、固定側ラップ(42)と、外周壁部(43)とを備える。固定側ラップ(42)は、インボリュート曲線を描く渦巻き壁状に形成され、固定側鏡板部(41)の前面(図1における下面)から突出する。外周壁部(43)は、固定側ラップ(42)の外周側を囲むように形成され、固定側鏡板部(41)の前面から突出する。固定側ラップ(42)の先端面と外周壁部(43)の先端面とは略面一である。
本実施形態の圧縮機構(30)は、固定側ラップ(42)が、後述する旋回スクロール(50)の旋回側ラップ(60)よりも長い非対称ラップ構造となっている。図2に二点鎖線で示すように、固定側ラップ(42)のうち最外周に位置する部分は、外周壁部(43)と一体化されている。
図3及び図4にも示すように、旋回スクロール(50)は、旋回側鏡板部(51)と、旋回側ラップ(60)と、ボス部(55)とを備える。旋回側鏡板部(51)は、概ね円形の平板状に形成される。旋回側ラップ(60)は、インボリュート曲線を描く渦巻き壁状に形成され、旋回側鏡板部(51)の前面(52)(図1における上面)から突出する。旋回側ラップ(60)は、旋回側鏡板部(51)の中央寄りの先端が巻き始め端(61)であり、旋回側鏡板部(51)の外周面(54)寄りの先端が巻き終わり端(62)である。ボス部(55)は、円筒状に形成され、旋回側鏡板部(51)の背面(53)の中央部に配置される。ボス部(55)には、駆動軸(25)の偏心軸部(27)が差し込まれる。
旋回スクロール(50)の旋回側鏡板部(51)には、キー溝(56)と背面凹部(70)とが形成される。キー溝(56)は、旋回側鏡板の背面(53)に開口する凹溝である。図5及び図6に示すように、キー溝(56)は、旋回側鏡板部(51)の中心を挟んで対向する位置に一つずつ配置される。このキー溝(56)には、オルダム継手(32)のキーが嵌まり込む。背面凹部(70)については、後述する。
オルダム継手(32)は、旋回スクロール(50)とハウジング(35)の間に配置される。オルダム継手(32)は、旋回スクロール(50)とハウジング(35)のそれぞれに係合し、旋回スクロール(50)の自転を規制する。
図2にも示すように、旋回スクロール(50)の旋回側ラップ(60)は、固定スクロール(40)の固定側ラップ(42)と噛み合う。旋回側ラップ(60)の内側面(64)は、固定側ラップ(42)の外側面(48)と摺動し、旋回側ラップ(60)の外側面(65)は、固定側ラップ(42)の内側面(47)と摺動する。旋回側ラップ(60)の内側面(64)は、旋回側ラップ(60)の側壁面のうち固定側ラップ(42)の外側面(48)と摺動する部分である。旋回側ラップ(60)の外側面(65)は、旋回側ラップ(60)の側壁面のうち固定側ラップ(42)の内側面(47)と摺動する部分である。圧縮機構(30)では、固定スクロール(40)の固定側鏡板部(41)及び固定側ラップ(42)と、旋回スクロール(50)の旋回側鏡板部(51)及び旋回側ラップ(60)とに囲まれた圧縮室(31)が形成される。
固定スクロール(40)の外周壁部(43)には、吸入ポート(44)が形成される。吸入ポート(44)には、吸入管(12)の下流端が接続される。固定スクロール(40)の固定側鏡板部(41)の中央には、固定側鏡板部(41)を貫通する吐出口(45)が形成される。
固定側鏡板部(41)の背面(図1における上面)の中央には、高圧チャンバ(46)が形成される。高圧チャンバ(46)は、吐出口(45)に連通する空間である。高圧チャンバ(46)は、図外の通路を介して、ケーシング(11)内におけるハウジング(35)の下方の空間に連通する。
−スクロール圧縮機の運転動作−
スクロール圧縮機(10)では、圧縮機構(30)の旋回スクロール(50)が、電動機(20)によって駆動されて公転運動を行う。本実施形態の旋回スクロール(50)は、図2における時計方向に公転する。旋回スクロール(50)が移動すると、吸入管(12)から吸入ポート(44)へ流入した冷媒が、圧縮室(31)へ流入する。旋回スクロール(50)が移動するにつれて、圧縮室(31)は、旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)から巻き始め端(61)へ向かって移動し、それに伴って圧縮室(31)の容積が縮小し、圧縮室(31)内の冷媒が圧縮される。圧縮された冷媒は、圧縮室(31)から吐出口(45)を通って高圧チャンバ(46)へ吐出される。高圧チャンバ(46)へ流入した冷媒は、ケーシング(11)内におけるハウジング(35)の下方の空間へ流入し、その後に吐出管(13)を通ってケーシング(11)の外部へ流出する。
−旋回側鏡板部の背面凹部−
上述したように、旋回スクロール(50)の旋回側鏡板部(51)には、背面凹部(70)が形成される。ここでは、背面凹部(70)について、図3〜7を参照しながら詳しく説明する。
背面凹部(70)は、旋回側鏡板部(51)の背面(53)と外周面(54)の両方に開口する凹部である。背面凹部(70)は、旋回側鏡板部(51)の外周縁に沿うように湾曲している。つまり、背面凹部(70)は、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)に沿って延びている(図5,6を参照)。なお、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)については後述する。
背面凹部(70)の内周側壁面(71)は、背面凹部(70)に面する側壁面のうち旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)に沿って延びる部分である。この内周側壁面(71)は、旋回側鏡板部(51)の径方向において、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)の外側面(65)よりも僅かに外側に位置する(図5〜7を参照)。つまり、背面凹部(70)は、その全体が、旋回側鏡板部(51)の径方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)の外側に位置する。
