JP2019104996A - ガラスクロス、プリプレグ、及びプリント配線板 - Google Patents

ガラスクロス、プリプレグ、及びプリント配線板 Download PDF

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Abstract

【課題】 プリプレグ塗工時の波打ちが少なく取扱い性に優れ、樹脂含侵性を有しガラスクロスの表裏で樹脂層を均一にできる、厚さ16μm以下のガラスクロス、該ガラスクロスを使用したプリプレグ及びプリント配線板用基板を提供すること。【解決手段】 複数本のガラスフィラメントからなるガラス糸を経糸及び緯糸として製織してなる、厚さ8μm以上16μm以下のガラスクロスであって、経糸の単位長さ当たりの平均質量が、1.40×10-6kg/m以上1.80×10-6kg/m未満、緯糸の単位長さ当たりの平均質量が、1.80×10-6kg/m以上4.00×10-6kg/m以下であり、経糸の単位長さ当たりの平均質量に対する、緯糸の単位長さ当たりの平均質量の比(緯糸/経糸比)が、1.20より大きく1.80以下である、ガラスクロス。【選択図】なし

Description

本発明は、ガラスクロス、プリプレグ、及びプリント配線板に関する。
プリント配線板の多くは、通常、ガラスクロス等の基材にエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸、乾燥してプリプレグとし、該プリプレグを単数又は複数枚重ねると共に、必要に応じて銅箔を重ねた後に加熱加圧成形して積層板とし、次いで該積層板にフォトリソグラフィー及びエッチング又はメッキによって銅箔からなる回路パターンを形成する方法によって、製造される。
さらに、上述のプリント配線板をコア基板とし、その表層にプリプレグを重ねると共に、さらにその外側に銅箔を重ね、これを加熱加圧成形して多層板とし、次いで多層板表面に回路形成する方法等により多層プリント配線板が製造される。
一方、近年のデジタル機器の高機能、小型軽量化のために、使用されるプリント配線板にもさらなる小型化及び薄型化や高密度化が要求されている。そのための手法として、基材として用いられるガラスクロスを薄型化するとともに、多層プリント配線板の層数を増大させることにより、高密度化を達成しようとしている。ここで、ガラスクロスの厚さとしては、最先端のスマートフォンやウェアラブル機器の高機能、小型軽量化を達成するために、例えば、16μm以下にまで薄くすることが求められている。
ここで、厚さの薄いガラスクロスとしては、例えば、特許文献1〜6等に記載のガラスクロスが提案されている。具体的には、特許文献1には厚さ7〜14μmのガラスクロス、特許文献2には厚さ14μm以下のガラスクロス、特許文献3には厚さ10μm以上40μm以下のガラスクロス、特許文献4には厚さ10μm以上50μm以下のガラスクロス、特許文献5には厚さ5〜15μmのガラスクロス、特許文献6には厚さ25μm以下のガラスクロスが提案されている。
特許文献1に記載のガラスクロスは、経糸及び緯糸ともに平均直径3.5〜4.4μm、フィラメント数が20〜60本、単位長さ当たり0.5×10-6〜1.7×10-6kg/mのガラス糸で製織されたガラスクロスであり、経糸の質量と緯糸の質量の比が1.26〜1.42の範囲となるように緯糸のフィラメント数を経糸より多くすることにより、緯糸相互の間隔が開き難くなり、通気度を特定範囲に小さく調整することができるため、プリプレグとしたときのピンホールや反りの問題を改善できるとされている。
特許文献2に記載のガラスクロスは、経糸及び緯糸の平均フィラメント径が3.0〜4.3μmであり、フィラメント数は経糸より緯糸の方が多くその比(緯糸/経糸比)が0.9以上であり、開繊度が経糸より緯糸の方が大きい、すなわち、経糸の糸束の幅より緯糸の糸束の方が広いガラスクロスであり、開繊しやすい緯糸のフィラメント数を多くすることで隣接する緯糸同士の間隔が小さくなるため基板としたときにピンホールの発生を抑制できるとされている。
特許文献3に記載されているガラスクロスは、経糸及び緯糸が質量1.8×10-6kg/m以上14×10-6kg/m以下のガラス糸で構成され、経糸の平均フィラメント径に対する緯糸の平均フィラメント径の比(緯糸/経糸比)が1.01以上1.20未満のガラスクロスであり、上記構成とすることにより、厚さ40μm以下のガラスクロスにおいても引張荷重が作用した際の歪と、その緯糸/経糸比を特定範囲に収めることができ、寸法変化の異方性が少なく、且つ、反り及びねじれのないプリント配線板が製造できることが開示されている。
特許文献4に記載のガラスクロスは、経糸及び緯糸が同一種類のガラス糸で構成され、緯糸の糸幅と経糸の糸幅が近くその比(緯糸/経糸比)が0.8以上1.2以下であり、幅25mmあたり25N〜100Nの範囲内の荷重をかけた際の緯糸方向の伸び率に対する経糸方向の伸び率の比(緯糸/経糸比)が0.8以上1.2以下の範囲であるガラスクロスであり、経糸及び緯糸に同じガラス糸を用い、且つ、断面形状及びうねり状態を同等にすることにより、該ガラスクロスを使用したフィルム基材は寸法安定性に優れるとされている。
特許文献5に記載されたガラスクロスは、経糸と緯糸の少なくとも片方の平均フィラメント径が4.5μm未満であり、且つ、両方のフィラメント数が5本以上70本以下のガラス糸で構成されたガラスクロスであり、構成するガラスフィラメント数が少ないにも関わらず、緩やかな条件で開繊拡幅して表面ガラス被覆率を50%以上100%以下とすることにより、寸法安定性及び機械特性に優れたガラスクロスを得られるとされている。
特許文献6に開示されたガラスクロスは、縦糸と緯糸の少なくともどちらか一方が平均フィラメント径3〜4μmであり、且つ、フィラメント数70〜200本のガラス糸で構成されたガラスクロスであり、経糸と緯糸の少なくともどちらか一方が隣り合う糸同士が実質的に隙間なく配置されているために表面平滑性に優れ、小穴加工性に優れるとされている。
また、ICP規格に登録のガラスクロスとしても、1000(12μm)、1010(11μm)、1017(14μm)、1015(15μm)等の厚さの薄いガラスクロスが市販されており利用可能である。
5831665号公報 5936726号公報 5027335号公報 3897789号公報 4446754号公報 3756066号公報 特開平10−245743号公報 特開2001−269931号公報
特許文献6には、厚さ25μm以下のガラスクロスに関して記載されているが、実施例1〜5において具体的に開示されているガラスクロスは、厚さ17〜21μmであり、最も薄いもので17μmであった。特許文献6に開示されているガラスクロスは、隣り合う糸同士を隙間なく配置させるため、フィラメント数が多いガラス糸を用いる必要があり、その結果、ガラスクロスの厚さを低減することが困難である。特許文献6における実施例1〜5においては、具体的には、いずれも経糸及び緯糸にフィラメント数100本のガラス糸が使用された。
特許文献5に開示されているガラスクロスは、経糸及び緯糸を構成するガラスフィラメントの平均直径を小さくし、且つ、経糸及び緯糸を構成するフィラメント本数を少なくすることで、厚さ5μm以上15μm未満と、ガラスクロスの厚さを薄くすることを達成している。特許文献1及び特許文献2におけるガラスクロスもまた、厚さが薄い。
しかしながら、特許文献1に開示されているガラスクロスは、経糸と緯糸に質量0.5×10-6〜1.7×10-6kg/mと細いガラス糸を用いているため、ガラスクロスの剛性が小さく、プリプレグ塗工時に波打ちが生じる課題を抱えている。
