(発明が解決しようとする課題)
上記したように、超電導体を着時する場合に、磁場印加工程、磁場中冷却工程、及び減磁工程が実施される。ここで、磁場中冷却工程にて超電導体が超電導遷移温度Tc以下にまで冷却されると、超電導体が超電導状態になり、マイスナー効果により超電導体内を通る磁場の一部が超電導体外に排除される。超電導体外に排除される磁場の量は、温度が低いほど多い。従って、磁場中冷却工程にて、超電導体が均一に冷却されていない場合、すなわち超電導体内における温度の均一性が低い場合、ボア内に排除される磁場量が場所によって異なり、これにより、ボア内の磁場の均一性が崩れる。そして、その状態で減磁工程が実施された場合(超電導体が着磁された場合)、均一性が崩れた磁場が補足される。その結果、ボア内における磁場強度の均一性が低下する。
また、捕捉磁場性能の目安となる臨界電流密度Jc(超電導体内を電気抵抗ゼロで流れる電流の密度)には、温度依存性があり、超電導遷移温度Tc以下の温度領域において、温度が低いほど、臨界電流密度Jcが大きい。従って、減磁工程の実施時に超電導体が均一に冷却されていない場合(すなわち超電導体内における温度の均一性が低い場合)、捕捉できる磁場の量が、場所によって異なる。こうした捕捉磁場量の場所による相違によって、ボア内における磁場強度の均一性が低下する。
このように、超電導体を着磁する際における超電導体の温度(冷却温度)の均一性が低い場合、ボア内における磁場強度の均一性も低下する。よって、超電導体の温度の均一性を高めることは、ボア内における磁場強度の均一性を高めるために必要な要件の一つである。
上記した特許文献記載の技術によれば、ボア内における磁場強度の均一性を高めるために、超電導体の形状及び構造についての改良がなされているが、超電導体の温度の均一化についての方策が施されていない。例えば、特許文献3の図7に、冷却装置のコールドヘッド上に円筒状の超電導体の一方端面が接触している構成が示される。このような構成である場合、冷却装置が作動すると、超電導体の一方端側の部分は十分に冷却されるが、他方端側の部分は十分に冷却されない。つまり、超電導体が軸方向に均一に冷却されない。このためボア内の磁場空間を十分に均一化することができず、或いは、磁場が均一な領域が減少するといった問題が発生する。
NMR装置に用いられる超電導体のボア内の磁場強度が不均一であると、精度のよい測定ができないので、その場合には室温ボア空間内に複数の補正コイル(シムコイル)を配設して磁場が均一にされる。ここで、磁場強度の不均一の度合いが大きい場合、補正コイルの数を増加して、ボア内の磁場強度の均一化を図ることになる。この場合、狭い室温ボア空間内に多くの補正コイルを配設することになり、その結果、室温ボア空間内に十分な大きさの試料空間を確保することができないという問題が発生する。これに対し、超電導体の冷却温度の均一性が高い場合、補正コイルの数を減じることができ、その結果、室温ボア空間内に十分な大きさの試料空間を確保することができる。このことからしても、超電導体は着磁の際に均一に冷却されていることが好ましい。
そこで、本発明は、超電導体の着磁の際における超電導体の温度の均一性を高めることができるように構成された超電導磁場発生装置、及び、そのような超電導磁場発生装置を備える核磁気共鳴装置を提供することを、目的とする。
(課題を解決するための手段)
本発明は、円筒状に形成され、超電導遷移温度以下の温度に冷却された状態で印加された磁場を捕捉することにより、磁場を発生する超電導体(1)と、超電導体を超電導遷移温度以下の温度に冷却するための冷熱を発生するコールドヘッド(3)を備える冷却装置(2)と、を備え、コールドヘッドは、超電導体がコールドヘッドからの冷熱によって軸方向における両端から冷却されるように構成される、超電導磁場発生装置(101,102,103,104,105,106,107)を提供する。
本発明に係る超電導磁場発生装置によれば、冷熱を発生するコールドヘッドは、円筒状の超電導体がコールドヘッドからの冷熱によって、軸方向における両端から冷却されるように構成される。超電導体がその軸方向における両端から冷却されることにより、超電導体の軸方向における温度差を小さくすることができる。その結果、超電導体を着磁する際における超電導体の温度の均一性、特に超電導体の軸方向における温度の均一性(以下、軸方向温度均一性という場合もある。)を高めることができる。
この場合、コールドヘッドは、超電導体の一方端面(1a)から超電導体を冷却するように超電導体の一方端面に熱的に接続されたステージ部(32)と、超電導体の他方端面(1b)から超電導体を冷却するように超電導体の他方端面に熱的に接続された延長部(33)とを有するとよい。これによれば、超電導体が、その一方端面からコールドヘッドのステージ部により冷却され、その他方端面からコールドヘッドの延長部により冷却される。このため超電導体が軸方向における両端から冷却されることになる。よって、超電導体を着磁する際における超電導体の軸方向温度均一性を高めることができる。
さらにこの場合、延長部はステージ部に熱的に接続されているとよい。また、延長部は、一方端面(331a)及びその反対側の他方端面(331b)を有し、一方端面がステージ部に熱的に接続された第一延長部(331)と、第一延長部の他方端面に熱的に接続されるとともに超電導体の他方端面に熱的に接続される第二延長部(332)と、を有するとよい。これによれば、超電導体が、その一方端面からコールドヘッドのステージ部により冷却され、その他方端面からコールドヘッドの第二延長部により冷却される。このため超電導体が軸方向における両端から冷却されることなる。よって、超電導体を着磁する際における超電導体の軸方向温度均一性を高めることができる。
また、本発明に係る超電導磁場発生装置は、円筒状に形成され、超電導体の外周面(1c)に熱的に接続される内周面(4d)を有し、超電導体の外周側から超電導体を保持するように超電導体の外周側に配設されるとともに、その一方端面(4a)がステージ部に熱的に接続され、その他方端面(4b)が延長部に熱的に接続される外側円筒状伝熱ホルダ(4)を備えるとよい。これによれば、超電導体をその外周側から保持するとともに超電導体の外周面に熱的に接続された外側円筒状伝熱ホルダの両端がコールドヘッドに熱的に接続されているので、冷却装置が作動すると、この外側円筒状伝熱ホルダもその両端から均一に冷却される。こうして冷却された外側円筒状伝熱ホルダによって、超電導体がその外周面からも冷却される。つまり、超電導体は、その一方端面、他方端面、及び外周面から冷却される。このように超電導体が冷却される表面がさらに増加することにより、着磁の際における超電導体の温度の均一性をより高めることができる。
この場合、外側円筒状伝熱ホルダの熱収縮率が、超電導体の熱収縮率以上であるとよい。これによれば、冷却装置の作動により超電導体及び外側円筒状伝熱ホルダが冷却された場合、外側円筒状伝熱ホルダの熱収縮量が超電導体の熱収縮量よりも多いため、外側円筒状伝熱ホルダが超電導体をその外周側から締め付ける。この締め付け力が超電導体に圧縮応力として作用する。また、超電導体には、着磁の際に電磁応力(フープ力)が作用する。この電磁応力によって超電導体は径外方に広がるような力を受ける。すなわち電磁応力は引張応力として超電導体に作用する。この引張応力に対向して、外側円筒状伝熱ホルダからの圧縮応力が超電導体に作用するために、上記引張応力が相殺される。このため、電磁応力による超電導体の破損を効果的に防止することができる。
また、外側円筒状伝熱ホルダの軸方向両端部における中心軸に垂直な断面の面積は、軸方向中央部における中心軸に垂直な断面積よりも大きいのが好ましい。磁場中冷却工程にて超電導体から外側円筒状伝熱ホルダの軸方向中央部に伝達された熱は、外側円筒状伝熱ホルダの両端に伝達され、さらに外側円筒状伝熱ホルダの両端からコールドヘッドに伝達される。また、外側円筒状伝熱ホルダの両端部にも、超電導体から直接熱が伝達される。従って、外側円筒状伝熱ホルダの両端には、外側円筒状伝熱ホルダの軸方向中央部から伝達された熱と、超電導体から伝達された熱が合流する。このため外側円筒状伝熱ホルダの両端部には、多くの熱が流れる。ここで、本発明のように、外側円筒状伝熱ホルダの両端の断面積を中央の断面積よりも大きくすることにより、多くの熱が流れる外側円筒状伝熱ホルダの両端部から効率よく熱をコールドヘッドに伝えることができる。つまり、外側円筒状伝熱ホルダの放熱効率が向上する。よって、超電導体を速やかに冷却することができるとともに、外側円筒状伝熱ホルダに熱が滞ることによって超電導体の温度の均一性が低下することを、効果的に防止することができる。また、上記した、超電導体の着磁の際に生じる電磁応力(フープ力)に関し、超電導体の軸方向中央部に作用する電磁応力よりも両端部に作用する電磁応力の方が大きいことが知られている。この点に関し、本発明のように外側円筒状伝熱ホルダの両端部の断面積を大きくして、外側円筒状伝熱ホルダの両端部の強度を高めることで、電磁応力に対する補強効果を高めることができる。
また、本発明に係る超電導磁場発生装置は、円筒状に形成され、その内周面(8d)が超電導体の外周面に接触し、その外周面(8c)が外側円筒状伝熱ホルダの内周面に接触するように、超電導体と外側円筒状伝熱ホルダとの間に配設されるとともに、その一方端面(8a)がステージ部に熱的に接続され、その他方端面(8b)が延長部に熱的に接続される補強部材(8)を備えるとよい。これによれば、補強部材が超電導体の外周面に取り付けられていることにより、超電導体の着磁の際に生じる電磁応力(フープ力)に対する補強効果を高めることができる。
この場合、外側円筒状伝熱ホルダの熱収縮率が、補強部材の熱収縮率以上であり、且つ、補強部材の熱収縮率が、超電導体の熱収縮率以上であるのがよい。これによれば、超電導体を冷却する際に、外側円筒状伝熱ホルダ及び補強リングの熱収縮により超電導体に圧縮応力が作用する。つまり、外側円筒状伝熱ホルダからの圧縮応力及び補強リングからの圧縮応力により、超電導体が二重に補強される。よって、超電導体の着磁の際に生じる電磁応力(フープ力)に対する補強効果をより一層高めることができる。
また、本発明に係る超電導磁場発生装置は、円筒状に形成され、超電導体の内周面(1d)に熱的に接続された外周面(5c)を有し、超電導体の内周側から超電導体を保持するように超電導体の内周側に配設されるとともに、その一方端面(5a)がステージ部に熱的に接続され、その他方端面(5b)が延長部に熱的に接続された内側円筒状伝熱ホルダ(5)を備えていてもよい。これによれば、超電導体をその内周側から保持するとともに超電導体の内周面に熱的に接続された内側円筒状伝熱ホルダの両端がコールドヘッドに熱的に接続されているので、冷却装置が作動すると、この内側円筒状伝熱ホルダもその両端から均一に冷却される。こうして冷却された内側円筒状伝熱ホルダによって、超電導体がその内周面からも冷却される。つまり、超電導体は、その一方端面、他方端面、及び内周面から冷却される。このように超電導体が冷却される表面がさらに増加することにより、着磁の際における超電導体の温度の均一性をより高めることができる。加えて、内側円筒状伝熱ホルダが超電導体と超電導体の内周側に形成される室温ボア空間との間に介在することになるので、室温ボア空間側からの熱輻射による超電導体の温度上昇を防止することができる。
また、本発明に係る超電導磁場発生装置は、コールドヘッドに熱的に接続された第一カップ状伝熱ホルダ(61)及び第二カップ状伝熱ホルダ(62)を備えていても良い。第一カップ状伝熱ホルダは、カップ状に形成されているとともに、超電導体の一方端面に熱的に接続された円板状の第一底壁部(611)と、第一底壁部の周縁にその一方端が連結するとともに超電導体の軸方向における中央位置から一方端面までの部分である一方側部分(1A)の外周面に熱的に接続された円筒状の第一側壁部(612)とを有し、一方側部分を保持するように超電導体に対して配設される。第二カップ状伝熱ホルダは、カップ状に形成されているとともに、超電導体の他方端面に熱的に接続された円板状の第二底壁部(621)と、第二底壁部の周縁にその一方端が連結するとともに超電導体の軸方向における中央位置から他方端面までの部分である他方側部分(1B)の外周面に熱的に接続された円筒状の第二側壁部(622)とを有し、他方側部分を保持するように超電導体に対して配設される。
