JP6272736B2 - 繊維用糊剤、繊維用糊剤の製造方法、糊付け糸及び織物の製造方法 - Google Patents

繊維用糊剤、繊維用糊剤の製造方法、糊付け糸及び織物の製造方法 Download PDF

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本発明は、繊維用糊剤、糊付け糸及び織物の製造方法に関する。
ビニルアルコール系重合体(以下、「PVA」と略記することがある)は、水溶性高分子であり、腐敗せず長期保存が可能であると共に乾燥皮膜の強度に優れることから、織物の経糸を補強する糊剤として使用されている。
しかし、原糸束に繊維用糊剤を糊付けし、乾燥後糊付け糸を1本ずつに分割する(デバイド)際、この高い皮膜強度に起因して糸切れが生じる場合がある。この糸切れを低減するため、繊維用糊剤中のPVA濃度を低下させると、糊付け糸の強度が低下し製織性が低下したり、糊付け糸のデバイド時に固化した繊維用糊剤が糊付け糸から脱落する糊落ちが増加する傾向がある。さらに、PVAを含有する繊維用糊剤では、糊付け糸の製織後の糊抜き性に劣るという不都合がある。
上記不都合に対して、各種変性PVAを含有する繊維用糊剤が開発されている。このような繊維用糊剤としては、例えばエチレン変性PVAおよび澱粉を主剤とする繊維用糊剤(特開平9−31849号公報参照)、アクリル酸アルキル等のカルボキシル変性PVAを含有する繊維用糊剤(WO95/23254号公報参照)などが挙げられる。
しかしながら、これらの繊維用糊剤は、糊付け糸の製織性、糊抜き性及びデバイド時の糊落ちを共に十分に満たすものではない。
特開平9−31849号公報 WO95/23254号公報
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、糊付け糸のデバイド時の糊落ちが低減でき、製織性及び糊抜き性に優れる繊維用糊剤、糊付け糸並びに織物を簡便に提供することができる織物の製造方法の提供を目的とする。
上記課題を解決するためになされた発明は、ビニルアルコール系重合体(A)を含有する繊維用糊剤であって、上記ビニルアルコール系重合体(A)の数平均分子量(Mn(A))に対する重量平均分子量(Mw(A))の割合(Mw(A)/Mn(A))が3以上8以下であり、上記ビニルアルコール系重合体(A)を水酸化ナトリウム溶液中において40℃で1時間処理して得られるビニルアルコール系重合体(B)の数平均分子量(Mn(B))に対する重量平均分子量(Mw(B))の割合(Mw(B)/Mn(B))が2以上3未満である。
当該繊維用糊剤は、それに含まれるビニルアルコール系重合体(A)の上記割合(Mw(A)/Mn(A))及び上記ビニルアルコール系重合体(A)を特定の条件下でアルカリ処理して得られるビニルアルコール系重合体(B)の上記割合(Mw(B)/Mn(B))を上記範囲とすることで、当該繊維用糊剤を用いた糊付け糸のデバイド時の糊落ちが低減され、製織性及び糊抜き性に優れる。
上記ビニルアルコール系重合体(A)が、単量体(a)の存在下でビニルエステル系単量体を重合後、けん化及び加熱処理することにより得られるものであり、上記単量体(a)が、不飽和二重結合を有するカルボン酸、不飽和二重結合を有するカルボン酸のアルキルエステル、不飽和二重結合を有するカルボン酸の酸無水物、不飽和二重結合を有するカルボン酸の塩、及び不飽和二重結合を有するシリル化合物からなる群より選択される少なくとも1種であるとよい。このように、上記ビニルアルコール系重合体(A)が単量体(a)の存在下でビニルエステル系単量体を重合して得られたものであることにより、ビニルアルコール系重合体(A)が単量体(a)に由来する親水性のカルボキシル基あるいはシリル基を有する。これによりビニルアルコール系重合体(A)を含む繊維用糊剤の親水性が向上し、その結果、当該繊維用糊剤を用いた糊付け糸の製織後の糊抜き性がより向上する。加えて、加熱処理によりビニルアルコール系重合体(A)中に含まれるカルボキシル基あるいはシリル基と、ビニルアルコール系重合体(A)中に含まれるヒドロキシル基とのエステル結合あるいはシラノール結合により少なくとも一部に架橋構造が形成され、全体として分岐構造を形成することができる。そのため、ビニルアルコール系重合体(A)からなる皮膜は高強度となる。その結果、糊付け糸のデバイド時の糊落ちが低減され、かつ糊付け糸が製織性及び糊抜き性に優れる繊維用糊剤が得られる。
当該繊維用糊剤はワックスをさらに含有するとよい。このようにワックスを含有することで、当該繊維用糊剤を用いた糊付け糸のデバイド時の糊落ちがより低減し、製織性がより向上する。
上記課題を解決するためになされた別の発明は、原糸と、その原糸に含浸するバインダーとを備える糊付け糸であって、上記バインダーが当該繊維用糊剤から形成されていることを特徴とする。当該糊付け糸は、当該繊維用糊剤を含むことでデバイド時の糊落ちが少なく、製織性及び糊抜き性に優れる。
また、上記課題を解決するためになされたさらに別の発明は、当該糊付け糸を製織する工程を備える織物の製造方法である。当該織物の製造方法によれば、当該糊付け糸を用いているため、糊付け糸のデバイド時の糊落ちが少なく、製織性及び糊抜き性に優れ、その結果織物を簡便に提供することができる。