背面凹部(70)は、旋回側鏡板部(51)の周方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)の前側と後側の両方に亘って形成される。つまり、旋回側鏡板部(51)の中心C周りの角度を中心角としたときに、本実施形態の旋回側鏡板部(51)では、中心角が所定の数値範囲となり且つ旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)を含む領域に、背面凹部(70)が形成される。なお、旋回側鏡板部(51)の中心Cは、ボス部(55)の中心軸上の点である。また、言い換えると、背面凹部(70)は、旋回側ラップ(60)の伸長方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)の前側と後側の両方に亘って形成される。旋回側ラップ(60)の伸長方向は、旋回側ラップ(60)に沿って旋回側ラップ(60)の巻き始め端(61)から巻き終わり端(62)へ向かう方向である。
背面凹部(70)の前側壁面(73)は、図6に示す半直線HFの一部を含む平面である。この半直線HFは、旋回側鏡板部(51)の中心Cから旋回側鏡板部(51)の径方向の外側に延びる半直線である。背面凹部(70)の前側壁面(73)は、旋回側鏡板部(51)の周方向において、旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)よりも前側(図5における時計方向に進んだ側、図6における反時計方向に進んだ側)に位置する。つまり、背面凹部(70)の前側壁面(73)は、旋回側ラップ(60)の巻き方向において、旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)よりも先に進んだ位置に配置される。旋回側ラップ(60)の巻き方向は、上述した旋回側ラップ(60)の伸長方向と同じである。
背面凹部(70)の後側壁面(74)は、図6に示す半直線HBの一部を含む平面である。この半直線HBは、旋回側鏡板部(51)の中心Cから旋回側鏡板部(51)の径方向の外側に延びる半直線である。背面凹部(70)の後側壁面(74)は、旋回側鏡板部(51)の周方向において、旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)よりも後側(図5における反時計方向に進んだ側、図6における時計方向に進んだ側)に位置する。つまり、背面凹部(70)の後側壁面(74)は、旋回側ラップ(60)の巻き方向において、旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)よりも巻き始め端(61)寄りに配置される。旋回側ラップ(60)の巻き方向は、上述した旋回側ラップ(60)の伸長方向と同じである。
本実施形態の旋回側鏡板部(51)において、半直線H1と半直線HBのなす角度αは、半直線H1と半直線HFのなす角度β以上である(α≧β)。本実施形態において、角度αは35°であり、角度βは15°である。角度αは、角度βの2倍以上(α≧2β)であるのが望ましい。なお、半直線H1は、旋回側鏡板部(51)の中心Cから旋回側鏡板部(51)の径方向の外側に延び且つ旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)を通る半直線である。
背面凹部(70)のうち、旋回側鏡板部(51)の周方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)よりも前側に位置する部分を前側部分(76)とし、旋回側鏡板部(51)の周方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)よりも後側に位置する部分を後側部分(77)とする。前側部分(76)は、背面凹部(70)のうち、旋回側ラップ(60)の伸長方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)よりも前側に位置する部分である。後側部分(77)は、背面凹部(70)のうち、旋回側ラップ(60)の伸長方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)よりも後側に位置する部分である。
背面凹部(70)は、旋回側鏡板部(51)の周方向における前側部分(76)の長さLFが角度βに比例し、旋回側鏡板部(51)の周方向における後側部分(77)の長さLBが角度αに比例する。上述したように、本実施形態の背面凹部(70)は、角度αが角度β以上である。従って、本実施形態の背面凹部(70)は、旋回側鏡板部(51)の周方向における後側部分(77)の長さLBが、旋回側鏡板部(51)の周方向における前側部分(76)の長さLF以上となる(LB≧LF)。
背面凹部(70)は、旋回側鏡板部(51)の径方向の幅Wが、旋回側鏡板部(51)の周方向の全長に亘って実質的に一定である。本実施形態において、背面凹部(70)の幅Wは、背面凹部(70)の内周側面から旋回側鏡板部(51)の外周面(54)までの距離である。ここで、旋回側ラップ(60)の外側面(65)から旋回側鏡板部(51)の外周面(54)までの距離をLとする(図7を参照)。本実施形態において、背面凹部(70)の幅Wは、この距離Lの最小値Lminの半分よりも長い(W>Lmin/2)。