これによれば、第一カップ状伝熱ホルダ及び第二カップ状伝熱ホルダがコールドヘッドに熱的に接続されているので、これらのカップ状伝熱ホルダもコールドヘッドにより冷却される。また、第一カップ状伝熱ホルダによって、超電導体の軸方向における中央位置から一方端面までの部分(一方側部分)が、その端面(一方端面)及び外周面から冷却され、第二カップ状伝熱ホルダによって、超電導体の軸方向における中央位置から他方端面までの部分(他方側部分)が、その端面(他方端面)及び外周面から冷却される。このように超電導体がその両端面及び外周面から冷却されるため、超電導体を着磁する際において超電導体の軸方向温度均一性を高めることができる。
また、第一カップ状伝熱ホルダは、第一側壁部の他方端から径外方に延設された第一接続部(613)を有し、第二カップ状伝熱ホルダは、第二側壁部の他方端から径外方に延設された第二接続部(623)を有するとよい。そして、第一接続部と第二接続部が対面した状態で、第一カップ状伝熱ホルダと第二カップ状伝熱ホルダが連結され、第一接続部と第二接続部が、コールドヘッドに熱的に接続されるとよい。
これによれば、対面配置した第一カップ状伝熱ホルダの第一接続部と第二カップ状伝熱ホルダの第二接続部がコールドヘッドに熱的に接続されることにより、超電導体の一方側部分の熱が第一カップ状伝熱部材を経由してコールドヘッドに至るまでの距離と、超電導体の他方側部分の熱が第二カップ状伝熱部材を経由してコールドヘッドに至るまでの距離を、ほぼ等しくすることができる。このため、超電導体の全体に亘り、冷却速度をほぼ一定にすることができる。これにより、より一層、超電導体を均一に冷却することができる。
また、第一カップ状伝熱ホルダ及び第二カップ状伝熱ホルダの熱収縮率は、超電導体の熱収縮率以上であるのがよい。これによれば、磁場中冷却工程にて超電導体を冷却する際に、第一カップ状伝熱ホルダの第一側壁部の熱収縮により超電導体の一方側部分に圧縮応力が作用するとともに、第二カップ状伝熱ホルダの第二側壁部の熱収縮により超電導体の他方側部分に圧縮応力が作用する。このため超電導体の着磁の際に生じる電磁応力(フープ力)に対する補強効果を高めることができる。
また、本発明に係る超電導磁場発生装置は、円筒状に形成され、その内周面(8d)が超電導体の外周面に接触し、その外周面(8c)が第一側壁部の内周面(612d)及び第二側壁部の内周面(622d)に接触するように、超電導体と第一側壁部及び第二側壁部との間に配設されるとともに、その一方端面(8a)が第一底壁部に熱的に接続され、その他方端面(8b)が第二底壁部に熱的に接続される補強部材(8)を備えるとよい。これによれば、円筒状の補強部材が超電導体の外周に取り付けられていることにより、超電導体の着磁の際に生じる電磁応力(フープ力)に対する補強効果を高めることができる。
この場合、第一カップ状伝熱ホルダ及び第二カップ状伝熱ホルダの熱収縮率が、補強部材の熱収縮率以上であり、補強部材の熱収縮率が、超電導体の熱収縮率以上であるとよい。これによれば、超電導体を冷却する際に第一カップ状伝熱ホルダの第一側壁部及び第二カップ状伝熱ホルダの第二側壁部、並びに補強部材の熱収縮により超電導体に圧縮応力が作用する。つまり、各カップ状伝熱ホルダからの圧縮応力及び補強部材からの圧縮応力により、超電導体が二重に補強される。よって、超電導体の着磁の際に生じる電磁応力(フープ力)に対する補強効果をより一層高めることができる。
また、本発明に係る超電導磁場発生装置は、円筒状に形成され、超電導体の内周面に熱的に接続された外周面(5c)を有し、超電導体の内周側から超電導体を保持するように超電導体の内周側に配設されるとともに、その一方端面(5a)が第一底壁部に熱的に接続され、その他方端面(5b)が第二底壁部に熱的に接続された内側円筒状伝熱ホルダ(5)を備えるとよい。これによれば、超電導体の内周面に熱的に接続された内側円筒状伝熱ホルダの両端がそれぞれカップ状伝熱部材の底壁部に熱的に接続されているので、冷却装置が作動すると、この内側円筒状伝熱ホルダもその両端から均一に冷却される。こうして冷却された内側円筒状伝熱ホルダによって、超電導体がその内周面からも冷却される。つまり、超電導体は、その一方端面、他方端面、外周面及び内周面から冷却される。このように超電導体が冷却される表面がさらに増加することにより、超電導体をより均一に冷却することができる。加えて、内側円筒状伝熱ホルダが超電導体と超電導体の内周側に形成される室温ボア空間との間に介在することになるので、室温ボア空間側からの熱輻射による超電導体の温度上昇を防止することができる。
また、本発明は、上記した超電導磁場発生装置を備えた核磁気共鳴装置(110)を提供する。これによれば、超電導磁場発生装置により超電導体の冷却温度の均一性が高められた状態で、超電導体が着磁されるので、室温ボア空間内に均一な磁化空間が形成される。このため、核磁気共鳴装置の測定精度を向上させることができる。
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態について説明する。図1は、第一実施形態に係る超電導磁場発生装置101を上下方向に沿った中心線を含む平面で切断した断面を表す概略図である。図1に示すように、超電導磁場発生装置101は、超電導体1と、冷却装置2と、コールドヘッド3と、外側円筒状伝熱ホルダ4と、真空断熱容器7とを備える。
超電導体1は、図1に示すように、所定の径方向長さを有する複数の円筒状の超電導バルクを軸方向に沿って同軸的に積み重ねることによって円筒状に形成される。図1においては、6個の円筒状の超電導バルク(第一超電導バルク11、第二超電導バルク12、第三超電導バルク13、第四超電導バルク14、第五超電導バルク15、第六超電導バルク16)が、下から上に向かってこの順に軸方向に沿って同軸的に積み重ねられることにより、超電導体1が形成される。超電導バルクの個数は特に限定されない。なお、一つの超電導バルクによって円筒状の超電導体1を構成してもよい。このような円筒状の超電導体1は、軸方向における一方端面1a(下端面)及び他方端面1b(上端面)、外周面1c、内周面1dを有する。一方端面1a及び他方端面1bの形状は、リング形状である。超電導体1の内周面1dに囲まれた空間が、超電導体1のボア(内周空間)である。
超電導体1は高温超電導材料により形成される。本実施形態においては、超電導体1は、RE−Ba−Cu−O(REはYを含む希土類元素)系超電導体であり、周知の溶融法により形成される。超電導体1は、c軸方向を積層方向(層に垂直な方向)とする層状の結晶構造を持ち、結晶構造のc軸の方向が超電導体1の軸方向に一致するように種結晶から結晶成長させることにより形成される。
冷却装置2は、超電導体1の超電導遷移温度(臨界温度)Tc(例えば90K)以下の冷熱、例えば50K程度の冷熱を生成できるものであればどのようなものであってもよい。冷却装置2として、パルス管冷凍機、GM冷凍機、スターリング冷凍機を例示することができる。冷却装置2は、冷凍サイクル運転の実施によって冷熱を発生するものであるのが好ましいが、液体窒素のような、高温超電導体の超電導遷移温度Tc以下の温度を提供することができる物質であってもよい。
コールドヘッド3は、冷却装置2に備えられる。コールドヘッド3は、冷却装置2が生成した冷熱を外部に伝達するための部材である。従って、コールドヘッド3は、冷却装置の作動により冷熱を発生する。本実施形態及び以下の各実施形態では、コールドヘッド3は、超電導体1を超電導遷移温度Tc以下の温度T0に冷却するための冷熱を発生する。コールドヘッド3は、熱伝導率が高く且つ非磁性の材質により形成される。本実施形態及び以下の各実施形態において、コールドヘッド3は銅により形成される。
コールドヘッド3は、柱状に形成された軸部31と、円板状に形成されたステージ部32と、延長部33とを有する。軸部31の一方の端部が冷却装置2の冷熱生成部分(図示省略)に接触される。例えば、冷却装置2がパルス管冷凍機である場合、軸部31は蓄冷管の低温端部に接触され、冷却装置2がGM冷凍機である場合、軸部31は膨張空間を画成するシリンダ部分に接触される。図1において、軸部31は冷却装置2の上側に設けられる。軸部31の上端(他方の端部)に円板状のステージ部32が連続的に且つ同軸的に形成される。
円板状のステージ部32は、軸方向における一方端面32a(下端面)及び他方端面32b(上端面)と、外周面32cを有する。ステージ部32の一方端面32aが軸部31の上端に接続される。そして、図1において上方を向いたステージ部32の他方端面32bに円筒状の超電導体1の一方端面1aが接触するように、ステージ部32上に超電導体1が載置される。超電導体1の一方端面1aとステージ部32の他方端面32bとの接触により、超電導体1とコールドヘッド3(ステージ部32)が熱的に接続される。上記したように、コールドヘッド3は、超電導体1を冷却するための冷熱を発生する。従って、コールドヘッド3(ステージ部32)は、超電導体1の一方端面1aから超電導体1を冷却するように、超電導体1の一方端面1aに熱的に接続されることになる。
超電導体1は、ステージ部32の他方端面32bから図1において上方に延設される。また、ステージ部32と超電導体1は同軸配置される。さらに、ステージ部32の外径は超電導体1の外径よりも大きい。従って、ステージ部32の他方端面32bには、超電導体1の一方端面1aが接触したリング状の超電導体接触領域と、超電導体接触領域よりも内周側の円形領域及び外周側のリング状領域が存在する。内周側の円形領域上には、超電導体1のボアが形成される。外周側のリング状領域には、後述するように、延長部33及び外側円筒状伝熱ホルダ4が載置される。
延長部33は、第一延長部331と第二延長部332を有する。第一延長部331は円筒状に形成される。円筒状の第一延長部331は、軸方向における一方端面331a(下端面)及びその反対側の他方端面331b(上端面)と、外周面331cと、内周面331dとを有する。また、第一延長部331の外径はステージ部32の外径にほぼ等しく、第一延長部331の内径は超電導体1の外径よりも大きい。また、第一延長部331の軸方向長さは超電導体1の軸方向長さに等しい。そして、第一延長部331の一方端面331aがステージ部32の他方端面32bのうち外周に近い部分に接触するように、ステージ部32上に第一延長部331が同軸状に載置される。これにより第一延長部331の一方端面331aがステージ部32に熱的に接続される。
第一延長部331は、超電導体1と同様に、ステージ部32の他方端面32bから図1において上方に延設される。第一延長部331の内周側に超電導体1が配置しており、超電導体1の外周面1cと第一延長部331の内周面331dが、所定の距離を隔てて対面する。つまり、第一延長部331は、超電導体1の外周側に超電導体1の外周面1cから離間して配設される。
第二延長部332は円板状に形成され、軸方向における一方端面332a(下端面)及び他方端面332b(上端面)を有する。また、円板状の第二延長部332の中央には、その一方端面332aから他方端面332bにかけて軸方向に貫通する円孔333が形成される。従って、第二延長部332は、外周面332c及び、円孔333を囲む内周面332dを有する。
第二延長部332の内径(円孔333の径)は、超電導体1の内径にほぼ等しく、第二延長部332の外径は、第一延長部331の外径にほぼ等しい。そして、第二延長部332は、その一方端面332aのうち外周面332cに近い周方向領域が第一延長部331の他方端面331bに接触するように、第一延長部331上に同軸状に配設される。これにより第二延長部332が第一延長部331に熱的に接続される。また、このとき、図1に示すように、第二延長部332の一方端面332aのうち内周面332dに近い周方向領域が、超電導体1の他方端面1bに接触する。これにより第二延長部332が超電導体1の他方端面1bに熱的に接続される。従って、第二延長部332は、その一方端面332aのうち外周に近い周方向領域が第一延長部331の他方端面331bに熱的に接続されるとともに、その一方端面332aのうち内周に近い周方向領域が超電導体1の他方端面1bに熱的に接続されるように、構成される。
