本発明の液体現像剤は、結着樹脂及び着色剤を含有するトナー粒子、分散剤、及び絶縁性液体を含有する液体現像剤であって、前記結着樹脂がポリエステル系樹脂を含有し、前記絶縁性液体が、炭素数8以上16以下の飽和脂肪酸と炭素数3以上のアルコールとのエステルである飽和脂肪酸エステルを50質量%以上含有するものであり、小粒径、低粘度かつ保存安定性及び低温定着性に優れるものである。
このような効果を奏する理由は定かではないが、以下のように考えられる。
飽和脂肪酸エステルは、エステル結合を有するためポリエステル系樹脂と親和性が高く、樹脂中に浸透し樹脂を可塑化させるため低温定着性に優れる。また、飽和脂肪酸エステルがポリエステル系樹脂と基材(紙等)の界面に存在する場合、飽和脂肪酸エステル中のエステル結合がポリエステル系樹脂と基材(紙等)の両方に相互作用し、樹脂の基材への接着効果を高めるため低温定着性に優れる。一方で、樹脂の可塑効果が過剰になるとトナー粒子同士が融着や凝集を起こし、粒子の粗大化や増粘が発生しやすくなる。
そこで、本発明者らが鋭意検討した結果、飽和脂肪酸エステルを構成する飽和脂肪酸とアルコールの分子構造が可塑化の度合いを制御するために重要であることを見出した。炭素数8以上16以下の飽和脂肪酸と炭素数3以上のアルコールとのエステルである飽和脂肪酸エステルを用いることで、分子鎖が適度に嵩高くなり、樹脂への過剰な浸透や可塑化が抑制されるため、小粒径、低粘度かつ、優れた低温定着性と保存安定性が得られると考えられる。
結着樹脂は、ポリエステル系樹脂を含む。ポリエステル系樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂と他の樹脂、好ましくはスチレン系樹脂とを有する複合樹脂等が挙げられる。
ポリエステル樹脂は、2価以上のアルコールを含むアルコール成分と2価以上のカルボン酸系化合物を含むカルボン酸成分との重縮合物が好ましい。
2価のアルコールとしては、例えば、脂肪族ジオール、好ましくは炭素数2以上20以下、より好ましくは炭素数2以上15以下の脂肪族ジオールや、式(I):
(式中、OR及びROはオキシアルキレン基であり、Rはエチレン及び/又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の値は、1以上、好ましくは1.5以上であり、そして、16以下、好ましくは8以下、より好ましくは6以下、さらに好ましくは4以下である)
で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。脂肪族ジオールとして、具体的には、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等が挙げられ、これらの中では、炭素数2以上4以下の第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールが好ましい。
アルコール成分としては、トナーの粉砕性を向上させて小粒径のトナー粒子を得る観点、トナーの低温定着性を向上させる観点、及びトナー粒子の分散安定性を向上させて保存安定性を向上させる観点から、脂肪族ジオール又は式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物が好ましく、トナーの粉砕性を向上させて小粒径のトナー粒子を得る観点、及びトナー粒子の分散安定性を向上させて保存安定性を向上させる観点から、脂肪族ジオールがより好ましく、炭素数2以上4以下の第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールがさらに好ましい。脂肪族ジオール又は式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の含有量は、アルコール成分中、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは100モル%である。脂肪族ジオール及び式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物が併用されている場合は、両者の総含有量が、上記範囲内であることが好ましい。
2価のカルボン酸系化合物としては、例えば、炭素数3以上30以下、好ましくは炭素数3以上20以下、より好ましくは炭素数3以上10以下のジカルボン酸、それらの無水物、又はアルキル基の炭素数が1以上3以下のアルキルエステル等の誘導体等が挙げられる。ジカルボン酸の具体例としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸や、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸等の脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。
カルボン酸成分としては、トナーの低温定着性を向上させる観点、及びトナー粒子の分散安定性を向上させて保存安定性を向上させる観点から、テレフタル酸又は/及びフマル酸が好ましい。テレフタル酸又はフマル酸の含有量は、カルボン酸成分中、好ましくは40モル%以上、より好ましくは50モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上である。テレフタル酸及びフマル酸が併用されている場合は、両者の総含有量が、上記範囲内であることが好ましい。
3価以上のカルボン酸系化合物としては、例えば、炭素数4以上20以下、好ましくは炭素数6以上20以下、より好ましくは炭素数7以上15以下、さらに好ましくは炭素数8以上12以下、さらに好ましくは炭素数9以上10以下の3価以上のカルボン酸、それらの無水物、又はアルキル基の炭素数が1以上3以下のアルキルエステル等の誘導体等が挙げられる。具体的には、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸(ピロメリット酸)、又はそれらの酸無水物等が挙げられる。
3価以上のカルボン酸系化合物の含有量は、カルボン酸成分中、好ましくは60モル%以下、より好ましくは50モル%以下、さらに好ましくは30モル%以下、さらに好ましくは25モル%以下、さらに好ましくは20モル%以下、さらに好ましくは15モル%以下である。
なお、アルコール成分には1価のアルコールが、カルボン酸成分には1価のカルボン酸系化合物が、ポリエステル樹脂の分子量及び軟化点を調整する観点から、適宜含有されていてもよい。
ポリエステル樹脂におけるカルボン酸成分とアルコール成分との当量比(COOH基/OH基)は、ポリエステル樹脂の軟化点を調整する観点から、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.7以上、さらに好ましくは0.75以上であり、そして、好ましくは1.1以下、より好ましくは1.05以下である。
ポリエステル樹脂は、例えば、アルコール成分とカルボン酸成分とを不活性ガス雰囲気中、好ましくはエステル化触媒の存在下、さらに必要に応じて、エステル化助触媒、重合禁止剤等の存在下、好ましくは130℃以上、より好ましくは170℃以上、そして、好ましくは250℃以下、より好ましくは240℃以下の温度で重縮合させて製造することができる。
エステル化触媒としては、酸化ジブチル錫、2-エチルヘキサン酸錫(II)等の錫化合物、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のチタン化合物等が挙げられ、錫化合物が好ましい。エステル化触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、そして、好ましくは1.5質量部以下、より好ましくは1質量部以下である。エステル化助触媒としては、没食子酸等が挙げられる。エステル化助触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下である。重合禁止剤としては、t-ブチルカテコール等が挙げられる。重合禁止剤の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下である。