以上説明したように、本発明の繊維用糊剤は、デバイド時の糊落ちが低減でき、製織性に優れる糊付け糸を与えることができる。また、本発明の糊付け糸は、糊抜き性に優れる織物を与えることができる。さらに、本発明の織物の製造方法は、当該糊付け糸を用いているため、織物を簡便に提供することができる。
<繊維用糊剤>
当該繊維用糊剤は、ビニルアルコール単位を含むビニルアルコール系重合体(A)(以下、ビニルアルコール系重合体を「PVA」と略記することがある。)を含有する。また、ワックスをさらに含有することが好ましい。加えて、当該繊維用糊剤は本発明の効果を妨げない範囲で、澱粉等の他の成分を含有してもよい。
[PVA(A)]
PVA(A)は、数平均分子量(Mn(A))に対する重量平均分子量(Mw(A))の割合(Mw(A)/Mn(A))が3以上8以下である。当該割合の下限としては、3.2が好ましく、3.4がより好ましく、3.6がさらに好ましく、また、当該割合の上限としては、6が好ましく、5がより好ましい。
上記PVA(A)を水酸化ナトリウム溶液中において40℃で1時間処理してPVA(B)が得られる。この処理としては、JIS−K6726:1994における平均重合度の欄に記載された完全けん化の方法を採用することができ、具体的には、以下のようにして得られる。すなわち、PVA(A)約10gを容量500mLの共通すり合わせ三角フラスコに量り採り、メタノール200mLを加えた後、12.5モル/L水酸化ナトリウム溶液を、PVA(A)のけん化度が97モル%以上の場合は3mL、PVA(A)のけん化度が97モル%未満の場合は10mL加えてかき混ぜる。次に、40℃の水浴中で1時間加熱した後でフェノールフタレインを指示薬として加え、アルカリ性反応を認めなくなるまでメタノールで洗浄して水酸化ナトリウムを除去する。最後に、時計皿に移しメタノールがなくなるまで105℃で1時間乾燥させる方法によって得ることができる。
上記PVA(B)は、数平均分子量(Mn(B))に対する重量平均分子量(Mw(B))の割合(Mw(B)/Mn(B))が2以上3未満である。上記割合の下限としては、2.1が好ましく、2.2がより好ましく、また、上記割合の上限としては、2.9が好ましく、2.8がより好ましい。
本発明の繊維用糊剤に含まれる上記PVA(A)は、(Mw(A)/Mn(A))及び(Mw(B)/Mn(B))が上記範囲であることで、PVA(A)はPVA鎖が互いにアルカリ条件下で切断する結合にて分岐構造を形成していると考えられる。そして、この分岐構造により、PVA(A)を含む繊維用糊剤は、デバイド時の糊落ちが低減され、製織性および糊抜き性に優れる糊付け糸を得られると考えられる。
なお、上記のPVA(A)及びPVA(B)における数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、ヘキサフルオロイソプロパノールを移動相に用い、示差屈折率検出器を用いて、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定により、ポリメタクリル酸メチル換算値として求めることができ、より具体的な方法としては、以下を採用することができる。
GPCカラム:東ソー社の「GMHHR(S)」2本
移動相:ヘキサフルオロイソプロパノール
流速:0.2mL/分
試料濃度:0.100wt/vol%
試料注入量:10μL
検出器:示差屈折率検出器
標準物質:ポリメタクリル酸メチル(例えば、Agilent Technologies社の「EasiVial PMMA 4mL tri−pack」)
移動相として使用されるヘキサフルオロイソプロパノールには、GPCカラム充填剤への試料の吸着を抑制するために、トリフルオロ酢酸ナトリウムなどの塩を添加するのが好ましい。塩の濃度の下限としては、1mmol/Lが好ましく、5mmol/Lがより好ましい。一方、塩の濃度の上限としては、100mmol/Lが好ましく、50mmol/Lがより好ましい。
PVA(B)の重量平均分子量(Mw(B))に対するPVA(A)の重量平均分子量(Mw(A))の割合(Mw(A)/Mw(B))は特に制限されないが、その下限としては、1.4が好ましく、1.5がより好ましい。一方、上記割合(Mw(A)/Mw(B))の上限としては、3.0が好ましく、2.5がより好ましい。上記割合(Mw(A)/Mw(B))が上記下限未満の場合、当該繊維用糊剤を用いた糊付け糸のデバイド時の糊落ちが増加するおそれがある。一方、上記割合(Mw(A)/Mw(B))が上記上限を超えると、当該繊維用糊剤を用いた糊付け糸の製織性が低下するおそれがある。
PVA(A)としては、ビニルエステル系重合体をけん化することにより得られるものを用いることができる。PVA(A)はビニルアルコール単位のみからなるものであってもよいが、単量体(a)に由来する単位をさらに含むことが好ましい。
ビニルエステル系重合体の製造に使用されるビニルエステル系単量体としては、特に限定されないが、例えば蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、オレイン酸ビニル、安息香酸ビニル等が挙げられる。これらの中で、経済的観点から酢酸ビニルが好ましい。
上記単量体(a)は、不飽和二重結合を有するカルボン酸、そのカルボン酸のアルキルエステル、そのカルボン酸の酸無水物、そのカルボン酸の塩及び不飽和二重結合を有するシリル化合物からなる群より選択される少なくとも1種の単量体である。