また、特許文献2においても、経糸及び緯糸ともに質量が1.65×10-6kg/m以下、具体的にはBC3000、BC3750、BC5000、BC6000より軽い糸である、細いガラス糸が使用されているため、ガラスクロスの剛性が小さく、プリプレグ塗工時に波打ちが生じる問題がある。
さらに、特許文献5に開示されるガラスクロスにおいても、経糸及び緯糸を構成するフィラメント本数を少なくするため、波打ちが生じやすい。
ここで、ガラスクロスの波打ちとは、ガラスクロスに熱硬化性樹脂を含侵、乾燥させてプリプレグを製造する過程でプリプレグが、図1に図示されるような形状のように変形する現象である。プリプレグの波打ちが大きいと、波打ちに起因してシワが発生したり、続くプリプレグの成形工程の位置合わせが困難で位置ずれが発生したりする問題がある。また、プリプレグを重ねて保管する際、あるいはロール状に巻き取って保管する場合に波打ちの凸部同士が接触して擦れるため、Bステージ、すなわち、半硬化状態にある硬化性樹脂にクラックが生じ、樹脂が剥がれ落ちてしまう問題もある。
プリプレグの波打ちは、プリプレグ塗工過程で、熱硬化性樹脂が乾燥により収縮する応力が、ライン張力による拘束力のない緯糸方向に波打ちを生じることで緩和さるために生じる。例えば、特許文献7には、単位面積当たりの質量48g/m2のガラスクロスを用いて厚さ70μmのプリプレグを製造する際に波打ちが発生すること、及び、特許文献8には、厚さ60μm以下のガラスクロスを用いてプリプレグを製造する際に波打ちが発生することが記載されている。
波打ちは、上述のとおり、硬化性樹脂が硬化する際に収縮することにより、ガラスクロスがテンション保持されてない緯糸方向に縮もうとする力に対してガラスクロスが負けて屈折することによって生じる。そのため、波打ちは、ガラスクロスの厚さが薄く、剛性が小さいほど発生しやすい。また、ガラスクロスが薄くなり強度が弱くなると、経糸方向にかけられるライン張力も小さくなるため、プリプレグ塗工過程におけるガラスクロスにバタつき及び/又はたわみが生じやすい。したがって、厚さが薄いガラスクロスほど波打ちが発生しやすい問題を抱えている。
特許文献4に記載のガラスクロスは、低張力条件で開繊加工することにより、経糸と緯糸のうねり構造を同等とすることができ、引張荷重をかけた際の伸び率が経糸と緯糸とで同等となり寸法安定性に優れるとされている。
しかしながら、特許文献4に記載のガラスクロスは、経糸と緯糸とに同じガラス糸を用いているために、経糸と緯糸のうねり構造を同等にすることは難しく、特許文献4に記載のガラスクロスにおいても、経糸方向に比べ緯糸方向に大きく伸びるガラスクロスであり、プリプレグ塗工時の緯糸方向の寸法安定効果は十分でなく、波打ちの抑止には改善の余地がある。
特許文献3に記載のガラスクロスは、緯糸に、経糸よりフィラメント径の大きいガラス糸を用いそのフィラメント数を調整することによって、引張荷重が作用した際の歪(伸び)を小さくし、歪の異方性を小さくすることを実現したガラスクロスである。特許文献3に記載のガラスクロスは、緯糸のうねり構造が低減されているため、プリプレグ塗工時の波打ちの改善にも有用である。
しかしながら、特許文献3のガラスクロスは、引張張力が作用した際の歪を小さくするため、経糸及び緯糸に1.8×10-6kg/m以上の比較的太いガラス糸を用いる必要があるため、該特許文献の実施例に具体的に開示してあるように、最も薄いガラスクロスでも厚さ17μmが最小であり、厚さ16μm以下のガラスクロスを得ることはできない。
また、特許文献3のガラスクロスは、該特許文献の実施例にあるように、緯糸にフィラメント径4.5μm以上、フィラメント数100本と太い糸を用いることにより、緯糸方向に引張張力が作用した際の歪の低減を実現している。そのため、隣接する緯糸同士の間隔が狭くなる課題も抱えている。通常、ガラスクロスに樹脂を含侵させ、余分な樹脂を除去した後、ガラスクロスの表裏にある樹脂がガラスクロスのガラスのない部位を通じて相互に浸透し合い均一化されるが、特許文献3のガラスクロスは、樹脂含侵性が十分でなくガラスクロスの表裏で樹脂層を均一にすることが困難である。
また、ICP規格に登録の1000(12μm)、1010(11μm)、1017(14μm)、1015(15μm)等の厚さ16μm以下のガラスクロスが市販品として利用可能であるが、いずれのガラスクロスにおいても、前記のプリプレグ塗工時の波打ちの課題を抱えており、その改善が望まれている。
さらに、プリント配線板の製造過程では、積層工程の熱と圧力により、また、回路パターン形成工程において銅箔の一部がエッチアウトされることにより、銅張り積層板の寸法変化、反り、ねじれが生じることが知られている。上記の1000、1010、1017、1015スタイル等の厚さが16μm以下のガラスクロスは機械的強度が弱いために上記の寸法変化、反り、ねじれの問題が著しく発生しやすいという問題を抱えている。特に、緯糸方向に寸法変化が生じやすく、寸法変化量のバラツキも大きい。プリント配線板は高密度化するほど寸法変化に対する安定性の重要性は高くなるが、一方で、高密度化のために厚さの薄いガラスクロスを用いると、上述のとおり、寸法安定性が悪化する。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、プリプレグ塗工時の波打ちが少なく取扱い性に優れ、樹脂含侵性を有しガラスクロスの表裏で樹脂層を均一にできる、厚さ16μm以下のガラスクロス、該ガラスクロスを使用したプリプレグ及びプリント配線板用基板を提供することを目的とする。
また、本発明は、プリプレグ塗工時において寸法変化の安定性に優れる、厚さ16μm以下のガラスクロスとマトリクス樹脂とで構成されるプリプレグ、該プリプレグを使用したプリント配線板用基板を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、経糸及び緯糸から構成されるガラスクロスが特定の織物構造を有することにより、厚さを16μm以下に維持したまま、ガラスクロスの剛性を高め、プリプレグ塗工時の波打ちが少なく取扱い性に優れること、及び、樹脂含侵性に優れガラスクロスの表裏で樹脂層を均一にできることを見出し、本発明を完成するに至った。
また、本発明者らは、特定の樹脂含量、樹脂層の厚さの比、特定の波打ちの大きさを有するプリプレグは、寸法変化に対する安定性を改善できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]
複数本のガラスフィラメントからなるガラス糸を経糸及び緯糸として製織してなる、厚さ8μm以上16μm以下のガラスクロスであって、
経糸の単位長さ当たりの平均質量が、1.40×10-6kg/m以上1.80×10-6kg/m未満、
緯糸の単位長さ当たりの平均質量が、1.80×10-6kg/m以上4.00×10-6kg/m以下であり、
経糸の単位長さ当たりの平均質量に対する、緯糸の単位長さ当たりの平均質量の比(緯糸/経糸比)が、1.20より大きく1.80以下である、ガラスクロス。
[2]
経糸及び緯糸の平均フィラメント数が、実質的に同じであり、且つ、
経糸の平均フィラメント径が、3.7μm以上4.3μm以下であり、
緯糸の平均フィラメント径が、4.2μm以上5.3μm以下であり、
経糸の平均フィラメント径に対する緯糸の平均フィラメント径の比(緯糸/経糸比)が、1.07以上1.40以下である、[1]に記載のガラスクロス。
[3]
経糸と緯糸の平均フィラメント径が、実質的に同じであり、且つ、
経糸の平均フィラメント数が、45本以上70本以下であり、
緯糸の平均フィラメント数が、55本以上80本以下であり、
経糸の平均フィラメント数に対する緯糸の平均フィラメント数の比(緯糸/経糸比)が、1.25より大きく1.50以下である、[1]に記載のガラスクロス。
[4]
