JP2019081959A - アルミニウム合金材並びにこれを用いた締結部品、構造用部品、バネ用部品、導電部材および電池用部材 - Google Patents

アルミニウム合金材並びにこれを用いた締結部品、構造用部品、バネ用部品、導電部材および電池用部材 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の目的は、鉄系または銅系の金属材料の代替となり得る、高強度のアルミニウム合金材並びにこれを用いた締結部品、構造用部品、バネ用部品、導電部材および電池用部材を提供することにある。【解決手段】Mg:1.20質量%以上6.0質量%以下、Fe:0質量%以上1.50質量%以下、Si:0質量%以上1.0質量%以下、Cu、Ag、Zn、Ni、Ti、Co、Au、Mn、Cr、V、ZrおよびSnから選択される1種以上:合計で0質量%以上2.0質量%以下を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなる合金組成を有し、ビッカース硬さ(HV)が125〜280であることを特徴とする、アルミニウム合金材。【選択図】図1

Description

本発明は、高強度のアルミニウム合金材に関する。このようなアルミニウム合金材は、幅広い用途(例えば、締結部品、構造用部品、バネ用部品、導電部材および電池用部材)に用いられる。
従来から、自動車、鉄道車両等の輸送機器、各種構造部材および締結部材には、鉄系または銅系の金属材料が広く用いられてきたが、最近では、鉄系または銅系の金属材料に比べて、比重が小さく、さらに熱膨張係数が大きい他、熱および電気の伝導性も比較的良好で、耐食性に優れるアルミニウム系材料への代替が検討されている。
また、近年、金属部材の形状の多様化に伴い、金属の粉末を電子ビーム、レーザ等で焼結させて、所望の形状に三次元の構造体を造形する技術が広く検討されている。しかし、このような技術では、金属の粉末を使用するが、金属粉末を微細化しすぎると爆発し易くなる等の問題がある。
そのため最近では、金属製の細線を編む、織る、結ぶ、繋げる、接続する等の手法により、三次元の構造物を造形する技術が開発されている。このような手法は、例えばWire−Woven Cellular Materialsとして検討が進められており、電池用の部品、ヒートシンク、衝撃吸収部材等への応用が期待されている。
しかし、純アルミニウム材は、鉄系または銅系の金属材料に比べて強度が低いという問題があった。また、比較的高強度なアルミニウム系合金材である、2000系(Al−Cu系)および7000系(Al−Zn−Mg系)のアルミニウム合金材は、耐食性、耐応力腐食割れ性に劣る等の問題があった。また、電気および熱の伝導性、さらには耐食性が比較的優れるアルミニウム系合金材である、6000系(Al−Mg−Si系)のアルミニウム合金材は、アルミニウム系合金材の中では強度が高い方ではあるが、未だ十分な強度ではなく、更なる高強度化が望まれている。
一方、アルミニウム合金の高強度化の方法として、固溶元素を利用した技術が広く使用されている。例えば、特許文献1には高濃度のMgを含有し、高強度を得る方法が開示されている。また、特許文献2には、圧延温度の制御によって微細組織を有するAl−Mg系合金を得る方法が開示されている。しかし、これらの方法は、工業量産性に優れるが、更なる高強度化が課題だった。
さらに、アルミニウム合金材の高強度化を図る方法としては、非晶質相を備えたアルミニウム合金素材の結晶化による方法(特許文献3)、Equal−Channel Angular Pressing(ECAP)法による微細結晶粒形成方法(特許文献4)、室温以下の温度で冷間加工を施すことによる微細結晶粒形成方法(特許文献5)等が知られている。しかし、これらの方法は、いずれも製造されるアルミニウム合金材の大きさが小さく、工業的な実用化が難しかった。
また、特許文献6には、多量のMg添加と冷間圧延によって微細組織を有するAl−Mg系合金を得る方法が開示されている。この方法は、Mg量が多いことにより加工性に劣り、合金作製に特殊なプロセスが必要であることが課題であった。
特開2012−082469号公報 特開2003−027172号公報 特開平5−331585号公報 特開平9−137244号公報 特開2001−131721号公報 特開2009−24219号公報
本発明の目的は、鉄系または銅系の金属材料の代替となり得る、高強度のアルミニウム合金材並びにこれを用いた締結部品、構造用部品、バネ用部品、導電部材および電池用部材を提供することにある。
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、アルミニウム合金材が、所定の合金組成を有するとともに、結晶粒が一方向に揃って延在した繊維状の金属組織を有し、上記一方向に平行な断面において、上記結晶粒の長手方向に垂直な寸法の平均値が310nm以下であることにより、鉄系または銅系の金属材料に匹敵する高強度のアルミニウム合金材が得られることを見出し、かかる知見に基づき本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の要旨構成は、以下のとおりである。
[1]Mg:0.50質量%以上6.0質量%以下、Fe:0質量%以上1.50質量%以下、Si:0質量%以上1.0質量%以下、Cu、Ag、Zn、Ni、Ti、Co、Au、Mn、Cr、V、ZrおよびSnから選択される1種以上:合計で0質量%以上2.0質量%以下を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなる合金組成を有するアルミニウム合金材であって、
結晶粒が一方向に揃って延在した繊維状の金属組織を有し、
前記一方向に平行な断面において、前記結晶粒の長手方向に垂直な寸法の平均値が310nm以下であることを特徴とする、アルミニウム合金材。
[2]Mg:0.50質量%以上2.0質量%未満、Si:0質量%以上0.20質量%以下を含有する、上記[1]に記載のアルミニウム合金材。
[3]Mg:2.0質量%以上6.0質量%以下を含有する、上記[1]に記載のアルミニウム合金材。
[4]Mg:3.0質量%以上を含有する、上記[3]に記載のアルミニウム合金材。
[5]ビッカース硬さ(HV)が、125〜280である、上記[1]乃至[4]までのいずれかに記載のアルミニウム合金材。
[6]Cu、Ag、Zn、Ni、Ti、Co、Au、Mn、Cr、V、ZrおよびSnから選択される1種以上:合計で0.06質量%以上を含有する、上記[1]乃至[5]までのいずれかに記載のアルミニウム合金材。
[7]Cu:0.05質量%以上0.20質量%以下、Mn:0.3質量%以上1.0質量%以下、Cr:0.05質量%以上0.20質量%以下およびZr:0.02質量%以上0.20質量%以下の群から選択される1種以上を含有する、上記[1]乃至[6]までのいずれかに記載のアルミニウム合金材。
[8]110℃、24時間の加熱後の状態で測定した引張強度が300MPa以上である、上記[1]乃至[7]までのいずれかに記載のアルミニウム合金材。
