以下、図面を参照して、本発明に係る改質フライアッシュの製造方法及び改質フライアッシュの製造装置の実施形態について、説明する。
図1には、本発明に係る改質フライアッシュの製造装置の一実施形態が示される。図1において、実線の矢印はフライアッシュの流れを、一点鎖線の矢印は制御信号の流れを、破線の矢印はガスの流れをそれぞれ示している。
図1に示すように、この改質フライアッシュの製造装置1は、微粉炭燃焼ボイラ等から供給された受入フライアッシュF1に前処理(混合処理、粉砕処理及び/又は予熱処理等)を行うためのフライアッシュ前処理装置2と、フライアッシュ前処理装置2から供給された前処理フライアッシュF2と、後述の不適合品フライアッシュF9とを混合して第3フライアッシュF3となすフライアッシュ混合装置3と、フライアッシュ混合装置3から供給された第3フライアッシュF3を加熱処理する外熱式ロータリーキルン4と、外熱式ロータリーキルン4から排出された加熱フライアッシュF4を分級するフライアッシュ分級装置5と、フライアッシュ分級装置5から排出された第1適合品フライアッシュF5を回収して改質フライアッシュ貯蔵設備9に供給するフライアッシュ回収装置6と、フライアッシュ回収装置6から改質フライアッシュ貯蔵設備9に供給される第1適合品フライアッシュF5の未燃カーボン含有率及び粉末度を測定するフライアッシュ測定装置M1と、フライアッシュ分級装置5から排出された粗粒フライアッシュF6を粉砕するフライアッシュ粉砕装置7と、フライアッシュ粉砕装置7から排出される粉砕フライアッシュF7の未燃カーボン含有率を測定するフライアッシュ測定装置M2と、フライアッシュ測定装置M2の測定結果に基づいて粉砕フライアッシュF7を、第2適合品フライアッシュF8又は不適合品フライアッシュF9に仕分けする制御装置21と、制御装置21からの指示に従って、粉砕フライアッシュF7が適合品の場合には粉砕フライアッシュF7を第2適合品フライアッシュF8として改質フライアッシュ貯蔵設備9に供給し、粉砕フライアッシュF7が不適合品の場合には粉砕フライアッシュF7を不適合品フライアッシュF9としてフライアッシュ混合装置3に供給するフライアッシュ搬送経路切替装置8から構成される。以下には、この改質フライアッシュの製造装置1を、単に「製造装置1」と称し、さらに詳細に説明する。
なお、図1に示す実施形態において、フライアッシュ前処理装置2は、必要に応じて受入フライアッシュF1に対して各種前処理を行なうための前処理装置類を一括して示している。より具体的には、一般に、石炭火力発電所等の微粉炭燃焼ボイラから供給されるフライアッシュであって、含有する未燃カーボンの除去が必要となる品位の低いフライアッシュである受入フライアッシュF1は、概ねブレーン比表面積が2000cm2/g〜4000cm2/gである。それら低品位の受入フライアッシュF1は、そのままの状態で加熱処理に供される場合のほか、活性度指数の向上等を目的に加熱処理前に粉砕されたり、外熱式ロータリーキルン4からの排ガスHG1中に捕捉されたフライアッシュの回収品を混合される場合がある。さらに、加熱処理を効率的に行うために、外熱式ロータリーキルン4に供給される前に予熱される場合もある。
また、フライアッシュ前処理装置2において、高圧のエアー又は熱源を必要とする場合、外熱式ロータリーキルン4からの排ガスHG1を有効に利用することができる。通常、外熱式ロータリーキルン4から排気される排ガスHG1は、600℃以上の温度を有しており、且つ酸素濃度も低いため、燃焼を生じさせない状態でフライアッシュを予熱するための熱源として最適である。有効利用後の排ガスHG1は、除塵処理後、排ガスG1として大気解放すればよい。
ただし、フライアッシュ前処理装置2による各種の処理は、必要に応じて任意に行えばよく、本発明による作用効果を享受するためには、必ずしも必須の処理というわけではない。
次に、図1に示す実施形態では、フライアッシュ前処理装置2から排出された前処理フライアッシュF2を、フライアッシュ混合装置3において不適合品フライアッシュF9と混合して第3フライアッシュF3となし、これを外熱式ロータリーキルン4へ連続的に供給している。ここで、不適合品フライアッシュF9は、未燃カーボン含有率が目標設定値を満足していないフライアッシュであって、フライアッシュ粉砕装置7によって十分に細粒化されている。
