JP2019119158A - 化粧シート及び化粧部材 - Google Patents
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しかし、特許文献1に記載の化粧シートでは、例えば、ラッピング加工や折り曲げ加工等の後加工が行われ、化粧シートが伸ばされると、伸ばされた部分の表面保護層にクラックが発生する可能性がある。そのため、クラックの発生箇所に紫外線や風雨等を受けることで、化粧シートの劣化が促進され、化粧シートの耐候性が低下する可能性がある。
また、本発明の他の態様は、(a)木質系材料または金属系材料により形成された基板と、(b)基板の表面側に設けられた上記した化粧シートと、を備える化粧部材であることを要旨とする。
(構成)
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係る化粧部材10は、基板11と、基板11の表面11a側に設けられた化粧シート13と、を備えている。本発明の第1実施形態に係る化粧部材10には、化粧シート13を基板11に貼り付けた後に基板11を折り曲げて、所望の内装部材・外装部材(例えば、建築物の床、壁等の内装、家具、キャビネット等の表面装飾材料、建具の表面化粧)の形状とする折り曲げ加工が施されている。
なお、本第1実施形態では、化粧部材10に折り曲げ加工が施されている例を示したが、他の構成を採用することもできる。例えば、化粧部材10は、3次元構造を有する基板11(例えば、ルーバー等の内装部材・外装部材の形状に形成されている基材11)に化粧シート13によりラッピング加工が施されて形成されている構成であってもよい。
基板11の材料としては、例えば、木質系材料、金属系材料を用いることができる。木質系材料としては、例えば、木材単板、木材合板、集成材、パーティクルボード、中密度繊維板、硬質繊維板を採用することができる。また、金属系材料としては、例えば、鋼板、真鍮板、アルミニウム板、ジュラルミン板、ステンレス板を採用することができる。基板11と化粧シート13との間には、必要に応じて、例えば、接着剤層を設けてもよい。
図2に示すように、本発明の第1実施形態に係る化粧シート13は、基材135と、基材135の表面135a側に設けられた表面保護層131と、を有する複層構成の化粧シートを形成している。化粧シート13の厚さは40μm以上300μm以下が好ましい。
表面保護層131の厚さは、特に限定されるものではないが、薄すぎると効果に乏しく、厚すぎると可撓性が低下して割れ易くなる。そのため、例えば、2μm以上20μm以下が好ましく、特に、9μm以上15μm以下が最も好ましい。なお、表面保護層131には、必要に応じて、例えば、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、着色剤、難燃剤、抗菌剤、防黴剤、帯電防止剤、滑剤、減摩剤及び艶調整剤等の各種の充填剤、つまり、各種のフィラーから選ばれる1種以上のフィラーを添加してもよい。なお、表面保護層131は、例えば、後述するように、表面保護層131の裏面131b側に配置されている熱可塑性樹脂層132の表面132aを透視可能な程度の透明性を有するものとするのが好ましい。例えば、無色透明、有色透明、半透明とする。
また、化粧シート13の表面13a、すなわち表面保護層131の表面131aには、エンボス模様137、つまりエンボス加工により形成された凹凸模様が設けられている。
これに対し本発明の第1実施形態に係る化粧シート13では、表面保護層131に柔軟性を付与することで、耐候性の低下を防止するため、耐候剤の添加量を増やす必要がなく、ブリードアウトの発生を防止でき、またコストの増大を防止できる。さらに、表面保護層131へのクラックの発生を防止できるため、紫外線や風雨等に長期間晒されても、化粧シート13の意匠性の低下が少なくて済み、長期の耐候性を得ることができる。
また、本発明の第1実施形態に係る化粧シート13では、表面保護層131の厚さを2μm以上20μm以下とし、化粧シート13の厚さを40μm以上300μm以下としてもよい。このような数値範囲とすることにより、製膜製に優れ、折り曲げ加工等の後加工の際に表面保護層131にクラックが発生し難い化粧シート13を得ることができる。
