JP2019105008A - 繊維用糊剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】変性ビニルアルコール系重合体を含有する繊維用糊剤において、糊付け糸の表面平滑性に優れ、製織工程での経糸切れも少なく、糊抜き性も良好であり、メタノール含有量が低減されているため環境にも配慮された繊維用糊剤を提供する。【解決手段】エチレン性不飽和ジカルボン酸の誘導体(A)に由来する構造単位の含有量(X)が0.05モル%以上10モル%以下であり、けん化度が80.0モル%以上99.9モル%以下であり、ヘッドスペースガスクロマトグラフィーで測定した場合のメタノール含有量が3.0質量%未満であり、かつ、90℃、濃度5質量%の水溶液に不溶な成分の量が0.1ppm以上2000ppm未満である変性ビニルアルコール系重合体を含有する、繊維用糊剤に関する。【選択図】なし

Description

本発明は、特定の変性ビニルアルコール系重合体を含有する繊維用糊剤に関する。
ビニルアルコール系重合体(以下、「PVA」と略記することがある。)は水溶性の合成高分子として知られており、合成繊維ビニロンの原料に用いられ、また紙加工、繊維加工、接着剤、乳化重合及び懸濁重合用の安定剤、無機物のバインダー、フィルム等の用途に広範囲に用いられている。中でも、腐敗せず長期保存が可能であると共に乾燥皮膜の強度に優れることから、織物の経糸を補強する糊剤として使用されている。
しかしながら、原糸束にPVAを含有する繊維用糊剤を糊付けし、乾燥後糊付け糸を1本ずつに分割する(デバイド)際、この高い皮膜強度に起因して糸切れが生じる場合がある。この糸切れを低減するため、繊維用糊剤中のPVA濃度を低下させると、糊付け糸の強度が低下し製織性が低下したり、糊付け糸のデバイド時に固化した繊維用糊剤が糊付け糸から脱落する糊落ちが増加する傾向がある。さらに、PVAを含有する繊維用糊剤では、糊付け糸の製織後の糊抜き性に劣るという不都合がある。前記不都合に対して、例えば、特許文献1では、アクリル酸アルキル等で変性したPVA等が提案されている。
糊抜き性を良好にする観点から、カルボン酸又はその誘導体が導入された水溶性の高いPVAが知られており、PVAへのカルボン酸又はその誘導体の導入は、例えばビニルエステル系単量体とカルボン酸又はその誘導体を含有する単量体を共重合して共重合体を得た後、該共重合体をけん化することにより製造される。カルボン酸を効率的に導入するために、ビニルエステル系単量体と反応性の高いエチレン性不飽和ジカルボン酸誘導体が用いられ、その工業的入手容易性の観点から、マレイン酸誘導体、フマル酸誘導体の使用が知られている。これらの中でも、マレイン酸、フマル酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸はビニルエステル系単量体に対しての溶解性が乏しいため、溶液重合法においては、エチレン性不飽和ジカルボン酸のモノエステル、ジエステル、又は無水物等の、ビニルエステル系単量体への溶解性が向上した単量体が使用される。
前記した、カルボン酸又はその誘導体が導入されたPVAは通常、酢酸ビニルをメタノール溶媒中でラジカル重合して酢酸ビニル重合体のメタノール溶液を得た後に、アルカリ触媒を添加してけん化することにより製造される。したがって、溶媒のメタノールが、乾燥して得られる重合体中に必ず残存する。このようなメタノールが残留する重合体を繊維用糊剤に用いた場合、糊付け工程において、メタノールが大気へ放出される問題を有しており、作業環境の観点で改善が求められていた。
特許文献2及び3には乾燥中に含水ガスを供給することにより、PVA中の有機揮発成分と水分を置換して、効率的に有機揮発分を取り除く技術が開示されている。しかしながら、エチレン性不飽和ジカルボン酸のモノエステル、ジエステル又は無水物に由来する構造単位を含有するPVAは水に対する親和性、溶解性が高く、含水ガスを供給するとPVA粒子の表面が溶解し、乾燥中に粒子同士が融着しブロックを生成してしまい、工程通過が困難となるため、この技術の適応が困難である。
特許文献4では、PVAを炭素数2〜3のアルコールを主体とする洗浄液で洗浄することでメタノール含有量を効率的に低減する技術が提案されている。しかしながら、メタノールよりも沸点、蒸発潜熱の高い、炭素数2〜3のアルコールを使用しているために通常よりも乾燥工程での必要な熱量、時間の増加を招いてしまうことから、製造コストアップ等の工業的な問題が残っているのが現状である。
前記のような乾燥技術を用いずとも、通常であれば高温で長時間加熱乾燥することにより、メタノール分の除去は可能であるが、エネルギーの消費が多く、工業的に生産効率を犠牲にすることとなる。加えて、エチレン性不飽和ジカルボン酸の誘導体(例えば、モノエステル、ジエステル、又は無水物)に由来する構造単位を含有するPVAでは、高温下、非特許文献1に記載されるように、モノエステル、ジエステル、無水物由来の構造部分とPVAの水酸基部分との架橋反応が進行し、水に不溶な成分が生成し、繊維用糊剤として糸表面にコーティングした場合、不溶な成分が表面性を悪化させ製織時の断糸の原因となる、さらに、糊抜きの際、不溶な成分が抜けない等の問題が発生するため、高温での乾燥条件を選択することが困難である。したがって、当該PVAにおいて、メタノール含有量低減の要求を満たし、かつ水に不溶な成分の生成を抑制するということは両立させることができず、実質困難とされてきた。また、このような性質から、通常よりも高熱量、長時間乾燥が必要となる特許文献4の方法を適用することも困難である。
特表平9−509700号公報 特公昭52−17070号公報 特開平9−302024号公報 特開2013−28712号公報
Polymer Vol.38, No.12, pp.2933-2945,1997
本発明は、糊付け糸の表面平滑性に優れ、製織工程での経糸切れも少なく、糊抜き性も良好であり、メタノール含有量が低減されているため環境にも配慮された繊維用糊剤を提供することを目的とする。さらに本発明は、前記繊維用糊剤で糊付けされた糸を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、粒子径や乾燥前の洗浄条件を工夫することにより、エチレン性不飽和ジカルボン酸の誘導体に由来する構造単位を導入した場合でも、残存するメタノール含有量が3.0質量%未満であり、さらに水に溶解した際の不溶成分の量が0.1ppm以上2000ppm未満である変性ビニルアルコール系重合体を製造するに至り、該変性ビニルアルコール系重合体を含有する繊維用糊剤により、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の発明に関する。
