JP2019098945A - 車両の車体下部構造 - Google Patents
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車体は、車室の側縁に沿って前後方向へ延在するサイドシル部材を有する。よって、車室の前角部分へ前側から後ろ向きに入力される衝撃の大部分は、サイドシル部材などにより吸収することができる。しかしながら、オフセット衝突やスモールオーバラップ衝突により脱落した前輪は、前輪の支持軸が後側へ曲がる状態において脱落する。このため、脱落した前輪は、回転しながら、後ろ向きよりも内側へ寄った斜め後ろ方向へ移動しようとするようになる。車室の側縁を構成するサイドシル部材には、斜め後ろ方向へ移動しようとする前輪の突入により、先端部を内側へ曲げようとする力も作用することになる。その結果、サイドシル部材は、少なくとも先端部が内倒れるように曲がって変形してしまう可能性がある。
これに対し、車室は、乗員を保護するために、たとえ前角部分だけの変形であるとしても、衝突により変形し難くすることが望まれる。
よって、オフセット衝突やスモールオーバラップ衝突などの際に、前輪が後ろ側へ座屈してサイドシル部材の先端部へ向けて回転しながら突入することにより、サイドシル部材の先端部が内側へ入るように内倒れしようとしても、その内側に設けられた補強構造により先端部を内側から支えて、その変形を抑制することができる。サイドシル部材は、回転する前輪の突入により、サイドシル部材の後端部、サイドシル部材についての他の骨格部材との連結部、サイドシル部材に設けられた脆弱部、またはトーボードおよびフロアパネルにおける屈曲部を基点として、先端部が内側へ入るように内倒れする可能性があるが、その内倒れの可能性を効果的に削減できる。特にたとえば、サイドシル部材の先端部の内側に設けられる補強構造を、サイドシル部材の内倒れ方向に沿って延在するように湾曲した形状または屈曲した形状とすることにより、サイドシル部材の先端部が内倒れして補強構造が若干変形したとしても、更に内側へ倒れないように補強構造が先端部を支えることができる。
その結果、本発明では、サイドシル部材の先端部が内側へ倒れるように変形することに起因した車室の変形を抑制できる。サイドシル部材の先端部の内倒れを抑制するために、トーボードやフロアパネルの板厚を上げた重量物にする方法も考えられるが、この場合には車体の重量が増加してしまう。本発明では、そのような重量増加を抑制しつつ、サイドシル部材の先端部の内倒れ変形を抑制できる。
自動車1は、車両の一例である。自動車1は、内燃機関を動力源として有するものでも、バッテリの蓄電電力で動作するモータを動力源として有するものでも、これらを組み合わせた動力源を有するものでもよい。
車室3の床面には、フロアパネル4が設けられる。フロアパネル4の前側には、車幅方向に延在するトーボード5が設けられる。トーボード5およびフロアパネル4についての車幅方向外側には、サイドシル部材6が設けられる。トーボード5およびフロアパネル4は、サイドシル部材6の内側において、車室3の床面を構成する。なお、トーボード5の車幅方向の両端の前外側には、図示外のクラッシュボックスが設けられてよい。これらの部材は、車体2の下部構造を構成する。
また、車体2の前後両側部には、車輪が設けられる。前輪7は、車室3の前側に位置する。後輪8は、車室3の後側に位置する。
車室3の側縁に沿って前後方向へ延在するサイドシル部材6は、車体2において前輪7の後側に設けられて車室3の側縁を構成する。
しかしながら、オフセット衝突やスモールオーバラップ衝突により脱落した前輪7は、前輪7の支持軸が後側へ曲がる状態において脱落する。このため、脱落した前輪7は、回転しながら、後ろ向きよりも内側へ寄った斜め後ろ方向へ移動しようとするようになる。車室3の側縁を構成するサイドシル部材6には、斜め後ろ方向へ移動しようとする前輪7の突入により、先端部9を内側へ曲げようとする力も作用することになる。その結果、サイドシル部材6は、少なくとも先端部9が内倒れるように曲がって変形してしまう可能性がある。
これに対し、車室3は、乗員を保護するために、たとえ前角部分だけの変形であるとしても、衝突により変形し難くすることが望まれる。