また、本発明の第1実施形態に係る化粧シート13では、表面保護層131にエンボス模様137(凹凸模様)を形成してもよい。エンボス模様137を形成することにより、木目導管状等、所望する任意の凹凸形状を表面保護層131に立体的に形成できる。
また、本発明の第1実施形態に係る化粧部材10では、化粧部材10が、折り曲げ加工が施されて形成されている、または3次元構造を有する基板11に化粧シート13によりラッピング加工が施されて形成されているものとしてもよい。このような構成により、化粧部材10を立体的とし、化粧部材10の意匠性を向できる。また、折り曲げ加工後やラッピング加工後の表面保護層131にクラックのない化粧部材10を得ることができる。
なお、上記第1実施形態では、化粧シート13を、基材135、絵柄層134、接着層133、熱可塑性樹脂層132、表面保護層131及びプライマー層136を備える構成とする例を示したが、他の構成を採用することもできる。例えば、図3に示すように、化粧シート13を、基材135及び表面保護層131のみを備える構成としてもよい。
(構成)
次に、本発明の第2実施形態に係る化粧部材10について説明する。
第2実施形態では、耐擦傷性に優れたものとするとともに、深いエンボス模様を形成可能とするために、表面保護層131の材料を変更した点が、第1実施形態と異なる。
図2に示した表面保護層131の材料としては、例えば、耐擦傷性・耐候性・耐久性を考慮すると、電離放射線硬化型樹脂と、イソシアネート硬化型アクリル系樹脂組成物との混合物を用いることができる。耐傷性としては、表面保護層131は、JIS K 5600に準じた鉛筆硬度試験の硬度がB以上であることが好ましい。また、電離放射線硬化性樹脂としては、例えば、電離放射線の照射により架橋反応する性質を有する(メタ)アクリロイル基等の重合性不飽和結合を有するプレポリマー、オリゴマー及びモノマーの少なくとも何れかを主成分とする組成物を用いることができる。電離放射線としては、例えば電子線、紫外線を用いることができる。電離放射線硬化性樹脂には、例えば必要に応じて重合開始剤や増感剤等の添加剤を添加してもよい。
(実施例1)
まず、図2に示すように、基材135として、着色されたポリエチレン樹脂(PE)のシートを用意した。基材135の厚さは55μmとした。続いて、基材135の一方の面(表面135a)に、コロナ放電処理を施した。続いて、コロナ放電処理を施した基材135の表面135aに、ウレタン系印刷インキを塗布して絵柄層134を形成した。続いて、形成した絵柄層134の表面に、ウレタン系接着剤を塗布して接着層133を形成した。続いて、形成した接着層133の表面に、ポリプロピレン(PP)のフィルムを設けて熱可塑性樹脂層132を形成した。熱可塑性樹脂層132の厚さは70μmとした。
続いて、基材135の裏面135bにコロナ放電処理を施した。続いて、コロナ放電処理を施した裏面135bにプライマー層136を形成した。プライマー層136の厚さは1μmとした。これにより、実施例1の化粧シート13を形成した。化粧シート13の厚さは135μmとした。
比較例1では、ポリイソシアネートのイソシアネートプレポリマーとして、側鎖にウレタン結合を含まないヘキサメチレンジイソシアネートの三量体を用いた。ポリイソシアネートの固形分は100%、NCO比率は20.7%とした。それ以外は、実施例1と同じ材料・手順で、化粧シート13を作製した。
(比較例2)
比較例2では、ポリイソシアネートのイソシアネートプレポリマーとして、キシリレンジイソシアネートを用いた。ポリイソシアネートの固形分は100%、NCO比率は18.67%とした。それ以外は、実施例1と同じ材料・手順で、化粧シート13を作製した。
比較例3では、ポリイソシアネートのイソシアネートプレポリマーとして、ヘキサメチレンジイソシアネートとトリレンジイソシアネートとをブレンドしたものを用いた。ポリイソシアネートの固形分は80%、NCO比率は13.3%とした。それ以外は、実施例1と同じ材料・手順で、化粧シート13を作製した。
実施例1、比較例1〜3の化粧シート13に対し、ダンベル引っ張り試験、ラッピング適正試験、耐候性試験、ブロッキング試験による評価を行った。
(ダンベル引っ張り試験(引っ張り加工性))