[1]エチレン性不飽和ジカルボン酸の誘導体(A)に由来する構造単位の含有量(X)が0.05モル%以上10モル%以下であり、けん化度が80.0モル%以上99.9モル%以下であり、ヘッドスペースガスクロマトグラフィーで測定した場合のメタノール含有量が3.0質量%未満であり、かつ、90℃、濃度5質量%の水溶液に不溶な成分の量が0.1ppm以上2000ppm未満である変性ビニルアルコール系重合体を含有する、繊維用糊剤。
[2]前記エチレン性不飽和ジカルボン酸の誘導体(A)が、エチレン性不飽和ジカルボン酸のモノエステル、ジエステル又は無水物である、前記[1]の繊維用糊剤。
[3]前記エチレン性不飽和ジカルボン酸の誘導体(A)に由来する構造単位の少なくとも一部が、下記式(I)
Figure 2019105008
(式中、R1は、水素原子、又は炭素数1〜8の直鎖状あるいは分枝状のアルキル基であり、R2は、金属原子、水素原子又は炭素数1〜8の直鎖状あるいは分枝状のアルキル基である。)
で表される構造単位であり、前記エチレン性不飽和ジカルボン酸の誘導体(A)に由来する構造単位の含有量(X)と式(I)で表される構造単位の含有量(Y)の値が下記式(Q)を満たす、前記[1]又は[2]の繊維用糊剤。
0.05≦Y/X<0.98 (Q)
[4]ワックスをさらに含有する、前記[1]〜[3]のいずれかの繊維用糊剤。
[5]原糸と、その原糸に含浸するバインダーとを備え、前記バインダーが[1]〜[4]のいずれかの繊維用糊剤から形成されている、糊付け糸。
本発明によれば、糊付け糸の表面平滑性に優れ、製織工程での経糸切れも少なく、糊抜き性も良好であり、メタノール含有量が低減されているため環境にも配慮された繊維用糊剤を提供できる。さらに本発明は、前記繊維用糊剤で糊付けされた糸を提供できる。
<繊維用糊剤>
本発明の繊維用糊剤は、エチレン性不飽和ジカルボン酸の誘導体(A)に由来する構造単位の含有量(X)が0.05モル%以上10モル%以下であり、けん化度が80.0モル%以上99.9モル%以下であり、ヘッドスペースガスクロマトグラフィーで測定した場合のメタノール含有量が3.0質量%未満であり、かつ、90℃、濃度5質量%の水溶液に不溶な成分の量が0.1ppm以上2000ppm未満である変性ビニルアルコール系重合体(以下、「変性PVA」と略記することがある。)を含有する。また、当該繊維用糊剤はワックスをさらに含有することが好ましい。加えて、当該繊維用糊剤は本発明の効果を妨げない範囲で、澱粉等の他の成分を含有してもよい。
[変性PVA]
変性PVAのエチレン性不飽和ジカルボン酸の誘導体(A)に由来する構造単位の含有量(X)は0.05モル%以上10モル%以下であることが重要であり、0.2モル%以上10モル%以下が好ましく、1.0モル%以上8.0モル%以下がより好ましく、1.5モル%以上6.0モル%以下がさらに好ましく、2.5モル%以上6.0モル%以下が特に好ましい。エチレン性不飽和ジカルボン酸の誘導体(A)に由来する構造単位の含有量(X)が0.05モル%未満の場合には、カルボン酸の導入量が少なく、糊抜き性が不十分となる。また10モル%を超える場合には、水溶性が高すぎるため、空気中の水分により変性PVAが互いに接着しブロックを形成する等、ハンドリング性に問題が出る場合や、繊維用糊剤として強度等の実用物性が不十分となる。また、製造時に架橋による水への不溶成分の生成が多くなり、繊維用糊剤として用いた場合、糊付け糸の表面平滑性が悪化したり、その後の製織工程において経糸切れが多発する問題がある。エチレン性不飽和ジカルボン酸の誘導体(A)に由来する構造単位の含有量(X)は、けん化前のビニルエステル系共重合体(C)の1H−NMR解析により算出できる。
なお、本明細書において、数値範囲(各成分の含有量、各成分から算出される値及び各物性等)の上限値及び下限値は適宜組み合わせ可能である。
変性PVAのけん化度は、80.0モル%以上99.9モル%以下であることが重要であり、82.0モル%以上99.9モル%以下が好ましく、85.0モル%以上99.9モル%以下がより好ましい。けん化度が80.0モル%未満の場合には、繊維用糊剤としての強度等の実用物性が不十分となる。99.9モル%以上は実質製造不可能であり、製造できても、繊維用糊剤として用いた場合、糊抜きが難しい。変性PVAのけん化度は、JIS K 6726(1994年)に記載の方法に従って測定できる。
変性PVAの粘度平均重合度(以下、単に「重合度」という。)は、特に限定されないが、100以上5000以下が好ましく、150以上4500以下がより好ましく、200以上4000以下がさらに好ましい。変性PVAの粘度平均重合度が前記下限以上であることにより、当該繊維用糊剤を用いた糊付け糸の強度が向上するため、製織性がより向上する。変性PVAの粘度平均重合度が前記上限以下であることにより、変性PVAの生産性が向上する。変性PVAの重合度は、JIS K 6726(1994年)に記載の方法に従って測定できる。
変性PVA中に存在するメタノール含有量は、繊維用糊剤として用いた際の環境負荷低減の観点から、3.0質量%未満であることが重要であり、2.5質量%未満が好ましく、2.0質量%未満がより好ましく、1.0質量%未満がさらに好ましい。
変性PVA中に存在するメタノール含有量はヘッドスペースガスクロマトグラフィーを用いて、以下の方法で決定される。
<検量線の作成>
イソプロピルアルコールを内部標準として、メタノール含有量が既知の水溶液を3種類準備し、ヘッドスペースサンプラー(Turbo Matrix HS40、Parkin Elmer社製)を装着したガスクロマトグラフ(GC−2010、島津製作所製)を用いて測定を行い、検量線を作成する。
<変性PVA中に存在するメタノール含有量の測定>
蒸留水を1000mLメスフラスコの標線に合わせて採取し、内部標準液のイソプロピルアルコールをメスピペットにて0.1mL添加し、よく攪拌する。この液を「溶解液」とする。次に変性PVA500mgをヘッドスペースガスクロマトグラフィー測定用のバイアル瓶中に秤量し、攪拌子を投入した後、前記溶解液をホールピペットで10mL測りとり、バイアル瓶中に投入する。キャップをバイアル瓶に取り付け、ロックがかかるまで締め付けた後、バイアル瓶をホットスターラー上に乗せて、変性PVAを加熱溶解する。変性PVAが完全に溶解したことを目視で確認後、ヘッドスペースガスクロマトグラフィー測定を行い、前記のようにして作成した検量線から変性PVA中のメタノール含有量を決定する。
変性PVAは、90℃、濃度5質量%の水溶液に不溶な成分の量(以下、単に「水溶液に不溶な成分の量」ともいう。)が0.1ppm以上2000ppm未満であり、0.1ppm以上1500ppm未満がより好ましく、0.1ppm以上1000ppm未満がさらに好ましく、0.1ppm以上500ppm未満が特に好ましい。0.1ppm未満は実質製造不可能である。前記水溶液に不溶な成分の量が2000ppm以上である場合、得られる糊付け糸の表面平滑性が低下し、製織工程で経糸切れが起こりやすくなる。