なお、本発明において、ポリエステル樹脂は、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステル樹脂であってもよい。変性されたポリエステル樹脂としては、例えば、特開平11−133668号公報、特開平10−239903号公報、特開平8−20636号公報等に記載の方法によりフェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステル樹脂が挙げられるが、変性されたポリエステル樹脂のなかでは、ポリエステル樹脂をポリイソシアネート化合物でウレタン伸長したウレタン変性ポリエステル樹脂が好ましい。
ポリエステル樹脂とスチレン系樹脂とを有する複合樹脂としては、例えば、特開2017−062379号公報に記載の方法により、ポリエステル樹脂の原料モノマー及びスチレン系樹脂の原料モノマーのいずれとも反応し得る、両反応性モノマーを介してポリエステル樹脂とスチレン系樹脂が化学結合した樹脂が挙げられる。
ポリエステル系樹脂の軟化点は、トナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、好ましくは85℃以上、より好ましくは90℃以上であり、そして、トナーの低温定着性を向上させる観点から、好ましくは130℃以下、より好ましくは120℃以下、さらに好ましくは110℃以下である。
ポリエステル系樹脂のガラス転移温度は、トナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、好ましくは45℃以上、より好ましくは50℃以上であり、そして、低温定着性を向上させる観点から、好ましくは80℃以下、より好ましくは75℃以下、さらに好ましくは60℃以下である。
ポリエステル系樹脂の酸価は、好ましくは3mgKOH/g以上、より好ましくは5mgKOH/g以上であり、そして、トナー粒子の分散安定性の観点から、好ましくは90mgKOH/g以下、より好ましくは80mgKOH/g以下、さらに好ましくは70mgKOH/g以下、さらに好ましくは50mgKOH/g以下、さらに好ましくは30mgKOH/g以下、さらに好ましくは20mgKOH/g以下、さらに好ましくは15mgKOH/g以下、さらに好ましくは10mgKOH/g以下である。
ポリエステル系樹脂の含有量は、結着樹脂中、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、100質量%、即ち、ポリエステル系樹脂のみを用いることがさらに好ましい。ただし、本発明の効果が損なわれない範囲において、ポリエステル系樹脂以外の他の樹脂を含有してもよい。上記ポリエステル系樹脂以外の樹脂としては、例えば、ポリスチレン、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体等のスチレンもしくはスチレン置換体を含む単重合体又は共重合体であるスチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、フェノール系樹脂、脂肪族又は脂環式炭化水素樹脂等の樹脂から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等を使用することができる。例えば、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン−Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、イソインドリン、ジスアゾエロー等が挙げられる。なお、本発明において、トナー粒子は、黒用トナー、カラー用トナーのいずれであってもよい。
着色剤の含有量は、画像濃度を向上させる観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、さらに好ましくは15質量部以上であり、そして、トナーの粉砕性を向上させて小粒径にできる観点、低温定着性を向上させる観点、及びトナー粒子の分散安定性を向上させて保存安定性を向上させる観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは100質量部以下、より好ましくは70質量部以下、さらに好ましくは50質量部以下、さらに好ましくは30質量部以下である。
トナー粒子は、結着樹脂及び着色剤に加えて、離型剤、荷電制御剤、荷電制御樹脂、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤を適宜含有していてもよい。
トナー粒子の製造方法としては、結着樹脂及び着色剤を含有するトナー原料を溶融混練し、得られた溶融混練物を粉砕、好ましくは湿式粉砕して得る方法、水系結着樹脂分散液と水系着色剤分散液を混合し結着樹脂粒子と着色剤粒子を合一させる方法、又は水系結着樹脂分散液と着色剤を高速攪拌する方法等が挙げられる。現像性及び定着性を向上させる観点から、トナー原料を溶融混練した後に粉砕、好ましくは湿式粉砕する方法が好ましい。
先ず、結着樹脂、着色剤、必要に応じて用いる添加剤等を含有するトナー原料は、あらかじめヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、ボールミル等の混合機で混合した後、混練機に供給することが好ましく、結着樹脂中での着色剤の分散性を向上させる観点から、ヘンシェルミキサーがより好ましい。
ヘンシェルミキサーでの混合は、攪拌の周速度、及び攪拌時間を調整しながら行う。周速度は、着色剤の分散性を向上させる観点から、好ましくは10m/sec以上30m/sec以下である。また、攪拌時間は、着色剤の分散性を向上させる観点から、好ましくは1分以上10分以下である。
次いで、トナー原料の溶融混練は、密閉式ニーダー、一軸もしくは二軸の混練機、連続式オープンロール型混練機等の公知の混練機を用いて行うことができる。本発明の製造方法においては、着色剤の分散性を向上させる観点、及び粉砕後のトナー粒子の収率を向上させる観点から、オープンロール型混練機が好ましい。
オープンロール型混練機とは、溶融混練部が密閉されておらず開放されているものをいい、溶融混練の際に発生する混練熱を容易に放熱することができる。本発明で使用するオープンロール型混練機は、ロールの軸方向に沿って設けられた複数の原料供給口と混練物排出口を備えており、生産効率の観点から、連続式オープンロール型混練機であることが好ましい。
オープンロール型混練機は、少なくとも温度の異なる2本の混練用ロールを有していることが好ましい。
トナー原料の混合性を向上させる観点から、ロールの設定温度は、樹脂の軟化点より10℃高い温度以下であることが好ましい。
また、上流側で混練物のロールへの張り付きを良好にして、下流側で強く混練する観点から、上流側のロールの設定温度は下流側のものよりも高いことが好ましい。
ロールは、互いに周速度が異なっていることが好ましい。前記の2本のロールを備えたオープンロール型混練機においては、液体現像剤の定着性を向上させる観点から、温度の高い加熱ロールが高回転側ロールであり、温度の低い冷却ロールが低回転側ロールであることが好ましい。
高回転側ロールの周速度は、好ましくは2m/min以上、より好ましくは5m/min以上であり、そして、好ましくは100m/min以下、より好ましくは75m/min以下である。低回転側ロールの周速度は、好ましくは2m/min以上、より好ましくは4m/min以上であり、そして、好ましくは100m/min以下、より好ましくは60m/min以下、さらに好ましくは50m/min以下である。また、2本のロールの周速度の比(低回転側ロール/高回転側ロール)は、好ましくは1/10以上、より好ましくは3/10以上であり、そして、好ましくは9/10以下、より好ましくは8/10以下である。