本実施形態において、背面凹部(70)の深さDは、旋回側鏡板部(51)の厚さTの約62%である。本実施形態の背面凹部(70)は、その深さDが背面凹部(70)の全体に亘って実質的に一定である。従って、背面凹部(70)の底壁面(75)は、旋回側鏡板部(51)の前面(52)と実質的に平行な平坦面である。なお、背面凹部(70)の深さDは、旋回側鏡板部(51)の厚さTの半分以上であるのが望ましい(D≧T/2)。更に、背面凹部(70)の深さDは、0.5T以上で0.8T以下であるのが望ましい。つまり、本実施形態において、背面凹部(70)の深さDと、旋回側鏡板部(51)の厚さTは、0.5≦D/T≦0.8の関係を満たすのが望ましい。
ここで、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)は、旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)付近の部分である。本実施形態において、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)は、旋回側ラップ(60)のうち図5における半直線H1と半直線H2の間の部分を指す。半直線H2は、旋回側鏡板部(51)の中心Cから旋回側鏡板部(51)の径方向の外側へ延び、直線L1となす角度が20°の半直線である。このように、本実施形態の旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)は、旋回側ラップ(60)のうち、旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)から、旋回側鏡板の中心C回りの角度(中心角)が20°の範囲に位置する部分である。なお、ここに示す中心角の値(20°)は、単なる一例である。
−旋回側ラップに作用する荷重−
スクロール圧縮機(10)の作動中において、旋回スクロール(50)の旋回側ラップ(60)には、旋回側ラップ(60)の内側面(64)と外側面(65)のそれぞれに、圧縮室(31)内の冷媒の圧力が作用する。そして、旋回側ラップ(60)の内側面(64)に作用する力と外側面(65)に作用する力の差が大きいほど、旋回側ラップ(60)に作用する荷重が大きくなる。
図2に示すように、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)は、圧縮機構(30)の吸入ポート(44)の近傍に位置している。このため、スクロール圧縮機(10)の作動中において、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)の内側面(64)と外側面(65)のそれぞれに作用する冷媒の圧力は、吸入ポート(44)から圧縮室(31)へ吸入される冷媒の圧力と概ね等しい。従って、スクロール圧縮機(10)の作動中には、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)に、それ程大きな荷重は作用しない。
ところで、スクロール圧縮機(10)が停止した直後(即ち、電動機(20)への通電を遮断した直後)は、冷媒が吐出口(45)から圧縮室(31)へ逆流し、圧縮室(31)内で冷媒が膨張することによって、旋回スクロール(50)が逆方向(本実施形態では図2における反時計方向)へ旋回することがある。また、旋回スクロール(50)の逆転中には、圧縮室(31)が旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)に到達した時点でも、圧縮室(31)内の冷媒圧力が吸入ポート(44)の冷媒圧力にまで下がりきっていない場合がある。この場合は、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)の内側面(64)と外側面(65)に作用する流体圧の差が、スクロール圧縮機(10)の作動中に比べて大きくなる。
このように、旋回スクロール(50)の逆転中は、旋回スクロール(50)の正転中に比べて、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)に作用する荷重が大きくなるおそれがある。そして、旋回側鏡板部(51)のうち旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)の近傍の部分の厚さが他の部分と同程度である場合に、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)に比較的大きな荷重が作用すると、旋回側鏡板部(51)は殆ど弾性変形しないため、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)の根元(旋回側鏡板部(51)寄りの基端部)付近に応力が集中し、旋回側ラップ(60)の破損を招くおそれがある。
一方、本実施形態のスクロール圧縮機(10)では、旋回スクロール(50)の旋回側鏡板部(51)に背面凹部(70)が形成される。上述したように、背面凹部(70)は、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)に沿って延びている。そのため、旋回側鏡板部(51)では、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)の近傍に、肉厚が比較的薄くて剛性が比較的低い部分が形成される。従って、本実施形態の旋回側鏡板部(51)は、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)に沿った部分の剛性が比較的低くなる。