[9]上記[1]乃至[8]までのいずれかに記載のアルミニウム合金材を用いた締結部品。
[10]上記[1]乃至[8]までのいずれかに記載のアルミニウム合金材を用いた構造用部品。
[11]上記[1]乃至[8]までのいずれかに記載のアルミニウム合金材を用いたバネ用部品。
[12]上記[1]乃至[8]までのいずれかに記載のアルミニウム合金材を用いた導電部材。
[13]上記[1]乃至[8]までのいずれかに記載のアルミニウム合金材を用いた電池用部材。
本発明によれば、アルミニウム合金材が、所定の合金組成を有するとともに、結晶粒が一方向に揃って延在した繊維状の金属組織を有し、上記一方向に平行な断面において、上記結晶粒の長手方向に垂直な寸法の平均値が310nm以下であることによって、鉄系または銅系の金属材料に匹敵する高強度のアルミニウム合金材並びにこれを用いた締結部品、構造用部品、バネ用部品、導電部材および電池用部材が得られる。
図1は、本発明に係るアルミニウム合金材の金属組織の様子を模式的に示す斜視図である。 図2は、純アルミニウムと、純銅および本発明の第一の実施態様にかかるアルミニウム合金材の、加工度と引張強度の関係を示すグラフである。 図3は、純アルミニウムと、純銅および本発明の第二の実施態様にかかるアルミニウム合金材の、加工度と引張強度の関係を示すグラフである。 図4は、実施例2に係るアルミニウム合金材の加工方向Xに平行な断面について、金属組織の様子を示すSIM画像である。
以下、本発明のアルミニウム合金材の好ましい実施形態について、詳細に説明する。
本発明に従うアルミニウム合金材は、Mg:0.50質量%以上6.0質量%以下、Fe:0質量%以上1.50質量%以下、Si:0質量%以上1.0質量%以下、Cu、Ag、Zn、Ni、Ti、Co、Au、Mn、Cr、V、ZrおよびSnから選択される1種以上:合計で0質量%以上2.0質量%以下を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなる合金組成を有するとともに、結晶粒が一方向に揃って延在した繊維状の金属組織を有し、上記一方向に平行な断面において、上記結晶粒の長手方向に垂直な寸法の平均値が310nm以下であることを特徴とする。
ここで、上記合金組成に含有範囲が挙げられている成分のうち、含有範囲の下限値が「0質量%」と記載されている成分はいずれも、適宜抑制されている成分か、必要に応じて任意に添加される成分を意味する。すなわちこれらの成分が「0質量%」の場合、その成分は含まれないことを意味する。
本明細書において、「結晶粒」とは方位差境界で囲まれた部分を指し、ここで「方位差境界」とは、走査透過電子顕微鏡法(STEM)、走査イオン顕微鏡(SIM)等によって、金属組織を観察した際に、コントラスト(チャネリングコントラスト)が不連続に変化する境界を指す。また、結晶粒の長手方向に垂直な寸法は、方位差境界の間隔に対応する。
また、本発明に係るアルミニウム合金材は、結晶粒が一方向に揃って延在した繊維状の金属組織を有する。ここで、本発明に係るアルミニウム合金材の金属組織の様子を概略的に示す斜視図を、図1に示す。図1に示されるように、本発明のアルミニウム合金材は、細長形状の結晶粒10が一方向Xに揃って延在状態となった繊維状組織を有している。このような細長形状の結晶粒は、従来の微細な結晶粒、および単にアスペクト比が大きい扁平な結晶粒とは全く異なる。すなわち、本発明の結晶粒は、繊維のような細長い形状で、その長手方向(加工方向X)に垂直な寸法tの平均値が310nm以下である。このような微細な結晶粒が一方向に揃って延在した繊維状の金属組織は、従来のアルミニウム合金にない新たな金属組織といえる。
本発明のアルミニウム合金材は、結晶粒が一方向に揃って延在した繊維状の金属組織を有し、上記一方向に平行な断面において、上記結晶粒の長手方向に垂直な寸法の平均値が310nm以下となるように制御されているため、鉄系または銅系の金属材料に匹敵する高強度(例えば、0.2%耐力400MPa以上、ビッカース硬さ(HV)125以上)を実現し得る。
また、結晶粒径を微細にすることは、強度を高める以外にも、粒界腐食を改善する作用、疲労特性を改善する作用、塑性加工した後の表面の肌荒れを低減する作用、せん断加工した際のダレ、バリを低減する作用などに直結し、材料の機能を全般的に高める効果がある。
(1)合金組成
[第一の実施形態]
本発明のアルミニウム合金材の第一の実施形態の合金組成とその作用について示す。
(必須添加成分)
本発明のアルミニウム合金材の第一の実施形態では、Mgを0.50質量%以上2.0質量%未満含有している。
<Mg:0.50質量%以上2.0質量%未満>
Mg(マグネシウム)は、アルミニウム母材中に固溶して強化する作用、および微細な結晶を安定化させ、結晶を微細化する作用を持つ。Mg含有量が2.0質量%以上である場合には、加工性が乏しく、加工度5超の比較的高い加工度では加工中に割れが生じやすい。また、Mg含有量が0.50質量%未満である場合には、微細化効果が乏しく、所望の金属組織が得られない。したがって、加工度5超の比較的高い加工度で、結晶微細化の効果を得る場合には、Mg含有量は好ましくは、0.50質量%以上2.0質量%未満、より好ましくは0.50質量%以上1.0質量%未満である。このようなMg含有量を満足することによって、加工度5超の比較的高い加工度で、結晶粒の長手方向に垂直な寸法の平均値が310nm以下の特有の金属組織を得ることができる。
(強度向上成分)
本発明のアルミニウム合金材の第一の実施形態では、Feの含有量を0質量%以上1.50質量%以下とする。
<Fe:0質量%以上1.50質量%以下>
Fe(鉄)は、鋳造、均質化熱処理中に、Al−Fe系、Al−Fe−Si系、Al−Fe−Si−Mg系など、アルミニウムとの金属間化合物、アルミニウムと他の添加元素との金属間化合物として晶出または析出する。これらのようにFeとAlとで主に構成される金属間化合物を本明細書ではFe系化合物と呼ぶ。Fe系化合物は、結晶粒の微細化に寄与するとともに、引張強度を向上させる。また、Feは、アルミニウム中に固溶したFeによっても引張強度を向上させる作用を有する。Feの含有量が増加するにつれてFe系化合物が増加し、強度向上に寄与するが、Feの含有量が1.50質量%を超えると、Fe系化合物が多くなりすぎて、加工性が低下する。なお、鋳造時の冷却速度が遅い場合は、Fe系化合物の分散が疎となり、悪影響度が高まる。したがって、Feの含有量は、0質量%以上1.50質量%以下とし、好ましくは0.02質量%以上0.80質量%以下、より好ましくは0.03質量%以上0.50質量%以下、さらに好ましくは0.04質量%以上0.35質量%以下、一層好ましくは0.05質量%以上0.25質量%以下である。
(抑制成分)
本発明のアルミニウム合金材の第一の実施形態では、Siの含有量を0質量%以上0.20質量%以下とする。
<Si:0質量%以上0.20質量%以下>