前記水溶液に不溶な成分の量は、以下の方法で決定される。
20℃に設定した水浴中に、攪拌機及び還流冷却管を装着した500mLのフラスコを準備し、蒸留水を285g投入して、300rpmで攪拌を開始する。変性PVA15gを秤量し、フラスコ中に該変性PVAを徐々に投入する。変性PVAを全量(15g)投入したのち、直ちに30分程度かけて水浴の温度を90℃まで上昇させる。温度が90℃に到達後、さらに60分間300rpmで撹拌しながら溶解を継続した後、未溶解で残留する粒子(未溶解粒子)を目開き63μmの金属製フィルターで濾過する。フィルターを90℃の温水でよく洗浄し、付着した溶液を取り除いた後、フィルターを120℃の加熱乾燥機で1時間乾燥する。こうして採取した未溶解粒子の質量から、水溶液に不溶な成分の量が決定される。
本発明で用いる変性PVAが有する構造単位の基となるエチレン性不飽和ジカルボン酸の誘導体(A)は、本発明の効果を妨げない限り、特に制限されない。エチレン性不飽和ジカルボン酸の誘導体(A)としては、エチレン性不飽和ジカルボン酸のモノエステル、ジエステル又は無水物が単量体として好ましい。前記エチレン性不飽和ジカルボン酸の誘導体(A)の具体例としては、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、シトラコン酸モノメチル、シトラコン酸モノエチル、メサコン酸モノメチル、メサコン酸モノエチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル等のモノアルキル不飽和ジカルボン酸エステル;マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、シトラコン酸ジメチル、シトラコン酸ジエチル、メサコン酸ジメチル、メサコン酸ジエチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル等のジアルキル不飽和ジカルボン酸エステル;無水マレイン酸、シトラコン酸無水物等の不飽和ジカルボン酸無水物が挙げられる。これらの単量体の中でも、工業的入手の観点、ビニルエステル系単量体との反応性の面からマレイン酸モノアルキルエステル、マレイン酸ジアルキルエステル、無水マレイン酸、フマル酸モノアルキルエステル、フマル酸ジアルキルエステルが好ましく、マレイン酸モノメチル、無水マレイン酸が特に好ましい。変性PVAは、少なくとも1種の前記エチレン性不飽和ジカルボン酸の誘導体(A)由来の構造単位を有していればよく、2種以上のエチレン性不飽和ジカルボン酸の誘導体(A)を併用することもできる。
前記エチレン性不飽和ジカルボン酸の誘導体(A)に由来する構造単位の少なくとも一部が、下記式(I)
Figure 2019105008
(式中、R1は、水素原子、又は炭素数1〜8の直鎖状あるいは分枝状のアルキル基であり、R2は、金属原子、水素原子又は炭素数1〜8の直鎖状あるいは分枝状のアルキル基である。)
で表される構造単位であり、前記エチレン性不飽和ジカルボン酸の誘導体(A)に由来する構造単位の含有量(X)(以下、変性量(X)ともいう。)と式(I)で表される構造単位の含有量(Y)(以下、変性量(Y)ともいう。)が下記式(Q)を満たすことが、水溶液に不溶な成分の量を抑制できる面で好ましい。
0.05≦Y/X<0.98 (Q)
Y/Xが前記式(Q)で示される範囲を満たすことにより、前記水溶液に不溶な成分の量が低減された変性PVAを工業的に容易に製造することが可能となり、糊付け糸の表面平滑性に優れる繊維用糊剤を提供できる。前記Y/Xの下限は、0.06以上であることがより好ましい。一方、Y/Xの上限は、0.80以下であることがより好ましく、0.60以下であることがさらに好ましく、0.40以下が特に好ましい。なお、式(I)で表される構造単位の含有量(Y)とは、変性PVAの主鎖を構成する単量体単位の総モル数に対する式(I)の構造単位のモル数の比である。
1及びR2が各々表す炭素数1〜8の直鎖状あるいは分枝状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、2−メチルプロピル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−エチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基(イソヘキシル基)、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、1,4−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、1−エチル−2−メチル−プロピル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、n−ヘプチル基、2−メチルヘキシル基、n−オクチル基、イソオクチル基、tert−オクチル基、2−エチルヘキシル基、3−メチルヘプチル基等が挙げられる。前記アルキル基の炭素数としては、1〜6が好ましく、1〜4がより好ましく、1〜3がさらに好ましい。
2が表す金属原子としては、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属;カルシウム、バリウム、ストロンチウム、ラジウム等のアルカリ土類金属が挙げられ、これらの中でもアルカリ金属が好ましく、ナトリウムがより好ましい。
前記エチレン性不飽和ジカルボン酸の誘導体(A)を用いて変性PVAを製造した場合、導入したエチレン性不飽和ジカルボン酸の誘導体(A)に由来する構造単位はけん化後、その一部が前記式(I)で表される6員環ラクトン環構造を形成することが知られている。非特許文献1に記載されるように、前記式(I)で表される6員環ラクトン構造は、加熱により開環し、引き続き分子間のエステル化反応により架橋体を形成するため、変性PVAの水溶液に不溶な成分の量が増加する場合がある。すなわち、式(I)で表される構造単位の含有量(Y)が、導入したエチレン性不飽和ジカルボン酸の誘導体(A)に由来する構造単位の含有量(X)に対して多ければ、架橋反応が抑制されていることを意味する。前記式(I)の6員環ラクトン構造は、重ジメチルスルホキシド溶媒で測定した1H−NMRスペクトルにおいて6.8〜7.2ppmに検出されると考えられている。変性PVAにおいて、前記水溶液に不溶な成分の量を2000ppm未満とするためには、式(I)で表される構造単位の含有量(Y)は、けん化前のビニルエステル系共重合体(C)から求められるエチレン性不飽和ジカルボン酸の誘導体(A)に由来する構造単位の含有量(X)に対して、前記式(Q)を満たすことが好ましい。なお、式(Q)においてY/Xが0.50の場合は、導入したエチレン性不飽和ジカルボン酸の誘導体(A)に由来する全構造単位の半数が、式(I)で表される構造単位を形成していることを意味する。