式(1)で求められる、緯糸の長手方向(MD方向)における、緯糸の存在する部分の割合を示す係数(Y:緯糸占有率)が、76%以上90%以下である、[1]〜[3]のいずれかに記載のガラスクロス。
Y=F/(25000/G)×100 ・・・(1)
(式(1)中、Fは、緯糸幅(μm)であり、Gは、緯糸の織密度(本/25mm)である。)
[5]
長手方向(MD方向)における、隣り合う緯糸同士の間の隙間幅が、40μm以上80μm以下である、[1]〜[4]のいずれかに記載のガラスクロス。
[6]
[1]〜[5]のいずれかに記載のガラスクロスと、マトリックス樹脂と、から構成される、プリプレグ。
[7]
複数本のガラスフィラメントからなるガラス糸を経糸及び緯糸として製織してなる厚さ8μm以上16μm以下のガラスクロスと、マトリクス樹脂と、から構成される、プリプレグであって、
以下の1)〜3);
1)樹脂含量50%以上76質量%以下であること、
2)ガラスクロスの一方の面側に位置する第1樹脂層の厚さと、前記ガラスクロスの他方の面側に位置する第2樹脂層の厚さの比が0.7以上1.3以下であること、
3)波打ち量が3mm未満であること、
を満たす、プリプレグ。
[8]
前記ガラスクロスが、[1]〜[5]のいずれかに記載のガラスクロスである、[7]に記載のプリプレグ。
[9]
長手方向(MD方向)における、隣り合う緯糸同士の間の隙間幅が、40μm以上80μm以下である、[7]又は[8]に記載のプリプレグ。
[10]
[6]〜[9]のいずれかに記載のプリプレグを用いて作製されたプリント配線板。
本発明によれば、プリプレグ塗工時の波打ちが少なく取り扱い性に優れ、プリプレグとするときの樹脂含侵性に優れた、厚さ16μm以下の薄いガラスクロスを提供することができる。また、本発明によれば、寸法安定性に優れるプリプレグを提供することができる。
波打ちを有するプリプレグの模式図である。 波打ちの高さを測定する方法を示す図である。
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
<ガラスクロス>
本実施形態のガラスクロスは、複数本のガラスフィラメントからなるガラス糸を経糸及び緯糸として製織してなる、厚さ8μm以上16μm以下のガラスクロスである。
ガラスクロスの厚さが8μm以上16μm以下であることにより、厚さが、例えば、18μm以上35μmのように、薄いプリプレグを得ることができ、電子機器の高機能化、小型軽量化に対応可能なプリント配線板が得られる。
本実施形態のガラスクロスにおける、経糸の単位長さ当たりの質量は、1.40×10-6kg/m以上1.80×10-6kg/m未満である。
本実施形態のガラスクロスにおける、緯糸の単位長さ当たりの質量は、1.80×10-6kg/m以上4.00×10-6kg/m以下である。
前記経糸の単位長さ当たりの平均質量に対する、前記緯糸の単位長さ当たりの平均質量の比、すなわち、経糸と緯糸との質量比(緯糸/経糸比)は、1.20より大きく1.80以下である。
経糸の単位長さ当たりの質量、緯糸の単位長さ当たりの質量、及び経糸と緯糸との質量比の範囲は、好ましくはそれぞれ、経糸;1.45×10-6kg/m以上1.75×10-6kg/m未満、緯糸;1.90×10-6kg/m以上3.50×10-6kg/m以下、緯糸/経糸比;1.22以上1.75以下であり、より好ましくはそれぞれ、経糸;1.5×10-6kg/m以上1.70×10-6kg/m未満、緯糸;2.00×10-6kg/m以上3.00×10-6kg/m以下、緯糸/経糸比;1.23以上1.70以下である。
ガラスクロスには、その製造過程において、シラン処理剤を含侵塗工した後にシラン剤の塗布量を調整する工程、或いは開繊加工工程にて、物理的な負荷がかかる。また、ガラスクロスを用いてプリプレグ塗工する際も、樹脂ワニスを含侵塗工した後に樹脂ワニス量を調整し乾燥する工程等においてガラスクロスに物理的な負荷がかかる。上記工程でガラスクロスを切断させることなく安定に連続して搬送するには、経糸が一定以上の強度を有することが必要であるため、経糸の単位長さ当たりの平均質量は1.40×10-6kg/m以上である必要がある。一方、経糸として、単位長さ当たりの平均質量が1.80×10-6kg/m未満のガラス糸を用いることにより、厚さ16μm以下を維持でき、また、織り密度を例えば90本以上のように多くすることができ、ピンホールの発生を抑えられる傾向にある。
緯糸として、単位長さ当たりの平均質量が1.80×10-6kg/m以上のガラス糸を用いることにより、プリプレグ塗工時の熱硬化性樹脂の収縮に対する補強効果が高まり、波打ちの発生抑制に有利に作用する。緯糸に用いるガラス糸の単位長さ当たりの質量は、大きいほど補強効果が強くなる傾向にあり好ましいが、ガラスクロスの厚さを16μm以下に抑えるためには、緯糸の単位長さ当たりの平均質量を4.00×10-6kg/m以下とする必要がある。
また、経糸と緯糸との質量比が1.20より大きいことにより、緯糸の剛性と経糸の剛性との差が大きくなるため、緯糸に用いる糸が細く剛性が低い場合においても、製織過程における緯糸のうねりを小さく抑えることができる。また、製織工程にて、経糸に作用するライン張力のバラつきに応じて、拘束力のない状態で挿入される緯糸のうねり状態には変動が生じるが、経糸と緯糸との質量比が上記範囲にあることにより、緯糸のうねり構造の変動を小さく抑えることができる。そのため、プリプレグ塗工工程における熱硬化性樹脂の硬化収縮に対し、寸法安定効果を高めることができる。
一方、経糸と緯糸との質量比が、1.80以下である場合、経糸と緯糸の剛性の差が極端に大きくなるのを防ぎ、また、緯糸のうねり構造が適度に温存されて経糸と緯糸のうねり構造に大きな差が生じないため、プリント配線板とした時の寸法安定性の異方性を防ぐことができる。
経糸の単位長さ当たりの質量、緯糸の単位長さ当たりの質量、及び経糸と緯糸との質量比が上述した範囲にあることにより、プリント配線板としたときの寸法安定性の異方性を防ぎつつ、経糸方向及び緯糸方向の剛性を高めることができる。そのため、ライン搬送中に切断することのない強度を有し、プリプレグの波打ちの低減が可能であり、寸法変化に対する安定性に優れる、厚さ16μm以下のガラスクロスが得られる。
経糸の単位長さ当たりの平均質量、及び緯糸の単位長さ当たりの平均質量は、例えば、経糸及び緯糸を構成するフィラメントの、フィラメント径を調整すること、及び/又は、平均フィラメント数を調整すること等によって、制御することができる。
本実施形態のガラスクロスは、経糸及び緯糸の平均フィラメント数が、実質的に同じであり、且つ、経糸の平均フィラメント径が、3.7μm以上4.3μm以下であり、緯糸の平均フィラメント径が4.2μm以上5.3μm以下であり、経糸の平均フィラメント径に対する緯糸の平均フィラメント径の比(緯糸/経糸比)が、1.07以上1.40以下であるガラスクロス(以下、ガラスクロスXともいう)が好ましい。
経糸及び緯糸のフィラメント数、並びにフィラメント径が上述の範囲にあることにより、ガラスクロスの厚さを16μm以下に維持しつつ、プリント配線板の寸法安定性の異方性を防ぎ、緯糸方向の剛性の強いガラスクロスとすることができる。
経糸及び緯糸の平均フィラメント径、並びにその緯糸/経糸比の範囲は、より好ましくはそれぞれ、経糸;3.8μm以上4.2μm以下、緯糸;4.3μm以上5.2μm以下、平均フィラメント径の緯糸/経糸比;1.08以上1.25以下であり、さらに好ましくはそれぞれ、経糸;3.9μm以上4.1μm以下、緯糸;4.4μm以上5.1μm以下、平均フィラメント径の緯糸/経糸比;1.09以上1.20以下である。
経糸と緯糸の平均フィラメント数が実質的に同じとは、経糸のフィラメント数と緯糸のフィラメント数との比(緯糸/経糸比)が、0.94以上1.06以下の範囲にあることを指す。平均フィラメント数の緯糸/経糸比が0.94以上1.06以下であることにより、緯糸のフィラメント径が大きいことによる効果、すなわち、緯糸方向の剛性が発現されるため好ましい。