上記の不飽和二重結合を有するカルボン酸、そのカルボン酸のアルキルエステル、そのカルボン酸の酸無水物及びそのカルボン酸の塩としては、例えばマレイン酸、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸ジメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル、無水マレイン酸、シトラコン酸、シトラコン酸モノメチルエステル、シトラコン酸ジメチルエステル、シトラコン酸ジエチルエステル、無水シトラコン酸、フマル酸、フマル酸モノメチルエステル、フマル酸ジメチルエステル、フマル酸モノエチルエステル、フマル酸ジエチルエステル、イタコン酸、イタコン酸モノメチルエステル、イタコン酸ジメチルエステル、イタコン酸モノエチルエステル、イタコン酸ジエチルエステル、無水イタコン酸、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等が挙げられる。
上記の不飽和二重結合を有するシリル化合物としては、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等の不飽和二重結合とトリアルコキシシリル基とを有する化合物などが挙げられる。
これらの単量体(a)の中でも、マレイン酸モノメチルエステル、シトラコン酸モノメチルエステル、イタコン酸モノメチルエステル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、ビニルトリメトキシシランが好ましく、マレイン酸モノメチルエステル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、及びビニルトリメトキシシランがより好ましい。
PVA(A)における単量体(a)に由来する単位の含有率の下限としては、PVA(A)を構成する全単量体単位のモル数に基づき、0.02モル%が好ましく、0.05モル%がより好ましく、0.1モル%がさらに好ましい。一方、PVA(A)における上記単量体(a)に由来する単位の含有率の上限としては、PVA(A)を構成する全単量体単位のモル数に基づき、5モル%が好ましく、2モル%がより好ましく、1モル%がさらに好ましい。上記含有率が上記下限未満の場合、当該繊維用糊剤を用いた糊付け糸の製織性が低下するおそれがある。逆に、上記含有率が上記上限を超えると、当該繊維用糊剤を用いた糊付け糸の糊抜き性が低下するおそれがある。
また、PVA(A)は本発明の趣旨を損なわない範囲で、ビニルアルコール単位及び単量体(a)に由来する単位以外の他の単量体に由来する単位を含んでいてもよい。上記他の単量体に由来する単位としては、例えばエチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブチレン等のα−オレフィン;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2,3−ジアセトキシ−1−ビニルオキシプロパン等のビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル類;塩化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル類;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン類;酢酸アリル、2,3−ジアセトキシ−1−アリルオキシプロパン、塩化アリル等のアリル化合物;酢酸イソプロペニルなどに由来する単位が挙げられる。PVA(A)における上記他の単量体に由来する単位の含有率は、PVA(A)を構成する全単量体単位のモル数に基づいて、例えば15モル%以下とすることができる。
PVA(A)におけるビニルアルコール単位、単量体(a)に由来する単位及び上記他の単量体に由来する単位の配列順序に特に制限はなく、ランダム、ブロック、及び交互のいずれであってもよい。
PVA(A)の一次構造は、H−NMRにより定量することができる。
PVA(A)のけん化度(PVA(A)におけるヒドロキシル基とエステル結合との合計に対するヒドロキシル基のモル分率)は、JIS−K6726:1994に準じて測定される。けん化度の下限としては、20モル%が好ましく、60モル%がより好ましく、70モル%がさらに好ましく、80モル%が特に好ましく、87モル%が最も好ましい。PVA(A)のけん化度が上記下限以上であることにより、当該繊維用糊剤を用いた糊付け糸の糊抜き性がより向上する。
PVA(A)の粘度平均重合度(P)は、PVA(A)を完全にけん化し、精製した後、単量体(a)に由来する単位を含むPVA(A)については30℃の塩化ナトリウム水溶液(0.5モル/L)中で極限粘度[η](単位:リットル/g)を測定し、単量体(a)に由来する単位を含まないPVA(A)については30℃の水溶液中で極限粘度[η](単位:リットル/g)を測定する。この極限粘度[η]から次式によりPVA(A)の粘度平均重合度(P)が求められる。
P=([η]×10/8.29)(1/0.62)