上記したように、コールドヘッド3の延長部33は、その第一延長部331にてステージ部32に熱的に接続されるとともに、その第二延長部332にて超電導体1の他方端面1bにも熱的に接続される。従って、コールドヘッド3(延長部33)は、超電導体1の他方端面1bから超電導体1を冷却するように、超電導体1の他方端面1bに熱的に接続されることになる。すなわち、コールドヘッド3は、そのステージ部32にて超電導体1をその一方端面1a側から冷却し、その延長部33にて超電導体1をその他方端面1b側から冷却するように構成される。別言すれば、超電導体1がコールドヘッド3からの冷熱によって軸方向における両端から冷却されるように、コールドヘッド3が構成される。
図1に示すように、超電導体1と第一延長部331との間に外側円筒状伝熱ホルダ4が配設される。外側円筒状伝熱ホルダ4は、超電導体1の外周側から超電導体1を保持するように、超電導体1の外周側に配設される。外側円筒状伝熱ホルダ4は、熱伝導率が高く且つ非磁性の材料により形成される。本実施形態において、外側円筒状伝熱ホルダ4は、アルミニウム又はアルミニウム合金により形成される。
外側円筒状伝熱ホルダ4は、円筒状に形成されていて、軸方向における一方端面4a及び他方端面4b、外周面4c、内周面4dを有する。外側円筒状伝熱ホルダ4の内径は、超電導体1の外径にほぼ等しく、外側円筒状伝熱ホルダ4の外径は、延長部33の第一延長部331の内径よりも小さい。また、外側円筒状伝熱ホルダ4の軸方向長さは、超電導体1の軸方向長さに等しい。そして、外側円筒状伝熱ホルダ4の内周面4dが超電導体1の外周面1cに接触するように、外側円筒状伝熱ホルダ4が超電導体1に対して配設される。外側円筒状伝熱ホルダ4の内周面4dと超電導体1の外周面1cとの接触により、外側円筒状伝熱ホルダ4の内周面4dが超電導体1の外周面1cに熱的に接続される。このとき、外側円筒状伝熱ホルダ4は、延長部33の第一延長部331の内周側に、第一延長部331とは離間して配設される。
また、外側円筒状伝熱ホルダ4は、その一方端面4aがステージ部32の他方端面32bに接触し、その他方端面4bが延長部33の第二延長部332の一方端面332aに接触するように、ステージ部32上に載置される。これらの接触により、外側円筒状伝熱ホルダ4の一方端面4aがステージ部32に熱的に接続され、外側円筒状伝熱ホルダ4の他方端面4bが延長部33(第二延長部332)に接続される。つまり、外側円筒状伝熱ホルダ4の両端がコールドヘッド3に熱的に接続される。
また、外側円筒状伝熱ホルダ4の両端部には、径外方に拡径した鍔部41a、41bが、それぞれ形成される。外側円筒状伝熱ホルダ4の中心軸に垂直な平面で切断した鍔部41a,41bの断面積は、それ以外の部分の断面積よりも大きい。つまり、外側円筒状伝熱ホルダ4は、その軸方向両端部における中心軸に垂直な断面積が、その軸方向中心部における中心軸に垂直な断面積よりも大きくなるように、構成される。鍔部41a,41bが、ネジ止め等によりステージ部32及び第二延長部332に固定されることにより、外側円筒状伝熱ホルダ4の両端がコールドヘッド3(ステージ部32及び延長部33)に結合される。
また、外側円筒状伝熱ホルダ4は、熱収縮率が超電導体1の熱収縮率以上である材質により形成される。本実施形態において、外側円筒状伝熱ホルダ4はアルミニウム或いはアルミニウム合金により形成される。周知のように、アルミニウム或いはアルミニウム合金の熱収縮率は1.7×10−5/K程度であり、この熱収縮率は、Re−Ba−Cu−O系の超電導体の熱収縮率(5.7×10−6/K)よりも大きい。従って、本実施形態では、外側円筒状伝熱ホルダ4の熱収縮率は、超電導体1の熱収縮率よりも大きい。
真空断熱容器7は、外側容器71及び内側容器72を備える。外側容器71は、コールドヘッド3のステージ部32の外径よりも大きい内径を有する円筒形状の本体部711と、本体部711の図1において下端から径外方に放射状に延設されることによりリング状に形成された固定部712と、本体部711の図1において上端から径内方に放射状に延設されることによりリング状に形成されたカバー部713とを有する。外側容器71の固定部712が冷却装置2の上面に気密的に固定される。本体部711は、固定部712から図1の上方に延設されるとともに、その内周空間に、コールドヘッド3、外側円筒状伝熱ホルダ4、及び超電導体1を収納するように、これらの構成要素と同軸的に配設される。このとき、外側容器71のカバー部713は、コールドヘッド3の延長部33の第二延長部332の上側に所定の間隔を開けて配置する。
図1に示すように、リング状のカバー部713の中央には、軸方向に貫通する円孔713aが形成される。円孔713aの径は、超電導体1の内径よりも僅かに小さい。また、円孔713aの中心軸は、超電導体1の内周空間の中心軸に一致する。この円孔713aを通じて、内側容器72が本体部711の内周空間内に挿入される。
内側容器72は、有底円筒状の容器部721と、容器部721の開口端から径外方に放射状に延設されたリング状の蓋部722とを有する。蓋部722の外径は、外側容器71のカバー部713に設けられた円孔713aの径よりも大きい。また、容器部721の外径は、円孔713aの径と等しいか又は僅かに小さい。そして、容器部721が円孔713aから本体部711の内周空間内に差し込まれるとともに、蓋部722が外側容器71のカバー部713の上面に載置される。ここで、上記したように、円孔713aの中心軸は超電導体1の内周空間(ボア)の中心軸に一致する。従って、本体部711の内周空間内に差し込まれた容器部721は、超電導体1のボア(内周空間)に進入する。つまり、容器部721は超電導体1のボア内に配設される。容器部721内の空間に、例えばNMR装置にて分析される試料が載置される。容器部721内の空間は、超電導体1のボアのほぼ中央に設けられる。この空間を、室温ボア空間と呼ぶ。
また、内側容器72の容器部721の図1において上側部分の外周面と、円孔713aを形成する外側容器71のカバー部713の内周壁面との隙間が、図示しない封止手段により気密的に封止される。これによりカバー部713に形成された円孔713aが塞がれる。また、上述のように真空断熱容器7の外側容器71の固定部712は冷却装置2に気密的に固定されている。従って、真空断熱容器7及び冷却装置2によって密閉空間が冷却装置2の図1において上方に形成される。この密閉空間内に、超電導体1、コールドヘッド3、及び外側円筒状伝熱ホルダ4が配設される。真空断熱容器7は、アルミニウム合金等の非磁性材料で形成される。
次に、上記構成の超電導磁場発生装置101を用いて超電導体1を着磁して超電導体1のボア内に磁場を発生させる方法について説明する。この磁場発生方法は、減圧工程、磁場印加工程、磁場中冷却工程、減磁工程を含み、上記工程がこの順で実行されることにより、超電導体1のボア内に磁場が発生される。
減圧工程では、図1において図示しない排気装置を用いて密閉空間の内部を排気する。これにより、密閉空間内の気圧が、例えば0.1Pa以下の真空状態にされる。
磁場印加工程では、図1において図示しない外部磁場発生装置を作動させることにより、超電導体1の超電導遷移温度Tcよりも高い温度(例えば常温)にて、超電導体1に磁場を印加する。これにより、超電導体1のボア内の空間に、超電導体1の軸方向に沿って磁束が通過するような磁場が形成される。また、超電導体1のボア内の空間に、磁場強度分布が軸対称であって、且つ、室温ボア空間内の磁場強度が径方向及び軸方向に均一に分布するように、磁場が印加される。
磁場中冷却工程では、外部磁場発生装置の作動によって超電導体1に磁場が印加された状態のまま、冷却装置2を作動させる。これにより冷却装置2が冷熱を生成し、生成した冷熱がコールドヘッド3に伝達される。これにより、コールドヘッド3が冷熱を発生する。また、コールドヘッド3の冷熱は、コールドヘッド3のステージ部32及び延長部33から、コールドヘッド3に熱的に接続された超電導体1に伝達される。これにより、超電導体1が、超電導遷移温度Tc以下の温度T0、例えば50Kに冷却される。冷却装置2による冷却により超電導体1の温度が超電導遷移温度Tc以下の温度にまで低下した場合、超電導体1が超電導状態にされる。
なお、磁場中冷却工程の実施中に、磁場調整工程を実施してもよい。この磁場調整工程では、磁場中冷却工程の途中であり超電導体1の超電導遷移温度Tcよりも僅かに高い温度まで超電導体1が冷却されたときに、外部磁場発生装置を制御して、室温ボア空間内に、超電導体1の軸方向及び径方向における磁場強度分布が均一な均一磁場が形成されるように、印加磁場を調整する。この磁場調整工程により、それまでに超電導体1に生じていた磁化の変化が印加磁場に与える影響が打ち消される。
減磁工程では、超電導体1の温度を超電導遷移温度Tc以下の温度T0に維持したまま、外部磁場発生装置の作動を停止させる。これにより、超電導遷移温度Tc以下の温度に冷却された(すなわち超電導状態にされた)超電導体1に印加されている磁場が取り除かれる。すると、印加磁場の除去に伴う磁場強度の変化を受けて、磁場の状態を復元するように超電導体1内に超電導電流が誘起される。超電導電流は、超電導体1の中心軸に垂直な平面内を、超電導体1の中心軸を中心として流れる円電流である。このようにして誘起された超電導電流が超電導体1内を流れることにより磁場が発生する。すなわち超電導体1が着磁される。超電導体1の着磁により発生する磁場は、基本的には、外部磁場発生装置の作動により発生していた印加磁場と同じ磁場である。つまり、超電導体1に超電導電流が流れることにより、超電導体1が、外部磁場発生装置の作動により発生していた印加磁場を捕捉する。超電導体1が印加磁場を捕捉することにより超電導体1のボア内に磁場が発生する。磁場の捕捉によって発生した磁場を、捕捉磁場と呼ぶこともある。
このように、超電導磁場発生装置101は、磁場印加工程、磁場中冷却工程、減磁工程を経て、超電導体1のボア内に磁場を発生するように構成される。
次に、超電導磁場発生装置101にて発生した捕捉磁場を利用した核磁気共鳴装置について簡単に説明する。図2は、核磁気共鳴装置110の概略構成を示す図である。核磁気共鳴装置110は、超電導磁場発生装置101と、検出コイル120と、分析手段130とを備える。検出コイル120は、超電導体1のボア内に配設された内側容器72の容器部721内(室温ボア空間内)に配設される。検出コイル120の内周側に、測定すべき試料Pが配設される。さらに、室温ボア空間内の検出コイル120の外周側に、シムコイル91が配設される。また、分析手段130は、高周波発生装置131、パルスプログラマ(送信器)132、高周波増幅器133、プリアンプ(信号増幅器)134、位相検波器135、アナログ−デジタル(A/D)変換器136、及びコンピュータ137を備える。
超電導磁場発生装置101を作動させると、上述のようにして、超電導体1のボア内に捕捉磁場が形成される。次に、シムコイル91により捕捉磁場を調整することにより、捕捉磁場の磁場強度の均一性が高められる。このとき室温ボア空間内の磁場強度の均一性が1ppm以下となるように、捕捉磁場がシムコイル91により調整される。そして、磁場強度の均一性が高められた室温ボア空間内に試料Pが置かれる。この状態において、高周波発生装置131を作動させる。すると、高周波発生装置131により発生された高周波パルスがパルスプログラマ132及び高周波増幅器133を経て検出コイル120に通電され、試料Pにパルス電磁波(ラジオ波)が照射される。磁場中に置かれた試料Pにラジオ波を照射させた場合に起きる核磁気共鳴により、試料Pのまわりに設けられた検出コイル120に微小電流が流れる。この微小電流を表す信号(NMR信号)が、プリアンプ134、位相検波器135、A/D変換器136を経てコンピュータ137に受け渡される。コンピュータ137は、受け渡されたNMR信号に基づいてNMRスペクトルを算出する。得られたNMRスペクトルから試料Pの分子構造が解析される。
超電導磁場発生装置を備えるNMR装置によって試料の分子構造を解析するに当たり、超電導体のボア内の捕捉磁場強度のばらつきが大きいと、得られるNMRスペクトルがブロードとなり、試料の分子構造を適切に識別することができない。よって、NMR装置に用いられる超電導磁場発生装置は、試料が置かれる室温ボア空間の捕捉磁場強度が均一な磁場(均一磁場)を形成することができるように構成されているのが好ましい。