また、本実施形態において、経糸と緯糸の平均フィラメント数が実質的に同じ場合、経糸及び緯糸のフィラメント数は、それぞれ60本以下であることが好ましい。経糸及び緯糸のフィラメント数が60本以下の場合、ガラスクロス製造工程における物理加工によりフィラメントが拡散されやすく、ガラス糸束のZ方向のフィラメント分布を小さくできるため、ガラスクロスの厚さを低減しやすい。ガラスクロスの厚さを低減するためにはフィラメント数は少ない方が好ましいが、ガラスクロスの強度や取扱い性の観点から、経糸と緯糸の平均フィラメント数が実質的に同じ場合、経糸と緯糸の平均フィラメント数の下限は、好ましくは44本以上、より好ましくは46本以上、さらに好ましくは48本以上である。
また、本実施形態のガラスクロスは、経糸と緯糸の平均フィラメント径が、実質的に同じであり、且つ、経糸の平均フィラメント数が、45本以上70本以下であり、緯糸の平均フィラメント数が、55本以上80本以下であり、経糸の平均フィラメント数に対する緯糸の平均フィラメント数の比(緯糸/経糸比)が、1.25より大きく1.50以下であるガラスクロス(以下、ガラスクロスYともいう)が好ましい。
経糸及び緯糸のフィラメント数、並びにフィラメント径が上述の範囲にあることにより、ガラスクロスの厚さを16μm以下に維持しつつ、プリント配線板の寸法安定性を損ねることなく、緯糸方向の剛性の強いガラスクロスとすることができる。
経糸及び緯糸の平均フィラメント数、及びその比(緯糸/経糸比)の範囲は、より好ましくはそれぞれ、経糸;43本以上65本以下、緯糸;57本以上75本以下、平均フィラメント数の緯糸/経糸比;1.27以上1.45以下であり、さらに好ましくはそれぞれ、経糸;45本以上60本以下、緯糸;60本以上70本以下、平均フィラメント数の緯糸/経糸比;1.30以上1.40以下である。
経糸及び緯糸の平均フィラメント径が実質的に同じとは、経糸のフィラメント径と緯糸のフィラメント径との比(緯糸/経糸比)が、0.95以上1.05以下の範囲にあることを指す。平均フィラメント径の緯糸/経糸比が0.95以上1.05以下の範囲であることにより、緯糸のフィラメント数を大きくすることによる効果、すなわち、緯糸方向の剛性が発現されるため好ましい。
また、本実施形態において、経糸及び緯糸の平均フィラメント径が実質的に同じ場合、経糸及び緯糸のフィラメント径は、それぞれ3.8μm以上であることが好ましい。経糸及び緯糸の平均フィラメント径が3.8μm以上の場合、ガラスクロスの剛性を強くすることができる。ガラスクロスの剛性を強くするためにはフィラメント径は大きい方が好ましいが、ガラスクロスの厚さの観点から、経糸及び緯糸の平均フィラメント径が実質的に同じ場合、経糸及び緯糸のフィラメント径の上限は、好ましくは4.4μm以下、より好ましくは4.3μm以下、さらに好ましくは4.2μm以下である。
本実施形態のガラスクロスは、上述した、ガラスクロスX及びガラスクロスYの中でも、寸法安定性により優れることから、好ましくはガラスクロスXである。
本実施形態のガラスクロスは、式(1)で求められる、緯糸の長手方向(MD方向)における、緯糸の存在する部分の割合を示す係数(Y:緯糸占有率)が、76%以上90%以下であることが好ましい。
ここで、緯糸占有率Yは、緯糸の糸幅を、糸幅と緯糸の隙間の幅の和で除した値であり、式(1)で求めた値である。
Y=F/(25000/G)×100 ・・・(1)
(式(1)中、Fは、緯糸幅(μm)であり、Gは、緯糸の織密度(本/25mm)である。)
緯糸幅とは、100mm×100mmの大きさのガラスクロスサンプルを表面から顕微鏡で観察し、全ての緯糸の幅を求めた平均値である。
緯糸占有率Yは、より好ましくは78%以上89%未満、さらに好ましくは79%以上88%以下である。
本実施形態のガラスクロスは、緯糸が経糸より質量の大きいガラス糸で構成されているため、経糸の糸幅より緯糸の糸幅の方が広く、また、経糸と経糸の間の隙間より緯糸と緯糸の間の隙間の方が広くなる傾向にある。ここで、緯糸と緯糸の間の隙間を適切量確保しガラスが存在しない部位を存在させることにより、ガラスクロスに樹脂を含侵塗工する際、樹脂量を調整するために余分な樹脂を除去した後にガラスクロスのガラスが存在しない部位を通して一方の面と他方の面の樹脂とが相互に浸透し合う。これによって、ガラスクロスに対する樹脂の厚さが対象の厚さとなるプリプレグが得られる。上記の観点で、緯糸占有率Yは、90%以下であることが好ましい。
また、緯糸占有率Yが76%以上であることにより、ガラスクロス全体にガラス糸が均一に分布し、経糸と経糸の間の隙間と、緯糸と緯糸の間の隙間とで形成される、バスケットホールと呼ばれるガラス糸が存在しない部位を小さくすることができ、ピンホールの発生を抑えることができる。
さらに、本実施形態のガラスクロスは、緯糸の長手方向(MD方向)における、隣り合う緯糸同士の間の隙間幅、すなわち、緯糸と緯糸との間の間隔が、好ましくは40μm以上80μm以下であり、より好ましくは45μm以上75μm以下であり、さらに好ましくは50μm以上70μm以下である。
緯糸と緯糸との間の間隔を40μm以上80μm以下とすることにより、ガラスクロスの分布と樹脂の含侵性のバランスが適正となり、ピンホール発生を抑制し、ガラスクロスに対して樹脂が対称に塗工されることを同時に満たすことができる。
緯糸と緯糸との間の間隔は、例えば、緯糸幅及び/又は緯糸の織密度を調整することにより、制御することができる。
また、緯糸と緯糸との間の間隔は、開繊処理等を実施することによりガラスクロスを構成する糸の扁平化加工を行うことによって、糸幅を調整することもできる。
開繊処理としては、例えば、水流圧力による開繊、液体を媒体とした高周波の振動による開繊、面圧を有する流体の圧力による加工、ロールによる加圧での加工等が挙げられる。これらの開繊処理法の中では、糸幅の均一性の観点から、水流圧力による開繊、及び/又は、液体を媒体とした高周波の振動による開繊が好ましい。また、扁平化加工の効果を高める観点から、搬送のためにガラスクロスにかかる張力を小さくした状態で開繊処理等を実施することが好ましい。さらに、緯糸と緯糸との間の間隔の調整は、ガラス糸に滑剤の特性を示す有機物が付着した状態のガラスクロス、又は通常のガラスクロスを製織する際に使用されるバインダー、糊剤等が付着した状態のガラスクロスでの扁平化加工、また、開繊処理を行った後にシランカップリング剤による表面処理を施しさらに開繊処理を施すことによっても行うことができる。
本実施形態のガラスクロスを構成するガラス糸は、特に限定されるものでなく、一般にプリント配線板用途に用いられているEガラス(無アルカリガラス)を使用してもよく、あるいは、Dガラス、Lガラス、NEガラス、シリカガラス(Qガラス)等の低誘電率ガラス、Sガラス、Tガラス等の高強度ガラス、Hガラス等の高誘電率ガラス等を使用してもよい。
ガラスクロスの織り構造としては、特に限定されないが、例えば、平織り、ななこ織り、朱子織り、綾織り等の織り構造が挙げられる。さらに異種のガラス糸を用いた混織構造でもよい。この中でも、平織り構造が好ましい。
また、プリント配線板等に使用される積層板を構成するガラスクロスには、通常シランカップリング剤を含んだ処理液による表面処理が施されていてもよい。該シランカップリング剤としては、一般に用いられるシランカップリング剤を使用することができ、必要に応じて、酸、染料、顔料、界面活性剤等を添加してもよい。
シランカップリング剤としては、例えば、式(2)で示されるシランカップリング剤を使用することが好ましい。
X(R)3-nSiYn ・・・(2)