また、各ロールの構造、大きさ、材料等について特に限定はない。ロール表面は、混練に用いられる溝を有しており、この形状は直線状、螺旋状、波型、凸凹型等が挙げられる。
次いで、溶融混練物を粉砕が可能な程度に冷却した後、粉砕工程、及び必要に応じて分級工程等を経て、トナー粒子を得ることができる。
粉砕工程は、多段階に分けてもよい。例えば、溶融混練物を、約1〜5mmに粗粉砕した後、さらに微粉砕してもよい。また、粉砕工程時の生産性を向上させるために、溶融混練物を疎水性シリカ等の無機微粒子と混合した後、粉砕してもよい。
粗粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、例えば、アトマイザー、ロートプレックス等が挙げられるが、ハンマーミル等を用いてもよい。また、微粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、流動層式ジェットミル、気流式ジェットミル、機械式ミル等が挙げられる。
分級工程に用いられる分級機としては、気流式分級機、慣性式分級機、篩式分級機等が挙げられる。なお、必要に応じて粉砕工程と分級工程とを繰り返してもよい。
この工程で得られるトナー粒子の体積中位粒径(D50)は、後述の湿式粉砕工程の生産性を向上させる観点から、好ましくは3μm以上、より好ましくは4μm以上であり、そして好ましくは15μm以下、より好ましくは12μm以下である。なお、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。なお、トナー粒子は、分散剤及び絶縁性液体と混合後、湿式粉砕等によりさらに微細化されることが好ましい。
トナー粒子の含有量は、絶縁性液体100質量部に対して、高速印刷性の観点から、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、さらに好ましくは30質量部以上、さらに好ましくは40質量部以上、さらに好ましくは50質量部以上であり、そして、分散安定性の向上の観点から、好ましくは100質量部以下、より好ましくは80質量部以下、さらに好ましくは70質量部以下、さらに好ましくは60質量部以下である。
本発明における分散剤は、酸性基を有する樹脂への吸着性が高い観点から、塩基性窒素含有基を有する塩基性分散剤が好ましい。塩基性窒素含有基としては、アミノ基(-NH2、-NHR、-NHRR’)、アミド基(-C(=O)-NRR’)、イミド基(-N(COR)2)、ニトロ基(-NO2)、イミノ基(=NH)、シアノ基(-CN)、アゾ基(-N=N-)、ジアゾ基(=N2)、及びアジ基(-N3)からなる群より選ばれた少なくとも1種が好ましい。ここで、R、R’は炭素数1〜5の炭化水素基を表す。分散剤のトナー粒子への吸着性の観点からは、アミノ基及び/又はイミノ基が好ましく、トナー粒子の帯電性の観点からは、イミノ基がより好ましい。
塩基性窒素含有基以外に含まれる官能基としては、例えば、ヒドロキシ基、ホルミル基、アセタール基、オキシム基、チオール基等が挙げられる。
塩基性分散剤における塩基性窒素含有基の占める割合は、分散安定性の観点から、ヘテロ原子の個数換算で、好ましくは70個数%以上、より好ましくは80個数%以上、さらに好ましくは90個数%以上、さらに好ましくは95個数%以上、さらに好ましくは100個数%である。
塩基性分散剤は、液体現像剤の分散性の観点から、炭素数16以上の炭化水素、ハロゲン原子で一部置換された炭素数16以上の炭化水素、反応性の官能基を有する炭素数16以上の炭化水素、炭素数12以上のヒドロキシカルボン酸の重合体、炭素数2以上22以下の二塩基酸と炭素数2以上22以下のジオールの重合体、炭素数16以上のアルキル(メタ)アクリレートの重合体、ポリオレフィン等に由来する基(以下、「分散性基」ともいう)を含んでいることが好ましい。
炭素数16以上の炭化水素としては、炭素数16以上24以下の炭化水素が好ましく、例えば、ヘキサデセン、オクタデセン、エイコサン、ドコサン等が挙げられる。
ハロゲン原子で一部置換された炭素数16以上の炭化水素としては、ハロゲン原子で一部置換された炭素数16以上24以下の炭化水素が好ましく、例えば、クロロヘキサデカン、ブロモヘキサデカン、クロロオクタデカン、ブロモオクタデカン、クロロエイコサン、ブロモエイコサン、クロロドコサン、ブロモドコサン等が挙げられる。
反応性の官能基を有する炭素数16以上の炭化水素としては、反応性の官能基を有する炭素数16以上24以下の炭化水素が好ましく、例えば、ヘキサデセニルコハク酸、オクタデセニルコハク酸、エイコセニルコハク酸、ドコセニルコハク酸、ヘキサデシルグリシジルエーテル、オクタデシルグリシジルエーテル、エイコシルグリシジルエーテル、ドコシルグリシジルエーテル等が挙げられる。
炭素数12以上のヒドロキシカルボン酸の重合体としては、炭素数12以上24以下、好ましくは炭素数16以上24以下のヒドロキシカルボン酸の重合体が好ましく、例えば、12-ヒドロキシステアリン酸の重合体等が挙げられる。
炭素数2以上22以下の二塩基酸と炭素数2以上22以下のジオールの重合体としては、例えば、エチレングリコールとセバシン酸の重合体、1,4-ブタンジオールとフマル酸の重合体、1,6-ヘキサンジオールとフマル酸の重合体、1,10-デカンジオールとセバシン酸の重合体、1,12-ドデカンジオールと1,12-ドデカン二酸の重合体等が挙げられる。
炭素数16以上のアルキル(メタ)アクリレートの重合体としては、炭素数16以上24以下のアルキル(メタ)アクリレートの重合体が好ましく、例えば、ヘキサデシルメタクリレートの重合体、オクタデシルメタクリレートの重合体、ドコシルメタクリレートの重合体等が挙げられる。
ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリイソブテン、ポリメチルペンテン、ポリテトラデセン、ポリヘキサデセン、ポリオクタデセン、ポリエイコセン、ポリドコセン等が挙げられる。
塩基性分散剤は、トナー粒子の分散性の観点から、ポリオレフィン骨格を有することが好ましく、ポリプロピレン骨格及び/又はポリイソブテン骨格を有することがより好ましく、分散剤の絶縁性液体中での溶解性の観点から、ポリイソブテン骨格を有することがさらに好ましい。従って、前記分散性基のなかでは、ポリオレフィンに由来する基が好ましく、ポリプロピレンに由来する基及び/又はポリイソブテンに由来する基がより好ましく、ポリイソブテンに由来する基がさらに好ましい。
塩基性分散剤は、特に限定されるものではないが、例えば、塩基性窒素含有基原料と分散性基原料とを反応させて得られる。
塩基性窒素含有基原料としては、ポリエチレンイミン等のポリアルキレンイミン、ポリアリルアミン、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート等のポリアミノアルキルメタクリレート等が挙げられる。
塩基性窒素含有基原料の数平均分子量は、酸性基の有する樹脂への吸着性の観点から、好ましくは100以上、より好ましくは500以上、さらに好ましくは1,000以上であり、そして、トナー粒子の分散性の観点から、好ましくは15,000以下、より好ましくは10,000以下、さらに好ましくは5,000以下である。