ダンベル引っ張り試験では、JIS K 6732に準じた引っ張り試験を行った。すなわち、引張速度4mm/min、伸び50%における、化粧シート13のクラックを光学顕微鏡で観察した。クラックが発生しなかった場合を合格「○」とし、クラックが発生した場合を不合格「×」とした。
ラッピング適正試験では、厚さ1mm、角部1Rのスパンドレル形状のアルミ板に化粧シート13をラッピング加工し、アルミ板の角部における、化粧シート13のクラックを光学顕微鏡で観察した。クラックが発生しなかった場合を合格「○」とし、クラックが発生した場合を不合格「×」とした。
(耐候性試験(メタルウェザー))
耐候性試験では、ライトモード(照度65W/cm2、ブラップパネル温度53℃、湿度50%、20時間)→シャワー30秒→湿潤モード(ブラックパネル温度30℃、湿度98%、4時間)→シャワー30秒のサイクルを、42サイクル行った後、化粧シート13の外観を観察した。外観に異常(例えば、クラック、黄変、チョーキング、剥離等)がなかった場合を合格「○」とし、外観に異常があった場合を不合格「×」とした。
ブロッキング試験では、化粧シート13を500m巻き上げ、翌日巻き替えを行い、化粧シート13のブロッキング状態を観察した。異常(例えば、紙切れ、裏面プライマー取られ)がなかった場合を合格「○」とし、異常があった場合を不合格「×」とした。
これらの評価結果を表1に示す。
具体的には、比較例1〜3の化粧シート13は、ポリイソシアネートのイソシアネートプレポリマーの側鎖にウレタン結合を含まないため、表面保護層131の柔軟性が低く、クラックが発生し易く、ダンベル引張試験やラッピング適正試験が不合格「×」となった。
また、比較例2、3の化粧シート13は、イソシアネートプレポリマーとして、キシリレンジイソシアネートや、ヘキサメチレンジイソシアネートとトリレンジイソシアネートとをブレンドしたものを用いたため、ヘキサメチレンジイソシアネートのみを用いたものに比べ、表面保護層131の耐候性が低くなるので、耐候性試験が不合格「×」となった。
したがって、実施例1の化粧シート13は、比較例1〜3の化粧シートよりも、引っ張りに対する耐性、曲げ加工性、耐候性及び生産性が良好であることが確認された。
次に、本発明の第2実施形態に係る実施例及び比較例について説明する。なお、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
まず、図2に示すように、基材135として、着色されたポリエチレン樹脂(PE)のシートを用意した。基材135の厚さは55μmとした。続いて、基材135の一方の面(表面135a)に、コロナ放電処理を施した。続いて、コロナ放電処理を施した基材135の表面135aに、ウレタン系印刷インキを塗布して絵柄層134を形成した。続いて、形成した絵柄層134の表面に、ウレタン系接着剤を塗布して接着層133を形成した。続いて、形成した接着層133の表面に、ポリプロピレン(PP)のフィルムを設けて熱可塑性樹脂層132を形成した。熱可塑性樹脂層132の厚さは70μmとした。
実施例3では、アクリルポリオールの比率は、表面保護層131の全質量に対して40質量部、つまり、25質量部以上45質量部以下とした。それ以外は、実施例2と同じ材料・手順で化粧シート13を作製した。
比較例4では、アクリルポリオールの比率は、表面保護層131の全質量に対して20質量部、つまり、25質量部未満とした。それ以外は、実施例2と同じ材料・手順で化粧シート13を作製した。
(比較例5)
比較例5では、アクリルポリオールの比率は、表面保護層131の全質量に対して50質量部、つまり、45質量部より大きくした。それ以外は、実施例2と同じ材料・手順で化粧シート13を作製した。
比較例6では、硬化剤のポリイソシアネートとして、そのポリイソシアネートをDIC製アクリディックA801にNCO/OH=1.0の割合で添加した樹脂組成物からなる厚さ40μmの試験片に、23℃雰囲気下で、引張速度50mm/minの条件で、引張試験を行ったときに前記試験片の破断直前の最大の引張応力が50N/mm2、つまり、10〜30N/mm2の範囲外となるポリイソシアネート(以下、「従来硬化剤」とも呼ぶ)を用いた。それ以外は、実施例2と同じ材料・手順で、化粧シート13を作製した。