Si(ケイ素)は、鋳造、均質化熱処理中に、Al−Fe−Si系、Al−Fe−Si−Mg系等の金属間化合物として晶出または析出する成分である。これらのように主にFeとSiを含む金属間化合物を本明細書ではFeSi系金属間化合物と呼ぶ。この金属間化合物は、結晶粒の微細化に寄与するとともに、引張強度を向上させるが、鋳造時に不可避的に晶出または析出するFeSi系金属間化合物は、加工性を低下させる傾向にある。そのため、FeSi系金属間化合物の形成を抑制し、良好な加工性を得る観点から、Siはその含有量を抑制する必要があり、Si含有量を0.20質量%以下に制御する。なお、Siの含有量は、可能な限り低減することが望ましいが、製造工程上、不可避的に含まれる場合を考慮し、実用性の観点から、含有量を0.01質量%以上としてもよい。したがって、Siの含有量は、0質量%以上〜0.20質量%以下とし、好ましくは、0質量%以上〜0.15質量%以下、さらに好ましくは、0質量%以上〜0.10質量%以下である。
(任意添加成分)
本発明のアルミニウム合金材の第一の実施形態では、必須添加成分であるMgに加えて、さらに、任意添加元素として、Cu、Ag、Zn、Ni、Ti、Co、Au、Mn、Cr、V、ZrおよびSnから選択される1種以上を合計で0質量%以上2.0質量%以下含有させることができる。
<Cu、Ag、Zn、Ni、Ti、Co、Au、Mn、Cr、V、ZrおよびSnから選択される1種以上:合計で0質量%以上2.0質量%以下>
Cu(銅)、Ag(銀)、Zn(亜鉛)、Ni(ニッケル)、Ti(チタン)、Co(コバルト)、Au(金)、Mn(マンガン)、Cr(クロム)、V(バナジウム)、Zr(ジルコニウム)、Sn(スズ)はいずれも、特に耐熱性を向上させる元素である。このような作用効果を十分に発揮させる観点からは、これらの成分の含有量の合計を0.06質量%以上とすることが好ましい。しかし、これらの成分の含有量の合計を2.0質量%超とすると、加工性が低下する。したがって、Cu、Ag、Zn、Ni、Ti、Co、Au、Mn、Cr、V、ZrおよびSnから選択される1種以上の含有量の合計は、2.0質量%以下とし、好ましくは0.06質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上1.2質量%以下である。なお、これらの成分の含有量は、0質量%としてもよい。また、これらの成分は、1種のみの単独で添加されてもよいし、2種以上の組み合わせで添加されてもよい。特に、腐食環境で使用される場合の耐食性を配慮するとZn、Ni、Co、Mn、Cr、V、ZrおよびSnから選択されるいずれか1種以上を含有することが好ましい。
また、上記成分のうち、Cu:0.05質量%以上0.20質量%以下、Mn:0.3質量%以上1.0質量%以下、Cr:0.05質量%以上0.20質量%以下およびZr:0.02質量%以上0.20質量%以下の群から選択される1種以上を含有することがより好ましい。これらの成分は、固溶状態での拡散係数が大きく、アルミニウムとの原子サイズが大きく異なることで、粒界エネルギーを低下させる。さらに、これらの成分は、アルミニウムと微細な金属間化合物を形成することによっても、粒界の易動度を低下させる。これらの相乗効果により、微細結晶の粗大化を抑制し、加熱熱処理による強度の低下を抑制する。それぞれの成分の含有量の下限値は、上記作用効果を発揮させる上でより好ましく、上限値は、粗大な晶出物の形成、さらには加工性の低下を抑制する上でより好ましい。
<残部:Alおよび不可避不純物>
上述した成分以外の残部は、Al(アルミニウム)および不可避不純物である。ここでいう不可避不純物は、製造工程上、不可避的に含まれうる含有レベルの不純物を意味する。不可避不純物は、含有量によっては導電率を低下させる要因にもなりうるため、導電率の低下を考慮して不可避不純物の含有量をある程度抑制することが好ましい。不可避不純物として挙げられる成分としては、例えば、B(ホウ素)、Bi(ビスマス)、Pb(鉛)、Ga(ガリウム)、Sr(ストロンチウム)等が挙げられる。なお、これらの成分含有量の上限は、上記成分毎に0.05質量%であってよく、上記成分の総量で0.15質量%であってよい。
[第二の実施形態]
次に、本発明のアルミニウム合金材の第二の実施形態の合金組成とその作用について示す。
(必須添加成分)
本発明のアルミニウム合金材の第二の実施形態では、Mgを2.0質量%以上6.0質量%以下含有している。
<Mg:2.0質量%以上6.0質量%以下>
Mg(マグネシウム)は、アルミニウム母材中に固溶して強化する作用、および微細な結晶を安定化させ、結晶を微細化する作用を持つ。加工度5以下の比較的低い加工度で、結晶微細化の効果を得る場合には、Mg含有量は好ましくは、2.0質量%以上、より好ましくは3.0質量%以上である。Mgの含有量が2.0質量%未満である場合では、加工度5以下の比較的低い加工度で微細化効果が乏しく、所望の金属組織が得られにくい。また、Mg含有量が6.0質量%超である場合には、加工性が乏しいため加工中に割れが生じる。このようなMg含有量を満足することによって、加工度5以下の比較的低い加工度で、結晶粒の長手方向に垂直な寸法の平均値が310nm以下の特有の金属組織を得ることができる。
(強度向上成分)
本発明のアルミニウム合金材の第二の実施形態では、Feの含有量を0質量%以上1.50質量%以下とする。
<Fe:0質量%以上1.50質量%以下>
Fe(鉄)は、鋳造、均質化熱処理中に、Al−Fe系、Al−Fe−Si系、Al−Fe−Si−Mg系など、アルミニウムとの金属間化合物、アルミニウムと他の添加元素との金属間化合物として晶出または析出する。Fe系化合物は、結晶粒の微細化に寄与するとともに、引張強度を向上させる。また、Feは、アルミニウム中に固溶したFeによっても引張強度を向上させる作用を有する。Feの含有量が増加するにつれてFe系化合物が増加し、強度向上に寄与するが、1.50質量%を超えると、Fe系化合物が多くなりすぎて、加工性が低下する。なお、鋳造時の冷却速度が遅い場合は、Fe系化合物の分散が疎となり、悪影響度が高まる。したがって、Feの含有量は、0質量%以上1.50質量%以下とし、好ましくは0.02質量%以上0.80質量%以下、より好ましくは0.03質量%以上0.50質量%以下、さらに好ましくは0.04質量%以上0.35質量%以下、一層好ましくは0.05質量%以上0.25質量%以下である。
(抑制成分)
本発明のアルミニウム合金材の第二の実施形態では、Siの含有量を0質量%以上1.0質量%以下とする。
<Si:0質量%以上1.0質量%以下>
Si(ケイ素)は、鋳造、均質化熱処理中に、Mg−Si系、Al−Fe−Si系、Al−Fe−Si−Mg系等の金属間化合物として晶出または析出する成分である。これらのように主にMgとSiを含む金属間化合物を本明細書ではMgSi系金属間化合物と呼ぶ。Siは、Mgが2.0質量%以上の場合には、MgSi系金属間化合物として晶出または析出しやすく、結晶粒の微細化に寄与するとともに、引張強度を向上させる。Siが、1.0質量%より多いと、FeSi系金属間化合物として晶出または析出すしやすく、加工性を低下させる傾向にある。そのため、FeSi系金属間化合物の形成を抑制し、良好な加工性を得る観点から、Siはその含有量を抑制する必要があり、Si含有量を1.0質量%以下に制御する。なお、Siの含有量は、可能な限り低減することが望ましいが、製造工程上、不可避的に含まれる場合を考慮し、実用性の観点から、含有量の下限値を0.01質量%以上としてもよい。したがって、Siの含有量は、0質量%以上1.0質量%以下とし、好ましくは、0質量%以上0.60質量%以下、さらに好ましくは、0質量%以上0.40質量%以下、一層好ましくは0質量%以上0.20質量%以下である。
