JP2019081895A - 射出成形品および自動車用衝撃部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】剛性および耐衝撃性のバランスに優れた射出成形品を提供すること。【解決手段】少なくともポリアミド(A)、およびグラフト鎖により環状分子が修飾されたポリロタキサン(B)を配合してなる樹脂組成物からなる射出成形品であり、前記ポリアミド(A)を主成分とする海相、前記ポリロタキサン(B)を主成分とする島相を有し、射出成形品の表層から10μm以内に存在する島相の平均直径が0.4μm以下である射出成形品。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリアミドおよび環状分子が修飾されたポリロタキサンを配合してなる樹脂組成物からなる、剛性および耐衝撃性のバランスに優れた射出成形品に関するものである。
ポリアミドは、剛性、靭性などの機械的性質や熱的性質に優れるなど、エンジニアリングプラスチックとして好適な性質を有していることから、射出成形用を中心として、各種電気・電子部品、機械部品および自動車部品などの用途に広く使用されている。ポリアミド樹脂の靱性をさらに改良する方法として、オレフィン系エラストマーや、ゴム状のコア層をガラス状樹脂のシェル層で覆ったコアシェル型化合物を配合することが知られている。オレフィン系エラストマーを配合する技術としては、例えば、ポリアミド樹脂からなる連続相と、該連続相に分散された、α,β−不飽和カルボン酸で変性されたポリオレフィンからなる粒子状の分散相とからなるポリアミド系樹脂組成物(例えば、特許文献1参照)が提案されている。コアシェル型化合物を配合する技術としては、例えば、ポリアルキル(メタ)アクリレートを芯とし、その上にポリオルガノシロキサンからなる第一層及びポリアルキル(メタ)アクリレートからなる第二層を有する多層構造重合体粒子に、ビニル系単量体をグラフト重合してなる複合ゴム系グラフト共重合体と、熱可塑性樹脂からなる耐衝撃性熱可塑性樹脂組成物(例えば、特許文献2参照)、テレフタル酸単位を含有するジカルボン酸単位と、1,9−ノナンジアミン単位および/または2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位を含有するジアミン単位とからなるポリアミド樹脂、並びにコアシェル構造を有する樹脂微粒子からなるポリアミド樹脂組成物(例えば、特許文献3参照)が提案されている。これら樹脂組成物を各種用途、特に自動車構造材料に適用する場合には、剛性との両立が必要となる。特許文献1〜3に開示された樹脂組成物は、オレフィン系エラストマーやコアシェル型化合物を配合することにより、耐衝撃性や靱性は向上するものの、剛性が低下する課題があった。
一方、衝撃強度と靭性を改良する方法として、例えば、不飽和カルボン酸無水物により変性されたポリオレフィンと、官能基を有するポリロタキサンとを反応して得られる樹脂組成物(例えば、特許文献4参照)、ポリ乳酸からなるグラフト鎖を有する環状分子の開口部が直鎖状分子によって包接されたポリロタキサンと、ポリ乳酸樹脂とを含むポリ乳酸系樹脂組成物(例えば、特許文献5参照)が提案されている。しかし、特許文献4に記載の樹脂組成物は、剛性が不十分である課題があった。また、特許文献5に記載の樹脂組成物は、ポリ乳酸の靱性が向上するものの、靱性がなお不十分であった。また、特許文献6に記載の樹脂組成物には、ポリアミドにポリロタキサンを配合することで剛性・靭性を向上可能である技術が示されている。
特開平9−31325号公報 特開平5−339462号公報 特開2000−186204号公報 特開2013−209460号公報 特開2014−84414号公報 国際公開第2016/167247号
特許文献4〜5に開示されるように、ポリロタキサンを用いることにより、ポリオレフィンやポリ乳酸の衝撃強度と靭性が向上することは知られていたが、これらに開示されたポリロタキサンは、ポリアミドとの相溶性や反応性が低く、かかるポリロタキサンを、剛性に優れるポリアミドの改質に適用することは困難であった。また、特許文献6に開示された樹脂組成物は、加工条件によりその特性が変化する課題があった。
本発明は、上記背景技術の課題に鑑み、剛性および耐衝撃性のバランスに優れた射出成形品を得ることを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成を有する。
(1)少なくともポリアミド(A)、およびグラフト鎖により環状分子が修飾されたポリロタキサン(B)を配合してなる樹脂組成物からなる射出成形品であり、前記ポリアミド(A)を主成分とする海相、前記ポリロタキサン(B)を主成分とする島相を有し、成形品の表層から10μm以内に存在する島相の平均直径が0.4μm以下である射出成形品。
(2)前記グラフト鎖がポリエステルであることを特徴とする、(1)に記載の射出成形品。
(3)(1)または(2)に記載の射出成形品からなる自動車用衝撃吸収部材。
本発明の樹脂組成物により、剛性および耐衝撃性のバランスに優れた自動車用衝撃吸収部材向けの射出成形品を得ることができる。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の射出成形品は、ポリアミド(A)と、カルボキシル基、イソシアネート基、グリシジル基およびアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を末端に有するグラフト鎖により環状分子が修飾されたポリロタキサン(B)を配合してなる樹脂組成物を射出成形してなる。ポリアミド(A)を配合することにより、剛性や耐熱性を向上させることができる。また、ポリロタキサン(B)を配合することにより、靱性を向上させることができる。さらに、特定の官能基を末端に有するグラフト鎖により環状分子が修飾されたポリロタキサンを配合することにより、ポリアミド(A)がポリロタキサン(B)のグラフト鎖末端の官能基と反応するため、剛性を維持したまま靱性を向上させることができる。このようにポリアミド(A)の末端とポリロタキサン(B)が有する前記グラフト鎖末端の官能基が反応した反応物は、高分子同士の複雑な反応により生成されたものであることから、その構造を特定することが実際的でない事情が存在するため、当該樹脂組成物は配合する成分により発明を特定するものである。