変性PVAを構成する粒子の粒子径は特に限定されないが、変性PVA全体の95質量%以上が、目開き1.00mmの篩を通過することが好ましく、目開き710μmの篩を通過することがより好ましく、目開き500μmの篩を通過することが特に好ましい。ここで、前記「変性PVA全体の95質量%以上」とは、粒度分布として、例えば、目開き1.00mmの篩を通過する粒子が、95質量%以上であるという積算分布を意味するものである。目開き1.00mmの篩を通過する粒子が95質量%未満の場合、変性PVA中に取り込まれたメタノールの揮発が困難となり、メタノールの含有量が3.0質量%を超える場合がある、もしくは粒子が大きいため乾燥ムラ等発生し、水溶液に不溶な成分の量が多くなる場合がある。また、変性PVAとしては、特に限定されないが、目開き500μmの篩を通過する量が、変性PVA全体の30質量%以上であることが好ましく、35質量%であることがより好ましく、45質量%以上がさらに好ましく、56質量%以上が特に好ましい。さらに、変性PVAを構成する粒子の粒子径は、変性PVAの99質量%以上が、目開き1.00mmの篩を通過することが好ましく、変性PVAの99質量%以上が目開き1.00mmの篩を通過し、かつ56質量%以上が目開き500μmの篩を通過することが特に好ましい。前記篩はJIS Z 8801−1−2006の公称目開きWに準拠するものである。
[ワックス]
本発明の繊維用糊剤は、さらにワックスを含有することが好ましい。ワックスは糊付け糸の製織性をより向上させると共に、当該繊維用糊剤の原糸への定着性を向上させ、糊付け糸のデバイド時の糊落ち量をより低減させる。
前記ワックスとしては、例えばパラフィンワックス等の石油系ワックス;多価アルコール脂肪酸エステル、酸化ポリエチレン等の合成ワックス;カルナバワックス、キャンデリラワックス、ミツロウ、ライスワックス等の動植物系ワックス;鉱物系ワックス等が挙げられる。前記ワックスは、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも石油系ワックスが好ましい。石油系ワックスを用いることで、糊付け糸の平滑性が向上する。
前記ワックスは、通常ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤等の界面活性剤を用いて乳化した水系分散物として用いられる。
当該繊維用糊剤中の全固形分に対するワックスの含有量の上限は、20質量%が好ましく、15質量%がより好ましく、12質量%がさらに好ましく、10質量%が特に好ましい。一方、前記含有量の下限は、0.5質量%が好ましく、1.0質量%がより好ましく、2.0質量%がさらに好ましく、3.0質量%が特に好ましい。ワックスの含有量を前記範囲とすることで、当該繊維用糊剤を用いた糊付け糸の製織性がより向上する。
[その他の成分]
本発明の繊維用糊剤が含有してもよいその他の成分としては、例えば澱粉、水溶性セルロース化合物、水溶性アクリル糊剤等の水溶性高分子、消泡剤、帯電防止剤、防腐剤、防黴剤等が挙げられる。
前記澱粉としては、例えばコーン、馬鈴薯、タピオカ、小麦等の生澱粉、これらの加工澱粉等が挙げられる。前記加工澱粉としては、例えばα化(糊化)澱粉、酸化澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉、グラフト澱粉、カルボキシメチル化澱粉、ジアルデヒド澱粉、カチオン化澱粉等が挙げられる。中でも、容易に糊化および糊液の調製が出来る観点から、加工澱粉が好ましい。前記変性PVAと前記澱粉との質量比(変性PVA/澱粉)の下限は、1/99が好ましく、30/70がより好ましく、50/50がさらに好ましい。一方、前記質量比の上限は、90/10が好ましく、80/20がより好ましく、75/25がさらに好ましい。
前記水溶性セルロース化合物としては、例えばメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。
当該繊維用糊剤を紡績糸に用いる場合、一般的な糊付け温度である70℃以上95℃以下における当該繊維用糊剤の粘度は、50mPa・s以上200mPa・s以下が好ましい。当該繊維用糊剤の粘度を前記範囲内とすることで、糊付け糸の毛羽伏せが良好となる。また、当該繊維用糊剤の固形分濃度は特に限定されないが、3質量%以上15質量%以下が好ましい。
<繊維用糊剤の製造方法>
当該繊維用糊剤の製造方法は、特に限定されないが、例えば変性PVAを製造する工程及び変性PVAにワックス等の任意成分を混合する工程を備える。
[変性PVAの製造方法]
以下、本発明の繊維用糊剤に用いる変性PVAの製造方法について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施態様に限定されるものではない。
変性PVAは、例えば、エチレン性不飽和ジカルボン酸の誘導体(A)とビニルエステル系単量体(B)とを共重合させてビニルエステル系共重合体(C)を得る工程、得られたビニルエステル系共重合体(C)を、アルコール溶液中でアルカリ触媒又は酸触媒を用いてけん化するけん化工程、洗浄工程及び乾燥する工程を有する製造方法により製造できる。
前記ビニルエステル系単量体(B)としては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等が挙げられ、とりわけ酢酸ビニルが好ましい。
エチレン性不飽和ジカルボン酸の誘導体(A)とビニルエステル系単量体(B)とを共重合する方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の方法が挙げられる。中でも、無溶媒で行う塊状重合法又はアルコール等の溶媒を用いて行う溶液重合法が通常採用される。本発明の効果を高める点では、メタノール等の低級アルコールと共に重合する溶液重合法が好ましい。塊状重合法あるいは溶液重合法で重合反応を行う場合、反応の方式は回分式及び連続式のいずれの方式も用いることができる。
重合反応に使用される開始剤としては、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されず、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系開始剤;過酸化ベンゾイル、n−プロピルパーオキシカーボネート等の有機過酸化物系開始剤等の公知の開始剤が挙げられる。重合反応を行う際の重合温度は特に制限はなく、5〜200℃の範囲であってもよく、30〜150℃の範囲であってもよい。