(任意添加成分)
第一の実施形態と同様、必須添加成分であるMgに加えて、さらに、任意添加元素として、Cu、Ag、Zn、Ni、Ti、Co、Au、Mn、Cr、V、ZrおよびSnから選択される1種以上を合計で0質量%以上2.0質量%以下含有させることができる。
<Cu、Ag、Zn、Ni、Ti、Co、Au、Mn、Cr、V、ZrおよびSnから選択される1種以上:合計で0質量%以上2.0質量%以下>
Cu(銅)、Ag(銀)、Zn(亜鉛)、Ni(ニッケル)、Ti(チタン)、Co(コバルト)、Au(金)、Mn(マンガン)、Cr(クロム)、V(バナジウム)、Zr(ジルコニウム)、Sn(スズ)はいずれも、特に耐熱性を向上させる元素である。このような作用効果を十分に発揮させる観点からは、これらの成分の含有量の合計を0.06質量%以上とすることが好ましい。しかし、これらの成分の含有量の合計を2.0質量%超とすると、加工性が低下する。したがって、Cu、Ag、Zn、Ni、Ti、Co、Au、Mn、Cr、V、ZrおよびSnから選択される1種以上の含有量の合計は、2.0質量%以下とし、好ましくは0.06質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上1.2質量%以下である。なお、これらの成分の含有量は、0質量%としてもよい。また、これらの成分は、1種のみの単独で添加されてもよいし、2種以上の組み合わせで添加されてもよい。特に、腐食環境で使用される場合の耐食性を配慮するとZn、Ni、Co、Mn、Cr、V、ZrおよびSnから選択されるいずれか1種以上を含有することが好ましい。
また、上記成分のうち、Cu:0.05質量%以上0.20質量%以下、Mn:0.3質量%以上1.0質量%以下、Cr:0.05質量%以上0.20質量%以下およびZr:0.02質量%以上0.20質量%以下の群から選択される1種以上を含有することがより好ましい。これらの成分は、固溶状態での拡散係数が大きく、アルミニウムとの原子サイズが大きく異なることで、粒界エネルギーを低下させる。さらに、これらの成分は、アルミニウムと微細な金属間化合物を形成することによっても、粒界の易動度を低下させる。これらの相乗効果により、微細結晶の粗大化を抑制し、加熱熱処理による強度の低下を抑制する。それぞれの成分の含有量の下限値は、上記作用効果を発揮させる上でより好ましく、上限値は、粗大な晶出物の形成、さらには加工性の低下を抑制する上でより好ましい。
<残部:Alおよび不可避不純物>
上述した成分以外の残部は、Al(アルミニウム)および不可避不純物である。ここでいう不可避不純物は、製造工程上、不可避的に含まれうる含有レベルの不純物を意味する。不可避不純物は、含有量によっては導電率を低下させる要因にもなりうるため、導電率の低下を考慮して不可避不純物の含有量をある程度抑制することが好ましい。不可避不純物として挙げられる成分としては、例えば、B(ホウ素)、Bi(ビスマス)、Pb(鉛)、Ga(ガリウム)、Sr(ストロンチウム)等が挙げられる。なお、これらの成分含有量の上限は、上記成分毎に0.05質量%であってよく、上記成分の総量で0.15質量%であってよい。
このようなアルミニウム合金材は、合金組成および製造プロセスを組み合わせて制御することにより実現できる。以下、本発明のアルミニウム合金材の好適な製造方法について説明する。
(2)本発明の一実施例によるアルミニウム合金材の製造方法
このような本発明の一実施例によるアルミニウム合金材は、特にAl−Mg系合金の内部に結晶粒界を高密度で導入することにより、高強度化を図ることを特徴とする。したがって、従来のアルミニウム合金材で一般的に行われてきた、Mg−Si化合物の析出硬化させる方法とは、高強度化に対するアプローチが大きく異なる。
本発明のアルミニウム合金材の好ましい製造方法では、所定の合金組成を有するアルミニウム合金素材に対し、第一の実施形態では、最終加工として加工度で5〜11で冷間加工[1]、第二の実施形態では、最終加工として加工度で2〜5で冷間加工[1]をそれぞれ行う。また、必要に応じて、各実施態様の冷間加工[1]の後に、調質焼鈍[2]を行ってもよい。なお、本明細書において、調質焼鈍は安定化処理を含む処理である。以下、詳しく説明する。
通常、金属材に変形の応力が加わると、金属結晶の変形の素過程として、結晶すべりが生じる。このような結晶すべりが生じやすい金属材ほど、変形に要する応力は小さく、低強度といえる。そのため、金属材の高強度化に当たっては、金属組織内で生じる結晶すべりを抑制することが重要となる。このような結晶すべりの阻害要因としては、金属組織内の結晶粒界の存在が挙げられる。このような結晶粒界は、金属材に変形の応力が加わった際に、結晶すべりが金属組織内で伝播することを防止でき、その結果、金属材の強度は高められる。
そのため、金属材の高強度化にあたっては、金属組織内に結晶粒界を高密度で導入することが望ましいと考えられる。ここで、結晶粒界の形成機構としては、例えば、次のような金属組織の変形に伴う、金属結晶の分裂が考えられる。通常、多結晶材料の内部は、隣接する結晶粒同士の方位の違い、加工工具と接する表層近傍とバルク内部との間の歪みの空間分布に起因して、応力状態は、複雑な多軸状態となっている。これらの影響により、変形前に単一方位であった結晶粒が、変形に伴って複数の方位に分裂していき、分裂した結晶同士の間には結晶粒界が形成される。
しかし、形成された結晶粒界は、通常の12配位の最密原子配列から乖離している構造で界面エネルギーを有する。そのため、通常の金属組織では、結晶粒界が一定密度以上になると、増加した内部エネルギーが駆動力となり、動的もしくは静的な回復、再結晶が起きると考えられる。そのため、通常は、変形量を増やしても、結晶粒界の増加と減少が同時に起きるため、粒界密度は飽和状態になると考えられる。
このような現象は、従来の金属組織である純アルミニウムおよび純銅における加工度と引張強度の関係とも一致する。図2に、純アルミニウムと、純銅および本発明の第一の実施態様にかかるアルミニウム合金材の、加工度と引張強度の関係のグラフを示す。また、図3に、純アルミニウムと、純銅および本発明の第二の実施態様にかかるアルミニウム合金材の、加工度と引張強度の関係のグラフを示す。
図2、3に示されるように、通常の金属組織である純アルミニウムおよび純銅は、比較的低い加工度では引張強度の向上(硬化)がみられるが、加工度が増すほど硬化量は飽和する傾向にある。ここで、加工度は、上述の金属組織に加わる変形量に対応し、硬化量の飽和は粒界密度の飽和に対応すると考えられる。