前記樹脂組成物におけるポリアミド(A)は、アミノ酸、ラクタムあるいはジアミンとジカルボン酸の残基を主たる構成成分とする。その原料の代表例としては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタム、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミンなどの芳香族ジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどの脂環族ジアミン、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸などが挙げられる。本発明においては、これらの原料から誘導されるポリアミドホモポリマーまたはコポリマーを2種以上配合してもよい。
ポリアミド(A)の具体的な例としては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリテトラメチレンセバカミド(ナイロン410)、ポリペンタメチレンアジパミド(ナイロン56)、ポリペンタメチレンセバカミド(ナイロン510)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン106)、ポリデカメチレンセバカミド(ナイロン1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ナイロン1012)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6/66)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミドコポリマー(ナイロン6T/12)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T/6I)、ポリキシリレンアジパミド(ナイロンXD6)、ポリキシリレンセバカミド(ナイロンXD10)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリペンタメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/5T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ−2−メチルペンタメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/M5T)、ポリペンタメチレンテレフタルアミド/ポリデカメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン5T/10T)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)、ポリデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン10T)、ポリドデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン12T)およびこれらの共重合体などが挙げられる。これらを2種以上配合してもよい。ここで、「/」は共重合体を示し、以下同じである。
前記樹脂組成物において、ポリアミド(A)の融点は150℃以上300℃未満が好ましい。融点が150℃以上であれば、耐熱性を向上させることができる。一方、融点が300℃未満であれば、樹脂組成物製造時の加工温度を適度に抑え、ポリロタキサン(B)の熱分解を抑制することができる。
ここで、本発明におけるポリアミドの融点は、示差走査熱量計を用いて、不活性ガス雰囲気下、ポリアミドを、溶融状態から20℃/分の降温速度で30℃まで降温した後、20℃/分の昇温速度で融点+40℃まで昇温した場合に現れる吸熱ピークの温度と定義する。ただし、吸熱ピークが2つ以上検出される場合には、ピーク強度の最も大きい吸熱ピークの温度を融点とする。
150℃以上300℃未満に融点を有するポリアミドの具体的な例としては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリペンタメチレンアジパミド(ナイロン56)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6/66)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミドコポリマー(ナイロン6T/12)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T/6I)、ポリキシリレンアジパミド(ナイロンXD6)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ−2−メチルペンタメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/M5T)、ポリノメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)およびこれらの共重合体などが挙げられる。これらを2種以上配合してもよい。
ポリアミド(A)のアミド基濃度は8.10mmol/g以上が好ましく、ポリロタキサン(B)のグラフト鎖末端の官能基との反応性がより向上するため、靱性をより向上させることができる。また、アミド基濃度は14.0mmol/g以下が好ましい。ここで、アミド基濃度は、下式(1)により表される。
