JP6272736B2 - 繊維用糊剤、繊維用糊剤の製造方法、糊付け糸及び織物の製造方法 - Google Patents
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Description
当該繊維用糊剤は、ビニルアルコール単位を含むビニルアルコール系重合体(A)(以下、ビニルアルコール系重合体を「PVA」と略記することがある。)を含有する。また、ワックスをさらに含有することが好ましい。加えて、当該繊維用糊剤は本発明の効果を妨げない範囲で、澱粉等の他の成分を含有してもよい。
PVA(A)は、数平均分子量(Mn(A))に対する重量平均分子量(Mw(A))の割合(Mw(A)/Mn(A))が3以上8以下である。当該割合の下限としては、3.2が好ましく、3.4がより好ましく、3.6がさらに好ましく、また、当該割合の上限としては、6が好ましく、5がより好ましい。
GPCカラム:東ソー社の「GMHHR(S)」2本
移動相:ヘキサフルオロイソプロパノール
流速:0.2mL/分
試料濃度:0.100wt/vol%
試料注入量:10μL
検出器:示差屈折率検出器
標準物質:ポリメタクリル酸メチル(例えば、Agilent Technologies社の「EasiVial PMMA 4mL tri−pack」)
P=([η]×104/8.29)(1/0.62)
ワックスは糊付け糸の製織性をより向上させると共に、当該繊維用糊剤の原糸への定着性を向上させ、糊付け糸のデバイド時の糊落ち量をより低減させる。
当該繊維用糊剤が含有してもよいその他の成分としては、例えば澱粉、水溶性セルロース化合物、水溶性アクリル糊剤等の水溶性高分子、消泡剤、帯電防止剤、防腐剤、防黴剤等が挙げられる。
当該繊維用糊剤の製造方法としては、特に限定されないが、例えばPVA(A)を製造する工程及びPVA(A)にワックス等の任意成分を混合する工程を備える。
上記PVA(A)を製造する工程としては、例えばビニルエステル系単量体を含む単量体を重合する工程(以下、「重合工程」ともいう)、この重合工程により得られたビニルエステル系重合体をけん化する工程(以下、「けん化工程」ともいう)とを備える。また、ビニルエステル系重合体又はけん化後のPVAを加熱する工程(以下、「加熱工程」ともいう)をさらに備えることが好ましい。
本工程では、ビニルエステル系単量体を含む単量体の重合を行い、ビニルエステル系重合体を合成する。ビニルエステル系単量体を含む単量体としては、ビニルエステル系単量体のみを含むものであっても、上記したように、ビニルエステル系単量体と、単量体(a)及び/又は上記他の単量体とを含むものであってもどちらでもよい。
本工程では、ビニルエステル系重合体をけん化する。この重合体をけん化することにより、重合体中のビニルエステル単位はビニルアルコール単位に変換される。
本工程では、ビニルエステル系重合体又はけん化後のPVAを加熱する。具体的には、けん化工程と同時に加熱することによりビニルエステル系重合体を加熱するか、けん化工程終了後に得られたPVAを加熱する。この加熱により分岐構造が形成されたPVA(A)を容易に得ることができ、当該繊維用糊剤を用いた糊付け糸の製織性及び糊抜き性がより向上する。加熱処理は、空気又は窒素雰囲気下で行うことが好ましい。また、加熱工程はけん化後のPVAに対して行われることが好ましい。
上記の製造方法により得られたPVA(A)及び任意成分を適宜混合することにより当該繊維用糊剤を製造することができる。
本発明の糊付け糸は、原糸と、その原糸に含浸するバインダーとを備え、上記バインダーが当該繊維用糊剤から形成されている。
本発明の織物の製造方法は、当該繊維用糊剤により糊付けされてなる糸を織る工程を備える。具体的には、デバイド後の当該糊付け糸を織物用のビームに巻き取り、製織機により製織する。上記製織機としては、例えばレピア織機やエアージェット織機等のドライ製織機、ウォータージェット織機などが挙げられ、これらの中でエアージェット織機が好ましい。
各実施例又は比較例において、PVA(A)の粘度平均重合度は、JIS−K6726:1994に記載の方法により求めた。
各PVA(A)のけん化度は、JIS−K6726:1994に記載の方法により求めた。