このように自動車1では、車室3の変形を抑制することが望まれている。
図3(A)は、車室3の前角部分の下部構造を車室3の内側から見た斜視図である。
図3(B)は、車室3の前角部分の下部構造を、前後方向で切断した断面の説明図である。
そして、トーボード5についての上へ湾曲した部分には、複数の湾曲稜部11による補強構造が設けられる。複数の稜部についての車幅方向の内側には、車室3に入った乗員が足を置くフットレスト10が取り付けられる。
湾曲稜部11は、トーボード5の上面において、サイドシル部材6の先端部9の内面と接する位置から、トーボード5についての上へ屈曲されることにより剛性が高くなっている剛性部までの間に渡って形成される。なお、湾曲稜部11と、サイドシル部材6の先端部9の内面との間に、微小な間隔を設けてもよい。
そして、複数の湾曲稜部11は、トーボード5についての屈曲による角縁を中心として、サイドシル部材6の側の端部が前側となるように、同心円状に並べて設けられる。
これにより、湾曲稜部11は、車幅方向において湾曲した形状または屈曲した形状に設けられる。トーボード5についての湾曲稜部11が設けられた部分は、残部より歪み難くなる。
また、複数の湾曲稜部11は、内倒れするサイドシル部材6の先端部9と同じ高さ位置に設けられることになる。衝突の際にサイドシル部材6の先端部9が内倒れする場合には、その先端部9の内面を内側から当たって支えることができる。
また、複数の湾曲稜部11は、単に車幅方向へ延在するのではなく、サイドシル部材6が内倒れする際の先端部9の円弧状の変形方向に沿って延在する。よって、衝突の際に内倒れするサイドシル部材6の先端部9を、その内面から支える続けることができる。先端部9が若干内側へ変形し始めた後でも、先端部9をその内面から支えることができる。
図4(A)は、衝突前の状態である。図4(B)は、衝突により前輪7が脱落して車室3の前角部分へ突入し始めた状態である。図4(C)は、衝突後に車室3の前角部分が変形した状態である。
前輪7の支持軸は、図4(B)に示すように、過剰な荷重により後側へ折れ曲がり、場合によっては切断される。
脱落した前輪7は、図4(C)に示すように、回転しながら、タイヤハウスの後側にある車室3の前角部分へ突入する。サイドシル部材6などの車室3の構造部材は、前輪7が突入することにより座屈することにより、入力される衝撃を吸収する。
また、サイドシル部材6の先端部9の内側には、複数の湾曲稜部11が設けられている。これにより、脱落した前輪7が回転しながら内側へ寄った斜め後ろ方向へ移動し、この斜め入力によりサイドシル部材6の先端部9が内側へ曲がろうとしても、それを抑制するように支えることができる。
しかも、複数の湾曲稜部11は、サイドシル部材6の先端部9の側を前端とし、先端部9と同じ高さ位置で同心円状に設けられている。よって、サイドシル部材6の先端部9が内側へ若干変形したとしても、先端部9の内面を内側から支える形状を維持できる。
よって、オフセット衝突やスモールオーバラップ衝突などの際に、前輪7が後側へ座屈してサイドシル部材6の先端部9へ向けて回転しながら突入することにより、サイドシル部材6の先端部9が内側へ入るように内倒れしようとしても、湾曲した形状または屈曲した形状で設けられた湾曲稜部11により先端部9を内側から支えて、その変形を抑制することができる。サイドシル部材6は、回転する前輪7の突入により、トーボード5による最も前側の屈曲部による剛性部を基点として先端部9が内側へ入るように内倒れする可能性があるが、その内倒れの可能性を効果的に削減できる。
特に本実施形態では、サイドシル部材6の先端部9の内側に設けられる湾曲稜部11を、サイドシル部材6の内倒れ方向に沿って延在するように湾曲した形状または屈曲した形状としている。よって、サイドシル部材6の先端部9が若干内倒れして湾曲稜部11の接触部分が若干変形したとしても、湾曲稜部11の残部での湾曲形状を維持でき、先端部9が更に内側へ倒れないように支えることができる。