アミド基濃度(mol/g)=(構造単位のアミド基数/構造単位の分子量) (1)
上式(1)において、構造単位の分子量とは、ポリアミドを構成する繰り返し構造単位に相当する分子量を指し、アミノ酸を構成成分とするポリアミドの場合は、アミノ酸の分子量から水分子1つ分の分子量を差し引いた値に等しい。ラクタムを構成成分とするポリアミドの場合は、ラクタムの分子量に等しい。ジアミンとジカルボン酸の残基を構成成分とするポリアミドの場合は、ジカルボン酸の分子量とジアミンの分子量の和から水分子2つ分の分子量を差し引いた値に等しい。
ここで、ポリアミド(A)のアミド基濃度は、構成成分であるアミノ酸やラクタム、ジアミン、ジカルボン酸の残基の構造式を、通常の分析方法により特定し、その分子量を算出し、上式(1)から求めることができる。
アミド基濃度を上記範囲にするための手段としては、ポリアミドの原料として先に例示したものの中から所望の炭素数のものを選択する方法などが挙げられる。
ポリアミド(A)の重合度には特に制限がないが、樹脂濃度0.01g/mlの98%濃硫酸溶液中、25℃で測定した相対粘度が1.5〜5.0の範囲であることが好ましい。相対粘度が1.5以上であれば、得られる成形品の靱性、剛性、耐摩耗性、耐疲労特性、耐クリープ性をより向上させることができる。2.0以上がより好ましい。一方、相対粘度が5.0以下であれば、流動性に優れることから成形加工性に優れる。
前記樹脂組成物におけるポリアミド(A)の配合量は、ポリアミド(A)およびポリロタキサン(B)の合計100重量部に対して、80重量部以上99.9重量部以下である事が好ましい。ポリアミド(A)の配合量が80重量部以上とすることで、得られる成形品の剛性、耐熱性を向上させることができる。ポリアミド(A)の配合量は90重量部以上が好ましく、93重量部以上がより好ましい。一方、ポリアミド(A)の配合量を99.9重量部以下とすることで、相対的なポリロタキサン(B)の配合量を確保することができ、成形品の靱性の低下を抑制できる。ポリアミド(A)の配合量は99.5重量部以下が好ましい。
前記樹脂組成物は、グラフト鎖により環状分子が修飾されたポリロタキサン(B)を配合してなる。ロタキサンとは、例えばHarada, A., Li, J. & Kamachi, M., Nature 356, 325-327に記載の通り、一般的に、ダンベル型の軸分子(両末端に嵩高いブロック基を有する直鎖分子。以下、「直鎖分子」と記載する)に環状の分子が貫通された形状の分子のことを言い、複数の環状分子が一つの直鎖分子に貫通されたものをポリロタキサンと呼ぶ。
ポリロタキサンは、直鎖分子および複数の環状分子からなり、複数の環状分子の開口部に直鎖分子が貫通した構造を有し、かつ、直鎖分子の両末端には、環状分子が直鎖分子から脱離しないように嵩高いブロック基を有する。ポリロタキサンにおいて、環状分子は直鎖分子上を自由に移動することが可能であるが、ブロック基により直鎖分子から抜け出せない構造を有する。すなわち、直鎖分子および環状分子は、化学的な結合でなく、機械的な結合により形態を維持する構造を有する。このようなポリロタキサンは、環状分子の運動性が高いために、外部からの応力や内部に残留した応力を緩和する効果がある。
前記直鎖分子は、環状分子の開口部を貫通し、前記ブロック基と反応し得る官能基を有する分子であれば、特に限定されない。好ましく用いられる直鎖分子としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリアルキレングリコール類;ポリブタジエンジオール、ポリイソプレンジオール、ポリイソブチレンジオール、ポリ(アクリロニトリル−ブタジエン)ジオール、水素化ポリブタジエンジオール、ポリエチレンジオール、ポリプロピレンジオールなどの末端水酸基ポリオレフィン類;ポリカプロラクトンジオール、ポリ乳酸、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル類;末端シラノール型ポリジメチルシロキサンなどの末端官能性ポリシロキサン類;末端アミノ基ポリエチレングリコール、末端アミノ基ポリプロピレングリコール、末端アミノ基ポリブタジエンなどの末端アミノ基鎖状ポリマー類;上記官能基を一分子中に3つ以上有する3官能性以上の多官能性鎖状ポリマー類などが挙げられる。中でも、ポリロタキサンの合成が容易である点から、ポリエチレングリコールおよび/または末端アミノ基ポリエチレングリコールが好ましく用いられる。
直鎖分子の数平均分子量は、2,000以上が好ましく、剛性をより向上させることができる。10,000以上がより好ましい。一方、100,000以下が好ましく、ポリアミド(A)との相溶性を向上させることができ、相分離構造を微細化することができるため、靱性をより向上させることができる。50,000以下がより好ましい。ここで、直鎖分子の数平均分子量は、ヘキサフルオロイソプロパノールを溶媒とし、Shodex HFIP−806M(2本)+HFIP−LGをカラムとして用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定される、ポリメチルメタクリレート換算の値を指す。
前記ブロック基は、直鎖分子の末端官能基と結合し得るものであり、環状分子が直鎖分子から脱離しないために十分に嵩高い基であれば、特に限定されない。好ましく用いられるブロック基としては、ジニトロフェニル基、シクロデキストリン基、アダマンチル基、トリチル基、フルオレセイニル基、ピレニル基、アントラセニル基、数平均分子量1,000〜1,000,000の高分子の主鎖または側鎖等が挙げられる。これらを2種以上有してもよい。