フライアッシュ混合装置3における、前処理フライアッシュF2と不適合品フライアッシュF9の混合は、単にそれらフライアッシュを積層等したりするだけでもよいが、外熱式ロータリーキルン4に供給する第3フライアッシュF3の品質を平均化させるために、フライアッシュ混合装置3内で十分に混合するのが好ましい。そのために、フライアッシュ混合装置3に備えられるフライアッシュ用容器には、パドルやリボンなどの回転翼や、各種排ガスを利用したエアレーション等の混合撹拌機構を有するものが好ましい。
フライアッシュ混合装置3からは、所定量の第3フライアッシュF3が、外熱式ロータリーキルン4に供給される。この第3フライアッシュF3の供給には、容積式定量供給機や重量式定量供給機等の一般的な粉体定量供給装置を用いることができる。
外熱式ロータリーキルン4は、供給された第3フライアッシュF3を、適当な酸素雰囲気内で、含有する未燃カーボンが自燃を生じるように加熱できるものであれば、サイズや加熱方法等は特に制限されない。
次に、図1に示す実施形態では、外熱式ロータリーキルン4から排出された加熱フライアッシュF4は、フライアッシュ分級装置5において分級される。フライアッシュ分級装置5としては、例えば、サイクロン型又はルーバー型慣性分級機及び振動篩装置等、粉粒体の分級処理に一般的に使用されている乾式分級機を用いればよい。また、サイクロンセパレータは、本発明の目的のために好適に用いられる。
フライアッシュ分級装置5において加熱フライアッシュF4の適合/不適合を分別するための分級点は、改質フライアッシュの目標品位に応じて任意に設定可能であるが、コンクリートの混和材等として求められる活性度指数の品位を満たす観点からは、150μm以下とするのが好ましく、100μm以下とするのがより好ましい。すなわち、このような分級点を設定することで、得られる第1適合品フライアッシュF5において、JIS A 6201「コンクリート用フライアッシュ」のIII種以上の活性度指数、すなわち、28日材齢で80%以上、91日材齢で90%以上が満たされる。
さらに、第1適合品フライアッシュF5の活性度指数を向上させるために、フライアッシュ分級装置5では、外熱式ロータリーキルン4から排出されて未だ高温状態である加熱フライアッシュF4を、冷却用ガスCA1で急冷するのが好ましい。これにより、高温状態の加熱フライアッシュF4内で進行する非晶質相の結晶化を停止させることができ、活性度指数の低下を抑制することができる。ここで、冷却用ガスCA1には、大気等を使用すればよい。
図1に示す実施形態では、細粒のフライアッシュである第1適合品フライアッシュF5は、フライアッシュ分級装置5から排出される搬送ガスCA2に含有されて、フライアッシュ回収装置6に送られる。ここで、フライアッシュ回収装置6への搬送ガスCA2の送気は、排気ファン10によって行われる。
フライアッシュ回収装置6としては、細かなフライアッシュをも確実に回収する観点から、バグフィルタを用いることが好ましい。
フライアッシュ回収装置6で固気分離され、回収された第1適合品フライアッシュF5は、改質フライアッシュ貯蔵設備9に供給され、後述の第2適合品フライアッシュF8と混合されて、改質フライアッシュF10となる。
また、フライアッシュ回収装置6からの排ガスG2は、排気ファン10によって大気解放される。
なお、図1に示す実施形態では、フライアッシュ回収装置6から改質フライアッシュ貯蔵設備9に供給された第1適合品フライアッシュF5は、搬送経路の途中で、フライアッシュ測定装置M1によって未燃カーボン含有率及び粉末度が測定される。そして、フライアッシュ測定装置M1は、その測定結果を制御装置21に送信する。
フライアッシュ測定装置M1及び後述のフライアッシュ測定装置M2が有する未燃カーボン含有率の測定装置としては、例えば、強熱減量値から間接的に未燃カーボン含有率を求めることができる熱天秤分析装置、又は、特開平11−258155号公報に開示されている青色発光体を光源とした反射光量測定装置等のオンライン対応装置などを用いればよい。
さらに、フライアッシュ測定装置M1が備える粉末度測定装置としては、例えば、乾式レーザ回析・散乱法を用いたオンライン粒子径分布測定器が好適である。
次に、フライアッシュ分級装置5において不適合とされた粗粒フライアッシュF6は、フライアッシュ粉砕装置7に供給されて細粒化される。ここで、フライアッシュ粉砕装置7は、粗粒フライアッシュF6を所定の粉末度に粉砕できる乾式粉砕装置ならば様式は限定されないが、なかでもボールミル、ロールミル、ローラーミル(竪型ミル)が好適に使用できる。