各PVAの変性率(PVA(A)における単量体(a)に由来する単位の含有率)は、PVA(A)の前駆体であるビニルエステル系重合体を用いて、1H−NMRを用いた方法により求めた。
S(モル%)={(βのプロトン数/3)/(αのプロトン数+(βのプロトン数/3))}×100
PVA(A)約10gを容量500mLの共通すり合わせ三角フラスコに量り採り、メタノール200mLを加えた後、12.5モル/L水酸化ナトリウム溶液を10mL加えて、かき混ぜ、40℃の水浴中で1時間加熱した。次に、フェノールフタレインを指示薬として加え、アルカリ性反応を認めなくなるまでメタノールで洗浄して水酸化ナトリウムを除去した。最後に、時計皿に移しメタノールがなくなるまで105℃で1時間乾燥させてPVA(B)を調製した。
ヘキサフルオロイソプロパノールを移動相に用い、示差屈折率検出器を用いて、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定により、ポリメタクリル酸メチル換算値として求めた。具体的には、以下の条件を採用した。
GPCカラム:東ソー社の「GMHHR(S)」2本
移動相:ヘキサフルオロイソプロパノール(トリフルオロ酢酸ナトリウムを20mmol/Lの濃度で含有)
流速:0.2mL/分
試料濃度:0.100wt/vol%
試料注入量:10μL
検出器:示差屈折率検出器
標準物質:ポリメタクリル酸メチル(例えば、Agilent Technologies社の「EasiVial PMMA 4mL tri−pack」)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、コモノマー滴下口及び重合開始剤の添加口を備えた反応器に、酢酸ビニル740部及びメタノール260部を仕込み、窒素バブリングをしながら30分間系内を窒素置換した。また単量体(a)としてマレイン酸モノメチルを選択し、マレイン酸モノメチルのメタノール溶液(濃度20%)を窒素ガスのバブリングにより窒素置換した。反応器の昇温を開始し、内温が60℃となったところで、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.25部を添加し重合を開始した。上記反応器に、上記マレイン酸モノメチルのメタノール溶液を滴下して重合溶液中の単量体組成比を一定に保ちながら、60℃で3時間重合した後、冷却して重合を停止した。重合停止までに加えた単量体(a)の総量は0.9部であり、重合停止時の固形分濃度は33.3%であった。続いて、30℃、減圧下でメタノールを時々添加しながら未反応の単量体の除去を行い、ビニルエステル系重合体のメタノール溶液(濃度35%)を得た。次に、このメタノール溶液にさらにメタノールを加えて調製したビニルエステル系重合体のメタノール溶液790.8部(溶液中の上記重合体200.0部)に、水酸化ナトリウムの10%メタノール溶液9.2部を添加して、40℃でけん化を行った(けん化溶液の上記重合体濃度25%、上記重合体中の酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比0.01)。水酸化ナトリウムのメタノール溶液を添加後約15分でゲル状物が生成したので、これを粉砕器にて粉砕し、さらに40℃で1時間放置してけん化を進行させた後、酢酸メチル500部を加え残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和が終了したことを確認した後、濾別して白色固体を得た。この白色固体にメタノール2,000部を加えて室温で3時間放置洗浄した。この洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱液して得られた白色固体を乾燥機にて120℃で4.5時間加熱処理してPVA(A)(PVA−1)を得た。PVA−1の物性を表2に示す。
酢酸ビニル及びメタノールの仕込み量、重合時に使用する単量体(a)の種類や添加量等の重合条件;けん化時におけるビニルエステル系重合体の濃度、酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比等のけん化条件;並びに加熱処理条件を表1に示すように変更したこと以外は、合成例1と同様の方法により各種のPVA(A)を製造した。各PVA(A)及びそれから得られるPVA(B)の物性を表2に示す。なお、合成例13においては、PVA−13a及びPVA−13bの2種のPVA(A)を製造したのち、PVA−13aを45部に対しPVA−13bを55部となるように2種のPVA(A)を混合した。また、PVA−10及びPVA−12は、ヘキサフルオロイソプロパノールに完溶しなかったため、Mn及びMwは測定できなかった。