前記環状分子は、開口部に直鎖分子が貫通し得るものであれば、特に限定されない。好ましく用いられる環状分子としては、シクロデキストリン類、クラウンエーテル類、クリプタンド類、大環状アミン類、カリックスアレーン類、シクロファン類などが挙げられる。シクロデキストリン類は、複数のグルコースがα−1,4−結合で環状に連なった化合物である。α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリンがより好ましく用いられる。
本発明におけるポリロタキサン(B)は、前記環状分子が、カルボキシル基、イソシアネート基、グリシジル基およびアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基を有するグラフト鎖により修飾されていることが好ましい。カルボキシル基やグリシジル基は、ポリアミド(A)のアミン末端との反応性が高く、イソシアネート基およびアミノ基は、ポリアミド(A)のカルボキシル末端との反応性が高い。このため、環状分子が特定の官能基を有するグラフト鎖により修飾されることで、ポリロタキサン(B)のポリアミド(A)との相溶性や、有機溶剤への溶解性および反応性が良好になる。その結果、ポリアミド(A)の剛性を維持したまま靱性を向上させることができ、剛性と靱性をバランスよく向上させることができる。
前記グラフト鎖は、ポリエステルにより構成されることが好ましい。ポリアミド(A)との相溶性および有機溶剤への溶解性の点から、脂肪族ポリエステルがより好ましい。脂肪族ポリエステルとしては、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ3−ヒドロキシブチレート、ポリ4−ヒドロキシブチレート、ポリ(3−ヒドロキシブチレート/3−ヒドロキシバレレート)、ポリ(ε−カプロラクトン)などが挙げられる。中でも、ポリアミド(A)との相溶性の観点から、ポリ(ε−カプロラクトン)がより好ましい。
前記各種官能基を有するグラフト鎖により修飾されたポリロタキサン(B)は、次の方法で得ることができる。例えば、ポリ(ε−カプロラクトン)からなるグラフト鎖の末端である水酸基と無水コハク酸を反応させることで、グラフト鎖の末端がカルボキシル基で修飾されたポリロタキサンを得ることができ、さらに、前記カルボキシル基とジアミンを反応させることで、末端がアミン基で修飾されたポリロタキサンを得ることができる。
また、前記水酸基とジイソシアネートの片末端を反応させることで、イソシアネート基で修飾されたポリロタキサンを得ることができる。
前記水酸基と(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートを反応させた後、酸化剤によりアクリル基を酸化することで、グラフト鎖の末端がグリシジル基で修飾されたポリロタキサンを得ることができる。
ポリロタキサン(B)のグラフト鎖末端の官能基濃度は、2×10−5mol/g以上5×10−4mol/g以下が好ましい。官能基濃度を2×10−5mol/g以上とすることにより、ポリアミド(A)の末端との反応性を向上させることができる。その結果、ポリアミド(A)の剛性を維持したまま靱性をより向上させることができ、剛性と靱性をよりバランスよく向上させることができる。3×10−5mol/g以上がより好ましい。一方、官能基濃度を5×10−4mol/g以下とすることにより、ポリロタキサン(B)の官能基同士の会合による凝集や、ポリアミド(A)との過剰な化学架橋を抑制することができ、凝集物やゲルの発生を抑制して靱性をより向上させることができる。1×10−4mol/g以下がより好ましい。
ここで、ポリロタキサン(B)のグラフト鎖末端の官能基濃度は、滴定により求めることができる。例えば、カルボキシル基濃度は、以下の方法により求めることができる。80℃真空乾燥機を用いて、ポリロタキサン(B)を10時間以上乾燥させた絶乾試料を作製する。絶乾試料0.2gを25mlのベンジルアルコールに溶解した溶液について、濃度0.02mol/Lの水酸化カリウムのエタノール溶液を用いて滴定することにより、カルボキシル基濃度を求めることができる。その他官能基についても、既知の方法により官能基濃度を算出することが可能である。
グラフト鎖末端の官能基は、例えば、グラフト鎖により環状分子が修飾されたポリロタキサンと、所望の官能基を有し、かつ、グラフト鎖末端と反応し得る導入化合物とを反応させることにより付与することができる。この場合、グラフト鎖末端の官能基濃度は、例えば、グラフト鎖により環状分子が修飾されたポリロタキサンと導入化合物の仕込み比率を調整することにより、所望の範囲に調整することができる。
ポリロタキサン(B)の重量平均分子量は、10万以上が好ましく、剛性および靱性をより向上させることができる。一方、100万以下が好ましく、ポリアミド(A)との相溶性が向上し、靱性をより向上させることができる。ここで、直鎖分子の重量平均分子量は、ヘキサフルオロイソプロパノールを溶媒とし、Shodex HFIP−806M(2本)+HFIP−LGをカラムとして用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定される、ポリメチルメタクリレート換算の値を指す。
前記樹脂組成物におけるポリロタキサン(B)の配合量は、ポリアミド(A)およびポリロタキサン(B)の合計100重量部に対して、0.1重量部以上20重量部以下であることが好ましい。ポリロタキサン(B)の配合量を0.1重量部以上とすることで、ポリロタキサン(B)の応力緩和効果が十分に発揮され、成形品の靱性が向上する。ポリロタキサン(B)の配合量は0.5重量部以上がさらに好ましい。一方、ポリロタキサン(B)の配合量を20重量部以下とすることで、相対的なポリアミド(A)の配合量を確保することができ、得られる成形品の剛性、耐熱性の低下を抑制できる。10重量部以下が好ましく、7重量部以下がより好ましい。