分散性基原料としては、ハロゲン化された炭素数16以上の炭化水素、反応性の官能基を有する炭素数16以上の炭化水素、炭素数12以上のヒドロキシカルボン酸の重合体、炭素数2以上22以下の二塩基酸と炭素数2以上22以下のジオールの重合体、反応性の官能基を有する炭素数16以上のアルキル(メタ)アクリレートの重合体、反応性の官能基を有するポリオレフィン等が挙げられる。これらのなかでは、原料の入手性及び反応性の観点から、ハロゲン化された炭素数16以上の炭化水素、反応性の官能基を有する炭素数16以上の炭化水素、反応性の官能基を有する炭素数16以上24以下のアルキル(メタ)アクリレートの重合体、又は反応性の官能基を有するポリオレフィンが好ましい。反応性の官能基としては、カルボキシ基、エポキシ基、ホルミル基、イソシアネート基等が挙げられ、これらの中では、安全性及び反応性の観点から、カルボキシ基又はエポキシ基が好ましく、カルボキシ基がより好ましい。従って、反応性の官能基を有する化合物としては、カルボン酸系化合物が好ましい。カルボン酸系化合物としては、フマル酸、マレイン酸、エタン酸、プロパン酸、ブタン酸、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、酒石酸、それらの無水物、又はそれらの炭素数1以上3以下のアルキルエステル等が挙げられる。分散性基原料の具体例としては、クロロオクタデカン等のハロゲン化アルカン、エポキシ変性されたポリオクタデシルメタクリレート、ポリエチレン無水コハク酸、塩素化ポリプロピレン、ポリプロピレン無水コハク酸、ポリイソブテン無水コハク酸等が挙げられる。
分散性基原料におけるポリオレフィン骨格を有する化合物の含有量は、トナー粒子の分散性の観点から、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。
分散性基原料の数平均分子量は、トナー粒子の分散性の観点から、好ましくは500以上、より好ましくは700以上、さらに好ましくは900以上であり、そして、分散剤のトナー粒子への吸着性の観点から、好ましくは5,000以下、より好ましくは4,000以下、さらに好ましくは3,000以下である。
反応物における塩基性窒素含有基と分散性基の質量比(塩基性窒素含有基/分散性基)は、トナー粒子への吸着性の観点から、好ましくは3/97以上であり、より好ましくは5/95以上であり、そして、トナー粒子の分散安定性の観点から、好ましくは20/80以下であり、より好ましくは15/85以下である。なお、反応物における塩基性窒素含有基と分散性基の質量比は、反応物のNMRで測定できるが、塩基性窒素含有基原料と分散性基原料とを反応させる反応物の製造において、反応した原料化合物の質量比を、分散剤中の塩基性窒素含有基と分散性基の質量比(塩基性窒素含有基/分散性基)とみることもできる。
他の塩基性分散剤としては、アミノ基を有するモノマーAと、式(II):
(式中、R1は水素原子又は炭素数1以上5以下のアルキル基、好ましくはメチル基、R2は、置換基を有していてもよい、炭素数1以上22以下のアルキル基又は炭素数2以上22以下のアルケニル基を示す)
で表されるモノマーBとの共重合体C等が挙げられる。
アミノ基を有するモノマーAとしては、式(III):
CH2=C(R5)COYR6NR3R4 (III)
(式中、R3及びR4は、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1以上4以下の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基を示し、それらは互いに結合して環構造を形成していてもよく、R5は、水素原子又は炭素数1以上5以下のアルキル基、好ましくはメチル基を示し、R6は、炭素数2以上4以下の直鎖又は分岐のアルキレン基を示し、Yは−O−又は−NH−を示す)
で表されるアミノ基を有するモノマー、又はこのモノマーの酸中和物(3級アミン塩)もしくは4級アンモニウム塩が好ましい。上記の酸中和物を得るための好ましい酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、ギ酸、マレイン酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、アジピン酸、スルファミン酸、トルエンスルホン酸、乳酸、ピロリドン-2-カルボン酸、コハク酸等が挙げられる。上記第4級アンモニウム塩を得るための好ましい4級化剤としては、塩化メチル、塩化エチル、臭化メチル、ヨウ化メチル等のハロゲン化アルキル、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジ-n-プロピル等の一般的なアルキル化剤が挙げられる。
式(III)において、R3及びR4は、それぞれ独立して、炭素数1以上4以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が好ましく、NR3R4は3級アミノ基が好ましい。R3及びR4の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられ、メチル基が好ましい。
R6としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられ、エチレン基が好ましい。
式(III)においてNR3R4が3級アミノ基であるモノマー(3級アミノ基を有するモノマー)の具体例としては、ジアルキルアミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル、ジアルキルアミノ基を有する(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。なお、「(メタ)アクリル酸エステル」は、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステル、「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミドとメタクリルアミドの双方の場合を含むことを示す。
ジアルキルアミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジイソプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジイソブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、及びジt−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる1種以上等が挙げられる。
ジアルキルアミノ基を有する(メタ)アクリルアミドとしては、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジイソプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジブチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジイソブチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、及びジt−ブチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドからなる群から選ばれる1種以上等が挙げられる。
これらの中では、ジアルキルアミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステルが、小粒径、低粘度、保存安定性、及び低温定着性の観点から好ましく、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
モノマーBは、前記式(II)で表されるものであり、前記式(II)において、R2で表されるアルキル基及びアルケニル基の炭素数は、低粘度化、保存安定性、及び低温定着性の観点から、好ましくは10以上、より好ましくは12以上であり、トナー粒子への吸着性の観点から、22以下、好ましくは20以下である。R2のアルキル基又はアルケニル基は、直鎖であっても分岐鎖であってもよく、水酸基等の置換基を有していてもよい。