エチレン性不飽和ジカルボン酸の誘導体(A)とビニルエステル系単量体(B)とを共重合させる際には、本発明の効果が損なわれない範囲であれば、必要に応じて、さらに、共重合可能な、エチレン性不飽和ジカルボン酸の誘導体(A)とビニルエステル系単量体(B)以外の他の単量体(D)を共重合させてもよい。このような単量体(D)としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセン等のα−オレフィン;アクリルアミド;N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド等のアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド;N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド等のメタクリルアミド誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル;エチレングリコールビニルエーテル、1,3−プロパンジオールビニルエーテル、1,4−ブタンジオールビニルエーテル等のヒドロキシ基含有ビニルエーテル;プロピルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、ヘキシルアリルエーテル等のアリルエーテル;オキシアルキレン基を有する単量体;酢酸イソプロペニル、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、7−オクテン−1−オール、9−デセン−1−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オール等のヒドロキシ基含有α−オレフィン;ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルトリエトキシシラン等のシリル基を有する単量体;N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−カプロラクタム等のN−ビニルアミド系単量体等が挙げられる。これらの単量体(D)の使用量は、その使用される目的及び用途等によっても異なるが、通常、共重合に用いられる全ての単量体を基準にした割合で10モル%以下であり、好ましくは5.0モル%以下が好ましく、3.0モル%以下がより好ましく、2.0モル%以下がさらに好ましい。
上述の方法により得られたビニルエステル系共重合体(C)をアルコール溶媒中でけん化する工程、洗浄工程、及び乾燥工程に供することで変性PVAを得ることができる。変性PVAを得るためのけん化条件、乾燥条件に特に制限はないが、けん化原料溶液の含水率、乾燥時のPVA樹脂の温度又は乾燥時間を特定の範囲にすることが、変性PVA中に存在するメタノール含有量の低減、及び水溶液に不溶な成分の量を抑制できる面で好ましい。
前記共重合工程で得られた、ビニルエステル系共重合体(C)及び溶媒を含有する溶液に、さらに少量の水を添加することにより、けん化原料溶液を調製することができる。水の添加量は、得られるけん化原料溶液の含水率(「系含水率」ともいう。)が1.0質量%を超えて5.0質量%未満となるように調整することが好ましい。当該含水率は1.5〜4.0質量%であることがより好ましい。当該含水率が1.0質量%以下の場合はアルカリ触媒が失活しづらく、架橋のための触媒として働く場合があり、乾燥時、水溶液に不溶な成分の量が多くなる場合がある。一方、含水率が5.0質量%以上の場合は、けん化反応速度が低下したり、変性PVAが水に溶解し易いため、けん化反応液中に溶出して、製造工程で問題を引き起こす場合がある。
けん化反応に用いることができる溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸メチル、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。中でもメタノール、もしくはメタノールと酢酸メチルとの混合溶媒が好ましく用いられる。
ビニルエステル系共重合体(C)のけん化反応の触媒としては、通常アルカリ触媒が用いられる。アルカリ触媒としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物;及びナトリウムメトキシド等のアルカリ金属アルコキシドが挙げられ、水酸化ナトリウムが好ましい。けん化触媒の使用量は、ビニルエステル系共重合体(C)のビニルエステル単量体単位に対するモル比で0.005〜0.50であることが好ましく、0.008〜0.40であることがより好ましく、0.01〜0.30であることが特に好ましい。けん化触媒は、けん化反応の初期に一括して添加してもよいし、あるいはけん化反応の初期に一部を添加し、残りをけん化反応の途中で追加して添加してもよい。
けん化反応の温度は、好ましくは5〜80℃の範囲であり、より好ましくは20〜70℃の範囲である。けん化反応の時間は、好ましくは5分間〜10時間であり、より好ましくは10分間〜5時間である。けん化反応の方式は、バッチ法及び連続法のいずれであってもよい。アルカリ触媒を用いてけん化反応を行う際、けん化反応を停止させるため、必要に応じて、残存する触媒を、酢酸、乳酸等の酸の添加により中和してもよいが、中和後、残存する酸により、乾燥時に変性PVAの分子間における架橋反応が進行しやすくなるため、水溶液に不溶な成分の量を2000ppm未満に抑制するためには、酸添加による中和は行わないことが好ましい。
けん化反応の方式は、公知の方法であれば特に限定されない。例えば、(1)20質量%を超える濃度に調製したビニルエステル系共重合体(C)の溶液及びけん化触媒を混合し、得られた半固体(ゲル状物)又は固体を粉砕機で粉砕することによって変性PVAを得る方法、(2)メタノールを含む溶媒中に溶解しているビニルエステル系共重合体(C)の濃度を10質量%未満に制御することによって、反応溶液全体が流動性の無いゲル状となることを抑制し、変性PVAを溶媒中で析出させ、メタノール中に分散する微粒子として得る方法、(3)飽和炭化水素系の溶媒を加えてビニルエステル系共重合体(C)を乳化、又は懸濁相でけん化し、変性PVAを得る方法、等が挙げられる。前記(1)において、粉砕機は特に限定されず、公知の粉砕機、破砕機を使用することができる。
製造上の観点から飽和炭化水素系の溶媒を必要としない(1)又は(2)の方法が好ましく、メタノール含有量を低減させる観点から(2)がより好ましい。さらに、(2)の製造方法は、後に続く洗浄工程及び乾燥工程を従来よりも弱めて行う場合においても、メタノール含有量が低減され、かつ水溶液に不溶な成分も微量にでき、工業的に有利である点から好ましい。前記(2)において、メタノールを含む溶媒中に溶解しているビニルエステル系共重合体(C)及びその部分けん化物の濃度は、8.0質量%未満が好ましく、5.0質量%未満がより好ましく、4.0質量%未満がより好ましい。