本発明の射出成形品は、ポリアミド(A)を主成分とする海相、ポリロタキサン(B)を主成分とする島相を有している。ここで、「主成分」とは、当該相において、80重量%以上を占める成分を指す。樹脂組成物の特性は、相分離構造やその相サイズにも影響を受けることが知られている。2種以上の成分からなり、相分離構造を有する樹脂組成物は、それぞれの成分の長所を引き出し、短所を補い合うことにより、各成分単独の場合に比べて優れた特性を発現する。前記樹脂組成物は、このような海島構造を有することにより、破壊時のクラック進展が抑制され、靱性をより向上させることができる。すなわち、応力集中により形成されたクラックは、ポリアミド(A)を主成分とする海相を伝播するが、ポリロタキサン(B)を主成分とする島相が存在することにより、クラックが比較的柔軟な島相に誘導され、ここで応力が分散されるため、クラックの伝播が抑制される。
本発明の射出成形品は表層から10μm以内に存在する海島構造について、射出成形品の機械特性は成形品表層の機械特性に大きく影響を受ける。本発明は、成形品表層の相分離構造を制御することで、成形品の機械特性を制御することが可能であることを見出した。本発明の射出成形品の表層の島相の平均直径は、0.4μm以下である。0.25μm以下が好ましく、0.1μm以下がさらに好ましい。表層の島相の平均直径が0.4μmを超えると、破壊時のクラック進展の抑制効果が効果的に発現せず、靱性がおよび耐衝撃性が向上する効果が十分でない。また、柔軟なポリロタキサンの相が大きく、剛性が向上する効果が十分でない。また、島相の平均直径は0.01μm以上が好ましい。表層の島相の平均直径が0.01μm以上であると、相分離構造に由来する特性がより効果的に発揮され、表層の靱性をより向上させることができる。
ここでいう表層とは射出成形品と空気との界面を示す。
本発明の射出における、表層から10μm以内に存在する海島構造の島相の平均直径は、電子顕微鏡観察により、以下の方法により求めることができる。まず、射出成形により80mm×80mm、厚さ1〜3mmの角板試験片を得る。当該試験片の中央部を長手方向に垂直に切断し、その断面を、表層部(表層から10μm以内)を含む1〜2mm角に切削する。切削した試験片をリンタングステン酸/オスミウムを用いてポリアミド(A)を染色した後、ウルトラミクロトームにより−196℃で切削して0.1μm以下(約80nm)の超薄切片を切り出し、透過型電子顕微鏡用サンプルを得る。海島構造の島相の平均直径を求める場合、前述の透過型電子顕微鏡用サンプルについて、正方形の電子顕微鏡観察写真に島相が50個以上100個未満存在するように、倍率を調整する。かかる倍率において、観察像に存在する島相から無作為に50個の島相を選択し、それぞれの島相について長径と短径を測定する。その長径と短径の平均値を各島相の直径とし、測定した全ての島相の直径の平均値を島相の直径とする。なお、島相の長径および短径とは、それぞれ島相の最も長い直径および最も短い直径を示す。
表層の島相の平均直径が、前述の範囲にある海島構造は、例えば、ポリアミド(A)とポリロタキサン(B)の配合量を前述の好ましい範囲にすることにより得ることができる。ポリロタキサン(B)の配合量が少ないほど島相の平均直径は小さくなる傾向にあり、ポリロタキサン(B)の配合量が多いほど島相の平均直径は大きくなる傾向にある。また、射出成形により成形品を得る際に、十分なせん断が加わる速度で樹脂を射出することによって得ることができる。十分なせん断が加わるような条件で樹脂を射出することで、金型表面と接し、最初に冷却が始まる表層部(スキン層)に集中的にせん断が加わり、島相の構造が微細化する傾向にある。
本発明の成形品表層から10μm以内に存在する島相の平均直径を0.4μm以下にするための方法は、そのような成形品が得られる限りにおいて特に制限はないが、成形品を射出成形にて成形する際の射出速度をv(mm/s)、成形品の重量をw(g)、成形品の厚みをt(mm)とすると、w/(v/t)が100以下の条件で成形をする方法が好ましい例として挙げられる。50以下で成形することがより好ましく、10以下で成形することがさらに好ましい。ここで、成形品の厚みとは、成形品内で最も薄い箇所の厚みを意味する。
v/tは射出速度を成形品の厚みで割った値であり、この値が大きくなると成形品内の配向が大きくなり、島相の構造サイズが微細化しやすくなる目安となる。wは成形品の重量であり、重量が大きくなると成形品の蓄熱が大きくなり拡散因子が高まることから、島相の構造が合体・凝集し、粗大化しやすくなる目安となる。即ち、成形品のサイズおよび形状に合わせて射出速度v(mm/s)を変更し、w/(v/t)を100以下に制御することで、成形品表層から10μm以内における島相の平均直径を0.4μm以下にすることができる。
前記樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、さらに充填材、ポリアミド以外の熱可塑性樹脂、各種添加剤などを配合することができる。
充填材を配合することにより、得られる成形品の強度、剛性をより向上させることができる。充填材としては、有機充填材、無機充填材のいずれでもよいし、繊維状充填材、非繊維状充填材のいずれでもよい。これらを2種以上配合してもよい。
繊維状充填材としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維などが挙げられる。これらは、エチレン/酢酸ビニルなどの熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂により、被覆または集束されていてもよい。繊維状充填材の断面形状としては、円形、扁平状、まゆ形、長円形、楕円形、矩形などが挙げられる。