従って、モノマーBは、R2が、炭素数が10以上22以下のアルキル基又はアルケニル基であるモノマーB2を少なくとも含むことが好ましい。
モノマーBにおいて、R2が、炭素数が1以上9以下のアルキル基又は炭素数2以上9以下のアルケニル基であるモノマーB1と炭素数が10以上22以下のアルキル基又はアルケニル基であるモノマーB2のモル比(モノマーB1/モノマーB2)は、低粘度化、保存安定性、及び低温定着性の観点から、0.1以下、好ましくは0.07以下、より好ましくは0.05以下、さらに好ましくは0.03以下、さらに好ましくは0.01以下であり、0以上、好ましくは0である。
モノマーBの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、(イソ)ノニル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、(イソ)ウンデシル(メタ)アクリレート、(イソ)ドデシル(メタ)アクリレート、(イソ)トリデシル(メタ)アクリレート、(イソ)テトラデシル(メタ)アクリレート、(イソ)ペンタデシル(メタ)アクリレート、(イソ)ヘキサデシル(メタ)アクリレート、(イソ)ヘプタデシル(メタ)アクリレート、(イソ)オクタデシル(メタ)アクリレート、(イソ)ノナデシル(メタ)アクリレート、(イソ)イコシル(メタ)アクリレート、(イソ)エイコシル(メタ)アクリレート、(イソ)ヘンイコシル(メタ)アクリレート、(イソ)ドコシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。ここで、「(イソ又はターシャリー)」、「(イソ)」は、これらの基が存在している場合とそうでない場合の双方を含むことを意味し、これらの基が存在していない場合には、ノルマルであることを示す。また、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートの双方の場合を含むことを示す。
モノマーAとモノマーBのモル比(モノマーA/モノマーB)は、分散剤として機能し、低粘度化及び保存安定性の観点から、2/98以上、好ましくは3/97以上、より好ましくは5/95以上、さらに好ましくは7/93以上であり、低粘度化、保存安定性、及び低温定着性の観点から、50/50以下、好ましくは40/60以下、より好ましくは35/65以下、さらに好ましくは25/75以下、さらに好ましくは20/80以下である。
共重合体Cに用いられる全モノマー中のモノマーAとモノマーBの合計含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上であり、好ましくは100質量%以下、より好ましくは100質量%である。
モノマーAとモノマーBの重合は、例えば、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等の重合開始剤の存在下、溶媒中で、40〜140℃程度に加熱して、反応させることができる。
塩基性分散剤の重量平均分子量は、低粘度化及び低温定着性の観点から、好ましくは5,000以上、より好ましくは10,000以上、さらに好ましくは15,000以上であり、そして、同様の観点から、好ましくは100,000以下、より好ましくは95,000以下、さらに好ましくは90,000以下である。
また、塩基性分散剤の数平均分子量は、低粘度化及び低温定着性の観点から、好ましくは2,000以上、より好ましくは2,500以上、さらに好ましくは3,000以上、さらに好ましくは3,500以上であり、そして、同様の観点から、好ましくは10,000以下、より好ましくは9,000以下、さらに好ましくは8,000以下である。
塩基性分散剤の含有量は、トナー粒子100質量部に対して、トナー粒子の分散安定性の観点から、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは2質量部以上であり、そして、トナーの帯電性の観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。
本発明の液体現像剤には、前記塩基性分散剤以外の公知の分散剤が含まれていてもよいが、前記塩基性分散剤の含有量は、分散剤中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上であり、好ましくは100質量%以下、より好ましくは実質的に100質量%、さらに好ましくは100質量%である。
本発明における絶縁性液体とは、電気が流れにくい液体のことを意味するが、本発明においては、絶縁性液体の導電率は、好ましくは1.0×10-10S/m以下、より好ましくは5.0×10-11S/m以下であり、そして、好ましくは1.0×10-13S/m以上である。
本発明における絶縁性液体は、トナー粒子の分散安定性を向上させて保存安定性を向上させる観点、及び低温定着性の観点及び液体現像剤を高抵抗化する観点から、炭素数8以上16以下の飽和脂肪酸と炭素数3以上のアルコールとのエステルである飽和脂肪酸エステルを含有する。
炭素数8以上16以下の飽和脂肪酸としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、2-エチルヘキサン酸等が挙げられる。
飽和脂肪酸の炭素数は、トナー粒子の分散安定性を向上させて保存安定性を向上させる観点から、8以上であり、好ましくは10以上、より好ましくは12以上であり、そして、トナーの湿式粉砕性を向上させて小粒径のトナー粒子を得る観点、トナー粒子の分散安定性を向上させて保存安定性を向上させる観点、及び低温定着性の観点から、16以下であり、好ましくは14以下である。
炭素数3以上のアルコールとしては、プロパノール、イソプロパノール、ヘキサノール、ブタノール、イソブタノール、オクタノール、2-エチルヘキシルアルコール、デシルアルコール、イソデシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール等が挙げられる。
アルコールの炭素数は、トナー粒子の分散安定性を向上させて保存安定性を向上させる観点から、3以上であり、好ましくは4以上、より好ましくは5以上であり、そして、トナーの湿式粉砕性を向上させて小粒径のトナー粒子を得る観点、トナー粒子の分散安定性を向上させて保存安定性を向上させる観点、及び低温定着性の観点から、好ましくは16以下であり、より好ましくは12以下、さらに好ましくは10以下である。
前記飽和脂肪酸エステルの沸点は、トナー粒子の分散安定性を向上させて保存安定性を向上させる観点、及び現像性の観点から、好ましくは180℃以上、より好ましくは220℃以上、さらに好ましくは240℃以上であり、そして、低温定着性の観点、及びトナーの湿式粉砕性を向上させて小粒径のトナー粒子を得る観点から、好ましくは360℃以下、より好ましくは350℃以下、さらに好ましくは340℃以下である。
前記飽和脂肪酸エステルの25℃における粘度は、トナー粒子の分散安定性を向上させて保存安定性を向上させる観点から、好ましくは1mPa・s以上、より好ましくは2mPa・s以上、さらに好ましくは3mPa・s以上であり、そして、低温定着性の観点、及びトナーの湿式粉砕性を向上させて小粒径のトナー粒子を得る観点から、好ましくは15mPa・s以下、より好ましくは10mPa・s以下、さらに好ましくは6mPa・s以下である。
前記飽和脂肪酸エステルの含有量は、環境安全性や低温定着性の観点から、絶縁性液体中、50質量%以上であり、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。
前記飽和脂肪酸エステル以外の絶縁性液体としては、例えば、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、ポリシロキサン、植物油等が挙げられる。