PVA(A)の粘度平均重合度の上限としては、5,000が好ましく、4,000がより好ましい。一方、PVA(A)の粘度平均重合度の下限としては、100が好ましく、500がより好ましく、1,000がさらに好ましい。PVA(A)の粘度平均重合度が上記下限以上であることにより、当該繊維用糊剤を用いた糊付け糸の製織性がより向上する。一方、PVA(A)の粘度平均重合度が上記上限以下であることにより、PVA(A)の生産性が向上し、より低コストでPVA(A)を製造することが可能となる。
また、PVA(B)はPVA(A)を水酸化ナトリウム溶液中において40℃で1時間処理して得られるものであるため、PVA(B)の粘度平均重合度は、PVA(A)の粘度平均重合度と実質的に同じ値となる。
[ワックス]
ワックスは糊付け糸の製織性をより向上させると共に、当該繊維用糊剤の原糸への定着性を向上させ、糊付け糸のデバイド時の糊落ち量をより低減させる。
上記ワックスとしては、例えばパラフィンワックス等の石油系ワックス;多価アルコール脂肪酸エステル、酸化ポリエチレン等の合成ワックス;カルナバワックス、キャンデリラワックス、ミツロウ、ライスワックス等の動植物系ワックス;鉱物系ワックスなどが挙げられる。上記ワックスは、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記ワックスとしては、これらの中で石油系ワックスが好ましい。石油系ワックスを用いることで、糊付け糸の平滑性が向上する。
上記ワックスは、通常ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤等の界面活性剤を用いて乳化した水系分散物として用いられる。
当該繊維用糊剤中の全固形分に対するワックスの含有率の上限としては、20質量%が好ましく、15質量%がより好ましく、12質量%がさらに好ましく、10質量%が特に好ましい。一方、上記含有量の下限としては、0.5質量%が好ましく、1質量%がより好ましく、2質量%がさらに好ましく、3質量%が特に好ましい。ワックスの含有率を上記範囲とすることで、当該繊維用糊剤を用いた糊付け糸のデバイド時の糊落ち量がより低減され、製織性がより向上する。
[その他の成分]
当該繊維用糊剤が含有してもよいその他の成分としては、例えば澱粉、水溶性セルロース化合物、水溶性アクリル糊剤等の水溶性高分子、消泡剤、帯電防止剤、防腐剤、防黴剤等が挙げられる。
上記澱粉としては、例えばコーン、馬鈴薯、タピオカ、小麦等の生澱粉、これらの加工澱粉などが挙げられる。上記加工澱粉としては、例えばα化(糊化)澱粉、酸化澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉、グラフト澱粉、カルボキシメチル化澱粉、ジアルデヒド澱粉、カチオン化澱粉等が挙げられる。これらの中でも、容易に糊化および糊液の調製が出来る観点から、加工澱粉が好ましい。上記PVA(A)と上記澱粉との質量比(PVA(A)/澱粉)の下限としては、1/99が好ましく、30/70がより好ましく、50/50がさらに好ましい。一方、上記質量比の上限としては、90/10が好ましく、80/20がより好ましく、75/25がさらに好ましい。
上記水溶性セルロース化合物としては、例えばメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。
当該繊維用糊剤を紡績糸に用いる場合、一般的な糊付け温度である70℃以上95℃以下における当該繊維用糊剤の粘度としては、50mPa・s以上200mPa・s以下が好ましい。当該繊維用糊剤の粘度を上記範囲内とすることで、糊付け糸の毛羽伏せが良好となる。また、当該繊維用糊剤の固形分濃度は特に限定されないが、3質量%以上15質量%以下が好ましい。
<繊維用糊剤の製造方法>
当該繊維用糊剤の製造方法としては、特に限定されないが、例えばPVA(A)を製造する工程及びPVA(A)にワックス等の任意成分を混合する工程を備える。
[PVA(A)の製造]
上記PVA(A)を製造する工程としては、例えばビニルエステル系単量体を含む単量体を重合する工程(以下、「重合工程」ともいう)、この重合工程により得られたビニルエステル系重合体をけん化する工程(以下、「けん化工程」ともいう)とを備える。また、ビニルエステル系重合体又はけん化後のPVAを加熱する工程(以下、「加熱工程」ともいう)をさらに備えることが好ましい。
(重合工程)
本工程では、ビニルエステル系単量体を含む単量体の重合を行い、ビニルエステル系重合体を合成する。ビニルエステル系単量体を含む単量体としては、ビニルエステル系単量体のみを含むものであっても、上記したように、ビニルエステル系単量体と、単量体(a)及び/又は上記他の単量体とを含むものであってもどちらでもよい。
ビニルエステル系単量体を含む単量体の重合方式としては、回分重合、半回分重合、連続重合、及び半連続重合のいずれでもよい。重合方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等公知の任意の方法を採用することができる。これらの中で、無溶媒又はアルコール等の溶媒中で重合を進行させる塊状重合法又は溶液重合法が通常採用される。高重合度のビニルエステル系重合体を得る場合には、乳化重合法の採用が選択肢の一つとなる。溶液重合法の溶媒は特に限定されないが、例えばアルコール等が挙げられる。溶液重合法の溶媒に使用されるアルコールは、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール等の低級アルコールである。溶媒は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。重合系における溶媒の使用量は、目的とするPVA(A)の重合度等に応じて溶媒の連鎖移動を考慮して選択すればよい。例えば溶媒がメタノールの場合、溶媒と重合系に含まれる全単量体との質量比{=(溶媒)/(全単量体)}の下限としては、0.01が好ましく、0.05がより好ましい。一方、上記質量比の上限としては、10が好ましく、3がより好ましい。