旋回スクロール(50)の逆転中に旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)に比較的大きな荷重が作用すると、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)が弾性変形するだけでなく、旋回側鏡板部(51)のうち旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)の近傍の部分も弾性変形する。そのため、旋回スクロール(50)の逆転中に旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)に作用する応力が分散し、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)の根元付近において発生する応力が小さくなる。本実施形態において、旋回スクロール(50)の逆転中に旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)の根元付近において発生する応力は、旋回側鏡板部(51)に背面凹部(70)を形成しない場合の約84%程度にまで低下する。
−実施形態の特徴(1)−
本実施形態のスクロール圧縮機(10)は、円板状の旋回側鏡板部(51)と旋回側鏡板部(51)の前面(52)から突出する渦巻き壁状の旋回側ラップ(60)とを有する旋回スクロール(50)と、旋回側ラップ(60)と噛み合う渦巻き壁状の固定側ラップ(42)を有する固定スクロール(40)とを備える。このスクロール圧縮機(10)において、旋回側鏡板部(51)には、旋回側鏡板部(51)の背面(53)に開口して旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)に沿って延びる背面凹部(70)が形成される。
本実施形態の旋回側鏡板部(51)において、背面凹部(70)が形成された部分は、他の部分に比べて厚さが薄く、従って他の部分に比べて剛性が低い。背面凹部(70)は、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)に沿って延びている。従って、旋回側鏡板部(51)は、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)に沿った部分の剛性が比較的低くなる。
旋回スクロール(50)の逆転中には、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)に比較的大きな応力が発生する場合がある。この場合、本実施形態のスクロール圧縮機(10)では、旋回側鏡板部(51)のうち背面凹部(70)が形成された部分(即ち、剛性が比較的低い部分)が弾性変形する。このため、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)の根元付近の部分(即ち、旋回側鏡板部(51)寄りの基端部)において発生する応力が小さくなり、旋回側ラップ(60)の損傷が回避される。
−実施形態の特徴(2)−
本実施形態のスクロール圧縮機(10)において、背面凹部(70)は、旋回側ラップ(60)の伸長方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)の前側と後側の両方に亘って形成される。旋回側ラップ(60)の伸長方向は、旋回側ラップ(60)に沿って旋回側ラップ(60)の巻き始め端(61)から巻き終わり端(62)へ向かう方向である。
本実施形態の背面凹部(70)は、その一部が旋回側ラップ(60)の伸長方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)の前側に位置し、残りの部分が旋回側ラップ(60)の伸長方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)の後側の領域に位置する。
また、本実施形態のスクロール圧縮機(10)において、背面凹部(70)は、旋回側鏡板部(51)の周方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)の前側と後側の両方に亘って形成される。
本実施形態の背面凹部(70)は、その一部が旋回側鏡板部(51)の周方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)の前側に位置し、残りの部分が旋回側鏡板部(51)の周方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)の後側の領域に位置する。
−実施形態の特徴(3)−
本実施形態のスクロール圧縮機(10)において、背面凹部(70)は、“旋回側ラップ(60)の伸長方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)の後側に位置する後側部分(77)”の旋回側鏡板部(51)の周方向の長さが、“旋回側ラップ(60)の伸長方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)の前側に位置する前側部分(76)”の旋回側鏡板部(51)の周方向の長さ以上である。
本実施形態の背面凹部(70)は、旋回側ラップ(60)の伸長方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)の後側に位置する部分(77)が、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)に沿う一方、旋回側ラップ(60)の伸長方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)の前側に位置する部分(76)が、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)から外れる。従って、この態様の背面凹部(70)は、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)に沿う部分(77)の長さが、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)から外れた部分(76)の長さ以上となる。