液体現像剤は、トナー粒子を絶縁性液体中に分散させて得られる。トナー粒子の粒径を小さくする観点から、トナー粒子を絶縁性液体中に分散させた後、湿式粉砕して液体現像剤を得ることが好ましい。
トナー粒子、分散剤、及び絶縁性液体の混合方法としては、攪拌混合装置により攪拌する方法等が好ましい。
撹拌混合装置は、特に限定されないが、トナー粒子分散液の生産性及び保存安定性を向上させる観点から、高速攪拌混合装置が好ましく、具体的には、デスパ(浅田鉄工(株)製)、T.K.ホモミクサー、T.K.ホモディスパー、T.K.ロボミックス(以上、いずれもプライミクス(株)製)、クレアミックス(エム・テクニック(株)製)、ケイディーミル(ケイディー・インターナショナル社製)等が好ましい。
高速攪拌混合装置による混合によって、トナー粒子が予備分散され、トナー粒子分散液を得ることができ、次の湿式粉砕による液体現像剤の生産性が向上する。
トナー粒子分散液の固形分濃度は、画像濃度を向上させる観点から、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは33質量%以上であり、そして、トナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。
湿式粉砕とは、絶縁性液体中に分散させたトナー粒子を、絶縁性液体に分散した状態で機械的に粉砕処理する方法である。
使用する装置としては、例えば、アンカー翼等の一般に用いられている撹拌混合装置を用いることができる。撹拌混合装置の中では、デスパ(浅田鉄工(株)製)、T.K.ホモミクサー(プライミクス(株)製)等の高速攪拌混合装置、ロールミル、ビーズミル、ニーダー、エクストルーダ等の粉砕機又は混練機等が挙げられる。これらの装置は複数を組み合わせることもできる。
これらの中では、トナー粒子の粒径を小さくする観点、及びトナー粒子の分散安定性を向上させて保存安定性を向上させる観点、及びその分散液の粘度を低減する観点から、ビーズミルの使用が好ましい。
ビーズミルでは、用いるメディアの粒径や充填率、ローターの周速度、滞留時間等を制御することにより所望の粒径、粒径分布を持ったトナー粒子を得ることができる。
液体現像剤の固形分濃度は、画像濃度を向上させる観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上であり、そして、トナー粒子の分散安定性を向上させて保存安定性を向上させる観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。
液体現像剤中のトナー粒子の含有量は、高速印刷の観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上であり、そして、トナー粒子の分散安定性の観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。
液体現像剤中のトナー粒子の体積中位粒径(D50)は、液体現像剤の粘度を低減する観点から、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは1.5μm以上であり、そして、液体現像剤の画質を向上させる観点から、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下、さらに好ましくは2.5μm以下である。
液体現像剤中のトナー粒子のガラス転移温度は、トナー粒子の分散安定性を向上させて保存安定性を向上させる観点から、好ましくは15℃以上、より好ましくは20℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下、さらに好ましくは30℃以下である。
液体現像剤中の絶縁性液体の含有量は、トナー粒子の分散安定性の観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上であり、そして、高速印刷の観点から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下である。
固形分濃度が25質量%の液体現像剤の25℃における粘度は、トナー粒子の分散安定性を向上させて保存安定性を向上させる観点から、好ましくは3mPa・s以上、より好ましくは5mPa・s以上、さらに好ましくは6mPa・s以上、さらに好ましくは7mPa・s以上であり、そして、液体現像剤の定着性を向上させる観点から、好ましくは50mPa・s以下、より好ましくは40mPa・s以下、さらに好ましくは30mPa・s以下、さらに好ましくは25mPa・s以下、さらに好ましくは20mPa・s以下である。
液体現像剤の導電率は、液体トナーの現像性や画質の観点から、好ましくは5.0×10-8S/m以下、より好ましくは3.0×10-8S/m以下、さらに好ましくは1.0×10-8S/m以下である。
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。樹脂等の物性は、以下の方法により測定した。
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター「CFT-500D」((株)島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出す。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
〔樹脂のガラス転移温度〕
示差走査熱量計「DSC210」(セイコー電子工業(株)製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/minで昇温し、吸熱ピークを測定する。吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とする。
〔樹脂の酸価〕
JIS K0070:1992の方法により測定する。但し、測定溶媒のみJIS K0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更する。
〔絶縁性液体と混合する前のトナー粒子の体積中位粒径〕
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマンコールター(株)製)
アパチャー径:100μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマンコールター(株)製)
電解液:アイソトンII(ベックマンコールター(株)製)
分散液:電解液にエマルゲン109P(花王(株)製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB(グリフィン):13.6)を溶解して5質量%に調整したもの
分散条件:前記分散液5mLに測定試料10mgを添加し、超音波分散機(機械名:(株)エスエヌディー製US-1、出力:80W)にて1分間分散させる。その後、前記電解液25mLを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製する。
測定条件:前記電解液100mLに、3万個の粒子の粒径を20秒間で測定できる濃度となるように、前記試料分散液を加え、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求める。
〔塩基性窒素含有基原料の数平均分子量(Mn)〕
以下に示す、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により分子量分布を測定し、数平均分子量を求める。
(1) 試料溶液の調製