式(2)中、Xは、アミノ基及び不飽和二重結合基のうち少なくとも1つを有する有機官能基であり、Yは、各々独立して、アルコキシ基であり、nは、1以上3以下の整数であり、Rは、各々独立して、メチル基、エチル基及びフェニル基からなる群より選ばれる基である。
Xは、アミノ基及び不飽和二重結合基のうち少なくとも3つ以上を有する有機官能基であることが好ましく、Xは、アミノ基及び不飽和二重結合基のうち少なくとも4つ以上を有する有機官能基であることがより好ましい。
上記のアルコキシ基としては、いずれの形態も使用できるが、ガラスクロスへの安定処理化の観点から、炭素数5以下のアルコキシ基が好ましい。
シランカップリング剤としては、具体的には、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びその塩酸塩、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン及びその塩酸塩、N−β−(N−ジ(ビニルベンジル)アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びその塩酸塩、N−β−(N−ジ(ビニルベンジル)アミノエチル)−N−γ−(N−ビニルベンジル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びその塩酸塩、N−β−(N−ベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びその塩酸塩、N−β−(N−ベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリ同エトキシシラン及びその塩酸塩、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の公知の単体、又はこれらの混合物が挙げられる。
シランカップリング剤の分子量は、好ましくは100〜600であり、より好ましくは150〜500であり、さらに好ましくは200〜450である。この中でも、分子量が異なる2種類以上のシランカップリング剤を用いることが好ましい。分子量が異なる2種類以上のシランカップリング剤を用いてガラス糸表面を処理することにより、ガラス表面での処理剤密度が高くなり、マトリックス樹脂との反応性がさらに向上する傾向にある。
ガラスクロスの強熱減量値は、好ましくは0.10質量%以上1.20質量%以下であり、より好ましくは0.11質量%以上1.10質量%以下であり、さらに好ましくは0.12質量%以上1.00質量%以下である。強熱減量値が0.10質量%以上1.2質量%以下であることにより、従来よりもプリプレグの搬送性、すなわち、ハンドリング性を向上することができる。また、樹脂とガラスクロスとが界面で剥がれやすくなることに由来する基板の絶縁信頼性の低下を抑制でき、また、メッキ液がガラスクロスに染み込むことに由来する基板の絶縁信頼性の低下を抑制できる傾向にある。
ここでいう「強熱減量値」とは、JIS R 3420に記載されている方法に従って測定することができる。すなわち、まずガラスクロスを110℃の乾燥機の中に入れ、60分間乾燥する。乾燥後、ガラスクロスをデシケータに移し、20分間置き、室温まで放冷する。放冷後、ガラスクロスを0.1mg以下の単位で量る。次に、ガラスクロスをマッフル炉で625℃、20分間加熱する。マッフル炉で加熱後、ガラスクロスをデシケータに移し、20分間置き、室温まで放冷する。放冷後、ガラスクロスを0.1mg以下の単位で量る。以上の測定方法で求める強熱減量値により、ガラスクロスのシランカップリング剤処理量を定義する。
<ガラスクロスの製造方法>
本実施形態のガラスクロスの製造方法は、特に限定されないが、例えば、シランカップリング剤の濃度が0.1〜3.0wt%である処理液によってほぼ完全にガラスフィラメントの表面をシランカップリング剤で覆う被覆工程と、加熱乾燥によりシランカップリング剤をガラスフィラメントの表面に固着させる固着工程と、ガラスクロスのガラス糸を開繊する開繊工程と、を有する方法が好適に挙げられる。
シランカップリング剤を溶解又は分散させる溶媒としては、水、又は有機溶媒のいずれも使用できるが、安全性、地球環境保護の観点から、水を主溶媒とすることが好ましい。水を主溶媒とした処理液を得る方法としては、シランカップリング剤を直接水に投入する方法、シランカップリング剤を水溶性有機溶媒に溶解させて有機溶媒溶液とした後に該有機溶媒溶液を水に投入する方法、のいずれかの方法が好ましい。シランカップリング剤の処理液中での水分散性、安定性を向上させるために、界面活性剤を併用することも可能である。
処理液をガラスクロスに塗布する方法としては、(ア)処理液をバスに溜め、ガラスクロスを浸漬、通過させる方法(以下、「浸漬法」という。)、(イ)ロールコーター、ダイコーター、又はグラビアコーター等で処理液をガラスクロスに直接塗布する方法等が挙げられる。上記(ア)の浸漬法にて塗布する場合は、ガラスクロスの処理液への浸漬時間を0.5秒以上、1分以下にすることが好ましい。
また、ガラスクロスに処理液を塗布した後、溶媒を加熱乾燥させる方法としては、熱風、電磁波等公知の方法が挙げられる。
加熱乾燥温度は、シランカップリング剤とガラスとの反応が十分に行われるように、好ましくは90℃以上であり、より好ましくは100℃以上である。また、加熱乾燥温度は、シランカップリング剤が有する有機官能基の劣化を防ぐために、好ましくは300℃以下であり、より好ましくは200℃以下である。
また、開繊工程の開繊方法としては、特に限定されないが、例えば、ガラスクロスを、スプレー水(高圧水開繊)、バイブロウォッシャー、超音波水、マングル等で開繊加工する方法が挙げられる。バスケットホールの総面積を一定の範囲に保つためには、スプレー水により開繊工程を行うことが好ましい。
スプレー水で開繊する場合、水圧は適宜設定すればよく、ガラスクロスに存在するバスケットホールの総面積を調整するために、水圧は一定にすることが好ましい。ここで、水圧を一定にするとは、開繊を実施するために設定したスプレーの水圧と、実際の水圧の最大値、最小値との差を小さくすることを指す。開繊工程前後においても、加熱乾燥させる工程を有していてもよい。
<プリプレグ>
本実施形態の一つは、本実施形態のガラスクロスと、マトリックス樹脂と、から構成される、プリプレグ(以下、プリプレグAという。)である。マトリックス樹脂は、該ガラスクロスに含侵している。
また、本実施形態の一つは、複数本のガラスフィラメントからなるガラス糸を経糸及び緯糸として製織してなる厚さ8μm以上16μm以下のガラスクロスと、マトリックス樹脂と、から構成される、プリプレグ(以下、プリプレグBという。)である。マトリックス樹脂は、該ガラスクロスに含侵している。
また、プリプレグBは、以下の1)〜3);
1)樹脂含量50%以上76質量%以下であること、
2)ガラスクロスの一方の面側に位置する第1樹脂層の厚さと、前記ガラスクロスの他方の面側に位置する第2樹脂層の厚さの比が0.8以上1.2以下であること、
3)波打ち量が3mm未満であること、
を満たす。
本実施形態のプリプレグの構成物であるガラスクロスは、好ましくは、本実施形態のガラスクロスである。本実施形態のガラスクロスを用いることにより、プリプレグ塗工時に波打ちが軽減され、寸法変化の安定性に優れるプリプレグが得られる。
本実施形態のプリプレグBにおける樹脂含量は、プリプレグBの全量を100質量%としたとき、50質量%以上76質量%であり、好ましくは52質量%以上73質量%以下であり、より好ましくは54質量%以上70質量%以下である。樹脂含量が50質量%以上76質量%であることにより、電子機器の高機能化に対応可能である。