フライアッシュ粉砕装置7から排出された粉砕フライアッシュF7は、搬送経路の途中で、フライアッシュ測定装置M2によって未燃カーボン含有率が測定される。そして、フライアッシュ測定装置M2は、その測定結果を制御装置21に送信する。
一方、制御装置21は、受信したフライアッシュ測定装置M2からの未燃カーボン含有率の測定結果が、所定の目標設定値を満足する場合は粉砕フライアッシュF7を適合品と判定し、目標設定値から逸脱する場合は粉砕フライアッシュF7を不適合品と判定して、その判断結果を、直ちにフライアッシュ搬送経路切替装置8に送信する。すなわち、ここで制御装置21は、フライアッシュF7が適合品であるか不適合品であるかを判定する判定装置を構成している。かかる未燃カーボン含有率の目標設定値は、改質フライアッシュの目標品位に応じて任意に設定可能であるが、例えば、得られる改質フライアッシュF10にコンクリートの混和材等の用途を想定する場合、0.5質量%以下とすることが好ましく、0.4質量%以下であることがより好ましく、0.3質量%以下であることがさらにより好ましい。
制御装置21からの信号を受信したフライアッシュ搬送経路切替装置8は、粉砕フライアッシュF7が適合品の場合は搬送経路を改質フライアッシュ貯蔵設備9に向け、粉砕フライアッシュF7が不適合品の場合は搬送経路をフライアッシュ混合装置3に向ける。
フライアッシュ搬送経路切替装置8によって、改質フライアッシュ貯蔵設備9に搬送された第2適合品フライアッシュF8は、改質フライアッシュ貯蔵設備9において第1適合品フライアッシュF5と混合されて、改質フライアッシュF10となる。
この場合、改質フライアッシュ貯蔵設備9に備えられるフライアッシュ用容器には、第1適合品フライアッシュF5と第2適合品フライアッシュF8とを十分に混合して、改質フライアッシュF10の品質を安定化させるために、パドルやリボンなどの回転翼等による混合撹拌機構が付設されているのが好ましい。
一方、フライアッシュ搬送経路切替装置8によって、フライアッシュ混合装置3に搬送された不適合品フライアッシュF9は、フライアッシュ混合装置3において前処理フライアッシュF2と混合されて、第3フライアッシュF3として外熱式ロータリーキルン4に供給され、再度加熱処理に供される。
また、図1に示すように、製造装置1は、さらに、フライアッシュ測定装置M1による測定結果に基づいて、各装置の運転制御を行ってもよい。
具体的には、例えば、第1適合品フライアッシュF5の未燃カーボン含有率が目標設定値よりも大きい場合や、第1適合品フライアッシュF5の粉末度が目標設定値よりも大きい場合には、フライアッシュ分級装置5を制御して分級点を小径側に調整する等により、その目標設定の範囲内に収めるようにすることができる。
次に、図2に示すフローチャートを更に参照して、製造装置1で行われる処理について説明する。
まず、フライアッシュ分級装置5を、所定の分級点となるように運転する(図2/STEP01)。ここで、設定する分級点は、改質フライアッシュの目標品位に応じて任意に設定可能であるが、例えば、得られる改質フライアッシュF10にコンクリートの混和材等の用途を想定する場合、かかる活性度指数がJIS A 6201「コンクリート用フライアッシュ」のIII種以上(28日材齢が80%以上且つ91日材齢が90%以上)となるようにすることが好ましい。より具体的には、そのような活性度指数の品位を満たすためには、フライアッシュ分級装置5における分級点を、150μm以下に設定することが好ましく、100μm以下に設定することがより好ましい。
そして、フライアッシュ前処理装置2、フライアッシュ混合装置3及び外熱式ロータリーキルン4を稼動して、加熱フライアッシュF4をフライアッシュ分級装置5に供給する(図2/STEP02)。
フライアッシュ分級装置5によって細粒側に分級され、フライアッシュ回収装置6で回収された第1適合品フライアッシュF5を、改質フライアッシュ貯蔵設備9に供給する(図2/STEP03)。
フライアッシュ分級装置5によって粗粒側に分級された粗粒フライアッシュF6を、フライアッシュ粉砕装置7に供給して、粉砕フライアッシュF7を得る(図2/STEP04)。