かかる重合に使用される重合開始剤としては、公知の重合開始剤、例えばアゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、レドックス系開始剤等から重合方法に応じて適宜選択すればよい。アゾ系開始剤としては、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等が挙げられる。過酸化物系開始剤としては、例えばジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネート等のパーカーボネート化合物;t−ブチルパーオキシネオデカネート、α−クミルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシデカネート等のパーエステル化合物;過酸化アセチル;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキシド;2,4,4−トリメチルペンチル−2−パーオキシフェノキシアセテート等が挙げられる。上記開始剤に過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等を組み合わせて開始剤としてもよい。レドックス系開始剤としては、例えば上記の過酸化物系開始剤と亜硫酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酒石酸、L−アスコルビン酸、ロンガリット等の還元剤とを組み合わせたものが挙げられる。
重合開始剤の使用量は、重合触媒などにより異なるために一概には決められないが、重合速度に応じて適宜選択すればよい。例えば重合開始剤に2,2’−アゾビスイソブチロニトリル又は過酸化アセチルを用いる場合、重合開始剤の含有量の下限としては、ビニルエステル系単量体に対して0.01モル%が好ましく、0.02モル%がより好ましい。一方、重合開始剤の含有量の上限としては、0.2モル%が好ましく、0.15モル%がより好ましい。
重合工程における温度の下限としては、0℃が好ましく、30℃がより好ましい。重合温度の上限としては、200℃が好ましく、140℃がより好ましい。重合温度が上記下限以上であることにより、重合速度が向上する。一方、重合温度が上記上限以下であることにより、例えば単量体(a)を用いる場合においてもPVA(A)中の単量体(a)に由来する単位の含有率を適切な割合に保つことが容易になる。重合温度を上記範囲内に制御する方法としては、例えば重合速度を制御することで、重合により生成する熱と反応器の表面からの放熱とのバランスをとる方法や、適当な熱媒を用いた外部ジャケットにより制御する方法等が挙げられるが、安全性の観点から後者の方法が好ましい。
上記重合は、本発明の趣旨を損なわない範囲で連鎖移動剤の存在下で行ってもよい。連鎖移動剤としては、例えばアセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド等のアルデヒド類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;2−ヒドロキシエタンチオール等のメルカプタン類;トリクロロエチレン、パークロロエチレン等のハロゲン化炭化水素類;ホスフィン酸ナトリウム1水和物等のホスフィン酸塩類などが挙げられる。これらのうち、アルデヒド類及びケトン類が好ましい。重合系への連鎖移動剤の添加量としては、添加する連鎖移動剤の連鎖移動係数及び目的とするPVA(A)の重合度等に応じて決定することができ、一般にビニルエステル系単量体100質量部に対して0.1質量部〜10質量部が好ましい。
なお、高温下で上記重合を行った場合、ビニルエステル系単量体の分解に起因するPVA(A)の着色等が見られることがある。この場合には、着色防止の目的で重合系に酒石酸のような酸化防止剤をビニルエステル系単量体に対して1ppm〜100ppm程度添加するとよい。
(けん化工程)
本工程では、ビニルエステル系重合体をけん化する。この重合体をけん化することにより、重合体中のビニルエステル単位はビニルアルコール単位に変換される。
ビニルエステル系重合体のけん化に用いる反応としては、特に制限されないが、溶媒中に上記重合体が溶解した状態で行われる公知の加アルコール分解反応又は加水分解反応を採用することができる。
けん化に使用する溶媒としては、例えばメタノール、エタノール等の低級アルコール;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素などが挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中で、メタノール、メタノールと酢酸メチルとの混合溶液が好ましい。