また、本実施形態のスクロール圧縮機(10)において、背面凹部(70)は、“旋回側鏡板部(51)の周方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)の後側に位置する後側部分(77)”の旋回側鏡板部(51)の周方向の長さが、“背面凹部(70)のうち旋回側鏡板部(51)の周方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)の前側に位置する前側部分(76)”の旋回側鏡板部(51)の周方向の長さ以上である。
本実施形態の背面凹部(70)は、旋回側鏡板部(51)の周方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)の後側に位置する部分(77)が、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)に沿う一方、旋回側鏡板部(51)の周方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)の前側に位置する部分(76)が、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)から外れる。従って、本実施形態の背面凹部(70)は、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)に沿う部分(77)の長さが、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)から外れた部分(76)の長さ以上となる。
−実施形態の特徴(4)−
本実施形態のスクロール圧縮機(10)において、背面凹部(70)は、旋回側鏡板部(51)の背面(53)と外周面(54)の両方に開口する。
本実施形態の旋回側鏡板部(51)では、その背面(53)と外周面(54)の両方に背面凹部(70)が開口する。旋回側鏡板部(51)の外周面(54)は、旋回側鏡板部(51)の径方向における旋回側ラップ(60)の外側に位置する。従って、本実施形態の背面凹部(70)は、その少なくとも一部分が、旋回側鏡板部(51)の径方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)の外側に位置する。本実施形態の旋回側鏡板部(51)は、その外周面(54)に背面凹部(70)が開口するため、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)に沿った部分の剛性が低くなる。
−実施形態の特徴(5)−
本実施形態のスクロール圧縮機(10)において、背面凹部(70)は、その全体が旋回側鏡板部(51)の径方向における旋回側ラップ(60)の外側に形成される。
本実施形態の旋回側鏡板部(51)では、旋回側鏡板部(51)の径方向における旋回側ラップ(60)の外側の部分に、背面凹部(70)の全体が配置される。
−実施形態の特徴(6)−
本実施形態のスクロール圧縮機(10)は、背面凹部(70)の深さをDとし、旋回側鏡板部(51)の厚さをTとしたときに、0.5≦D/T≦0.8の関係を満たす。
このため、旋回側鏡板部(51)のうち背面凹部(70)が形成された部分の剛性が比較的低くなり、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)の根元付近の部分において発生する応力が小さくなる。
−実施形態の変形例−
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
〈第1変形例〉
本実施形態の旋回スクロール(50)において、旋回側鏡板部(51)の背面凹部(70)は、旋回側鏡板部(51)の径方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)の外側面(65)の内側と外側の両方に亘って形成されていてもよい。つまり、本実施形態の旋回スクロール(50)において、旋回側鏡板部(51)の背面凹部(70)は、その少なくとも一部分が、旋回側鏡板部(51)の径方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)の外側に位置していればよい。
図8及び図9に示す本変形例の旋回スクロール(50)において、背面凹部(70)の内周側壁面(71)は、旋回側鏡板部(51)の径方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)の内側面(64)と外側面(65)の間に位置する。また、図10及び図11に示す本変形例の旋回スクロール(50)において、背面凹部(70)の内周側壁面(71)は、旋回側鏡板部(51)の径方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)の内側面(64)よりも内側に位置する。
本変形例のスクロール圧縮機(10)において、背面凹部(70)は、旋回側鏡板部(51)の径方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)の外側面(65)の内側と外側の両方に亘って形成される。