けん化工程の後に、必要に応じて変性PVAを洗浄する工程を設けることが、得られる変性PVA中のメタノール含有量を3.0質量%未満にできる点から好ましい。洗浄液として、メタノール等の低級アルコールを主成分とし、さらに、水及び/又は酢酸メチル等のエステルを含有する溶液を用いることができる。洗浄液としては、メタノールを主成分とし、酢酸メチルを含む溶液が好ましい。ビニルエステル系共重合体(C)の共重合工程で好適に用いられるメタノール及びけん化工程で生成する酢酸メチルを洗浄液として用いることが工程内でリサイクルが可能であり、洗浄液として他の溶媒を準備する必要がなく、経済的、工程的に好ましい。ある実施形態では、前記(1)のけん化反応の方法では、洗浄中に、洗浄溶媒がPVAに一部含浸することにより、PVAに含有されるメタノールと置換されることがあるため、乾燥後の変性PVA中のメタノール含有量を3.0質量%未満とするためには、洗浄液として、酢酸メチルの含有量が45体積%以上であることが好ましく、60体積%以上であることがより好ましく、得られる変性PVAの水溶液における不溶な成分の量をより減らす観点から、70体積%以上であることが特に好ましい。
けん化工程の後あるいは洗浄工程の後、重合体を乾燥することにより変性PVAを得ることができる。具体的には、円筒乾燥機を使用した熱風乾燥が好ましく、乾燥時の変性PVAの温度は80℃を超え、120℃未満であることが好ましく、90℃以上110℃未満であることがより好ましい。また、乾燥時間は2〜10時間であることが好ましく、3〜8時間であることがより好ましい。乾燥時の条件を前記範囲にすることにより、得られる変性PVA中に存在するメタノール含有量を3.0質量%未満、水溶液に不溶な成分の量を2000ppm未満に抑制しやすくなるため好ましい。
本発明の他の実施形態としては、前記変性PVAと無変性PVAとを含み、前記無変性PVAの含有量が50質量%未満である繊維用糊剤が挙げられる。前記繊維用糊剤において、無変性PVAの含有量は、0質量%以上50質量%未満であれば特に限定されず、例えば、0質量%以上40質量%未満であってもよく、0質量%以上20質量%未満であってもよく、0質量%以上質量%未満であってもよく、0質量%であってもよい。無変性PVAは特に限定されず、重合度が100〜5000であってもよい。また、無変性PVAのけん化度は、80.0モル%以上99.9モル%以下であってもよい。無変性PVAの重合度及びけん化度は、JIS K 6726(1994年)に記載の方法に従って測定できる。
本発明の繊維用糊剤は、織物の樹脂加工、洗濯用糊剤、捺染用糊剤、フェルト又は不織布のバインダーとしても有効に利用できる。
<糊付け糸>
本発明の糊付け糸は、原糸と、その原糸に含浸するバインダーとを備え、前記バインダーが本発明の繊維用糊剤から形成されている。
糊付け前の原糸としては、例えば綿、ポリエステル、レーヨン、麻、ナイロン、羊毛、アクリル等の単独糸、これらの混紡糸等が挙げられる。
原糸に糊付けを行う方法は特に限定されず、例えば一斉スラッシャー糊付け、部分整経糊付け、テープ糊付け、チーズ糊付け等が挙げられる。
原糸に対するバインダー(本発明の繊維用糊剤)の付着量(着糊量)は織物の規格、使用する織機や糊付機の設備等によって適宜選択でき、原糸に対して通常5質量%以上25質量%以下である。着糊量が前記下限未満の場合、繊維の耐摩耗性が低下し、繊維表面の毛羽が十分に低減されないおそれや、製織時の糸切れが増加するおそれがある。逆に、着糊量が前記上限を超えると、デバイド時の糊落ちが増加するおそれや、織物の製造コストが増大するおそれがある。ここで「着糊量」とは、「たて糸糊付」(深田 要、一見 輝彦共著、日本繊維機械学会発行、第4版)299頁〜302頁に記載の糊抜き洗浄時の毛羽の脱落部分を補正する方法により測定した値である。
糊付け後の糸は、シリンダーによって乾燥され、シート状の糊付け糸束となる。このシリンダーの表面温度は、通常100℃以上150℃以下である。乾燥された糊付け糸束はデバイドされ、一本ずつの糊付け糸に分離される。
<織物の製造方法>
本発明の他の実施形態としては、織物の製造方法が挙げられる。織物の製造方法は、本発明の繊維用糊剤により糊付けされた糸を織る工程(製織工程)を備える。具体的には、デバイド後の当該糊付け糸を織物用のビームに巻き取り、製織機により製織する。前記製織機としては、例えばレピア織機、エアージェット織機等のドライ製織機;ウォータージェット織機等が挙げられ、これらの中でエアージェット織機が好ましい。
本発明の繊維用糊剤により糊付けされた糊付け糸は、経糸、緯糸のいずれとしてもよいが、経糸とすることが好ましい。製織機上で開口を良くするために経糸には高い張力が付加されるため、経糸は、筬、ヘルド及びドロッパーとの摩擦が大きい。従って、当該糊付け糸を経糸とすることで、経糸の強度が向上し、前記摩擦による糸切れが低減され、製織性が向上する。さらに、経糸のデバイド時の糊落ちが低減される。緯糸は、経糸と同様に当該糊付け糸を用いてもよいが、特段の処理をしない原糸を用いることが一般的である。
本発明は、本発明の効果を奏する限り、本発明の技術的範囲内において、前記の構成を種々組み合わせた態様を含む。
次に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。以下の実施例及び比較例において、特に断りがない場合、「部」は「質量部」を示し、「%」は「質量%」を示す。
[変性PVAの粘度平均重合度]
変性PVAの粘度平均重合度はJIS K 6726:1994に準じて測定した。具体的には、変性PVAのけん化度が99.5モル%未満の場合には、けん化度99.5モル%以上になるまでけん化し、得られた変性PVAについて、水中、30℃で測定した極限粘度[η](リットル/g)を用いて下記式により粘度平均重合度(P)を求めた。
P=([η]×104/8.29)(1/0.62)
[変性PVAのけん化度]
変性PVAのけん化度は、JIS K 6726:1994に記載の方法により求めた。
[エチレン性不飽和ジカルボン酸の誘導体(A)に由来する構造単位の含有量(X)]
1H−NMRスペクトル解析によって、変性種のスペクトルから算出した。
[式(I)で表される構造単位の含有量(Y)]
ジメチルスルホキシド溶媒で測定した1H−NMRスペクトル解析において6.8〜7.2ppmに検出されるスペクトルから算出した。
[変性PVAのメタノール含有量]