なお、高分解能NMR測定のためには、磁場強度のばらつきが1ppm以下の高い均一性が要求される。磁場強度のばらつきが1ppm以下の極めて均一性が高い磁場空間は、上記したように、シムコイル(磁場補正コイル)で磁場を調整することにより達成され得る。言い換えれば、超電導磁場発生装置により室温ボア空間に形成される捕捉磁場の磁場強度のばらつきは、最低でも、シムコイルによる補正が可能なppmオーダーでなければならない。
室温ボア空間内の捕捉磁場の均一化を図るためには、磁場印加工程にて室温ボア空間に印加される磁場(印加磁場)が均一であることの他に、超電導遷移温度Tc以下に冷却されている超電導体1の温度の均一性が高いことも、要求される。従って、超電導磁場発生装置は、超電導体1を均一に冷却することができるように構成されているのが好ましい。
しかしながら、従来の超電導磁場発生装置では、超電導体の着磁の際における超電導体1の温度の均一性を高めることは困難であった。これについてまず説明する。図10は、従来の超電導磁場発生装置を上下方向に沿った中心線を含む平面で切断した断面を表す概略図である。この例(従来例)に係る超電導磁場発生装置100Cは、超電導体1、冷却装置2、コールドヘッド3、及び真空断熱容器7を備える。超電導体1及び真空断熱容器7の構成は、第一実施形態に係る超電導磁場発生装置101が備える各構成と同一である。また、超電導磁場発生装置100Cに備えられるコールドヘッド3は、軸部31及びステージ部32を有する。これらの構成は、第一実施形態に係る超電導磁場発生装置101のコールドヘッド3が備える軸部31及びステージ部32の構成と同一である。また、超電導磁場発生装置100Cは、第一実施形態に係る超電導磁場発生装置101が備える外側円筒状伝熱ホルダ4に対応する構成として、ホルダHを備える。
図10に示すように、超電導体1は円筒状に形成され、その一方端面1aがコールドヘッド3のステージ部32の他方端面32b(上端)に接触するように、ステージ部32上に載置される。これにより、コールドヘッド3が超電導体1の一方端面1aに熱的に接続される。また、ホルダHは、アルミニウム合金製であり、リング状の固定部H1と、円筒部H2と、中央に円孔が形成された円板状の蓋部H3を有する。ホルダHは、固定部H1がコールドヘッド3のステージ部32の他方端面32bに接触した状態で、ステージ部32上に載置される。円筒部H2は固定部H1の内周縁から立設され、超電導体1の外周面1cを覆う。蓋部H3は、円筒部H2の上端から径内方に向かって形成されており、超電導体1の他方端面1bを覆う。
従来例に係る超電導磁場発生装置100Cを用いて捕捉磁場を得るにあたり、磁場中冷却工程にて冷却装置2を作動させると、超電導体1は、主に、コールドヘッド3のステージ部32に接触している一方端面1a側から冷却される。また、アルミニウム合金製のホルダHはコールドヘッド3のステージ部32に熱的に接続されているので、ホルダHも磁場中冷却工程にて冷却される。そのため、ホルダHによって超電導体1の他方端面1b側も冷却されるが、ホルダHはコールドヘッド3の冷熱によって冷却されるので、冷却能力がコールドヘッド3の冷却能力よりも低い。従って、超電導体1の一方端面1a側の部分は十分に冷却されるが、他方端面1b側の部分は十分に冷却されない。その結果、超電導体1の一方端面1a側の温度は低く、他方端面1b側の温度は高い。つまり、磁場中冷却工程にて超電導体1が均一に冷却されない。特に、超電導体1は、その軸方向に沿って均一に冷却されず、軸方向に温度分布が存在する。言い換えれば、超電導体1の軸方向における温度の均一性が低い。
超電導体1の軸方向における温度の均一性が低い状態で減磁工程を実施して超電導体1を着磁し、超電導体1のボア内に捕捉磁場を形成した場合、形成された捕捉磁場の均一性は低い。図11は、従来例に係る超電導磁場発生装置100Cを用いて超電導体1のボア内に捕捉磁場を形成した場合に得られる超電導体1の軸方向におけるボア内の磁場強度分布を、超電導体1の軸方向における温度分布と併記したグラフである。図11(a)は、磁場中冷却工程にて冷却された超電導体1の軸方向における温度分布を示すグラフであり、縦軸が超電導体1の軸方向位置Z、横軸が温度Tである。図11(b)は、減磁工程の実施によってボア内に形成される捕捉磁場強度の超電導体1の軸方向における分布を示す図であり、縦軸が超電導体1の軸方向位置Z、横軸がボア内の磁場強度Bである。また、図11(c)は、上記した各グラフの縦軸(軸方向位置)に対応する超電導体1の模式図である。図11において、超電導体1の一方端面1aの軸方向位置がZ=0の位置に相当し、超電導体1の他方端面1bの位置がZ=hの位置に相当する。
図11(a)に示すように、超電導体1の軸方向位置Zが大きくなるほど、すなわち超電導体1の一方端面1a側から他方端面1b側に向かうほど、温度Tが高くなっている。つまり、超電導体1の軸方向温度均一性が低い。また、図11(b)に示すように、超電導体1の軸方向に沿って、捕捉磁場強度Bが一定である領域はほとんど存在せず、軸方向位置Zが0付近の領域を除き、軸方向位置Zが大きくなるほど、捕捉磁場強度Bが低下することがわかる。つまり、超電導体1の軸方向に沿った捕捉磁場強度が均一でない。このため室温ボア空間内の捕捉磁場強度も均一でない。或いは、室温ボア空間内で磁場強度が均一な領域が極めて狭い。よって、従来例に係る超電導磁場発生装置100Cを用いたNMR装置で試料を分析すると、室温ボア空間内の捕捉磁場強度が均一でないことによって、NMRスペクトルがブロードになり、十分に精度の高い解析を行うことができない。或いは、室温ボア空間内の磁場強度を均一にするために多くのシムコイルを室温ボア空間内に組み込まなければならず、その結果、室温ボア空間内に十分な試料空間を確保することができない。
この点に関し、第一実施形態に係る超電導磁場発生装置101によれば、磁場中冷却工程にて、ほぼ均一に超電導体1を冷却することができる。第一実施形態に係る超電導磁場発生装置101は、上記したように、コールドヘッド3がステージ部32及び延長部33を有する。そして、ステージ部32が超電導体1の一方端面1aに熱的に接続され、延長部33(第二延長部332)が超電導体1の他方端面1bに熱的に接続される。つまり、コールドヘッド3は、超電導体1の両端に熱的に接続される。よって、磁場中冷却工程にて、超電導体1は、その一方端面1aからコールドヘッド3のステージ部32によって冷却されるとともに、その他方端面1bからコールドヘッド3の延長部33によって冷却される。つまり、超電導体1は、その両端から冷却される。別言すれば、コールドヘッド3は、超電導体1がコールドヘッド3からの冷熱によって軸方向における両端から冷却されるように構成される。超電導体1がその両端から冷却されることにより、超電導体1は、その軸方向に沿って均等に冷却される。よって、超電導体1の軸方向温度均一性が高められる。
さらに、本実施形態に係る超電導磁場発生装置101は、外側円筒状伝熱ホルダ4を備える。この外側円筒状伝熱ホルダ4の一方端面4aは、コールドヘッド3のステージ部32に接触し、他方端面4bは、コールドヘッド3の延長部33(第二延長部332)に接触している。つまり、外側円筒状伝熱ホルダ4の両端面がコールドヘッド3に熱的に接続される。従って、外側円筒状伝熱ホルダ4は、磁場中冷却工程にて、コールドヘッド3によってその両端側から冷却される。このため外側円筒状伝熱ホルダ4は軸方向に沿って均一に冷却される。こうして軸方向に沿って均一に冷却される外側円筒状伝熱ホルダ4の内周面4dに、超電導体1の外周面1cが熱的に接続されている。よって、超電導体1は、その外周面1cからも、軸方向に沿って均一に冷却される。
図1には、本実施形態に係る超電導体1が磁場中冷却工程にて冷却される場合における、超電導体1からの熱の流れが矢印によって示されている。図1からわかるように、超電導体1の熱は、一方端面1a、他方端面1b、及び外周面1cから流出する。このように多くの面から超電導体1が冷却されるために、超電導体1は均一に冷却される。
図3は、第一実施形態に係る超電導磁場発生装置101を用いて超電導体1のボア内に捕捉磁場を形成した場合に得られる超電導体1の軸方向におけるボア内の磁場強度分布を、超電導体1の軸方向における温度分布と併記したグラフである。図3(a)は、磁場中冷却工程にて冷却された超電導体1の軸方向における温度分布を示すグラフであり、縦軸が超電導体1の軸方向位置Z、横軸が温度Tである。図3(b)は、減磁工程にて捕捉される捕捉磁場の超電導体1の軸方向における分布を示す図であり、縦軸が超電導体1の軸方向位置Z、横軸が補足磁場強度Bである。また、図3(c)は、上記した各グラフの縦軸に対応する超電導体1の模式図である。図3に示すように、超電導体1の一方端面1aの軸方向位置がZ=0の位置に相当し、超電導体1の他方端面1bの位置がZ=hの位置に相当する。なお、図3(c)には、減磁工程の実施によって超電導体1内を流れる超電導電流の向き、及び超電導体1のボア内に形成された磁場の向きが示される。図3(c)によれば、超電導電流は、超電導体1の軸方向に垂直な方向に流れる。また、ボア内の磁場の向きは上向きである。
図3(a)に示すように、超電導体1の温度Tは、軸方向に沿ってほぼ一定である。つまり、超電導体1の軸方向温度均一性が高い。また、図3(b)に示すように、超電導体1の軸方向に沿った領域のうち両端部分を除く領域における磁場強度Bはほぼ一定である。つまり、超電導体1の軸方向に沿った捕捉磁場強度が均一である。このため室温ボア空間内の捕捉磁場強度も均一である。よって、NMR装置に第一実施形態に係る超電導磁場発生装置101を用いることにより、室温ボア空間の捕捉磁場空間が均一磁場にされる。このため、十分に精度の高い解析を行うことができる。或いは、室温ボア空間の補足磁場空間の均一性をより高めるために用いられるシムコイルの個数を減じることができ、これにより、室温ボア空間内に十分に広い試料空間を確保することができる。
以上のように、第一実施形態に係る超電導磁場発生装置101が備えるコールドヘッド3は、超電導体1がコールドヘッド3からの冷熱によって軸方向における両端から冷却されるように構成される。具体的には、コールドヘッド3は、超電導体1の一方端面1aに熱的に接続されたステージ部32と、ステージ部32に熱的に接続されるとともに超電導体1の他方端面1bに熱的に接続された延長部33とを有する。従って、磁場中冷却工程にて超電導体1が両端から冷却されるので、超電導体1を着磁する際において、超電導体1の軸方向における温度の均一性を高めることができる。
また、第一実施形態に係る超電導磁場発生装置101は、外側円筒状伝熱ホルダ4を備える。この外側円筒状伝熱ホルダ4によって、磁場中冷却工程の実行時に超電導体1が、その外周面1cからも冷却される。このため超電導体の温度均一性をより高めることができる。
また、外側円筒状伝熱ホルダ4の熱収縮率は、超電導体1の熱収縮率よりも大きい。従って、磁場中冷却工程にて超電導体1及び外側円筒状伝熱ホルダ4が冷却されていくと、外側円筒状伝熱ホルダ4の熱収縮量が超電導体1の熱収縮量よりも多いことにより、超電導体1が外側円筒状伝熱ホルダ4にその外周面1c側から締め付けられる。この締め付け力が、圧縮応力として超電導体1に作用する。従って、超電導体1は、外側円筒状伝熱ホルダ4から圧縮応力を受けた状態で、減磁工程を実施することになる。
ここで、減磁工程にて印加磁場が除去されて、超電導体1が着磁すると、超電導体1に電磁応力(フープ力)が作用する。この電磁応力は、超電導体1を径外方に引っ張る方向に作用する。この電磁応力に対し、上記した外側円筒状伝熱ホルダ4からの圧縮応力が電磁応力とは反対方向から超電導体1に作用する。このため電磁応力が圧縮応力によって相殺される。このようにして電磁応力が相殺されることにより、超電導体1が電磁応力によって破損することが、効果的に防止される。