けん化に使用する触媒としては、例えばアルカリ金属の水酸化物(水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等)、ナトリウムアルコキシド(ナトリウムメトキシド等)等のアルカリ触媒;p−トルエンスルホン酸、鉱酸等の酸触媒などが挙げられる。これらの中で、水酸化ナトリウムを使用することが簡便であるため好ましい。
けん化を行う温度としては、特に限定されないが、20℃〜60℃が好ましい。けん化の進行に従ってゲル状の生成物が析出してくる場合には、生成物を粉砕し、さらにけん化を進行させるのがよい。その後、得られた溶液を中和することで、けん化を終了させ、洗浄、乾燥して、PVAを得ることができる。けん化方法としては、上述した方法に限らず、公知の方法を採用できる。
(加熱工程)
本工程では、ビニルエステル系重合体又はけん化後のPVAを加熱する。具体的には、けん化工程と同時に加熱することによりビニルエステル系重合体を加熱するか、けん化工程終了後に得られたPVAを加熱する。この加熱により分岐構造が形成されたPVA(A)を容易に得ることができ、当該繊維用糊剤を用いた糊付け糸の製織性及び糊抜き性がより向上する。加熱処理は、空気又は窒素雰囲気下で行うことが好ましい。また、加熱工程はけん化後のPVAに対して行われることが好ましい。
加熱工程における加熱温度の下限としては、70℃が好ましく、90℃がより好ましい。上記加熱温度の上限としては、170℃が好ましく、150℃がより好ましい。加熱工程における加熱時間の下限としては、30分が好ましく、1時間がより好ましく、2時間がさらに好ましい。上記加熱時間の上限としては、10時間が好ましく、7時間がより好ましく、5時間がさらに好ましい。加熱温度及び加熱時間を上記範囲内とすることで、本発明の規定を満たすPVA(A)を容易に得ることができ、当該繊維用糊剤の製織性がより向上する。
[任意成分の混合]
上記の製造方法により得られたPVA(A)及び任意成分を適宜混合することにより当該繊維用糊剤を製造することができる。
また、本発明の繊維用糊剤は織物の樹脂加工、洗濯用糊剤、捺染用糊剤、フェルトや不織布のバインダーとしても有効に利用できる。
<糊付け糸>
本発明の糊付け糸は、原糸と、その原糸に含浸するバインダーとを備え、上記バインダーが当該繊維用糊剤から形成されている。
糊付け前の原糸としては、例えば綿、ポリエステル、レーヨン、麻、ナイロン、羊毛、アクリル等の単独糸、これらの混紡糸などが挙げられる。
原糸に糊付けを行う方法は特に限定されず、例えば一斉スラッシャー糊付け、部分整経糊付け、テープ糊付け、チーズ糊付け等が挙げられる。
原糸に対するバインダー(当該繊維用糊剤)の付着量(着糊量)は織物の規格、使用する織機や糊付機の設備等によって適宜選択でき、原糸に対して通常5質量%以上25質量%以下である。着糊量が上記下限未満の場合、繊維の耐摩耗性が低下し、繊維表面の毛羽が十分に低減されないおそれや、製織時の糸切れが増加するおそれがある。逆に、着糊量が上記上限を超えると、デバイド時の糊落ちが増加するおそれや、織物の製造コストが増大するおそれがある。ここで「着糊量」とは、「たて糸糊付」(深田 要、一見 輝彦共著、日本繊維機械学会発行、第4版)299頁〜302頁に記載の糊抜き洗浄時の毛羽の脱落部分を補正する方法により測定した値である。
糊付け後の糸は、シリンダーによって乾燥され、シート状の糊付け糸束となる。このシリンダーの表面温度は、通常100℃以上150℃以下である。乾燥された糊付け糸束はデバイドされ、一本ずつの糊付け糸に分離される。
<織物の製造方法>
本発明の織物の製造方法は、当該繊維用糊剤により糊付けされてなる糸を織る工程を備える。具体的には、デバイド後の当該糊付け糸を織物用のビームに巻き取り、製織機により製織する。上記製織機としては、例えばレピア織機やエアージェット織機等のドライ製織機、ウォータージェット織機などが挙げられ、これらの中でエアージェット織機が好ましい。
当該繊維用糊剤により糊付けされた糊付け糸は、経糸、緯糸のいずれとしてもよいが、経糸とすることが好ましい。製織機上で開口を良くするために経糸には高い張力が付加されるため、経糸は、筬、ヘルド及びドロッパーとの摩擦が大きい。従って、当該糊付け糸を経糸とすることで、経糸の強度が向上し、上記摩擦による糸切れが低減され、製織性が向上する。さらに、経糸のデバイド時の糊落ちが低減される。緯糸は、経糸と同様に当該糊付け糸を用いてもよいが、特段の処理をしない原糸を用いることが一般的である。
以下、実施例及び比較例により、本発明を詳細に説明する。なお、以下の実施例及び比較例において「部」及び「%」は、特に断りのない限り質量を基準とする。
下記実施例及び比較例のPVAの物性値について、以下の方法に従って測定した。
[重合度]
各実施例又は比較例において、PVA(A)の粘度平均重合度は、JIS−K6726:1994に記載の方法により求めた。
[けん化度]
各PVA(A)のけん化度は、JIS−K6726:1994に記載の方法により求めた。
[変性率]
各PVAの変性率(PVA(A)における単量体(a)に由来する単位の含有率)は、PVA(A)の前駆体であるビニルエステル系重合体を用いて、H−NMRを用いた方法により求めた。