その結果、本実施形態では、サイドシル部材6の先端部9が内側へ倒れるように変形することに起因した車室3の変形を抑制できる。サイドシル部材6の先端部9の内倒れを抑制するために、トーボード5やフロアパネル4を、板厚を上げた重量物とすることも考えられるが、この場合には車体2の重量が増加してしまう。本発明では、そのような重量増加を抑制しつつ、サイドシル部材6の先端部9の内倒れ変形を抑制できる。
よって、回転しながら突入する前輪7がサイドシル部材6の先端部9を、基点を中心として内側へ向けて変形させようとする力を、円弧状に湾曲した稜部により吸収することができる。しかも、サイドシル部材6の先端部9が若干内側へ向けて変形した状態においても、残っている稜部は、円弧状に湾曲した形状を維持しているので、更なる内倒れ変形を効果的に抑制できる。残っている稜部が、サイドシル部材6の先端部9の内倒れ変形により全体的に座屈してしまうことは起き難くなる。変形し始めた後での更なる変形の抑制効果を期待できる。
よって、回転しながら突入する前輪7がサイドシル部材6の先端部9を、基点を中心として内側へ向けて変形させようとする力の一部を、車体2においてサイドシル部材6の内側に形成される剛性部へ伝達して逃がすことができる。これにより、サイドシル部材6の先端部9についての内倒れ変形を抑制できる。また、剛性部により湾曲稜部11がずれるように変形し難くなり、湾曲稜部11は、サイドシル部材6を内倒れし難くなるように好適に支えることができる。
よって、サイドシル部材6の先端部9が内側へ倒れようとする際には、その先端部9の内面を内側から確実に支えることができる。
よって、湾曲稜部11は、内倒れしようとするサイドシル部材6の先端部9の内面を内側から確実に支えることができる。
よって、仮にサイドシル部材6の先端部9が内倒れするように変形する場合でも、フットレスト10をその変形した部分から離れた位置に維持することができる。
図5では、1つの湾曲稜部11がトーボード5に設けられている。湾曲稜部11は、図2のようにトーボード5による最も前側の屈曲部を基点とするのではなく、サイドシル部材6の後端部21を基点としている。また、湾曲稜部11は、サイドシル部材6と、床面を構成するセンタトンネル20との間を橋渡すように設けられる。センタトンネル20は、フロアパネル4についての車幅方向の中央に設けられ、床面の剛性を向上させる骨格部材として機能する剛性部である。
また、図5(B)の湾曲稜部11は、上述した基点を中心とする円弧に略沿って湾曲した形状を有する。
また、図5(C)の湾曲稜部11は、複数の直線状の稜部が、上述した基点を中心とする円弧に略沿って連結されてなる屈曲した形状を有する。
これらの変形例では、前輪7がサイドシル部材6の先端へ内寄りに突入したとしても、サイドシル部材6がその後端を基点として、少なくとも先端部9が内側へ入るように内倒れしてしまうことを抑制できる。
また、サイドシル部材6の先端部9が若干内側へ倒れたとしても、その変形方向に沿って延在する円弧状の湾曲稜部11が残っているため、さらなる内倒れを抑制できる。
なお、図5では、湾曲稜部11のセンタトンネル20ではなく、床面において剛性を有するその他の骨格部材、たとえば床面において左右方向へ延在するクロスメンバや前後方向へ延在するサイドメンバなどとサイドシル部材6との間を橋渡すように設けられてもよい。この場合においても、クロスメンバやサイドメンバなどの骨格部材は、センタトンネル20と同様に湾曲稜部11を支えることができる。
図6では、1つの湾曲稜部11がトーボード5に設けられている。湾曲稜部11は、サイドシル部材6についてのクロスメンバ22との連結部を基点としている。
また、図6(B)の湾曲稜部11は、上述した基点を中心とする円弧に略沿って湾曲した形状を有する。
また、図6(C)の湾曲稜部11は、複数の直線状の稜部が、上述した基点を中心とする円弧に略沿って連結されてなる屈曲した形状を有する。
これらの変形例では、前輪7がサイドシル部材6の先端へ内寄りに突入したとしても、サイドシル部材6が他の骨格部材であるクロスメンバ22との連結部を基点として、少なくとも先端部9が内側へ入るように内倒れしてしまうことを抑制できる。
また、サイドシル部材6の先端部9が若干内側へ倒れたとしても、その変形方向に沿って延在する円弧状の湾曲稜部11が残っているため、さらなる内倒れを抑制できる。