また、上記した電磁応力の大きさは、超電導体1の軸方向における中央部分よりも両端部分の方が大きい。ここで、本実施形態に係る外側円筒状伝熱ホルダ4の両端部には鍔部41a,41bが設けられている。そのため、外側円筒状伝熱ホルダ4の軸方向両端部における軸方向に垂直な断面積は、軸方向中央部における軸方向に垂直な断面積よりも大きい。よって、外側円筒状伝熱ホルダ4の両端部の強度は軸方向中央部の強度よりも高い。従って、超電導体1の軸方向における両端部に大きく作用する電磁応力に対し、両端の断面積が大きく強度が高い外側円筒状伝熱ホルダ4によって十分に超電導体1が補強される。その結果、超電導体1の全体の補強効果を高めることができる。
また、磁場中冷却工程にて超電導体1から外側円筒状伝熱ホルダ4に受け渡された熱は、外側円筒状伝熱ホルダ4の両端からコールドヘッド3に伝達される。この場合において、外側円筒状伝熱ホルダ4の両端部に鍔部41a、41bがそれぞれ形成されていて、両端部の断面積が大きくされているため、大きな断面積を利用して熱を効率よくコールドヘッド3に受け渡すことができる。つまり、熱掃けが良い。これにより、超電導体1を、より一層、均一に冷却することができる。
(第二実施形態)
次に、本発明の第二実施形態について説明するが、第二実施形態に係る超電導磁場発生装置は、内側円筒状伝熱ホルダを備えていることを除き、基本的には第一実施形態に係る超電導磁場発生装置101と同一の構成である。以下、第一実施形態に係る超電導磁場発生装置101と相違する構成を中心に説明する。
図4は、第二実施形態に係る超電導磁場発生装置102を上下方向に沿った中心線を含む平面で切断した断面を表す概略図である。図4に示すように、第二実施形態に係る超電導磁場発生装置102は、第一実施形態に係る超電導磁場発生装置101と同様に、超電導体1、冷却装置2、コールドヘッド3、外側円筒状伝熱ホルダ4、真空断熱容器7を備える。
また、超電導磁場発生装置102は、内側円筒状伝熱ホルダ5を備える。内側円筒状伝熱ホルダ5は、超電導体1の内周側から超電導体1を保持するように、超電導体1の内周側に配設される。内側円筒状伝熱ホルダ5は、熱伝導率が高く且つ非磁性の材質により形成される。本実施形態では、内側円筒状伝熱ホルダ5は、アルミニウム又はアルミニウム合金により形成される。
内側円筒状伝熱ホルダ5は、円筒状に形成されていて、軸方向における一方端面5a及び他方端面5b、外周面5c、内周面5dを有する。内側円筒状伝熱ホルダ5の外径は、超電導体1の内径にほぼ等しく、内側円筒状伝熱ホルダ5の内径は、コールドヘッド3の第二延長部332の内径(すなわち第二延長部332の中央に設けられている円孔333の径)に等しい。また、内側円筒状伝熱ホルダ5の軸方向長さは、超電導体1の軸方向長さに等しい。そして、内側円筒状伝熱ホルダ5の外周面5cが超電導体1の内周面1dに接触するように、内側円筒状伝熱ホルダ5が超電導体1に対して配設される。内側円筒状伝熱ホルダ5の外周面5cと超電導体1の内周面1dとの接触により、内側円筒状伝熱ホルダ5の外周面5cが超電導体1の内周面1dに熱的に接続される。
また、超電導磁場発生装置102において、第二延長部332の内径は、超電導体1の内径よりも小さい。従って、超電導体1の他方端面1bと第二延長部332の一方端面332aが接触するように両者が同軸配置した場合、第二延長部332と超電導体1との内径差によって、第二延長部332の内周側に近い部分が超電導体1の内周面1dから径内方に僅かにリング状に突き出る。そして、第二延長部332のうち上記のようにして超電導体1の内周から径内方にリング状に突き出た部分の一方端面332aに、内側円筒状伝熱ホルダ5の他方端面5bが接触する。また、内側円筒状伝熱ホルダ5の一方端面5aは、コールドヘッド3のステージ部32の他方端面32bに接触する。このように、内側円筒状伝熱ホルダ5は、その外周面5cが超電導体1の内周面1dに熱的に接続されるように超電導体1の内周側に配設されるとともに、両端面がコールドヘッド3に、具体的には一方端面5aがステージ部32に、他方端面が延長部33(第二延長部332)に、それぞれ熱的に接続されるように、構成される。
第二実施形態に係る超電導磁場発生装置102の構成のうち、上記説明した構成以外の構成は、第一実施形態に係る超電導磁場発生装置101の構成と同一である。従って、それらの構成の具体的な説明は、省略する。
第二実施形態に係る超電導磁場発生装置102によれば、第一実施形態に係る超電導磁場発生装置101と同様に、コールドヘッド3は、超電導体1がコールドヘッド3からの冷熱によって軸方向における両端から冷却されるように構成される。具体的には、コールドヘッド3は、超電導体1の一方端面1aに熱的に接続されたステージ部32と、ステージ部32に熱的に接続されるとともに超電導体1の他方端面1bに熱的に接続された延長部33とを有する。従って、磁場中冷却工程にて超電導体1が両端から冷却されるので、超電導体1を着磁する際における超電導体1の軸方向温度均一性を高めることができる。
また、第二実施形態に係る超電導磁場発生装置102は、内側円筒状伝熱ホルダ5を備える。この内側円筒状伝熱ホルダ5の一方端面5aがステージ部32に熱的に接続され、その他方端面5bが延長部33に熱的に接続される。従って、内側円筒状伝熱ホルダ5は、磁場中冷却工程にて、コールドヘッド3によってその両端側から冷却される。このため内側円筒状伝熱ホルダ5は軸方向に沿って均一に冷却される。こうして軸方向に沿って均一に冷却される内側円筒状伝熱ホルダ5の外周面5cに、超電導体1の内周面1dが熱的に接続されている。よって、超電導体1は、その内周面1dからも、軸方向に沿って均一に冷却される。このため、超電導体1の温度の均一性をより高めることができる。
また、第二実施形態に係る超電導磁場発生装置102によれば、超電導体1の外周面1cが外側円筒状伝熱ホルダ4の内周面4dに、超電導体1の内周面1dが内側円筒状伝熱ホルダ5の外周面5cに、超電導体1の両端面がコールドヘッド3に、熱的に接続される。つまり、超電導体1の全表面がコールドヘッド又は伝熱ホルダに熱的に接続されている。よって、超電導体1を、その全表面から冷却することができる。従って、磁場中冷却工程にて超電導体1を冷却した場合、図4に矢印で示したように、超電導体1の熱が全ての表面から流出される。このため、超電導体1を、より一層均一に冷却することができるとともに、冷却効率が向上する。
また、第二実施形態に係る超電導磁場発生装置102によれば、内側円筒状伝熱ホルダ5を超電導体1の内周側に設けることにより、室温ボア空間と超電導体1との間に内側円筒状伝熱ホルダ5が介在する。これにより、室温ボア空間からの輻射熱が超電導体1に直接伝熱されることが防止される。その結果、室温ボア空間からの熱輻射による超電導体1の温度上昇を抑えることができる。
(第三実施形態)
次に、本発明の第三実施形態について説明するが、本実施形態に係る超電導磁場発生装置は、外側円筒状伝熱ホルダの形状が異なることを除き、基本的には第一実施形態に係る超電導磁場発生装置101と同一の構成である。以下、第一実施形態に係る超電導磁場発生装置101と相違する構成を中心に説明する。
図5は、第三実施形態に係る超電導磁場発生装置103を上下方向に沿った中心線を含む平面で切断した断面を表す概略図である。図5に示すように、第三実施形態に係る超電導磁場発生装置103は、外側円筒状伝熱ホルダ4Aを備える。外側円筒状伝熱ホルダ4Aは、第一実施形態に係る外側円筒状伝熱ホルダ4と同様に、円筒状に形成されていて、軸方向における一方端面4a及び他方端面4b、外周面4c、内周面4dを有する。また、外側円筒状伝熱ホルダ4Aの軸方向長さは、超電導体1の軸方向長さに等しい。外側円筒状伝熱ホルダ4Aの一方端面4aは、コールドヘッド3のステージ部32に熱的に接続され、外側円筒状伝熱ホルダ4Aの他方端面4bは、コールドヘッド3の延長部33(第二延長部332)に熱的に接続される。
また、本実施形態において、外側円筒状伝熱ホルダ4Aは、第一部分41A、第二部分42A、及び第三部分43Aを有し、これらの部分が、一方端面4aから他方端面4bに向かって軸方向に沿ってこの順に形成される。
第二部分42Aは、外側円筒状伝熱ホルダ4Aの軸方向における中央領域を形成する部分であり、この第二部分42Aの外径は、軸方向に沿って一定である。第一部分41Aは、第二部分42Aよりも、外側円筒状伝熱ホルダ4Aの一方端面4a側の端部領域を形成する部分であり、第三部分43Aは、第二部分42Aよりも、外側円筒状伝熱ホルダ4Aの他方端面4b側の端部領域を形成する部分である。
第一部分41Aのうち第二部分42Aに接続されている部分の外径は、第二部分42Aの外径に等しい。同様に、第三部分43Aのうち第二部分42Aに接続されている部分の外径は、第二部分42Aの外径に等しい。また、第一部分41Aは、第二部分42Aに接続されている部分から一方端面4aに近づくにつれて外径が増加するように、テーパ状に形成され、第三部分43Aは、第二部分42Aに接続されている部分から他方端面4bに近づくにつれて外径が増加するように、テーパ状に形成される。つまり、外側円筒状伝熱ホルダ4Aは、軸方向における中央部分の外径よりも、端部における外径の方が大きくなるように形成されている。
また、第一部分41A、第二部分42A、第三部分43Aのそれぞれの内径は、軸方向に沿って一定であり、これらの内径は超電導体1の外径にほぼ等しい。従って、外側円筒状伝熱ホルダ4Aは、その軸方向中央部分における軸方向に垂直な断面積が最も小さく、中央部分から端部に向かうにつれて断面積が大きくなるように、形成される。
外側円筒状伝熱ホルダ4Aは、その内周面4dが超電導体1の外周面1cに接触するように、超電導体1に対して配設される。外側円筒状伝熱ホルダ4Aの内周面4dと超電導体1の外周面1cとの接触により、外側円筒状伝熱ホルダ4Aの内周面4dが超電導体1の外周面1cに熱的に接続される。このとき、外側円筒状伝熱ホルダ4は、延長部33の第一延長部331の内周側に、第一延長部331とは離間して配設される。第三実施形態に係る超電導磁場発生装置103において、外側円筒状伝熱ホルダ4A以外の構成は、上記第一実施形態に係る超電導磁場発生装置101の各構成と同一であるので、それらの具体的説明は省略する。
第三実施形態に係る超電導磁場発生装置103によれば、第一実施形態に係る超電導磁場発生装置101と同様に、コールドヘッド3は、超電導体1がコールドヘッド3からの冷熱によって軸方向における両端から冷却されるように構成される。具体的には、コールドヘッド3は、超電導体1の一方端面1aに熱的に接続されたステージ部32と、ステージ部32に熱的に接続されるとともに超電導体1の他方端面1bに熱的に接続された延長部33とを有する。従って、磁場中冷却工程にて超電導体1が両端から冷却されるので、超電導体1を着磁する際における超電導体1の軸方向温度均一性を高めることができる。
また、外側円筒状伝熱ホルダ4Aは、その内周面4dにて、超電導体1の外周面1cに熱的に接続されている。従って、磁場中冷却工程にて、超電導体1の熱が、その外周面1cから外側円筒状伝熱ホルダ4Aの第一部分41A,第二部分42A、及び第三部分43Aの各部分に受け渡される。この場合において、外側円筒状伝熱ホルダ4Aの第二部分42Aに受け渡された熱は、外側円筒状伝熱ホルダ4Aの両端側の部分すなわち第一部分41A又は第三部分43Aに流れ、これらの部分からコールドヘッド3(ステージ部32又は延長部33)に伝達される。従って、第一部分41A及び第三部分43Aでは、超電導体1の外周面1cからこれらの部分に直接受け渡された熱と、第一部分41Aから伝達されてきた熱が合流する。よって、第一部分41A及び第三部分43Aの断面積が小さいと、これらの部分を通過する熱量がこれらの部分の輸送能力を超える可能性が生じる。そのような場合、第二部分42Aから第一部分41A又は第三部分43Aへの熱の輸送が滞り、その結果、超電導体1の軸方向における中央部分の冷却が十分に行われない虞がある。
この点に関し、本実施形態では、外側円筒状伝熱ホルダ4Aの両端部分を構成する第一部分41A及び第三部分43Aの軸方向に垂直な断面積が、外側円筒状伝熱ホルダ4Aの中央部分を構成する第二部分42Aの軸方向に垂直な断面積よりも大きくされている。従って、外側円筒状伝熱ホルダ4Aの両端部分における熱の輸送能力が向上する。つまり、本実施形態によれば、外側円筒状伝熱ホルダ4Aの熱はけが向上する。よって、上記した熱の輸送の滞りを防止することができ、それにより、超電導体1の軸方向における中央部まで十分に冷却することができる。その結果、超電導体1を着磁する際における超電導体1の軸方向温度均一性をより一層高めることができる。