また、本実施形態のプリプレグBにおける、ガラスクロスの一方の面側に位置する第1樹脂層の厚さと、前記ガラスクロスの他方の面側に位置する第2樹脂層の厚さの比は、0.70以上1.30以下であり、好ましくは0.80以上1.20以下であり、より好ましくは0.85以上1.15以下である。
第1樹脂層の厚さと、第2樹脂層の厚さとの比が0.70以上1.30以下であることによって、厚さ16μm以下の薄いガラスクロスにおいても、プリプレグの波打ちが抑えられる。
また、本実施形態のプリプレグBにおける波打ち量は、3mm以下であり、好ましくは2mm以下、より好ましくは1mm以下である。
プリプレグの波打ちが3mm以下であることにより、プリプレグを加熱加圧成形する際に、ガラスクロスを形成するガラス糸の目曲がり等の歪の発生を抑制できるためと類推されるが、寸法変化の安定性に優れるため好ましい。
ここで、プリプレグの波打ちとは、以下のようにして求めた値である。
プリプレグを340mm×510mmの寸法にカットして、波打ち量測定用の試験片とする。図2に示すように、表面が平坦な測定台1に載置し、プリプレグ2に発生する波打ちの高さ3を計測し、その最大値を「波打ち量」と定義する。
本実施形態のプリプレグは、常法に従って製造することができる。例えば、ガラスクロスに、マトリックス樹脂を有機溶剤で希釈したワニスを含浸させた後、乾燥炉にて有機溶剤を揮発させ、熱硬化性樹脂をBステージ状態、すなわち、半硬化状態にまで硬化させて樹脂含浸プリプレグを作製することができる。
マトリックス樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれも使用可能である。
熱硬化性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、a)エポキシ基を有する化合物と、エポキシ基と反応する、アミノ基、フェノール基、酸無水物基、ヒドラジド基、イソシアネート基、シアネート基、及び水酸基等の少なくとも1つを有する化合物と、を、無触媒で、又は、イミダゾール化合物、3級アミン化合物、尿素化合物、燐化合物等の反応触媒能を持つ触媒を添加して、反応させて硬化させるエポキシ樹脂;b)アリル基、メタクリル基、及びアクリル基の少なくとも1つを有する化合物を、熱分解型触媒、又は光分解型触媒を反応開始剤として使用して、硬化させるラジカル重合型硬化樹脂;c)シアネート基を有する化合物と、マレイミド基を有する化合物と、を反応させて硬化させるマレイミドトリアジン樹脂;d)マレイミド化合物と、アミン化合物と、を反応させて硬化させる熱硬化性ポリイミド樹脂;e)ベンゾオキサジン環を有する化合物を加熱重合により架橋硬化させるベンゾオキサジン樹脂等が挙げられる。
また、熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリスルホン、ポリエーテルスルフォン、ポリアリレート、芳香族ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、熱可塑性ポリイミド、不溶性ポリイミド、ポリアミドイミド、フッ素樹脂等が挙げられる。
また、熱硬化性樹脂と、熱可塑性樹脂を併用してもよい。
<プリント配線板>
本実施形態の一つは、本実施形態のプリプレグを用いて製造されるプリント配線板、すなわち、本実施形態のプリプレグを用いて作製されたプリント配線板である。本実施形態のプリプレグを用いてプリント配線板を製造することにより、高品質で、配線回路の正確なプリント配線板を提供することができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
実施例及び比較例において、各物性は、以下の方法によって測定した。
(1)ガラスクロスの物性
ガラスクロスの物性、具体的には、ガラスクロスの厚さ、ガラスクロスの質量、経糸及び緯糸の質量、経糸及び緯糸を構成するフィラメントの径、フィラメント数、経糸の織密度は、JIS R3420に従い測定した。経糸幅、緯糸幅、長手方向(MD方向)における隣り合う緯糸同士の間の隙間幅は、ガラスクロスの任意の位置の100mm×100mm以上の大きさの箇所を観察して求めた。
(2)プリプレグの波打ち評価
実施例及び比較例で得られたプリプレグを340mm×510mmの寸法にカットし試験片を得た。この試験片を図2に示すように表面が平坦な測定台1に載置してプリプレグ2に発生した波打ちの高さ3を計測し、その最大値を「波打ち量」とした。
(3)ピンホール
実施例及び比較例で得られたプリプレグを500mm×500mmの寸法にカットして試験片を得た。試験片を20倍の拡大鏡で観察しピンホールの個数を求めた。
(4)緯糸方向の寸法安定性評価
実施例及び比較例で得られたプリプレグを340mm×340mmの大きさにカットし、該プリプレグを2枚積層し、次いで両表面に厚さ12μmの銅箔を配置し後、195℃、40kgf/cm2で圧縮成型し試験基板を得た。得られた試験基板に、125mm間隔となるよう、タテ方向3カ所×ヨコ方向3カ所の合計9カ所に標点をつけた。そして、タテ方向、ヨコ方向のそれぞれについて、隣接する2標点の標点間隔6箇所を測定した(測定値a)。次に、エッチング処理によって鋼箔を取り除き、170℃で30分加熱した後、該標点間隔を再度測定した(測定値b)。緯糸方向について、測定値aと測定値bの差の測定値aに対する割合を算出し、緯糸方向の各基準点間の寸法変化率を求めた(計6点)。上記の試験を3回行った。
3回分の各基準点間の寸法変化率(6点×3回=18の寸法変化率の値)の平均値を求め、緯糸方向の寸法変化率とした。また、全18の寸法変化率の値の標準偏差を求め、緯糸方向の寸法変化利率のバラツキとした。
<実施例1>
経糸として、平均フィラメント径4.0μm、フィラメント数50本、撚り数1.0Z、単位長さ辺りの重量1.65×10-6kg/mのEガラスの糸、緯糸として、平均フィラメント径4.5μm、フィラメント数50本、撚り数1.0Z、単位長さ辺りの重量2.07×10-6kg/mのEガラスの糸を使用し、エアジェットルームを用い、経糸93.5本/25mm、緯糸60本/25mmの織密度でガラスクロスを製織した。得られた生機に400℃で24時間加熱処理し脱糊した。次いで、シランカップリング剤である、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン;SZ6032(東レ・ダウコーニング社製)を用いた処理液にガラスクロスを浸漬し、絞液後、120℃で1分乾燥し、さらに高圧水スプレーによる開繊を実施し、重量11.2g/m2、厚さ12μmのガラスクロスAを得た。ガラスクロスAの経糸及び緯糸の糸幅は、それぞれ134μm、267μmであり、緯糸占有率は64%、緯糸の隙間は150μmであった。
ガラスクロスAを塗工試験用に幅650mmに加工し、エポキシ樹脂ワニスを用いてプリプレグ塗工試験を行った。なお、エポキシ樹脂ワニスは、低臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂80質量部、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂20質量部、ジシアンジアミド2質量部、2−エチル−4−メチルイミダゾール0.2質量部、2−メトキシ−エタノール100質量部を配合して調合した。ガラスクロスを3m/minの速度で搬送させ、エポキシ樹脂ワニスにガラスクロスAを浸漬し、樹脂含量が68質量%になるように隙間を調整したスリットを通して余分なワニスを掻き落とした後、乾燥温度170℃、乾燥時間1分30秒の条件で乾燥し、該エポキシ樹脂を半硬化(Bステージ化)させ、プリプレグAを得た。
<実施例2>