本変形例の旋回側鏡板部(51)では、旋回側鏡板部(51)の径方向における旋回側ラップ(60)の外側の部分と、旋回側鏡板部(51)の径方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)の外周面(54)よりも内側の部分とに亘って、背面凹部(70)が形成される。このため、旋回側鏡板部(51)では、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)の近傍の部分の剛性が確実に低くなり、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)の基端部付近における応力の集中が緩和される。
図12に示すように、本実施形態および本変形例のスクロール圧縮機(10)において、背面凹部(70)の幅Wは、WL以上でWH以下の範囲(WL≦W≦WH)であるのが望ましい。WL及びWHは、下記の数式で表される値である。
WL=R−(Re+te)
WH=R−(Re−2te)
上記の数式の「R」、「Re」、及び「te」について、図12を参照しながら説明する。旋回側ラップ(60)の外側面(65)の最外周端(66)と旋回側鏡板部(51)の中心Cを通る直線を、直線ILとする。「R」は、直線IL上における旋回側鏡板部(51)の中心Cから旋回側鏡板部(51)の外周面(54)までの距離である。「Re」は、直線IL上における旋回側鏡板部(51)の中心Cから旋回側ラップ(60)の外側面(65)までの距離である。「te」は、直線IL上における旋回側ラップ(60)の厚さである。
WL≦W≦WHの関係が満たされる場合は、背面凹部(70)の内周側壁面(71)が、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)に近接した位置に形成される。このため、旋回側鏡板部(51)のうち旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)に近接した領域の剛性を、背面凹部(70)を形成することによって確実に低下させることができる。従って、この場合は、旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)の根元付近の部分において発生する応力を小さくでき、旋回側ラップ(60)の損傷を回避できる。
〈第2変形例〉
図13に示すように、本実施形態の旋回スクロール(50)において、旋回側鏡板部(51)の背面凹部(70)は、その全体が旋回側ラップ(60)の巻き終わり部(63)に沿っていてもよい。
本変形例の背面凹部(70)の前側壁面(73)は、旋回側鏡板部(51)の周方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)の後側に位置する。言い換えると、本変形例の背面凹部(70)の前側壁面(73)は、旋回側ラップ(60)の伸長方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)の後側に位置する。従って、本変形例では、背面凹部(70)の全体が、旋回側鏡板部(51)の周方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)の後側に位置する。言い換えると、本変形例では、背面凹部(70)の全体が、旋回側ラップ(60)の伸長方向における旋回側ラップ(60)の巻き終わり端(62)の後側に位置する。
また、図14に示すように、本変形例の背面凹部(70)は、旋回側鏡板部(51)の周方向における長さが、図13に示す背面凹部(70)よりも長くてもよい。図14に示す背面凹部(70)は、旋回側鏡板部(51)の周方向における長さが、図5に示す背面凹部(70)と同程度である。
本変形例の旋回スクロール(50)において、背面凹部(70)の内周側壁面(71)は、旋回側鏡板部(51)の径方向における旋回側ラップ(60)の外側面(65)の外側に位置する。本変形例の旋回スクロール(50)旋回側鏡板部(51)において、背面凹部(70)は、旋回側鏡板部(51)の径方向における旋回側ラップ(60)の旋回側ラップ(60)の外側面(65)の外側の部分に配置される。
〈参考技術1〉
図15に示すように、本実施形態の旋回スクロール(50)において、旋回側鏡板部(51)の背面凹部(70)は、旋回側鏡板部(51)の背面(53)だけに開口していてもよい。つまり、本参考技術の背面凹部(70)は、旋回側鏡板部(51)の外周面(54)に開口しておらず、その外周側壁面(72)が旋回側鏡板部(51)の外周面(54)よりも旋回側鏡板部(51)の径方向の内側に位置する。
〈参考技術2〉
図16に示すように、本実施形態の旋回スクロール(50)において、旋回側鏡板部(51)の背面凹部(70)は、その深さが旋回側鏡板部(51)の径方向の内側へ向かって次第に浅くなる形状であってもよい。この場合、背面凹部(70)の底壁面(75)は、傾斜面となる。
〈第3変形例〉
本実施形態の圧縮機構(30)は、固定側ラップ(42)が旋回側ラップ(60)よりも長い非対称ラップ構造に限定されない。本実施形態の圧縮機構(30)は、固定側ラップ(42)と旋回側ラップ(60)の長さが等しい対称ラップ構造であってもよい。
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態および変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
以上説明したように、本開示は、スクロール圧縮機について有用である。
10 スクロール圧縮機
40 固定スクロール
42 固定側ラップ
50 旋回スクロール
51 旋回側鏡板部
52 (旋回側鏡板部の)前面
53 (旋回側鏡板部の)背面
54 (旋回側鏡板部の)外周面
60 旋回側ラップ
62 (旋回側ラップの)巻き終わり端
63 (旋回側ラップの)巻き終わり部
65 (旋回側ラップの)外側面
70 背面凹部