(第四実施形態)
次に、本発明の第四実施形態について説明するが、本実施形態に係る超電導磁場発生装置は、補強リングを備えることを除き、基本的には第一実施形態に係る超電導磁場発生装置101と同一の構成である。以下、第一実施形態に係る超電導磁場発生装置101と相違する構成を中心に説明する。
図6は、第四実施形態に係る超電導磁場発生装置104を上下方向に沿った中心線を含む平面で切断した断面を表す概略図である。図6に示すように、第四実施形態に係る超電導磁場発生装置104は、超電導体1を補強するための補強部材としての補強リング8を備える。
本実施形態において、補強リング8は、6個の円筒状のリング部材(第一リング部材81、第二リング部材82、第三リング部材83、第四リング部材84、第五リング部材85、第六リング部材86)を、軸方向に沿ってこの順で同軸状に積み重ねることにより、円筒状に形成される。6個のリング部材の外周面により、補強リング8の外周面8cが構成され、6個のリング部材の内周面により、補強リング8の内周面8dが形成される。また、第一リング部材81の図6において下向きの端面により、補強リング8の一方端面8aが形成され、第六リング部材86の図6において上向きの端面により、補強リング8の他方端面8bが形成される。
また、超電導磁場発生装置104は、第一実施形態に係る超電導磁場発生装置101と同様に、超電導体1及び外側円筒状伝熱ホルダ4を備えるが、外側円筒状伝熱ホルダ4の内径は超電導体1の外径よりも大きい。従って、外側円筒状伝熱ホルダ4を超電導体1の外周に同軸配置したときに、外側円筒状伝熱ホルダ4の内周面4dと超電導体1の外周面1cとの間に円筒状の空間が形成される。この円筒状の空間に、補強リング8が配設される。
また、第四実施形態においても第一実施形態と同様に、超電導体1は、6個の円筒状の超電導バルク(第一超電導バルク11、第二超電導バルク12,第三超電導バルク13、第四超電導バルク14、第五超電導バルク15、第六超電導バルク16)を軸方向に沿ってこの順で積み重ねることにより形成されている。そして、6個の超電導バルク(11,12,13,14,15,16)のそれぞれに、補強リング8を構成する6個のリング部材(81,82,83,84,85,86)が、それぞれ対応して取り付けられる。具体的には、第一リング部材81が第一超電導バルク11に取り付けられ、第二リング部材82が第二超電導バルク12に取り付けられ、第三リング部材83が第三超電導バルク13に取り付けられ、第四リング部材84が第四超電導バルク14に取り付けられ、第五リング部材85が第五超電導バルク15に取り付けられ、第六リング部材86が第六超電導バルク16に取り付けられる。
このとき、第一リング部材81の内周面が第一超電導バルク11の外周面に接触し、第二リング部材82の内周面が第二超電導バルク12の外周面に接触し、第三リング部材83の内周面が第三超電導バルク13の外周面に接触し、第四リング部材84の内周面が第四超電導バルク14の外周面に接触し、第五リング部材85の内周面が第五超電導バルク15の外周面に接触し、第六リング部材86の内周面が第六超電導バルク16の外周面に接触するように、各リング部材が各超電導バルクの外周に配設される。また、各リング部材の外周面は、外側円筒状伝熱ホルダ4の内周面4dに接触する。従って、6個のリング部材により構成される補強リング8は、その内周面8dが、6個の超電導バルクにより構成される超電導体1の外周面1cに接触し、その外周面8cが、外側円筒状伝熱ホルダ4の内周面4dに接触するように、超電導体1と外側円筒状伝熱ホルダ4との間に配設されることになる。
また、補強リング8の一方端面8aを構成する第一リング部材81の下端面は、コールドヘッド3のステージ部32の他方端面32bに接触し、補強リング8の他方端面8bを構成する第六リング部材86の上端面は、コールドヘッド3の延長部33の第二延長部332の一方端面332aに接触している。したがって、補強リング8は、その一方端面8aがステージ部32(コールドヘッド3)に熱的に接続され、その他方端面8bが延長部33(コールドヘッド3)に熱的に接続されるように、構成される。
補強リング8は、超電導体1の熱収縮率以上の熱収縮率を有する材質により形成される。すなわち、補強リング8の熱収縮率が超電導体1の熱収縮率以上である。本実施形態では、補強リング8は、アルミニウム又はアルミニウム合金により形成される。アルミニウム又はアルミニウム合金の熱収縮率は、Re−Ba−Cu−O系の超電導体の熱収縮率よりも大きい。つまり、本実施形態では、補強リング8の熱収縮率は、超電導体1の熱収縮率よりも大きい。また、補強リング8は、外側円筒状伝熱ホルダ4の熱収縮率以下の熱収縮率を有する材質により形成されるとよい。すなわち、外側円筒状伝熱ホルダ4の熱収縮率は補強リング8の熱収縮以上であるとよい。本実施形態では、外側円筒状伝熱ホルダ4は、補強リング8と同一の材質(アルミニウム又はアルミニウム合金)により形成される。従って、外側円筒状伝熱ホルダ4の熱収縮率と補強リング8の熱収縮率は等しい。
第四実施形態に係る超電導磁場発生装置104の各構成のうち、上記した構成以外の構成は、上記第一実施形態に係る超電導磁場発生装置101の各構成と同一である。従って、それらの詳細な説明は省略する。
第四実施形態に係る超電導磁場発生装置104によれば、第一実施形態に係る超電導磁場発生装置101と同様に、コールドヘッド3は、超電導体1がコールドヘッド3からの冷熱によって軸方向における両端から冷却されるように構成される。具体的には、コールドヘッド3は、超電導体1の一方端面1aに熱的に接続されたステージ部32と、ステージ部32に熱的に接続されるとともに超電導体1の他方端面1bに熱的に接続された延長部33とを有する。従って、磁場中冷却工程にて超電導体1が両端から冷却されるので、超電導体1を着磁する際における超電導体1の軸方向温度均一性を高めることができる。
また、超電導体1の外周面1cに補強リング8が接触状態で設けられており、この補強リング8の一方端面8aがコールドヘッド3のステージ部32に熱的に接続され、他方端面8bがコールドヘッド3の延長部33に熱的に接続されている。従って、磁場中冷却工程にて補強リング8は軸方向に沿って均一に冷却される。このため、超電導体1は、その一方端面1a及び他方端面1bのみならず、外周面1cからも、補強リング8により冷却される。これにより、超電導体1の温度の均一性をより高めることができる。
また、補強リング8が超電導体1の外周面1cに接触状態で超電導体1の外周側に配設されているので、減磁工程の実施により超電導体1が着磁された場合に生じる電磁応力(フープ力)に対して補強リング8が超電導体1を補強する。このため、電磁応力に起因した超電導体1の破損を効果的に防止することができる。
また、補強リング8の熱収縮率は、超電導体1の熱収縮率よりも大きいので、磁場中冷却工程にて超電導体1とともに補強リング8が冷却された際に、補強リング8が超電導体1よりも大きく収縮することにより、超電導体1が補強リングにより締め付けられる。このため超電導体1が補強リング8からより大きな圧縮応力を受け、このようにして受けた圧縮応力が電磁応力を相殺することにより、電磁応力に起因した超電導体1の破損をより効果的に防止することができる。加えて本実施形態によれば、補強リング8の外周側に外側円筒状伝熱ホルダ4が設けられている。この外側円筒状伝熱ホルダ4の熱収縮率は、補強リング8の熱収縮率と同じであり、超電導体1の熱収縮率よりも大きい。従って、磁場中冷却工程にて、超電導体1には外側円筒状伝熱ホルダ4からの圧縮応力及び補強リング8からの圧縮応力により、超電導体1が二重に補強される。よって、超電導体1の着磁の際に生じる電磁応力(フープ力)に対する補強効果をより一層高めることができる。
(第五実施形態)
次に、本発明の第五実施形態について説明する。第五実施形態に係る超電導磁場発生装置は、超電導体1を保持する伝熱ホルダの構造において、第一実施形態に係る超電導磁場発生装置101と異なる。以下、相違点を中心に説明する。
図7は、第五実施形態に係る超電導磁場発生装置105を上下方向に沿った中心線を含む平面で切断した断面を表す概略図である。図7に示すように、超電導磁場発生装置105は、第一実施形態に係る超電導磁場発生装置101と同様に、超電導体1と、冷却装置2と、コールドヘッド3と、真空断熱容器7とを備える。超電導体1、冷却装置2、真空断熱容器7の構造は、第一実施形態に係る超電導磁場発生装置に備えられる超電導体1、冷却装置2、真空断熱容器7の構造と同一である。従って、これらの構造の具体的説明は省略する。
また、本実施形態に係るコールドヘッド3は、ステージ部32と、延長部34とを有する。ステージ部32の構造は、第一実施形態に係る超電導磁場発生装置101が備えるステージ部32の構造と同一である。延長部34は、第一実施形態に係る超電導磁場発生装置101が備える延長部33の第一延長部331のように、円筒状に形成され、軸方向における一方端面34a(下端面)及びその反対側の他方端面34b(上端面)、外周面34c、内周面34dを有する。延長部34の外径はステージ部32の外径にほぼ等しく、延長部34の内径は超電導体1の外径よりも大きい。また、延長部34の軸方向長さは、超電導体1の軸方向長さの半分の長さよりもやや長い。そして、延長部34の一方端面34aがステージ部32の他方端面32bのうち外周に近い部分に接触するように、ステージ部32上に延長部34が同軸状に載置される。これにより延長部34の一方端面34aがステージ部32に熱的に接続される。
また、本実施形態に係る超電導磁場発生装置105は、第一実施形態に係る超電導磁場発生装置101が備える外側円筒状伝熱ホルダ4を備えず、その代わりに、一対のカップ状伝熱ホルダ6を備える。一対のカップ状伝熱ホルダ6は、第一カップ状伝熱ホルダ61と第二カップ状伝熱ホルダ62により構成される。一対のカップ状伝熱ホルダ6は、熱伝導率が高く且つ非磁性の材質により構成される。本実施形態において、一対のカップ状伝熱ホルダ6は、アルミニウム又はアルミニウム合金により構成される。
第一カップ状伝熱ホルダ61は、カップ状を呈しており、底部分を構成する第一底壁部611、側壁部分を構成する第一側壁部612、及び、開口面付近に形成される第一接続部613を有する。第一底壁部611は、内側面611a及びその反対側の外側面611bを有する円板状に形成される。第一底壁部611の中央には、内側面611aから外側面611bにかけて軸方向に貫通する円孔が形成される。この円孔の径は、超電導体1の内径と同程度である。第一側壁部612は、外周面612c及び内周面612dを有する円筒状に形成される。第一側壁部612の一方端が第一底壁部611の周縁に連結される。これにより第一側壁部612は、第一底壁部611の周縁から図7において上方(第一底壁部611の外側面611bから内側面611aに向かう方向)に立設される。円筒状の第一側壁部612の内周面612dの軸方向長さは、超電導体1の軸方向長さの半分の長さである。第一接続部613は、円筒状の第一側壁部612の軸方向における他方端(第一底壁部611が連結されている端とは反対側の端)側から径外方にリング状に延設される。第一接続部613は、第一カップ状伝熱ホルダ61の開口面(第一側壁部612の他方端に囲まれた面)に面一なリング状の接触面613aを有する。
また、第一側壁部612の内径は超電導体1の外径にほぼ等しい。そして、第一カップ状伝熱ホルダ61は、超電導体1のうち図7において軸方向における下半部分を構成する3個の超電導バルク(第一超電導バルク11、第二超電導バルク12、第三超電導バルク13)からなる一方側部分1Aの外周面に第一側壁部612の内周面612dが接触し(すなわち第一側壁部612が一方側部分1Aの外周面に熱的に接続され)、超電導体1の一方端面1aに第一底壁部611の内側面611aが接触する(すなわち第一底壁部611が超電導体の一方端面1aに熱的に接続される)ように、超電導体1に対して同軸状に配設される。このように第一カップ状伝熱ホルダ61が超電導体1に対して配設されることにより、第一カップ状伝熱ホルダ61は、超電導体1の一方側部分1Aを保持する。