緯糸の織密度を70本/25mmとしたこと以外は、実施例1と同様の方法でガラスクロスの製織とそれに次ぐ処理を行い、重量12.1g/m2、厚さ13μmのガラスクロスBを得た。ガラスクロスBの経糸及び緯糸の糸幅は、それぞれ139μm、285μmであり、緯糸占有率は80%、緯糸の隙間は72μmであった。
ガラスクロスBを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、プリプレグBを得た。
<実施例3>
緯糸の織密度を75本/25mmとしたこと以外は、実施例1と同様の方法でガラスクロスの製織とそれに次ぐ処理を行い、重量12.5g/m2、厚さ14μmのガラスクロスCを得た。ガラスクロスCの経糸及び緯糸の糸幅は、それぞれ137μm、276μmであり、緯糸占有率は83%、緯糸の隙間は57μmであった。
ガラスクロスCを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、プリプレグCを得た。
<実施例4>
緯糸の織密度を78本/25mmとしたこと以外は、実施例1と同様の方法でガラスクロスの製織とそれに次ぐ処理を行い、重量12.8g/m2、厚さ14μmのガラスクロスDを得た。ガラスクロスDの経糸と緯糸の糸幅はそれぞれ135μm、274μmであり、緯糸占有率は85%、緯糸の隙間は47μmであった。
ガラスクロスDを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、プリプレグDを得た。
<実施例5>
緯糸の織密度を81本/25mmとしたこと以外は、実施例1と同様の方法でガラスクロスの製織とそれに次ぐ処理を行い、重量13.0g/m2、厚さ15μmのガラスクロスEを得た。ガラスクロスEの経糸及び緯糸の糸幅は、それぞれ134μm、268μmであり、緯糸占有率は87%、緯糸の隙間は41μmであった。
ガラスクロスEを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、プリプレグEを得た。
<実施例6>
緯糸の織密度を85本/25mmとしたこと以外は、実施例1と同様の方法でガラスクロスの製織とそれに次ぐ処理を行い、重量13.3g/m2、厚さ16μmのガラスクロスFを得た。ガラスクロスFの経糸及び緯糸の糸幅は、それぞれ131μm、266μmであり、緯糸占有率は90%、緯糸の隙間は28μmであった。
ガラスクロスFを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、プリプレグFを得た。
<実施例7>
緯糸に平均フィラメント径4.0μm、フィラメント数67本、撚り数1.0Z、単位長さ辺りの重量2.20×10-6kg/mのガラス糸を使用し、且つ、緯糸の織密度を65本/25mmとしたこと以外は、実施例1と同様の方法でガラスクロスの製織とそれに次ぐ処理を行い、重量11.9g/m2、厚さ13μmのガラスクロスGを得た。ガラスクロスGの経糸及び緯糸の糸幅は、それぞれ150μm、284μmであり、緯糸占有率は74%、緯糸の隙間は101μmであった。
ガラスクロスGを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、プリプレグGを得た。
<実施例8>
緯糸の織密度を72本/25mmとしたこと以外は、実施例7と同様の方法でガラスクロスの製織とそれに次ぐ処理を行い、重量12.5g/m2、厚さ14μmのガラスクロスHを得た。ガラスクロスHの経糸及び緯糸の糸幅は、それぞれ148μm、281μmであり、緯糸占有率は81%、緯糸の隙間は66μmであった。
ガラスクロスHを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、プリプレグHを得た。
<実施例9>
緯糸の織密度を75本/25mmとしたこと以外は、実施例7と同様の方法でガラスクロスの製織とそれに次ぐ処理を行い、重量12.8g/m2、厚さ14μmのガラスクロスIを得た。ガラスクロスIの経糸及び緯糸の糸幅は、それぞれ146μm、277μmであり、緯糸占有率は83%、緯糸の隙間は56μmであった。
ガラスクロスIを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、プリプレグIを得た。
<実施例10>
緯糸に平均フィラメント径5.0μm、フィラメント数50本、撚り数1.0Z、単位長さ辺りの重量2.76×10-6kg/mのガラス糸を使用し、且つ、緯糸の織密度を57本/25mmとしたこと以外は、実施例1と同様の方法でガラスクロスの製織とそれに次ぐ処理を行い、重量12.6g/m2、厚さ15μmのガラスクロスJを得た。ガラスクロスJの経糸及び緯糸の糸幅は、それぞれ161μm、273μmであり、緯糸占有率は62%、緯糸の隙間は166μmであった。
ガラスクロスJを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、プリプレグJを得た。
<比較例1>
緯糸に平均フィラメント径4.0μm、フィラメント数50本、撚り数1.0Z、単位長さ辺りの重量1.65×10-6kg/mのガラス糸を使用し、且つ、緯糸の織密度を93.5本/25mmとしたこと以外は、実施例1と同様の方法でガラスクロスの製織とそれに次ぐ処理を行い、重量12.5g/m2、厚さ14μmのガラスクロスKを得た。ガラスクロスKの経糸及び緯糸の糸幅は、それぞれ132μm、222μmであり、緯糸占有率は83%、緯糸の隙間は45μmであった。
ガラスクロスKを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、プリプレグKを得た。
<比較例2>
緯糸及び経糸に、平均フィラメント径4.0μm、フィラメント数40本、撚り数1.0Z、単位長さ辺りの重量1.32×10-6kg/mのガラス糸を使用し、且つ、経糸及び緯糸の織密度を95本/25mmとしたこと以外は、実施例1と同様の方法でガラスクロスの製織とそれに次ぐ処理を行い、重量10.2g/m2、厚さ11μmのガラスクロスLを得た。ガラスクロスLの経糸及び緯糸の糸幅は、それぞれ156μm、175μmであり、緯糸占有率は67%、緯糸の隙間は88μmであった。
ガラスクロスLを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、プリプレグLを得た。
<比較例3>
経糸に平均フィラメント径4.0μm、フィラメント数40本、撚り数1.0Z、単位長さ辺りの重量1.32×10-6kg/mのガラス糸、緯糸に平均フィラメント径4.0μm、フィラメント数50本、撚り数1.0Z、単位長さ辺りの重量1.65×10-6kg/mのガラス糸を使用し、且つ、経糸の織密度を95本/25mm、緯糸の織密度を95本/mとしたこと以外は、実施例1と同様の方法でガラスクロスの製織とそれに次ぐ処理を行い、重量10.4g/m2、厚さ13μmのガラスクロスMを得た。ガラスクロスMの経糸及び緯糸の糸幅はそれぞれ156μm、213μmであり、緯糸占有率は81%、緯糸の隙間は50μmであった。
ガラスクロスMを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、プリプレグMを得た。
<比較例4>
緯糸の織密度を76本/25mmとしたこと以外は、比較例2と同様の方法でガラスクロスの製織とそれに次ぐ処理を行い、重量9.1g/m2、厚さ12μmのガラスクロスNを得た。ガラスクロスNの経糸及び緯糸の糸幅は、それぞれ160μm、228μmであり、緯糸占有率は69%、緯糸の隙間は101μmであった。
ガラスクロスNを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、プリプレグMを得た。
<比較例5>