これに対し、本発明のアルミニウム合金材では、加工度が増しても硬化が持続的であり、強度が加工とともに上昇し続けることがわかった。これは、本発明のアルミニウム合金材が、上記合金組成を有することにより、特に、所定量のMgを有することにより、結晶粒界密度の増加を促進し、また、金属組織内で結晶粒界が一定密度以上になっても、内部エネルギーの増加を抑制できることによるものと考えられる。その結果、金属組織内での回復、再結晶を防止でき、効果的に金属組織内に結晶粒界を増加できると考えられる。
このようなMg添加による結晶微細化のメカニズムは必ずしも明らかではないが、(i)転位といった格子欠陥と強い相互作用を持つMgが、マイクロバンドの形成を容易にすることで、結晶分断を促進すること、(ii)Al原子に対して原子半径の大きいMg原子が粒界での原子配列のミスマッチを緩和することで、加工に伴う内部エネルギーの増加を効果的に抑制できることによるものと考えられる。
このような本発明では、冷間加工[1]における加工度を、第1の実施態様では5超とし、第2の実施態様では2以上5以下とする。特に、各実施態様において、より大きな加工度による加工を行うことにより、金属組織の変形に伴う金属結晶の分裂を促すことができ、アルミニウム合金材の内部に結晶粒界を高密度で導入できる。その結果、アルミニウム合金材の粒界が強化されて、強度が大幅に向上する。このような加工度は、第1の実施態様では、好ましくは6以上、より好ましくは9以上とし、その上限は特に規定されないが、通常は15である。また、第2の実施態様において、加工度は、好ましくは3以上、より好ましくは4以上とし、その上限は特に規定されないが、加工割れを防止するため、通常は5以下である。
なお、加工度ηは、加工前の断面積をs1、加工後の断面積をs2(s1>s2)とするとき、下記式(1)で表される。
加工度(無次元):η=ln(s1/s2) ・・・(1)
また、加工率としては98.2%以上とすることが好ましく、99.8%以上とすることがより好ましい。なお、加工率Rは、上記s1およびs2により、下記式(2)で表される。
加工率(%):R={(s1−s2)/s1}×100 ・・・(2)
また、加工方法は、目的とするアルミニウム合金材の形状(線棒材、板材、条、箔など)に応じて適宜選択すればよく、例えばカセットローラーダイス、溝ロール圧延、丸線圧延、ダイス等による引抜き加工、スエージング等が挙げられる。また、上記のような加工における諸条件(潤滑油の種類、加工速度、加工発熱等)は、公知の範囲で適宜調整すればよい。
また、アルミニウム合金素材は、上記合金組成を有するものであれば特に限定はなく、例えば、押出材、鋳塊材、熱間圧延材、冷間圧延材等を、使用目的に応じて適宜選択して用いることができる。
本発明では、残留応力の解放、伸びの向上を目的として、冷間加工[1]の後に調質焼鈍[2]を行ってもよい。調質焼鈍[2]を行う場合には、処理温度を50〜160℃とする。調質焼鈍[2]の処理温度が50℃未満の場合には、上記のような効果が得られにくく、160℃を超えると回復、再結晶によって結晶粒の成長が起き、強度が低下する。また、調質焼鈍[2]の保持時間は好ましくは1〜48時間である。なお、このような熱処理の諸条件は、不可避不純物の種類、量、およびアルミニウム合金素材の固溶・析出状態によって、適宜調節することができる。
また、本発明では、上述のように、アルミニウム合金素材に対し、ダイスによる引抜き、圧延等の方法により、高い加工度の加工が行われる。そのため、結果として、長尺のアルミニウム合金材が得られる。一方、粉末焼結、圧縮ねじり加工、High pressure torsion(HPT)、鍛造加工、Equal Channel Angular Pressing(ECAP)等のような従来のアルミニウム合金材の製造方法では、このような長尺のアルミニウム合金材を得ることは難しい。このような本発明のアルミニウム合金材は、好ましくは10m以上の長さで製造される。なお、製造時のアルミニウム合金材の長さの上限は特に設けないが、作業性等を考慮し、10000mとすることが好ましい。
また、本発明のアルミニウム合金材は、上述のように結晶粒の微細化のために加工度を大きくすることが有効である。そのため、特に線材、棒材として作製する場合には、細径にするほど、また、板材、箔として作製する場合には、薄厚にするほど、本発明の構成を実現しやすい。
特に、本発明のアルミニウム合金材が線材である場合には、その線径は、第一の実施形態では、好ましくは3.5mm以下、より好ましくは2.5mm以下、さらに好ましくは1.5mm以下、特に好ましくは1.0mm以下である。なお、下限は特に設けないが、作業性等を考慮し、0.05mmであることが好ましい。第二の実施形態では、好ましくは10mm以下、より好ましくは7.5mm以下、さらに好ましくは5.0mm以下、特に好ましくは3.5mm以下である。
また、本発明のアルミニウム合金材が棒材である場合には、その線径あるいは一辺の長さは、線材と同程度の加工度が得られればよく、例えば25mm以下、より好ましくは20mm以下、さらに好ましくは15mm以下、特に好ましくは10mm以下である。
また、本発明のアルミニウム合金材が板材である場合には、その板厚は、好ましくは2.0mm以下、より好ましくは1.5mm以下、さらに好ましくは1.0mm以下、特に好ましくは0.5mm以下である。なお、下限は特に設けないが、作業性等を考慮し、0.020mmであることが好ましい。
また、上述のように本発明のアルミニウム合金材は、細くまたは薄く加工される場合があるが、このようなアルミニウム合金材を複数用意して接合し、太くまたは厚くして、目的の用途に使用することもできる。なお、接合の方法は、公知の方法を用いることができ、例えば圧接、溶接、接着剤による接合、摩擦攪拌接合等が挙げられる。また、アルミニウム合金材が線棒材である場合には、複数本束ねて撚り合わせ、アルミニウム合金撚線として、目的の用途に使用することもできる。なお、上記調質焼鈍[2]の工程は、上記冷間加工[1]を行ったアルミニウム合金材を、接合あるいは撚り合わせによる加工を行った後に、行ってもよい。
(3)本発明のアルミニウム合金材の組織的な特徴
上述のような製造方法によって製造される本発明のアルミニウム合金材は、金属組織内に結晶粒界が高密度で導入されている。このような本発明のアルミニウム合金材は、結晶粒が一方向に揃って延在した繊維状の金属組織を有し、上記一方向に平行な断面において、上記結晶粒の長手方向に垂直な寸法の平均値が310nm以下であることを特徴とする。このようなアルミニウム合金材は、従来にはない特有の金属組織を有することにより、特に優れた強度を発揮し得る。
本発明のアルミニウム合金材の金属組織は繊維状組織であり、細長形状の結晶粒が一方向に揃って繊維状に延在した状態になっている。ここで、「一方向」とは、アルミニウム合金材の加工方向に対応し、アルミニウム合金材が、線材、棒材である場合には例えば伸線方向に、板材、箔である場合には例えば圧延方向に、それぞれ対応する。また、本発明のアルミニウム合金材は、特にこのような加工方向に平行な引張応力に対して、特に優れた強度を発揮する。
また、上記一方向は、好ましくはアルミニウム合金材の長手方向に対応する。すなわち、通常、アルミニウム合金材は、その加工方向に垂直な寸法よりも短い寸法に個片化されていない限り、その加工方向は、その長手方向に対応する。