フライアッシュ粉砕装置7で得られる粉砕フライアッシュF7のブレーン比表面積は、改質フライアッシュの目標品位に応じて任意に設定可能であるが、例えば、得られる改質フライアッシュF10にコンクリートの混和材等の用途を想定する場合、ブレーン比表面積で4000cm2/g以上となるよう粉砕することが好ましく、4500cm2/g以上となるよう粉砕することがより好ましく、5000cm2/g以上となるよう粉砕することがさらにより好ましい。このようなブレーン比表面積の範囲を設定することで、後段の判定工程で得られる第2適合品フライアッシュF8は、JIS A 6201「コンクリート用フライアッシュ」のIII種以上の活性度指数、すなわち、28日材齢で80%以上、91日材齢で90%以上の品質を有するようになる。
なお、フライアッシュ粉砕装置7で得られる粉砕フライアッシュF7のブレーン比表面積の上限については、10000cm2/g以下が好ましい。粉砕フライアッシュF7のブレーン比表面積が10000cm2/gよりも大きくなると、後段の判定工程において第2適合品フライアッシュF8と判定されてコンクリートの混和材として活用された場合、コンクリートの粘性の増大や、単位水量の増加による強度発現性の低下などを招いてしまう場合がある。
粉砕フライアッシュF7の未燃カーボン含有率をフライアッシュ測定装置M2で測定し、かかる測定結果を受信した制御装置21は、目標設定値を基準に、搬送されている粉砕フライアッシュF7を適合品又は不適合品に判定する(図2/STEP05)。
粉砕フライアッシュF7の未燃カーボン含有率の目標設定値としては、例えば、得られる改質フライアッシュF10の用途をコンクリートの混和材等とした場合は、上述した通り0.5質量%以下等に設定すればよい。
制御装置21は、粉砕フライアッシュF7の適合品又は不適合品の判定結果から、当該粉砕フライアッシュF7の搬送先を決定して、フライアッシュ搬送経路切替装置8に搬送先を指示する。
すなわち、粉砕フライアッシュF7が適合品の場合、フライアッシュ搬送経路切替装置8は、当該粉砕フライアッシュF7を第2適合品フライアッシュF8として改質フライアッシュ貯蔵設備9に供給する。
一方、粉砕フライアッシュF7が不適合品の場合、フライアッシュ搬送経路切替装置8は、当該粉砕フライアッシュF7を不適合品フライアッシュF9としてフライアッシュ混合装置3に供給する。
フライアッシュ混合装置3に供給された不適合品フライアッシュF9は、含有する未燃カーボンを減ずるために、再度、外熱式ロータリーキルン4に供給される(図2/STEP06)。
改質フライアッシュ貯蔵設備9に供給された第2適合品フライアッシュF8は、第1適合品フライアッシュF5と混合されて、改質フライアッシュF10となる(図2/STEP07)。
最後に、上記に説明した製造装置1を用いてフライアッシュを処理したときの試験結果について説明する。
加熱フライアッシュF4として、未燃カーボン含有率5質量%の受入フライアッシュF1を、外熱式ロータリーキルン4で加熱処理して、未燃カーボン含有率が1.0質量%となったものを用いた。
上記加熱フライアッシュF4を、目開きが250μm、150μm及び100μmの3種類のふるいを用い、各ふるいの通過分のフライアッシュ(図1に示す実施形態の第1適合品フライアッシュF5に相当)について、未燃カーボン含有率と活性度指数を比較した。試験結果を表1に示す。
なお、フライアッシュの未燃カーボン含有率の測定は、JIS M 8819「石炭類及びコークス類−機器分析装置による元素分析方法」に準拠して、活性度指数の測定は、JIS A 6201「コンクリート用フライアッシュ」の付属書C「フライアッシュのモルタルによるフロー値比及び活性度指数の試験方法」に準拠して、それぞれ測定した。
表1の結果より、フライアッシュ分級装置5の分級点は、150μm以下であれば、コンクリートの混和材等として問題なく使用可能な改質フライアッシュが回収できることが分かる。
次に、表1の150μmふるい試験におけるふるい残分(図1に示す実施形態の粗粒フライアッシュF6に相当)を用いて、フライアッシュ粉砕装置7によりブレーン比表面積を3000cm2/g、4000cm2/g及び5000cm2/gに粉砕した場合の活性度指数を比較した。試験結果を表2に示す。なお、150μmふるい残分の未燃カーボン含有率は、1.5質量%であった。
表2の結果より、フライアッシュ粉砕装置7により粉砕して得られる粉砕フライアッシュF7のブレーン比表面積は、これが4000cm2/g以上であれば、コンクリートの混和材として一般的に要求される活性度指数を満足できることが分かる。