実施例及び比較例の変性PVA中に存在するメタノール含有量はヘッドスペースガスクロマトグラフィーを用いて、以下の方法で決定した。
<検量線の作成>
イソプロピルアルコールを内部標準として、メタノール含有量が既知の水溶液を3種類準備し、ヘッドスペースサンプラー(Turbo Matrix HS40、Parkin Elmer社製)を装着したガスクロマトグラフ(GC−2010、島津製作所製)を用いて測定を行い、検量線を作成する。
<変性PVA中に存在するメタノール含有量の測定>
蒸留水を1000mLメスフラスコの標線に合わせて採取し、内部標準液のイソプロピルアルコールをメスピペットにて0.1mL添加し、よく攪拌する。この液を「溶解液」とする。次に、試料として実施例及び比較例の変性PVA500mgをヘッドスペースガスクロマトグラフィー測定用のバイアル瓶中に秤量し、攪拌子を投入した後、前記溶解液をホールピペットで10mL測りとり、バイアル瓶中に投入する。キャップをバイアル瓶に取り付け、ロックがかかるまで締め付けた後、バイアル瓶をホットスターラー上に乗せて、試料の変性PVAを加熱溶解する。変性PVAが完全に溶解したことを目視で確認後、ヘッドスペースガスクロマトグラフィー測定を行い、前記のようにして作成した検量線から変性PVA中のメタノール含有量を決定した。
[90℃、濃度5質量%の水溶液に不溶な成分の量]
20℃に設定した水浴中に、攪拌機及び還流冷却管を装着した500mLのフラスコを準備し、蒸留水を285g投入して、300rpmで攪拌を開始する。実施例及び比較例の変性PVA15gを秤量し、フラスコ中に該変性PVAを徐々に投入する。変性PVAを全量(15g)投入したのち、直ちに30分程度かけて水浴の温度を90℃まで上昇させる。温度が90℃に到達後、さらに60分間300rpmで撹拌しながら溶解を継続した後、未溶解で残留する粒子(未溶解粒子)を目開き63μmの金属製フィルターで濾過する。フィルターを90℃の温水でよく洗浄し、付着した溶液を取り除いた後、フィルターを120℃の加熱乾燥機で1時間乾燥する。こうして採取した未溶解粒子の質量から、水溶液に不溶な成分の量を決定した。
[粒度分布]
JIS Z 8815:1994に記載の乾式篩法により、実施例及び比較例で得られた変性PVAの粒度分布を測定した。実施例及び比較例で得られた変性PVAを目開き1.00mmの篩(フィルター)にかけて、篩をパスした変性PVAの質量を測定し、篩にかける前の変性PVAの質量から、篩をパスした変性PVA粒子の割合(質量%)を算出した。同様に、実施例及び比較例で得られた変性PVAを目開き500μmの篩(フィルター)にかけて、篩をパスした変性PVAの質量を測定し、篩にかける前の変性PVAの質量から、篩をパスした変性PVA粒子の割合(質量%)を算出した。なお、前記目開きは、JIS Z 8801−1−2006の公称目開きWに準拠する。
[合成例1]
還流冷却器、原料供給ライン、温度計、窒素導入口、及び攪拌翼を備えた、重合容器(連続重合装置;以下、「重合槽」という。)と、還流冷却器、原料供給ライン、反応液取出ライン、温度計、窒素導入口及び攪拌翼を備えた装置を用いた。重合槽に酢酸ビニル(VAM)656L/hr、メタノール(MeOH)171L/hr、変性種としてマレイン酸モノメチル(MMM)の20%メタノール溶液101L/hr、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(AMV)の2%メタノール溶液25L/hrを定量ポンプを用いて連続的に供給した。重合槽内の液面が一定になるように重合槽から重合液を連続的に取り出した。重合槽から取り出される重合液中の酢酸ビニルの重合率が40%になるように調整した。重合槽の滞留時間は4時間であった。重合槽から取り出された重合液の温度は63℃であった。重合槽から重合液を取り出し、当該重合液にメタノール蒸気を導入することで未反応の酢酸ビニルの除去を行い、ビニルエステル系共重合体(PVAc)のメタノール溶液(濃度35%)を得た。
前記ビニルエステル系共重合体のメタノール溶液に、所望量の水及びメタノールを添加して、けん化原料溶液である含水率2質量%のビニルエステル系共重合体/メタノール溶液(濃度32質量%)を調製した。けん化触媒溶液である水酸化ナトリウム/メタノール溶液(濃度4質量%)を前記ビニルエステル系共重合体中の酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比が0.10となるように添加した。けん化原料溶液及びけん化触媒溶液をスタティックミキサーを用いて混合し、混合物を得た。得られた混合物をベルト上に載置し、40℃の温度条件下で18分保持して、けん化反応を進行させた。けん化反応により得られたゲルを粉砕し、メタノール/酢酸メチル比が15/85(体積比)である洗浄液に含浸した後、遠心脱液機を用いて脱液し、重合体を得た。該重合体600kg/hr(樹脂分)を樹脂温度が100℃となるように乾燥機内の温度を制御した乾燥機に連続的に供給した。乾燥機内のPVAの平均滞留時間は4時間であった。その後、目開き1.00mmのフィルターを通過するまで粉砕を行い、変性PVA(PVA−1)を得た。得られた変性PVAの粘度平均重合度は1200、けん化度は94.0モル%、1H−NMRスペクトル解析における変性量(X)は4.0モル%、変性量(Y)は0.80モル%であり、その比(Y/X)は0.20であった。また得られた変性PVA全体のうち、目開き1.00mmのフィルターを通過した割合は99.0質量%であり、目開き500μmのフィルターを通過した割合は56.0質量%であった。さらに、上述したヘッドスペースガスクロマトグラフィーを用いて算出したPVA中のメタノール含有量は2.3質量%であり、上述した方法で測定した、水溶液に不溶な成分の量(水不溶分量)は100ppmであった。得られたPVA−1の分析結果を表2に示す。
[合成例2−6及び8−12]
表1に記載した条件に変更したこと以外は、合成例1のPVA−1の製造方法と同様の方法により、PVA−2〜PVA−6、PVA−8〜PVA−12を得た。得られた変性PVAの分析結果を表2に示す。
[合成例7]