非繊維状充填材としては、例えば、タルク、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、マイカ、カオリン、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、アルミナシリケート、珪酸カルシウムなどの非膨潤性珪酸塩、Li型フッ素テニオライト、Na型フッ素テニオライト、Na型四珪素フッ素雲母、Li型四珪素フッ素雲母の膨潤性雲母などの膨潤性層状珪酸塩、酸化珪素、酸化マグネシウム、アルミナ、シリカ、珪藻土、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化スズ、酸化アンチモンなどの金属酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドロマイト、ハイドロタルサイトなどの金属炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの金属硫酸塩、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウムなどの金属水酸化物、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイトなどのスメクタイト系粘土鉱物やバーミキュライト、ハロイサイト、カネマイト、ケニヤイト、燐酸ジルコニウム、燐酸チタニウムなどの各種粘土鉱物、ガラスビーズ、ガラスフレーク、セラミックビーズ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化珪素、燐酸カルシウム、カーボンブラック、黒鉛などが挙げられる。上記の膨潤性層状珪酸塩は、層間に存在する交換性陽イオンが有機オニウムイオンで交換されていてもよい。有機オニウムイオンとしては、例えば、アンモニウムイオンやホスホニウムイオン、スルホニウムイオンなどが挙げられる。
ポリアミド以外の樹脂の具体例としては、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリチオエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、四フッ化ポリエチレン樹脂などが挙げられる。これらを2種以上配合してもよい。
各種添加剤の具体例としては、銅化合物以外の熱安定剤、イソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、エポキシ化合物などのカップリング剤、ポリアルキレンオキサイドオリゴマ系化合物、チオエーテル系化合物、エステル系化合物、有機リン系化合物などの可塑剤、有機リン化合物、ポリエーテルエーテルケトンなどの結晶核剤、モンタン酸ワックス類、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸アルミ等の金属石鹸、エチレンジアミン・ステアリン酸・セバシン酸重縮合物、シリコーン系化合物などの離型剤、次亜リン酸塩などの着色防止剤、滑剤、紫外線防止剤、着色剤、難燃剤、発泡剤などを挙げることができる。これら添加剤を配合する場合、その配合量は、ポリアミドの特徴を十分に活かすため、ポリアミド(A)100重量部に対して10重量部以下が好ましく、1重量部以下がより好ましい。
銅化合物以外の熱安定剤としては、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどのフェノール系化合物、リン系化合物、メルカプトベンゾイミダゾール系化合物、ジチオカルバミン酸系化合物、有機チオ酸系化合物などの硫黄系化合物、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミンなどのアミン系化合物などが挙げられる。これらを2種以上配合してもよい。
前記樹脂組成物の製造方法としては、特に制限はないが、溶融状態で混練する方法や、溶液状態で混合する方法等が挙げられる。反応性向上の点から、溶融状態で混練する方法が好ましい。溶融状態で混練する溶融混練装置としては、例えば、単軸押出機、二軸押出機、四軸押出機などの多軸押出機、二軸単軸複合押出機などの押出機や、ニーダーなどが挙げられる。生産性の点から、連続的に製造可能な押出機が好ましく、混練性、反応性、生産性の向上の点から、二軸押出機がより好ましい。
以下、二軸押出機を用いて本発明の樹脂組成物を製造する場合を例に説明する。ポリロタキサン(B)の熱劣化を抑制し、靱性をより向上させる観点から、最高樹脂温度は、300℃以下が好ましい。一方、最高樹脂温度は、ポリアミド(A)の融点以上が好ましい。ここで、最高樹脂温度とは、押出機の複数ヶ所に均等に設置された樹脂温度計により測定した中で最も高い温度を指す。
また、樹脂組成物の押出量は、ポリアミド(A)およびポリロタキサン(B)の熱劣化をより抑制する観点から、スクリュー回転1rpm当たり0.01kg/h以上が好ましく、0.05kg/h以上がより好ましい。一方、ポリアミド(A)とポリロタキサン(B)樹脂の反応をより促進し、前述の海島湖構造をより容易に形成する観点から、スクリュー回転1rpm当たり1kg/h以下が好ましい。ここで、押出量とは、押出機から1時間あたりに吐出される樹脂組成物の重量(kg)を指す。
このようにして得られた樹脂組成物を、射出成形機を用いて成形することで射出成形品を得ることができる。