第二カップ状伝熱ホルダ62は、第一カップ状伝熱ホルダ61と同形状のカップ状を呈しており、底部分を構成する第二底壁部621、側壁部分を構成する第二側壁部622、及び、開口面付近に形成される第二接続部623を有する。第二底壁部621は、内側面621a及びその反対側の外側面621bを有する円板状に形成される。第二底壁部621の中央には、内側面621aから外側面621bにかけて軸方向に貫通する円孔が形成される。この円孔の径は、超電導体1の内径と同程度である。第二側壁部622は、外周面622c及び内周面622dを有する円筒状に形成される。第二側壁部622の一方端が第二底壁部621の周縁に連結される。これにより第二側壁部622は、第二底壁部621の周縁から図7において下方(第二底壁部621の外側面621bから内側面621aに向かう方向)に立設される。円筒状の第二側壁部622の内周面622dの軸方向長さは、超電導体1の軸方向長さの半分の長さである。第二接続部623は、円筒状の第二側壁部622の軸方向における他方端(第二底壁部621が連結されている端とは反対側の端)側から径外方にリング状に延設される。第二カップ状伝熱ホルダ62の開口面(第二側壁部612の他方端に囲まれた面)に面一なリング状の接触面623aを有する。
また、第二側壁部622の内径は超電導体1の外径にほぼ等しい。そして、第二カップ状伝熱ホルダ62は、超電導体1のうち図7において軸方向における上半部分を構成する3個の超電導バルク(第四超電導バルク14、第五超電導バルク15、第六超電導バルク16)からなる他方側部分1Bの外周面に第二側壁部622の内周面622dが接触し(すなわち第二側壁部622が他方側部分1Bの外周面に熱的に接続され)、超電導体1の他方端面1bに第二底壁部621の内側面621aが接触する(すなわち第二底壁部621が超電導体の他方端面1bに熱的に接続される)ように、超電導体1に対して同軸状に配設される。このように第二カップ状伝熱ホルダ62が超電導体1に対して配設されることにより、第二カップ状伝熱ホルダ62は、超電導体1の他方側部分1Bを保持する。
上記のように第一カップ状伝熱ホルダ61及び第二カップ状伝熱ホルダ62が超電導体1に対して配設された場合、第一カップ状伝熱ホルダ61は、その開口面を上に向けた状態で超電導体1の下半部分を構成する一方側部分1Aを覆い、第二カップ状伝熱ホルダ62は、その開口面を下に向けた状態で超電導体1の上半部分を構成する他方側部分1Bを覆う。このため、第一カップ状伝熱ホルダ61の開口面と第二カップ状伝熱ホルダ62の開口面が突き合わされるとともに、第一カップ状伝熱ホルダ61の第一接続部613と第二カップ状伝熱ホルダ62の第二接続部623がそれぞれの接触面(613a,623s)を突き合わせた状態で対面配置する。対面配置した第一接続部613と第二接続部623は、例えばネジ等の締結手段を介して連結される。これにより、第一カップ状伝熱ホルダ61と第二カップ状伝熱ホルダ62が連結される。
また、それぞれリング状に形成されている第一接続部613及び第二接続部623の外径は、延長部34の内径にほぼ等しい。そして、互いに連結された第一接続部613及び第二接続部623の外周面が、延長部34の内周面34dのうち他方端面34b付近の部分に対面された状態で、両接続部(613,623)が延長部34に、例えばネジ等の締結手段を介して連結される。このとき、第一カップ状伝熱ホルダ61の第一底壁部611がコールドヘッド3のステージ部32に接触せず、且つ、第二カップ状伝熱ホルダ62の第二底壁部621が外側容器71のカバー部713に接触しないように、両接続部(613,623)と延長部34との連結位置が調整される。
上記説明及び図7からわかるように、第一カップ状伝熱ホルダ61と第二カップ状伝熱ホルダ62は同一形状であり、互いの接続部(613,623)を突き合わせた状態で、軸方向に垂直な平面に対して対称に配置されている。そして、超電導体1の下半部分(一方側部分1A)が第一カップ状伝熱ホルダ61に覆われ、超電導体1の上半部分(他方側部分1B)が第二カップ状伝熱ホルダ62に覆われる。このとき、超電導体1の下半部分(一方側部分1A)の外周面及び一方端面1aが第一カップ状伝熱ホルダ61に熱的に接続され、超電導体1の上半部分(他方側部分1B)の外周面及び他方端面1bが第二カップ状伝熱ホルダ62に熱的に接続される。また、第一カップ状伝熱ホルダ61及び第二カップ状伝熱ホルダ62は、それぞれの接続部(613,623)にて、コールドヘッド3(延長部34)に熱的に接続される。従って、本実施形態においては、超電導体1は、その一方端面1a、他方端面1b、外周面1cのいずれもが、カップ状伝熱ホルダ6を介してコールドヘッド3に熱的に接続されていることになる。
第五実施形態に係る超電導磁場発生装置105の構成のうち、上記にて説明した構成以外の構成は、第一実施形態に係る超電導磁場発生装置101の構成と同一である。従って、これらの構成の説明は省略する。
第五実施形態に係る超電導磁場発生装置105によれば、超電導体1の一方端面1aが第一カップ状伝熱ホルダ61に熱的に接続され、超電導体1の他方端面1bが第二カップ状伝熱ホルダ62に熱的に接続される。また、第一カップ状伝熱ホルダ61及び第二カップ状伝熱ホルダ62はともにコールドヘッド3(延長部34)に熱的に接続される。従って、磁場中冷却工程にて、超電導体1は、コールドヘッド3が発生した冷熱によって、カップ状伝熱ホルダ6を介して、その両端から冷却される。よって、超電導体1を着磁する際における超電導体1の軸方向温度均一性を高めることができる。
また、超電導体1の外周面1cのうち図7において下半部分(一方側部分1A)の外周面が第一カップ状伝熱ホルダ61の第一側壁部612に熱的に接続され、上半部分(他方側部分1B)の外周面が第二カップ状伝熱ホルダ62の第二側壁部622に熱的に接続される。つまり、超電導体1の外周面1cがカップ状伝熱ホルダ6に熱的に接続される。従って、磁場中冷却工程にて、超電導体1は、その両端面(1a,1b)及び外周面1cから冷却される。図7には、本実施形態に係る超電導体1が磁場中冷却工程にて冷却される場合における、超電導体1からの熱の流れが矢印によって示されている。図7からわかるように、超電導体1の熱は、一方端面1a、他方端面1b、及び外周面1cからカップ状伝熱ホルダ6に流れ、さらにカップ状伝熱ホルダ6からコールドヘッド3に流れる。このように多くの面から超電導体1が冷却されるために、超電導体1の温度均一性、特に軸方向温度均一性をより高めることができる。
また、第一カップ状伝熱ホルダ61と第二カップ状伝熱ホルダ62は同一形状であり、且つ、互いの接続部(613,623)が対面配置した状態で延長部34に連結されている。このため、磁場中冷却工程にて超電導体1が冷却された場合において、超電導体1の一方側部分1Aからの熱が第一カップ状伝熱ホルダ61を経由してコールドヘッド3(延長部34)に至るまでの経路の長さと、超電導体1の他方側部分1Bからの熱が第二カップ状伝熱ホルダ62を経由してコールドヘッド3(延長部34)に至るまでの経路の長さは等しい。従って、超電導体1からコールドヘッド3への熱の輸送速度の場所によるバラツキを小さくすることができ、それ故に、超電導体1の全体に亘り、冷却速度をほぼ一定にすることができる。その結果、より一層、超電導体1の温度均一性を高めることができる。
また、カップ状伝熱ホルダ6は、アルミニウム又はアルミニウム合金により構成されており、その熱収縮率は超電導体1の熱収縮率よりも大きい。従って、磁場中冷却工程にて超電導体1及びカップ状伝熱ホルダ6が冷却されていくと、カップ状伝熱ホルダ6の側壁部(第一側壁部612及び第二側壁部622)の熱収縮量が超電導体1の熱収縮量よりも多いことにより、超電導体1がカップ状伝熱ホルダ6にその外周面1c側から締め付けられる。この締め付け力が、圧縮応力として超電導体1に作用する。従って、超電導体1は、外側円筒状伝熱ホルダ4から圧縮応力を受けた状態で、減磁工程を実施することになる。このようにして受けた圧縮応力が、減磁工程にて超電導体1に作用する電磁応力を相殺することにより、電磁応力に起因した超電導体1の破損をより効果的に防止することができる。
(第六実施形態)
次に、本発明の第六実施形態について説明するが、第六実施形態に係る超電導磁場発生装置は、内側円筒状伝熱ホルダを備えていることを除き、基本的には第五実施形態に係る超電導磁場発生装置105と同一の構成である。以下、第五実施形態に係る超電導磁場発生装置105と相違する構成を中心に説明する。
図8は、第六実施形態に係る超電導磁場発生装置106を上下方向に沿った中心線を含む平面で切断した断面を表す概略図である。図8に示すように、第六実施形態に係る超電導磁場発生装置106は、第五実施形態に係る超電導磁場発生装置105と同様に、超電導体1、冷却装置2、コールドヘッド3、カップ状伝熱ホルダ6、真空断熱容器7を備える。
また、超電導磁場発生装置106は、内側円筒状伝熱ホルダ5を備える。内側円筒状伝熱ホルダ5は、超電導体1の内周側から超電導体1を保持するように、超電導体1の内周側に配設される。内側円筒状伝熱ホルダ5は、熱伝導率が高く且つ非磁性の材質により形成される。本実施形態では、内側円筒状伝熱ホルダ5は、アルミニウム又はアルミニウム合金により形成される。
内側円筒状伝熱ホルダ5は、円筒状に形成されていて、軸方向における一方端面5a及び他方端面5b、外周面5c、内周面5dを有する。内側円筒状伝熱ホルダ5の外径は、超電導体1の内径にほぼ等しく、内側円筒状伝熱ホルダ5の内径は、一対のカップ状伝熱ホルダ6のそれぞれの底壁部(第一底壁部611及び第二底壁部621)の内径に等しい。また、内側円筒状伝熱ホルダ5の軸方向長さは、超電導体1の軸方向長さに等しい。そして、内側円筒状伝熱ホルダ5の外周面5cが超電導体1の内周面1dに接触するように、内側円筒状伝熱ホルダ5が超電導体1に対して配設される。内側円筒状伝熱ホルダ5の外周面5cと超電導体1の内周面1dとの接触により、内側円筒状伝熱ホルダ5の外周面5cが超電導体1の内周面1dに熱的に接続される。
また、超電導磁場発生装置106において、各カップ状伝熱ホルダ6(61,62)の底壁部(611,612)の内径は、超電導体1の内径よりも小さい。従って、超電導体1の一方端面1aが第一カップ状伝熱ホルダ61の第一底壁部611の内側面611aに接触するように、超電導体1に対して第一カップ状伝熱ホルダ61が同軸配置した場合、第一底壁部611と超電導体1との内径差によって、第一底壁部611の内周側に近い部分が、超電導体1の内周から径内方に僅かにリング状に突き出る。そして、第一底壁部611のうち上記のようにして超電導体1の内周から径内方にリング状に突き出た部分の内側面611aに、内側円筒状伝熱ホルダ5の一方端面5aが接触する。また、超電導体1の他方端面1bが第二カップ状伝熱ホルダ62の第二底壁部621の内側面621aに接触するように、超電導体1に対して第二カップ状伝熱ホルダ62が同軸配置した場合、第二底壁部621と超電導体1との内径差によって、第二底壁部621の内周側に近い部分が、超電導体1の内周から径内方に僅かにリング状に突き出る。そして、第二底壁部621のうち上記のようにして超電導体1の内周から径内方にリング状に突き出た部分の内側面621aに、内側円筒状伝熱ホルダ5の他方端面5bが接触する。このように、内側円筒状伝熱ホルダ5は、その外周面5cが超電導体1の内周面1dに熱的に接続されるように超電導体1の内周側に配設されるとともに、その一方端面5aが第一カップ状伝熱ホルダ61の第一底壁部611に熱的に接続され、その他方端面5bが第二カップ状伝熱ホルダ62の第二底壁部621に熱的に接続されるように、構成される。
第六実施形態に係る超電導磁場発生装置106の構成のうち、上記説明した構成以外の構成は、第五実施形態に係る超電導磁場発生装置105の構成と同一である。従って、それらの構成の具体的な説明は、省略する。
第六実施形態に係る超電導磁場発生装置106によれば、第五実施形態に係る超電導磁場発生装置105と同様に、超電導体1の一方端面1aが第一カップ状伝熱ホルダ61に熱的に接続され、超電導体1の他方端面1bが第二カップ状伝熱ホルダ62に熱的に接続される。また、第一カップ状伝熱ホルダ61及び第二カップ状伝熱ホルダ62はともにコールドヘッド3(延長部34)に熱的に接続される。従って、磁場中冷却工程にて、超電導体1は、コールドヘッド3が発生した冷熱によって、カップ状伝熱ホルダ6を介して、その両端から冷却される。よって、超電導体1を着磁する際における超電導体1の軸方向温度均一性を高めることができる。