また、上記一方向に平行な断面において、結晶粒の長手方向に垂直な寸法の平均値は、310nm以下であり、より好ましくは270nm以下であり、さらに好ましくは220nm以下、特に好ましくは170nm以下、一層好ましくは120nm以下である。このような径(結晶粒の長手方向に垂直な寸法)の細い結晶粒が一方向に延在した繊維状の金属組織では、結晶粒界が高密度に形成されており、このような金属組織によれば、変形に伴う結晶すべりを効果的に阻害でき、従来にない高強度を実現し得る。なお、結晶粒の長手方向に垂直な寸法の平均値は、高強度を実現する上で小さいほど好ましいが、製造上または物理上の限界としての下限は例えば20nmである。
また、上記結晶粒の長手方向の寸法は、必ずしも特定されないが、1200nm以上であることが好ましく、より好ましくは1700nm以上であり、さらに好ましくは2200nm以上である。また、上記結晶粒のアスペクト比では、10以上であることが好ましく、より好ましくは20以上である。
(4)本発明のアルミニウム合金材の特性
[0.2%耐力]
0.2%耐力は、JIS Z2241:2011に準拠して測定された値とする。詳しい測定条件は、後述する実施例の欄にて説明する。
本発明のアルミニウム合金材は、特に線材、棒材である場合に、好ましくは0.2%耐力が400MPa以上である。これは、一般的な強伸線加工した銅線と同等の強度である。また、アルミニウム合金材の0.2%耐力は、より好ましくは460MPa以上、さらに好ましくは520MPa以上、特に好ましくは580MPa以上、より一層好ましくは650MPa以上である。このような高強度をもつ本発明のアルミニウム合金材は、Cu−Sn系、Cu−Cr系などの希薄銅合金の強伸線加工材の代替として使用できる。また、このようなアルミニウム合金材は、鋼系またはステンレス鋼系の材料の代替としても使用可能である。なお、本発明のアルミニウム合金材の0.2%耐力の上限は、特に限定されないが、例えば800MPaであり、好ましくは750MPaである。
[ビッカース硬さ(HV)]
ビッカース硬さ(HV)は、JIS Z 2244:2009に準拠して測定された値とする。詳しい測定条件は、後述する実施例の欄にて説明する。なお、すでに部品となった加工品のビッカース硬さ(HV)を測定する場合には、加工品を分解して、断面を鏡面研磨し、その断面について測定を行うこともできる。
本発明のアルミニウム合金材は、特に線材、棒材である場合に、好ましくはビッカース硬さ(HV)が125以上である。これは、一般的な強伸線加工した銅線と同等の強度である。また、アルミニウム合金材のビッカース硬さ(HV)は、より好ましくは140以上、さらに好ましくは150以上、特に好ましくは160以上、より一層好ましくは170以上である。このような高強度をもつ本発明のアルミニウム合金材は、Cu−Sn系、Cu−Cr系などの希薄銅合金の強伸線加工材の代替として使用できる。また、このようなアルミニウム合金材は、鋼系またはステンレス鋼系の材料の代替としても使用可能である。なお、本発明のアルミニウム合金材のビッカース硬さ(HV)の上限は、特に限定されないが、例えば330であり、好ましくは280である。
[引張強度]
引張強度は、JIS Z2241:2011に準拠して測定されたとする。詳しい測定条件は、後述する実施例の欄にて説明する。
本発明のアルミニウム合金材は、特に線材、棒材である場合に、好ましくは引張強度が450MPa以上である。これは、一般的な強い加工度で伸線加工した銅線と同等の強度である。また、アルミニウム合金材の引張強度は、より好ましくは520MPa以上、さらに好ましくは560MPa以上、特に好ましくは600MPa以上、より一層好ましくは640MPa以上である。このような高強度をもつ本発明のアルミニウム合金材は、Cu−Sn系、Cu−Cr系などの希薄銅合金の強伸線加工材の代替として使用できる。また、このようなアルミニウム合金材は、鋼系またはステンレス鋼系の材料の代替としても使用可能である。なお、本発明のアルミニウム合金材の引張強度の上限は、特に限定されないが、例えば1000MPaである。
また、本発明のアルミニウム合金材は、好ましくは耐熱性にも優れる。このような本発明のアルミニウム合金材は、加熱後においても、上記のような高い引張強度を維持することができる。特に、本発明のアルミニウム合金材は、110℃、24時間の加熱後の状態で測定した引張強度が300MPa以上であることが好ましく、より好ましくは400MPa以上であり、さらに好ましくは500MPa以上である。
(5)本発明のアルミニウム合金材の用途
本発明のアルミニウム合金材は、鉄系材料、銅系材料およびアルミニウム系材料が用いられているあらゆる用途が対象となり得る。具体的には、電線、ケーブル等の導電部材、集電体用のメッシュ、網等の電池用部材、ねじ、ボルト、リベット等の締結部品、コイルバネ等のバネ用部品、コネクタ、端子等の電気接点用バネ部材、シャフト、フレーム等の構造用部品、ガイドワイヤー、半導体用のボンディングワイヤー、発電機、モータに用いられる巻線等として好適に用いることができる。また、本発明のアルミニウム合金材は、好ましくは耐熱性にも優れるため、特に耐熱性が要求される用途に対してさらに好適である。
導電部材のより具体的な用途例としては、架空送電線、OPGW、地中電線、海底ケーブルなどの電力用電線、電話用ケーブル、同軸ケーブルなどの通信用電線、有線ドローン用ケーブル、キャブタイヤケーブル、EV/HEV用充電ケーブル、洋上風力発電用捻回ケーブル、エレベータケーブル、アンビリカルケーブル、ロボットケーブル、電車用架線、トロリ線などの機器用電線、自動車用ワイヤーハーネス、船舶用電線、飛行機用電線などの輸送用電線、バスバー、リードフレーム、フレキシブルフラットケーブル、避雷針、アンテナ、コネクタ、端子、ケーブルの編粗などが挙げられる。
電池用部材には、太陽電池の電極、などが挙げられる。
構造用部品のより具体的な用途例としては、建築現場の足場、コンベアメッシュベルト、衣料用の金属繊維、鎖帷子、フェンス、虫除けネット、ジッパー、ファスナー、クリップ、アルミウール、ブレーキワイヤー、スポークなどの自転車用部品、強化ガラスの補強線、パイプシール、メタルパッキン、ケーブルの保護強化材、ファンベルトの芯金、アクチュエータ駆動用ワイヤー、チェーン、ハンガー、防音用メッシュ、棚板などが挙げられる。
締結部品のより具体的な用途例としては、いもねじ、ステープル、画鋲などが挙げられる。
バネ用部品のより具体的な用途例としては、バネ電極、端子、コネクタ、半導体プローブ用バネ、板バネ、ぜんまい用バネなどが挙げられる。
また、他の用途として、樹脂系材料、プラスチック材料、布などに導電性を持たせたり、強度、弾性率を制御したりするために添加する金属繊維としても好適である。
また、他の用途として、メガネフレーム、時計用ベルト、万年筆のペン先、フォーク、ヘルメット、注射針などの民生部材、医療部材にも好適である。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の概念および特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