図7では、1つの湾曲稜部11がトーボード5に設けられている。湾曲稜部11は、サイドシル部材6に設けられた最も前側の脆弱部23を基点としている。
また、図7(B)の湾曲稜部11は、上述した基点を中心とする円弧に略沿って湾曲した形状を有する。
また、図7(C)の湾曲稜部11は、複数の直線状の稜部が、上述した基点を中心とする円弧に略沿って連結されてなる屈曲した形状を有する。
これらの変形例では、前輪7がサイドシル部材6の先端へ内寄りに突入したとしても、サイドシル部材6が脆弱部23を基点として、少なくとも先端部9が内側へ入るように内倒れしてしまうことを抑制できる。
また、サイドシル部材6の先端部9が若干内側へ倒れたとしても、その変形方向に沿って延在する円弧状の湾曲稜部11が残っているため、さらなる内倒れを抑制できる。
2…車体、
3…車室、
4…フロアパネル、
5…トーボード、
6…サイドシル部材、
7…前輪、
8…後輪、
9…先端部、
10…フットレスト、
11…湾曲稜部(稜部、補強構造)、
20…センタトンネル
21…後端部、
22…クロスメンバ(他の骨格部材)、
23…脆弱部、
51…対象物
Claims (9)
- 車両の車体において前輪の後側に設けられて車室の側縁を構成するサイドシル部材と、
前記サイドシル部材の内側に設けられるトーボードまたはフロアパネルと、
前記トーボードまたは前記フロアパネルに設けられる補強構造と、
を有し、
前記補強構造は、
前記トーボードまたは前記フロアパネルにおいて、前記サイドシル部材の先端部の内側に、前記サイドシル部材の内倒れ方向に沿って延在するように設けられる、
車両の車体下部構造。
- 前記補強構造は、
前記サイドシル部材の先端部の内側に、前記サイドシル部材の内倒れ方向に沿って延在するように湾曲した形状または屈曲した形状に設けられる、
請求項1記載の車両の車体下部構造。
- 前記サイドシル部材は、前記前輪が前記先端部へ突入することにより、前記サイドシル部材の後端部、前記サイドシル部材についての他の骨格部材との連結部、前記サイドシル部材に設けられた脆弱部、または前記トーボードおよび前記フロアパネルにおける屈曲部を基点として前記先端部が内側へ入るように内倒れする、
請求項1または2記載の車両の車体下部構造。
- 前記補強構造は、
前記サイドシル部材が内倒れする際の前記先端部の円弧状の変形方向に沿って延在するように、円弧状に湾曲した稜部、前記円弧に沿って湾曲した形状の稜部、または複数の稜部が前記円弧に沿って連結されてなる屈曲した形状、を有する、
請求項1から3のいずれか一項記載の車両の車体下部構造。
- 前記補強構造は、
前記サイドシル部材が内倒れする際の前記先端部の円弧状の変形方向に沿って延在するように、前記先端部と、前記車体において前記サイドシル部材の内側に形成される剛性部との間に渡って湾曲した形状または屈曲した形状に形成された稜部、である、
請求項1から4のいずれか一項記載の車両の車体下部構造。
- 前記補強構造は、
湾曲した形状または屈曲した形状の複数の稜部が、互いに並べられた構造を有する、
請求項1から5のいずれか一項記載の車両の車体下部構造。
- 前記補強構造は、
内倒れする前記サイドシル部材の前記先端部に内側から当たって支えるように、前記サイドシル部材の前記先端部と同じ高さ位置に形成される、
請求項1から6のいずれか一項記載の車両の車体下部構造。
- 前記トーボードまたは前記フロアパネルは、前記サイドシル部材の前記先端部の前側または内側において、前記先端部の下側から、少なくとも前記先端部の上部までに至るように上へ屈曲または湾曲しており、
前記補強構造は、前記トーボードまたは前記フロアパネルについての上へ屈曲または湾曲させた部分に形成される、
請求項1から7のいずれか一項記載の車両の車体下部構造。
- 前記車室に入った乗員が足を置くフットレストは、前記トーボードまたは前記フロアパネルにおいて前記補強構造の内側に取り付けられる、
請求項1から8のいずれか一項記載の車両の車体下部構造。
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