また、第六実施形態に係る超電導磁場発生装置106は、内側円筒状伝熱ホルダ5を備える。この内側円筒状伝熱ホルダ5の一方端面5aが第一カップ状伝熱ホルダ61の第一底壁部611に熱的に接続され、その他方端面5bが第二カップ状伝熱ホルダ62の第二底壁部621に熱的に接続される。従って、内側円筒状伝熱ホルダ5は、磁場中冷却工程にて、一対のカップ状伝熱ホルダ6によってその両端側から冷却される。このため内側円筒状伝熱ホルダ5は軸方向に沿って均一に冷却される。こうして軸方向に沿って均一に冷却される内側円筒状伝熱ホルダ5の外周面5cに、超電導体1の内周面1dが熱的に接続されている。よって、超電導体1は、その内周面1dからも、軸方向に沿って均一に冷却される。このため超電導体の温度均一性をより高めることができる。
また、第六実施形態に係る超電導磁場発生装置106によれば、超電導体1の一方端面1a、他方端面1b、外周面1cが、カップ状伝熱ホルダ6に熱的に接続されるとともに、超電導体1の内周面1dが内側円筒状伝熱ホルダ5に熱的に接続される。つまり、超電導体1の表面の全ての部分は、伝熱部材に熱的に接続されている。従って、磁場中冷却工程にて超電導体1を冷却した場合、図8に矢印で示したように、超電導体1の熱が全ての表面から流出される。このため、超電導体1を、より一層均一に冷却することができるとともに、冷却効率が向上する。
また、第六実施形態に係る超電導磁場発生装置106によれば、内側円筒状伝熱ホルダ5を超電導体1の内周側に設けることにより、室温ボア空間と超電導体1との間に内側円筒状伝熱ホルダ5が介在する。これにより、室温ボア空間からの輻射熱が超電導体1に直接伝熱されることが防止される。その結果、室温ボア空間からの熱輻射による超電導体1の温度上昇を抑えることができる。
(第七実施形態)
次に、本発明の第七実施形態について説明するが、本実施形態に係る超電導磁場発生装置は、補強リングを備えることを除き、基本的には第五実施形態に係る超電導磁場発生装置105と同一の構成である。以下、第五実施形態に係る超電導磁場発生装置105と相違する構成を中心に説明する。
図9は、第七実施形態に係る超電導磁場発生装置107を上下方向に沿った中心線を含む平面で切断した断面を表す概略図である。図9に示すように、第七実施形態に係る超電導磁場発生装置107は、超電導体1を補強するための補強部材としての補強リング8を備える。
本実施形態に係る補強リング8は、上記第四実施形態に係る補強リング8と同じように、6個の円筒状のリング部材(第一リング部材81、第二リング部材82、第三リング部材83、第四リング部材84、第五リング部材85、第六リング部材86)を、軸方向に沿ってこの順で同軸状に積み重ねることにより、円筒状に形成される。6個のリング部材の外周面により、補強リング8の外周面8cが構成され、6個のリング部材の内周面により、補強リング8の内周面8dが形成される。また、第一リング部材81の図9において下向きの端面により、補強リング8の一方端面8aが形成され、第六リング部材86の図9において上向きの端面により、補強リング8の他方端面8bが形成される。
また、超電導磁場発生装置107は、第五実施形態に係る超電導磁場発生装置105と同様に、超電導体1及び一対のカップ状伝熱ホルダ6を備えるが、一対のカップ状伝熱ホルダ6の各側壁部(612,622)の内径は超電導体1の外径よりも大きい。従って、一対のカップ状ホルダ6を超電導体1に対して同軸配置したときに、一対のカップ状伝熱ホルダ6の各側壁部(612,622)の内周面(612d,622d)と超電導体1の外周面1cとの間に円筒状の空間が形成される。この円筒状の空間に、補強リング8が配設される。
なお、第七実施形態においても第一実施形態及び第五実施形態と同様に、超電導体1は、6個の円筒状の超電導バルク(第一超電導バルク11、第二超電導バルク12,第三超電導バルク13、第四超電導バルク14、第五超電導バルク15、第六超電導バルク16)を軸方向に沿ってこの順で積み重ねることにより形成されている。そして、6個の超電導バルク(11,12,13,14,15,16)のそれぞれに、6個のリング部材(81,82,83,84,85,86)が、それぞれ対応して取り付けられる。6個の超電導バルクと6個のリング部材との対応関係、及び、超電導バルクへの補強リングの取付け構造は、上記第四実施形態で述べた対応関係及び取付構造と同じであるので、ここではその説明を省略する。
6個のリング部材により構成される補強リング8の内周面8dは、6個の超電導バルクにより構成される超電導体1の外周面1cに接触する。これにより、補強リング8の内周面8dが超電導体1の外周面1cに熱的に接続される。また、補強リング8の外周面8cは、一対のカップ状伝熱ホルダ6のいずれかの側壁部(612,622)の内周面(612d、622d)に接触する。具体的には、第一リング部材81、第二リング部材82、第三リング部材83の外周面が、第一カップ状伝熱ホルダ61の第一側壁部612の内周面612dに接触し、第四リング部材84、第五リング部材85、第六リング部材86の外周面が、第二カップ状伝熱ホルダ62の第二側壁部622の内周面622dに接触する。これにより、補強リング8の外周面が一対のカップ状伝熱ホルダ6に熱的に接続される。
また、補強リング8の一方端面8aを構成する第一リング部材81の下端面は、第一カップ状伝熱ホルダ61の第一底壁部611の内側面611aに接触する。これにより、補強リング8の一方端面8aが第一底壁部611に熱的に接続される。また、補強リング8の他方端面8bを構成する第六リング部材86の上端面は、第二カップ状伝熱ホルダ62の第二底壁部621の内側面621aに接触する。これにより、補強リング8の他方端面8bが第二底壁部621に熱的に接続される。
補強リング8は、超電導体1の熱収縮率以上の熱収縮率を有する材質により形成される。すなわち、補強リング8の熱収縮率が超電導体1の熱収縮率以上である。本実施形態では、補強リング8は、アルミニウム又はアルミニウム合金により形成される。アルミニウム又はアルミニウム合金の熱収縮率は、Re−Ba−Cu−O系の超電導体の熱収縮率よりも大きい。つまり、本実施形態では、補強リング8の熱収縮率は、超電導体1の熱収縮率よりも大きい。また、補強リング8は、カップ状伝熱ホルダ6の熱収縮率以下の熱収縮率を有する材質により形成されるとよい。すなわち、カップ状伝熱ホルダ6の熱収縮率は補強リング8の熱収縮以上であるとよい。本実施形態では、カップ状伝熱ホルダ6は、補強リング8と同一の材質(アルミニウム又はアルミニウム合金)により形成される。従って、カップ状伝熱ホルダ6の熱収縮率と補強リング8の熱収縮率は等しい。
第七実施形態に係る超電導磁場発生装置107の各構成のうち、上記した構成以外の構成は、上記第五実施形態に係る超電導磁場発生装置105の各構成と同一である。従って、それらの詳細な説明は省略する。
第七実施形態に係る超電導磁場発生装置107によれば、第五実施形態に係る超電導磁場発生装置105と同様に、超電導体1の一方端面1aが第一カップ状伝熱ホルダ61に熱的に接続され、超電導体1の他方端面1bが第二カップ状伝熱ホルダ62に熱的に接続される。また、第一カップ状伝熱ホルダ61及び第二カップ状伝熱ホルダ62はともにコールドヘッド3(延長部34)に熱的に接続される。従って、磁場中冷却工程にて、超電導体1は、コールドヘッド3が発生した冷熱によって、カップ状伝熱ホルダ6を介して、その両端から冷却される。よって、超電導体1を着磁する際における超電導体1の軸方向温度均一性を高めることができる。
また、超電導体1の外周面1cに補強リング8が接触状態で設けられており、この補強リング8の一方端面8aが第一カップ状伝熱ホルダ61の第一底壁部611に熱的に接続され、他方端面8bが第二カップ状伝熱ホルダ62の第二底壁部621に熱的に接続されている。従って、磁場中冷却工程にて補強リング8は軸方向に沿って均一に冷却される。このため、超電導体1は、その一方端面1a及び他方端面1bのみならず、外周面1cからも、補強リング8により冷却される。これにより、超電導体1が均一に冷却される。
また、補強リング8が超電導体1の外周面1cに接触状態で超電導体1の外周側に配設されているので、減磁工程の実施により超電導体1が着磁された場合に生じる電磁応力(フープ力)に対して補強リング8が超電導体1を補強する。このため、電磁応力力に起因した超電導体1の破損を効果的に防止することができる。
また、補強リング8の熱収縮率は、超電導体1の熱収縮率よりも大きいので、磁場中冷却工程にて超電導体1とともに補強リング8が冷却された際に、補強リング8が超電導体1よりも大きく収縮することにより、超電導体1が補強リングにより締め付けられる。このため超電導体1が補強リング8からより大きな圧縮応力を受け、このようにして受けた圧縮応力が電磁応力を相殺することにより、電磁応力に起因した超電導体1の破損をより効果的に防止することができる。加えて本実施形態によれば、補強リング8の外周側に一対のカップ状伝熱ホルダ6の側壁部(612,622)が設けられている。これらのカップ状伝熱ホルダの熱収縮率は、補強リング8の熱収縮率と同じであり、超電導体1の熱収縮率よりも大きい。従って、磁場中冷却工程にて、超電導体1にはカップ状伝熱ホルダ6からの圧縮応力及び補強リング8からの圧縮応力により、超電導体1が二重に補強される。よって、超電導体1の着磁の際に生じる電磁応力(フープ力)に対する補強効果をより一層高めることができる。
以上、本発明の様々な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるべきものではない。例えば、上記第一実施形態から第四実施形態に係るコールドヘッド3の第一延長部331は円筒状に形成されているが、一方端がステージ部32に熱的に接続され且つ他方端が第二延長部332に熱的に接続され、ステージ部32の周方向に沿って所定の間隔で配置された複数の棒状部材によって第一延長部331を構成しても良い。また、上記第五実施形態から第七実施形態に係るコールドヘッド3の延長部34も円筒状に形成されているが、一方端がステージ部32に熱的に接続され他方端が一対のカップ状伝熱ホルダ6のそれぞれの接続部(613,623)に熱的に接続され、ステージ部32の周方向に沿って所定の間隔で配置された複数の棒状部材によって延長部34を構成しても良い。なお、この場合、複数の棒状の延長部に対面する位置のみに、接続部を設けても良い。
また、上記各実施形態において、伝熱ホルダ(4,5,6)は、アルミニウム又はアルミニウム合金により構成されているが、アルミニウム又はアルミニウム合金以外の材質であって熱伝導な良好な材質によって伝熱ホルダ(4,5,6)を形成してもよい。
また、上記第一実施形態から第四実施形態に係るコールドヘッド3の延長部33は、円筒状の第一延長部331及び円板状の第二延長部332により構成されているが、ステージ部32に熱的に接続されるとともに超電導体1の他方端面1bに熱的に接続されるような構成であれば、どのように構成されていてもよい。
また、上記各実施形態において、超電導体1が複数の円筒状の超電導バルクを積み重ねることにより構成されているが、一体に構成されていてもよい。また、超電導体1が複数の円筒状の超電導バルクにより構成されている場合、各超電導バルクの接触界面に、例えばインジウムシートのような、接触界面の凹凸を埋めるための伝熱性のシートを介在させて、熱抵抗の減少(熱接触の向上)を図るようなことを実施することもできる。
また、コールドヘッド3と超電導体1との接触界面、補強リング8と超電導体1との接触界面、各伝熱ホルダ(4,5,6)と超電導体1との接触界面、外側円筒状伝熱ホルダ4とコールドヘッド3との接触界面、内側円筒状伝熱ホルダ5とコールドヘッド3との接触界面には、上記と同様に、インジウムシートを介在させて熱接触を向上させたり、接触対象間の熱的な接続が失われない程度に接着剤等を介在させてもよい。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、変形可能である。