本発明の射出成形品は、その優れた特性を活かし、自動車部品、電気・電子部品、建築部材、各種容器、日用品、生活雑貨および衛生用品など各種用途に利用することができる。とりわけ、靱性、剛性、および耐衝撃性が要求される自動車用衝撃吸収部材や自動車外装部品、自動車電装部品、自動車アンダーフード部品、自動車ギア部品、筐体やコネクタ、リフレクタなどの電気、電子部品用途に好ましく用いられる。特に、自動車用衝撃吸収部材に好ましく用いられる。具体的には、エンジンカバー、エアインテークパイプ、タイミングベルトカバー、インテークマニホールド、フィラーキャップ、スロットルボディ、クーリングファンなどの自動車エンジン周辺部品、クーリングファン、ラジエータータンクのトップおよびベース、シリンダーヘッドカバー、オイルパン、ブレーキ配管、燃料配管用チューブ、廃ガス系統部品などの自動車アンダーフード部品、ギア、アクチュエーター、ベアリングリテーナー、ベアリングケージ、チェーンガイド、チェーンテンショナなどの自動車ギア部品、シフトレバーブラケット、ステアリングロックブラケット、キーシリンダー、ドアインナーハンドル、ドアハンドルカウル、室内ミラーブラケット、エアコンスイッチ、インストルメンタルパネル、コンソールボックス、グローブボックス、ステアリングホイール、トリムなどの自動車内装部品、フロントフェンダー、リアフェンダー、フューエルリッド、ドアパネル、シリンダーヘッドカバー、ドアミラーステイ、テールゲートパネル、ライセンスガーニッシュ、ルーフレール、エンジンマウントブラケット、リアガーニッシュ、リアスポイラー、トランクリッド、ロッカーモール、モール、ランプハウジング、フロントグリル、マッドガード、サイドバンパーなどの自動車外装部品、エアインテークマニホールド、インタークーラーインレット、エキゾーストパイプカバー、インナーブッシュ、ベアリングリテーナー、エンジンマウント、エンジンヘッドカバー、リゾネーター、及びスロットルボディなどの吸排気系部品、チェーンカバー、サーモスタットハウジング、アウトレットパイプ、ラジエータータンク、オイルネーター、及びデリバリーパイプなどのエンジン冷却水系部品、コネクタやワイヤーハーネスコネクタ、モーター部品、ランプソケット、センサー車載スイッチ、コンビネーションスイッチなどの自動車電装部品、SMT対応のコネクタ、ソケット、カードコネクタ、ジャック、電源部品、スイッチ、センサー、コンデンサー座板、リレー、抵抗器、ヒューズホルダー、コイルボビン、ICやLED対応ハウジング、リフレクタなどの電気、電子部品を好適に挙げることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。各実施例の樹脂組成物を得るため下記原料を用いた。
<ポリアミド>
(A−1):ナイロン6樹脂(東レ(株)製“アミラン”(登録商標)CM1010)、η=2.70、融点225℃、アミド基濃度10.5mmol/g。
(A−2):ナイロン6樹脂(参考例1の方法で作製)、η=2.32、融点225℃、アミド基濃度10.5mmol/g。
ここで、上記相対粘度ηは、98%濃硫酸の0.01g/ml溶液、25℃において測定した。また、融点は、示差走査熱量計を用いて、不活性ガス雰囲気下、ポリアミドを溶融状態から20℃/分の降温速度で30℃まで降温した後、20℃/分の昇温速度で融点+40℃まで昇温した場合に現れる吸熱ピークの温度とした。ただし、吸熱ピークが2つ以上検出される場合には、ピーク強度の最も大きい吸熱ピークの温度を融点とした。また、アミド基濃度は、構造単位の構造式から次式(1)により算出した。
アミド基濃度(mol/g)=(構造単位のアミド基数/構造単位の分子量) (1)。
<ポリロタキサン>
(B−1):ポリロタキサン(アドバンスト・ソフトマテリアル(株)製“セルム”(登録商標)スーパーポリマーSH3400P)のグラフト鎖末端を参考例2に記載の方法で無水コハク酸により修飾して作製した。直鎖分子であるポリエチレングリコールの数平均分子量は3.5万、全体の重量平均分子量は70万である。
(B−2):ポリロタキサン(アドバンスト・ソフトマテリアル(株)製“セルム”(登録商標)スーパーポリマーSH3400P)のグラフト鎖末端を参考例3に記載の方法で無水コハク酸により修飾して作製した。直鎖分子であるポリエチレングリコールの数平均分子量は3.5万、全体の重量平均分子量は70万である。
(B−3):ポリロタキサン(アドバンスト・ソフトマテリアル(株)製“セルム”(登録商標)スーパーポリマーSH2400P)のグラフト鎖末端を参考例4に記載の方法で無水コハク酸により修飾して作製した。直鎖分子であるポリエチレングリコールの数平均分子量は2万、全体の重量平均分子量は40万である。
(B−1)〜(B−3)において原料として用いた“セルム(登録商標)”スーパーポリマーはいずれも、環状分子がポリ(ε−カプロラクトン)からなるグラフト鎖により修飾されたα−シクロデキストリン、直鎖分子がポリエチレングリコール、ブロック基がアダマンタン基であるポリロタキサンである。
ここで、ポリロタキサンの重量平均分子量は、ヘキサフルオロイソプロパノールを溶媒とし、Shodex HFIP−806M(2本)+HFIP−LGをカラムとして用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定した、ポリメチルメタクリレート換算の値である。
(参考例1)
ε−カプロラクタム700g、ヘキサメチレンジアミン30重量%水溶液18.2g(ε−カプロラクタムに対して0.80mol%)を予熱器に仕込んで密閉し、窒素置換し、120℃で予熱した。予熱された原料を重合缶へ供給し、285℃で加熱した。加熱を開始して、缶内圧力が0.6MPaに到達した後、水分を系外に放出させながら缶内圧力を0.6MPaで1.5時間保持した。その後30分間かけて缶内圧力を常圧に戻し、さらに減圧度60kPa、ヒーター温度285℃で2時間加熱した。その後、重合缶からポリマーをガット状に吐出してペレタイズし、熱水抽出を行い、これを80℃で24時間真空乾燥して、50Pa、200℃で固相重合を行い、η=2.32、融点225℃のナイロン6を得た。
(参考例2)
50gの“セルム”スーパーポリマーSH3400Pを500mlのトルエン溶液に溶解し、無水コハク酸を1.3g加え、窒素フロー下90℃で6時間加熱した。エバポレーターでポリマー濃度が50%程度になるまで濃縮した後、ポリマー溶液を大過剰のメタノール溶液に加え、沈殿物を回収した。得られた沈殿物を真空乾燥機中で80℃8時間乾燥させて、ポリマーを得た。得られたポリマーをベンジルアルコールに溶解し、濃度既知の水酸化カリウム溶液により滴定したところ、グラフト鎖末端のカルボキシル基濃度は2.53×10−4mol/gであることがわかった。