比較例1と同様の方法によりガラスクロスの製織を行った。得られた生機に4.9N/mの張力下で高圧散水流による開繊加工(加工圧196N/cm2)方法を施した。その後400℃で24時間加熱処理し脱糊した。続いて、シランカップリング剤である、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン;SZ6032(東レ、ダウコーニング社製)を用いた処理液にガラスのクロスを浸漬し、絞液後、120℃で1分乾燥し、重量12.5g/m2、厚さ14μmのガラスクロスOを得た。なお、ガラスクロスの化学的、物理的処理は、特許文献4:特許第3897789号の実施例2の方法に準拠した。ガラスクロスOの経糸及び緯糸の糸幅は、それぞれ148μm、165μmであり、緯糸占有率は62%、緯糸の隙間は102μmであった。
ガラスクロスOを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、プリプレグMを得た。
<比較例6>
経糸、緯糸ともに平均フィラメント径4.0μm、フィラメント数100本、撚り数1.0Z、単位長さ当たりの重量3.31×10-6kg/mのEガラスの糸を使用し、且つ、経糸、緯糸ともに織密度を100本/25mmとしたこと以外は、実施例1と同様の方法でガラスクロスの製織とそれに次ぐ処理を行い、重量22.0g/m2、厚さ20μmのガラスクロスPを得た。
ガラスクロスPを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、プリプレグPを得た。
<比較例7>
経糸に平均フィラメント径4.0μm、フィラメント数100本、撚り数1.0Z、単位長さ当たりの重量3.30×10-6kg/mのEガラスの糸、緯糸に平均フィラメント径4.5μm、フィラメント数100本、撚り数1.0Z、単位長さ当たりの重量4.13×10-6kg/mのEガラスの糸を使用し、且つ、経糸の織密度を75本/25mm、緯糸の織密度を60本/25mmとしたこと以外は、実施例1と同様の方法でガラスクロスの製織とそれに次ぐ処理を行い、重量20.0g/m2、厚さ19μmのガラスクロスQを得た。
ガラスクロスQを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、プリプレグQを得た。
[性能試験]
実施例1〜10、比較例1〜7で得られたプリプレグA〜Qについて各種評価を行った。結果を表1及び表2に併記する。
表1の結果から、実施例1〜10で得られたプリプレグA〜Jは、いずれも波打ちの発生が少なく、緯糸方向の寸法変化量、及びそのバラつきが小さいものであった。比較例1、2、6のプリプレグK、L、Qは、それぞれIPC登録の市場に流通している1017、1010、1027スタイルのガラスクロスを用いて作製したプリプレグである。実施例のプリプレグは、これら比較例1、2、6のプリプレグと比べて、波打ちが少なく、緯糸方向の寸法変化量及びそのバラつきの点において、いずれも優れていた。
比較例3のプリプレグMは、特許文献1の実施例1及び特許文献2の実施例1の糸使いと同じ構成のガラスクロスを用いて作製したプリプレグである。比較例3のプリプレグMは、経糸の構成が同じ比較例2のガラスクロスL(IPC登録の1010)と比較すると、緯糸の寸法変化量は低減しているが、バラつきは大きいものであった。
比較例5は、特許文献4に開示されているように、低張力条件で開繊加工し、緯糸と経糸の糸幅を同等、すなわち、緯糸/経糸比を0.8〜1.2の範囲としたガラスクロスに相当し、当該ガラスクロスから得られるプリプレグである。特許文献4に寸法安定性に優れると記載されているが、プリプレグOは、波打ちが大きく、寸法変化のバラつきが大きかった。
比較例7のプリプレグQは、特許文献3の実施例3と経糸と緯糸の構成が同じガラスクロスQを用いて作製したプリプレグに相当する。ガラスクロスQの厚さは19μmであり、やはり厚さの薄いガラスクロスとはならなかった。また、プリプレグQは、ガラスクロスの両面の樹脂層厚さの均一性に欠け、波打ちが少し発生した。寸法変化のバラつきも、実施例1〜10に比較すると大きかった。
本発明のガラスクロス及びプリプレグは、電子及び電気分野で使用されるプリント配線板に用いられる基材として産業上の利用可能性を有する。
1 :測定台
2 :プリプレグ
3 :波打ちの高さ

Claims (10)

  1. 複数本のガラスフィラメントからなるガラス糸を経糸及び緯糸として製織してなる、厚さ8μm以上16μm以下のガラスクロスであって、
    経糸の単位長さ当たりの平均質量が、1.40×10-6kg/m以上1.80×10-6kg/m未満、
    緯糸の単位長さ当たりの平均質量が、1.80×10-6kg/m以上4.00×10-6kg/m以下であり、
    経糸の単位長さ当たりの平均質量に対する、緯糸の単位長さ当たりの平均質量の比(緯糸/経糸比)が、1.20より大きく1.80以下である、ガラスクロス。
  2. 経糸及び緯糸の平均フィラメント数が、実質的に同じであり、且つ、
    経糸の平均フィラメント径が、3.7μm以上4.3μm以下であり、
    緯糸の平均フィラメント径が、4.2μm以上5.3μm以下であり、
    経糸の平均フィラメント径に対する緯糸の平均フィラメント径の比(緯糸/経糸比)が、1.07以上1.40以下である、請求項1に記載のガラスクロス。
  3. 経糸と緯糸の平均フィラメント径が、実質的に同じであり、且つ、
    経糸の平均フィラメント数が、45本以上70本以下であり、
    緯糸の平均フィラメント数が、55本以上80本以下であり、
    経糸の平均フィラメント数に対する緯糸の平均フィラメント数の比(緯糸/経糸比)が、1.25より大きく1.50以下である、請求項1に記載のガラスクロス。
  4. 式(1)で求められる、緯糸の長手方向(MD方向)における、緯糸の存在する部分の割合を示す係数(Y:緯糸占有率)が、76%以上90%以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のガラスクロス。
    Y=F/(25000/G)×100 ・・・(1)
    (式(1)中、Fは、緯糸幅(μm)であり、Gは、緯糸の織密度(本/25mm)である。)
  5. 長手方向(MD方向)における、隣り合う緯糸同士の間の隙間幅が、40μm以上80μm以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のガラスクロス。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載のガラスクロスと、マトリックス樹脂と、から構成される、プリプレグ。
  7. 複数本のガラスフィラメントからなるガラス糸を経糸及び緯糸として製織してなる厚さ8μm以上16μm以下のガラスクロスと、マトリクス樹脂と、から構成される、プリプレグであって、
    以下の1)〜3);
    1)樹脂含量50%以上76質量%以下であること、
    2)ガラスクロスの一方の面側に位置する第1樹脂層の厚さと、前記ガラスクロスの他方の面側に位置する第2樹脂層の厚さの比が0.7以上1.3以下であること、
    3)波打ち量が3mm未満であること、
    を満たす、プリプレグ。
  8. 前記ガラスクロスが、請求項1〜5のいずれか一項に記載のガラスクロスである、請求項7に記載のプリプレグ。
  9. 長手方向(MD方向)における、隣り合う緯糸同士の間の隙間幅が、40μm以上80μm以下である、請求項7又は8に記載のプリプレグ。
  10. 請求項6〜9のいずれか一項に記載のプリプレグを用いて作製されたプリント配線板。
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