次に、本発明の効果をさらに明確にするために、実施例および比較例について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜32)
まず、表1に示す合金組成を有する各棒材を準備した。次に、各棒材を用いて、表1に示す製造条件にて、それぞれのアルミニウム合金線材(最終線径0.85mmφ)を作製した。なお、各棒材は、最終線径において所定の加工度となる径のものを用意した。
(比較例1)
比較例1では、99.99質量%−Alからなる棒材を用い、表1に示す製造条件にて、アルミニウム線材(最終線径0.85mmφ)を作製した。
(比較例2〜5)
比較例2〜5は、表1に示す合金組成を有する各棒材を用い、表1に示す製造条件にて、それぞれのアルミニウム合金線材(最終線径0.85mmφ)を作製した。
なお、表1に示す製造条件A〜Iは、具体的には以下のとおりである。
<製造条件A>
準備した棒材に対し、加工度2.0の冷間加工[1]を行った。なお、調質焼鈍[2]は行わなかった。
<製造条件B>
冷間加工[1]の加工度を4.0とした以外は、製造条件Aと同じ条件で行った。
<製造条件C>
冷間加工[1]の加工度を5.0とした以外は、製造条件Aと同じ条件で行った。
<製造条件D>
冷間加工[1]の加工度を5.5とした以外は、製造条件Aと同じ条件で行った。
<製造条件E>
冷間加工[1]の加工度を8.5とした以外は、製造条件Aと同じ条件で行った。
<製造条件F>
冷間加工[1]の加工度を9.5とした以外は、製造条件Aと同じ条件で行った。
<製造条件G>
準備した棒材に対し、加工度2.0の冷間加工[1]を行い、その後、処理温度80℃、保持時間2時間の条件で調質焼鈍[2]を行った。
<製造条件H>
冷間加工[1]の加工度を4.0とした以外は、製造条件Eと同じ条件で行った。
<製造条件I>
冷間加工[1]の加工度を5.0とした以外は、製造条件Eと同じ条件で行った。
<製造条件J>
冷間加工[1]の加工度を5.5とした以外は、製造条件Eと同じ条件で行った。
<製造条件K>
冷間加工[1]の加工度を8.5とした以外は、製造条件Eと同じ条件で行った。
<製造条件L>
冷間加工[1]の加工度を9.5とした以外は、製造条件Eと同じ条件で行った。
<製造条件M>
冷間加工[1]の加工度を1.0とした以外は、製造条件Aと同じ条件で行った。
(比較例6〜8):表1の製造条件N
表1に示す合金組成を有する各棒材に対し、加工度2.0の冷間加工[1]を行ったが、断線が多発したため、作業を中止した。
(実施例31):表1の製造条件O
表1に示す合金組成を有する棒材に対し、加工度2.0の冷間加工[1]を行った後、圧延加工を行い、アルミニウム合金板材(最終板厚0.85mm、幅1.0mm)を作製した。なお、調質焼鈍[2]は行わなかった。
(実施例32):表1の製造条件P
表1に示す合金組成を有する棒材に対し、加工度6.5の冷間加工[1]を行った後、圧延加工を行い、アルミニウム合金板材(最終板厚0.85mm、幅1.0mm)を作製した。なお、調質焼鈍[2]は行わなかった。
(比較例9):表1の製造条件Q
純Al地金(JIS A1070)に2.5質量%のMgを添加した合金組成を有する鋳塊を製造し、これを560℃にて24時間の均質化処理し、冷間加工により、板材を作製した。この板材を、320℃で4時間の再結晶化処理した後、加工度3.0の冷間加工[1]を施し、アルミニウム合金板材(最終板厚0.85mm)を作製した。なお、調質焼鈍は行わなかった。
(比較例10):表1の製造条件R
表1に示す組成のアルミニウム合金を、溶解し、半連続鋳造にて鋳塊を作製した。この鋳塊に、480℃にて均質化熱処理を行った。その後、熱間圧延(開始温度:400℃、終了温度:330℃)を施して、熱間圧延板とした。その後、加工度1.9の冷間加工[1]を施し、175℃にて4時間の調質焼鈍を施し、アルミニウム合金板材(最終板厚0.85mm)を作製した。
[評価]
上記実施例および比較例に係るアルミニウム合金線材およびアルミニウム合金板材(以下、「アルミニウム合金材」という。)を用いて、下記に示す特性評価を行った。各特性の評価条件は下記の通りである。結果を表1に示す。
[1]合金組成
JIS H1305:2005に準じて、発光分光分析法によって行った。なお、測定は、発光分光分析装置(株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて行った。
[2]組織観察
金属組織の観察は、走査イオン顕微鏡(SMI3050TB、セイコーインスツル株式会社製)を用い、SIM(Scanning Ion Microscope)観察により行った。加速電圧30kVにて観察を行った。観察用試料は、上記アルミニウム合金材の長手方向(加工方向X)に平行な断面について、FIB(Focused Ion Beam)により加工し、イオンミリングで仕上げたものを用いた。
SIM観察では、グレーコントラストを用い、コントラストの違いを結晶の方位として、コントラストが不連続に異なる境界を結晶粒界として認識した。なお、電子線の回折条件によっては、結晶方位が異なっていてもグレーコントラストに差がない場合があるので、その場合には、電子顕微鏡の試料ステージ内における直交する2本の試料回転軸によって±3°ずつ傾けて電子線と試料の角度を変えて、複数の回折条件で観察面を撮影し、粒界を認識した。なお観察視野は、(15〜40)μm×(15〜40)μmとし、上記断面において、アルミニウム合金材の長手方向に垂直な方向に対応する線上の、中心と表層の中間付近の位置(表層側から線径もしくは板厚の約1/4中心側の位置)で観察を行った。観察視野は、結晶粒の大きさに応じて、適宜調整し、各試料で3箇所ずつ観察した。
そして、SIM観察を行った際に撮影した画像から、アルミニウム合金材の長手方向(加工方向X)に平行な断面において、繊維状の金属組織の有無を判断した。図4は、SIM観察を行った際に撮影した、実施例2のアルミニウム合金材の長手方向(加工方向X)に平行な断面のSIM画像の一部である。本実施例では、図4のような金属組織が観察された場合に、繊維状の金属組織が「有」と評価した。
さらに、それぞれの観察視野において、結晶粒のうち任意の100個を選択し、それぞれの結晶粒の長手方向に垂直な寸法と、結晶粒の長手方向に平行な寸法を測定し、その結晶粒のアスペクト比を算出した。さらに、結晶粒の長手方向に垂直な寸法とアスペクト比については、観察した結晶粒の総数から、平均値を算出した。なお、観察された結晶粒が400nmよりも明らかに大きい場合には、各寸法を測定する結晶粒の選択数を減らして、それぞれの平均値を算出した。また、結晶粒の長手方向に平行な寸法が、明らかに結晶粒の長手方向に垂直な寸法の10倍以上のものについては、一律にアスペクト比10以上と判断した。
[3]0.2%耐力