濃度が0.2g/100mLになるように、試料を0.15mol/LでNa2SO4を1%酢酸水溶液に溶解させた溶液に溶解させる。次いで、この溶液をポアサイズ0.2μmのフッ素樹脂フィルター「FP-200」(住友電気工業(株)製)を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とする。
(2) 分子量測定
下記の測定装置と分析カラムを用い、溶離液として0.15mol/LでNa2SO4を1%酢酸水溶液に溶解させた溶液を、毎分1mLの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させる。そこに試料溶液100μLを注入して測定を行う。試料の分子量は、あらかじめ作成した検量線に基づき算出する。このときの検量線には、数種類の標準プルラン(昭和電工(株)製のP-5(5.9×103)、P-50(4.73×104)、P-200(2.12×105)、P-800(7.08×105))を標準試料として作成したものを用いる。括弧内は分子量を示す。
測定装置:HLC-8320GPC(東ソー(株)製)
分析カラム:α+α-M+α-M(東ソー(株)製)
〔分散性基原料の数平均分子量(Mn)〕
(1) 試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mLになるように、試料をテトラヒドロフランに溶解させる。次いで、この溶液をポアサイズ2μmのフッ素樹脂フィルター「FP-200」(住友電気工業(株)製)を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とする。
(2) 分子量分布測定
下記の測定装置と分析カラムを用い、溶離液としてテトラヒドロフランを、毎分1mLの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させる。そこに試料溶液100μLを注入して測定を行う。試料の分子量は、あらかじめ作成した検量線に基づき算出する。このときの検量線には、数種類の単分散ポリスチレン(東ソー(株)製のA-500(5.0×102)、A-1000(1.01×103)、A-2500(2.63×103)、A-5000(5.97×103)、F-1(1.02×104)、F-2(1.81×104)、F-4(3.97×104)、F-10(9.64×104)、F-20(1.90×105)、F-40(4.27×105)、F-80(7.06×105)、F-128(1.09×106))を標準試料として作成したものを用いる。括弧内は分子量を示す。
測定装置:HLC-8220GPC(東ソー(株)製)
分析カラム:GMHXL+G3000HXL(東ソー(株)製)
〔分散剤の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)〕
<分散剤A、B>
以下に示す、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により分子量分布を測定し、数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を求める。
(1) 試料溶液の調製
濃度が0.2g/100mLになるように、分散剤をクロロホルムに溶解させる。次いで、この溶液をポアサイズ0.2μmのフッ素樹脂フィルター「FP-200」(住友電気工業(株)製)を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とする。
(2) 分子量測定
下記の測定装置と分析カラムを用い、溶離液として1.00mmol/LのファーミンDM2098(花王(株)製)のクロロホルム溶液を、毎分1mLの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させる。そこに試料溶液100μLを注入して測定を行う。試料の分子量は、あらかじめ作成した検量線に基づき算出する。このときの検量線には、数種類の単分散ポリスチレン(東ソー(株)製のA-500(5.0×102)、A-5000(5.97×103)、F-2(1.81×104)、F-10(9.64×104)、F-40(4.27×105))を標準試料として作成したものを用いる。括弧内は分子量を示す。
測定装置:HLC-8220GPC(東ソー(株)製)
分析カラム:K-804L(昭和電工(株)製)
<分散剤C>
以下の方法により、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により分子量分布を測定し、数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を求める。
(1) 試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mLになるように、分散剤(分散剤溶液から絶縁性液体を留去)をテトラヒドロフランに溶解させた。次いで、この溶液をポアサイズ2μmのフッ素樹脂フィルター「FP-200」(住友電気工業社製)を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とした。
(2) 分子量分布測定
下記の測定装置と分析カラムを用い、溶離液としてテトラヒドロフランを、毎分1mLの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させる。そこに試料溶液100μLを注入して測定を行う。試料の分子量は、あらかじめ作成した検量線に基づき算出する。このときの検量線には、数種類の単分散ポリスチレン(東ソー(株)製のA-500(5.0×102)、A-1000(1.01×103)、A-2500(2.63×103)、A-5000(5.97×103)、F-1(1.02×104)、F-2(1.81×104)、F-4(3.97×104)、F-10(9.64×104)、F-20(1.90×105)、F-40(4.27×105)、F-80(7.06×105)、F-128(1.09×106))を標準試料として作成したものを用いる。括弧内は分子量を示す。
測定装置:HLC-8220GPC(東ソー(株)製)
分析カラム:TSKgel GMHXL +TSKgel G3000HXL (東ソー(株)製)
〔絶縁性液体及び液体現像剤の導電率〕
試料25gを40mL容のガラス製サンプル管「スクリューNo.7」((株)マルエム製)に入れ、非水系導電率計「DT-700」(Dispersion Technology社製)を用いて、電極を絶縁性液体に浸し、25℃で20回測定を行って平均値を算出し、導電率を測定する。数値が小さいほど高抵抗であることを示す。
〔絶縁性液体の沸点〕
示差走査熱量計「DSC210」(セイコー電子工業(株)製)を用いて、試料6.0〜8.0mgをアルミパンに計量し、昇温速度10℃/minで350℃まで昇温し、吸熱ピークを測定する。最も高温側の吸熱ピークを沸点とする。
〔絶縁性液体及び液体現像剤の25℃における粘度〕
10mL容のスクリュー管に測定液を6〜7mL入れ、回転振動式粘度計「ビスコメイトVM-10A-L」((株)セコニック製、検出端子:チタン製、φ8mm)を用い、検出端子の先端部の15mm上に液面が来る位置にスクリュー管を固定し、25℃にて粘度を測定する。
〔トナー粒子分散液及び液体現像剤の固形分濃度〕
試料10質量部をヘキサン90質量部で希釈し、遠心分離装置「3-30KS」(シグマ社製)を用いて、回転数25,000r/minにて、20分間回転させる。静置後、上澄み液をデカンテーションにて除去した後、90質量部のヘキサンで希釈し、同様の条件で再び遠心分離を行う。上澄み液をデカンテーションにて除去した後、下層を真空乾燥機にて0.5kPa、40℃にて8時間乾燥させ、以下の式より固形分濃度を計算する。
〔液体現像剤中のトナー粒子の体積中位粒径(D50)〕