合成例1で得られたビニルエステル系共重合体のメタノール溶液に、所望量の水及びメタノールを添加して、けん化原料溶液である含水率1.3質量%のビニルエステル系共重合体(PVAc)/メタノール溶液(濃度3質量%)を調製し、還流冷却器、原料供給ライン、温度計、窒素導入口及び攪拌翼を備えた反応容器に投入して、300rpmで撹拌しながら、40℃まで昇温した。けん化触媒溶液である水酸化ナトリウム/メタノール溶液(濃度4質量%)を前記ビニルエステル系共重合体中の酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比が0.10となるように添加して、40℃で撹拌を続けた。水酸化ナトリウムの添加から約10分経過後から粒子が析出し始めスラリー状となった。60分後、得られたスラリーを遠心脱液機によって脱液した。脱液して得られた粒子をメタノールに含侵後、再度遠心脱液を用いて脱液し、粒子状の重合体を得た。該粒子状の重合体を樹脂温度が90℃となるように乾燥機内温度を制御した乾燥機に連続的に供給した。なお、乾燥機内の粉体の平均滞留時間は4時間であった。このようにして変性PVA(PVA−7)が得られた。得られた変性PVAの粘度平均重合度は1200、けん化度は96.0モル%、1H−NMRスペクトル解析における変性量(X)は4.0モル%、変性量(Y)は1.00モル%であり、その比(Y/X)は0.25であった。また、得られた変性PVA全体のうち、目開き1.00mmのフィルターを通過した割合は99.5質量%であり、目開き500μmのフィルターを通過した割合は98.5質量%であった。さらに、上述したヘッドスペースガスクロマトグラフィーを用いて算出したPVA中のメタノール含有量は0.9質量%であり、上述した方法で測定した、水溶液に不溶な成分の量は20ppmであった。得られたPVA−7の分析結果を表2に示す。
Figure 2019105008
Figure 2019105008
[実施例1]
(繊維用糊剤の調製、糊付け及び製織)
溶媒として水を用い、溶液中のPVA−1の濃度が7質量%、パラフィンワックス(カンエイ産業社の「NC−204」)の濃度が0.7質量%となるように繊維用糊剤を調製した。なお、繊維用糊剤中の全固形分に対するワックスの含有量は9質量%であった。
前記調製した繊維用糊剤を用い、「たて糸糊付」(深田要、一見輝彦共著、日本繊維機械学会発行、第4版)299〜302頁に記載の糊抜き洗浄時の毛羽の脱落部分を補正する方法により測定した着糊量を約10%として、以下の条件で糊付けを行った。
<糊付け条件>
糊付機:2ボックス2シート型(津田駒工業社)
糊液温度:90℃
絞りロール幅:1800mm
絞り荷重:800kg/1800mm幅
経糸原糸:綿糸(東洋紡社の「金魚 C40/1」)
経糸速度:60ヤード/分
乾燥温度:100℃〜130℃
糊付糸長:5600ヤード
<製織条件>
前記糊付け糸を経糸とし、以下の条件で製織を行った。
緯糸:綿糸(東洋紡社の「金魚 C40/1」)
経糸密度:136本/インチ
緯糸密度:72本/インチ
織り幅:47インチ
経糸総本数:6420本
織組織:ブロード
織機:エアージェット織機(津田駒工業社の「ZA−209i」)
[実施例2〜7及び比較例1〜5]
使用する変性PVAを表3に挙げたものに変更した以外は実施例1と同様にして繊維用糊剤を調製し、糊付け及び製織を行った。
<評価>
前記実施例及び比較例の糊付け糸及び織物について、以下の基準で評価を行った。評価結果を表3に示す。
[糊付け糸の表面平滑性]
前記の方法で糊付けした糸の表面を目視にて、異物の有無を確認することで表面平滑性の指標とした。
A:異物がほとんどない
B:わずかに異物が観察される
C:多くの異物が観察される
[製織性]
前記の方法で糊付けした糸を20℃、40%RH(相対湿度)下で調湿し、前記の製織条件で三日間製織を行い、織布を製造した。その際の製織性を、経糸切れにより評価した。経糸切れは、単位製織時間当たりに発生した糸切れの平均回数を用いた。
A:0.4回/時間未満
B:0.4回/時間以上1回/時間未満
C:1回/時間以上
[糊抜き性]
前記で得られた織布を60℃の0.1%水酸化ナトリウム水溶液中で30分間処理した後、40℃の温流水で1分間洗浄し、乾燥後ヨード呈色により下記判定基準に従い糊抜き性を評価した。
A:全面に呈色する部分はなかった。
B:一部に呈色する部分が見かけられた。
C:全面にわたって斑に呈色する部分が見かけられた。
Figure 2019105008
比較例1は無変性のPVAを用いたため、原糸束に繊維用糊剤を糊付けし、乾燥後糊付け糸を1本ずつに分割する(デバイド)際、糸切れが生じやすかった。さらに、糊付け糸の製織後の糊抜き性も劣る結果であった。比較例2は、変性PVAが含有するメタノール量が多かったため、糊付工程においてメタノール臭がしており、環境負荷の高いものであった。比較例3及び4は、変性PVA中の水溶液に不溶な成分の量が2000ppm以上であったため、糊付け糸の表面平滑性が悪く、その後の製織工程において経糸切れが多く発生した。比較例5は、エチレン性不飽和ジカルボン酸の誘導体(A)に由来する構造単位の含有量が多く、かつ変性PVA中の水溶液に不溶な成分の量が特に多かったため、糊付け糸の表面平滑性が悪く、その後の製織工程において経糸切れが多く発生した。
本発明の繊維用糊剤は、糊付け糸の表面平滑性に優れ、製織工程での経糸切れも少なく、糊抜き性も良好であり、メタノール含有量が低いため環境にも配慮されている。また、本発明の繊維用糊剤で糊付けされた糸は、糸切れが少なく強度に優れ、製織性に優れる。さらに、本発明の繊維用糊剤は、デバイド時の糊落ちを低減させることができ、製織時の製織機上での開口性も良好である。

Claims (5)

  1. エチレン性不飽和ジカルボン酸の誘導体(A)に由来する構造単位の含有量(X)が0.05モル%以上10モル%以下であり、けん化度が80.0モル%以上99.9モル%以下であり、ヘッドスペースガスクロマトグラフィーで測定した場合のメタノール含有量が3.0質量%未満であり、かつ、90℃、濃度5質量%の水溶液に不溶な成分の量が0.1ppm以上2000ppm未満である変性ビニルアルコール系重合体を含有する、繊維用糊剤。
  2. 前記エチレン性不飽和ジカルボン酸の誘導体(A)が、エチレン性不飽和ジカルボン酸のモノエステル、ジエステル又は無水物である、請求項1に記載の繊維用糊剤。
  3. 前記エチレン性不飽和ジカルボン酸の誘導体(A)に由来する構造単位の少なくとも一部が、下記式(I)
    Figure 2019105008
    (式中、R1は、水素原子、又は炭素数1〜8の直鎖状あるいは分枝状のアルキル基であり、R2は、金属原子、水素原子又は炭素数1〜8の直鎖状あるいは分枝状のアルキル基である。)
    で表される構造単位であり、前記エチレン性不飽和ジカルボン酸の誘導体(A)に由来する構造単位の含有量(X)と式(I)で表される構造単位の含有量(Y)の値が下記式(Q)を満たす、請求項1および2のいずれかに記載の繊維用糊剤。
    0.05≦Y/X<0.98 (Q)
  4. ワックスをさらに含有する、請求項1〜3のいずれかに記載の繊維用糊剤。
  5. 原糸と、その原糸に含浸するバインダーとを備え、前記バインダーが請求項1〜4のいずれかに記載の繊維用糊剤から形成されている、糊付け糸。
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