例えば、単量体(a)としてマレイン酸モノメチルを用いた場合、上記含有率は以下の手順により求められる。すなわち、溶媒にn−ヘキサン/アセトンを用いてPVA(A)の前駆体であるビニルエステル系重合体の再沈精製を3回以上十分に行った後、得られた精製物を50℃の減圧下で乾燥を2日間行い、分析用のサンプルを作製する。このサンプルをCDClに溶解させ、H−NMRを用い室温で測定する。ビニルエステル系重合体におけるビニルエステル単位のメチン構造に由来するピークα(4.7〜5.2ppm)と、単量体(a)に由来する単位のメチルエステル部分のメチル基に由来するピークβ(3.6〜3.8ppm)とから、下記式を用いて、単量体(a)に由来する単位の含有率Sを算出することができる。
S(モル%)={(βのプロトン数/3)/(αのプロトン数+(βのプロトン数/3))}×100
[PVA(B)の調製]
PVA(A)約10gを容量500mLの共通すり合わせ三角フラスコに量り採り、メタノール200mLを加えた後、12.5モル/L水酸化ナトリウム溶液を10mL加えて、かき混ぜ、40℃の水浴中で1時間加熱した。次に、フェノールフタレインを指示薬として加え、アルカリ性反応を認めなくなるまでメタノールで洗浄して水酸化ナトリウムを除去した。最後に、時計皿に移しメタノールがなくなるまで105℃で1時間乾燥させてPVA(B)を調製した。
[PVA(A)及びPVA(B)の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)]
ヘキサフルオロイソプロパノールを移動相に用い、示差屈折率検出器を用いて、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定により、ポリメタクリル酸メチル換算値として求めた。具体的には、以下の条件を採用した。
GPCカラム:東ソー社の「GMHHR(S)」2本
移動相:ヘキサフルオロイソプロパノール(トリフルオロ酢酸ナトリウムを20mmol/Lの濃度で含有)
流速:0.2mL/分
試料濃度:0.100wt/vol%
試料注入量:10μL
検出器:示差屈折率検出器
標準物質:ポリメタクリル酸メチル(例えば、Agilent Technologies社の「EasiVial PMMA 4mL tri−pack」)
[合成例1](PVA−1の製造)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、コモノマー滴下口及び重合開始剤の添加口を備えた反応器に、酢酸ビニル740部及びメタノール260部を仕込み、窒素バブリングをしながら30分間系内を窒素置換した。また単量体(a)としてマレイン酸モノメチルを選択し、マレイン酸モノメチルのメタノール溶液(濃度20%)を窒素ガスのバブリングにより窒素置換した。反応器の昇温を開始し、内温が60℃となったところで、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.25部を添加し重合を開始した。上記反応器に、上記マレイン酸モノメチルのメタノール溶液を滴下して重合溶液中の単量体組成比を一定に保ちながら、60℃で3時間重合した後、冷却して重合を停止した。重合停止までに加えた単量体(a)の総量は0.9部であり、重合停止時の固形分濃度は33.3%であった。続いて、30℃、減圧下でメタノールを時々添加しながら未反応の単量体の除去を行い、ビニルエステル系重合体のメタノール溶液(濃度35%)を得た。次に、このメタノール溶液にさらにメタノールを加えて調製したビニルエステル系重合体のメタノール溶液790.8部(溶液中の上記重合体200.0部)に、水酸化ナトリウムの10%メタノール溶液9.2部を添加して、40℃でけん化を行った(けん化溶液の上記重合体濃度25%、上記重合体中の酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比0.01)。水酸化ナトリウムのメタノール溶液を添加後約15分でゲル状物が生成したので、これを粉砕器にて粉砕し、さらに40℃で1時間放置してけん化を進行させた後、酢酸メチル500部を加え残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和が終了したことを確認した後、濾別して白色固体を得た。この白色固体にメタノール2,000部を加えて室温で3時間放置洗浄した。この洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱液して得られた白色固体を乾燥機にて120℃で4.5時間加熱処理してPVA(A)(PVA−1)を得た。PVA−1の物性を表2に示す。
[合成例2〜17](PVA−2〜PVA−17の製造)
酢酸ビニル及びメタノールの仕込み量、重合時に使用する単量体(a)の種類や添加量等の重合条件;けん化時におけるビニルエステル系重合体の濃度、酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比等のけん化条件;並びに加熱処理条件を表1に示すように変更したこと以外は、合成例1と同様の方法により各種のPVA(A)を製造した。各PVA(A)及びそれから得られるPVA(B)の物性を表2に示す。なお、合成例13においては、PVA−13a及びPVA−13bの2種のPVA(A)を製造したのち、PVA−13aを45部に対しPVA−13bを55部となるように2種のPVA(A)を混合した。また、PVA−10及びPVA−12は、ヘキサフルオロイソプロパノールに完溶しなかったため、Mn及びMwは測定できなかった。