レーザー回折/散乱式粒径測定装置「マスターサイザー2000」(マルバーン社製)を用いて、測定用セルにアイソパーL(エクソンモービル社製、イソパラフィン、25℃における粘度1mPa・s)を加え、散乱強度が5〜15%になる濃度で、粒子屈折率1.58(虚数部0.1)、分散媒屈折率1.42の条件にて、体積中位粒径(D50)を測定する。
〔液体現像剤中のトナー粒子のガラス転移温度(Tg)〕
示差走査熱量計「DSC210」(セイコー電子工業(株)製)を用いて、液体現像剤0.025〜0.035gをアルミパンに計量し、昇温速度10℃/minで0℃から100℃まで昇温し、吸熱ピークを測定する。吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とする。
樹脂製造例1
表1に示す原料モノマー及びエステル化触媒を、窒素導入管、脱水管、攪拌機及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れ、マントルヒーターを用いて、180℃に昇温した後、220℃まで10時間かけて昇温を行い、220℃にて反応させた。さらに8.3kPaにて、表1に示す軟化点に達するまで反応を行って、表1に示す物性を有するポリエステル樹脂(樹脂A)を得た。
樹脂製造例2
表1に示す無水トリメリット酸以外の原料モノマー、エステル化触媒及び重合禁止剤を窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れ、マントルヒーターを用いて、180℃から200℃まで1時間かけて昇温し、200℃にて反応させた後、無水トリメリット酸を添加し、200℃にて表1に示す軟化点に達するまで反応を行って、表1に示す物性を有するポリエステル樹脂(樹脂B)を得た。
分散剤製造例1
表2に示すポリアルキレンイミンを冷却管、窒素導入管、撹拌機、脱水管及び熱電対を装備した2L容の四つ口フラスコに入れ、窒素ガスで反応容器内を置換した。撹拌しながら、表2に示すポリイソブテン無水コハク酸(PIBSA)をキシレンに溶解した溶液を25℃で1時間かけて滴下した。滴下終了後、30分間25℃で保持した。その後、反応容器内を150℃に加温して1時間保持した後、160℃に昇温して1時間保持した。160℃で8.3kPaに減圧して溶剤を留去し、IR分析からPIBSA由来の酸無水物のピーク(1780cm-1)が消失し、イミド結合由来のピーク(1700cm-1)が生じた時点を反応終点として、表2に示す物性を有する分散剤Aを得た。
分散剤製造例2
溶媒(メチルエチルケトン)100gを、冷却管、窒素導入管、撹拌機及び熱電対を装備した2L容の四つ口フラスコに入れ、窒素ガスで反応容器内を置換した。反応容器内を80℃に加温して、表3に示す原料モノマーと、重合開始剤の混合物を2時間かけて滴下し、重合反応を行った。滴下終了後、80℃でさらに3時間反応させた。80℃で溶媒を留去し、表3に示す物性を有する共重合体からなる分散剤Cを得た。
実施例1〜6及び比較例1〜5
表5に示す結着樹脂80質量部及び着色剤「ECB-301」(大日精化工業(株)製、フタロシアニンブルー15:3)20質量部を、予め20L容のヘンシェルミキサーを使用し、回転数1500r/min(周速度21.6m/sec)で3分間攪拌混合後、以下に示す条件で溶融混練した。
〔溶融混練条件〕
連続式二本オープンロール型混練機「ニーデックス」(日本コークス工業(株)製、ロール外径:14cm、有効ロール長:55cm)を使用した。連続式二本オープンロール型混練機の運転条件は、高回転側ロール(フロントロール)回転数75r/min(周速度32.4m/min)、低回転側ロール(バックロール)回転数35r/min(周速度15.0m/min)、混練物供給口側端部のロール間隙0.1mmであった。ロール内の加熱媒体温度及び冷却媒体温度は、高回転側ロールの原料投入側が90℃及び混練物排出側が85℃であり、低回転側ロールの原料投入側が35℃及び混練物排出側が35℃であった。また、原料混合物の上記混練機への供給速度は10kg/h、上記混練機中の平均滞留時間は約3分間であった。
上記で得られた混練物を冷却ロールで圧延冷却した後、ハンマーミルを用いて1mm程度に粗粉砕した。得られた粗粉砕物を気流式ジェットミル「IDS」(日本ニューマチック(株)製)により微粉砕及び分級し、体積中位粒径(D50)が10μmのトナー粒子を得た。
得られたトナー粒子35質量部と表5に示す絶縁性液体63.95質量部(実施例4のみ62.9質量部)、及び表5に示す分散剤1.05質量部(実施例4のみ2.1質量部)(トナー粒子100質量部に対して3質量部)を1L容のポリエチレン製容器に入れ、「T.K.ロボミックス」(プライミクス(株)製)を用いて、氷冷下、回転数7000r/minにて30分間攪拌を行い、固形分濃度36質量%のトナー粒子分散液を得た。
次に、得られたトナー粒子分散液を、直径0.8mmのジルコニアビーズを用いて、体積充填率60体積%にて、6筒式サンドミル「TSG-6」(アイメックス(株)製)で回転数1300r/min(周速度4.8m/sec)にて表5に示す体積中位粒径(D50)になるまで湿式粉砕した。ビーズをろ過により除去した後、ろ液100質量部に対し表5に示す絶縁性液体44質量部を加えて希釈し、固形分濃度を25質量%に調整した、表5に示す物性を有する液体現像剤を得た。ただし、比較例1、4では、湿式粉砕の開始直後にトナー粒子分散液が固化したため、液体現像剤は得られなかった。
実施例及び比較例で用いた絶縁性液体の詳細は下記の通り。
試験例1〔保存安定性〕
液体現像剤5gを10mL容のスクリュー管に入れ、50℃の恒温槽にて15時間保存した。保存前後のトナー粒子の体積中位粒径(D50)を測定し、保存後のD50/保存前のD50×100の値(%)から保存安定性を評価した。結果を表5に示す。数値が100%に近いほど保存安定性に優れることを示す。
試験例2〔低温定着性〕
「PODグロスコート紙」(王子製紙社製)に液体現像剤を滴下し、ワイヤーバーにより乾燥後の質量が1.2g/m2になるように薄膜を作製した。
作製した薄膜を、80℃の恒温槽中で10秒間保持した後、「OKI MICROLINE 3010」(沖データ社製)の定着機を外部に取り出した外部定着機にて、定着ロールの温度を90℃に設定し、140mm/secの定着速度で定着させた。その後、定着ロール温度を95℃に設定し、同様の操作を行った。これを140℃まで5℃ずつ上昇させながら、各温度で未定着画像の定着処理を行い、定着画像を得た。
得られた定着画像にメンディングテープ「Scotchメンディングテープ810」(3M社製、幅18mm)を貼り付け、500gの荷重がかかるようにローラーでテープに圧力をかけた後、テープを剥離した。テープ貼付前と剥離後の画像濃度を、色彩計「GretagMacbeth Spectroeye」(グレタグ社製)にて測定した。画像印字部は各3点測定し、その平均値を画像濃度として算出した。剥離後の画像濃度/貼付前の画像濃度×100の値から定着率(%)を算出し、定着率が最初に90%以上となる定着ロールの温度を最低定着温度とし、低温定着性を評価した。結果を表5に示す。数値が小さいほど低温定着性に優れることを示す。
以上の結果より、実施例1〜6の液体現像剤は、小粒径、低粘度で、保存安定性及び低温定着性も良好であることが分かる。
これに対し、飽和脂肪酸エステルとして、メチルエステル又はエチルエステルを使用した比較例1、4では、製造途中でトナー粒子の分散不良によりトナー粒子分散液が固化し、液体現像剤は得られていない。また、不飽和脂肪酸エステルを使用した比較例2では、トナー粒子の凝集により液体現像剤が高粘度化し、保存安定性及び低温定着性のいずれもが不十分であり、流動パラフィンを使用した比較例3の液体現像剤及び炭素数18の不飽和脂肪酸と炭素数4のアルコールとのエステルである不飽和脂肪酸エステルを使用した比較例5は、低温定着性に欠けている。