まず、測定用サンプルを準備した。実施例1〜30および比較例1〜5の線材については、伸線状態のままで、測定用サンプルとした。また、実施例31、32のアルミニウム合金板材については、圧延状態のままで、測定用サンプルとした。また、比較例9のアルミニウム合金板材については、圧延後、打ち抜き加工を行い、幅1.0mmに加工したものを、測定用サンプルとした。さらに、比較例10のアルミニウム合金板材については、圧延後、切出し加工を行い、幅1.0mmに加工したものを、測定用サンプルとした。
それぞれの測定用サンプルについて、JIS Z2241:2011に準じて、精密万能試験機(株式会社島津製作所製)を用いて、引張試験を行い、0.2%耐力を(MPa)を測定した。また、上記試験は、ひずみ速度2×10−3/sの条件で実施した。さらに、引張試験は、それぞれのアルミニウム合金材について各3本ずつ行い(N=3)、その平均値を各アルミニウム合金材の0.2%耐力とした。0.2%耐力は大きいほど好ましく、本実施例では、400MPa以上を合格レベルとした。
[4]引張強度
JIS Z2241:2011に準じて、精密万能試験機(株式会社島津製作所製)を用いて、引張試験を行い、引張強さ(MPa)を測定した。また、上記試験は、ひずみ速度2×10−3/sの条件で実施した。なお、各アルミニウム合金材の測定用サンプルは、0.2%耐力の測定の場合と同様にして準備したが、特にここでは、上記A〜Rの条件で製造したままの状態のアルミニウム合金材と、さらに製造後に110℃で24時間加熱したアルミニウム合金材を準備し、それぞれについて、各3本ずつ引張強さを測定し(N=3)、それぞれの平均値を、各アルミニウム合金材の加熱前の引張強度と、加熱後の引張強度とした。本実施例では、加熱前のアルミニウム合金材については、450MPa以上を良好と評価した。また、加熱後のアルミニウム合金材については、300MPa以上を良好と評価した。
[5]ビッカース硬さ(HV)
JIS Z2244:2009に準じて、微小硬さ試験機 HM−125(アカシ株式会社(現株式会社ミツトヨ)製)を用いて、ビッカース硬さ(HV)を測定した。このとき、試験力は0.1kgf、保持時間は15秒とした。また、測定位置は、アルミニウム合金材の長手方向に平行な断面において、長手方向に垂直な方向に対応する線上の、中心と表層の中間付近の位置(表層側から線径もしくは板厚の約1/4中心側の位置)とし、測定値(N=5)の平均値を、各アルミニウム合金材のビッカース硬さ(HV)とした。なお、測定値の最大値および最小値の差が10以上であった場合には、さらに測定数を増やし、測定値(N=10)の平均値を、各アルミニウム合金材のビッカース硬さ(HV)とした。ビッカース硬さ(HV)は大きいほど好ましく、本実施例では、125以上を合格レベルとした。
表1の結果より、本発明の実施例1〜32に係るアルミニウム合金材は、特定の合金組成を有し、かつ結晶粒が一方向に揃って延在した繊維状の金属組織を有し、その一方向に平行な断面において、結晶粒の長手方向に垂直な寸法は310nm以下であることが確認された。図4は、実施例3に係るアルミニウム合金材の加工方向に平行な断面のSIM画像である。なお、実施例1〜2および4〜32に係るアルミニウム合金材の長手方向に平行な断面についても、図4と同様の金属組織が確認された。このような特有の金属組織を有する本発明の実施例1〜32に係るアルミニウム合金材は、鉄系または銅系の金属材料に匹敵する高強度(例えば、0.2%耐力400MPa以上、ビッカース硬さ(HV)125以上)を発揮することが確認された。
また、比較例1〜3、5、9および10のアルミニウム合金材は、合金組成が本発明の適正範囲を満たしていないか、結晶粒が一方向に揃って延在した繊維状の金属組織を有していないか、あるいはその両方であり、結晶粒の長手方向に垂直な寸法も400nm以上であることが確認された。比較例1〜3、5、9および10のアルミニウム合金材は、本発明に係る実施例1〜32のアルミニウム合金材に比べて、0.2%耐力およびビッカース硬さ(HV)のいずれもが著しく劣っていることが確認された。
また、比較例6〜8では、アルミニウム合金材の合金組成が本発明の適正範囲を満たしていないため、冷間加工[1]で加工割れが発生することが確認された。また、比較例4では、アルミニウム合金材の合金組成が本発明の適正範囲を満たしているものの、高含有量のMgを含むアルミニウム合金材に対して、加工度が高すぎるため、冷間加工[1]で加工割れが発生することが確認された。

Claims (13)

  1. Mg:1.20質量%以上6.0質量%以下、Fe:0質量%以上1.50質量%以下、Si:0質量%以上1.0質量%以下、Cu、Ag、Zn、Ni、Ti、Co、Au、Mn、Cr、V、ZrおよびSnから選択される1種以上:合計で0質量%以上2.0質量%以下を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなる合金組成を有し、
    ビッカース硬さ(HV)が125〜280であることを特徴とする、アルミニウム合金材。
  2. Mg:0.50質量%以上1.2質量%未満、Fe:0質量%以上1.50質量%以下、Si:0質量%以上0.15質量%以下、Cu、Ag、Zn、Ni、Ti、Co、Au、Mn、Cr、V、ZrおよびSnから選択される1種以上:合計で0質量%以上2.0質量%以下を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなる合金組成を有し、
    ビッカース硬さ(HV)が125〜280であることを特徴とする、アルミニウム合金材。
  3. Mg:2.0質量%以上6.0質量%以下を含有する、請求項1に記載のアルミニウム合金材。
  4. Mg:3.0質量%以上を含有する、請求項3に記載のアルミニウム合金材。
  5. Cu、Ag、Zn、Ni、Ti、Co、Au、Mn、Cr、V、ZrおよびSnから選択される1種以上:合計で0.06質量%以上を含有する、請求項1乃至4までのいずれか1項に記載のアルミニウム合金材。
  6. Cu:0.05質量%以上0.20質量%以下、Mn:0.3質量%以上1.0質量%以下、Cr:0.05質量%以上0.20質量%以下およびZr:0.02質量%以上0.20質量%以下の群から選択される1種以上を含有する、請求項1乃至5までのいずれか1項に記載のアルミニウム合金材。
  7. 結晶粒が一方向に揃って延在した繊維状の金属組織を有する、請求項1乃至6までのいずれか1項に記載のアルミニウム合金材。
  8. 110℃、24時間の加熱後の状態で測定した引張強度が300MPa以上である、請求項1乃至7までのいずれか1項に記載のアルミニウム合金材。
  9. 請求項1乃至8までのいずれか1項に記載のアルミニウム合金材を用いた締結部品。
  10. 請求項1乃至8までのいずれか1項に記載のアルミニウム合金材を用いた構造用部品。
  11. 請求項1乃至8までのいずれか1項に記載のアルミニウム合金材を用いたバネ用部品。
  12. 請求項1乃至8までのいずれか1項に記載のアルミニウム合金材を用いた導電部材。
  13. 請求項1乃至8までのいずれか1項に記載のアルミニウム合金材を用いた電池用部材。
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