Figure 0006272736
Figure 0006272736
[実施例1]
(繊維用糊剤の調製、糊付け及び製織)
溶媒として水を用い、PVA−1の濃度が7質量%、ワックス(カンエイ産業社の「NC−204」)の濃度が0.7質量%となるように繊維用糊剤を調製した。
上記調製した繊維用糊剤を用い、以下の条件で糊付けを行った。
糊付機:2ボックス2シート型(津田駒社)
糊液温度:90℃
絞りロール幅:1800mm
絞り荷重:800kg/1800mm幅
経糸原糸:綿糸(東洋紡社の「金魚 C40/1」)
経糸速度:60ヤード/分
乾燥温度:100℃〜130℃
糊付糸長:5600ヤード
上記糊付け糸を経糸とし、以下の条件で製織を行った。
緯糸:綿糸(東洋紡社の「金魚 C40/1」)
経糸密度:136本/インチ
緯糸密度:72本/インチ
織り幅:47インチ
経糸総本数:6420本
織組織:ブロード
織機:エアージェット織機(津田駒社の「ZA−209i」)
織機回転数:600rpm
[実施例2〜8及び比較例1〜9]
使用するPVA(A)を表3に挙げたものに代えた以外は実施例1と同様にして繊維用糊剤を調製し、糊付け及び製織した。なお、比較例2及び4では、PVAが水に完溶せず、繊維用糊剤を調製できなかった。
<評価>
上記実施例及び比較例の糊付け糸及び織物について、以下の基準で評価を行った。評価結果を表3に示す。
[糊落ち]
上記の方法で糊付けした糸を20℃、40%RH(相対湿度)下で調湿し、上記の製織条件で長さ3000mの製織を行った時の織機上(筬、ヘルド、ドロッパー部等)への糊剤の脱落の程度を目視で観察し、以下の基準で評価した。
A:非常に少ない
B:少ない
C:多い
[製織性]
上記の方法で糊付けした糸を20℃、40%RH(相対湿度)下で調湿し、上記の製織条件で三日間製織を行った。その際の製織性を、平均製織効率及び経糸切れにより評価した。
(平均製織効率)
平均製織効率は、単位製織時間当たりの製織長を理論製織長で割った値を用いた。
A:93%以上
B:85%以上93%未満
C:85%未満
(経糸切れ)
経糸切れは、単位製織時間当たりに発生した糸切れの平均回数を用いた。
A:0.4回/時間未満
B:0.4回/時間以上1回/時間未満
C:1回/時間以上
[糊抜き性]
上記で得られた織布を60℃の0.1%水酸化ナトリウム水溶液中で30分間処理した後、40℃の温流水で1分間アルカリを洗い流し、乾燥後ヨード呈色により下記判定基準に従い糊抜き性を評価した。
A:全面に呈色する部分はなかった。
B:一部に呈色する部分が見かけられた。
C:全面にわたって斑に呈色する部分が見かけられた。
Figure 0006272736
表3中、着糊量の値は、「たて糸糊付」(深田要、一見輝彦共著、日本繊維機械学会発行、第4版)299〜302頁に記載の糊抜き洗浄時の毛羽の脱落部分を補正する方法により測定した値である。
表3に示されるように、実施例1〜8の繊維用糊剤を用いた糊付け糸はデバイド時の糊落ちが少なく、製織性及び糊抜き性に優れることが分かる。一方、比較例1〜9の繊維用糊剤を用いた糊付け糸は、デバイド時の糊落ちが多く、製織性及び糊抜き性も不十分であることが分かる。また、特に比較例2及び4におけるPVAは、繊維用糊剤として用いることができないものであった。
以上説明したように、本発明の繊維用糊剤は、糊付け糸のデバイド時の糊落ちが低減でき、製織性及び糊抜き性に優れる。また、本発明の糊付け糸は、デバイド時の糊落ちが少なく、製織性及び糊抜き性に優れる。さらに、本発明の織物の製造方法は、当該糊付け糸を用いているため、織物を簡便に提供することができる。

Claims (5)

  1. ビニルアルコール系重合体(A)を含有する繊維用糊剤であって、
    上記ビニルアルコール系重合体(A)の数平均分子量(Mn(A))に対する重量平均分子量(Mw(A))の割合(Mw(A)/Mn(A))が3以上8以下であり、
    上記ビニルアルコール系重合体(A)を水酸化ナトリウム溶液中において40℃で1時間処理して得られるビニルアルコール系重合体(B)の数平均分子量(Mn(B))に対する重量平均分子量(Mw(B))の割合(Mw(B)/Mn(B))が2以上3未満である、
    繊維用糊剤。
  2. 量体(a)の存在下でビニルエステル系単量体を重合する工程、
    上記重合工程で得られた重合体をけん化する工程、及び
    上記重合体を加熱処理する工程
    を備え、
    上記単量体(a)が、不飽和二重結合を有するカルボン酸、不飽和二重結合を有するカルボン酸のアルキルエステル、不飽和二重結合を有するカルボン酸の酸無水物、不飽和二重結合を有するカルボン酸の塩、及び不飽和二重結合を有するシリル化合物からなる群より選択される少なくとも1種であり、
    上記加熱処理を70℃以上150℃以下で行う請求項1に記載の繊維用糊剤の製造方法。
  3. ワックスをさらに含有する請求項1に記載の繊維用糊剤。
  4. 原糸と、その原糸に含浸するバインダーとを備える糊付け糸であって、
    上記バインダーが請求項1又は請求項3に記載の繊維用糊剤から形成されていることを特徴とする糊付け糸。
  5. 請求項4に記載の糊付け糸を製織する工程を備える織物の製造方法。
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