比較例5では、硬化剤として、従来硬化剤を用いた。それ以外は、実施例3と同じ材料・手順で、化粧シート13を作製した。
(比較例8)
比較例8では、硬化剤として、従来硬化剤を用いた。それ以外は、比較例4と同じ材料・手順で、化粧シート13を作製した。
(比較例9)
比較例9では、硬化剤として、従来硬化剤を用いた。それ以外は、比較例5と同じ材料・手順で、化粧シート13を作製した。
実施例2、2、比較例4〜6の化粧シート13に対し、鉛筆硬度試験、エンボスクラック試験及びエンボス高さ試験による評価を行った。
(鉛筆硬度試験(耐擦傷性))
鉛筆硬度試験では、表面保護層131について、JIS K 5600に準じた鉛筆硬度試験の硬度がB以上であるかを判定した。すなわち、硬度3B、2B、B、HB、F、H、2H、3Hの鉛筆を用い、化粧シート13に対して鉛筆の角度を45±1°に固定して、鉛筆に1kgの荷重を付加した状態でスライドさせて表面保護層131に傷が形成されるかを判定した。傷を形成した鉛筆の硬度がB以上であった場合を合格「○」とし、B未満であった場合を不合格「×」とした。
エンボスクラック試験では、化粧シート13に対して、版深70μm、開口部径100μmのエンボス版を120℃まで加熱して25MPaで10分間押圧した後40℃まで冷却し、表面保護層131にクラックが発生したかを判定した。クラックが発生しなかった場合を合格「○」とし、クラックが発生した場合を不合格「×」とした。
(エンボス高さ試験)
エンボス高さ試験では、エンボスクラック試験で生成されたエンボス模様137の凹部と凸部の平均高低差が60μm以上であるかを判定した。60μm以上であった場合を合格「○」とし、60μm未満であった場合を不合格「×」とした。
これらの評価結果を表2、表3に示す。
また、実施例3、比較例9は、電離放射線硬化型樹脂の比率が小さいため、表面保護層131の硬度が低くなり、鉛筆硬度試験は不合格「×」となった。
これに対し、実施例2、3は、電離放射線硬化型樹脂の比率が大きいため、表面保護層131の硬度が高くなり、鉛筆硬度試験は合格「○」となった。
したがって、実施例2、3の化粧シート13は、比較例4〜9の化粧シートよりも、耐擦傷性及びエンボス加工性が良好であることが確認された。
Claims (7)
- 基材と、
前記基材の表面側に、アクリル系樹脂組成物を主剤とし、ポリイソシアネートを硬化剤としたイソシアネート硬化型アクリル系樹脂組成物により形成した表面保護層と、を備える化粧シートであって、
前記ポリイソシアネートのイソシアネートプレポリマーは、側鎖にウレタン結合を含むヘキサメチレンジイソシアネートの三量体であることを特徴とする化粧シート。 - 前記表面保護層は、フィラーを含むことを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
- 前記表面保護層の厚さは、2μm以上20μm以下であり、
前記化粧シートの厚さは、40μm以上300μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の化粧シート。 - 前記基材は、ポリオレフィン樹脂系により形成され、
前記基材の表面には、絵柄層、接着層、熱可塑性樹脂層及び前記表面保護層がこの順に積層されて設けられており、前記基材の裏面には、プライマー層が設けられていることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載した化粧シート。 - 前記表面保護層にエンボス模様が形成されていることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の化粧シート。
- 木質系材料または金属系材料により形成された基板と、
前記基板の表面側に設けられた請求項1から5の何れか1項に記載の化粧シートと、を備えることを特徴とする化粧部材。 - 前記化粧部材は、折り曲げ加工が施されて形成されている、または3次元構造を有する前記基板に前記化粧シートによりラッピング加工が施されて形成されていることを特徴とする請求項6に記載の化粧部材。
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