(繊維用糊剤の調製、糊付け及び製織)
溶媒として水を用い、PVA−1の濃度が7質量%、ワックス(カンエイ産業社の「NC−204」)の濃度が0.7質量%となるように繊維用糊剤を調製した。
糊付機:2ボックス2シート型(津田駒社)
糊液温度:90℃
絞りロール幅:1800mm
絞り荷重:800kg/1800mm幅
経糸原糸:綿糸(東洋紡社の「金魚 C40/1」)
経糸速度:60ヤード/分
乾燥温度:100℃〜130℃
糊付糸長:5600ヤード
緯糸:綿糸(東洋紡社の「金魚 C40/1」)
経糸密度:136本/インチ
緯糸密度:72本/インチ
織り幅:47インチ
経糸総本数:6420本
織組織:ブロード
織機:エアージェット織機(津田駒社の「ZA−209i」)
織機回転数:600rpm
使用するPVA(A)を表3に挙げたものに代えた以外は実施例1と同様にして繊維用糊剤を調製し、糊付け及び製織した。なお、比較例2及び4では、PVAが水に完溶せず、繊維用糊剤を調製できなかった。
上記実施例及び比較例の糊付け糸及び織物について、以下の基準で評価を行った。評価結果を表3に示す。
上記の方法で糊付けした糸を20℃、40%RH(相対湿度)下で調湿し、上記の製織条件で長さ3000mの製織を行った時の織機上(筬、ヘルド、ドロッパー部等)への糊剤の脱落の程度を目視で観察し、以下の基準で評価した。
A:非常に少ない
B:少ない
C:多い
上記の方法で糊付けした糸を20℃、40%RH(相対湿度)下で調湿し、上記の製織条件で三日間製織を行った。その際の製織性を、平均製織効率及び経糸切れにより評価した。
平均製織効率は、単位製織時間当たりの製織長を理論製織長で割った値を用いた。
A:93%以上
B:85%以上93%未満
C:85%未満
経糸切れは、単位製織時間当たりに発生した糸切れの平均回数を用いた。
A:0.4回/時間未満
B:0.4回/時間以上1回/時間未満
C:1回/時間以上
上記で得られた織布を60℃の0.1%水酸化ナトリウム水溶液中で30分間処理した後、40℃の温流水で1分間アルカリを洗い流し、乾燥後ヨード呈色により下記判定基準に従い糊抜き性を評価した。
A:全面に呈色する部分はなかった。
B:一部に呈色する部分が見かけられた。
C:全面にわたって斑に呈色する部分が見かけられた。
Claims (5)
- ビニルアルコール系重合体(A)を含有する繊維用糊剤であって、
上記ビニルアルコール系重合体(A)の数平均分子量(Mn(A))に対する重量平均分子量(Mw(A))の割合(Mw(A)/Mn(A))が3以上8以下であり、
上記ビニルアルコール系重合体(A)を水酸化ナトリウム溶液中において40℃で1時間処理して得られるビニルアルコール系重合体(B)の数平均分子量(Mn(B))に対する重量平均分子量(Mw(B))の割合(Mw(B)/Mn(B))が2以上3未満である、
繊維用糊剤。 - 単量体(a)の存在下でビニルエステル系単量体を重合する工程、
上記重合工程で得られた重合体をけん化する工程、及び
上記重合体を加熱処理する工程
を備え、
上記単量体(a)が、不飽和二重結合を有するカルボン酸、不飽和二重結合を有するカルボン酸のアルキルエステル、不飽和二重結合を有するカルボン酸の酸無水物、不飽和二重結合を有するカルボン酸の塩、及び不飽和二重結合を有するシリル化合物からなる群より選択される少なくとも1種であり、
上記加熱処理を70℃以上150℃以下で行う請求項1に記載の繊維用糊剤の製造方法。 - ワックスをさらに含有する請求項1に記載の繊維用糊剤。
- 原糸と、その原糸に含浸するバインダーとを備える糊付け糸であって、
上記バインダーが請求項1又は請求項3に記載の繊維用糊剤から形成されていることを特徴とする糊付け糸。 - 請求項4に記載の糊付け糸を製織する工程を備える織物の製造方法。
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