(参考例3)
50gの“セルム”スーパーポリマーSH3400Pを500mlのトルエン溶液に溶解し、無水コハク酸を0.2g加え、参考例2と同様にしてポリマーを得た。得られたポリマーをベンジルアルコールに溶解し、濃度既知の水酸化カリウム溶液により滴定したところ、グラフト鎖末端のカルボキシル基濃度は3.75×10−5mol/gであることがわかった。
(参考例4)
“セルム”スーパーポリマーSH3400Pにかえて “セルム”スーパーポリマーSH2400Pを用いたこと以外は参考例2と同様にしてポリマーを得た。得られたポリマーをベンジルアルコールに溶解し、濃度既知の水酸化カリウム溶液により滴定したところ、グラフト鎖末端のカルボキシル基濃度は2.46×10−4mol/gであることがわかった。
<評価方法>
各実施例および比較例における評価方法を説明する。評価n数は、特に断らない限り、n=5とし平均値を求めた。
(1)相分離構造の形態および島相の平均直径
各実施例および比較例により得られたペレットを80℃で12時間減圧乾燥し、射出成形機(住友重機社製SG75H−MIV)を用いて、シリンダー温度:240℃、金型温度:80℃、保圧20MPa、保圧時間10秒、冷却時間20秒の条件で射出成形することにより、80mm×80mm、厚さ1〜3mmの角板試験片を作製した。なお、射出速度は表1〜2に記載の通りである。本角板の中央部から表層の一部を切り出し、ライカ製ウルトラミクロトーム(EM UC7)を用い、ダイヤモンドナイフにより平板の長手方向に垂直な方向が観察面となるよう、約2mm×約1mmの断面観察用サンプルを作製した。作製したサンプルを、モルホロジーに十分なコントラストが付くよう、リンタングステン酸/オスミウムを用いて染色後、透過型電子顕微鏡((株)日立製作所製H−7100)により、加速電圧100kVとして、観察用サンプルの断面の相構造を観察し、相分離構造の形態を確認した。片方の成分を主成分とする相が粒子状に形成した島相と、もう片方の成分を主成分とする海相とが存在し、その海相の中に粒子が点在した構造を海島構造とした。
前記海島構造を形成しているサンプルにつき、それぞれ島構造の平均直径を以下の方法で求めた。正方形の電子顕微鏡観察写真に島構造が50個以上100個未満存在するよう、適切な倍率に調整した。かかる倍率において、観察像に存在する島構造から無作為に50個の島構造を選択し、それぞれの島構造について長径と短径を測定した。長径と短径の平均値を各島構造の直径とし、測定した全ての島構造の直径の平均値を島構造の直径とした。
(2)靱性(耐衝撃性)
前記(1)に記載の方法で角板試験片を得た。本平板を用いて、島津製作所製の高速計装化面衝撃装置(ハイドロショット)を用い、落錘速度3.3mm/秒、ポンチ先端径1/2インチ、サンプル受け部口径3インチの試験条件に設定し、サンプル数=5、試験温度23℃で行った。各条件で試験を行い、ポンチの抜けた穴が白化し、全体として割れが生じなかったものを延性、板全体が割れた場合を脆性と判定した。
(3)剛性(曲げ弾性率)
前記(1)に記載の方法で角板試験片を得た。本平板中央部から幅10mmとなるよう試験片を切り出し、10mm×2mm×80mmの短冊形の試験片を得た。この試験片について、ISO178(2001)に従い、曲げ試験機テンシロンRTA−1T(オリエンテック社製)を用い、クロスヘッド速度2mm/minで曲げ試験を行い、曲げ弾性率を求めた。
(4)耐衝撃性(シャルピー衝撃試験)
各実施例および比較例により得られたペレットを80℃で12時間減圧乾燥し、射出成形機(住友重機社製SG75H−MIV)を用いて、(1)と同条件で射出成形することにより、シャルピー衝撃試験片を作製した。得られたシャルピー衝撃試験片に、ノッチングツール(東洋精機:A−4)を用いてノッチ加工を施した。前記シャルピー衝撃試験片を用いて、JIS K 7111(2012)に準じてノッチ付きシャルピー衝撃試験を行った。
(実施例1〜8、比較例1〜6)
ポリアミド樹脂とポリロタキサンを、表1〜2に示す組成となるように配合して、プリブレンドし、シリンダー温度:240℃、スクリュー回転数:200rpmに設定した二軸押出機(池貝鉄鋼製PCM−30型)へ供給し溶融混練した。押出されたガットをペレタイズした。得られたペレットを用いて前記方法により評価した結果を表1〜2に示す。
Figure 2019081895
Figure 2019081895
実施例1〜8と比較例1、5〜6の比較から、ポリアミドにグラフト鎖により環状分子が修飾されたポリロタキサンを配合することにより、配合しない場合と比較して剛性および耐衝撃性のバランスに優れていることがわかる。また、実施例1〜8と比較例2〜4の比較により、射出成形により成形品を得る際に、w/(v/t)が2以下となるよう成形することで、十分なせん断が加わり、表層から10μm以内の島相の平均直径を微細化することが可能となり、剛性が高く、かつ、衝撃試験での破壊の際に延性破壊する、シャルピー衝撃値にも優れた成形品を得られることがわかる。

Claims (3)

  1. 少なくともポリアミド(A)、およびグラフト鎖により環状分子が修飾されたポリロタキサン(B)を配合してなる樹脂組成物からなる射出成形品であり、前記ポリアミド(A)を主成分とする海相、前記ポリロタキサン(B)を主成分とする島相を有し、射出成形品の表層から10μm以内に存在する島相の平均直径が0.4μm以下である射出成形品。
  2. 前記グラフト鎖がポリエステルであることを特徴とする、請求項1に記載の射出成形品。
  3. 請求項1または2に記載の射出成形品からなる自動車用衝撃吸収部材。
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